説明

ラミネート装置および方法

【課題】ラミネート装置においてラミネートを行うプレートが傾斜する問題を解決する。
【解決手段】ラミネート装置において、ラミネーション・ロールR1A,R1Bの端部に設けられた加圧機構1A,1B,2A,2Bと、ラミネーション・ロールR1A,R1Bの間を通過する基板P1の搬送路V1の搬送方向d1に対する傾きを検出する傾き検出センサ3と、この傾き検出センサ3による基板P1の傾きの検出結果に基づいて、加圧機構1A,1B,2A,2Bを、ラミネーション・ロールR1A,R1Bの基板P1が傾いている側の端部の挟圧力を増加させる方向に駆動させる制御部Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレートにフィルムをラミネートする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プレートへのフィルムのラミネートは、フィルムが重ね合わされたプレートを一対のロール間に通して挟圧することにより行われる。
【0003】
このようなプレート上にフィルムをラミネートする工程は、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)やフィールド・エミッション・ディスプレイパネル(FED)等の平面型表示パネルの製造工程において、基板上に感光性フィルムをラミネートしてフォトリソグラフィ法により所要の形状の電極や誘電体層等の構造物を成形したり、基板上に形成された材料層上にエッジングやサンドブラスト用のレジストフィルムをラミネートする際等に実施される。
【0004】
図1は、従来のラミネート装置の概略の構成を示す側面図である。
この図1において、ラミネート装置は、プレートPの搬送路Vの途中に設置された一対のラミネーション・ロールRを備えている。
【0005】
このラミネート装置は、ラミネーション・ロールRの上流側において、搬送路V上を搬送されてくるプレートP上に図示しないフィルム・ロールからフィルムFを供給して重ね合わせ、このフィルムFが重ね合わされたプレートPが一対のラミネーション・ロールRの間を通過する際に、この一対のラミネーション・ロールRによってプレートPを上下から挟圧して、フィルムFをプレートPに圧着させることによりラミネートする。
【0006】
このような従来のラミネート装置においては、様々な原因、例えばラミネーション・ロールRの製作精度やプレートPの僅かな撓み,プレートPの表面の部分的な摩擦係数の差異などによって、図2に示されるように、プレートPが一対のラミネーション・ロールR間を通過する際に、このプレートPの軸線cが搬送路Vの搬送方向dに対して傾斜してしまい、プレートPに対してフィルムFのラミネート位置がずれてしまう場合が生じる。
【0007】
このようなプレートPの傾斜対策としては、従来、ラミネート工程が終了したプレートPからフィルムFのラミネート位置のずれ量を検出し、この検出されたラミネート位置のずれ量に基づいてそれ以降に投入されるプレートPのラミネート装置への投入位置を調整する方法や、検出されたラミネート位置のずれ量に基づいてそれ以降に投入される基板に対するフィルムFの供給位置を調整する方法等が行われている。
【0008】
しかしながら、このような従来の何れの方向も、ラミネート終了後のプレートPからフィルムFのラミネート位置のずれ量を検出して、それ以降におけるフィルムFのラミネート位置を調整するものであり、ラミネート不良のプレートPが生じてしまうのを防止することが出来ず、また、ラミネート位置のずれが発生する都度に調整する必要が生じるため、ラミネート不良の発生を完全には防止することが出来なかった。
【0009】
このため、製品の歩留が悪化し、製品コストを上昇させてしまう原因になっている。
【0010】
なお、従来のラミネート装置には、曲げモーメントを負荷してラミネーション・ロールの撓みを矯正するようになっているものがある(例えば、特許文献1参照)が、このようなラミネート装置は、ラミネーション・ロールの撓みを矯正することによってプレートへの押圧力の均一化を図ろうとするものであり、プレートの傾斜によるラミネート不良の発生を防止することは出来ない。
【0011】
【特許文献1】特開平10−146891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、ラミネートを行う際の上記のような従来の問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明によるラミネート装置は、上記目的を達成するために、搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールを備え、搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに一対のロール間で挟圧することによってプレート部材上にフィルム部材をラミネートするラミネート装置において、前記ロールの少なくとも一方の端部に設けられてロールの端部を加圧することによってロールの両端部におけるプレート部材に対する挟圧力に差異を生じさせる加圧部材と、前記一対のロールの間を通過するプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出する傾き検出部材と、前記傾き検出部材によるプレート部材の傾きの検出結果に基づいて、加圧部材を、ロールのプレート部材が傾いている側の端部の挟圧力を他方の端部の挟圧力に比べて大にする方向に駆動させる制御部材とを備えていることを特徴としている。
【0014】
第2の発明によるラミネート方法は、前記目的を達成するために、搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールによって搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに挟圧することにより、プレート部材上にフィルム部材をラミネートするラミネート方法において、前記一対のロールの間を通過するプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出し、プレート部材の搬送方向に対する傾きが検出された際に、プレート部材が傾いている側のロールの端部における挟圧力が他方の端部における挟圧力よりも大きくなるようにロールの端部における挟圧力を変化させることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明は、搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールによって、搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに挟圧することによりプレート部材上にフィルム部材をラミネートし、このプレート部材が一対のロールの間を通過する際に、搬送路に設けられた傾き検出部材によってプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出し、プレート部材の傾きが検出された際に、制御部材が、ロールの少なくとも一方の端部に設けられてロールの端部を加圧することによりロールの両端部におけるプレート部材に対する挟圧力に差異を生じさせる加圧部材を駆動させて、ロールのプレート部材が傾いている側の端部の挟圧力を他方の端部の挟圧力に比べて大にするラミネート装置およびラミネート方法を、その最良の実施形態としている。
【0016】
上記実施形態のラミネート装置および方法によれば、一対のロールの間を通過しているプレート部材の傾斜が検出されると、加圧部材が、プレート部材が傾斜している側の端部の挟圧力を他方の端部に対して大きくなるように駆動され、これにより、このプレート部材が傾斜している側の端部におけるロールによる単位回転角度当たりのプレート部材の押し出し幅が他方の端部におけるロールによる押し出し幅よりも大きくなって、プレート部材が傾斜している側と反対側向きに回動されて、その傾きが修正される。
【0017】
したがって、上記ラミネート装置および方法は、一対のロールの間を通過するプレート部材の傾斜の状態をリアルタイムで検出してプレート部材の傾斜を修正するので、従来のようにラミネート工程においてラミネート不良の製品を発生させることがなく、製品の歩留を向上させることが出来るとともに、プレート部材の傾斜を修正するために装置の稼動を停止する必要がないため、生産効率の向上を図ることができる。
【0018】
上記ラミネート装置および方法において、加圧部材をロールの両端部に設けることが好ましい。
【0019】
そして、ロールの両端部に設けられた加圧部材のうちのプレート部材が傾いている側の端部に設けられた加圧部材が、ロールの端部を加圧する向きに駆動されることによって、プレート部材の傾きが修正される。
【0020】
さらに、プレート部材が傾いている側の端部における加圧と、プレート部材が傾いている側と反対側の端部における減圧とが同時に行われるようにすることによって、プレート部材の傾きの修正が迅速に行われるようになる。
【0021】
上記ラミネート装置および方法において、プレート部材の傾きを、一対のロール間を通過する位置にあるプレート部材の所要の部分を撮像するカメラ部材によって検出するようにすることが好ましい。
【0022】
このカメラ部材は、例えば、プレート部材のエッジ部やプレート部材に形成された所要のパターンを撮像することによってプレート部材の傾きを検出する。
【0023】
さらに、上記ラミネート装置および方法において、ロールの外周部を弾性材料によって形成するようにするのが好ましく、これによって、加圧される側のロールの端部が押し潰されてプレート部材との接触長さが大きくなることにより、ロールによる単位回転角度当たりのプレート部材の押し出し幅が大きくなって、プレート部材の傾斜が修正される。
【実施例】
【0024】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら説明を行う。
なお、この発明は、例えば、平面型表示パネルの基板やプリント回路様基板等の様々な製品のラミネート工程において実施することが出来るが、以下においては、プラズマディスプレイパネル(PDP)の基板にフォトリソグラフィ法によって各種構造物を成形するための感光性フィルムやエッジングまたはサンドブラスト用のレジストフィルムをラミネートする工程に使用されるラミネート装置および方法を例に挙げて説明を行う。
【0025】
図3および4は、この発明によるラミネート装置の実施形態における一実施例を示しており、図3はこのラミネート装置の構成を示す概略側面図、図4はこのラミネート装置のラミネーション・ロール部分の構成を示す平面図、図5はこのラミネート装置の斜視図である。
【0026】
この図3ないし5において、基板P1の搬送を行う搬送路V1に構成されるラミネート工程区間において、搬送路V1の上方側と下方側に、この搬送路V1を挟んで対向される一対の上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bが配置されている。
【0027】
この一対の上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bは、その回転軸が搬送路V1の搬送方向d1に対して直交する方向に水平向きに延びており、それぞれの表面がゴム等の弾性材によって形成されている。
【0028】
上ラミネーション・ロールR1Aには、両端部のそれぞれに、この上ラミネーション・ロールR1Aの端部を下ラミネーション・ロールR1B側に加圧する加圧部とこの加圧部を駆動する駆動部をそれぞれ備えた一対の上右加圧機構1Aおよび上左加圧機構1Bが取り付けられている。
【0029】
同様に、下ラミネーション・ロールR1Bには、両端部のそれぞれに、この下ラミネーション・ロールR1Bの端部を上ラミネーション・ロールR1A側に加圧する加圧部とこの加圧部を駆動する駆動部をそれぞれ備えた一対の下右加圧機構2Aおよび下左加圧機構2Bが取り付けられている。
【0030】
この上右加圧機構1Aと上左加圧機構1B,下右加圧機構2A,下左加圧機構2Bのそれぞれの加圧部には、例えば、空気圧シリンダや油圧シリンダ,モータ駆動による加圧機等の種々の加圧機が用いられる。
【0031】
なお、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bは、定位置において互いの回転軸が平行になるように水平向きに支持されているとともに、互いのローラ面の間隔が、後述するようにその間に挿通される基板P1の厚さよりも僅かに小さくなるように設定されている。
【0032】
上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの設置位置よりも下流側の搬送路V1の下方位置に、搬送路V1を搬送されてくる基板P1の傾きを検出する傾き検出センサ3が配置されている。
【0033】
この傾き検出センサ3の配置位置は、搬送路V1に沿って上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの配置位置の直ぐ下流側で、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間を通過する基板P1の側縁部に対向する位置に設定されている。
【0034】
この傾き検出センサ3は、後述するように、搬送路V1上を搬送されてくる基板P1の軸線が搬送方向d1に対して平行であるか傾斜しているかを検出し、搬送方向d1に対して傾斜している場合には、さらに、その傾斜方向を検出するセンサである。
【0035】
この傾き検出センサ3としては、例えばCCDカメラが用いられ、このCCDカメラによる撮像によって、後述するように、大気と基板P1を構成するガラス材の透過率の差異を検出することによって基板P1のエッジ部の位置が検出される。
【0036】
上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの配置位置の上流側の搬送路V1の上方には、基板P1上にラミネートされるフィルムFが巻回されたフィルム・ロール4と、このフィルム・ロール4からフィルムFが供給される際に、フィルムFの表面に貼着されていたカバーフィルムFaを剥がして巻き取るカバーフィルム・ロール5が配置されている。
【0037】
上右加圧機構1Aと上左加圧機構1B,下右加圧機構2A,下左加圧機構2B,傾き検出センサ3,上ラミネーション・ロールR1A,下ラミネーション・ロールR1B,フィルム・ロール4,カバーフィルム・ロール5には、制御部Cが接続されている。
【0038】
この制御部Cは、搬送路V1の搬送速度に対応した上ラミネーション・ロールR1Aおよび下ラミネーション・ロールR1B,フィルム・ロール4,カバーフィルム・ロール5の回転速度制御、および、傾き検出センサ3から入力されてくる検出信号に基づく基板P1の傾斜の有無と傾斜方向の検出,この傾き検出センサ3による検出結果に基づく上右加圧機構1A,上左加圧機構1B,下右加圧機構2A,下左加圧機構2Bのそれぞれの駆動制御を行う。
【0039】
さらに、制御部Cは、搬送路V1の搬送速度制御および上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1B,フィルム・ロール4,カバーフィルム・ロール5の回転制御を行う。
【0040】
次に、上記ラミネート装置の作動について説明を行う。
【0041】
このラミネート装置は、搬送路V1上を基板P1が上流側(図3および4,5の左側)から搬送されてくると、図3に示されるように、制御部Cによる駆動制御によって、フィルムFがフィルム・ロール4から上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間に上流側から供給されて、搬送されてきた基板P1の上面に重ね合わされながら基板P1とともに上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間に挟み込まれてゆく。
【0042】
このとき、フィルム・ロール4から繰り出されるフィルムFの表面に貼着されていたカバーフィルムFaは、カバーフィルム・ロール5によって巻き取られて、フィルムFから剥がされてゆく。
【0043】
そして、基板P1とともに上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間に挟み込まれたフィルムFは、ロール回転に伴って下流側に押し出されてゆき、このとき、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bとによる挟圧力によって、基板P1上に圧着ラミネートされる。
【0044】
このラミネート装置の作動中、傾き検出センサ3は、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間から押し出されてくる基板P1のエッジ部の検出を行って、その検出信号を制御部Cに出力する。
【0045】
そして、制御部Cは、この傾き検出センサ3から入力されてくる検出信号に基づいて、基板P1の搬送方向d1に対する傾斜の有無と、傾斜している場合のその傾斜方向および傾斜角度をリアルタイムで検出してゆく。
【0046】
例えば、傾き検出センサ3にCCDカメラが用いられる場合には、基板P1のエッジ部を撮像した撮像信号が制御部Cに出力され、制御部Cは、この傾き検出センサ3から入力されてくる撮像信号に基づいて、CCDカメラの撮像範囲に重なっている基板P1のエッジ部の面積を演算することによって、基板P1の搬送方向に対する傾斜の有無を検出するとともに、傾斜している場合の傾斜方向および傾斜角度を算出する。
【0047】
ここで、基板P1は、軸線が搬送方向と平行な状態で搬送路V1上を搬送されてくる場合でも、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間を通過する際に、上ラミネーション・ロールR1Aまたは下ラミネーション・ロールR1Bが湾曲していたり、表面が円筒形でなかったりした場合、または、基板P1の表面の摩擦係数が部分的に異なっているような場合には、基板P1の両側の側部におけるロールによる押し出し力が異なることによって、基板P1が搬送方向に対して一方に傾斜してゆく。
【0048】
このような基板P1の傾斜が生じると、この基板P1の傾斜状態は、傾き検出センサ3からの検出信号に基づいて制御部Cにより検出される。
【0049】
制御部Cは、基板P1の傾斜を検出すると、その傾斜方向および傾斜角度の演算結果、さらには、基板P1の搬送速度(すなわち、制御部Cに入力されてくる上ラミネーション・ロールR1Aおよび下ラミネーション・ロールR1Bの回転速度信号)に基づいて、上右加圧機構1Aと上左加圧機構1B,下右加圧機構2A,下左加圧機構2Bによる加圧圧力を決定する。
【0050】
この各加圧機構の加圧圧力データは、制御部Cに予め記憶されており、制御部Cは、検出される基板P1の搬送速度と傾斜方向および角度に対応する加圧圧力データを読み出して、上右加圧機構1Aおよび上左加圧機構1B,下右加圧機構2A,下左加圧機構2Bによる加圧圧力を決定し、それぞれの加圧機構の駆動制御を行う。
【0051】
すなわち、図6(a)に示されるように、搬送路V1の搬送方向d1と平行な状態で搬送されてきた基板P1が、図6(b)に示されるように、基板P1が上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間を挟圧されながら通過する際に、ロールの製作精度や撓み,基板表面の摩擦係数の差異等によって、その軸線c1が一方向(図6(b)においては反時計回り方向)に傾斜した場合には、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの基板P1が傾斜してゆく側の端部に取り付けられている加圧機構(図6(b)においては、上左加圧機構1Bと下左加圧機構2B)が制御部Cによって駆動されて、この基板P1が傾斜する側の上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの端部に圧力が加えられる。
【0052】
図7は、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの加圧機構による圧力が加えられていない側の端部部分の状態(a)と、加圧機構によって圧力が加えられた側の端部部分の状態(b)を示している。
【0053】
この図7に示されるように、加圧機構による圧力が加えられていない状態(a)における上ラミネーション・ロールR1A,下ラミネーション・ロールR1Bの端部部分と基板P1との接触長さs1に対して、加圧機構によって圧力が加えられている状態(b)における端部部分と基板P1の接触長さs2の方が、この端部部分が加圧によって基板P1に押し付けられることにより押し潰されて、長くなる。
【0054】
これによって、上ラミネーション・ロールR1A,下ラミネーション・ロールR1Bの両端部の回転速度は同一であることから、加圧側端部による単位回転角度当たりの基板P1の押し出し幅が、非加圧側端部による単位回転角度当たりの押し出し幅よりも大きくなることにより、基板P1が、進行するにしたがって傾斜している側と反対側の方向に回動される。
【0055】
以上のようにして、制御部Cによる上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの端部へのリアルタイムな加圧制御によって、図6(c)に示されるように、基板P1の軸線c1が搬送路V1の搬送方向d1と平行な状態になるまで、基板P1の傾斜が修正される。
【0056】
上記ラミネート装置および方法によれば、リアルタイムで、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの間を通過する基板P1の傾斜の状態が検出されて、上ラミネーション・ロールR1Aと下ラミネーション・ロールR1Bの端部への加圧制御により、基板P1の傾斜が修正されるので、従来のようにラミネート工程においてラミネート不良の製品を発生させることがなく、製品の歩留を向上させることが出来るとともに、基板P1の傾斜を修正するために装置の稼動を停止する必要がないため、これによって、生産効率の向上を図ることができる。
【0057】
なお、上記においては、ラミネーション・ロールの基板の傾斜側の端部に加圧機構によって加圧を行うことにより基板の傾斜を修正する例が示されているが、ラミネーション・ロールの基板の傾斜側の端部に加圧を行うと同時に反対側の端部における圧力を減圧することによって、両端部における圧力差を生じさせるようにしてもよい。
【0058】
この場合には、基板P1の傾斜の修正がより迅速に行われるようになる。
【0059】
さらに、基板の傾斜側の端部に対する圧力はそのままで、反対側の端部における圧力を減圧することによって、両端部における圧力差を生じさせるようにしてもよい。
【0060】
すなわち、図7の(a)および(b)に示されているように、傾斜側のラミネーション・ロールの接触長さs2が、反対側のラミネーション・ロールの接触長さs1に比べて長くなるように加圧機構を制御すればよい。
【0061】
さらに、上記においては、加圧機構がラミネーション・ロールの両端部に設けられている例が示されているが、加圧機構をラミネーション・ロールの一方の端部に設けて、ラミネーション・ロールの両端部における圧力差を生じさせるようにしても良い。
【0062】
この場合には、加圧機構の構成が容易になるとともに、制御部による駆動制御が簡易になる。
【0063】
さらに、上記においては、基板の傾斜の検出を基板のエッジ部において行っているが、この基板の傾斜の検出は、ラミネートを行う基板上に、例えば、直線状の電極等のパターンが形成されている場合には、位置検出センサを基板上のパターンに対向する位置に配置して、このパターンを検出することにより、行うようにしても良い。
【0064】
上記実施例のラミネート装置および方法は、搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールによって、搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに挟圧して、プレート部材上にフィルム部材をラミネートし、このプレート部材が一対のロール間を通過する際に、搬送路に設けられた傾き検出部材によってプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出し、プレート部材の傾きが検出された際に、制御部材が、ロールの少なくとも一方の端部に設けられてロールの端部を加圧することによってロールの両端部におけるプレート部材に対する挟圧力に差異を生じさせる加圧部材を駆動させて、ロールのプレート部材が傾いている側の端部の挟圧力を他方の端部の挟圧力に比べて大にするラミネート装置およびラミネート方法を、その上位概念の実施形態としている。
【0065】
この上位概念を構成する実施形態のラミネート装置および方法によれば、一対のロール間を通過しているプレート部材の傾斜が検出されると、加圧部材が、プレート部材が傾斜している側の端部の挟圧力を他方の端部に対して大きくする方向に駆動され、これにより、このプレート部材が傾斜している側の端部におけるロールによる単位回転角度当たりのプレート部材の押し出し幅が他方の端部におけるロールによる押し出し幅よりも大きくなって、プレート部材が傾斜している側と反対側向きに回動されて、その傾きが修正される。
【0066】
このようにして、一対のロール間を通過するプレート部材の傾斜の状態がリアルタイムで検出されてプレート部材の傾斜が修正されることにより、従来のようにラミネート工程においてラミネート不良の製品を発生させることがなく、製品の歩留を向上させることが出来るとともに、プレート部材の傾斜を修正するために装置の稼動を停止する必要がないため、生産効率の向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来例を示す概略側面図である。
【図2】従来例を示す平面図である。
【図3】この発明の実施例の構成を示す側面図である。
【図4】同実施例の平面図である。
【図5】同実施例の斜視図である。
【図6】同実施例において、(a)は基板がラミネーション・ロールの上流側に位置している状態、(b)はラミネーション・ロールに挟まれた基板が傾斜している状態、(c)はラミネーション・ロールに挟まれた基板の傾斜が修正された状態をそれぞれ示す平面図である。
【図7】同実施例において、(a)はラミネーション・ロールが加圧されていない状態、(b)はラミネーション・ロールが加圧されている状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1A …上右加圧機構(加圧部材)
1B …上左加圧機構(加圧部材)
2A …下右加圧機構(加圧部材)
2B …下左加圧機構(加圧部材)
3 …傾き検出センサ(傾き検出部材)
4 …フィルム・ロール
C …制御部(制御部材)
F …フィルム(フィルム部材)
P1 …基板(プレート部材)
R1A …上ラミネーション・ロール(ローラ)
R1B …下ラミネーション・ロール(ローラ)
V1 …搬送路
d1 …搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールを備え、搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに一対のロール間で挟圧することによってプレート部材上にフィルム部材をラミネートするラミネート装置において、
前記ロールの少なくとも一方の端部に設けられてロールの端部を加圧することによってロールの両端部におけるプレート部材に対する挟圧力に差異を生じさせる加圧部材と、
前記一対のロールの間を通過するプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出する傾き検出部材と、
前記傾き検出部材によるプレート部材の傾きの検出結果に基づいて、加圧部材を、ロールのプレート部材が傾いている側の端部の挟圧力を他方の端部の挟圧力に比べて大にする方向に駆動させる制御部材と、
を備えていることを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記加圧部材がロールの両端部に設けられている請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記制御部材によって、ロールの両端部に設けられた加圧部材のうちのプレート部材が傾いている側の端部に設けられた加圧部材が、反対側の端部に設けられている加圧部材よりも加圧力が大きくなる方向に駆動される請求項2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記制御部材によって、ロールの両端部に設けられた加圧部材のうちのプレート部材が傾いている側の端部に設けられた加圧部材が、ロールの端部を加圧する向きに駆動される請求項2に記載のラミネート装置。
【請求項5】
前記制御部材によって、さらに、ロールの両端部に設けられた加圧部材のうちのプレート部材が傾いている側と反対側の端部に設けられた加圧部材が、ロールの端部を加圧する向きと逆向きに駆動される請求項4に記載のラミネート装置。
【請求項6】
前記傾き検出部材が、一対のロール間を通過する位置にあるプレート部材の所要の部分を撮像してプレート部材の傾きを検出するカメラ部材である請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項7】
前記ロールの外周部が弾性材料によって形成されている請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項8】
搬送路に対して直交する向きに配置された一対のロールによって搬送路上を搬送されてくるプレート部材をフィルム部材とともに挟圧することにより、プレート部材上にフィルム部材をラミネートするラミネート方法において、
前記一対のロールの間を通過するプレート部材の搬送路の搬送方向に対する傾きを検出し、
プレート部材の搬送方向に対する傾きが検出された際に、プレート部材が傾いている側のロールの端部における挟圧力が他方の端部における挟圧力よりも大きくなるようにロールの端部における挟圧力を変化させる、
ことを特徴とするラミネート方法。
【請求項9】
プレート部材の搬送方向に対する傾きが検出された際に、プレート部材が傾いている側のロールの端部における挟圧力を増加させる請求項8に記載のラミネート方法。
【請求項10】
プレート部材の搬送方向に対する傾きが検出された際に、プレート部材が傾いている側のロールの端部における挟圧力を増加させるとともに、プレート部材が傾いている側と反対側のロールの端部における挟圧力を減少させる請求項8に記載のラミネート方法。
【請求項11】
プレート部材のエッジ部を撮像することによってプレート部材の傾きを検出する請求項8に記載のラミネート方法。
【請求項12】
プレート部材に形成されたパターンを撮像することによってプレート部材の傾きを検出する請求項8に記載のラミネート方法。
【請求項13】
前記プレート部材が、プラズマディスプレイパネルを構成するガラス基板である請求項8に記載のラミネート方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−160533(P2007−160533A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356239(P2005−356239)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】