説明

リアルタイム通信システム、リアルタイム通信方法、およびリアルタイム通信プログラム

【課題】 帯域を節約し、柔軟性を高める。
【解決手段】 第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示してリアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信システムにおいて、第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または第1の通信端末は、第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出する保留指示検出部と、保留指示検出部が第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、保留信号を供給する保留信号供給部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリアルタイム通信システム、リアルタイム通信方法、およびリアルタイム通信プログラムに関し、例えば、VoIP技術を利用したIP電話機で保留音を出力させる場合など適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来のIP電話機で保留を行う場合の動作の流れは、図2の動作シーケンスに示す通りである。図2の動作シーケンスは、IP網などのネットワークを経由して端末11,12,SIP(セッション開始プロトコル)サーバ10間で行われる信号のやり取りを示し、S10〜S19の各ステップを備えている。
【0003】
IP電話機である端末11と12のあいだで、すでに呼(セッション)が確立されて、各端末11,12のユーザU1,U2が双方向で音声通話を行っている(S10)。
【0004】
このとき、例えば第3の端末(図示せず)から端末12に着信すると、それを契機として、ユーザU2が端末12の保留ボタン(自己保留ボタン)を押下し、当該端末12からre−INVITEメッセージが送信される(S11)。以降のステップS12〜S18では、SIPプロトコルで定められた保留時の呼制御メッセージがやり取りされ、端末11が正常に保留を受付けたことを確認したあとで、端末12から保留音が送信される(S19)。
【0005】
この保留音は、前記ステップS10における双方向の音声通話のうち、ユーザU2の発話した音声の内容をユーザU1に伝えるための音声通話と同様、端末12からIPパケットで送信され、前記ネットワークを経由して端末11まで届けられる。当該保留音を聴取したユーザU1は、保留状態になったことを認識し、保留解除によってユーザU2との音声通話が再開されるのを待つことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、図2のような動作を行う従来の通信システムの場合、保留音まで、ユーザU2が発話した音声と同様にIPパケットに収容してネットワーク経由で伝送させることになるため、ネットワークの帯域を無駄に消費してしまう。
【0007】
また、保留音の送信元が端末12であるため、保留音の内容に、聴取するユーザU1の好みを反映することが困難で、ネットワークの帯域が十分に広くない場合などにはユーザU1が聴取する保留音の音質を高めることも難しいから、柔軟性が低いといえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の本発明では、第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信システムにおいて、(1)前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末は、(2)前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出する保留指示検出部と、(3)当該保留指示検出部が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、前記保留信号を供給する保留信号供給部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第2の本発明では、第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信方法において、(1)前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末では、(2)保留指示検出部が、前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出し、(3)当該保留指示検出部が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、保留信号供給部が、前記保留信号を供給することを特徴とする。
【0010】
さらに、第3の本発明では、第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信プログラムにおいて、(1)前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末では、コンピュータに、(2)前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出する保留指示検出機能と、(3)当該保留指示検出機能が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、前記保留信号を供給する保留信号供給機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯域を節約し、柔軟性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(A)実施形態
以下、本発明にかかるリアルタイム通信システム、リアルタイム通信方法、およびリアルタイム通信プログラムを、VoIP通信システムに適用した場合を例に、実施形態について説明する。
【0013】
(A−1)実施形態の構成
本実施形態にかかるVoIP通信システム20の全体構成例を図1に示す。
【0014】
図1において、当該VoIP通信システム20は、ネットワーク21と、端末22,23と、音源サーバ24と、SIPサーバ25とを備えている。
【0015】
このうちネットワーク21は、インターネットなどであってもよいが、ここではIP網であるものとする。IP網はOSI参照モデルのネットワーク層でIPプロトコルを用いるネットワークである点でインターネットと同じであるが、1つの通信事業者が管理運営するネットワークであるので、インターネットに比べて、高い通信品質を保証しやすい。
【0016】
端末22,23はともにIP電話機である。端末22,23のうち少なくとも端末22は、本実施形態で特徴的な端末である。端末23のほうは、端末22と同じ構成を持つ端末である場合と、端末22と異なり、既存のIP電話機である場合があるものとする。また、以下の説明では、主として、ユーザU11とU12がVoIP通信による音声通話を行っている途中で、端末23側から保留を指示して、当該音声通話を一時中断するケースを想定する。
【0017】
端末22はユーザU11によって利用され、端末23はユーザU12によって利用される。
【0018】
SIPサーバ25は、呼制御用のサーバである。呼制御プロトコルとしてはSIPプロトコル以外のプロトコルを使用することも可能であるが、ここでは、SIPプロトコルを想定する。
【0019】
ユーザU11とU12がVoIP通信による音声通話を開始する前の呼設定のための呼制御の過程では、端末22,23間の呼制御メッセージのやり取りにSIPサーバ25が介在するが、保留の場合にも端末22,23間で呼制御メッセージのやり取りが行われ、そのやり取りにSIPサーバ25が介在することになる。
【0020】
SIPサーバ25の機能は基本的に既存のSIPサーバと同じであってよい。
【0021】
音源サーバ24は、端末(ここでは、22)とセッションを確立したとき、その端末に保留音情報(ユーザU11が聴取する保留音HA1に対応)を届けるためのサーバである。
【0022】
次に、本実施形態で特徴的な前記端末22は、例えば、図3に示すような内部構成を備える。
【0023】
(A−1−1)端末22の内部構成例
図3において、当該端末22は、通信部30と、制御部31と、操作部32と、記憶部33と、呼制御部34と、ローカル保留音発生部35と、リモート保留音検出部36と、音源選択部37と、リモート保留音発生部38と、送受話部39とを備えている。
【0024】
このうち通信部30は端末22が通信を行う際に機能する部分である。具体的には、呼制御メッセージの通信、音声情報の通信、前記保留音情報の通信などにおいて、当該通信部30が機能する。ただし、当該端末22は、ユーザU11に聴取させる保留音HA1に対応する保留音情報の発生源を端末23,音源サーバ24,端末22自身が備える前記ローカル保留音発生部35の3つのうちから選ぶことができるので、保留音情報の通信で当該通信部30が機能するのは、端末23または音源サーバ24を選んだケースである。
【0025】
制御部31は、ハードウエア的には当該端末22のCPU(中央処理装置)に相当し、ソフトウエア的にはOS(オペレーティングシステム)などの各種プログラムに相当し得る部分である。当該制御部31はVoIPに対応する処理を実行するVoIP対応機能を備える。制御部31の当該VoIP対応機能は、ユーザU11が発話した音声に対応する音声情報を処理するときには音声情報の符号化、符号化された音声情報をIPパケットに収容する処理などを実行し、反対に、ユーザU12が発話した音声に対応する音声情報を収容したIPパケットを受信したときには、符号化されている当該音声情報をIPパケットから取り出して復号する処理などを実行する。
【0026】
保留音HA1に対応する保留音情報が、端末23または音源サーバ24から供給される場合、当該保留音情報も、前記ユーザU12が発話した音声に対応する音声情報と同様、符号化された状態でIPパケットに収容されて伝送されてくるので、制御部31はこれをIPパケットから取り出して復号することになる。
【0027】
なお、構成要素34〜37などの機能の大部分は、ソフトウエア的に実現されるのが普通であると考えられるが、図3ではこれらを当該制御部31とは別個な構成要素として示している。
【0028】
記憶部33はハードウエア的には、揮発性記憶手段(RAMなど)や、不揮発性記憶手段(EEPROMなど)によって構成される記憶資源であり、ソフトウエア的には、各種のファイルがこの部分に含まれ得る。前記OSなどのプログラムファイルもこのようなファイルの一つであってよいから、OSなども、その物理的な実体は、この記憶部33に位置する。
【0029】
操作部32は、電話をかける場合などにユーザU11が操作する部分で、通常、複数のボタンなどによって構成される。IP電話機の外形的な構成には様々なものがあり、例えば、通常のパーソナルコンピュータにIP電話用のソフトウエアをインストールし、ヘッドセットなどを装着することによって実現されたIP電話機の場合、外形的な構成は、ほとんど通常のパーソナルコンピュータと同じであり、その場合には、キーボードやマウスなどが、当該操作部32に該当するが、一般電話機(VoIP非対応の通常の電話機)と同様な外形的構成を持つ場合には、例えば10個程度のボタンによって当該操作部32が構成されることになる。
【0030】
呼制御部34は、呼制御メッセージを処理する部分である。当該端末22も、上述した端末11と同様に、re−INVITEメッセージの受信やTryingメッセージの送信などを行う必要があるが、これらの呼制御メッセージは当該呼制御部34によって処理される。したがって、通話相手の端末23から保留の指示が届き、当該端末22で保留音HA1をユーザU11に聴取させる必要が生じたことを端末22内で最初に検出するのは、この呼制御部34である。
【0031】
送受話部39は、ユーザU11が発話した音声を集音するマイクや、通話相手であるユーザU12が発話した音声を出力するスピーカを備えた部分である。前記保留音HA1は、その発生源がいずれであるかにかかわらず、当該スピーカから出力されて、ユーザU11に聴取される。
【0032】
残りの構成要素35〜38は本実施形態に特徴的な構成要素である。
【0033】
このうちローカル保留音発生部35は、当該端末22を利用するユーザU11に聴取させるための保留音HA1に対応する保留音情報を発生する部分である。従来、保留音情報は、必ず通話相手の端末23から届くものであったが、本実施形態では、当該ローカル保留音発生部35が供給することがある。
【0034】
当該ローカル保留音発生部35から符号化された状態の保留音情報を出力するようにすれば、制御部31が備える前記VoIP対応機能を活用することができるが、必ずしもその必要はない。目的の保留音HA1さえユーザU11に聴取させることができれば、ローカル保留音発生部35が発生した情報をどのように処理するかは、完全に、端末22内部の問題であるので、様々な構成が可能である。
【0035】
いずれにしても、当該ローカル保留音発生部35を用いれば、ネットワーク21の帯域の広さや、輻輳度合いなどの影響を受けることなく保留音HA1を出力することができる。これにより、例えば、ITU−T勧告G.722程度の高い音質を実現することは容易である。また、必ずしも、制御部31が復号のために実装している機能による復号処理を経る必要もないため、さらに高い音質の保留音HA1を出力できる可能性もある。
【0036】
なお、端末22内のローカル保留音発生部35が出力する保留音情報に対応する保留音HA1の場合、端末22の設定変更などにより、ユーザU11が保留音HA1の内容を自由に選べるように構成することは容易である。
【0037】
さらに、当該ローカル保留音発生部35を用いれば、保留音情報の伝送のためにネットワーク21の帯域が消費されることがないため、帯域の節約にも寄与する。
【0038】
リモート保留音検出部36は、保留を指示してきた相手の端末(ここでは、23)が、その指示につづいて保留音情報を送信した場合に、その保留音情報を検出する部分である。本実施形態では、相手の端末23が上述したように端末22と同じ構成を持つ場合には、保留を指示しても保留音情報は送信しない可能性がある。ただし、相手の端末23が既存のIP電話機である場合には、保留を指示してきたら必ず、保留音情報も送信してくる。
【0039】
相手の端末23が送信してきた保留音情報を無視して、ローカル保留音発生部35が発生する保留音情報に対応する保留音をユーザU11に聴取させる構成とすることも可能であるが、ここでは、端末23が保留音情報を送信してきた場合には、その保留音情報に対応する保留音HA1をユーザU11に聴取させるものとする。この端末23が送信してきた保留音情報に対応する保留音HA1の内容は端末23側で決まるものなので、ユーザU11の好みに応じて変更することは難しい。
【0040】
音源選択部37は、前記リモート保留音検出部36が、保留を指示してきた相手の端末23が送信した保留音情報を検出しなかった場合(すなわち、相手の端末23が保留音情報を送信しなかった場合)に機能する部分で、前記ローカル保留音発生部35または前記音源サーバ24のいずれかを選択し、選択したほうの保留音情報に対応した保留音HA1を、前記送受話部39から出力させる。ただし、音源サーバ24を選択した場合には、保留音情報を受信するため、当該端末22が音源サーバ24とのあいだでセッションを確立する必要がある。
【0041】
当該音源選択部37がいずれを選択するかは、例えば、予めユーザU11などが、当該端末22に設定した内容によって決めるようにするとよい。
【0042】
ネットワーク21の帯域を節約できる点などでは、ネットワーク21経由の通信が必要ないローカル保留音発生部35を選択するほうが有利であるが、音源サーバ24を用いると、音源サーバ24側に用意された豊富な保留音のなかから好みの保留音を選択できる点などで有利となる可能性がある。
【0043】
なお、端末22へ供給される保留音情報が、相手の端末23から届けられるケースと、音源サーバ24から届けられるケースを比べた場合、音源サーバ24と端末22のあいだのホップ数(ルータ(図示せず)の数)が、端末23と端末22のあいだのホップ数に比べて小さい場合などには、ネットワーク21の帯域の節約の観点で音源サーバ24のほうが有利であるといえる。また、この場合には、ネットワーク21のボトルネックの部分の帯域の影響を排除して保留音の音質を高めることができる点などでも、音源サーバ24のほうが有利であるといえる。
【0044】
前記リモート保留音発生部38は、当該端末22側から保留を指示するケースに、保留音情報を発生する部分である。
【0045】
音源サーバ24が存在しない場合や、通話相手の端末が、既存のIP電話機のように自身の内部で保留音を発生できない場合には、端末22側から保留を指示するとき、端末22内の当該リモート保留音発生部38が出力する保留音情報で通話相手に保留音を聴取させることが必要になる。相手の端末が、自身の内部で保留音を発生する機能を持つか否かをその電話番号などに対応付けて管理しておけば、相手の電話番号などに応じて、当該リモート保留音発生部38が発生した保留音情報を、相手の端末へ送信するか否かを制御することができる。
【0046】
すなわち、相手の端末が自身の内部で保留音を発生する機能を持つ場合や、音源サーバ24が存在し、相手の端末が音源サーバ24が送信する保留音情報を利用する機能を持つ場合には、端末22内の当該リモート保留音発生部38が発生する保留音情報を相手の端末に送信せず、そうでない場合には、送信するように制御することができる。
【0047】
また、本来、保留音情報を送信すべきタイミングで送信しないということは、SIPプロトコルの拡張とみることができるので、相手の端末(例えば、23)がこの拡張をサポートしているか否か(自身の内部で保留音を発生する機能などを持つか否か)を、INVITEメッセージ(re−INVITEメッセージ)に含まれるRequireヘッダやSupportedヘッダを使用して、その都度、確認し、確認の結果に応じて、当該リモート保留音発生部38が発生した保留音情報を相手の端末に送信するか否かを決めるようにしてもよい。
【0048】
ここで、当該Requireヘッダは、これから使用するSIPの拡張機能を記述して相手の端末に伝えるためのヘッダで、Supportedヘッダは自端末がサポートしているすべての機能を記述して相手の端末に伝えるヘッダである。
【0049】
既存のIP電話機の内部構成例を図4に示す。前記端末23が既存のIP電話機である場合、図4に示した構成を持つことになる。
【0050】
(A−1−2)既存のIP電話機の内部構成例
図4において、当該IP電話機(例えば、端末23)は、通信部40と、制御部41と、操作部42と、記憶部43と、呼制御部44と、リモート保留音発生部45と、送受話部46とを備えている。
【0051】
このうち通信部40は前記通信部30に対応し、制御部41は前記制御部31に対応し、操作部42は前記操作部32に対応し、記憶部43は前記記憶部33に対応し、呼制御部44は前記呼制御部34に対応し、リモート保留音発生部45は前記リモート保留音発生部38に対応し、送受話部46は前記送受話部39に対応するので、その詳しい説明は省略する。
【0052】
ただし、前記リモート保留音発生部45は、相手の端末(例えば、端末22)が、端末22と同じ構成を持つIP電話機であるか、既存のIP電話機であるかと無関係に、当該端末23側から保留を指示した場合には保留音情報を送信する。
【0053】
前記音源サーバ24の内部構成は、例えば、図5に示す通りであってよい。
【0054】
(A−1−3)音源サーバの内部構成例
図5において、当該音源サーバ24は、通信部50と、制御部51と、保留音発生部52と、記憶部53とを備えている。
【0055】
このうち通信部50は前記通信部30に対応し、制御部51は前記制御部31に対応し、保留音発生部52は前記リモート保留音発生部38に対応し、記憶部53は前記記憶部33に対応するので、その詳しい説明は省略する。
【0056】
ただし通信部50は、前記SIPサーバ25または保留音情報を届ける先の端末(例えば、22)と通信するだけである。
【0057】
保留音発生部52は、基本的に前記リモート保留音発生部35と同じであるが、多くのユーザ(その一人が、U11)の好みに合わせて、多種多様な保留音をデータベースに蓄積しておき、予めユーザが選択した保留音をそのユーザに対応付けておく。そして、そのユーザの端末へ保留音情報を送信するときには、対応付けてある保留音の保留音情報を送信する。
【0058】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について、図8のフローチャートと、図6、図7の動作シーケンスを用いて説明する。
【0059】
図8は、保留の指示を受ける端末の動作を示すフローチャートで、S30〜S36の各ステップを備えている。
【0060】
図6と図7は、VoIP通信システム10全体の動作を示す。図6は、保留の指示を受ける端末が自身で保留音を発生する場合の動作シーケンスで、S40〜S48の各ステップを備えている。また、図7は、音源サーバ24が保留音を発生する場合の動作シーケンスで、S50〜S67の各ステップを備えている。
【0061】
ここでも、ユーザU11とU12がVoIP通信による音声通話を行っている途中で、端末23側から保留を指示して、当該音声通話を一時中断するケースを想定する。
【0062】
(A−2)実施形態の動作
図6に示すように、端末22,23間ですでにセッションが確立され、端末22を利用するユーザU11と端末23を利用するユーザU12がVoIP通信で音声通話を行っている(S40)。このとき、例えば、第3の端末(図示せず)から呼設定を要求する呼制御メッセージが端末23に着信すると、それを契機として、ユーザU12が端末23の保留ボタン(自己保留ボタン)を押下し、当該端末23の呼制御部(例えば、44)からre−INVITEメッセージが送信される(S41)。re−INVITEメッセージは、セッションの内容の修正を要求する呼制御メッセージである。
【0063】
また、当該「re−INVITE」のあとの「SDP:a=sendonly」は、このre−INVITEメッセージのメッセージボディ中にSDP(セッション記述プロトコル)でa(すなわち、メディア属性)として、sendonly(送信専用)であることが記述されていることを意味する。このre−INVITEメッセージの送信元である端末23側からみて送信専用であるから、当該re−INVITEメッセージを受信する端末22側からみると受信専用のセッションとなる。
【0064】
このre−INVITEメッセージがSIPサーバ25に受信されると、SIPサーバ25は、端末23へTryingメッセージを送信し(S42)、端末22へre−INVITEメッセージを送信する(S43)。Tryingメッセージは、試行中であることを伝えるメッセージである。「Trying」の前の「100」は応答コードの一種であり、やはり試行中であることを意味する。
【0065】
当該re−INVITEメッセージを受信した端末22の呼制御部34は、SIPサーバ25へ、Tryingメッセージを送信し(S44)、つづいてOKメッセージを送信する(S45)。OKメッセージは、要求(この場合、保留によるセッションの内容の修正)を受け入れたこと(要求が成功したこと)を伝えるメッセージである。「OK」の前の「200」は応答コードの一種で、やはり、OK(要求が成功したこと)を意味する。
【0066】
当該OKメッセージを受信したSIPサーバ25は、OKメッセージを前記端末23に送信する(S46)。
【0067】
当該OKメッセージを受信した端末23の呼制御部は、SIPサーバ25へACKメッセージを送信する(S47)。このACKメッセージは、前記ステップS46のOKメッセージが正常に端末23まで届いたことの確認のためのメッセージである。
【0068】
当該ACKメッセージを受信したSIPサーバ25は、ACKメッセージを端末22に送信する(S48)。
【0069】
このACKメッセージを端末22内の前記呼制御部34が受信したことをもって、図8上では、被保留指示の受信(S30)が完了する。
【0070】
これにつづき、図8では、端末22内のリモート保留音検出部36がRTP(Real-time Transport Protocol)パケットの受信の有無を検出する状態となる(S31)。RTPパケットは、前記端末23が送信する可能性のある保留音情報を収容したパケットである。RTPパケットは、前記IPパケットに収容されてネットワーク21上を送信されるものである。当該RTPパケットは、ユーザU12の発話した内容を示す音声情報を収容するためにも用いられるが、前記ステップS48でACKメッセージを受信した直後に、端末22にRTPパケットが受信された場合、そのRTPパケットは保留音情報を収容したものであるとみなすことができる。
【0071】
必要ならば、所定の閾値(タイマ)TH1を設定し、ステップS48でACKメッセージを受信してから当該閾値TH1で指定される時間が経過するまでにRTPパケットが受信できなければ、端末23から保留音情報が送信されなかったものと判定するようにしてもよい。
【0072】
いずれにしても、このタイミングでRTPパケットが届いた場合には、ステップS31はYes側に分岐し、端末23から保留音情報が届いたものとみなす(S32)。この場合、その保留音情報に、復号などの処理を施し、その処理の結果を前記保留音HA1として送受話部39から出力するので、ユーザU11は、端末23から供給された保留音情報に対応する保留音HA1を聴取することになる。
【0073】
これに対し、このタイミングでRTPパケットが届かなかった場合、ステップS31はNo側に分岐して、ステップS33の検査が実行される。
【0074】
ステップS33では、前記音源選択部37が、保留音HA1の音源として、自音源(すなわち、ローカル保留音発生部35)または、サーバ音源(すなわち、音源サーバ24の保留音発生部52)のいずれかを選択する。この選択は、予めユーザU11などが、当該端末22に設定した内容を検査することによって行うものであってよい。
【0075】
検査の結果、自音源を選択したものであった場合には、処理はステップS34に進み、前記ローカル保留音発生部35に発生させた保留音情報に応じた保留音HA1を、送受話部39から出力する。この場合、ユーザU11は端末22内部で発生された保留音情報に応じた保留音HA1を聴取することになる。したがって当該保留音情報は、ネットワーク21を伝送する必要はない。また、どのような内容の保留音HA1を聴取するかは、ユーザU11が決めることができる。
【0076】
なお、当該保留を解除するときには、SIPサーバ25経由で相手の端末23から呼制御メッセージが届くため、保留音情報が相手の端末23から送信されたものでなくても、端末22では保留解除のタイミングを認識し、そのタイミングで保留音HA1の出力を停止すること等ができるから、端末22を利用するユーザU11は、保留解除後に端末23を利用するユーザU12と通話を再開することができる。
【0077】
一方、検査の結果、サーバ音源を選択したものであった場合には、処理はステップS35に進み、端末22の呼制御部34は、音源サーバ24と端末22とのあいだでセッションを確立し、音源サーバ24から保留音情報を受信する。
【0078】
このとき、端末22,SIPサーバ25、音源サーバ24のあいだでやり取りされる呼制御メッセージは、図7のステップS59〜S64に示す通りである。
【0079】
なお、図7のステップS50〜S58は、図6のステップS40〜S48に対応する。すなわち、ステップS50は前記ステップS40に対応し、ステップS51は前記ステップS41に対応し、ステップS52は前記ステップS42に対応し、ステップS53は前記ステップS43に対応し、ステップS54は前記ステップS44に対応し、ステップS55は前記ステップS45に対応し、ステップS56は前記ステップS46に対応し、ステップS57は前記ステップS47に対応し、ステップS58は前記ステップS48に対応するので、その詳しい説明は省略する。
【0080】
このステップS58につづくステップS59では、端末22が、音源サーバ24とのセッションの確立を要求するINVITEメッセージを、SIPサーバ25へ送信している。
【0081】
以降の処理は前記ステップS42〜S48と基本的に同じである。ただし、前記ステップS42〜S48がすでに確立されているセッションの内容を修正するためのものであったのに対し、ステップS59〜S64、S66,S67は、まったく新たにセッションを確立するためのものである点が相違するだけである。
【0082】
ステップS60〜S64、S66,S67のうち、ステップS60は前記ステップS43に対応し、ステップS61は前記ステップS44に対応し、ステップS62は前記ステップS42に対応し、ステップS63は前記ステップS45に対応し、ステップS64は前記ステップS46に対応し、ステップS66は前記ステップS47に対応し、ステップS67は前記ステップS48に対応する。
【0083】
セッションが確立され、保留音情報を送信してもよい状態になると、前記音源サーバ24は、端末22へ保留音情報を送信する(S65)。これを受信した端末22は、相手の端末23から保留音情報を受信する場合と同様の処理で、当該保留音情報を処理し、前記送受話部39から当該保留音情報に対応する保留音HA1を出力する。
【0084】
このように音源サーバ24が送信した保留音情報を用いる場合には、ネットワーク21の帯域は消費されるが、上述したように、端末23と端末22のあいだのホップ数に比べて音源サーバ24と端末22のあいだのホップ数が小さい場合などには、ネットワーク21の帯域の節約の観点でも音源サーバ24を用いるほうが有利であるといえる。また、この場合には、ネットワーク21のボトルネックの部分の帯域の影響を排除して保留音の音質を高めることができる可能性も高い。
【0085】
(A−3)実施形態の効果
本実施形態によれば、端末(22)自身のローカル保留音発生部(35)を用いる場合には、ネットワーク(21)の帯域を節約することができる。また、音源サーバ(24)を用いる場合にも、ネットワークの帯域を節約できる可能性がある。
【0086】
また、本実施形態では、ローカル保留音発生部を用いる場合でも、音源サーバを用いる場合でも、保留音(HA1)の内容に、聴取するユーザ(U11)の好みを反映することができ、音質を高めることも可能であるから、柔軟性が向上する。
【0087】
(B)他の実施形態
上記実施形態にかかわらず、端末22のローカル保留音発生部35と、音源サーバ24は、いずれか一方を省略することもできる。
【0088】
なお、上記実施形態では、1対1の通信に本発明を適用したが、本発明は、1対多の通信にも適用できる。
【0089】
また、上記実施形態では、音を前提としたが、本発明は、音以外のマルチメディア情報に適用できる可能性がある。例えば、テレビ電話システムなどでは、保留音とともに、または、保留音に替えて、保留用の画像を相手に目視させる構成もあり得、そのようなケースに本発明を適用することは効果的である。
【0090】
さらに、通常、リアルタイム性の高い通信にしか保留を実施する必要はないものと考えられるが、リアルタイム性の低い通信であっても、保留を実施する可能性のある場合には、本発明を適用することができる。
【0091】
なお、上記実施形態で用いた通信プロトコルは必要に応じてその他の通信プロトコルに置き換えてもよい。
【0092】
例えば、IPプロトコルの替わりに、IPXプロトコルなどを用いることができる可能性がある。
【0093】
以上の説明でハードウエア的に実現した機能の大部分はソフトウエア的に実現することが可能であり、ソフトウエア的に実現した機能のほとんど全ては、ハードウエア的に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施形態にかかるVoIP通信システムの全体構成例を示す概略図である。
【図2】従来の保留音送出時の動作を示すシーケンス図である。
【図3】実施形態にかかるVoIP通信システムで使用する端末の内部構成例を示す概略図である。
【図4】既存のIP電話機の内部構成例を示す概略図である。
【図5】実施形態にかかるVoIP通信システムで使用する音源サーバの内部構成例を示す概略図である。
【図6】実施形態にかかるVoIP通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図7】実施形態にかかるVoIP通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図8】実施形態にかかるVoIP通信システムの動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
10,25…SIPサーバ、11,12,22,23…端末、21…ネットワーク、24…音源サーバ、30,40,50…通信部、31,41,51…制御部、32,42…操作部、33,43,53…記憶部、34,44…呼制御部、35…ローカル保留音発生部、36…リモート保留音検出部、37…音源選択部、38、45…リモート保留音発生部、39,46…送受話部、52…保留音発生部、HA1…保留音。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信システムにおいて、
前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末は、
前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出する保留指示検出部と、
当該保留指示検出部が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、前記保留信号を供給する保留信号供給部とを備えたことを特徴とするリアルタイム通信システム。
【請求項2】
請求項1のリアルタイム通信システムにおいて、
前記保留信号源通信端末または第1の通信端末は、
前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出したあと、前記第2の通信端末から保留信号が送信されたか否かを判定する保留信号送信判定部と、
当該保留信号送信判定部が、前記第2の通信端末から保留信号が送信されたと判定した場合にはその保留信号を、前記ユーザインタフェースから出力させ、送信されなかったと判定した場合には、前記保留信号供給部が供給する保留信号を、前記ユーザインタフェースから出力させる保留信号出力制御部とを備えたことを特徴とするリアルタイム通信システム。
【請求項3】
請求項2のリアルタイム通信システムにおいて、
前記第1の通信端末は、
前記保留信号送信判定部が、前記第2の通信端末から保留信号が送信されなかったと判定した場合、第1の通信端末自身が備える前記保留信号供給部から供給される保留信号、または前記保留信号源通信端末が備える保留信号供給部から供給される保留信号のいずれかを選択する供給源選択部を備え、
当該供給源選択部が選択したほうの保留信号を前記ユーザインタフェースから出力することを特徴とするリアルタイム通信システム。
【請求項4】
第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信方法において、
前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末では、
保留指示検出部が、前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出し、
当該保留指示検出部が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、保留信号供給部が、前記保留信号を供給することを特徴とするリアルタイム通信方法。
【請求項5】
第1の通信端末と第2の通信端末のあいだで呼を設定してリアルタイム通信を行っている状態で、第2の通信端末のほうから保留を指示して当該リアルタイム通信を一時中断し、保留解除するまでのあいだに、保留されたほうの第1の通信端末のユーザインタフェースを介して、前記リアルタイム通信による信号の替わりに所定の保留信号を出力するリアルタイム通信プログラムにおいて、前記第2の通信端末以外の保留信号源通信端末、または前記第1の通信端末では、コンピュータに、
前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出する保留指示検出機能と、
当該保留指示検出機能が前記第2の通信端末から保留の指示が出されたことを検出すると、前記保留信号を供給する保留信号供給機能とを実現させることを特徴とするリアルタイム通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−13916(P2006−13916A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188456(P2004−188456)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503334150)株式会社沖テクノクリエーション (52)
【Fターム(参考)】