説明

ラミネート装置

被ラミネート体をラミネートするラミネート装置であって,ダイアフラムによって仕切られた上チャンバと下チャンバを有し,前記下チャンバにはヒータ盤が設けられ,前記ヒータ盤の上に載置される被ラミネート体を押圧するための膨張自在なダイアフラムを備え,前記ダイアフラムはブチルゴムからなる。
前記ブチルゴムの配合組成は,例えば,ハロゲン化ブチル100〜0重量部,レギュラーブチル0〜100重量部,酸化マグネシウム1〜5重量部,カーボンブラック5〜100重量部,パラフィン系オイル0〜20重量部,酸化亜鉛1〜5重量部,樹脂加硫剤1〜20重量部,加工助剤0〜10重量部である。本発明によれば,ダイアフラムの寿命が延び,低コストで被ラミネート体を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は,太陽電池パネルなどの被ラミネート体を製造するためのラミネート装置に関する。
発明の背景
従来より,太陽電池パネルを製造するためのラミネート装置として,ダイアフラムによって仕切られた上チャンバと下チャンバを備えた,いわゆる二重真空方式のラミネート装置が公知になっている。そして,かかる二重真空方式のラミネート装置に関し,特公平4−65556号の「太陽電池モジュールラミネート装置」,および特公平6−52801号の「太陽電池パネルの製造方法」が開示されている。
この二重真空方式のラミネート装置では,ヒータ盤の上に載置された被ラミネート体を加熱した状態で,ダイアフラムを下方へ押圧させ,ヒータ盤とダイアフラムの間で被ラミネート体を上下から押圧する。従来のラミネート装置では,このように被ラミネート体を押圧するためのダイアフラムとして,シリコン系の樹脂膜が一般に使用されている。
しかしながら,従来のシリコン樹脂からなるダイアフラムは,耐熱性や伸縮性能が劣るという問題があった。例えば太陽電池パネルをラミネートする際には,ダイアフラムは180℃程度まで温度上昇することになるが,その場合,シリコン樹脂からなるダイアフラムは,約3000回程度のラミネート処理を行うと破損していた。例えば1日に300回程度のラミネート処理を行うのであれば,シリコン樹脂からなるダイアフラムの寿命は,約10日程度に過ぎなかった。
また,シリコン樹脂からなるダイアフラムは高価であり,交換が頻繁であると,コスト的な問題が生ずる。
【発明の開示】
従って本発明は,ダイアフラムの寿命が長いラミネート装置を得ることを目的としている。
かかる目的を達成するために,本発明にあっては,被ラミネート体をラミネートするラミネート装置であって,ダイアフラムによって仕切られた上チャンバと下チャンバを有し,前記下チャンバにはヒータ盤が設けられ,前記ヒータ盤の上に載置される被ラミネート体を押圧するための膨張自在なダイアフラムを備え,前記ダイアフラムはブチルゴムからなる。
前記ブチルゴムの配合組成は,ハロゲン化ブチル100〜0重量部,レギュラーブチル0〜100重量部,酸化マグネシウム1〜5重量部,カーボンブラック5〜100重量部,パラフィン系オイル0〜20重量部,酸化亜鉛1〜5重量部,樹脂加硫剤1〜20重量部,加工助剤0〜10重量部であることが好ましい。
前記ヒータ盤の上に載置される被ラミネート体を,被ラミネート体の搬入時においてヒータ盤上面から上方に離した状態で保持する保持手段を備えていても良い。
前記保持手段は,被ラミネート体の搬出時においてもヒータ盤上面から上方に離した状態で保持するように構成されていても良い。
前記被ラミネート体は,例えば太陽電池パネルである。
【図面の簡単な説明】
図1は,本発明の実施例にかかるラミネート装置の正面図である。
図2は,同ラミネート装置の平面図である。
図3は,ラミネート装置の要部を図2A−A断面において拡大して示した図である。
図4は,ラミネート装置に被ラミネート体を挿入する状態の説明図である。
図5は,ラミネート装置の上下チャンバ内を真空引きする状態の説明図である。
図6は,被ラミネート体を加熱および挟圧する状態の説明図である。
図7は,製造された被ラミネート体をラミネート装置から取り出す状態の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に,本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は,本発明の実施例にかかるラミネート装置1の正面図,図2は,同ラミネート装置1の平面図である。図示のラミネート装置1は,上ケース2と下ケース3を備えている。これら上ケース2と下ケース3は後方に配置されたヒンジ部4を介して接合されており,このヒンジ部4を中心にして,上ケース2を上方に回動させることにより,ラミネート装置1を開放できるように構成されている。図示はしないが,上ケース2を持ち上げて開放を容易にさせるためのエアーシリンダなどを設けても良い。
下ケース3の左右側方には,ラミネート装置1によってラミネートする前の被ラミネート体としての太陽電池パネルaを載置しておくためのローダコンベア6と,ラミネート装置1によってラミネートした後の太陽電池パネルaを載置しておくためのアンローダコンベア7が配置されている。これらローダコンベア6とアンローダコンベア7は,何れも昇降するように構成されている。図1において,ローダコンベア6は上昇した状態であり,アンローダコンベア7は下降した状態を示している。
また,ローダコンベア6とアンローダコンベア7の両側には,これらローダコンベア6とアンローダコンベア7が下降した際に太陽電池パネルaの側方を支持するためのトラバーサ30,31がそれぞれ配置されている。これらトラバーサ30,31上面の高さは,上昇時におけるローダコンベア6とアンローダコンベア7の上面よりも低く,下降時におけるローダコンベア6とアンローダコンベア7の上面よりも高い位置に設定されている。トラバーサ30は,図1,2中の実線30で示される位置と一点鎖線30’で示される位置の間を往復移動する構成になっている。同様に,トラバーサ31は,図1,2中の実線31で示される位置と一点鎖線31’で示される位置の間を往復移動する構成になっている(一点鎖線30’と一点鎖線31’で示す位置は同じである)。
そして後述するように,ローダコンベア6が下降することによって太陽電池パネルaがトラバーサ30に受け渡されると,トラバーサ30は左方に移動してその太陽電池パネルaを上ケース2と下ケース3の間に搬入するようになっている。また,トラバーサ31は,上ケース2と下ケース3の間において太陽電池パネルaを受け取った後,左方に移動してその太陽電池パネルaをアンローダコンベア7に受け渡す位置に搬出するようになっている。
また,下ケース3の下面にはキャスタ8が装着してあり,このキャスタ8を転動させることによって,ラミネート装置1を床面9上において小さい力で移動できるようになっている。
図3は,ラミネート装置1の要部を図2A−A断面において拡大して示した図である。この図3に示すように,上ケース2の内部にはダイアフラム10が装着されている。このダイアフラム10は,ブチルゴムで構成される。このダイアフラム10に用いられるブチルゴムの配合組成は,ハロゲン化ブチル100〜0重量部,レギュラーブチル0〜100重量部,酸化マグネシウム1〜5重量部,カーボンブラック5〜100重量部,パラフィン系オイル0〜20重量部,酸化亜鉛1〜5重量部,樹脂加硫剤1〜20重量部,加工助剤0〜10重量部である。
図3中の一点鎖線2’で示したように,上ケース2をヒンジ部4を中心にして下方に回動して,上ケース2と下ケース3を閉じた状態においては,ラミネート装置1の内部には,ダイアフラム10によって上下に仕切られた上チャンバ11と下チャンバ12が形成されるようになっている。上ケース2の上面と下ケース3の下面には,吸排気口13,14が設けてあり,図3中の一点鎖線2’で示したように,上ケース2と下ケース3が閉じられた状態において,これら吸排気口13,14を介して上チャンバ11内と下チャンバ12内をそれぞれ真空引きし,また,吸排気口13,14を介して上チャンバ11内と下チャンバ12内にそれぞれ大気圧を導入できるように構成されている。
下ケース3の内部にはヒータ盤15が設けられている。このヒータ盤15は,下ケース3の底面上に突設された支柱16によって一定の高さに固定されており,ヒータ盤15の上面の高さは,先に説明したトラバーサ30,31上面の高さよりも低い位置に設定されている。ヒータ盤15は,例えばアルミ製のシーズヒータで構成され,また,ヒータ盤15は温度制御を正確に行うための水冷パイプなどを備えていても良い。
また,下ケース3の底面には,太陽電池aをヒータ盤上15の面から上方に持ち上げた状態で保持することが可能な保持手段17が配置されている。この実施の形態では,保持手段17は,昇降機構18と支持ピン19によって構成されている。昇降機構18には,例えばエアーシリンダ,ボールナット,ラックアンドピニオンなどの公知の昇降手段が適宜用いることができ,その稼働によって支持ピン19を上下動させることができるようになっている。
ヒータ盤15には,貫通孔20が穿設されており,昇降機構18の稼働によって上下動される支持ピン19が,この貫通孔20内を貫通するように配置されている。そして,昇降機構18の稼働によって支持ピン19が上昇した際には,図3中の一点鎖線19’で示されるように,支持ピン19の上端が,貫通孔20内を通ってヒータ盤15の上面よりも上方に突出するようになっている。また,このように上昇した支持ピン19の上端の高さは,先に説明したトラバーサ30,31上面の高さよりも高い位置に設定されている。一方,昇降機構18の稼働によって支持ピン19が下降した際には,図3中の実線19で示されるように,支持ピン19の上端は,ヒータ盤15の上面とほぼ一致する高さにまで下がるように構成されている。
本発明のラミネート装置1によって製造される被ラミネート体の一例としての太陽電池パネルaは,補強材とカバーガラスの間に,充填材を介してストリングをサンドイッチした構成を有する。補強材は例えばPE樹脂などが使用される。充填材は,例えばEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂などが使用される。ストリングは,電極の間に,太陽電池セルをリード線を介して接続した構成を有する。
次に,太陽電池パネルaを製造する場合を例にとって,本発明の実施の形態にかかるラミネート装置1の動作を説明する。ラミネート装置1に太陽電池パネルaを挿入するに際しては,図1,2に示したように,ヒンジ部4を中心にして上ケース2は下ケース3の上方に回動されて,上チャンバ11は開放状態であり,支持ピン19は昇降機構16の稼働によって予め下降された状態になっている。また,図1,2に示したように,ローダコンベア6は上昇した状態になっていて,その上面には被ラミネート体としての太陽電池パネルaが載置されており,アンローダコンベア7は下降した状態になっている。また,トラバーサ30,31は,ローダコンベア6とアンローダコンベア7の両側位置にそれぞれ待機した状態になっている。
このような状態において,先ず最初に,ローダコンベア6を下降させる。これにより,今までローダコンベア6の上面に載置されていた太陽電池パネルaがトラバーサ30に支持された状態となる。そして,トラバーサ30が図1,2中の一点鎖線30’で示される位置にまで移動することにより,太陽電池パネルaを上ケース2と下ケース3の間に搬入する。なお,この太陽電池パネルaの搬入後,再びローダコンベア6は上昇し,その上面には次の太陽電池パネルaが搬入されることとなる。
次に,昇降機構16の稼働によって支持ピン19を上昇させる。こうして,図4に示すように,ヒータ盤15の上面よりも上方に突出させた支持ピン19の上端に,太陽電池パネルaを載置する。なお,図示のように,この状態においては,太陽電池パネルaはヒータ盤15の上面に接触していない。そして,太陽電池パネルaを受け渡したトラバーサ30は,再びローダコンベア6の両側位置に戻るように移動する。
次に,図5に示すように,ヒンジ部4を中心にして上ケース2を下ケース3に被せるように下方に回動させてラミネート装置1を密閉状態にする。そして,吸排気口13,14を介して上チャンバ11内と下チャンバ12内を同時に真空引きする。
そして,上チャンバ11内と下チャンバ12内を,例えば0.7〜1.0Torrにまで真空引きした後,図6に示すように,昇降機構16の稼働によって支持ピン19を下降させる。これにより,支持ピン19の上端によって支持していた太陽電池パネルaが,ヒータ盤15の上面に直接接触した状態となり,太陽電池パネルaが加熱される。この加熱によって,真空状態の状況下で太陽電池パネルa内の充填材23,24であるEVA樹脂の化学反応が促進され,架橋が行われるようになる。そして,この状態で,吸排気口13を介して上チャンバ11内に大気圧を導入することにより,ダイアフラム10を下方に膨張させ,太陽電池パネルaを,ヒータ盤15の上面とダイアフラム10との間で挟圧する。
こうして,加熱および挟圧することによってラミネート処理を終了し,太陽電池パネルaを製造した後,吸排気口14を介して下チャンバ12内に大気圧を導入する。また,昇降機構16の稼働によって支持ピン19を上昇させ,ヒータ盤15の上面より上方に太陽電池パネルaを持ち上げ。その後,図7に示すように,ヒンジ部4を中心にして,上ケース2を下ケース3の上方に回動させることにより,ラミネート装置1を開放状態にする。なお,この上ケース2の持ち上げは,図示しないエアーシリンダなどによって行うことができる。
次に,トラバーサ31が図1,2中の一点鎖線31’で示される位置にまで移動することにより,支持ピン19によって持ち上げられて太陽電池パネルaの下側に入り込む。その後,昇降機構16の稼働によって支持ピン19を下降させる。これにより,支持ピン19の上端によって支持していた太陽電池パネルaがトラバーサ31に支持された状態となる。
次に,トラバーサ31が再びアンローダコンベア7の両側位置に戻るように移動することにより,上ケース2と下ケース3の間の位置から太陽電池パネルaを取り出す。その後,アンローダコンベア7は上昇し,その上面に太陽電池パネルaを受け取って,適宜搬出する。そして,搬出終了後,再びアンローダコンベア7は下降する。
以上の工程を繰り返すことにより,内部に気泡のない,性状の良い太陽電池パネルaを連続的に得ることが可能となる。このラミネート装置1によれば,ダイアフラム10がブチルゴムで構成されているため,シリコン樹脂からなるダイアフラムを使用した場合に比べて,ダイアフラム10の寿命が長くなり,交換の手間が省ける。また,低コストで被ラミネート体を提供できるようになる。特に太陽電池パネルaを製造する場合は,ラミネートする際に,充填材であるEVAから過酸化物(peroxide)が発生するが,ブチルゴムは過酸化物とほとんど反応せず,劣化が著しく少ない。これに対して,シリコン樹脂は過酸化物と反応し,硬化して破損しやすい。
以上,本発明の好ましい実施の形態の一例を示したが,本発明はここで説明した形態に限定されない。例えば以上の実施の形態では,被ラミネート体の一例として,太陽電池パネルaについて説明したが,本発明のラミネート装置はその他,種々のものについてラミネート処理を施すことができる。特に,本発明のラミネート装置は被ラミネート体の厚みの変化にも対応でき,また,最近,注目されるようになった建材用の外壁材や屋根材と太陽電池パネルを一体化させた,一体型モジュールなどの製造などにも供することが可能である。更に,本発明のラミネート装置は,太陽電池パネルに限らず,合わせガラスや装飾ガラス,合板などの製造にも供することができる。
【実施例】
以下,本発明の実施例を説明する。
図1〜7で説明したラミネート装置により太陽電池パネルをラミネートした。ダイアフラムを構成するブチルゴムの配合組成は,ハロゲン化ブチル100〜0重量部,レギュラーブチル0〜100重量部,酸化マグネシウム1〜5重量部,カーボンブラック5〜100重量部,パラフィン系オイル0〜20重量部,酸化亜鉛1〜5重量部,樹脂加硫剤1〜20重量部,加工助剤0〜10重量部である。このブチルゴムからなるダイアフラムは,従来使用していたシリコン樹脂からなるダイアフラムと同等の値段で入手できた。
ブチルゴムからなるダイアフラムは,ラミネートを繰り返しても硬くならず,破損しにくくなった。このブチルゴムからなるダイアフラムは,約6000回程度のラミネート処理に耐え,1日に300回のラミネート処理を,20日以上行うことができた。従来のシリコン樹脂からなるダイアフラムを使用した場合に比べ,寿命は倍以上となった。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば,ダイアフラムの寿命が長いラミネート装置を提供できる。また,低コストで被ラミネート体を製造できる。
【符号の説明】
a 太陽電池
1 ラミネート装置
10 ダイアフラム
11 上チャンバ
12 下チャンバ
15 ヒータ盤
17 保持手段
30,31 トラバーサ
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ラミネート体をラミネートするラミネート装置であって,
ダイアフラムによって仕切られた上チャンバと下チャンバを有し,前記下チャンバにはヒータ盤が設けられ,前記ヒータ盤の上に載置される被ラミネート体を押圧するための膨張自在なダイアフラムを備え,前記ダイアフラムはブチルゴムからなる。
【請求項2】
クレーム1において,前記ブチルゴムの配合組成は,ハロゲン化ブチル100〜0重量部,レギュラーブチル0〜100重量部,酸化マグネシウム1〜5重量部,カーボンブラック5〜100重量部,パラフィン系オイル0〜20重量部,酸化亜鉛1〜5重量部,樹脂加硫剤1〜20重量部,加工助剤0〜10重量部である。
【請求項3】
クレーム1において,前記ヒータ盤の上に載置される被ラミネート体を,被ラミネート体の搬入時においてヒータ盤上面から上方に離した状態で保持する保持手段を備える。
【請求項4】
クレーム3において,前記保持手段が,被ラミネート体の搬出時においてもヒータ盤上面から上方に離した状態で保持するように構成されている。
【請求項5】
クレーム1において,前記被ラミネート体が,太陽電池パネルである。

【国際公開番号】WO2004/030900
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541185(P2004−541185)
【国際出願番号】PCT/JP2002/010287
【国際出願日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願人】(595013427)株式会社エヌ・ピー・シー (54)
【出願人】(593074868)JSRトレーディング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】