説明

ラジアルタービン及び過給機

【課題】ラジアルタービン31のタービン効率を高めて、ラジアルタービン31の性能を向上させること。
【解決手段】タービンハウジング33内におけるタービンインペラ35とガス排出口61との間に複数枚のガイド静翼63が周方向に間隔を置いて配設され、タービン動翼39の軸方向の長さLiに対するタービン動翼39の後縁39Pからガイド静翼63の前縁63Fまでの軸方向の長さLvの比率(Lv/Li)の比率が30%〜70%に設定され、タービン動翼39の後縁39Pの翼高さHiに対するガイド静翼63の翼高さHvの比率(Hv/Hi)が10%〜40%に設定されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス等のガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービン等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両用過給機に用いられるラジアルタービンについて種々の開発が行われており、ラジアルタービンの一般的な構成等について説明すると、次のようになる。
【0003】
ラジアルタービンは、タービンハウジングを具備しており、タービンハウジングは、内側に、シュラウド(内壁)を有している。また、タービンハウジング内には、タービンインペラが回転可能に設けられており、タービンインペラは、軸心周りに回転可能なホイール、及びホイールの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ先端縁(外縁)がタービンハウジングのシュラウドに沿うように延びた複数枚のタービン動翼を備えている。なお、ホイールは、車両用過給機におけるベアリングハウジングにベアリングを介して回転可能に設けられたロータ軸(タービン軸)の一端部に連結してある。
【0004】
タービンハウジングの適宜位置には、エンジンからの排気ガスを取入れるガス取入口が形成されている。また、タービンハウジングの内部には、環状(渦巻き状)のタービンスクロール流路がタービンインペラを囲むように形成されており、タービンスクロール流路は、ガス取入口に連通してある。更に、タービンハウジングにおけるタービンインペラの出口側(下流側)には、排気ガスを排出するガス排出口が形成されている。
【0005】
従って、ガス取入口から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路を経由してタービンインペラの入口側から出口側へ流通させる。これにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸を回転させることができる。
【0006】
なお、車両用過給機に用いられるものではないが、特許文献1に示すラジアルタービンにあっては、タービンハウジング内におけるタービンインペラとガス排出口との間に複数枚のガイド静翼が周方向に間隔を置いて配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−264106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ラジアルタービンの運転状態等に応じて、排気ガスの流量が少なくなると、タービンインペラ(タービン動翼)からの排気ガスの絶対流出角が大きくなり、大きなスワール成分(旋回成分)を持った流れ(排気ガスの流れ)がタービンハウジングのシュラウド側に寄せられることなる。そのため、タービンインペラの下流側(出口側)において、圧力損失(エネルギー損失)が増大して、ラジアルタービンのタービン効率の低下を招くという問題がある。
【0009】
なお、特許文献1に示すラジアルタービンにあっては、スワール成分を持った流れを整流できるように、タービン動翼の軸方向の長さとタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さとの関係等が設定されているが、これらの関係は十分な解析に基づくものでなく、タービンインペラの下流側における圧力損失の増大を抑えることについて十分な確証が得られていないものである。
【0010】
そこで、本発明は、前述の課題を解決することができる、新規な構成のラジアルタービン等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、前述の問題を解決するため、図4に示すように、タービンハウジング内におけるタービンインペラとガス排出口との間に複数枚のガイド静翼が周方向に間隔を置いて配設されたラジアルタービを解析対象とし、次のような2つのCFD(Computational Fluid Dynamics)解析を行った。なお、解析対象に係るタービンインペラにおいて、ガイド静翼の前縁における流れ方向に沿った断面形状は半円形状(曲がり形状の一例)になっている。
【0012】
まず、タービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)を20%に設定した上で、ガスの流量が小流量の場合(タービンインペラからのガスの絶対流出角が75度の場合)と、ガスの流量が大流量の場合(タービンインペラからのガスの絶対流出角が10度の場合)に分けて、タービン動翼の軸方向の長さ(具体的には、タービン動翼における前縁のハブ部から後縁のチップ部までの軸方向の間隔)Liに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さ(具体的には、タービン動翼の後縁のチップ部からガイド静翼の後縁までの軸方向の長さ)Lvの比率(Lv/Li)をパラメータとして変化させつつ、ガス排出口の評価位置における圧力損失についてCFD解析(1つ目のCFD解析)を行った。そして、1つ目のCFD解析結果として、比率(Lv/Li)とガス排出口の評価位置における圧力損失との関係をまとめると、図5に示すようになる。なお、図5は、 比率(Lv/Li)とガス排出口の評価位置における圧力損失との関係を示す図であって、ガス排出口の評価位置における圧力損失は、無次元化されている。
【0013】
続いて、比率(Lv/Li)を50%に設定した上で、ガスの流量が小流量の場合と、ガスの流量が大流量の場合に分けて、タービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)をパラメータとして変化させつつ、ガス排出口の評価位置における圧力損失についてCFD解析(2つ目のCFD解析)を行った。そして、2つ目のCFD解析結果として、比率(Hv/Hi)とガス排出口の評価位置における圧力損失との関係をまとめると、図6に示すようになる。なお、図6は、比率(Hv/Hi)とガス排出口の評価位置における圧力損失との関係を示す図であって、ガス排出口の評価位置における圧力損失は、無次元化されている。
【0014】
そして、本願の発明者は、前述のCFD解析結果に基づいて、タービン動翼の軸方向の長さLiに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さLvの比率(Lv/Li)が30%〜70%に設定され、かつタービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)が10%〜40%に設定されていると、ガスの流量が小流量、大流量のいずれの場合でも、ガス排出口の評価位置における圧力損失を十分に低減できるという、新規な知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。なお、前述の新規な知見は、タービン動翼の軸方向の長さとタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さとの関係等が適切に設定されることにより、複数枚のガイド静翼によってスワール成分(旋回成分)を持った流れ(排気ガスの流れ)が効率良く整流されたことによるものと考えられる。
【0015】
本発明の第1の特徴は、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービンであって、内側にシュラウド(内壁)を有したタービンハウジングと、前記タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心(タービンインペラの軸心)周りに回転可能なホイール、及び前記ホイールの外周面に間隔を置いて設けられかつ先端縁が前記タービンハウジングの前記シュラウドに沿うように延びた複数枚のタービン動翼を備えたタービンインペラと、を具備し、前記タービンハウジングにガスを取入れるガス取入口が形成され、前記タービンハウジングの内部に前記ガス取入口に連通した環状(渦巻き状)のタービンスクロール流路が前記タービンインペラを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記ガイド静翼の出口側にガスを排出するガス排出口が形成され、更に、前記タービンハウジング内における前記タービンインペラと前記ガス排出口の間に周方向に間隔を置いて配設され、ガスの流れを整流する複数枚のガイド静翼と、を具備してあって、前記タービン動翼の軸方向(前記タービンインペラの軸方向)の長さに対する前記タービン動翼の後縁から前記ガイド静翼の前縁までの軸方向の長さの比率は、30%〜70%に設定され、前記タービン動翼の後縁の翼高さに対する前記ガイド静翼の翼高さの比率(翼高さ比又は比率)は、10%〜40%に設定されているようになっていることを要旨とする。
【0016】
なお、「タービンハウジングのシュラウド」とは、例えば可変ノズルユニットのシュラウドリング等、前記タービンハウジングの一部に相当する部材の内壁を含む意である。
【0017】
本発明の第1の特徴によると、前記ガス取入口から取入れたガスを前記タービンスクロール流路を経由して前記タービンインペラの入口側から出口側へ流通させる。これにより、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させることができる。
【0018】
そして、前記タービン動翼の軸方向の長さに対する前記タービン動翼の後縁から前記ガイド静翼の前縁までの軸方向の長さの比率が30%〜70%に設定され、前記タービン動翼の後縁の翼高さに対する前記ガイド静翼の翼高さの比率が10%〜40%に設定されているため、前述の新規な知見を適用すると、前記ラジアルタービンの運転中に、ガスの流量が少なくなって、前記タービンインペラ(前記タービン動翼)からのガスの絶対流出角が大きくなっても、前記タービンインペラの下流側における圧力損失(エネルギー損失)の増大を抑えることができる。
【0019】
本発明の第2の特徴は、エンジン側に供給される空気を過給する過給機において、第1の特徴からなるラジアルタービンを具備したことを要旨とする。
【0020】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記ラジアルタービンの運転中に、前記タービンインペラからのガスの絶対流出角が大きくなっても、前記タービンインペラの下流側における圧力損失の増大を抑えることができるため、前記ラジアルタービンのタービン効率を高めて、前記ラジアルタービンの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は、図2における矢視部IAの拡大図、図1(b)は、図1(a)における矢視部IB-IBに沿った断面図である。
【図2】図2は、図3における矢視部IIの拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機を示す断面図である
【図4】図4は、解析対象としてのタービンインペラを示す断面図である。
【図5】図5は、タービン動翼の軸方向の長さに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さの比率と、ガス排出口の評価位置における圧力損失との関係を示す図である。
【図6】図6は、タービン動翼の後縁の翼高さに対するガイド静翼の翼高さの比率と、ガス排出口の評価位置における圧力損失との関係を示す図である。
【図7】図7は、タービン動翼の軸方向の長さに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さの比率と、タービン効率との関係を示す図である。
【図8】図8は、タービン動翼の後縁の翼高さに対するガイド静翼の翼高さの比率と、タービン効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図1から図3、及び図7を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向を指し、「FR」は、後方向を指してある。
【0024】
図3に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型の車両用過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型の車両用過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0025】
可変容量型の車両用過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、前後方向へ延びたタービン軸(ロータ軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、タービン軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0026】
ベアリングハウジング3の後側には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサ11が配設されており、コンプレッサ11の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
ベアリングハウジング3の前側には、コンプレッサハウジング13が設けられており、コンプレッサハウジング13内には、コンプレッサインペラ15が回転可能に設けられている。そして、コンプレッサインペラ15の構成要素について説明すると、コンプレッサハウジング13内には、ホイール17が設けられており、ホイール17は、タービン軸9の前端部に固定ナット19を介して一体的に連結してあって、コンプレッサインペラ15の軸心(換言すれば、タービン軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、ホイール17の外周面は、コンプレッサインペラ15の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、ホイール17の外周面には、複数枚のコンプレッサ動翼21が周方向に間隔を置いて設けられている。
【0028】
コンプレッサハウジング13におけるコンプレッサインペラ15の入口側(コンプレッサハウジング13の前側)には、空気を取入れる空気取入口23が形成されており、空気取入口23は、接続管(図示省略)を介してエアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング13との間におけるコンプレッサインペラ15の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路25が形成されており、ディフューザ流路25は、空気取入口23に連通してある。更に、コンプレッサハウジング13の内部には、環状(渦巻き状)のコンプレッサスクロール流路27がコンプレッサインペラ15を囲むように形成されており、コンプレッサスクロール流路27は、ディフューザ流路25に連通してある。そして、コンプレッサハウジング13の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口29が形成されており、空気排出口29は、コンプレッサスクロール流路27に連通してあって、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0029】
ベアリングハウジング3の後側には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるラジアルタービン31が配設されており、ラジアルタービン31の具体的な構成は、次のようになる。
【0030】
図2及び図3に示すように、ベアリングハウジング3の後側には、タービンハウジング33が設けられており、タービンハウジング33は、内側に、シュラウド(具体的に、後述のシュラウドリングの内壁)Sを有している。また、タービンハウジング33内には、タービンインペラ35が回転可能に設けられている。そして、タービンインペラ35の構成要素について説明すると、タービンハウジング33内には、ホイール37が設けられており、ホイール37は、タービン軸9の前端部に一体的に連結してあって、タービンインペラ35の軸心(換言すれば、タービン軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、ホイール37の外周面は、タービンインペラ35の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、ホイール37の外周面には、複数枚のタービン動翼39が周方向に間隔を置いて設けられており、各タービン動翼39の先端縁(外縁)39Tは、タービンハウジング33のシュラウドSに沿うように延びている。
【0031】
タービンハウジング33内には、可変ノズルユニット41がタービンインペラ35を囲むように配設されている。より具体的には、タービンハウジング33内におけるタービンインペラ35の径方向外側(入口側)には、ノズルリング43が取付リング45を介して設けられており、ノズルリング43には、シュラウドリング47が複数(1つのみ図示)の連結ピン49を介して一体的かつ前後に離隔して設けられており、ノズルリング43及びシュラウドリング47は、タービンハウジング33の一部に相当するものとして捉えることができる。
【0032】
ノズルリング43とシュラウドリング47との間、換言すれば、タービンハウジング33内におけるタービンインペラ35の入口側には、タービンインペラ35側に供給される排気ガスの流路面積を可変する複数枚の可変ノズル51が周方向に間隔を置いて配設されており、各可変ノズル51は、タービンインペラ35の軸心Cに平行な軸心周りに回転可能(揺動可能)である。ここで、複数枚の可変ノズル51のノズル軸53は、特開2009−243431号公報又は特開2009−243300号公報に示すように、同期機構55によって連動連結してあって、アクチュエータ(図示省略)によって同期して回転するものである。
【0033】
タービンハウジング33の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口57が形成されており、ガス取入口57は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング33の内部には、環状(渦巻き状)のタービンスクロール流路59が複数枚の可変ノズル51及びタービンインペラ35を囲むように形成されており、タービンスクロール流路59は、ガス取入口57に連通してある。更に、タービンハウジング33におけるタービンインペラ35の出口側(タービンハウジング33の前側)には、排気ガスを排出するガス排出口61が形成されており、ガス排出口61は、タービンスクロール流路59に連通してあって、接続管(図示省略)を介して排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0034】
続いて、本発明の実施形態に係るラジアルタービン31の特徴部分について説明する。
【0035】
複数枚のタービン動翼39は、特開2008−133765号公報に示すように、ラジアル要素に基づいて構成されており、具体的には、タービンインペラ35の径方向に沿った任意の断面において、タービンインペラ35の軸心Cから放射状(タービンインペラ35の径方向外側)に延びるように構成されている。
【0036】
図1(a)(b)及び図2に示すように、タービンハウジング33内におけるタービンインペラ35とガス排出口61との間には、排気ガスの流れを整流する複数枚のガイド静翼63が周方向に間隔を置いて配設されている。また、各ガイド静翼63の前縁63Fにおける排気ガスの流れ方向に沿った断面形状は、半円形状(曲がり形状の一例)になっている。更に、各ガイド静翼63の前縁63Fの翼角θaは、30〜50度(具体的には、40度)に設定されており、各ガイド静翼63の後縁63Pの翼角θbは、0度に設定されている。なお、各ガイド静翼63の前縁63Fにおける前記断面形状が曲がり形状になる代わりに、ストレート形状(直線形状)になるようにしても構わなく、各ガイド静翼63の前縁63Fから後縁63Pにおける排気ガスの流れ方向に沿った断面形状が滑らかな曲線形状を呈するようにしても構わない。
【0037】
タービン動翼39の軸方向(タービンインペラ35の軸方向)の長さ(具体的には、タービン動翼39における前縁39Fのハブ部から後縁39Pのチップ部までの軸方向の間隔)Liに対するタービン動翼39の後縁39Pからガイド静翼63の前縁63Fまでの軸方向の長さ(具体的には、タービン動翼39の後縁39Pのチップ部からガイド静翼63の前縁63Fまでの軸方向の長さ)Lvの比率(Lv/Li)の比率は、30%〜70%に設定されている。また、タービン動翼39の後縁39Pの翼高さHiに対するガイド静翼63の翼高さHvの比率(Hv/Hi)は、10%〜40%に設定されている。
【0038】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
(i) 本発明の実施形態の通常の作用
ガス取入口57から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路59を経由してタービンインペラ35の入口側から出口側(排気ガスの流れ方向から見て上流側から下流側)へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、タービン軸9及びコンプレッサインペラ15をタービンインペラ35と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口23から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路25及びコンプレッサスクロール流路27を経由して空気排出口29から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる。
【0040】
ここで、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル51を絞る方向(閉じる方向)へ同期して回転させることにより、タービンインペラ35側に供給される排気ガスの流路面積(可変ノズル51のスロート面積)を小さくして、排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ35の仕事量を十分に確保する。一方、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が高速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル51を開く方向へ同期して回転させることにより、可変ノズル51のスロート面積を大きくして、タービンインペラ35側に多くの排気ガスを供給する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、タービンインペラ35によって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる。
【0041】
(ii) 本発明の実施形態の特有の作用
タービン動翼39の軸方向の長さLiに対するタービン動翼39の後縁から前記ガイド静翼の前縁までの軸方向の長さ63の前縁63Fまでの軸方向の長さLvの比率(Lv/Li)の比率が30%〜70%に設定され、タービン動翼39の後縁39Pの翼高さHiに対するガイド静翼63の翼高さHvの比率(Hv/Hi)が10%〜40%に設定されているため、前述の新規な知見を適用すると、ラジアルタービン31の運転中に、排気ガスの流量が少なくなって、タービンインペラ35(タービン動翼39)からの排気ガスの絶対流出角が大きくなっても、タービンインペラ35の下流側における圧力損失(エネルギー損失)の増大を抑えることができる。特に、各ガイド静翼63の前縁63Fにおける前記断面形状がFにおける前記断面形状が半円形状になっているため、ガイド静翼63の前縁63Fに対する排気ガスの衝突損失を低減して、タービンインペラ35の下流側における圧力損失の増大をより十分に抑えることができる。
【0042】
(iii)本発明の実施形態の効果
本発明の実施形態によれば、ラジアルタービン31の運転中に、タービンインペラ35からのガスの絶対流出角が大きくなっても、タービンインペラ35の下流側における圧力損失の増大をより十分に抑えることができるため、ラジアルタービン31のタービン効率を高めて、ラジアルタービン31の性能を向上させることができる
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、ラジアルタービン31に適用した技術的思想を、可変ノズルユニット41を具備していないタービンに適用したり、ラジアル要素に基づいて構成された複数枚のタービン動翼39に代えて、ラジアル要素に基づいて構成されていない複数枚のタービン動翼(図示省略)を用いたりする等、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、ラジアルタービン31だけでなく、ラジアルタービン31を具備した可変容量型の車両用過給機1にも及ぶものである。
【実施例】
【0043】
本発明の実施例について図7及び図8を参照して説明する。
【0044】
タービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)を20%に設定した上で、ガスの流量が小流量の場合において、タービン動翼の軸方向の長さLiに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さLvの比率(Lv/Li)をパラメータとして変化させつつ、タービン効率についてCFD解析を行い、そのCFD解析結果として、比率(Lv/Li)とタービン効率との関係をまとめると、図7に示すようになる。なお、図7におけるタービン効率は、基準のタービン効率に対する比で表している。
【0045】
同様に、比率(Lv/Li)を50%に設定した上で、ガスの流量が小流量の場合において、タービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)をパラメータとして変化させつつ、タービン効率についてCFD解析を行い、そのCFD解析結果として、比率(Hv/Hi)とタービン効率との関係をまとめると、図8に示すようになる。なお、図8におけるタービン効率は、基準のタービン効率に対する比で表している。
【0046】
これらのCFD解析結果により、タービン動翼の軸方向の長さLiに対するタービン動翼の後縁からガイド静翼の前縁までの軸方向の長さLvの比率(Lv/Li)が30%〜70%に設定され、かつタービン動翼の後縁の翼高さHiに対するガイド静翼の翼高さHvの比率(Hv/Hi)が10%〜40%に設定されている場合に、ガスの流量が小流量の場合において、タービン効率を向上させることが確認できた。
【符号の説明】
【0047】
1 可変容量型の車両用過給機
3 ベアリングハウジング
9 タービン軸
11 コンプレッサ
13 コンプレッサハウジング
15 コンプレッサインペラ
31 ラジアルタービン
33 タービンハウジング
S シュラウド
35 タービンインペラ
C タービンインペラの軸心
37 ホイール
39 タービン動翼
39F タービン動翼の前縁
39P タービン動翼の後縁
41 可変ノズルユニット
43 ノズルリング
47 シュラウドリング
51 可変ノズル
57 ガス取入口
59 タービンスクロール流路
61 ガス排出口
63 ガイド静翼
63F ガイド静翼の前縁
63P ガイド静翼の後縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービンであって、
内側にシュラウドを有したタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なホイール、及び前記ホイールの外周面に間隔を置いて設けられかつ先端縁が前記タービンハウジングの前記シュラウドに沿うように延びた複数枚のタービン動翼を備えたタービンインペラと、を具備し、
前記タービンハウジングにガスを取入れるガス取入口が形成され、前記タービンハウジングの内部に前記ガス取入口に連通した環状のタービンスクロール流路が前記タービンインペラを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記ガイド静翼の出口側にガスを排出するガス排出口が形成され、
更に、前記タービンハウジング内における前記タービンインペラと前記ガス排出口の間に周方向に間隔を置いて配設され、ガスの流れを整流する複数枚のガイド静翼と、を具備してあって、
前記タービン動翼の軸方向の長さに対する前記タービン動翼の後縁から前記ガイド静翼の前縁までの軸方向の長さの比率は、30%〜70%に設定され、
前記タービン動翼の後縁の翼高さに対する前記ガイド静翼の翼高さの比率は、10%〜40%に設定されているようになっていることを特徴とするラジアルタービン。
【請求項2】
前記タービンハウジング内における前記タービンインペラの入口側に周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに回転可能であって、前記タービンインペラ側に供給されるガスの流路面積を可変する複数枚の可変ノズルと、を具備したことを特徴とする請求項1に記載のラジアルタービン。
【請求項3】
エンジン側に供給される空気を過給する過給機において、
請求項1又は請求項2に記載のラジアルタービンを具備したことを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177357(P2012−177357A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41838(P2011−41838)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】