説明

ユーザー認証機能付き印刷装置

【課題】ネットワークプリンティング環境に適用される印刷装置において、ユーザーの制限によるセキュリティとユーザー認証情報の登録の容易性とを両立させる。
【解決手段】印刷データとそれに付加されたユーザー識別情報とを受信する受信部と、受信したユーザー識別情報と記憶部に本登録されているユーザー認証情報とを照合する認証処理部と、該当するユーザー認証情報が記憶部にない場合、外部の印刷装置へ前記ユーザー識別情報を送信し得る認証情報送信部と、前記送信に応答し、外部の印刷装置に本登録されている該当のユーザー認証情報を受信し得る認証情報受信部とを備え、前記認証処理部は、外部の印刷装置から受信したユーザー認証情報を仮登録状態のユーザー認証情報として一時的に記憶させかつ前記印刷を仮登録状態で実行させ、かつ、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザー認証機能付きの印刷装置に関し、より詳細には、ネットワークを介して接続される他の印刷装置とユーザー認証に係る情報をやりとりできる印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上に複数の印刷装置が接続された環境において、各印刷装置を使用できるユーザーに制限を加え、また、各ユーザーの使用状況を管理するために、各印刷装置がその装置に登録されているユーザーか否かを認証する機能が知られている。このようなユーザー認証機能付きの印刷装置で印刷を行う際、第1の印刷装置にユーザー登録されているが第2の印刷装置にユーザー登録されていないユーザーが、第2の印刷装置に対して印刷を実行すると、第2の印刷装置ではユーザー認証が失敗し印刷することができない。このユーザーが第2の印刷装置で印刷できるようにするためには、第2の印刷装置にユーザー登録を行い、その後、改めてクライアント装置(PC)から第2の印刷装置に対して印刷を実行する必要がある。しかし、同一ネットワーク内の各印刷装置にユーザー登録を行うことは、ユーザーにとってわずらわしい作業である。
【0003】
そこで、クライアント装置側で認証した印刷ジョブをサーバに蓄積しておき、指定した印刷装置で印刷失敗した場合、ネットワーク上の他の印刷装置で印刷することにより、セキュリティ性を確保した印刷を行うシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、指定した印刷装置で認証失敗した場合、ネットワーク上にある他の印刷装置で同じ認証情報を使用する印刷装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−34491号公報
【特許文献2】特開2004−213077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1で開示されている手法は、クライアント装置での認証が前提であり、かつ印刷ジョブを蓄積するためのサーバが印刷装置と別に必要となる。
特許文献2の場合、他の印刷装置で認証成功すれば印刷は実行されるが、指定した印刷装置には印刷後も認証情報が登録されることはない。そのため、毎回、他印刷装置で認証されることになる。
【0005】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、ユーザー認証処理を付加した印刷処理により印刷可能なユーザーを制限し、各ユーザーの使用状況を管理可能なネットワークプリンティング環境に適用される印刷装置において、ユーザーの制限によるセキュリティとユーザー認証情報の登録の容易性とを両立させる機能を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、印刷処理を受け付けるべきユーザーの認証に用いるユーザー認証情報の本登録を受け付ける指示入力部と、本登録されたユーザー認証情報を記憶する記憶部と、印刷データとその印刷データに付加されたユーザー識別情報とを受信する受信部と、受信したユーザー識別情報と記憶部に記憶されているユーザー認証情報とを照合し、前記印刷データの印刷処理を受け付けるべきか否かを判断する認証処理部と、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されていない場合、ネットワークを介して接続された外部の印刷装置へ前記ユーザー識別情報を送信し得る認証情報送信部と、前記送信に応答し、前記ユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が外部の印刷装置に本登録されている場合にそのユーザー認証情報を受信し得る認証情報受信部とを備え、前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を仮登録状態のユーザー認証情報として前記記憶部に一時的に記憶部に記憶させかつ前記印刷データの印刷を仮登録状態で受け付けて実行するように制御し、かつ、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるよう制御することを特徴とする印刷装置を提供する。
【0007】
また、この発明は、印刷処理を受け付けるべきユーザーの認証に用いるユーザー認証情報の登録を受け付ける指示入力部と、登録されたユーザー認証情報を記憶する記憶部と、印刷データとその印刷データに付加されたユーザー識別情報とを受信する受信部と、受信したユーザー識別情報と記憶部に記憶されているユーザー認証情報とを照合し、前記印刷データの印刷処理を受け付けるべきか否かを判断する認証処理部と、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されていない場合、ネットワークを介して接続された外部の印刷装置へ前記ユーザー識別情報を送信し得る認証情報送信部と、前記送信に応答し、前記ユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が外部の印刷装置に登録されている場合にそのユーザー認証情報を受信し得る認証情報受信部とを備え、前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を前記認証情報受信部を介し外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を前記記憶部に記憶させて前記印刷データの印刷を実行するように制御することを特徴とする印刷装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の印刷装置において、前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を仮登録状態のユーザー認証情報として前記記憶部に一時的に記憶部に記憶させかつ前記印刷データの印刷を仮登録状態で受け付けて実行するように制御し、かつ、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるよう制御するので、ユーザー認証処理を付加した印刷処理により印刷可能なユーザーを制限し、各ユーザーの使用状況を管理可能なネットワークプリンティング環境に適用される印刷装置において、ユーザーの制限によるセキュリティとユーザー認証情報の登録の容易性とを両立させる機能を提供することができる。より具体的には、指定した印刷装置で認証失敗した場合、ネットワーク上にある他の印刷装置に存在するユーザーの認証情報によって認証が成功すれば、そのユーザーの認証情報を指定した印刷装置に仮登録した上で印刷を許可し、その印刷実行の前後に、指定した印刷装置への本登録を簡便に行うことが可能になる。
【0009】
また、この発明の異なる態様によれば、前記認証処理部は、前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を前記認証情報受信部を介し外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を前記記憶部に記憶させて前記印刷データの印刷を実行するように制御するので、ユーザーの制限によるセキュリティとユーザー認証情報の登録の容易性とを両立させる機能を提供することができる。より具体的には、指定した印刷装置で認証失敗した場合、ネットワーク上にある他の印刷装置に存在するユーザーの認証情報によって認証が成功すれば、そのユーザーの認証情報を用いて印刷を許可することが可能になる。
【0010】
この発明において、指示入力部は、ユーザーがユーザー認証情報を本登録するために用いるものであり、その具体的な一態様は、例えば、印刷装置の操作部に配置される入力キーや操作部に配置される液晶表示装置とその表面に配置されるタッチパネルが一体となって入力キーの機能を発揮するものである。
【0011】
なお、「本登録」は、「仮登録」との識別が判り易いように用いた語である。「仮登録」が本登録までの一時的な登録状態であり、仮登録後に「本登録」が行われた場合、もしくは、「本登録」が行われないと認証処理部が判断した場合に削除される。これに対して、「本登録」は、ユーザーの意思により意図的に削除されるまでその印刷装置の記憶部に記憶される。例えば、特許文献2に開示された従来技術には、本発明の「仮登録」に相当する概念がなく「本登録」に相当する概念のみが存在する。
【0012】
また、記憶部は、ユーザー認証情報を記憶する不揮発性のメモリである。その具体的な一態様は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置である。さらに、受信部は、クライアント装置との間で印刷データおよびそれに付加されたユーザー識別情報を通信する通信回路である。その具体的な一態様は、LANインターフェース回路である。後述する実施形態では、I/O部に相当する。さらに、認証情報送信部および認証情報受信部は、ネットワークを介して接続された外部の印刷装置との間でユーザー認証情報およびユーザー識別情報をそれぞれ送信および受信するものである。その具体的なハードウェアは前述の受信部と同様、LANインターフェース回路である。受信部、認証情報送信部および認証情報受信部は、その機能、換言すれば通信の対象が異なるもののその具体的態様としてのハードウェアは共通のLANインターフェース回路である。
【0013】
認証処理部は、受信されたユーザー識別情報と前記記憶部に記憶されたユーザー認証情報とを照合し、照合結果に基づいて前記印刷データの印刷処理を受け付けるべきか否かを判断する。認証処理部の機能は、印刷装置が備えるCPUあるいはマイクロコンピュータが制御用のプログラムを実行することにより実現される。
認証処理部が認証したユーザー識別情報が付加された印刷データは、印刷部により印刷される。ここでいう印刷部は、いわゆるプリンタコントローラおよびプリンタエンジンを指す。
【0014】
以下、この発明の好ましい態様について説明する。
仮登録状態で受け付けられて実行される印刷処理は、本登録のレベルで実行される印刷処理に比して印刷枚数の上限、当該ユーザーの累積印刷枚数の上限、印刷処理可能な時間帯、および/または指定可能な印刷機能に制限が課されるようにしてもよい。このようにすれば、仮登録の機能が乱用され、ユーザー認証による管理が有名無実になる事態を防ぐことができる。仮登録の機能制限の具体例としては、利用枚数制限や、累積印刷枚数のリミット、利用可能時間制限、利用可能な印刷機能の制限などが考えられる。ここで、制限される印刷機能とは、例えば、印刷単価の高いカラー印刷を禁止したり、ユーザーがシートを取りに来るまでに時間を要しても後続の印刷ジョブの邪魔になることのないようシートの排出先を特定あるいは制限したり、単価の高い特殊紙などのシートの選択を制限したりするものである。
【0015】
また、前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるために、前記指示入力部を用いた指示をユーザーに求めるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザーは、仮登録されたユーザー認証情報で印刷処理が行われる前後で、簡便な操作により本登録を行うことができ、仮登録の印刷機能に制限がある場合は本登録によりその制限をなくして印刷処理させることができ、あるいは、今後も頻繁に使用する印刷装置に対して簡単にユーザー認証情報を登録することができる。
【0016】
さらにまた、前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるために、前記印刷データの印刷処理と共に、仮登録状態のユーザー認証情報に係る内容を印刷処理するように制御してもよい。このようにすれば、仮登録による印刷処理によって出力された印刷物を取りにきたユーザーに対して、仮登録されたユーザー認証情報を本登録するか否かの選択をより確実に行わせることができる。
【0017】
前記選択を行わせるための告知を表示する表示部をさらに備え、前記ユーザー識別情報およびユーザー認証情報はユーザーIDとユーザーパスワードとを含んでなり、前記認証処理部は、前記表示部に仮登録状態のユーザー認証情報に係るユーザーIDを表示部に表示させ、指示入力部からのユーザーパスワードの入力を求める表示を行わせるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザーパスワードを知っているユーザーのみが本登録を行うことができるので、仮登録されたユーザー認証情報が第三者の操作により誤って登録されることを回避できる。
【0018】
また、前記認証処理部は、所定期間内に指示入力部からのユーザーパスワードの入力がない場合、または、入力されたユーザーパスワードが不正な場合に仮登録状態のユーザー認証情報を削除するようにしてもよい。このようにすれば、本登録されなかったユーザー認証情報がいつまでも仮登録の状態のままで保持されることを回避することができる。
【0019】
さらにまた、受信した印刷データを格納する印刷データ格納部をさらに備え、前記認証処理部は、外部の印刷装置からユーザー認証情報が提供されなかった場合、前記印刷データの印刷処理を行わずにその印刷データを印刷データ格納部に格納し、その印刷データに付加されたユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が登録された場合に格納された印刷データを印刷し得るように制御してもよい。このようにすれば、受信された印刷データが、それに付加されたユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が記憶されておらず、かつ、外部の印刷装置にも登録されていないものであっても、その後にその印刷装置にユーザー識別情報に相当するユーザー認証情報を登録することによって印刷処理を行わせることができる。
【0020】
前記ユーザー識別情報およびユーザー認証情報はユーザーIDとユーザーパスワードとを含んでなり、前記認証処理部は、ユーザー識別情報に含まれるユーザーIDに該当するものが記憶部に記憶されていない場合、前記認証情報送信部を介してそのユーザーIDを外部の印刷装置へ送信し、前記認証情報受信部を介してそのユーザーIDと一致するユーザー認証情報を取得し、複数の認証情報が取得され、かつその認証情報に含まれるパスワードが異なるとき、複数のユーザー認証情報が取得された旨を表示部に表示させあるいは印刷させ、いずれかのユーザーパスワードをユーザーに選択させまたは入力させるように制御してもよい。このようにすれば、複数の印刷装置から異なるパスワードを含むユーザー認証情報が提供された場合、そのうち何れを本登録すべきかをユーザーの意志に基づいて決定させることができる。従って、例えば、複数のアカウント(ユーザー認証情報)を有するユーザーは意図に応じたユーザー認証情報を本登録することができる。例えば、業務内容に応じてアカウントを使い分けている場合や、組織の変更等により複数のアカウントを持つに至った場合であっても適切なアカウントを本登録させることができる。
【0021】
また、前記記憶部は、装置の管理者用として予め定められ前記ネットワークを介して通信可能な連絡先をさらに記憶してなり、前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報が本登録された場合にその旨を前記連絡先へ通知するようにしてもよい。このようにすれば、仮登録状態のユーザー認証情報が本登録される都度、その印刷装置の管理者はそれを知ることができ、ユーザー認証情報の適切な管理を行い得る。
【0022】
さらにまた、前記認証情報受信部は、外部の印刷装置に登録されているユーザー識別情報をその登録がなされている印刷装置の識別情報と共に受信し、前記記憶部は、前記認証情報受信部により受信されるべき印刷装置の識別情報のうち仮登録を許可すべき印刷装置の識別情報を予め記憶し、前記認証処理部は、外部の印刷装置からユーザー識別情報とその印刷装置の識別情報とが受信されたとき、その印刷装置の識別情報が仮登録を許可すべき印刷装置の識別情報か否かを判断し、許可すべき印刷装置からのユーザー識別情報に限り仮登録を行うように制御してもよい。このようにすれば、同一のネットワークに接続された印刷装置のうち、限定してユーザー認証情報の仮登録を許可すべき印刷装置を管理者やユーザーが予め指定しておくことが可能になる。
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
本発明に係る実施形態の印刷システムを図1に示す。複数の印刷装置11〜14と複数のクライアント装置17、18がLAN等のネットワークを通じて通信可能に接続されている。クライアント装置17および18の具体例は、一般的なパーソナルコンピュータやプリントサーバー等である。クライアント装置17および18は、印刷ジョブを印刷装置11〜14に対して選択的に送信する機能を備える。印刷装置11〜14の具体例は、コピー、プリンタ、FAX、スキャナ、ドキュメントファイリングの各処理を実行する複合機であるが、少なくともプリンタ機能を備える印刷装置であればよい。
【0024】
図2は、各印刷装置のハードウェア構成を示す説明図である。図2は、印刷装置12を代表例としているが、他の印刷装置11、13、14も同様である。図2に示すように、印刷装置12は、I/O部31、認証情報送信部32、認証情報受信部33、認証処理部34、データ受信部35、データ解析部36、画像生成部38、エンジン制御部39、ジョブ制御部40、記憶部41、ユーザーインターフェース制御部(UI制御部)42を備える。
【0025】
I/O部31は、ネットワークを通じてクライアント装置あるいは他の印刷装置と通信を行う。
認証情報送信部32は、印刷ジョブに付加されたユーザーの情報(例えば、ユーザーID)をI/O部31を通して他の印刷装置に通知する。
認証情報受信部33は、通知した情報に該当するユーザーが登録されていたとき、I/O部31を通して他の印刷装置からそのユーザーの認証情報を取得する。
【0026】
認証処理部34は、印刷ジョブに付加されたユーザーの情報、あるいはユーザーが入力した情報と、印刷装置に登録されている、あるいは仮登録されたユーザーの認証情報を比較して印刷の可否を判定する。
データ受信部35は、I/O部31を通してクライアント装置から送信された印刷ジョブを受信する。
【0027】
データ解析部36は、印刷ジョブに含まれる印刷情報を解析する。
画像生成部38は、印刷情報に基づき、印刷ジョブに含まれる印刷データから印刷用の画像データを作成する。
エンジン制御部39は、画像を印刷するエンジンを駆動制御する。
ジョブ制御部40は、印刷ジョブの受信から印刷完了までのジョブの管理を行う。
記憶部41は、ハードディスク装置や不揮発性のメモリからなり、ユーザーの認証情報、印刷データを記憶する。
【0028】
各印刷装置11〜14は、入力操作のための操作パネル(図2に図示せず)をさらに備える。操作パネルには、ユーザーに情報を通知するための表示部およびユーザーからの指示を受け付ける指示入力部がある。表示部の具体的な態様は、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置であり、好ましくは、ドットマトリックス表示装置である。指示入力部の具体的な態様は、操作パネル上に配置された入力キーおよび/または表示部上でユーザーからの指示入力を受け付けるためのタッチパネルである。UI制御部42はその表示装置および入力キーを用いて提供されるユーザーインターフェースを制御する。
【0029】
図3は、各印刷装置11〜14の記憶部41にそれぞれ登録されるユーザーの認証情報の一例を示す説明図である。この実施形態において、ユーザー認証情報は5つの英数字の組み合わせからなる。図3の例では、印刷装置11にユーザー認証情報の一項目であるユーザーIDとして、「AAAAA」、「BBBBB」、「CCCCC」、「DDDDD」および「EEEEE」が登録されている。印刷装置12には、「FFFFF」、「GGGGG」が登録されている。また、印刷装置13には、「DDDDD」、「EEEEE」が登録されている。さらにまた、印刷装置14には、「XXXXX」、「YYYYY」および「ZZZZZ」が登録されている。
【0030】
図3で、ユーザーIDはユーザーに固有のIDであり、ユーザーごとに異なる文字、数字の列であればよい。さらに、記憶部41には、ユーザー認証情報の他の項目であるパスワードが登録されている。パスワードは、5つの英数字の組み合わせからなり、各ユーザーIDに対応して登録される、各パスワードは、そのユーザーIDの所有者であることを判定するために使用される。なお、ユーザー認証情報の他の項目として、ユーザー番号やE-Mailアドレスなど、ユーザーに関連する情報が付加されてもよい。
【0031】
図1に示す印刷システムにおいて、ネットワークに接続されている各印刷装置11〜14の記憶部41には、それぞれの印刷装置が利用可能なユーザーの認証情報が個別に登録され管理されている。各印刷装置に登録されているユーザーIDは、例えばユーザーの所属部門別に管理されている。従って、各印刷装置の管理者は、登録されているユーザーをその印刷装置が利用可能なユーザーとして把握できる。そして、各印刷装置に登録されたユーザーかその印刷装置を使用するのに適切なユーザーかどうかを把握することができる。
【0032】
また、前記管理者は、各ユーザーの印刷枚数の状況を把握することができる。なお、この発明の前提として、ネットワーク上の印刷装置は、互いに信頼関係がある状態で互いに通信可能であるものとする。即ち、図1のネットワークは、例えば、あるオフィスのイントラネットであり、同一会社内か、同一事業所内のメンバーのみをユーザーとする。ネットワークに接続された各印刷装置は、同一会社内か、同一事業所内に帰属する印刷装置である。例えば、印刷装置11は部門Aに帰属し、印刷装置12は部門Bに帰属するといった形態である。従って、関係の無い部門や他の会社のメンバーからの印刷はネットワークに侵入できず、印刷できない状態である。
【0033】
図4は、本印刷システムにおける認証情報の流れを示す説明図である。図4では、ネットワークには、図1に示す4台の印刷装置とクライアント装置17が接続された環境を示している。各印刷装置11〜14の記憶部に登録されたユーザーの認証情報は、図3に示すとおりである。いま、クライアント装置17から印刷装置12に対して、ユーザーID:AAAAA、パスワード:aaaaaを付加した印刷ジョブが送信されたものとする。このとき、印刷装置12には、ユーザーID:AAAAAが未登録のため、認証処理部34によるユーザー認証の結果、認証は失敗と判定する。認証の失敗に応答し、印刷装置12の認証処理部は、同一ネットワークに接続された他の印刷装置11、13、14に対して、ユーザーID:AAAAAが登録されているか否かを問い合わせる。図4の例では、印刷装置11にユーザーID:AAAAAが登録されている。このため、印刷装置11は印刷装置12に対して、ユーザーID:AAAAAの認証情報を送信する。
【0034】
図5は、印刷装置12が印刷ジョブ受信してから印刷の可否を判定するまでのフローチャートである。
印刷装置12の認証処理部34は、クライアント装置から送信された印刷ジョブを受信(ステップS501)すると、印刷データの解析を行い(ステップS502)、認証情報が含まれた印刷データであるか否かを判定(ステップS503)する。
認証情報を含む印刷データでないとき(ステップS503のNO)、印刷は不可(ステップS511)となり印刷終了となる。
【0035】
認証情報を含む印刷データであるとき(ステップS503のYES)、印刷装置の記憶部に登録されているユーザーの認証情報の検索を行い、認証情報が登録されているかどうかを判定し(ステップS504)、登録があるとき(ステップS504のYES)、そのユーザーのユーザーID・パスワード(ステップS505)と印刷ジョブに付加されたユーザーID、パスワードと比較して(ステップS506)、一致すれば(ステップS507のYES)印刷が許可(ステップS509)され印刷処理を実行(ステップS510)する。
【0036】
一致しなければ(ステップS507のNO)登録されたユーザーの認証情報から次の情報の取得を試み(ステップS508)、ステップS504に戻り一致するユーザーの認証情報を検索する。
最終的に一致するものが登録された認証情報にないとき(ステップS504のNO)、同一ネットワークに接続された他の印刷装置に対して、印刷ジョブに付加されたユーザーのユーザーIDを通知して認証情報の有無を照会し(ステップS512)、その結果の受信を待つ(ステップS513)。
【0037】
結果を受信して認証情報がないとき(ステップS514のNO)、印刷は不可(ステップS511)となり印刷終了となる。
認証情報があるとき(ステップS514のYES)、それが複数の印刷装置にあるかどうかを判定し(ステップS515)、あれば(ステップS515のYES)認証情報複数あり時の処理に移行(ステップS518)する。なければ(ステップS515のNO)そのユーザーのパスワードと印刷ジョブに付加されたパスワードを比較して(ステップS516)、一致すれば(ステップS517のYES)印刷許可判定時の処理に移行(ステップS520)し、一致しなければ(ステップS517のNO)印刷不可判定時の処理に移行(ステップS519)する。
【0038】
図6は、他の印刷装置から照会要求を受信したとき、その照会要求受けた印刷装置の認証処理部34処理を示すフローチャートである。
図5ステップS512で、認証情報の有無を照会要求したとき、その照会要求受けた他の印刷装置の認証処理部34は、認証情報照会の要求があるかどうかを監視している。認証情報処理部34は、照会要求があったとき(ステップS601のYES)、その通知されたユーザーIDを保存し(ステップS602)、印刷装置の記憶部に登録されているユーザーの認証情報の検索を行って、認証情報が登録されているかどうかを判定する(ステップS603)。登録があるとき(ステップS603のYES)、そのユーザーのユーザーID(ステップS604)と通知されたユーザーIDを比較する(ステップS605)。両者が一致すれば(ステップS606のYES)そのユーザーIDに対応する認証情報を通知する(ステップS608)。
【0039】
一致しなければ(ステップS606のNO)登録されたユーザーの認証情報から次の情報の取得を試み(ステップS607)、ステップS603に戻り一致するユーザーの認証情報を検索する。最終的に一致するものが登録された認証情報にないとき(ステップS603のNO)、認証情報がないことを通知する(ステップS609)。
【0040】
図7は、図5のステップS520の詳細な処理手順の例を示すフローチャートである。即ち、図5のステップS512で照会要求を行った印刷装置の認証処理部34が、他の印刷装置に登録されている認証情報を取得した結果、対象とする印刷ジョブを印刷許可と判定する処理を示すフローチャートである。さらに、前記認証処理部34は、操作パネルの所定の入力キーの押下に応答して仮登録されたユーザーの本登録を許可する処理を行う。
【0041】
図5のステップS520で前記認証処理部34が、他の印刷装置に登録されている認証情報を取得した結果、印刷装置が印刷許可と判定したとき、前記認証処理部34は、その通知された認証情報を仮登録として印刷装置の記憶部に記憶する(ステップS701)。仮登録通知ページの印刷が有効ならば(ステップS702のYES)、認証処理部34は、ジョブ制御部40に対してユーザーの本登録実行忘れを防止するためにユーザーID等を記載した仮登録通知ページを印刷する(ステップS703)ように要求する。仮登録通知ページの印刷が無効ならば(ステップS702のNO)、仮登録通知ページの印刷を要求しない。この仮登録通知ページの印刷を有効/無効はユーザーが変更可能な値であり、本実施例では1ページ目に印刷するものとする。
【0042】
次に、印刷が許可(ステップS704)されたことに応答して、ジョブ制御部40は、印刷データを生成し(ステップS705)、印刷処理を実行(ステップS706)するように印刷装置を制御する。また、印刷許可に応答して、UI制御部42は、仮登録されたユーザーの認証情報があることと本登録実行ボタンを操作パネルに表示させる(ステップS707)、印刷装置まで印刷物を取りに来たユーザーの操作を待つ。本登録実行ボタンが押下されたとき(ステップS708のYES)、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部に本登録し(ステップS709)、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS710)。
【0043】
一方、本登録実行ボタンが押下されない(ステップS708のNO)とき、UI制御部42は、タイムアウト時間を経過したかどうかを判定する(ステップS711)。タイムアウト時間が経過していなければ(ステップS711のNO)引き続きユーザーの操作を待つ。一方、タイムアウト時間を経過していれば(ステップS711のYES)、その旨を認証処理部34に通知する。通知に応答して、認証処理部34は、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS710)。
【0044】
図8は、図5のステップS520の図7と異なる処理手順の例を示すフローチャートである。即ち、図5のステップS512で照会要求を行った印刷装置の認証処理部34が、他の印刷装置に登録されている認証情報を取得した結果、対象とする印刷装置を印刷許可と判定し、パスワード入力で本登録を許可する処理を示すフローチャートである。
【0045】
この場合、認証処理部34は、印刷装置が印刷許可と判定したとき、その通知された認証情報を仮登録として印刷装置の記憶部に記憶する(ステップS801)。そして、仮登録通知ページの印刷が有効ならば(ステップS802のYES)、認証処理部34は、ユーザーの本登録実行忘れを防止するためにユーザーID等を記載した仮登録通知ページを印刷するよう、ジョブ制御部に要求する(ステップS803)。仮登録通知ページの印刷が無効ならば(ステップS802のNO)、仮登録通知ページの印刷を要求しない。この仮登録通知ページの印刷を有効/無効はユーザーが変更可能な値であり、本実施例では1ページ目に印刷するものとする。
【0046】
次に、印刷が許可(ステップS804)されたことに応答して、ジョブ制御部40は、印刷データを生成し(ステップS805)、印刷処理を実行(ステップS806)するように印刷装置を制御する。また、UI制御部42は、仮登録されたユーザーの認証情報があることとパスワード入力画面を操作パネルに表示させる(ステップS807)。そして、印刷装置まで印刷物を取りに来たユーザーの操作を待つ。パスワードが入力されたとき(ステップS808のYES)、UI制御部42は、入力されたパスワードと仮登録されているユーザーのパスワードを比較する(ステップS809)。両者が、一致すれば(ステップS810のYES)仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部に本登録し(ステップS811)、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS812)。一致しなければ(ステップS810のNO)仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS812)。
【0047】
パスワードが入力されない(ステップS808のNO)とき、UI制御部42は、タイムアウト時間を経過したかどうかを判定する(ステップS813)。タイムアウト時間が経過していなければ(ステップS813のNO)UI制御部42は、引き続きユーザーの操作を待つ。タイムアウト時間が経過したら(ステップS813のYES)、UI制御部42は、その旨を認証処理部34に通知する。通知に応答して、認証処理部34は、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS812)。
【0048】
図9は、図5のステップS519の詳細な処理手順を示すフローチャートである。即ち、認証処理部34が、印刷不可と判定したときの処理を示すフローチャートである。
ステップS519で、認証処理部34が印刷不可と判定したとき、その通知された認証情報を仮登録として印刷装置の記憶部に記憶する(ステップS901)。そして、ジョブ制御部40に対し、印刷データを生成し(ステップS902)、印刷処理は行わずに生成された印刷データの保存のみを行うように要求する(ステップS903)。
【0049】
また、印刷不可の判定結果に応答して、UI制御部は、仮登録されたユーザーの認証情報があることと保存された印刷データがあることを操作パネルに表示させる(ステップS904)。そして、印刷装置まで印刷物を取りに来たユーザーの操作を待つ。ユーザーID・パスワードが入力されたとき(ステップS905のYES)、認証処理部34は、入力されたユーザーID・パスワードと仮登録されているユーザーのユーザーID・パスワードを比較する(ステップS906)。
【0050】
両者が一致して(ステップS907のYES)かつ、パスワード入力による印刷が許可されていたとき(ステップS908のYES)、認証処理部34は印刷を許可する(ステップS909)。そして、保存された印刷データの印刷処理を実行(ステップS910)するようジョブ制御部に要求する。さらに、認証処理部34は、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部に本登録し(ステップS911)、仮登録されているユーザーの認証情報と保存された印刷データを削除する(ステップS912、ステップS913)。
【0051】
一方、前記ステップS906の判定で、両者が一致して(ステップS907のYES)かつ、パスワード入力による印刷が許可されていないとき(ステップS908のNO)、認証処理部34は、印刷処理を許可しない。そして、仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部に本登録し(ステップS911)、仮登録されているユーザーの認証情報と保存された印刷データを削除する(ステップS912、ステップS913)。
【0052】
ここで、パスワード入力による印刷を許可するか否かは、ユーザーあるいは印刷装置の管理者による変更が可能な設定であるものとする。
さらに、前記ステップS906の判定で、両者が一致しなければ(ステップS907のNO)、認証処理部34は、仮登録されているユーザーの認証情報と保存された印刷データを削除する(ステップS912、ステップS913)。
【0053】
なお、パスワードが入力されない(ステップS905のYES)とき、認証処理部は、タイムアウト時間が経過したかどうかを判定する(ステップS914)。タイムアウト時間が経過していなければ(ステップS914のNO)、UI制御部42は、引き続きユーザーの操作を待つ。タイムアウト時間が経過したら(ステップS914のYES)、UI制御部42は、その旨を認証処理部34に通知する。通知に応答して、認証処理部34は、仮登録されているユーザーの認証情報と保存された印刷データを削除する(ステップS912、ステップS913)。
【0054】
図10は、図5のステップS518の詳細な処理手順を示すフローチャートである。即ち、他の印刷装置から複数の認証情報を取得したときの処理を示すフローチャートである。
ステップS518で、認証処理部34が複数の認証情報を取得したとき、認証処理部34は、取得された複数の認証情報を仮登録として印刷装置の記憶部に記憶する(ステップS1001)。そして、印刷が許可(ステップS1002)された印刷データを生成し(ステップS1003)、印刷処理を実行(ステップS1004)するようにジョブ制御部40に要求する。
【0055】
さらに、UI制御部42は、仮登録されたユーザーの認証情報が複数あること(ステップS1005)と、ユーザーID、複数の印刷装置名を操作パネルに表示させる(ステップS1006)。そして、印刷装置まで印刷物を取りに来たユーザーの操作を待つ。印刷物を取りに来たユーザーは、印刷装置に表示された画面を見て、複数の認証情報の何れかを選択する。この場合、ユーザーは、例えば、利用頻度の高いほうの印刷装置を選択して本登録する。そのようにすれば、利用頻度の低い印刷装置よりもパスワードを忘れにくいといった利点がある。なお、変形例として、複数の認証情報があった場合、認証処理部34がその何れか一方を選択するようにしてもよい。例えば、認証情報と共にそのユーザーの利用枚数の情報を他の印刷装置から取得し、利用枚数の多い方を認証処理部34が選択して登録するようにしてもよい。このようにすれば、利用度の高い印刷装置と同じパスワードが本登録される。
【0056】
ユーザーの操作により、複数の認証情報から使用するユーザーの認証情報を選択するため印刷装置名が選択されたとき(ステップS1007のYES)、UI制御部42は、パスワード入力画面を操作パネルに表示させる。表示されたパスワード入力画面を用いてユーザーがパスワードを入力したとき(ステップS1008のYES)、認証処理部34は、入力されたパスワードと選択した印刷装置名に対応する仮登録されたユーザーのパスワードを比較する(ステップS1009)。両者が一致すれば(ステップS1010のYES)仮登録されているユーザーの認証情報を記憶部に本登録する(ステップS1011)。そして、全ての仮登録されたユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS1012)。一方、両者が一致しなければ(ステップS1010のNO)全ての仮登録されたユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS1012)。
【0057】
また、印刷装置が選択されない(ステップS1007のNO)、あるいはパスワードが入力されない(ステップS1008のNO)とき、UI制御部42は、タイムアウト時間を経過したかどうかを判定する(ステップS1013)。タイムアウト時間が経過していなければ(ステップS1013のNO)UI制御部42は引き続きユーザーの操作を待つ。タイムアウト時間が経過していれば(ステップS1013のYES)全ての仮登録されたユーザーの認証情報を記憶部から削除する(ステップS1012)。
【0058】
なお、図7から図10に記載されたタイムアウト時間の設定は、ユーザーあるいは印刷装置の管理者が任意に変更可能な値であるものとする。
この実施形態によれば、ユーザーは、指定した印刷装置にユーザー認証情報が登録されていなくても、他の印刷装置にユーザー認証情報が登録されていれば、仮登録のみで印刷できる。即ち、同一ネットワーク上への他の印刷装置へのユーザー認証情報の登録はユーザーの手による簡便な操作によって行うことができる。従って、ユーザー認証情報の登録作業のためにユーザーの手が煩わされ、あるいは、印刷装置管理者の手が煩わされることがない。
【0059】
しかも、印刷装置管理者はそれぞれの管理する各印刷装置の利用可能なユーザーを、各印刷装置に登録されている認証情報から把握できる。従って、各印刷装置の管理者は、他の印刷装置に登録されたユーザーまで把握しなくともよい。これに対して、例えば、特許文献1のように認証サーバでユーザーを一括管理する態様や、特許文献2のようにネットワーク上のいずれかの印刷装置に登録されたユーザーが各印刷装置を同等の権原で利用できる態様としてしまうと、各印刷装置の管理者が把握しなければならないユーザーの範囲が広くなり、登録されたユーザーか適切なユーザーかどうか、あるいは、各ユーザーの印刷枚数の状況などを適格に把握、確認するための負担(管理負担)が大きくなる。
【0060】
この点、本発明では、他の印刷装置にのみ登録されているユーザーは、仮登録の状態で例外的に印刷が許される。
なお、仮登録の機能を用いた印刷が乱用されるとユーザー管理の意味が無くなる。従って、仮登録利用については一定の制限(利用枚数制限や、累積印刷枚数のリミット、利用可能時間制限、利用可能な印刷機能の制限など)を行う機能を追加することが好ましい。ここで、制限される印刷機能とは、例えば、印刷単価の高いカラー印刷を禁止したり、ユーザーがシートを取りに来るまでに時間を要しても後続の印刷ジョブの邪魔になることのないようシートの排出先を特定あるいは制限したり、単価の高い特殊紙などのシートの選択を制限したりするものである。
【0061】
従って、従来の態様に比べると各印刷装置の管理者は、ネットワーク内のすべてのユーザーを管理、把握しなくともよく、管理負担が軽減される。
図11は、この発明の実施形態に係る前記ステップS707で、表示装置に表示される画面の一例である。印刷装置にユーザーID:AAAAAの認証情報が仮登録されたとこと示している。また、本登録実行の指示を入力するためのボタンが画面上に表示されている。
【0062】
図12は、この発明の実施形態に係る前記ステップS807で、表示装置に表示される画面の一例である。印刷装置にユーザーID:AAAAAの認証情報が仮登録されたとこと示している。また、ユーザーに対しパスワードの入力を要求するメッセージと入力されたパスワードを表示する領域が画面に表示されている。
【0063】
図13は、この発明の実施形態に係る前記ステップS904で、表示装置に表示される画面の一例である。印刷装置に認証情報が仮登録されたとこと示し、かつ、ユーザーにユーザーIDとパスワードの入力を要求するメッセージおよびユーザーIDとパスワードの内容が画面に表示されている。
【0064】
図14は、ステップS1006で表示装置に表示される画面の一例である。印刷装置にユーザーID:AAAAAの認証情報が仮登録されたとこと示し、ユーザーID:AAAAAの認証情報が登録されている他の印刷装置名が表示されている。さらに、何れかの印刷装置をユーザーに選択させるボタンが表示されている。表示されたボタンを押下してユーザーがいずれかの印刷装置を選択したら、表示内容は図12のパスワード入力要求画面に移行する。
【0065】
前述した実施の形態の変形例として、次のものがある。
ユーザーが仮登録されたユーザー認証情報を本登録した場合、印刷装置はその旨をその装置の管理者に通知するようにしてもよい。通知は、例えば、予め定められた端末に対して行われてもよく、あるいは、予め定められたメールアドレスにメールを送信するようにしてもよい。それらの連絡先は、所定の操作により、管理者が記憶部41に予め記憶させておく。
【0066】
この態様によれば、例えば、図7のステップS709、図8のステップS811、図9のステップS911および図10のステップS1011で、本登録がされた場合、それに続く処理ステップとして、認証処理部34は、記憶部41に記憶された管理者の連絡先を参照し、その連絡先へ新たなユーザー認証情報が本登録された旨の通知を送る。これによって、管理者は、管理対象の印刷装置に新たなユーザー認証情報が登録されたことを、本登録された都度知ることができる。
【0067】
さらに、異なる変形例について説明する。
印刷装置11〜14は、予め定められた個別の識別情報を有している。あるいは、各印刷装置が複数のグループのいずれかに分類されており、各印刷装置が属するグループを識別情報として有していてもよい。各印刷装置に登録されたユーザー認証情報を、他の印刷装置からの要求に応じて送信する場合、自己の印刷装置の識別情報を付して送信する。記憶部41には、他の印刷装置に登録されたユーザー認証情報を受信した場合、仮登録を認める印刷装置の識別情報が予め登録されている。その登録は、受信側の各印刷装置の管理者などにより予め登録されている。他の印刷装置からその印刷装置に登録されたユーザー認証情報とその印刷装置の識別情報とを受信した場合、受信側の印刷装置では送信元の印刷装置の識別情報を抽出し、抽出された識別情報が予め記憶部41に登録されているものと一致するか否かを判断し、その結果に基づいて仮登録を許可するか否かを決定する。
【0068】
具体的には、例えば、図5のステップS514で、認証情報(ユーザ識別情報)を受信したときは、認証情報を送信してきた外部の印刷装置の識別情報も取得する。取得した識別情報が、予め記憶部41に登録されている印刷装置またはグループと一致するかを判定する。一致した場合は、認証情報有り(ステップS514のYES)と判定して、以降の処理を実施する。一致しない場合は、認証情報無し(ステップS514のNO)と判定し、ルーチンはステップS511に移行する。
【0069】
このようにすることにより、同一のネットワークに接続された印刷装置のうち、特定の印刷装置に限定してユーザー認証情報の仮登録を行うことができる。例えば、同一の建屋内の複数部門の印刷装置が同一のネットワーク接続されている場合、同一部門の印刷装置に限定して仮登録を許可するように設定を行うことが可能になる。
【0070】
以上の態様の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る印刷システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の印刷装置の機能的な概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る各印刷装置に登録されたユーザーの認証情報の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る印刷システムの認証情報の送受を示す説明図である。
【図5】本発明の印刷装置における印刷ジョブ受信から印刷可否判定までの処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の印刷装置における照会要求に対する処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の印刷装置において、印刷許可と判定してボタン押下で本登録を許可する処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の印刷装置において、印刷許可と判定してパスワード入力で本登録を許可する処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の印刷装置において、印刷不可と判定したときの処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の印刷装置において、複数の認証情報が取得されたときの処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の印刷装置において、認証処理部が印刷許可と判定し、操作パネルのボタン押下で本登録を許可する場合に表示される画面の説明図である。
【図12】本発明の印刷装置において、認証処理部が印刷許可と判定し、パスワード入力で本登録を許可する場合に表示される画面の説明図である。
【図13】本発明の印刷装置において、認証処理部が印刷不可と判定したときに表示される画面を示す説明図である。
【図14】本発明の印刷装置において、認証処理部が複数の認証情報を取得したときに表示される画面の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
11、12、13、14:印刷装置
17、18:クライアント装置、PC
31:I/O部
32:認証情報送信部
33:認証情報受信部
34:認証処理部
35:データ受信部
36:データ解析部
38:画像生成部
39:エンジン制御部
40:ジョブ制御部
41:記憶部
42:UI制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理を受け付けるべきユーザーの認証に用いるユーザー認証情報の本登録を受け付ける指示入力部と、
本登録されたユーザー認証情報を記憶する記憶部と、
印刷データとその印刷データに付加されたユーザー識別情報とを受信する受信部と、
受信したユーザー識別情報と記憶部に記憶されているユーザー認証情報とを照合し、前記印刷データの印刷処理を受け付けるべきか否かを判断する認証処理部と、
該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されていない場合、ネットワークを介して接続された外部の印刷装置へ前記ユーザー識別情報を送信し得る認証情報送信部と、
前記送信に応答し、前記ユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が外部の印刷装置に本登録されている場合にそのユーザー認証情報を受信し得る認証情報受信部とを備え、
前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を仮登録状態のユーザー認証情報として前記記憶部に一時的に記憶部に記憶させかつ前記印刷データの印刷を仮登録状態で受け付けて実行するように制御し、かつ、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるよう制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
仮登録状態で受け付けられて実行される印刷処理は、本登録のレベルで実行される印刷処理に比して印刷枚数の上限、当該ユーザーの累積印刷枚数の上限、印刷処理可能な時間帯、および/または指定可能な印刷機能に制限が課される請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるために、前記指示入力部を用いた指示をユーザーに求める請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報を本登録するか否かの選択を前記ユーザーに行わせるために、前記印刷データの印刷処理と共に、仮登録状態のユーザー認証情報に係る内容を印刷処理するように制御する請求項1〜3の何れか一つに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記選択を行わせるための告知を表示する表示部をさらに備え、
前記ユーザー識別情報およびユーザー認証情報はユーザーIDとユーザーパスワードとを含んでなり、
前記認証処理部は、前記表示部に仮登録状態のユーザー認証情報に係るユーザーIDを表示部に表示させ、指示入力部からのユーザーパスワードの入力を求める表示を行わせる請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記認証処理部は、所定期間内に指示入力部からのユーザーパスワードの入力がない場合、または、入力されたユーザーパスワードが不正な場合に仮登録状態のユーザー認証情報を削除する請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
受信した印刷データを格納する印刷データ格納部をさらに備え、
前記認証処理部は、外部の印刷装置からユーザー認証情報が提供されなかった場合、前記印刷データの印刷処理を行わずにその印刷データを印刷データ格納部に格納し、その印刷データに付加されたユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が登録された場合に格納された印刷データを印刷し得るように制御する請求項1〜6の何れか一つに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ユーザー識別情報およびユーザー認証情報はユーザーIDとユーザーパスワードとを含んでなり、
前記認証処理部は、ユーザー識別情報に含まれるユーザーIDに該当するものが記憶部に記憶されていない場合、前記認証情報送信部を介してそのユーザーIDを外部の印刷装置へ送信し、前記認証情報受信部を介してそのユーザーIDと一致するユーザー認証情報を取得し、複数の認証情報が取得され、かつその認証情報に含まれるパスワードが異なるとき、複数のユーザー認証情報が取得された旨を表示部に表示させあるいは印刷させ、いずれかのユーザーパスワードをユーザーに選択させまたは入力させるように制御する請求項1〜7の何れか一つに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記記憶部は、装置の管理者用として予め定められ前記ネットワークを介して通信可能な連絡先をさらに記憶してなり、
前記認証処理部は、仮登録状態のユーザー認証情報が本登録された場合にその旨を前記連絡先へ通知する請求項1〜8の何れか一つに記載の印刷装置。
【請求項10】
前記認証情報受信部は、外部の印刷装置に登録されているユーザー識別情報をその登録がなされている印刷装置の識別情報と共に受信し、
前記記憶部は、前記認証情報受信部により受信されるべき印刷装置の識別情報のうち仮登録を許可すべき印刷装置の識別情報を予め記憶し、
前記認証処理部は、外部の印刷装置からユーザー識別情報とその印刷装置の識別情報とが受信されたとき、その印刷装置の識別情報が仮登録を許可すべき印刷装置の識別情報か否かを判断し、許可すべき印刷装置からのユーザー識別情報に限り仮登録をするように制御する請求項1〜9の何れか一つに記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷処理を受け付けるべきユーザーの認証に用いるユーザー認証情報の登録を受け付ける指示入力部と、
登録されたユーザー認証情報を記憶する記憶部と、
印刷データとその印刷データに付加されたユーザー識別情報とを受信する受信部と、
受信したユーザー識別情報と記憶部に記憶されているユーザー認証情報とを照合し、前記印刷データの印刷処理を受け付けるべきか否かを判断する認証処理部と、
該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されていない場合、ネットワークを介して接続された外部の印刷装置へ前記ユーザー識別情報を送信し得る認証情報送信部と、
前記送信に応答し、前記ユーザー識別情報に該当するユーザー認証情報が外部の印刷装置に登録されている場合にそのユーザー認証情報を受信し得る認証情報受信部とを備え、
前記認証処理部は、該当するユーザー認証情報が記憶部に記憶されている場合は前記印刷データの印刷を受け付けて実行するよう制御し、該当するユーザー認証情報を前記認証情報受信部を介し外部の印刷装置から受信した場合はそのユーザー認証情報を前記記憶部に記憶させて前記印刷データの印刷を実行するように制御することを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−128555(P2010−128555A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299529(P2008−299529)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】