説明

リグニン樹脂組成物及び成形材料

【課題】 硬化性に優れたリグニン樹脂組成物及びこれを用いた成形材料を提供する。
【解決手段】 リグニン化合物と、架橋剤とを必須成分とする樹脂組成物であって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするリグニン樹脂組成物。前記リグニン誘導体における反応性基は、エポキシ基を有するリグニン樹脂組成物。前記リグニン樹脂組成物と、充填材を含む成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性リグニン樹脂組成物及び成形材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源代替資源の開発という目的のために、バイオマスを利用する技術の開発が注目されている。バイオマスの一種として、樹木中に存在するリグニンが知られている。リグニンの用途として、主に燃料やセメント用の減水剤が知られている。また、リグニンのフェノール性構造を多く含む構造を活かして、古くからリグニンをベース樹脂として利用したフェノール樹脂やエポキシ樹脂等樹脂原料としての利用が検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。前記樹脂原料として、リグニンに、エポキシ基等の架橋用官能基を導入する場合、リグニンにおける反応性の低いアルコール性水酸基が、前記官能基の導入を阻害する。舩岡らの報告では、フェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比は、およそ0.8:1.0〜1.5:1.0程度である(例えば、非特許文献1参照。)。また、リグニンにエポキシ基等の架橋用官能基を導入する場合、アルコール性OH基は反応性が劣るため、予めフェノール化合物を導入する必要があった。長谷川らはリグノフェノールのエポキシ化を検討しているが、フェノール性OH基を増加させているにもかかわらず、エポキシ基の導入率が20%前後と低くなる問題があった(例えば、非特許文献2参照。)。そのため、これらのリグノフェノールやそのエポキシ化物は成形材料に適用した場合、硬化性や耐熱性が劣るという問題点があった。
【特許文献1】特開2004−238539号公報
【非特許文献1】K. Mikame, M. Funaoka, Polym. J., 38, 585−591, 2006J
【非特許文献2】. Kadota, K. Hasegawa, M. Funaoka Journal of Network Polymer. Japan, 27, 118−125, 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、リグノフェノール誘導体は反応性基の導入率が低いという問題も生じており、リグニン分解物への反応性基の導入率とリグニン樹脂の硬化性の向上が求められている。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、硬化性に優れたリグニン樹脂組成物及びこれを用いた成形材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フェノール性水酸基又はそれ以外の反応性基を特定の割合で有するリグニン化合物及び架橋剤を用いることにより、優れた硬化性と物性を実現できる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は下記第(1)項〜第(4)項により達成される。
(1) リグニン化合物と、架橋剤とを必須成分とする樹脂組成物であって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするリグニン樹脂組成物。
(2) 前記リグニン樹脂組成物は、リグニン化合物の含有量が40〜95wt%、架橋剤の含有量が5〜60wt%である第(1)項に記載のリグニン樹脂組成物。
(3) 前記反応性基は、エポキシ基を有する第(1)項又は第(2)項に記載のリグニン樹脂組成物。
(4) 第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物と、充填材を含む成形材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、硬化性に優れたリグニン樹脂組成物が得られる。本発明のリグニン樹脂組成物を用いた成形材料も硬化性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、リグニン化合物と、架橋剤とを必須成分とする樹脂組成物であって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物(以下、リグニン分解物と称することがある。)、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするリグニン樹脂組成物である。これにより、硬化性に優れたリグニン樹脂組成物及びこれを用いた成形材料を提供できる。
上記リグニン化合物におけるフェノール性水酸基を有する構造としては、例えば、フェノール構造、グアヤコール構造および2,6−ジメトキシフェノール構造など挙げることができる。
【0008】
本発明に用いるリグニン化合物におけるリグニン分解物は、バイオマスを分解して得られるものであって、フェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するものである。また、該リグニン化合物にフェノール性水酸基以外の反応性基を有するリグニン誘導体は、後述するエポキシ基、ビニル基、エチニル基、マレイミド基、シアネート基及びイソシアネート基等の反応性基を、前記フェノール性水酸基に導入したものである。前記リグニン誘導体を含めたリグニン化合物は、架橋部位を多数有するため、成形材料などに用いた場合、硬化性及び耐熱性などの特性に優れたものとなる。本発明に用いるリグニン化合物としては、上記の中でも、反応性や取扱いのし易さの上で、リグニン分解物が好ましい。
【0009】
前記バイオマスとしては、リグニンを含有する植物及び前記植物の加工品などを挙げることができる。前記植物としては、例えば、ブナ、白樺及びナラなどの広葉樹、杉、松及び桧などの針葉樹、竹及び稲わらなどのイネ科植物などが挙げられる。本発明に用いるバイオマスの形状としては、ブロック、チップ、粉末等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いるリグニン化合物におけるリグニン分解物は、前記バイオマスを、溶媒存在下、高温高圧処理により分解することにより得ることができる。
リグニン化合物の製造方法の具体例としては、まず、前記バイオマスを一定の大きさに調整し、次いで、これを、溶媒、任意に触媒、と共に、撹拌機及び加熱装置付の耐圧容器に入れて、加熱及び加圧をしながら、撹拌して、前記バイオマスの分解処理を行う。次いで、耐圧容器の内容物をろ過して、ろ液を除去し、水不溶分を水で洗浄し、分離する。次いで、前記水不溶分を、リグニン化合物が可溶な溶媒、例えば、アセトンなどに浸漬して、リグニン化合物をアセトンに抽出して、前記アセトンを留去することにより、リグニン分解物としてリグニン化合物を得ることができる。
【0011】
前記分解処理におけるバイオマスの大きさとしては、100μm〜1cm程度が好ましく、200μm〜500μmがより好ましい。このときバイオマスの形状としては、上記のように、ブロック状、チップ状、粉末状等のいずれであってよい。
【0012】
前記分解処理における溶媒としては、水、メタノール及びエタノールなどのアルコール類、フェノール及びクレゾールなどのフェノール類、ケトン類、エーテル類などを挙げることができ、特に水を使用することが好ましい。溶媒の使用量としては、バイオマスに対して多量に用いるほど好ましいが、バイオマス重量の2重量倍から10重量倍程度が好ましく、3重量倍から5重量倍程度がより好ましい。また触媒として炭酸ナトリウムなどの無機塩基類を添加してもよい。
【0013】
前記バイオマスを高温高圧で処理する条件としては、処理温度として通常は150℃から400℃が好ましく、さらに好ましくは200℃から380℃である。前記処理温度は、前記範囲外でも使用できるが、リグニン化合物の分子量は処理温度で制御可能であり、高温で処理すると低分子量体に、低温で処理すると高分子量体になる傾向がある。
【0014】
前記処理時間としては通常は0分から480分が好ましく、さらに好ましくは30分から120分である。前記処理時間は、前記範囲外でも使用できるが、リグニン化合物のフェノール性水酸基当量は処理時間で制御可能であり、短時間処理でフェノール性水酸基当量は大きくなり、長時間処理では小さくなる傾向となる。前記圧力としては1.0MPaから40MPaが好ましく、さらに好ましくは1.5MPaから25MPaである。前記圧力は、前記範囲外でも使用できるが、より高圧で処理することで、長時間処理を施した場合と同等の効果が得られる。
【0015】
上記範囲内の条件でバイオマスを処理することで、300から2,000程度と好ましい範囲の数平均分子量となると共に、さらには、本発明におけるリグニン化合物として、好ましいフェノール性水酸基当量である100から200程度のフェノール性水酸基当量に制御しやすくなる。
また、前記製造方法の具体例においては、フェノール性水酸基当量と分子量は独立に制御が可能であり、例えば、処理温度にかかわらず、短時間処理によりフェノール性水酸基当量(主にフェノール性水酸基)が200前後と大きいものが得られ、長時間処理により100前後で飽和して小さなフェノール性水酸基当量が得られる。
【0016】
上記に例示した製造方法などで得られたリグニン分解物は、フェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するものであることを特徴とする。
前記リグニン分解物は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2,000であることが好ましい。前記範囲外でも使用できるが、300より小さいと、リグニン分解物として、単官能のモノマーやオリゴマーが存在し、硬化物とした場合に架橋密度が低下し、硬化性に劣ることになる場合があり、2,000より大きいと、リグニン分解物の軟化点が高くなりすぎて、成形しにくくなる問題が発生する場合がある。数平均分子量については、リグニン誘導体においても同様である。
【0017】
また、本発明に用いるリグニン化合物におけるリグニン誘導体は、前記リグニン分解物にフェノール性水酸基以外の反応性基を導入したものであり、樹脂原料として有用な反応性を有し、高い架橋密度を得ることができる。
【0018】
前記リグニン誘導体が有する反応性基は、反応性を有する基であり、その反応性基が自己反応性を有し、2個以上の同じ反応性基が互いに反応し得るもの、または他の官能基との間で反応し得るものであればよく、例えば、エポキシ基、ビニル基及びエチニル基などの炭素−炭素不飽和結合基、マレイミド基、シアネート基、イソシアネート基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、硬化物の寸法安定性や耐水性、耐薬品性および電気絶縁性が高いことからエポキシ基が好ましい。
【0019】
前記リグニン誘導体の製造方法は、当業者において、一般的に、フェノール性水酸基に、反応性基を、共有結合を介して結合させる公知の方法を用いることができ、適宜、反応性基の導入方法は選択することができる。具体例としては、上記で得られたリグニン分解物のフェノール性水酸基に、前記反応性基を導入して得ることができる。
【0020】
以下に、反応性基の導入方法の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
反応性基としてエポキシ基を導入する場合、例えば、上記で得たリグニン分解物を、エピクロロヒドリンに溶解し、減圧還流下、水酸化ナトリウムなどの塩基触媒を用いて反応させることで得られる。
【0021】
また、反応性基としてビニル基を導入する場合、例えば、ハロゲン化アリル及びハロゲン化ビニルベンジル等のビニル基を含むハロゲン化合物と、上記で得たリグニン分解物を、溶剤に溶解し、加熱して、水酸化ナトリウムなどの塩基触媒を用いて反応させることで得られる。
【0022】
本発明に用いる架橋剤としては、リグニン化合物のフェノール性水酸基又は反応性基を有するリグニン化合物(リグニン誘導体)の反応性基と反応する官能基を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0023】
リグニン化合物としてリグニン分解物を用いる場合の架橋剤としては、リグニン化合物に含まれるフェノール性水酸基に対しては、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート等のウレタン樹脂、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びパラホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ポリオキシメチレンなどのアルデヒド源、ヘキサメチレンテトラミン、並びにレゾール型フェノール樹脂等の通常のフェノール樹脂で当業者が公知の架橋剤や、リグニン分解物の芳香環に対し親電子置換反応して架橋し得る化合物を挙げることができる。反応性、入手の容易さからヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
【0024】
また、反応性基を有するリグニン化合物(リグニン誘導体)を用いる場合の架橋剤としては、該反応性基と反応する架橋剤又は自己架橋性の反応性基を有する架橋剤であれば良い。
リグニン誘導体として、エポキシ基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なエポキシ樹脂用硬化剤であればよく、例えば、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;本発明のフェノール性水酸基を有するリグニン化合物;ジエチレントリアミン、m−キシリレンジアミン及びN−アミノエチルピペラジン等のアミン系化合物;無水フタル酸、無水コハク酸及び無水マレイン酸等の酸無水物;ジシアンジアミド、グアニジン類、2−メチルイミダゾール;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のエポキシ樹脂のアニオン系硬化剤などが挙げられる。エポキシ基の自己架橋においては、例えば、2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのアニオン系重合開始剤;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロポスフェート及びジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート等のスルホニウム塩、並びにフェニルジアゾニウムヘキサフルオロポスフェート及びフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート等のジアゾニウム塩などのカチオン系重合開始剤;などが挙げられる。これらの中でも、反応性などの上で、リグニン化合物が好ましい。
【0025】
リグニン誘導体として、イソシアネート基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なイソシアネート樹脂用硬化剤であればよく、例えば、フェノール樹脂、リグニン分解物、ポリビニルアルコール及びポリアミン系化合物などを挙げることができる。
【0026】
リグニン誘導体として、ビニル基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なビニル基含有化合物の重合開始剤であればよく、例えば、ブチルリチウム及びナトリウムエトキシド等のアニオン重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び過酸化ベンゾイル(BPO)等のラジカル重合開始剤などを挙げることができる。
【0027】
リグニン誘導体として、エチニル基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なエチニル基含有化合物の重合触媒であればよく、例えば、5塩化モリブデン、5塩化タングステン及びノルボルナジエンロジウムクロリドダイマーなどを挙げることができる。
【0028】
リグニン誘導体として、マレイミド基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なマレイミド基含有化合物の重合開始剤であればよく、例えば、BPO等のパーオキサイド及び前記アニオン系重合開始剤などを挙げることができる。
【0029】
リグニン誘導体として、シアネート基を有するリグニン化合物を用いた場合の架橋剤としては、一般的なシアネート基含有化合物の重合触媒であればよく、例えば、ナフテン酸コバルトなどの金属触媒などを挙げることができる。
【0030】
本発明のリグニン樹脂組成物には、リグニン化合物を40〜95重量部用いることが好ましく、50〜90重量部用いることがより好ましい。また架橋剤は5〜60重量部用いることが好ましく、10〜50重量部用いることがより好ましい。
【0031】
本発明のリグニン樹脂組成物には、上記成分以外に、任意に、硬化促進剤として、メトキシナトリウム及びt−ブトキシカリウムなどのアルカリ金属塩;酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩;Na2O及びK32などのアルカリ金属酸化物;CaO及びBaOなどのアルカリ土類金属酸化物;などを用いることができる。また、リグニン誘導体としてエポキシ基を有するリグニン化合物では、2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;トリフェニルホスフィン、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどを用いることができる。また、反応性基として、ビニル基、エチニル基、マレイミド基及びシアネ−ト基などを有するリグニン誘導体の場合、前記重合開始剤を用いることができる。
更には、その他の成分として、後述する添加剤を用いることができる。
【0032】
本発明のリグニン樹脂組成物の製造方法としては、リグニン化合物、硬化剤、及び任意に、硬化促進剤を、所定の量で、混合機を用いて、均一に混合して得ることができる。これらの混合物を、必要に応じて、熱板や、加圧ニーダー、ロール、コニーダーおよび二軸押し出し機等の混練機等を用いて、樹脂組成物が硬化する温度未満で、例えば、選択する原料により異なるが、50〜100℃程度で、加熱溶融混合しても良い。
【0033】
本発明の成形材料は、上記リグニン樹脂組成物と充填剤を含むものである。
前記充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、クレー、アルミナ、マイカ及びガラス繊維などの無機充填剤、木粉、パルプ、粉砕布及び熱硬化性樹脂硬化物粉などの有機充填剤等が挙げられ、これらの1種類以上を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の成形材料において、上記リグニン樹脂組成物と充填剤の含有量としては、リグニン樹脂組成物100重量部に対して、10〜900重量部が好ましく、20〜500重量部がより好ましい。
【0035】
本発明の成形材料には、上記成分の他に任意に、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン及びビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤;カーボンブラック及びベンガラ等の着色剤;ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類及び水素硬化油等の合成ワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス及びステアリン酸等の天然ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類又はパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル及びシリコーンゴム等の低応力化成分;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛及びフォスファゼン等の難燃剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0036】
本発明において、離型剤を用いる場合、リグニン化合物100重量部に対して0.01〜10重量部用いることが好ましく、0.1〜5重量部用いることがより好ましい。前記範囲外でも使用できるが、0.01重量部未満では離型性が不十分となるおそれがあり、10重量部を超えると硬化性が低下するおそれがある。
【0037】
本発明の成形材料の製造方法としては、例えば、上記リグニン樹脂組成物、充填剤、及び任意にその他の成分を、所定の量で、混合機を用いて、均一に混合して得ることができる。前記樹脂組成物と同様の方法により、必要に応じて加熱混合、混連等を行い、冷却後に粉砕して得られる。
【0038】
本発明では、これまでに述べてきた樹脂組成物および樹脂成形材料を、トランスファー成形、インジェクション成形及び圧縮成形などの成形方法により、150〜220℃程度の温度で、1〜5分間程度時間で、加熱成形して成形品とすることができる。これらの成形温度や時間は、目的に応じて適宜調整される。
前記成形品としては、例えば、半導体用途、航空機用途、自動車用途及び産業用機械用途等の、電子部品、電気部品及び機構部品等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されない。
【0040】
(リグニン分解物の製造)
<実施例1>
300ml耐圧容器中へ、孟宗竹粉(60メッシュアンダー)15gと純水80gを導入し、内容物を300rpmで攪拌しながら、圧力1.6MPa、200℃で120分間処理して、孟宗竹を分解した。次いで、分解物をろ過し、純水で洗浄することで、水不溶部10.0gを分離した。この水不溶部をアセトン200mlに12時間浸漬し、ろ過することでアセトン可溶部を回収した。次いで、前記アセトン可溶部より、アセトンを留去後、乾燥することで、リグニン分解物3.2gを得た。1H−NMRにより測定した結果から、7から8ppmに芳香環、3.5から4ppm付近にメトキシ基、0.5から3ppmにかけてアルキル基のピークが見られ、リグニン分解物であることを確認した。
【0041】
上記で得られたリグニン分解物の水酸基当量は、以下の方法で決定した。共栓三角フラスコに、無水酢酸/ピリジン(1/3容量比)混合溶液4.0gと、上記で得たリグニン分解物1.0gを入れて溶解させた。この溶液を60℃で3時間保持した後、純水1mlを添加した。このようにして得られた溶液を、pH=10を終点として、0.1mol/LのNaOH水溶液で滴定したところ、リグニン分解物の水酸基当量は118であった。
【0042】
また、上記で得られたリグニン分解物中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基のモル比(以下P/A比)は以下の方法で決定した。上記で得られたリグニン分解物1.0gを、無水酢酸/ピリジン(1/3容量比)混合溶液4.0gを用いて、前記リグニン分解物をアセチル化した。この反応溶液より、未反応の無水酢酸およびピリジンを留去し、乾燥して得られたアセチル化したリグニン分解物を用いて、1H−NMRにより測定した。アセチル基由来のプロトンの積分比(フェノール性水酸基に結合したアセチル基由来:2.2〜2.6ppm、アルコール性水酸基に結合したアセチル基由来:1.6〜2.2ppm)から、モル比を決定したところ、前記P/A比は8.9:1.1であった。
【0043】
また、上記で得られたリグニン分解物の軟化点は、JIS K2207に準じて、環球式軟化点試験機(メルテック(株)製ASP−MG2型)を用いて測定したところ、95℃であった。
【0044】
また、上記で得られたリグニン分解物の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=1000、分子量分布(Mw/Mn)=2.02であった。
【0045】
(樹脂組成物の製造)
上記リグニン分解物の製造を繰り返して得られたリグニン分解物91重量部に、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0046】
<実施例2>
実施例1におけるリグニン分解物の製造と同様の操作により得られたリグニン分解物49重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)42重量部、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0047】
<実施例3>
実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を300℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、リグニン分解物3.6gを得た。ここで得られたリグニン分解物を、実施例1と同様にして評価のところ、水酸基当量=171、P/A比=8.5:1.5、軟化点88℃、Mn=570、Mw/Mn=1.24であった。
上記リグニン分解物の製造を繰り返して得られたリグニン分解物91重量部に、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0048】
<実施例4>
実施例3と同様に、実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を300℃に変更した以外は実施例1と同様にして、リグニン分解物を得た。これを繰り返して得られたリグニン分解物49重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)42重量部、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0049】
<実施例5>
実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を150℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、リグニン分解物3.5gを得た。ここで得られたリグニン分解物を、実施例1と同様にして評価のところ、水酸基当量=122、P/A比=8.1:1.9、軟化点121℃、Mn=1800、Mw/Mn=1.82であった。
上記リグニン分解物の製造を繰り返して得られたリグニン分解物91重量部に、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0050】
<実施例6>
実施例5と同様に、実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を150℃に変更した以外は実施例1と同様にして、リグニン分解物を得た。これを繰り返して得られたリグニン分解物49重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)42重量部、ヘキサメチレンテトラミン9重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0051】
(リグニン誘導体の製造)
<実施例7>
攪拌装置、冷却器及び滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、実施例1と同様にして得たリグニン分解物1.2gと、エピクロロヒドリン100.0gを加え、133hPaの圧力下で、減圧還流しながら、20%濃度のNaOH水溶液2.0gを、30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持して、反応混合物を得た。反応混合物は、不溶部を濾過して取り除き、エピクロロヒドリン可溶部を単離した。このエピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去し、乾燥することで、エポキシ基を有するリグニン誘導体0.8gを得た。
上記で得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体の構造を1H−NMRで確認したところ、リグニン分解物のピークに加えて2.7、2.9、3.3、3.5、3.9ppmにエポキシ基由来のピークが観測された。
エポキシ基を有するリグニン誘導体の分子量は、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、Mn=950、Mw/Mn=3.67であった。
エポキシ基を有するリグニン誘導体のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、390であった。
【0052】
(樹脂組成物の製造)
上記リグニン誘導体の製造の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体79重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)21重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0053】
<実施例8>
実施例7におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体50重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)25重量部、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(軟化点:65℃、エポキシ当量:210)25重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0054】
<実施例9>
実施例7におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体23重量部と実施例1におけるリグニン分解物の製造と同様の操作を繰り返して得たリグニン誘導体77重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0055】
<実施例10>
実施例7におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体100重量部と、2−メチルイミダゾール2重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0056】
<実施例11>
実施例7において、リグニン分解物を、実施例3で得たものに変更した他は、実施例7と同様に行い、エポキシ基を有するリグニン誘導体0.9gを得た。ここで得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体を、実施例7と同様にして評価のところ、分子量は、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、Mn=750、Mw/Mn=2.89であった。
エポキシ基を有するリグニン誘導体のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、540であった。
【0057】
(樹脂組成物の製造)
上記リグニン誘導体の製造の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体84重量部に、軟化点が105℃で水酸基当量104のフェノールノボラック16重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0058】
<実施例12>
実施例11におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体60重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)20重量部、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(軟化点:65℃、エポキシ当量:210)20重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0059】
<実施例13>
実施例11におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体24重量部と実施例3におけるリグニン分解物の製造と同様の操作を繰り返して得たリグニン誘導体76重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0060】
<実施例14>
実施例11におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作により得たエポキシ基を有するリグニン誘導体100重量部と、2−メチルイミダゾール2重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0061】
<実施例15>
実施例7において、リグニン分解物を、実施例5で得られたものに変更した以外は、実施例7と同様に行い、エポキシ基を有するリグニン誘導体0.7gを得た。ここで得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体を、実施例7と同様にして評価のところ、分子量は、Mn=2000、Mw/Mn=3.47であった。
エポキシ基を有するリグニン誘導体のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、620であった。
【0062】
(樹脂組成物の製造)
上記リグニン誘導体の製造の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体86重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)14重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0063】
<実施例16>
実施例15におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作により得たエポキシ基を有するリグニン誘導体44重量部に、軟化点が105℃で水酸基当量104のフェノールノボラック28重量部、軟化点が65℃でエポキシ当量210のオルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂28重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0064】
<実施例17>
実施例15におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグニン誘導体16重量部と実施例5におけるリグニン分解物の製造と同様の操作を繰り返して得たリグニン誘導体84重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0065】
<実施例18>
実施例15におけるリグニン誘導体の製造と同様の操作により得たエポキシ基を有するリグニン誘導体100重量部と、2−メチルイミダゾール2重量部を、常温で混合し、リグニン樹脂組成物を得た。
【0066】
<比較例1>
(リグノフェノール誘導体の製造)
非特許文献1(K. Mikame, M. Funaoka, Polym. J., 38, 585−591, 2006J)に準じて、リグノフェノール誘導体を以下の方法で合成した。
孟宗竹粉10gを、500ml容ビーカーにとり、p−クレゾールのアセトン溶液(リグニン構成単位当たり3モル倍量のフェノール誘導体を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、24時間静置させた。その後、アセトンを完全に留去して、p−クレゾール吸着木粉を得た。この竹粉に対して、72wt%硫酸100mlを加え、30℃で、1時間激しく撹拌した混合物を、大過剰の水に投入した溶液から、不溶解区分を回収、脱酸し、乾燥して、リグノフェノール誘導体を得た。このリグノフェノール誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、Mn=3600、OH当量=143g/eq、P/A比=5.8:4.2であった。
【0067】
(樹脂組成物の製造)
上記リグノフェノール誘導体の製造の操作を繰り返して得たリグノフェノール誘導体92重量部に、ヘキサメチレンテトラミン8重量部を、常温で混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0068】
<比較例2>
(リグノフェノール誘導体の製造)
非特許文献2(Kadota, K. Hasegawa, M. Funaoka Journal of Network Polymer. Japan, 27, 118−125, 2006)に準じて、比較例1で得たリグノフェノール誘導体を以下の方法でエポキシ化した。攪拌装置、冷却器及び滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、比較例1と同様の操作で得たリグノフェノール誘導体1.4gとエピクロロヒドリン100.0gを投入し、133hPaに減圧還流しながら、20%NaOH水溶液1.0gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持した。反応混合物から不溶部を濾過して除き、エピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去し、乾燥することで、エポキシ化リグノフェノール1.3gを得た。得られたエポキシ基を有するリグノフェノール誘導体を、実施例7と同様にして評価のところ、Mn=2400、エポキシ当量は790であった。
【0069】
(樹脂組成物の製造)
上記リグノフェノール誘導体の製造の操作を繰り返して得たエポキシ基を有するリグノフェノール誘導体88重量部に、軟化点が105℃で水酸基当量104のフェノールノボラック12重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を、常温で混合し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0070】
(成形材料の製造)
<実施例19>
実施例1と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0071】
<実施例20>
実施例2と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0072】
<実施例21>
実施例3と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0073】
<実施例22>
実施例4と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0074】
<実施例23>
実施例5と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0075】
<実施例24>
実施例6と同様のリグニン樹脂組成物100重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0076】
<実施例25>
実施例7と同様のリグニン樹脂組成物101重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0077】
<実施例26>
実施例8と同様のリグニン樹脂組成物101重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0078】
<実施例27>
実施例9と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0079】
<実施例28>
実施例10と同様のリグニン樹脂組成物102重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0080】
<実施例29>
実施例11と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0081】
<実施例30>
実施例12と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0082】
<実施例31>
実施例13と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0083】
<実施例32>
実施例14と同様のリグニン樹脂組成物102重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0084】
<実施例33>
実施例15と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0085】
<実施例34>
実施例16と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0086】
<実施例35>
実施例17と同様のリグニン樹脂組成物101重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0087】
<実施例36>
実施例18と同様のリグニン樹脂組成物102重量部に、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0088】
<比較例3>
比較例1と同様の操作により得たリグノフェノール誘導体92重量部に、ヘキサメチレンテトラミン8重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0089】
<比較例4>
比較例2と同様の操作により得たエポキシ基を有するリグノフェノール誘導体88重量部に、ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)12重量部、破砕状溶融シリカ(平均粒径10μm)300重量部、トリフェニルホスフィン1重量部を配合し、熱ロールで90℃5分間混練して成形材料を得た。
【0090】
(樹脂組成物及び成形材料の評価)
実施例1〜18および比較例1、2で得られた樹脂組成物の硬化特性を評価することを目的として、下記測定方法によりキュラストメーターの最高トルクの評価をした結果を表1に示した。
実施例19〜36および比較例3、4で得られた成形材料を用いて、下記測定方法によりバーコール硬度の評価をした結果を表2に示した。
【0091】
キュラストメーター測定方法
試験に供すべき樹脂組成物を約4.3gとり、キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIV PS型)を用い、測定温度175℃、振幅角1°にてトルクの経時変化測定を行なった。このようにして得たトルクの経時変化曲線から、得られる最高トルク値を読み取った。
【0092】
バーコール硬度測定方法
JIS−K6911に準ずる吸水円盤作製金型を用いて、175℃、120秒成形した後、即座に取り出して175℃に加熱した熱板上に10秒間放置し、直ちに成形品の熱時硬度を、バーコール硬度計(GYZJ935)を用いて測定した。この数値が大きいほど硬化性が高いことを示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1から、本発明のリグニン樹脂組成物熱は、比較例に比べて、硬化度に優れるものであった。表2によれば、本発明の成形材料は、比較例に比べて、硬化性に極めて優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明により得られるリグニン樹脂組成物及び成形材料は、硬化性に優れることから、電気部品、電子部品、自動車用部品等の用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン化合物と、架橋剤とを必須成分とする樹脂組成物であって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするリグニン樹脂組成物。
【請求項2】
前記リグニン樹脂組成物は、リグニン化合物の含有量が40〜95wt%、架橋剤の含有量が5〜60wt%である請求項1に記載のリグニン樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応性基は、エポキシ基を有する請求項1又は2に記載のリグニン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物と、充填材を含む成形材料。

【公開番号】特開2009−227890(P2009−227890A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77377(P2008−77377)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】