説明

リチウムイオン電池

電極コアと、電解液と、金属シェルと、端部カバー組立体とを備えるリチウムイオン電池が本明細書中に開示され、上記金属シェルは、外壁と、内壁と、チャンバとを含み、上記電極コア及び上記電解液は、金属シェルのチャンバ内に配置され、且つ上記電極コアは、電極コアの電極端子で端部カバー組立体と接続し、上記電極コアの数が2つ以上であり、且つ複数の電極コアが金属シェルのチャンバ内に配置される。本発明によるリチウムイオン電池は、優れた放熱性、高い機械的安全性、及び良好な高率放電性能を有する。また、本発明による電池は、高容量の電極コアを、金属シェル内に並行して設置される低容量の複数の電極コアに分割して、その作製を単純化することによって、電極プレートが長く且つ巻回するのが難しいという従来技術の「巻回型電池」の問題、及び電極プレートを作製及び積層するのが難しいという従来技術の「積層型電池」の問題を、解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、特に、優れた放熱性、高い機械的安全性、及び良好な高率放電性能を有する出力型リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の容量が大きいほど、その比容量はますます大きくなるため、電池は充電及び放電のプロセス中により多くの熱を発生させる。したがって、電池内部に生じる熱を時間内に放散させることが、電池自体に要求されている。しかしながら、現在使用されているリチウムイオン電池のシェルは通常、放熱させるのに比較的小さい表面積を有する円柱又は四角形の形状をしているため、充電プロセス中、特に過充電の場合、放熱効率が発熱効率よりもかなり低く、その結果、電池の内部温度が急激に上昇し、電解液、電極活性材料及び結合剤の安定性が乏しくなり、電池の性能が悪くなり、爆発及び火災のような安定性に関する問題も起こるおそれがある。
【0003】
リチウムイオン電池は他の二次電池に比べて比較的大きい内部抵抗を有するため、電圧が急激に減少し、放電時間が極めて短くなり、容量が、大電流における放電のプロセス中にかなり小さくなる。従来の電極の低導電性は、比較的大きい内部抵抗を有するリチウムイオン電池のための主な理由の1つである。今まで、大半の商業用リチウムイオン電池において、1つの単一電極タブ(電極端子としても知られている)を使用して電流を伝導し、これによって電流を数個の限定される溶接点にのみ伝導する。その結果、導電性が低くなり、電流の分布は、充電及び放電のプロセス中に均一でなくなる。
【0004】
また、従来技術の電池の電極コアは通常、巻回構造又は積層構造を有する1つの単一電極コアである。しかしながら、高容量及び高出力を有する電池の作製において、巻回構造を有する単一電極コアは、電極プレートが長くなり、且つ作製及び巻回するのが難しいという欠点を有するのに対し、積層構造を有する単一電極コアは、実用プロセスが複雑であり、電極プレートを作製及び積層するのが難しく、且つ適格な製品の生産高が低いという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要するに、リチウムイオン電池の放熱領域を効率的に大きくして電池の放熱及び安全性を改良すること、内部抵抗を小さくして電池の大電流を伴う放電性能を改良すること、並びに適格な製品の生産高を増大させてコストを減らすことが、出力型リチウムイオン電池の性能の改良にとって非常に重要である。
【0006】
本発明の目的は、上述の従来技術の問題を解決する、優れた放熱性及び良好な高率放電性能を有するリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、電極コアと、電解液と、金属シェルと、端部カバー組立体とを備えるリチウムイオン電池によって達成され、上記金属シェルは、外壁と、内壁と、チャンバとを含み、上記電極コア及び上記電解液は、金属シェルのチャンバ内に配置され、且つ上記電極コアは、電極コアの電極端子で端部カバー組立体と接続し、上記電極コアの数は2つ以上であり、且つ複数の電極コアは金属シェルのチャンバ内に配置される。
【0008】
さらに、金属シェルは、両端で開いており、且つ端部カバー組立体は、
上部カバーと、複数の正極ポールと、絶縁体と、第1の金属コネクタとを含む上端カバー組立体であって、複数の正極ポールが、電極コアの電極端子及び第1の金属コネクタの両方と接続し、且つ絶縁体が、上部カバーと正極ポールとの間に介在している、上端カバー組立体と、
下部カバーと、複数の負極ポールと、絶縁体と、第2の金属コネクタとを含む下端カバー組立体であって、複数の負極ポールが、電極コアの電極端子及び第2の金属コネクタの両方と接続し、且つ絶縁体が、上部カバーと負極ポールとの間に介在している、下端カバー組立体と、
を含む。
【0009】
本発明は、以下のような利点を有する。
1.従来技術の「巻回型電池」の電極プレートが長く且つ巻回するのが難しいという問題、及び従来技術の「積層型電池」の電極プレートが作製及び積層するのが難しいという問題は、高容量電池の電極コアを、円柱状シェル内に並行して設置される複数の巻回型電極コアに分割して、作製のプロセスを単純化することによって、回避及び解決される。
2.本発明によるリチウムイオン電池において、優れた放熱性は、電池の使用内部空間を小さくすることなく、放熱させる電池シェルの表面積を大きくすることによって実現され得る。
3.電流を誘導する有効断面積は、複数の並行する電極ポールをそれぞれ含む上端カバー組立体及び下端カバー組立体の構造によって著しく大きくなるため、高率放電性能が改良される。
4.耐機械的衝撃試験によって測定されるより高い機械的安全性は、電極コアが移動するのを防ぎ、且つ金属シェルの外壁の複数の並行する溝が補強バーとして機能することで、落下及び振動等の際の外力による衝撃によって生じる損傷を防止することによって実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、本発明によるリチウムイオン電池は、電極コア1と、電解液と、金属シェル2と、端部カバー組立体3とを備え、上記金属シェル2は、外壁21と、内壁22と、チャンバ23とを含み、上記電極コア1及び上記電解液は金属シェル2のチャンバ23内に配置され、上記電極コア1は、電極コア11の電極端子によって端部カバー組立体3と接続され、上記電極コア1の数は2つ以上であり、複数の電極コア1が金属シェル2のチャンバ23内に配置される。
【0011】
本発明によれば、複数の電極コア1の全容量が要件を満たすものであれば、電極コア1の数は特に限定されない。電極コア1の数は、好ましくは3〜10、より好ましくは5〜8である。本発明において、電極プレートが長く且つ巻回するのが難しいという従来技術の「巻回型電池」の問題、及び電極プレートを作製及び積層するのが難しいという従来技術の「積層型電池」の問題は、1つの大きい単一電極コアを複数の小さい電極コアに分割して、容量を小さくすることなく且つ電池の金属シェルの容積を大きくすることなく、電池の放熱領域を大きくすることにより、製造プロセスを単純化させることによって主に回避及び解決される。それゆえ、電極コア1の構造及び構成は特に限定されることなく、従来の電池の構造及び構成であってもよい。例えば、電極コアは、正極プレートと、隔膜と、負極プレートとを備え、任意の既知のプロセスによって規則正しく巻回されて巻回型電極コアとなるものであってもよい。正極プレート及び負極プレートの電極端子は当業者にとって既知である。例えば、正極プレートの電極端子はアルミニウムワイヤであってもよく、負極プレートの電極端子はニッケルワイヤ、銅ワイヤ、ステンレス鋼ワイヤ、又は種々の合金ワイヤであってもよい。本発明の実施例では、正極プレートの電極端子は好ましくはアルミニウムワイヤであり、負極プレートの電極端子は好ましくはニッケルワイヤである。
【0012】
電極コア1は、金属シェル2のチャンバ23内に設置され、各電極コア1の正極プレート及び負極プレートの電極端子は、溶接、リベット接合、及びねじ留め等の既知の方法でそれぞれ端部カバー組立体3に接続される。
【0013】
本発明によれば、金属シェル2の形状は、上記複数の電極コア1を保持することができるものであれば特に限定されない。金属シェル2のチャンバ23が複数の内部空洞を有し、内部空洞の各々が1つの電極コア1を保持することによって、各電極コアの周囲環境がそれぞれ1つの内部空洞で囲まれ、且つ放熱がより良好になることが好ましい。内部空洞の数は電極コア1の数と同じであってもよく、それ以上であってもよいが、同じ数であることが好ましい。内部空洞は、各電極コア1が同一条件の下にあるようにするために好ましくは相互連絡しており、より好ましくは金属シェル2の高さにわたって相互連絡している。上述の構造を有する金属シェル2は種々の方法、例えば、複数の小さい金属シェルを互いに連結した後、相互連絡させるという方法、及び1つの大きい金属シェルを、分離ボードを挿入するような任意の既知のプロセスによって電極コアに好適な複数の内部空洞に分割するという別の方法で得ることができる。本発明では、複数の凸部221を金属シェル2の内壁22の表面上に形成するように、チャンバ23を複数の内部空洞に分割することが好ましい。即ち、複数の凸部221が、金属シェル2の内壁22上に設けられ、且つ2つの隣接する凸部221の間の距離が電極コア1に好適なものである。複数の凸部221が、金属シェル2の内壁22上に均一に設けられることが好ましい。凸部221は、対応する内部空洞内に各電極コア1をそれぞれ固定し、且つ電解液を通過させることができるものであれば、特定のサイズ及び/又は形状に特に限定されない。好ましくは、電極コア1を内部空洞に固定することができる場合、凸部221は、電池を軽量化し且つ電池の使用空間を広くするために可能な限り最小化される。より好ましくは、凸部221は、金属シェル2の長さに沿う方向で対称的に設けられ、且つ対称的に設けられる2つの凸部の間の距離は好ましくは、内部空洞の最大幅の50〜90%である。本発明によれば、上記長さは、図2に示すx軸の方向の距離であり、上記幅は、x軸と垂直な、即ち図2に示すy軸の方向の距離であり、上記高さは、x軸及びy軸の両方と垂直な方向の距離である。
【0014】
本発明によれば、上記金属シェル2の外壁21の形状は特に限定されることなく、円柱及び四角形等の電池の外壁の任意の既知の形状であってもよい。複数の溝211は好ましくは、電池の機械的安全性を改良するために、金属シェル2の外壁21上に設けられる。内部空洞の長さに対する2つの隣接する溝の間の距離の比は、好ましくは正の整数、より好ましくは1の整数である。即ち、外壁21上の溝211の位置は、内壁22上の凸部221の位置に対応する。本発明によれば、溝221の幅及び長さは、金属シェル2の厚さが求められる範囲内であれば特に限定されない。他の条件が同じ場合、電池の重量は、溝の幅及び/又は長さに逆比例する。金属シェル2の厚さは、金属シェルの内壁と外壁との間の最短距離であり、当該技術分野における従来の厚さであってもよい。本発明によれば、金属シェル2の厚さは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜2mmである。他方で、金属シェル2の外壁21上に設けられる溝211及び凸部221は、相互に共同し、且つ内部空洞内の電極コア用の補強バーとして共に機能する。他方で、溝211はまた、電池を軽量化し、且つ電池の放熱を改良することができる。上述によれば、金属シェル2は、図2〜図5に示される形状の断面を有するように作製することができ、チャンバは、1つ又は複数のラインに配列される複数の相互連絡される丸みのある内部空洞を含む。凸部221及び溝211は、別個に又は金属シェル2と一体的に形成されてもよく、好ましくは金属シェル2と一体的に形成される。凸部221及び溝211は、金属シェル2の内壁22及び外壁21の全高さに沿って、又は本発明の上記の目的を達成することができれば或る特定の高さに沿って、それぞれ設けられ得る。好ましくは凸部221は、金属シェル2の内壁22と同じ高さを有する。
【0015】
本発明によれば、金属シェルの材料は、特に限定されることなく、アルミニウム合金、銅合金又はニッケル−クロム合金等であってもよい。
【0016】
好ましくは、上記端部カバー組立体3は、カバーと、複数のポールと、絶縁体と、金属コネクタとを含み、複数の電極ポールは、それぞれ電極コア1の電極端子及び金属コネクタの両方と接続し、且つ絶縁体は、カバーと電極ポールとの間に介在している。カバーを使用して金属シェル2を封止し、絶縁体を使用して、電極ポールとカバーとの間の接触によって生じる短絡を防止し、電池を封止する。
【0017】
より好ましくは、リチウムイオン電池は、図1に示される構造を有し、金属シェル2は両端で開いており、且つ端部カバー組立体は、上部カバー31と、複数の正極ポール32と、絶縁体(図面中に示さず)と、第1の金属コネクタ33とを含む上端カバー組立体3(複数の正極ポール32は、電極コア1の電極端子及び第1の金属コネクタ33の両方と接続し、且つ絶縁体は、上部カバー31と正極ポール32との間に介在している)と、下端カバー組立体とを含む。
【0018】
上部カバー31、正極ポール32、絶縁体及び第1の金属コネクタは、溶接、リベット接合、及びねじ留め等の任意の既知の方法で、好ましくは解体及び取付けに都合の良いねじ留めによって接続されていてもよい。好ましくは、複数の貫通孔が上部カバー31及び第1の金属コネクタ33上にあり、この貫通孔を通って正極ポールが挿入される。好ましくは、貫通孔は、正極ポールと同じ数を有し、正極ポールを通すことができるようなサイズを有する。絶縁体は、上部カバー31と正極ポール32との間に介在し、それらの間の接触を妨げることができる。絶縁体のサイズ、形状及び材料は、上部カバー31と正極ポール32との接触によって生じる短絡を防止し、電池を封止することができれば、特に限定されない。正極ポール32は好ましくは、ナット34とねじ留めされる末端外側表面上にねじ山を有し、上部カバー31と正極ポール32とを隔てる絶縁体を伴い上部カバー31に固定される。正極ポール32はまた好ましくは、ナット34によって第1の金属コネクタ33に固定される。より好ましくは、ガスケット35は、ナット34と上部カバー31又は第1の金属コネクタ33との間に設けられる。
【0019】
下端カバー組立体は、上述のような上端カバー組立体と同じ構造を有していてもよい、即ち、下部カバーと、複数の負極ポールと、絶縁体と、第2の金属コネクタとを含み得る。負極ポールは、電極コアの電極端子及び第2の金属コネクタの両方と接続し、且つ絶縁体は、下部カバーと負極ポールとの間に配置される。当該下部カバー、負極ポール、絶縁体及び第2の金属コネクタは、溶接、リベット接合、及びねじ留め等の任意の既知の方法で、好ましくは解体及び取付けに都合の良いねじ留めによって接続されていてもよい。好ましくは、複数の貫通孔が下部カバー及び第2の金属コネクタにあり、これらの孔を通って負極ポールが第2の金属コネクタに挿入される。好ましくは、貫通孔は、負極ポールと同じ数を有し、負極ポールが通り抜けることができるサイズを有する。絶縁体は、下部カバーと負極ポールとの間に介在し、それらの間の接触を妨げることができる。絶縁体のサイズ、形状及び材料は、下部カバーと負極ポールとの接触によって生じる短絡を防止し、電池を封止することができれば、特に限定されない。負極ポールは好ましくは、ねじ山を有し、下部カバーと負極ポールとを隔てる絶縁体を伴いナットにより下部カバーに固定される。負極ポールはまた好ましくは、ナットによって第2の金属コネクタに固定される。より好ましくは、ガスケットは、ナットと下部カバー又は第2の金属コネクタとの間に設けられる。
【0020】
本発明によれば、上部カバー31と下部カバーとを含むカバーは、金属シェル2と嵌合して電池を良好に封止することができれば、特定のサイズ及び/又は形状に特に限定されない。しかしながら、カバーは、作製及び使用に都合の良いサイズ及び形状で、金属シェル2の外壁21又は内壁22に対応することが好ましい。
【0021】
本発明は主に、金属シェル及び端部カバー組立体の改良に関するため、電解液は特に限定されることなく、リチウムイオン電池に好適な任意の電解液であってもよい。例えば、電解液は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、LiAlO4、LiAlCl4、LiN(Cx2x+1SO2)(Cy2y+1SO2)(式中、x及びyは独立して1〜10の整数を表す)、LiCl及びLiIから選択される1つ又は複数等の任意の既知のリチウム塩を含み得る。電解液中のリチウム塩の濃度は、好ましくは0.1〜2.0mol/L、より好ましくは0.7〜1.6mol/Lである。
【0022】
本発明による電池の組立プロセスは特に限定されることなく、本発明の上記の説明に従ってリチウムイオン電池を作製することは、当業者にとって容易である。例えば、本発明による電池は、正極プレート及び負極プレートを作製すること、それらを巻回して隔膜を一緒に含む電極コアとすること、電極コアを金属シェルのチャンバ内に設置すること、及びその後端部カバー組立体を封止した後に電解液を注入することによって作製され得る。
【0023】
以下の実施例について本発明をさらに詳細に例示する。
【実施例】
【0024】
実施例1
1.電極コアの作製
或る量のポリビニリデンフルオライド(PVDF)をN−メチル−ピロリドン(NMP)に溶解し、これに或る量のLiCoO2及びアセチレンブラックを添加し、十分に混合して、均質なスラリーを生成した。このとき、LiCoO2、PVDF及びアセチレンブラックの重量比は、LiCoO2:アセチレンブラック:PVDF=92:4:4であった。調製したスラリーを、厚さ20μmを有するアルミニウムシート上にコーティングした後、アルミニウムシートを120℃で乾燥させ、圧延及び切断して、長さ800mm、幅140mm及び厚さ100μmを有する正極プレートを作製した。
【0025】
或る量のPVDFをNMPに溶解し、これに或る量の合成グラファイトを添加し、十分に混合して、均質なスラリーを生成した。このとき、合成グラファイト及びPVDFの重量比は、合成グラファイト:PVDF=95:5であった。調製したスラリーを、厚さ20μmを有する銅シート上にコーティングした後、銅シートを120℃で乾燥させ、圧延及び切断して、長さ930mm、幅140mm及び厚さ100μmを有する負極プレートを作製した。
【0026】
作製した正極プレート及び負極プレートを、微細孔ポリプロピレン膜で巻回し、電極コアを得る。
【0027】
2.電池の組立て
上記のように作製した5つの電極コアを、図2に示すように、厚さ0.2mmを有する金属シェルの5つの内部空洞内にそれぞれ設置した。正極プレート及び負極プレートの電極端子をそれぞれ、電極ポールの上端及び下端から突出させ、上端カバー組立体の正極ポール及び下端カバー組立体の負極ポールに溶接した。次に、金属シェルを上部カバー及び下部カバーで覆い、ポール及びカバーをナットで固定し、絶縁体をそれらの間に設けた。正極ポール及び負極ポールをそれぞれ、第1の金属コネクタ及び第2の金属コネクタに接続させ、それらの接続部にガスケットを設けた後ナットで固定した。炭酸エチレン及び炭酸ジメチル(1:1)の混合溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解することによって調製した電解液を、金属シェルに注入した後、金属シェルを封止して、15Ahの容量を有するリチウムイオン電池を作製した。
実施例2
【0028】
使用した金属シェルの断面図が図3に示されるものであった以外は、実施例1に従ってリチウムイオン電池を作製した。
実施例3
【0029】
使用した金属シェルの断面図が図4に示されるものであった以外は、実施例1に従ってリチウムイオン電池を作製した。
比較例1
【0030】
使用した金属シェルの断面図が図6に示されるものであった以外は、実施例1に従ってリチウムイオン電池を作製し、正極プレート及び負極プレートの大きさはそれぞれ、5100mm(長さ)×120mm(幅)×100μm(厚さ)、及び5150mm(長さ)×120mm(幅)×100μm(厚さ)であった。
【0031】
性能試験
1.過充電試験
実施例1〜実施例3及び比較例1の完全に放電した状態のリチウムイオン電池を、環境温度20±5℃において1Cの定電流で10Vまで充電した。このとき、電池の表面の温度を熱電対で求めた。時間に対して温度及び電圧がプロットされたグラフをそれぞれ、図7〜図10に示した。
【0032】
図7〜図10に示すように、比較例1で作製した電池の温度は、電圧が上がるにつれて急激に上昇し、発生した熱が効率的に放散され得なかったために、この電池は破損した。これに対し、実施例1〜実施例3で作製した電池の温度は、電圧が上がるにつれて徐々に上昇し、過充電試験中のピーク温度は85℃未満であった。これは、実施例1〜実施例3で作製した電池が優れた放熱性を有していたことを示す。
【0033】
2.高率放電性能試験
10C/C0.5C:高率放電性能を、10Cの電流による4.2Vから、0.5Cの電流による3.0Vまで電池を放電させた場合の放電容量率として示した。
【0034】
3C/C0.5C:高率放電性能を、3Cの電流による4.2Vから、0.5Cの電流による3.0Vまで電池を放電させた場合の放電容量率として示した。
【0035】
1C/C0.5C:高率放電性能を、1Cの電流による4.2Vから、0.5Cの電流による3.0Vまで電池を放電させた場合の放電容量率として示した。
【0036】
試験結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1〜実施例3の電池の高率放電性能が、比較例1のものと比べて顕著に改良されていることが表1から分かるであろう。これは、本発明による電池によって有される電流を伝導する有効断面積が、複数の電極ポールを含む上端カバー組立体及び下端カバー組立体を使用することによる従来技術に従う有効断面積よりも大きくなるためである。
【0039】
3.耐機械的衝撃性試験
実施例1〜実施例3及び比較例1の各々100個の電池を、1Cの電流で4.2Vまで充電した後、電流が0.05Cに低下するまで4.2Vの定電圧で充電した。続いて、電池を0.5Cの定電流で100分間放電した後、両面で3垂直方向に20回、ピーク加速度が10Gである衝撃試験装置を用いて衝撃を与えた。電池の短絡の割合を求めた。上記の試験を終えた後、電池を1Cの電流で3.0Vまで放電させ、内部抵抗を求めて、切断の割合を算出した。結果を表2に示した。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例1〜実施例3の電池の機械的安全性が、比較例1のものと比べて顕著に高いことが表2から分かるであろう。これは、本発明による電池における金属シェルの外壁上に形成される複数の並列した溝が補強バーとして機能することによって、電池に、落下及び振動等の際の外力による衝撃によって生じる短絡及び内部抵抗変化が起きないようにしているためである。
【0042】
本発明によるリチウムイオン電池は、優れた放熱性、高い機械的安全性、及び良好な高率放電性能を有することが、上記の結果から分かるであろう。また、作製プロセスは、並行する複数の巻回型電極コアを金属シェル内に設置すること、及び高容量の電極コアを低容量の数個の電極コアに分割することによって単純化され、電極プレートが長く且つ巻回するのが難しいという従来技術の「巻回型電池」の問題、及び電極プレートを作製及び積層するのが難しいという従来技術の「積層型電池」の問題を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるリチウムイオン電池の構造を示す概略図である。
【図2】本発明によるリチウムイオン電池の金属シェルを示す断面図である。
【図3】本発明によるリチウムイオン電池の金属シェルを示す断面図である。
【図4】本発明によるリチウムイオン電池の金属シェルを示す断面図である。
【図5】本発明によるリチウムイオン電池の金属シェルを示す断面図である。
【図6】従来技術の円柱状リチウムイオン電池を示す切り欠き図である。
【図7】本発明の実施例1で作製したリチウムイオン電池の過充電実験の時間に対して温度及び電圧をプロットしたグラフである。
【図8】本発明の実施例2で作製したリチウムイオン電池の過充電実験の時間に対して温度及び電圧をプロットしたグラフである。
【図9】本発明の実施例3で作製したリチウムイオン電池の過充電実験の時間に対して温度及び電圧をプロットしたグラフである。
【図10】比較例1で作製したリチウムイオン電池の過充電実験の時間に対して温度及び電圧をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 電極コア
2 金属シェル
21 外壁
22 内壁
211 溝
221 凸部
23 チャンバ
3 上端カバー組立体
31 上部カバー
32 正極ポール
33 第1の金属コネクタ
34 ナット
35 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極コアと、電解液と、金属シェルと、端部カバー組立体とを備えるリチウムイオン電池であって、前記金属シェルが、外壁と、内壁と、チャンバとを含み、前記電極コア及び前記電解液が、前記金属シェルの前記チャンバ内に配置され、且つ前記電極コアが、該電極コアの電極端子で前記端部カバー組立体と接続し、前記電極コアの数が2つ以上であり、且つ前記複数の電極コアが前記金属シェルの前記チャンバ内に配置される、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記チャンバが、複数の相互連絡した内部空洞を含み、該内部空洞の各々が1つの電極コアを保持する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
複数の凸部が、前記金属シェルの前記内壁上に設けられ、且つ1つの内部空洞が、各2つの隣接する凸部及び前記金属シェルの前記内壁によって形成される空間を含む、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記凸部が、前記金属シェルの前記内壁と同じ高さを有する、請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記凸部が、前記金属シェルの長さに沿う方向で対称的に設けられ、対称的に設けられる2つの凸部の間の距離が、前記内部空洞の最大幅の50〜90%である、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
複数の溝が、前記金属シェルの前記外壁上に設けられ、且つ該溝の位置が、前記凸部の位置に対応する、請求項3に記載の電池。
【請求項7】
前記端部カバー組立体が、カバーと、複数の電極ポールと、絶縁体と、金属コネクタとを含み、前記複数の電極ポールがそれぞれ、前記電極コアの前記電極端子及び前記金属コネクタと接続し、且つ前記絶縁体が、前記カバーと前記電極ポールとの間に配置される、請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記金属シェルが、両端で開いており、且つ前記端部カバー組立体が、
上部カバーと、複数の正極ポールと、絶縁体と、第1の金属コネクタとを含む上端カバー組立体であって、前記複数の正極ポールが、前記電極コアの前記電極端子及び前記第1の金属コネクタの両方と接続し、且つ前記絶縁体が、前記上部カバーと前記正極ポールとの間に配置される、上端カバー組立体と、
下部カバーと、複数の負極ポールと、絶縁体と、第2の金属コネクタとを含む下端カバー組立体であって、前記複数の負極ポールが、前記電極コアの前記電極端子及び前記第2の金属コネクタの両方と接続し、且つ前記絶縁体が、前記下部カバーと前記負極ポールとの間に配置される、下端カバー組立体と、
を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記カバー及び前記金属コネクタがそれぞれ、複数の貫通孔を有し、該貫通孔を通って前記電極ポールが挿入され、且つ該電極ポールがさらに、末端外側表面上にねじ山を有してナットとねじ留めされる、請求項7又は8に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−515304(P2009−515304A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539210(P2008−539210)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000642
【国際公開番号】WO2007/053990
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506283031)ビーワイディー カンパニー リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
【Fターム(参考)】