説明

ライブラリ装置及びそのプログラム

【課題】 把持機構とカートリッジとの距離を認識することで把持機構によるカートリッジの取り損ねを防止する。
【解決手段】 把持機構5に取り付けられたセンサ6とカートリッジ1に取り付けられた半導体チップ2が通信を行い、半導体チップ2に記録された固有の情報をセンサ6が受信し、電磁波の強度を測定する。受信された電磁波の強度から、カートリッジ1と把持機構5との距離を認識しカートリッジ1の位置が認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライブラリ装置及びそのプログラムに係り、特にカートリッジとの間で通信可能なライブラリ装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
データを記録した磁気テープカートリッジ(以下、カートリッジと呼ぶ)を複数収納する収納棚(以下、カートリッジ収納棚と呼ぶ)を有し、このカートリッジ収納棚からカートリッジを取り出す機構(以下、カートリッジを取り出す機構を把持機構と呼ぶ)を備え、カートリッジを搬送する機構(以下、搬送機構と呼ぶ)と、カートリッジに記録/再生をする記録再生装置(以下ドライブと呼ぶ)を有し、カートリッジを管理する装置をライブラリ装置と呼ぶ。
【0003】
ライブラリ装置では、カートリッジが複数収納されているため、カートリッジ収納棚のどの位置にカートリッジが収納されているかを認識する必要がある。特許文献1には、バーコードリーダを用いてカートリッジ収納棚のどの位置にカートリッジが収納されているかを認識する発明が記載されている。また、特許文献2には、CCDカメラを使用してカートリッジの収納位置を認識する発明が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−22072号公報
【特許文献2】特開2004−93265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または特許文献2に記載されたバーコードリーダまたはCCDカメラのようなカートリッジの光学的な認識方式では、二つの問題点がある。
【0006】
第1の問題点は、カートリッジ及びカートリッジ収納棚の色やツヤ等による光の反射率の影響や外部からの光の進入による影響によってカートリッジの誤認識が発生し、カートリッジ収納棚に収納されたカートリッジの有無を認識出来ない場合がある点である。
【0007】
第2の問題点は、把持機構とカートリッジとの距離を認識していないため、カートリッジが前後に位置がずれて収納されている場合、その位置ずれの影響で把持機構がカートリッジを取り損ねる場合がある。特に、ドライブから排出されたカートリッジは、排出位置にずれが発生することがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点を解決するには、光学的な認識方式によらずカートリッジの有無を認識することと、把持機構とカートリッジの距離を認識することが必要である。
カートリッジに非接触型の半導体チップまたは無線ICタグを定位置に備え、カートリッジを把持する把持機構に半導体チップの情報を読み取るセンサを備える。
【0009】
カートリッジの有無を認識するには、カートリッジに備えた半導体チップと把持機構に備えたセンサとの間で無線通信を行い、半導体チップに記録された情報をセンサが読み取ることでカートリッジの有無を認識する。
把持機構とカートリッジの距離を認識するには、電磁波の強度は距離に反比例することから、半導体チップとセンサとの無線通信に応答された電磁波の強度を計測することにより、把持機構とカートリッジの距離を認識する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のライブラリ装置は、光学的な影響を受けないため設置環境に影響されない。また、把持機構とカートリッジの距離を認識するため、把持機構によるカートリッジの取り損ねのないライブラリ装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら説明する。ここで、図1はライブラリ装置の把持機構とドライブの位置関係を説明する側面図である。
【0012】
把持機構5は、固定つめ5bと可動つめ5aでカートリッジ1を掴んでドライブへの挿入、ドライブからの取り出し、カートリッジ棚への収容、カートリッジ棚からの取り出しをする部分である。把持機構5は、搬送機構4により上下方向(z軸方向)および紙面に垂直方向(y軸方向)に移動する。また、把持機構5は、ドライブ3の方向(x軸方向)へ伸縮する。その把持機構5の固定つめ5bの先端には、電磁波の送信と受信を行い無線通信するセンサ6が取り付けられている。
【0013】
また、ドライブ3から排出されたカートリッジ1には、センサ6と通信できる無線通信できる非接触型の半導体チップまたは無線ICタグ(以下、非接触型の半導体チップと無線ICタグのことを半導体チップと略す)として、半導体チップ2を予め定めた位置に固定している。この半導体チップ2とセンサ6は、それぞれ無線ICタグと無線ICリーダライタである。また、この半導体チップ2はメモリが内蔵され、固有の情報を記録しておく。センサ6は、この固有の情報を認識することで、カートリッジ1に対する各種認識を行う。
【0014】
図2を用いて、ライブラリ装置の全体構成を説明する。ここで図2はライブラリ装置のブロック図である。図2に示すように、ライブラリ装置100は、図1で説明した各部以外に、カートリッジ1を収納するカートリッジ収納棚7と、ライブラリ制御部8を有する。所望のカートリッジ1に対して記録/再生動作が行う場合、ライブラリ制御部8によって搬送機構4と把持機構5が制御され、カートリッジ収納棚7に収納されたカートリッジ1を精査する。把持機構5に備え付けたセンサ6によってカートリッジ1に取り付けた半導体チップ2を認識し、y軸およびz軸方向に所定量移動した後、把持機構5をx軸方向に延伸して、所望のカートリッジ1を把持する。把持されたカートリッジ1は、搬送機構4によってドライブ3まで搬送され挿入される。そこで、ドライブ3に挿入されたカートリッジ1に対してデータの記録/再生が行われる。
【0015】
次に、図3を参照して、半導体チップのカートリッジへの取り付け位置を説明する。ここで、図3はカートリッジ前面上方からの斜視図である。図3において、半導体チップ2は、カートリッジ1前面の左端に1個搭載している。半導体チップ2の搭載箇所は、図1で説明した把持機構5に取り付けたセンサ6と通信できる位置に取り付ける必要がある。また、半導体チップ2は、カートリッジ1の前面の上下方向中央、左右方向は左端に固定されている。一方、センサ6は把持機構5の下側の固定つめ5bに設けられているので、通信時の把持機構の位置と、把持するためにx軸方向に延伸するときの把持機構の位置はyz面内で異なる。
【0016】
図4を参照して、半導体チップに記録された情報を説明する。ここで、図4は半導体チップのメモリに記録されている情報を説明する図である。半導体チップのメモリ内に記録された情報40は、カートリッジシリアル情報41とカートリッジ種別情報42である。カートリッジシリアル情報41は、カートリッジに固有の情報である。カートリッジシリアル情報41は、カートリッジの識別やカートリッジの存在の有無に利用する。
【0017】
カートリッジ種別情報42は、カートリッジの大きさ(厚さ)421、カートリッジの重さ422等である。カートリッジ種別情報42は、カートリッジ1の種類を識別するのに利用し、カートリッジの固有の大きさや重さ等の情報を保有するので、カートリッジの種類により大きさが違ったりする場合でも、把持機構が大きさの情報を元にカートリッジを掴む。
【0018】
また、半導体チップは書き込み可能なメモリを持たなくても、センサから電磁波を受けて、チップ固有の信号を返すタイプの半導体チップでもよい。この場合、ライブラリ制御部にチップ固有の信号とカートリッジシリアル情報とカートリッジ種別情報とを対応付けるテーブルを持てば、把持機構が大きさの情報を元にカートリッジを掴むことができる。
【0019】
図5は、センサと半導体チップおよびライブラリ制御部との間の通信を説明するブロック図である。図5において、ライブラリ装置がカートリッジ1の有無を認識する場合、センサ6と半導体チップ2との間で無線通信が行われる。センサ6は、半導体チップ2と通信を行うセンサ部61と演算や制御処理を行うセンサ制御部62で構成されている。一方、半導体チップ2のメモリ21には、カートリッジ1の情報が記録してある。この情報が、図5を用いて説明をしたカートリッジシリアル情報とカートリッジ種別情報である。
【0020】
カートリッジ1の前に移動した把持機構5のセンサ6が、カートリッジシリアル情報読み出し用の電波を半導体チップ2に向けて送信する。この電波によって半導体チップ2が起動し、センサ6にカートリッジシリアル情報を返信する。カートリッジシリアル情報をセンサ6のセンサ部61よって受信し、センサ制御部62によりカートリッジシリアル情報が確認出来るかどうかでカートリッジ1の有無の認識を行う。カートリッジシリアル情報が確認出来た場合は、カートリッジ1が存在していることを示す。逆に、カートリッジシリアル情報が確認出来ない場合は、カートリッジ1が存在していないことを意味する。
【0021】
センサ制御部62によりカートリッジ1が存在していると確認出来た場合、ライブラリ制御部8のメモリ82に格納されたプログラム821とMPU(Micro Processing Unit、マイクロプロセッサ)81とにより、把持機構5とカートリッジ1との距離が受信された電磁波の強度から算出され、この距離を元にして把持機構5がカートリッジ1を把持する動作が行われる。
【0022】
図6を参照して、カートリッジの位置を認識する方法を説明する。ここで図6はセンサ−半導体チップ間距離と、センサが受信する半導体チップからの電界強度の関係を示す図である。半導体チップからの電磁波の電界強度は、距離に反比例して強度が減少していく成分と、電波の半波長に依存する成分が合成された強度である。本実施例では、2.45GHzの放射電磁波を用い、その電磁波のエネルギーを受け取った半導体チップ2が電磁波のエネルギーを電源として駆動し、センサ6に対して応答の通信をする。
【0023】
図6に示すように、ある電界強度に対して距離は一意に定まらない。しかし、ピーク(極大値)、ボトム(極小値)およびピークからボトムへの中間点の電界強度は一意の距離を与えるので、4分の1波長程度の範囲を遠ざかる方向に移動しながら3点で測定し、変化が増→減なら2番目の測定点をピークと看做す。同様に、変化が減→増なら2番目の測定点をボトムと看做す。また、増→増または減→減なら、それぞれ2番目の測定点をボトムからピークへの中間点、ピークからボトムへの中間点と看做せる。検出したピーク、ボトムおよびピークからボトムへの中間点のx座標は一意に決まるので、このx座標値に掴み代を加えた値だけ、把持機構5の可動つめ5aを開けた状態で、図2のx方向に移動して、可動つめ5aを閉じれば、確実に把持することができる。なお、x軸方向への移動の前に把持機構5をyz面内で移動することは、図3を用いて説明した通りである。
【0024】
電界強度が予め定めた量に満たない場合、把持できないカートリッジの位置であると認識し、カートリッジ1の挿入/再排出のリトライ動作を行った後、再度センサ6で受信された電磁波の強度を計測しaの範囲内にある場合はカートリッジ1を把持する動作を行う。前記のリトライ動作は例えば3回繰り返した場合、エラーとしてリトライ動作終了処理をするを行う。
【0025】
図7を用いてセンサと半導体チップとの距離の認識および把持動作を説明する。ここで図7は、データの再生/記録が終わったドライブから排出されたカートリッジ把持動作を説明するフロー図である。
【0026】
ライブラリ制御部は、データの再生/記録が終わったドライブにカートリッジを排出指示を送信し、同時に把持機構を搬送機構によりドライブの前に移動させる(S701)。この移動は、把持機構の固定つめをカートリッジの半導体チップ部にyz面内で当接させる量だけ行う。次に、センサが半導体チップを認識できるか確認する(S702)。この結果がYesなら、ライブラリ制御部は、半導体チップから電磁波の強度が予め設定した値以上か確認する(S703)。この結果がYesなら、把持機構とカートリッジとのx座標差を演算し、yz面内でカートリッジ把持位置に移動し、さらに演算したx座標差に掴み代を加えた値だけ、x方向に移動して、カートリッジを把持し(S704)、終了する。一方、ステップ702またはステップ703でNoの場合、ライブラリ制御部は、ドライブにカートリッジの再挿入および再排出であるリトライ動作を実施させる(S705)。リトライカウンタをインクリメントし、リトライ動作がN回実施されたか判定する(S706)。Noならステップ702に戻り、Yesならエラー処理を実施し(S707)、終了する。なお、図7では把持で終了しているが、当然カートリッジ収容棚に移動し、カートリッジを棚に収容し、把持を解除する。
【0027】
図8を用いてセンサと半導体チップとの距離認識および把持動作の他の実施例を説明する。ここで図8は、データの再生/記録が終わったドライブから排出されたカートリッジ把持動作を説明する他のフロー図である。
【0028】
ライブラリ制御部は、データの再生/記録が終わったドライブにカートリッジを排出指示を送信し、同時に把持機構を搬送機構によりドライブの前に移動させる。次に、センサが半導体チップを認識できるか確認する(S801)。この結果がYesなら、ライブラリ制御部は、半導体チップから電磁波の強度が予め設定した値以上か確認する(S802)。この結果がYesなら、把持機構とカートリッジとのx座標差を演算し、yz面内でカートリッジ把持位置に移動し、さらに演算したx座標差に掴み代を加えた値だけ、x方向に移動して、カートリッジを把持し(S803)、終了する。一方、ステップ801またはステップ802でNoの場合、ライブラリ制御部は、把持機構を予め定めたαだけカートリッジ方向に移動する(S804)。ここで、ライブラリ制御部は、再度半導体チップから電磁波の強度が予め設定した値以上か確認する(S805)。この結果がYesなら、ステップ803に遷移する。Noなら、ライブラリ制御部は、ドライブにリトライ動作を実施させる(S806)。リトライカウンタをインクリメントし、リトライ動作がN回実施されたか判定する(S807)。Noならステップ801に戻り、Yesならエラー処理を実施し(S808)、終了する。なお、図8では把持で終了しているが、当然カートリッジ収容棚に移動し、カートリッジを棚に収容し、把持を解除する。
【0029】
図7および図8では、ドライブからカートリッジ棚へのカートリッジの移動を説明したが、カートリッジ棚からドライブへの移動もリトライ動作を除いて同様に実施する。
なお、上述した実施例では記録メディアとして磁気テープで説明したが、メディアは磁気テープに限られずDVDであっても良いし、これらに限られない。
【0030】
本実施例に拠れば、光学的な影響を受けないため設置環境に影響されないライブラリ装置とすることができる。また、把持機構とカートリッジの距離を認識するため、把持機構によるカートリッジの取り損ねのないライブラリ装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ライブラリ装置の把持機構とドライブの位置関係を説明する側面図である。
【図2】ライブラリ装置のブロック図である。
【図3】カートリッジ前面上方からの斜視図である。
【図4】半導体チップのメモリに記録されている情報を説明する図である。
【図5】センサと半導体チップおよびライブラリ制御部との間の通信を説明するブロック図である。
【図6】センサ−半導体チップ間距離と、センサが受信する半導体チップからの電界強度の関係を示す図である。
【図7】データの再生/記録が終わったドライブから排出されたカートリッジ把持動作を説明するフロー図である。
【図8】データの再生/記録が終わったドライブから排出されたカートリッジ把持動作を説明する他のフロー図である。
【符号の説明】
【0032】
1…カートリッジ、2…半導体チップ、3…ドライブ、4…搬送機構、5…把持機構、6…センサ、7…カートリッジ収納棚、8…ライブラリ制御部、9…センサ部、21…メモリ、61…センサ部、62…センサ制御部、81…マイクロプロセッサ、82…メモリ、100…ライブラリ装置、821…プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアを保持したカートリッジを収容するカートリッジ収容棚と、メディアに対して記録/再生するドライブと、前記カートリッジ収容棚と前記ドライブとの間でカートリッジを移動する移動機構と、前記ドライブと前記移動機構を制御する制御部とからなるライブラリ装置であって、
前記移動機構は、カートリッジを把持可能でx軸方向に延伸する把持部と、前記把持部をyz平面内で移動可能な搬送機構とからなり、
前記把持部は、カートリッジに取り付けた半導体チップと通信可能なセンサを有し、
前記把持部のカートリッジ把持に先立って、前記センサによるカートリッジとの距離測定を実施することを特徴とするライブラリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のライブラリ装置であって、
前記距離測定は複数のx軸方向測定点で受信された電磁波の電界強度から行うことを特徴とするライブラリ装置。
【請求項3】
コンピュータを、カートリッジ収容棚とドライブとの間でカートリッジを移動する移動機構の制御手段と、カートリッジに取り付けた半導体チップと通信可能なセンサを距離測定手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−351138(P2006−351138A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178758(P2005−178758)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】