説明

リニアアクチュエータの駆動方法

【課題】異常を早期に検出することのできるリニアアクチュエータの駆動方法を提供する。
【解決手段】振幅制御部40は、固定子11に対して往復動される可動子12の振幅を検出し、その検出した振幅の時間的変化に応じて負荷の経時的な変動を検出し、その変動から異常を検出する。また、振幅制御部40は、検出した振幅を制御出力部50に出力する。この制御出力部50は、制御出力部50からの振幅情報に基づいて、可動子12を往復動させるための駆動電流Idを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子に往復動を行わせるリニアアクチュエータの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁石からなる固定子と、永久磁石を有する可動子と、電磁石の巻線に供給する駆動電流を制御する制御部とを備え、固定子に対し可動子を往復振動させるリニアアクチュエータが知られている(特許文献1参照)。このリニアアクチュエータでは、電磁石の巻線に発生する誘起電圧を検出することにより可動子の動き(変位、速度または加速度)を検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−16892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したリニアアクチュエータでは、異常の発生を早期に検出する方法が提案されていないため、この点の改善が求められていた。例えば上述の可動子の動きを示す検出値を異常検出のパラメータとして利用し、その検出値が予め設定した所定値以下まで低下した場合を異常として検出する方法も考えられる。しかし、このような検出値(瞬時値)で異常を検出する場合には、上記所定値を部品ばらつき等も考慮して異常と考えられる値に設定する必要がある。このため、このような方法では早期に異常を検出することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、異常を早期に検出することのできるリニアアクチュエータの駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のリニアアクチュエータの駆動方法は、電磁石又は永久磁石からなる固定子と、永久磁石又は電磁石を有する可動子とを備えるリニアアクチュエータの駆動方法において、前記可動子の変位、速度及び加速度の少なくとも一つを検出し、その検出値に応じて、前記可動子を往復動させるための駆動電流を制御するとともに、前記検出値の時間的変化に応じて負荷の経時的な変動を検出することを特徴とする。
【0007】
また、上記構成において、前記検出値の増減の回数を検出することにより、前記負荷の瞬時的な変動の発生し易さの度合を判定し、その判定結果に応じて前記可動子の制御方法を変更することが好ましい。
【0008】
また、上記構成において、前記判定結果に応じて、前記駆動電流を制御するためのフィードバックループのループ利得を変更することが好ましい。
また、上記構成において、前記判定結果に応じて前記可動子の振幅の目標値を変更することが好ましい。
【0009】
また、上記構成において、前記固定子又は前記可動子が有する電磁石の巻線に前記駆動電流が流れていない非導通期間内において、前記可動子の往復動に伴って前記巻線に発生する誘起電圧を検出することで前記検出値を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるリニア振動アクチュエータの構成例を示すブロック図である。
【図2】駆動回路及び振幅制御部の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】振幅検出を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】振幅検出を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】振幅検出を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】制御回路の動作を説明するための波形図である。
【図7】制御回路の動作を説明するための波形図である。
【図8】振幅検出を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】振幅検出を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、リニア振動アクチュエータ10は、固定子11と可動子12とを有している。固定子11は、例えば磁性材料の焼結体や磁性材料の鉄板を積層したものに巻線11aが巻回された電磁石により構成されている。この固定子11は、フレーム13に固定されている。
【0013】
可動子12は、ばね14によって往復動可能にフレーム13に支持されている。この可動子12が有する永久磁石12aは、所定のギャップを介して上記固定子11と対向して配置されるとともに、可動子12の往復動方向(図中、左右方向)に着磁されている。
【0014】
次に、リニア振動アクチュエータ10を駆動させるための構成例を説明する。
上記巻線11aに接続された駆動回路30は、電源20からの電源電圧Vccに基づいて動作し、巻線11aに駆動電流Idを供給する。一方、巻線11aに接続された振幅制御部40は、巻線11aに生じる誘起電圧から可動子12の振幅を検出する。また、振幅制御部40は、検出した振幅の時間的変化に応じて負荷の経時的な変動を検出して異常を検出するとともに、振幅の時間的変化に応じて負荷の瞬時的な変動状態を判定する。この振幅制御部40は、検出した振幅情報を制御出力部50にフィードバックする。
【0015】
制御出力部50は、振幅制御部40からの振幅情報に基づいて巻線11aへの駆動電流IdをPWM(Pulse Width Modulation)制御する、つまり駆動回路30にPWM信号を出力する。この制御出力部50は、可動子12の重量やばね14のばね定数等によって決定されるリニア振動アクチュエータ10の機械的な共振周波数に同期した周波数で駆動電流Idが巻線11aに供給されるように上記PWM信号を生成する。なお、制御出力部50には、電源20からの電源電圧Vccに基づき定電圧電源21にて生成された定電圧が動作電圧として供給される。
【0016】
上述のように制御された駆動電流Idが巻線11aに流れると、可動子12に設けられた永久磁石12aが、駆動電流Idの流れる方向に応じて上記ばね14を撓ませつつ往復動方向(図中の左右方向)に駆動される。そして、制御出力部50の制御によって駆動電流Idの流れる方向が適宜なタイミングで切り換えられると、可動子12が図中の左右方向に往復動される。
【0017】
次に、上述した駆動回路30及び振幅制御部40の内部構成例を説明する。
まず、駆動回路30の内部構成例を説明する。
図2に示すように、駆動回路30は、MOSFET等のスイッチング素子Q1〜Q4からなるフルブリッジ回路であり、スイッチング素子Q1,Q3間の接続点とスイッチング素子Q2,Q4間の接続点との間に、上記巻線11aが接続されている。この駆動回路30は、スイッチング素子Q1,Q4のペアとスイッチング素子Q2,Q3のペアとが制御出力部50からのPWM信号に基づいて交互にオンされることで、巻線11aに流す駆動電流Idの方向を切り替えて上記可動子12を往復動させるものである。
【0018】
次に、振幅制御部40の内部構成例を説明する。
増幅回路41は、巻線11aの両端電圧、つまり巻線11aに生じる誘起電圧Eを増幅し、その増幅後の増幅電圧Vnを比較回路42,43に出力する。比較回路42は、零電圧である基準電圧V0と増幅電圧Vnとを比較し、その比較結果に応じた信号レベルの出力信号S1をマイクロコントローラ(マイコン)44内の振幅換算回路45に出力する。また、比較回路43は、基準電圧V0よりも所定電圧低い基準電圧V1と上記増幅電圧Vnとを比較し、その比較結果に応じた信号レベルの出力信号S2を振幅換算回路45に出力する。なお、基準電圧V1は、基準電圧V0よりも所定電圧高い電圧に設定してもよい。
【0019】
マイコン44は、振幅換算回路45と、振幅換算回路45にて検出された可動子12の振幅を記憶するメモリ46と、メモリ46に記憶された振幅の時間的変化に応じて負荷の変動を判定する制御回路47とを有している。
【0020】
振幅換算回路45は、出力信号S1の信号レベルに基づいて、図3に示すように、増幅電圧Vnが基準電圧V0(=0V)と同電圧になった時間T0を検出し、その時間T0を可動子12の振幅の折り返し点として判断する。詳述すると、図4に示すように、巻線11aには、可動子12の往復動に応じて正弦波状の誘起電圧Eが生じる。この誘起電圧Eの波形はリニア振動アクチュエータ10の機械的な共振周波数と同一周波数である。また、この誘起電圧Eは、可動子12の振幅、変位、振動の速度、振動の加速度や振動の方向等に応じて変化し、可動子12の速度が大きくなるにしたがって当該誘起電圧Eも大きくなる。例えば可動子12がその往復動の振幅の一端(右端又は左端)に達した時、すなわち可動子12の速度が零になった時、その可動子12が有する永久磁石12aの動きが一旦止まって磁束の変化がなくなるために上記誘起電圧Eが零となる。したがって、巻線11aの誘起電圧E(増幅電圧Vn)が零電圧である時を、可動子12の振動方向が切り替わる折り返し点であると判断できる。
【0021】
また、振幅換算回路45は、出力信号S2の信号レベルに基づいて、図3に示すように、増幅電圧Vnが基準電圧V1と同電圧になった時間T1を検出する。さらに、振幅換算回路45は、上記時間T1から時間T0までの時間差Tsを検出し、その時間差Tsに基づき可動子12の速度(振幅)を求める。具体的には、振幅換算回路45は、誘起電圧Eが所定の電圧(基準電圧V1)になった時から振幅の折り返しタイミング(時間T0)までの時間(時間差Ts)を測定し、その時間差Tsを振幅に換算している。詳述すると、リニア振動アクチュエータ10は一定周波数で振動し、その可動子12の位置及び速度は正弦曲線に則って変化する。したがって、上述した時間差Tsを測定することにより、リニア振動アクチュエータ10の駆動状態(正弦曲線)を唯一に特定することができ、可動子12の速度(振幅)を唯一に特定することができる。
【0022】
別の見方をすれば、巻線11aの誘起電圧Eは、電磁力と振幅と周波数とにより決定され、ここでの変動は可動子12の振幅のみに依存するため、その振幅が大きくなるほど当該誘起電圧Eも大きくなる。このため、図5に示すように、可動子12の振幅が大きくなると時間差Tsは短くなり(破線参照)、逆に可動子12の振幅が小さくなると時間差Tsは長くなる(実線参照)。これにより、この時間差Tsを振幅として換算することができる。
【0023】
なお、基準電圧V1を基準電圧V0よりも所定電圧高い電圧に設定した場合には、増幅電圧Vnが基準電圧V0と同電圧になった時間T0から増幅電圧Vnが基準電圧V1と同電圧になった時間T1までの時間差Tsを検出して振幅を求めればよい。
【0024】
このような振幅検出は、図3に示すように、巻線11aに駆動電流Idが流れていない非通電期間Tncに実行される。なお、この非通電期間Tncは、例えば巻線11aへの駆動電流出力をPWM制御で行うとともに、PWM出力の最大出力幅を制限することで設けることができる。または、巻線11aへの駆動電流出力を、可動子12の片方向駆動についてはPWM制御で行い、他方向駆動については固定出力で行うとともに、その固定出力の後の残り時間を非通電期間Tncとして設定することもできる。
【0025】
図3の例では、上述の振幅検出を、片方向の折り返し点(右端における折り返し点)のみで実行するようにしているが、両方向の折り返し点(右端及び左端における折り返し点)で実行するようにしてもよい。
【0026】
そして、図2に示す振幅換算回路45は、検出した可動子12の振幅を、メモリ46と制御出力部50とに出力する。
制御回路47は、メモリ46に格納された可動子12の振幅の時間的変化に応じて負荷の経時的な変動を検出し、その検出結果に応じて異常を検出する。また、制御回路47は、可動子12の振幅の時間的変化に応じて負荷の瞬時的な変動の発生し易さの度合を判定し、その判定結果に応じて可動子12の制御方法を変更する。
【0027】
制御出力部50は、振幅換算回路45にて検出された振幅の折り返しタイミングに合わせて駆動電流Idの出力タイミングを制御するようにPWM信号を生成する。具体的には、制御出力部50は、図3に示すように、振幅の折り返し点から所定時間Ta後にスイッチング素子Q1,Q4を所定時間Tbの間オンさせて第1方向の駆動電流Idを巻線11aに供給させる。また、制御出力部50は、振幅の折り返し点から所定時間Tc(>Ta+Tb)後にスイッチング素子Q2,Q3を所定時間Tdの間オンさせて上記第1方向とは反対方向の駆動電流Idを巻線11aに供給させる。
【0028】
さらに、制御出力部50は、振幅換算回路45からの振幅情報に基づいて、可動子12の振幅が目標値と一致するようにPWM信号を生成する。例えば制御出力部50は、可動子12の振幅が目標値に一致するように駆動電流Idの電流量を制御する。具体的には、制御出力部50は、可動子12の振幅が目標値に一致するように、上述した所定時間Tb,Td(通電時間)の長さ、つまりデューティ比を制御して駆動電流Idの電流量を制御する。
【0029】
次に、このように構成された電気かみそり1(特に、制御回路47)の動作を図6及び図7に従って説明する。
今、駆動回路30から供給される駆動電流Idによってリニア振動アクチュエータ10の可動子12が往復動されている。このとき、可動子12の振幅の折り返し点ごとにその振幅が検出され、その振幅がメモリ46に格納される。制御回路47は、このメモリ46に格納された振幅を、図6や図7に示すように、時間軸上に並べることにより、振幅の経時的な増減(変化)を検出する。ここで、リニア振動アクチュエータ10を駆動している電源20の電源電圧Vccが一定に維持されている状態での振幅の増減は、その大部分が負荷の増減に起因している。例えば可動子12を駆動させて、その先の負荷を振動させる場合において、振動させている負荷部分に徐々に汚れやごみ等が付着すると、これが抵抗となり可動子12の振幅が低下する。このため、可動子12の増減を検出することにより、負荷の増減を擬似的に検出することができる。
【0030】
そこで、制御回路47は、可動子12の振幅の経時的な変化の傾向を検出することにより、負荷の経時的な変動の傾向を検出している。図6の例では、可動子12の振幅が瞬時的な増減を繰り返しながら、その振幅が経時的に徐々に減少している。このときの制御回路47は、時間が進むにつれて可動子12の振幅が徐々に減少する傾向(減少傾向:矢印参照)を検出することができる。これにより、制御回路47は、負荷の経時的な変動の傾向(増大傾向)を検出することができるため、駆動の変化を早期に検出することができる。このため、異常発生時に早い段階で警告表示や駆動停止などの対策を行うことができる。
【0031】
ここで、例えば瞬時値で異常を検出する場合には、部品ばらつき等も考慮して異常と考えられる異常値A1よりも振幅が低くなったときにはじめて異常を検出することができる。これに対し、振幅の経時的な変動に基づき異常を検出する場合には、負荷の経時的な変動の傾向を検出することができるため、振幅が異常値A1よりも低くなる前に異常を検出することができる。したがって、瞬時値で異常を検出する場合よりも早い段階で、且つ高い精度で異常を検出することができる。
【0032】
また、制御回路47は、所定時間内における振幅の増減の回数をカウントすることにより、負荷の瞬時的な変動が発生し易い状況か否かを判定している。すなわち、図7の期間Te1に示すように、所定時間内における振幅の増減の回数が少ない場合には、制御回路47は負荷変動が発生しにくい状態であると判定する。この場合には、制御回路47は、駆動電流Idの制御において、安定性の高いフィードバック制御を行うように制御出力部50等を制御する。例えば制御回路47は、振幅換算回路45にて検出される振幅情報に基づいて駆動電流Idを制御するためのフィードバックループのループ利得を小さくするように変更する。
【0033】
一方、図7の期間Te2に示すように、所定時間内における振幅の増減の回数が多い場合には、制御回路47は負荷変動が発生しやすい状態であると判定する。この場合には、制御回路47は、駆動電流Idの制御において、負荷変動に対しての応答性を向上させるように制御出力部50等を制御する。例えば制御回路47は、上記駆動電流Idを制御するためのフィードバックループのループ利得を大きくするように変更する。
【0034】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)振幅の時間的変化に基づいて負荷の経時的な変動を検出するようにした。これにより、負荷の経時的な変動の傾向を検出することができ、瞬時値で異常を検出する場合よりも早い段階で駆動の変化を検出することができる。このため、瞬時値で異常を検出する場合よりも早い段階で異常を検出することができ、その異常に対して早い段階で駆動を停止させるなどの対策を行うことができる。
【0035】
(2)振幅の増減の回数に基づいて負荷の瞬時的な変動の発生し易さの度合を判定し、その判定結果に応じて可動子12の制御方法(例えば、ループ利得)を変更するようにした。これにより、振幅の増減の回数をカウントするという簡易な方法によって負荷の変動状態を判定することができるとともに、その負荷の変動状態に適した駆動をさせることができる。
【0036】
(3)ところで、リニア振動アクチュエータ10の駆動状態(ここでは、可動子12の振幅)を検出する方法としては、巻線11aに流れる駆動電流Idを検出する方法も考えられる。しかし、この方法では、リニア振動アクチュエータ10の駆動に必要なパルス放電での電流検出のために所定時間の積分値を求めるなどの追加手段が必要であり、さらに積分により検出データを丸めてしまうことで情報量を減らしてしまうといった問題が生じる。これに対し、本実施形態では、駆動電流Idを検出することなく、巻線11aに発生する誘起電圧Eを検出することにより可動子12の振幅を検出しているため、上述した問題が発生しない。
【0037】
なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、時間差Tsに基づいて可動子12の振幅を検出するようにした。これに限らず、例えば図8や図9に示すように、所定時間における誘起電圧Eの電圧差に基づいて可動子12の振幅を検出するようにしてもよい。具体的には、図8に示すように、振幅の折り返しタイミング(時間T0)から所定時間T2経過後の誘起電圧Eの電圧値V2を測定し、零電圧と電圧値V2との電圧差Vsを測定し、その電圧差Vsを振幅に換算するようにしてもよい。詳述すると、リニア振動アクチュエータ10は一定周波数で振動し、その可動子12の位置及び速度は正弦曲線に則って変化する。したがって、上述した電圧差Vsを測定することにより、リニア振動アクチュエータ10の駆動状態(正弦曲線)を唯一に特定することができ、可動子12の速度(振幅)を唯一に特定することができる。すなわち、図8に示すように、電圧差Vsが小さい場合(実線参照)には可動子12の振幅が小さいことを示し、電圧差Vsが大きい場合(破線参照)には可動子12の振幅が大きいことを示している。
【0038】
また、図9に示すように、振幅の折り返しタイミング(時間T0)から所定時間T3経過後の誘起電圧Eの電圧値V3と、所定時間T4経過後の誘起電圧Eの電圧値V4とを測定し、それらの電圧差を測定し、その電圧差を振幅に換算するようにしてもよい。なお、このようにして振幅を検出する場合には、例えば図2に示した比較回路42,43をアナログ/デジタル変換回路に変更すればよい。
【0039】
・上記実施形態では、巻線11aに発生する誘起電圧Eを検出することにより可動子12の速度を検出するようにしたが、その速度と相関のある可動子12の変位や加速度を検出するようにしてもよい。
【0040】
・あるいは、検出手段として加速度センサ等を別途設け、そのセンサ出力などから可動子12の変位、速度又は加速度を検出するようにしてもよい。
・上記実施形態における可動子12は、永久磁石12aの代わりに電磁石を備えるようにしてもよい。この場合には、電磁石からなる固定子11の代わりに永久磁石からなる固定子を用いるようにすればよい。
【0041】
・上記実施形態におけるリニア振動アクチュエータを、固定子11が完全に固定されていない可動固定子を用いたリニア振動アクチュエータに具体化してもよい。
・上記実施形態では、リニアアクチュエータとしてリニア振動アクチュエータ10に具体化したが、これに限定されない。例えばリニアアクチュエータとしてリニア電磁アクチュエータに具体化してもよい。
【0042】
・上記実施形態におけるリニア振動アクチュエータ10を電気かみそりに適用してもよい。この場合、可動子12の振幅の増減の回数及び負荷の瞬時的な変動の発生し易さの度合は、使用者の体毛(例えば、髭)の量に相当する。詳述すると、リニア振動アクチュエータを用いて構成される電気かみそりでは、固定された外刃と、可動子12に駆動連結されリニア振動アクチュエータにより往復動される内刃とに髭が挟まれることにより、その髭が切除される。このような電気かみそりの外刃に髭が入ると、可動子12の振幅が小さくなり、その髭がなくなると可動子12の振幅が大きくなる。すなわち、髭が外刃に入ってなくなると、可動子12の振幅の増減(図7の破線枠参照)が発生する。このため、この振幅の増減の回数が外刃に入った髭の本数に相当する。
【0043】
そこで、制御回路47において、可動子12の振幅の増減の回数をカウントすることにより、使用者の髭の本数(髭の濃さ)を判定するようにしてもよい。この場合には、判定した髭の濃さに基づいて、可動子12の速度を変更する。具体的には、図7の期間Te1に示すように、所定時間内における振幅の増減の回数が少ない場合には、制御回路47は使用者の髭の量が少ないと判定し、可動子12の速度を下げるように可動子12の振幅の目標値を低く変更する。逆に、図7の期間Te2に示すように、所定時間内における振幅の増減の回数が多い場合には、制御回路47は使用者の髭の量が多いと判定し、可動子12の速度を上げるように可動子12の振幅の目標値を高く変更する。これにより、髭が濃い場合であっても薄い場合であっても常に良好な切れ味を得ることができ、肌への刺激も抑えることができる。
【0044】
さらに、ここでは、駆動電流Idの周波数をリニア振動アクチュエータ10の機械的な共振周波数に同期させたまま、振幅の目標値のみを変更して可動子12の制御方法を変更するようにしている。これにより、効率良く可動子12を駆動させつつ、剃り性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…リニア振動アクチュエータ(リニアアクチュエータ)、11…固定子、11a…巻線、12…可動子、12a…永久磁石、40…振幅制御部、45…振幅換算回路、47…制御回路、50…制御出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石又は永久磁石からなる固定子と、永久磁石又は電磁石を有する可動子とを備えるリニアアクチュエータの駆動方法において、
前記可動子の変位、速度及び加速度の少なくとも一つを検出し、その検出値に応じて、前記可動子を往復動させるための駆動電流を制御するとともに、前記検出値の時間的変化に応じて負荷の経時的な変動を検出することを特徴とするリニアアクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアアクチュエータの駆動方法において、
前記検出値の増減の回数を検出することにより、前記負荷の瞬時的な変動の発生し易さの度合を判定し、その判定結果に応じて前記可動子の制御方法を変更することを特徴とするリニアアクチュエータの駆動方法。
【請求項3】
請求項2に記載のリニアアクチュエータの駆動方法において、
前記判定結果に応じて、前記駆動電流を制御するためのフィードバックループのループ利得を変更することを特徴とするリニアアクチュエータの駆動方法。
【請求項4】
請求項2に記載のリニアアクチュエータの駆動方法において、
前記判定結果に応じて前記可動子の振幅の目標値を変更することを特徴とするリニアアクチュエータの駆動方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータの駆動方法において、
前記固定子又は前記可動子が有する電磁石の巻線に前記駆動電流が流れていない非導通期間内において、前記可動子の往復動に伴って前記巻線に発生する誘起電圧を検出することで前記検出値を検出することを特徴とするリニアアクチュエータの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157089(P2012−157089A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11277(P2011−11277)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】