説明

ランプ取付構造

【課題】バンパに加わった衝撃によりランプが車両上側に移動することを抑制することを目的とする。
【解決手段】バンパ12の棚面12Cと側面12Dとが交差する隅部に切欠き部を形成し、また、バンパ12の裏側の棚面12Cと側面12Dとの境界線上に溝12Gを形成し、さらに、棚面12Cの裏側に車幅方向に延びる溝12Fを形成することで、棚面12Cの車両前後方向の剛性を側面12Dの車両前後方向の剛性よりも低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前端部又は車両後端部に設けられたランプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両の前端下部には、バンパが設けられ、バンパの車両上側にヘッドランプが設けられている(例えば、特許文献1参照)。このため、バンパに車両前側から荷重が入力すると、ヘッドランプがバンパによって突き上げられてフェンダやフードに変形や破損等が生じる可能性がある。
【特許文献1】実開平5−3052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事実を考慮し、バンパに入力された荷重によりランプが車両上側に移動することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載のランプ取付構造は、車両前端部及び車両後端部の何れか一方に設けられたランプと、前記ランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車両下側に配設された棚面と、前記ランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車幅内側に配設された側面と、前記棚面の剛性を前記側面の剛性より低くする剛性低下手段と、を備えるバンパと、を有することを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載のランプ取付構造では、車両前端部及び車両後端部の何れか一方に設けられたランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車両下側に、バンパの棚面が配設され、該ランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車両内側に、バンパの側面が配設されている。
【0006】
ここで、剛性低下手段によって、バンパの棚面の剛性がバンパの側面の剛性よりも低くされている。このため、車両前端部に設けられたバンパに対して車両前側から軽衝突時等の荷重が入力された際、または、車両後端部に設けられたバンパに対して車両後側から大加重が入力された際、バンパを介してランプに加わる荷重は車両側方からの荷重が支配的となるので、バンパの棚面がランプを車両上側へ押し上げることを抑制できる。
【0007】
請求項2に記載のランプ取付構造は、請求項1に記載のランプ取付構造であって、前記側面と前記ランプとの少なくとも一方を、前記側面によって押される前記ランプが車両下側へ誘導されるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のランプ取付構造では、車両前端部に設けられたバンパに対して車両前側から軽衝突時等の荷重が入力されること、または、車両後端部に設けられたバンパに対して車両後側から大加重が入力されることによって、バンパが車両後方方向又は車両前方方向へ移動してランプが押されると、ランプは車両下側へ誘導される。これによって、バンパの棚面がランプを車両上側へ押し上げることを抑制できる。
【0009】
請求項3に記載のランプ取付構造は、請求項1又は2に記載のランプ取付構造であって、前記ランプの車両下側端部に、前記ランプの車両下側端部を押す前記棚面を車両下側へ誘導する傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のランプ取付構造では、車両前端部に設けられたバンパに対して車両前側から軽衝突時等の荷重が入力されること、または、車両後端部に設けられたバンパに対して車両後側から大加重が入力されることによって、バンパが車両後方方向又は車両前方方向へ移動して棚面がランプの車両下側端部を押すと、ランプの車両下側端部に形成された傾斜面によって、棚面が車両下側へ誘導される。これによって、バンパの棚面がランプを車両上側へ押し上げることを抑制できる。
【0011】
請求項4に記載のランプ取付構造は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のランプ取付構造であって、前記ランプの車両上側への移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のランプ取付構造では、移動抑制手段によってランプの車両上側への移動が規制される。このため、バンパに対して車両上側向きの軽衝突時等の荷重が入力されて、バンパを介してランプに車両上側向きの軽衝突時等の荷重が加わった際でも、バンパの棚面がランプを車両上側へ押し上げることを抑制できる。
【0013】
請求項5に記載のランプ取付構造は、請求項1乃至4の何れか1項に記載のランプ取付構造であって、前記剛性低下手段が、前記棚面と前記側面との境界線上に形成された切欠き部と、前記棚面の車幅方向に形成された第1薄肉部と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載のランプ取付構造では、バンパの棚面と側面との境界線上に切欠き部が形成されているので、バンパに対して加わった軽衝突時等の荷重でバンパの側面と棚面とがランプに当接した際、バンパが切欠き部から割れ始め、棚面が側面から分離し始める。これにより、棚面の剛性が低下する。また、棚面は、車幅方向に延びる周囲よりも薄い第1薄肉部を形成されることで、さらに剛性を低下されており、この第1薄肉部を境に折れる。これによって、バンパの棚面がランプを車両上側へ押し上げることを抑制できる。
【0015】
請求項6に記載のランプ取付構造は、請求項5に記載のランプ取付構造であって、前記剛性低下手段が、前記棚面と前記側面との境界線上に形成された第2薄肉部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のランプ取付構造では、請求項5に記載のランプ取付構造に加えて、棚面と側面との境界線上に周囲よりも薄い第2薄肉部を形成することで、棚面と側面との境界線の割れ易さを向上させ、棚面に形成された第2薄肉部の割れ易さを向上させている。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、バンパに加わった衝撃によりランプが車両上側に移動することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明のランプ取付構造の一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0019】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0020】
図1に示すように、バンパ12が車両の前端下部に車幅方向に配設されており、バンパ12の車両後側(車両上側)の車幅方向両端部に、一対のヘッドランプ10が配設されている。また、ヘッドランプ10の車両後側且つ車幅外側にはフェンダ14が配設され、ヘッドランプ10の車両後側且つ車幅内側にはフード16が配設されている。
【0021】
バンパ12は、ヘッドランプ10の車両前側(車両下側)で車幅方向へ延び、車両前側を向いた下側一般面12Aと、ヘッドランプ10の車幅内側且つ下側一般面12Aの車両上側に配置され、車両前側を向いた上側一般面12Bとが一体で形成された構成となっている。下側一般面12Aの車両上側端部12Eは、ヘッドランプ10の車両下側端部10Dと車両前後方向に対向し、上側一般面12Bの車幅外側端部12Fは、ヘッドランプ10の車幅内側端部10Eと車両前後方向に対向している。
【0022】
また、下側一般面12Aの車両上側端部12Eからヘッドランプ10の車両下側端部10Dへ棚面12Cが延び、上側一般面12Bの車幅外側端部12Fからヘッドランプ10の車幅内側端部10Eへ側面12Dが延びている。また、図4、図5に示すように、棚面12Cの車両後側端部には、車両後方方向へ突出するリブ12Rが形成されている。
【0023】
ここで、バンパ12のデザインとしてショートオーバーハングが採用されていることで、バンパ12のヘッドランプ10からの出代が少なく、また、バンパ12のヘッドランプ10の下に棚面12Cができることによって、ショートオーバーハングが採用されていないバンパと比較して、バンパ12の車両上側端部の車両前後方向の剛性が上がっている。
【0024】
また、図1に示すように、フェンダ14の車両前側端部には、ヘッドランプ10の車幅外側端且つ車両後側端の角部10BをV字状に露出させるV字状の凹部14Aが形成されており、この凹部14Aの周縁部がヘッドランプ10の車幅外側端且つ車両後側端の角部10Bの周囲を囲んでいる。
【0025】
また、フード16の車両前端両端部には、ヘッドランプ10の車幅内側端且つ車両後側端の角部10Cを露出させる段差部16Aが形成されており、この段差部16Aの周縁部がヘッドランプ10の車幅内側端且つ車両後側端の角部10Cの周囲を囲んでいる。
【0026】
また、ヘッドランプ10はホルダ(図示省略)に、(例えば、ランプレンズの周囲とホルダとの間に充填された接着剤等で)一体的に構成されている。また、図2、図3に示すように、ヘッドランプ10のホルダには複数のブラケット17、18、19、20が設けられており、このブラケット17、18、19、20が車両前端部に固定されることで、ヘッドランプ10が車両前端部に支持されている。なお、ブラケット17、18、19、20は、ホルダ24と一体で形成され又はホルダ24に取付けられているので、ヘッドランプ10から離間した状態で図示されている。
【0027】
また、図4に示すように、ヘッドランプ10の車両下側端部10Dには、車両下側へかけて次第に車両後側へ傾斜する傾斜面10Aが形成されており、この傾斜面10Aとリブ12Rとが車両前後方向に対向している。
【0028】
また、図1、図6に示すように、バンパ12の裏面の棚面12Cと側面12Dとの境界線上は、V字状の溝12Gが形成されることで周囲よりも薄肉とされ、棚面12Cと側面12Dとの境界線の車両後側端部には、三角形状の切欠き部12Hが貫通形成されている。また、図1、図5、図7に示すように、棚面12Cの裏側の、溝12Fから車幅方向に延び、棚面12Cの車両後側端部に達する直線上は、V字状の溝12Fが形成されることで周囲よりも薄肉とされている。このため、棚面12Cは、側面12Dよりも車両前後方向の剛性が低くなっている。
【0029】
また、図2、図3に示すように、ブラケット17は、ヘッドランプ10の車幅外側に配置され、複数のブラケット18、19、20は、ヘッドランプ10の車幅内側に車両後方方向へ記載順に配列されている。その中で最も車両前側に配設されたブラケット18は、ヘッドランプ10のホルダから車幅内側方向へ張出しており、ブラケット18に近設されたラジエータサポートブラケット22に固定されている。
【0030】
ここで、ブラケット18は、ヘッドランプ10のホルダから車幅内側方向へ張出した車両上下方向を厚み方向とする厚板部18Aと、厚板部18Aから車幅内側方向へ張出し厚板部18Aよりも薄くラジエータサポートブラケット22に固定される薄板部18Bとで構成されており、厚板部18Aと薄板部18Bとの境界線は、厚板部18Aとヘッドランプ10のホルダとの境界線よりも車両前後方向の剛性が低くなっている。
【0031】
また、ラジエータサポートブラケット22は、薄板部18Bを固定支持する支持部22Aと、支持部22Aの車両後側端部から車幅外側方向へ張出したストッパ部22Bとで構成されている。ストッパ部22Bは、厚板部18Aと車両前後方向に所定の間隔を空けて対向し、車両下側へかけて次第に車両後側へ傾斜している。
【0032】
また、図7、図8に示すように、ヘッドランプ10の車幅内側端部10Eが、車両下側へかけて次第に車両前側へ傾斜し、側面12Dのヘッドランプ10の車幅内側端部10Eとの当接面12S(図8に斜線で図示)が、車両下側へかけて次第に車両前側へ傾斜している。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0034】
図7に示すように、ダメージャビリティ評価等によりバンパ12に対して車両前方方向から車両後方方向へ軽衝突時等の荷重が入力されてバンパ12が車両後方方向へ移動すると、バンパ12の側面12Dと棚面12Cとがヘッドランプ10に当接する。図6に示すように、側面12Dと棚面12Cとの境界線上には溝12Gが形成され、棚面12Cには溝12Fが形成されている。これに対して、側面12Dと上側一般面12Bとの境界線上には溝が形成されていないので、棚面12Cの車両前後方向の剛性が側面12Dの車両前後方向の剛性よりも低くなっている。また、側面12Dと棚面12Cとの間の隅部には切欠き部12Hが形成されている。
【0035】
このため、バンパ12は、まず、図1に矢印Bで示すように、切欠き部12Hから溝12Gに沿って割れる。これにより、棚面12Cが側面12Dから分離されて棚面12Cの車両前後方向の剛性がさらに低くなることで、図1に矢印Bで、図4に点線で示すように、バンパ12が、溝12Fに沿って折れる。
【0036】
ここで、棚面12Cから突出したリブ12Rは、ヘッドランプ10の傾斜面10Aに当接し、傾斜面10Aから車両下向きの力を付与されるので、棚面12Cは車両下向きに屈折する。また、図7乃至図9に示すように、側面12Dとヘッドランプ10の前面との当接面12Sからヘッドランプ10へ車両下側向きの力が作用する。
【0037】
これにより、ヘッドランプ10に加わる荷重は、車両側方からの荷重が支配的になり、また、ヘッドランプ10が車両下側へ誘導されるので、ヘッドランプ10がバンパ12によって押し上げられることを抑制でき、フェンダ14、フード16の変形や破損等を抑制できる。
【0038】
また、図10、図11に示すように、バンパ12からヘッドランプ10に加わった軽衝突時等の荷重によりブラケット18、19、20が破損する場合、ブラケット18は、厚板部18Aと薄板部18Bとの境界線に沿って折れ、厚板部18Aはヘッドランプ10のホルダに残る。その後、ヘッドランプ10は、バンパ12によって車両後方方向へ押され、ヘッドランプ10のホルダに残った厚板部18Aが、ラジエータサポートブラケット22のストッパ部22Bに当接する。上述したように、ストッパ部22Bは、車両下側へかけて車両後側へ傾斜しているので、ストッパ部22Bから厚板部18Aに車両下側向きの力が作用する。これにより、バンパ12に対して車両上側向きの荷重が入力された場合でも、ヘッドランプ10の車幅内側端部の車両上側向きの移動が抑制される。
【0039】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態は、本発明のランプ取付構造をヘッドランプに適用したが、本発明のランプ取付構造は車両後端部に設けられたテールランプに適用可能である。その場合、バンパの棚面は、ランプの車両後側且つ車両下側に配設され、バンパの側面は、ランプの車両後側且つ車幅内側に配設される。
【0040】
また、本実施形態では、棚面とランプの車両下側端部、側面とランプの車幅内側端部がそれぞれ、車両前後方向に対向しているが、本発明においては必須では無い。例えば、バンパに対して車両前方(又は後方)下側から車両後方(又は前方)上側へかけて荷重が入力した場合等は、棚面とランプとが、バンパが移動する前は車両前後方向に対向していなくても、バンパが移動した後で車両前後方向に対向し、そして、棚面がランプに衝突することがあるので、このような場合、本発明を適用することで、ランプが車両上側への移動を抑制できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るランプ取付構造を示す車両斜め前方外側から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るランプ取付構造を示す車両斜め前方内側から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るランプ取付構造を示す上面図である。
【図4】図8のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図4のV線矢視図である。
【図6】図1のVI線矢視図である。
【図7】図1のVII線矢視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るランプ取付構造を示す正面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るランプ取付構造を示す側面図である。
【図11】図10のII線矢視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ヘッドランプ(ランプ)
10A 傾斜面
12 バンパ
12C 棚面
12D 側面
12F 溝(剛性低下手段、第1薄肉部)
12G 溝(剛性低下手段、第2薄肉部)
12H 切欠き部(剛性低下手段)
18A 厚板部(移動規制手段)
22B ストッパ部(移動規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前端部及び車両後端部の何れか一方に設けられたランプと、
前記ランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車両下側に配設された棚面と、前記ランプの車両前側及び車両後側の何れか一方且つ車幅内側に配設された側面と、前記棚面の剛性を前記側面の剛性より低くする剛性低下手段と、を備えるバンパと、
を有することを特徴とするランプ取付構造。
【請求項2】
前記側面と前記ランプとの少なくとも一方を、前記側面によって押される前記ランプが車両下側へ誘導されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のランプ取付構造。
【請求項3】
前記ランプの車両下側端部に、前記ランプの車両下側端部を押す前記棚面を車両下側へ誘導する傾斜面を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のランプ取付構造。
【請求項4】
前記ランプの車両上側への移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のランプ取付構造。
【請求項5】
前記剛性低下手段が、
前記棚面と前記側面との境界線上に形成された切欠き部と、
前記棚面の車幅方向に形成された第1の薄肉部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のランプ取付構造。
【請求項6】
前記剛性低下手段が、
前記棚面と前記側面との境界線上に形成された第2の薄肉部を有することを特徴とする請求項5に記載のランプ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−253898(P2007−253898A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83933(P2006−83933)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】