説明

リニアモータ

【課題】リニアモータを小型化することにある。
【解決手段】外周面にコイル組立体20が取り付けられるロッド11と、ロッド11を囲むように磁石組立体14が装着されるモータケース12とを有するリニアモータであって、円筒形状の2つの永久磁石15a,15bを相互に同極性の磁石端面を隣接させて磁石組立体14を形成し、それぞれ永久磁石15a,15bの半分の軸方向長さを有する8つのコイル21を相互にコイル端面を隣接させてコイル組立体20を形成する。コイル組立体20のうち1組以上のコイル21の隣接されたコイル端面の極性を同極性励磁して径方向集中磁束を生じることにより磁石組立体14の磁束を引き付け、コイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に向けて同極性励磁を移動励磁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動子を直線方向に駆動するリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、回転形のモータのような遠心力による加速制限がなく、高速駆動が可能であるとともに位置決め精度が高いため、例えば、工業製品の生産や組立ラインにおける位置決め装置や搬送装置などの駆動源として用いられている。リニアモータは、複数のコイルを直線方向に並べて配置されたコイル組立体と、コイル組立体に対向して配置される磁石組立体とを有しており、それぞれのコイルに形成される磁極(極性)を切り換えることで、コイル組立体と磁石組立体との電磁気力により、コイル組立体と磁石組立体とが直線方向に相対駆動されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定子側にコイル組立体が取り付けられ、コイル組立体を取り囲むように移動子側に円筒形状の磁石組立体が装着された磁石可動型のリニアモータが記載されている。このリニアモータは、移動子としてのテーブルを直線方向に往復動するようにしたテーブル式となっている。コイル組立体の各コイルには相互に位相が120°ずれた3相交流電流がドライバーから供給されており、各コイルに供給される電流の向きを切り換えることにより、それぞれのコイルに形成される磁極の向きが切り換えられる。これにより、コイル組立体と磁石組立体との電磁気力の生じる場所が切り替わるので、磁石組立体が装着されたテーブルが直線方向に駆動される。
【0004】
また、特許文献2には、固定子側に円筒形状のコイル組立体が取り付けられ、コイル組立体に挿通されるように移動子側に磁石組立体が装着されたリニアモータが記載されている。このリニアモータは、移動子としてのロッドを直線方向に往復動するようにしたロッド式となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−291220号公報
【特許文献2】特開2007−282475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されるように、コイル組立体の各コイルに交流電流をドライバーから供給し、各コイルに供給される電流の向きを切り換えることにより、それぞれのコイルに形成される磁極の向きを切り換えるようにした交流型のリニアモータでは、移動子の位置を検出するためのセンサが設けられている。そして、センサによる位置検出に基づいてフィードバック制御を行い、移動子を所望の位置に位置決めするようにしている。そのため、移動子の位置を検出するためのセンサが必須となり、リニアモータが大型化することとなる。
【0007】
本発明の目的は、リニアモータを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリニアモータは、外周面にコイル組立体が取り付けられたロッドと、前記ロッドを取り囲むように配置される磁石組立体とを有し、前記ロッドと前記磁石組立体の一方が前記ロッドの軸方向に一定のストロークで往復動するリニアモータであって、軸方向に着磁された円筒形状の複数の永久磁石を相互に同極性の磁石端面を隣接させて径方向集中磁束を生じる前記磁石組立体を形成し、それぞれ前記永久磁石の半分の軸方向長さを有する複数のコイルを相互にコイル端面を隣接させて前記ロッドの軸方向に並べて前記コイル組立体を形成し、前記コイル組立体のうち1組以上の前記コイルの隣接された前記コイル端面の極性を同極性励磁して径方向集中磁束を生じることにより前記磁石組立体の前記径方向集中磁束を引き付け、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁を移動励磁するコイル通電制御手段を有し、前記ロッドと前記磁石組立体とを前記ストロークの範囲において、軸方向に相対駆動することを特徴とする。
【0009】
本発明のリニアモータは、他の組の前記コイルの隣接させた前記コイル端面の極性を異極性励磁し、前記複数のコイルにそれぞれ供給される電流の向きを前記コイル通電制御手段により切り換えることで、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁と前記異極性励磁を移動励磁することを特徴とする。
【0010】
本発明のリニアモータは、隣り合う前記コイルが相互に逆巻きとなるように配置し、電流が供給される前記コイルを前記コイル通電制御手段により切り換えることで、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁を移動励磁することを特徴とする。
【0011】
本発明のリニアモータは、前記コイルに供給される電流値を段階的に変化させることを特徴とする。
【0012】
本発明のリニアモータは、前記コイル組立体が取り付けられた前記ロッドをケースに軸方向に往復動自在に装着し、前記ケースに前記磁石組立体を固定し、前記ロッドを直線方向に駆動することを特徴とする。
【0013】
本発明のリニアモータは、前記コイル組立体が取り付けられた前記ロッドをケースに固定し、前記ケースに当該ケースの長手方向に往復動自在に装着される往復動部材に前記磁石組立体を連結し、前記往復動部材と前記磁石組立体を直線方向に駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コイル組立体のうち1組以上のコイルの隣接されたコイル端面の極性を同極性励磁して径方向集中磁束を生じることにより磁石組立体の径方向集中磁束を引き付け、コイル組立体の一端側から他端側に向けて同極性励磁を移動励磁するようにしてので、同極性励磁を移動励磁する毎にロッドと磁石組立体の一方をコイルの軸方向長さ分ずつ軸方向に駆動することが可能となる。そのため、ロッドと磁石組立体の一方つまり移動子の位置を検出するためのセンサを設けることなく、コイルに供給される直流電流の向きの切り換え、または直流電流が供給されるコイルの切り換えのスイッチング回数に応じて所望の位置に移動子を駆動することができる。すなわち、センサによる位置検出に基づいてフィードバック制御する必要がなくオープンループ制御が可能であるため、リニアモータにセンサを設ける必要がなく、リニアモータを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態であるリニアモータの断面図である。
【図2】図1におけるα−α線に沿う断面図である。
【図3】図1におけるβ−β線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すリニアモータの動作を示す説明図である。
【図5】図1および図4に示す各位置における磁石組立体とコイル組立体との関係を示す説明図である。
【図6】(A)は図5に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図であり、(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。
【図7】図5に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。
【図8】磁石組立体とコイル組立体の変形例を示す図5に対応する説明図である。
【図9】(A)は図8に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図あり、(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。
【図10】図8に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。
【図11】(A)はコイル組立体の給電回路の変形例を示す配線図であり、(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。
【図12】コントローラの制御プログラムの変形例を示す図7に対応するタイムチャートである。
【図13】他の実施形態における磁石組立体とコイル組立体との関係を示す図5に対応する説明図である。
【図14】(A)は図13に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図であり、(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。
【図15】図13に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。
【図16】本発明の他の実施形態であるリニアモータの断面図である。
【図17】図16に示すリニアモータの平面図である。
【図18】図16に示すリニアモータの正面図である。
【図19】図16におけるγ−γ線に沿う断面図である。
【図20】図16に示すリニアモータの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。このモータは、図1に示すように、ロッド11をその軸方向つまり直線方向に一定のストロークで往復動するロッド式のリニアモータであり、軸方向に延びる移動子としてのロッド11と、ロッド11を軸方向に往復動自在に装着する固定子としてのモータケース12とを有している。
【0017】
アルミ合金等により形成されるモータケース12は、ロッド11の軸方向に延びる断面略長方形の筒形状をしており、その軸心には軸方向に貫通する円孔13が形成されている。円孔13の内周面には、モータケース12の軸方向中央部に位置して磁石組立体14が取り付けられている。磁石組立体14は、等しい軸方向長さに形成された2つの円筒形状の永久磁石15a,15bを備えており、軸方向に着磁された各永久磁石15a,15bの磁石端面を同極(S極)同士が向き合うように相互に突き当てた状態で、円孔13の内周面に締結される係止部材16によりモータケース12に固定されている。このモータケース12には、ロッド11が円孔13内に挿通されて軸方向に往復動自在に装着されている。
【0018】
なお、モータケース12の外周面には複数の取付孔が形成されており、当該取付孔に締結されるねじ部材によりリニアモータが図示しない搬送装置等に装着されるようになっている。また、図2および図3に示すように、モータケース12の外周面にはモータケース12の軸方向に沿ってセンサ溝12aが形成されており、ロッド11の位置を検出するための図示しないセンサをセンサ溝12aに取付可能となっている。
【0019】
鉄などの強磁性体材料により形成されるロッド11は、その軸方向両端部がモータケース12の円孔13から軸方向両側へ突出され、モータケース12の両端部にそれぞれ固定された一対のガイド部材17により摺動自在に支持されている。ロッド11の軸方向基端側の外周面にはロッド11の軸方向に沿ってストローク溝18が形成されており、モータケース12に締結されて円孔13内に突出されたねじ部材19の先端部がロッド11のストローク溝18内に挿入されている。このストローク溝18の軸方向長さはロッド11の往復動ストロークに対応して形成されており、ストローク溝18の軸方向端面がねじ部材19の先端部に当接されることにより、ロッド11の軸方向への移動が制限されるようになっている。また、ロッド11の軸方向先端側の端部には、図示しない被駆動部材をロッド11に取り付けるための取付孔11aが形成されており、当該取付孔11aに締結されるねじ部材により被駆動部材がロッド11に取り付けられて、被駆動部材がロッド11とともに軸方向に往復動されるようになっている。
【0020】
このロッド11の軸方向中央部は磁石組立体14内に挿通されており、ロッド11の軸方向中央部の外周面には、磁石組立体14と径方向に所定の隙間を介して対向するコイル組立体20が取り付けられている。コイル組立体20は、それぞれ永久磁石15a,15bのほぼ半分の軸方向長さに形成された8つのコイル21を備えており、ロッド11の外周面に重ね巻きされた各コイル21のコイル端面を相互に隣接させて形成されている。つまり、コイル組立体20は、各コイル21のコイル端面を相互に突き当てた状態でロッド11の軸方向に並べて固定されている。コイル組立体20の各コイル21は、ロッド11の軸方向基端部に設けられたコネクタ23にそれぞれ電気的に接続されており、コネクタ23を介してコイル組立体20の各コイル21にそれぞれ給電することで、ロッド11が軸方向に往復動されるようになっている。
【0021】
なお、ロッド11の往復動ストロークは、コイル組立体20の軸方向長さと磁石組立体14の軸方向長さとの関係で設定され、ロッド11が軸方向に移動する際にコイル組立体20と磁石組立体14とが対向する軸方向範囲がロッド11の往復動ストロークとなる。つまり、コイル組立体20の軸方向長さと磁石組立体14の軸方向長さとの差により、ロッド11の往復動ストロークが設定されている。
【0022】
図4は図1に示すリニアモータの動作を示す説明図であり、図5は図1および図4に示す各位置における磁石組立体とコイル組立体との関係を示す説明図である。図6(A)は図5に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図であり、図6(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。図7は図5に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。
【0023】
図5に示すように、磁石組立体14は、各永久磁石15a,15bの磁極を互いに反対向きにしてロッド11を取り囲むように配置されており、各永久磁石15a,15bを相互に同極性(S極)の磁石端面を隣接させて固定されている。つまり、磁石組立体14は軸方向両端部がN極、軸方向中央部がS極となるように固定されている。これにより、各永久磁石15a,15bの相互に隣接する磁石端面の近傍、つまり磁石組立体14の中央部で半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。一方、コイル組立体20は、A相コイル群25を構成する4つのコイル21A1〜21A4と、B相コイル群26を構成する4つのコイル21B1〜21B4とがロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側へA相B相交互に配置されている。
【0024】
このモータは2相励磁のバイポーラ駆動方式となっており、図6(A)に示すように、コイル組立体20のA相コイル群25およびB相コイル群26がそれぞれシリーズ結線されている。図6(B)に示すように、ロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側に向かって、コイル21A1、コイル21B1は時計方向に巻き、コイル21A2、コイル21B2は反時計方向に巻き、以下2つおきにその繰り返しの巻き方向となっている。コイル21同士の接続は、図6(A)、(B)に示すように、A相コイル群25は、コイル21A1、コイル21A2、コイル21A3、コイル21A4の順となり、B相コイル群26はコイル21B1、コイル21B2、コイル21B3、コイル21B4の順となっている。
【0025】
バイポーラ駆動方式では、各相のコイル群25,26の巻き線両端にコネクタ23の端子30〜33がそれぞれ接続され、各相のコイル群25,26がそれぞれ4つのトランジスタTr1〜Tr8とブリッジ接続されている。A相コイル群25は、コイル21A1の一端が端子30に接続されるとともにコイル21A4の一端が端子31に接続されており、各端子30,31がトランジスタTr1〜Tr4を介して直流電源36の正極および負極にそれぞれ接続されている。同様に、B相コイル群26は、コイル21B1の一端が端子32に接続されるとともにコイル21B4の一端が端子33に接続されており、各端子32,33がトランジスタTr5〜Tr8を介して直流電源36の正極および負極にそれぞれ接続されている。直流電源36の正極側に配されたトランジスタTr1,Tr2,Tr5,Tr6は、コレクタCに直流電源36の正極が接続され、エミッタEに端子30〜33がそれぞれ接続され、ベースBにコントローラ37が接続されている。直流電源36の負極側に配されたトランジスタTr3,Tr4,Tr7,Tr8は、コレクタCに端子30〜33がそれぞれ接続され、エミッタEに直流電源36の負極が接続され、ベースBにコントローラ37が接続されている。
【0026】
コントローラ37からトランジスタTr1,Tr4に駆動信号が送られると、トランジスタTr1,Tr4がON状態かつトランジスタTr2,Tr3がOFF状態となり、A相コイル群25には矢印Ax方向の直流電流が供給される。また、コントローラ37からトランジスタTr2,Tr3に駆動信号が送られると、トランジスタTr2,Tr3がON状態かつトランジスタTr1,Tr4がOFF状態となり、A相コイル群25には矢印Ay方向の直流電流が供給される。同様に、コントローラ37からトランジスタTr5,Tr8に駆動信号が送られると、トランジスタTr5,Tr8がON状態かつトランジスタTr6,Tr7がOFF状態となり、B相コイル群26には矢印Bx方向の直流電流が供給される。また、コントローラ37からトランジスタTr6,Tr7に駆動信号が送られると、トランジスタTr6,Tr7がON状態かつトランジスタTr5,Tr8がOFF状態となり、B相コイル群26には矢印By方向の直流電流が供給される。バイポーラ駆動方式では、このようにして各相のコイル群25,26に供給される直流電流の向きを切り換えることで、各相のコイル群25,26のコイル21に形成される磁極の向きが切り換えられる。
【0027】
コイル通電制御手段としてのコントローラ37は、マイクロプロセッサ(CPU)、制御プログラム、演算式等を格納するメモリ(ROM)、一時的にデータを格納するメモリ(RAM)等を有している。コントローラ37には初期設定により原点位置が設定されており、作業者によりロッド11の目標位置や駆動速度等の情報が入力されると、それに基づいて各トランジスタTr1〜Tr8に送られる駆動信号のスイッチング回数Nやスイッチング周期Tなどが演算される。そして、予め格納された制御プログラムを基に各トランジスタTr1〜Tr8に送られる駆動信号が制御されて、コイル組立体20の各コイル21に形成される磁極の向きが切り換えられ、磁石組立体14とコイル組立体20との磁気吸引力により、ロッド11が軸方向に駆動されるようになっている。
【0028】
次に、ロッド11を軸方向基端側から軸方向先端側へ向けて駆動する際のリニアモータの動作について説明する。モータが図1に示すステップ0の状態では、ロッド11が軸方向基端側のストローク端に位置されており、コイル組立体14の軸方向先端側の端部が磁石組立体14に対向して配置されている。コントローラ37からはトランジスタTr2,Tr3,Tr6,Tr7にそれぞれ駆動信号が送られ、A相コイル群25に矢印Ay方向の直流電流が供給されるとともに、B相コイル群26に矢印By方向の直流電流が供給されている。コイル組立体20の各コイル21には、コイル21の巻き方向とコイル21に供給される直流電流の向きとの関係から、図5(A)に示すような磁極が形成されている。
【0029】
各相のコイル群25,26には同一方向(矢印Ay、By方向)の直流電流が供給されているため、各相のコイル群25,26の奇数番目のコイル21A1,21A3,21B1,21B3にS−N方向の磁極が形成され、各相のコイル群25,26の偶数番目のコイル21A2,21A4,21B2,21B4にN−S方向の磁極が形成されている。これにより、A相コイル群25の奇数番目のコイル21A1,21A3とB相コイル群26の偶数番目のコイル21B2,21B4(注:コイル21B4の右隣にはコイルな無いが、もしも更にコイル21A5があれば以下の記述となる)との相互に隣接するコイル端面が同極性(S極)となる。つまり、コイル21B2とコイル21A3はS極同士で対向する。また、A相コイル群25の偶数番目のコイル21A2,21A4とB相コイル群26の奇数番目のコイル21B1,21B3との相互に隣接するコイル端面がそれぞれ同極性(N極)となる。つまり、コイル21B1とコイル21A2、コイル21B3とコイル21A4はそれぞれN極同士で対向する。すなわち、コイル組立体20のうち3組(コイル21A5がもしあれば4組)の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性はそれぞれ同極性励磁されており、互いに同極性となる隣接するコイル端面の半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。一方、コイル組立体20のうち他の組の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性はそれぞれ異極性励磁されている。
【0030】
このコイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束(径方向集中磁束)を引き付け、各永久磁石15a,15bの磁石端面の極性と、当該磁石端面に対応する各コイル21のコイル端面の極性とが逆極性となるようにロッド11が位置されている。つまり、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力によりロッド11が当該位置に保持され、ロッド11が図1に示す状態となっている。
【0031】
各相のコイル群25,26にそれぞれ矢印Ay、By方向の直流電流が供給されている状態つまりステップ0から、コントローラ37からの駆動信号によりトランジスタTr1,Tr4がON状態となるとともにトランジスタTr2,Tr3がOFF状態となり、A相コイル群25に供給される直流電流の向きが矢印Ax方向に切り換えられる(ステップ1)。つまり、A相コイル群25の各コイル21に形成される磁極の向きが反対方向に切り換えられる。A相コイル群25にはステップ0の場合と反対方向(矢印Ax方向)の直流電流が供給されるため、図5(B)に示すように、A相コイル群25の偶数番目のコイル21A2,21A4とB相コイル群26の奇数番目のコイル21B1,21B3とにS−N方向の磁極が形成され、A相コイル群25の奇数番目のコイル21A1,21A3とB相コイル群26の偶数番目のコイル21B2,21B4とにN−S方向の磁極が形成される。これにより、各相のコイル群25,26の奇数番目のコイル21A1,21A3,21B1,21B3の相互に隣接するコイル端面がそれぞれ同極性(S極)となる。つまり、コイル21A1とコイル21B1、コイル21A3とコイル21B3はそれぞれS極同士で対向する。また、各相のコイル群25,26の偶数番目のコイル21A2,21A4,21B2,21B4の相互に隣接するコイル端面がそれぞれ同極性(N極)となる。つまり、コイル21A2とコイル21B2、コイル21A4とコイル21B4はそれぞれN極同士で対向する。すなわち、コイル組立体20のうち4組の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性はそれぞれ同極性励磁されており、互いに同極性となる隣接するコイル端面の半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。一方、コイル組立体20のうち他の組の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性はそれぞれ異極性励磁されている。
【0032】
したがって、ステップ0の状態からステップ1の状態に切り換えられると、コイル21の突き合わされたコイル端面の極性が同極性励磁された位置がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向基端側にずれることとなる。つまり、コイル組立体20に生じる同極性励磁および異極性励磁が、コイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に移動励磁する。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束(径方向集中磁束)を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(A)に示す状態に駆動される。
【0033】
続いて、ステップ1の状態からトランジスタTr5,Tr8がON状態となるとともにトランジスタTr6,Tr7がOFF状態となり、B相コイル群26に供給される直流電流の向きが矢印Bx方向に切り換えられる(ステップ2)。つまり、B相コイル群26の各コイル21に形成される磁極の向きが反対方向に切り換えられ、図5(C)に示すように、ステップ0の状態において各コイル21に形成された磁極と反対方向の磁極が各コイル21にそれぞれ形成される。これにより、コイル組立体20に生じる同極性励磁および異極性励磁が、コイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に移動励磁する。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束(径方向集中磁束)を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(B)に示す状態に駆動される。
【0034】
同様に、ステップ2の状態からA相コイル群25に供給される直流電流の向きが矢印Ay方向に切り換えられ(ステップ3)、図5(D)に示すように、ステップ1の状態において各コイル21に形成された磁極と反対方向の磁極が各コイル21にそれぞれ形成される。また、ステップ3の状態からB相コイル群26に供給される直流電流の向きが矢印By方向に切り換えられ(ステップ4)、図5(E)に示すように、ステップ0の状態において各コイル21に形成された磁極と同一方向の磁極が各コイル21にそれぞれ形成される。
【0035】
このようにして、コントローラ37により各トランジスタTr1〜Tr8に送られる駆動信号が制御プログラムに基づいて切り換えられると、コイル組立体20に生じる同極性励磁および異極性励磁がコイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に移動励磁される。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束(径方向磁束)を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(C)、(D)に示すように軸方向に駆動される。
【0036】
逆に、ロッド11を軸方向先端側から軸方向基端側へ向けて駆動する場合には、コイル組立体20に生じる同極性励磁および異極性励磁がコイル組立体20の軸方向基端側から軸方向先端側に移動励磁されるように、図7に示す制御プログラムと反対の制御がコントローラ37により行われる。
【0037】
このように、コイル組立体20の各コイル21を直流電源にそれぞれ接続し、各コイル21に供給される直流電流の向きを切り換えることによりそれぞれのコイル21に形成される磁極の向きを切り換え、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力によりロッド11を軸方向に駆動するようにしたので、各コイル21に供給される直流電流の向きを切り換える毎にロッド11をコイル21の軸方向長さ分ずつ駆動することが可能となる。すなわち、各コイル21に供給される直流電流の向きを切り換えることにより、コイル組立体20に生じる同極性励磁および異極性励磁をコイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に移動励磁し、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束(径方向集中磁束)を引き付けるようにしたので、同極性励磁および異極性励磁を移動励磁する毎にロッド11をコイル21の軸方向長さ分ずつ駆動することが可能となる。そのため、交流型のリニアモータのようにロッド11の位置を検出するためのセンサを設けることなく、直流電流の向きを切り換える回数(スイッチング回数N)に応じて所望の位置にロッド11を駆動することができる。つまり、センサによる位置検出に基づいてフィードバック制御する必要がなくオープンループ制御が可能であるため、リニアモータにセンサを設ける必要がなく、リニアモータを小型化することができる。
【0038】
さらに、永久磁石15a,15bを相互に同極性の磁石端面を隣接させて磁石組立体14を形成したので、磁石組立体14は相互に隣接する磁石端面の近傍に径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)が形成され、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力を大きくすることができる。また、コイル組立体20のうち1組以上のコイルの隣接されたコイル端面の極性を同極性励磁するようにしたので、コイル組立体20は互いに同極性となる隣接するコイル端面の半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)が形成され、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力を大きくすることができる。これにより、ロッド11を軸方向に駆動する際の推力を向上することができる。
【0039】
図8は磁石組立体とコイル組立体の変形例を示す図5に対応する説明図であり、図9(A)は図8に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図であり、図9(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図であり、図10は図8に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。なお、図8〜図10において上記部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、磁石組立体14は、等しい軸方向長さに形成された3つの円筒形状の永久磁石15a〜15cを備え、隣接する永久磁石15a〜15cの磁極を互いに反対向きにしてロッド11を取り囲むように配置されており、各永久磁石15a〜15cを相互に同極性の磁石端面を隣接させて固定されている。つまり、真ん中に配置される永久磁石15bの軸方向先端側には、永久磁石15aが相互に隣接する磁石端面を同極性(S極)として突き当てられ、永久磁石15bの軸方向基端側には、永久磁石15cが相互に隣接する磁石端面を同極性(N極)として突き当てられている。これにより、各永久磁石15a〜15cの相互に隣接する磁石端面の近傍で半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。一方、コイル組立体20は、それぞれ永久磁石15a〜15cのほぼ半分の軸方向長さに形成された12個のコイル21を備え、A相コイル群25を構成する6つのコイル21A1〜21A6と、B相コイル群26を構成する6つのコイル21B1〜21B6とがロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側へA相B相交互に配置されている。
【0041】
このモータは2相励磁のバイポーラ駆動方式となっており、図9(A)に示すように、コイル組立体20のA相コイル群25およびB相コイル群26がそれぞれシリーズ結線されている。図9(B)に示すように、ロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側に向かって、コイル21A1、コイル21B1は時計方向に巻き、コイル21A2、コイル21B2は反時計方向に巻き、以下2つおきにその繰り返しの巻き方向となっている。コイル21同士の接続は、図9(A)、(B)に示すように、A相コイル群25は、コイル21A1、コイル21A2、コイル21A3、コイル21A4、コイル21A5、コイル21A6の順となり、B相コイル群26は、コイル21B1、コイル21B2、コイル21B3、コイル21B4、コイル21B5、コイル21B6の順となっている。各相のコイル群25,26に供給される電流の向きは、コントローラ37から各トランジスタTr1〜Tr8に送られる駆動信号により図10に示すように制御される。このコントローラ37による制御プログラムは、図5に示す制御プログラムと同様となっており、上記動作と同様の動作によりロッド11が軸方向に駆動されるようになっている。
【0042】
このように、磁石組立体14を構成する永久磁石の数は任意に変更可能であり、永久磁石の数を増やすことにより、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力を大きくし、ロッド11を軸方向に駆動する際の推力を向上させることができる。また、コイル組立体20を構成するコイル21の数も任意に変更可能であり、コイル21の数を増やすことによりロッド11の往復動ストロークを大きくすることが可能である。例えば、コイル組立体20を構成するコイル21の数を10個とする場合には、A相コイル群25のコイル21の数を5つ、B相コイル群26のコイル21の数を5つとすれば良い。
【0043】
図11(A)はコイル組立体の給電回路の変形例を示す配線図であり、図11(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図である。なお、図11(A)、(B)において上記部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。このモータは2相励磁のバイポーラ駆動方式となっており、図11(A)に示すように、コイル組立体20のA相コイル群25およびB相コイル群26がそれぞれパラレル結線されている。図11(B)に示すように、ロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側に向かって、コイル21A1、コイル21B1は時計方向に巻き、コイル21A2、コイル21B2は反時計方向に巻き、以下2つおきにその繰り返しの巻き方向となっている。コイル21同士の接続は、図11(A)、(B)に示すように、A相コイル群25は、コイル21A1、コイル21A2、コイル21A3、コイル21A4の順となり、B相コイル群26は、コイル21B1、コイル21B2、コイル21B3、コイル21B4の順となっている。このように、各相のコイル群25,26の結線方法としてはシリーズ結線に限定されず、各相のコイル群25,26をパラレル結線により結線するようにしても良い。
【0044】
図12はコントローラの制御プログラムの変形例を示す図7に対応するタイムチャートであり、図12において上記部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。図7に示すコントローラ37の制御プログラムでは、各相のコイル群25,26に供給される直流電流の向きが切り換えられる毎に、各コイル21に一定の電流値の直流電流が供給されており、コイル21の軸方向長さ分ずつ、つまり図1および図4に示すステップ毎にロッド11が軸方向に移動するようになっている。一方、図12に示すコントローラ37の制御プログラムでは、各コイル21に供給される直流電流の電流値を段階的に変化させるようにしている。すなわち、図1および図4に示す各ステップ間において、各コイル21には同一方向の直流電流が供給されており、その電流値を4段階に切り換えている。例えば、A相コイル群25を見ると、ステップ0からステップ1の間では矢印Ay方向の電流が供給されてその電流値が4段階に徐々に減少されており、ステップ1からステップ2の間では矢印Ax方向の電流が供給されてその電流値が4段階に徐々に増加されている。また、ステップ2からステップ3の間では矢印Ax方向の電流が供給されてその電流値が4段階に徐々に減少され、ステップ3からステップ4の間では矢印Ay方向の電流が供給されてその電流値が4段階に徐々に増加されている。
【0045】
各ステップ間において各コイル21に供給される直流電流の電流値が段階的に変化されると、各コイル21に生じる径方向の磁束の密度が変化し、磁石組立体14とコイル組立体20と電磁気力の生じる位置がコイル組立体20の軸方向に段階的に切り換えられる。これにより、各ステップ間においてロッド11を段階的に駆動することができるようになっている。したがって、直流電流の電流値の切り換え回数に応じて、各ステップの中間位置にロッド11を移動することが可能となる。このように、各コイル21に供給される直流電流の電流値を段階的に変化させることで、リニアモータをマイクロステップ制御するようにしても良い。なお、本実施の形態においては、ロッド11が各ステップ間を4段階に駆動するように、各ステップ間における電流値の4段階に切り換えるようにしたが、電流値の切り換え回数は任意に変更可能である。
【0046】
図13は他の実施形態における磁石組立体とコイル組立体との関係を示す図5に対応する説明図であり、図14(A)は図13に示すコイル組立体の給電回路を示す配線図であり、図14(B)は各コイルの巻き方向を示す説明図であり、図15は図13に示すコイル組立体の各コイルに供給される電流を示すタイムチャートである。なお、図13〜図15において上記部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図13に示すように、磁石組立体14は、等しい軸方向長さに形成された2つの永久磁石15a,15bを備え、各永久磁石15a,15bの磁極を互いに反対向きにしてロッド11を取り囲むように配置されており、各永久磁石15a,15bを相互に同極性(S極)の磁石端面を隣接させて固定されている。これにより、各永久磁石15a,15bの相互に隣接する磁石端面の近傍、つまり磁石組立体14の中央で半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。一方、コイル組立体20は、それぞれ永久磁石15a,15bのほぼ半分の軸方向長さに形成された8つのコイル21を備え、Ax相コイル群25を構成する2つのコイル21Ax1,21Ax2と、Bx相コイル群26を構成する2つのコイル21Bx1,21Bx2と、Ay相コイル群27を構成する2つのコイル21Ay1,21Ay2と、By相コイル群28を構成する2つのコイル21By1,21By2とがロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側へ上記の順で交互に配置されている。
【0048】
このモータは2相励磁のユニポーラ駆動方式となっており、図14(A)に示すように、コイル組立体20の各相のコイル群25〜28がそれぞれシリーズ結線されている。図14(B)に示すように、ロッド11の軸方向先端側から軸方向基端側に向かって、コイル21Ax1は時計方向に巻き、コイル21Bx1は反時計方向に巻き、以下交互に巻き方向が異なっている。コイル21同士の接続は、図14(A)、(B)に示すように、Ax相コイル群25はコイル21Ax1、コイル21Ax2の順に、Ay相コイル群27はコイル21Ay1、コイル21Ay2の順となり、Bx相コイル群26はコイル21Bx1、コイル21Bx2の順に、By相コイル群28はコイル21By1、コイル21By2の順となっている。
【0049】
ユニポーラ駆動方式では、各相のコイル群25〜28の巻き線一端が共通の端子30を介して直流電源36の正極にそれぞれ接続され、各相のコイル群25〜28の巻き線他端が端子31〜34を介してそれぞれ1つのトランジスタTr1〜Tr4に直列接続されている。Ax相およびAy相コイル群25,27は、コイル21Ax1,21Ay1の一端が端子30に接続されるとともにコイル21Ax2,21Ay2の他端が端子31,33にそれぞれ接続されており、各端子31,33がトランジスタTr1,Tr3を介して直流電源36の負極にそれぞれ接続されている。同様に、Bx相およびBy相コイル群26,28は、コイル21Bx1,21By1の他端が端子30に接続されるとともにコイル21Bx2,21By2の一端が端子32,34にそれぞれ接続されており、各端子32,34がトランジスタTr2,Tr4を介して直流電源36の負極にそれぞれ接続されている。各トランジスタTr1〜Tr4は、コレクタCに端子31〜34がそれぞれ接続され、エミッタEに直流電源36の負極が接続され、ベースBにコントローラ37が接続されている。
【0050】
コントローラ37からトランジスタTr1に駆動信号が送られると、トランジスタTr1がON状態となり、Ax相コイル群25に矢印Ax方向の直流電流が供給される。同様に、コントローラ37からトランジスタTr2に駆動信号が送られると、トランジスタTr2がON状態となり、Bx相コイル群26に矢印Bx方向の直流電流が供給される。コントローラ37からトランジスタTr3に駆動信号が送られると、トランジスタTr3がON状態となり、Ay相コイル群27に矢印Ay方向の直流電流が供給される。コントローラ37からトランジスタTr4に駆動信号が送られると、トランジスタTr4がON状態となり、By相コイル群28に矢印By方向の直流電流が供給される。ユニポーラ駆動方式では、このようにして直流電流が供給されるコイル群25〜28を切り換えることで、各相のコイル群25〜28の各コイル21に形成される磁極の有無が切り換えられる。
【0051】
コントローラ37は、予め格納された制御プログラムを基に各トランジスタTr1〜Tr4に送られる駆動信号を制御して、直流電流が供給されるコイル21を切り換え、つまり各コイル21に形成される磁極の有無を切り換え、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力より、ロッド11が軸方向に駆動されるようになっている。
【0052】
次に、ロッド11を軸方向基端側から軸方向先端側へ向けて駆動する際のリニアモータの動作について説明する。モータが図1に示すステップ0の状態では、ロッド11が軸方向基端側のストローク端に位置されており、コイル組立体20の軸方向先端側の端部が磁石組立体14に対向して配置されている。コントローラ37からトランジスタTr2,Tr3にそれぞれ駆動信号が送られ、Bx相コイル群26に矢印Bx方向の直流電流が供給されるとともに、Ay相コイル群27に矢印Ay方向の直流電流が供給されている。Bx相およびAy相コイル群26,27の各コイル21Bx1,21Bx2,21Ay1,21Ay2には、コイル21の巻き方向とコイル21に供給される直流電流の向きとの関係から、図13(A)に示すような磁極が形成されている(ステップ0)。
【0053】
Bx相コイル群26とAy相コイル群27との対応するコイル21同士は反対の巻き方向となるように結線されているため、Bx相コイル群26の各コイル21Bx1,21Bx2にはS−N方向の磁極が形成され、Ay相コイル群27の各コイル21Ay1,21Ay2にはN−S方向の磁極が形成されている。これにより、Bx相およびAy相コイル群26,27の各コイル21Bx1,21Bx2,21Ay1,21Ay2の相互に隣接するコイル端面がそれぞれ同極性(N極)となる。つまり、コイル21Bx1とコイル21Ay1、コイル21Bx2とコイル21Ay2はそれぞれN極同士で対向する。すなわち、コイル組立体20のうち2組の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性は同極性励磁されており、互いに同極性となる隣接するコイル端面の半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。
【0054】
このコイル組立体20に生じる径方向集中磁束により、磁石組立体14に生じる磁束(径方向集中磁束)を引き付け、各永久磁石15a,15bの磁石端面の極性と、当該磁石端面に対応する各コイル21のコイル端面の極性とが逆極性となるようにロッド11が位置されている。つまり、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力によりロッド11が当該位置に保持され、ロッド11が図1に示す状態となっている。
【0055】
Bx相およびAy相コイル群26,27にそれぞれ矢印Bx、Ay方向の直流電流が供給されている状態つまりステップ0から、コントローラ37からの駆動信号によりトランジスタTr1がON状態となるとともにトランジスタTr3がOFF状態となり、直流電流が供給されるコイル群がAy相コイル群27からAx相コイル群25に切り換えられる(ステップ1)。Ax相コイル群25とBx相コイル群26との対応するコイル21同士は反対の巻き方向となるように結線されているため、図13(B)に示すように、Ax相コイル群25の各コイル21Ax1,21Ax2にはN−S方向の磁極が形成され、Bx相コイル群26の各コイル21Bx1,21Bx2にはS−N方向の磁極が形成される。これにより、Ax相およびBx相コイル群25,26の各コイル21Ax1,21Ax2,21Bx1,21Bx2の相互に隣接するコイル端面がそれぞれ同極性(S極)となる。つまり、コイル21Ax1とコイル21Bx1、コイル21Ax2とコイル21Bx2とはそれぞれS極同士で対向する。すなわち、コイル組立体20のうち2組の相互に隣接するコイル21の突き合わされたコイル端面の極性はそれぞれ同極性励磁されており、互いに同極性となる隣接するコイル端面の半径方向に磁束が集中し、半径方向に高い密度の磁束(径方向集中磁束)を生じている。
【0056】
したがって、ステップ0の状態からステップ1の状態に切り換えられると、コイル21の突き合わされたコイル端面の極性が同極性励磁された位置がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側にずれるとともに、その極性がN極からS極に切り換えられる。つまり、コイル組立体20に生じる同極性励磁が、コイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向基端側から軸方向先端側に移動励磁するとともに、その極性が反対となる。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により、磁石組立体14の両端部に生じる磁束を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(A)に示す状態に駆動される。
【0057】
続いて、ステップ1の状態からトランジスタTr4がON状態となるとともにトランジスタTr2がOFF状態となり、直流電流が供給されるコイル群がBx相コイル群26からBy相コイル群28に切り換えられる(ステップ2)。つまり、図13(C)に示すように、Ax相コイル群25の各コイル21Ax1,21Ax2にはN−S方向の磁極が形成され、By相コイル群26の各コイル21By1,21By2にはS−N方向の磁極が形成される。これにより、コイル組立体20に生じる同極性励磁が、コイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向基端側から軸方向先端側に移動励磁するとともにその極性が反対となる。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により、磁石組立体14に生じる磁束(径方向集中磁束)を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(B)に示す状態に駆動される。
【0058】
同様に、ステップ2の状態から直流電流が供給されるコイル群がAx相コイル群25からAy相コイル群27に切り換えられ(ステップ3)、図13(D)に示すように、Ay相コイル群27の各コイル21Ay1,21Ay2にはN−S方向の磁極が形成され、By相コイル群28の各コイル21By1,21By2にはS−N方向の磁極が形成される。また、ステップ3の状態のから直流電流が供給されるコイル群がBy相コイル群28からBx相コイル群26に切り換えられ(ステップ4)、図13(E)に示すように、ステップ0の状態において各コイル21Bx1,21Bx2,21Ay1,21Ay2に形成された磁極と同一方向の磁極が各コイル21Bx1,21Bx2,21Ay1,21Ay2にそれぞれ形成される。
【0059】
このようにして、コントローラ37により各トランジスタTr1〜Tr8に送られる駆動信号が制御プログラムに基づいて切り換えられると、コイル組立体20に生じる同極性励磁がコイル21の軸方向長さ分だけコイル組立体20の軸方向基端側から軸方向先端側に移動励磁されるとともに、その極性が反対となる。それに同期して、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により、磁石組立体14に生じる磁束を引き付け、コイル組立体20がコイル21の軸方向長さ分だけ軸方向先端側に移動し、ロッド11が図4(C)、(D)に示すように軸方向に駆動される。
【0060】
逆に、ロッド11を軸方向先端側から軸方向基端側へ向けて駆動する場合には、コイル組立体20に生じる同極性励磁がコイル組立体20の軸方向先端側から軸方向基端側に移動励磁されるように、図15に示す制御プログラムと反対の制御がコントローラ37により行われる。
【0061】
このように、コイル組立体20の各コイル21を直流電源にそれぞれ接続し、直流電流が供給されるコイル21を切り換えることにより磁極が形成されるコイル21を切り換え、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力によりロッド11を軸方向に駆動するようにしたので、直流電流が供給されるコイル21を切り換える毎にロッド11をコイル21の軸方向長さ分ずつ駆動することが可能となる。すなわち、直流電流の供給されるコイル21を切り換えることにより、コイル組立体20に生じる同極性励磁をコイル組立体20の軸方向基端側から軸方向先端側に移動励磁し、コイル組立体20に生じる径方向集中磁束により磁石組立体14の磁束を引き付けるようにしてので、同極性励磁を移動励磁する毎にロッド11をコイル21の軸方向長さ分ずつ駆動することが可能となる。これにより、上記と同様の効果を奏することができる。
【0062】
このユニポーラ駆動方式においては、バイポーラ駆動方式に比べて磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力が小さくなるためロッド11の推力が低下する一方、トランジスタの数を少なくすることができるため、給電回路の構造やコントローラ37による制御を簡略化することが可能となる。なお、ユニポーラ駆動方式においても、磁石組立体14を構成する永久磁石の数やコイル組立体20を構成するコイル21の数は任意に変更可能であることはもちろんである。また、ユニポーラ駆動方式においても、マイクロステップ制御が可能であることはもちろんである。
【0063】
図16は本発明の他の実施形態であるリニアモータの断面図であり、図17は図16に示すリニアモータの平面図であり、図18は図16に示すリニアモータの正面図である。図19は図16におけるγ−γ線に沿う断面図であり、図20は図16に示すリニアモータの右側面図である。なお、図16〜20において上記と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
このモータは、図16に示すように、リニアテーブル(往復動部材)41を直線方向に一定のストロークで往復動するテーブル式のリニアモータであり、軸方向に延びる固定子としてのロッド42を備えたモータケース43と、モータケース43に往復動自在に装着される移動子としてのリニアテーブル41とを有している。
【0065】
アルミ合金等により形成されるモータケース43は、図19に示すように、ロッド42の軸方向に延びる断面略U字形状の基台44と、基台44の底壁部44aに対向して固定されるガイドレール45と、基台44の軸方向両端部に固定される一対の端壁46とを備えており、その内部には断面略長方形のスライダ収容室47が軸方向に沿って形成されている。ガイドレール45には、ロッド42の軸方向と直交する方向に開口するストローク溝48が形成されており、ストローク溝48はリニアテーブル41の往復動ストロークに対応してロッド42の軸方向に沿って形成されている。このモータケース43には、ガイドレール45に沿って軸方向に往復動自在にリニアテーブル41が装着されている。
【0066】
リニアテーブル41には、ストローク溝48内に挿通される一対の連結部材49が締結されており、連結部材49がストローク溝48の軸方向端面に当接されることにより、リニアテーブル41の軸方向への移動が制限されるようになっている。また、リニアテーブル41は、一対の連結部材49を介して、モータケース43のスライダ収容室47に軸方向に移動自在に収容されたスライダ50に連結されている。スライダ50はモータケース43の軸方向に延びる断面略長方形をしており、その軸心には軸方向に貫通する円孔51が形成されて、円孔51の内周面に磁石組立体14が取り付けられている。
【0067】
一方、モータケース43のスライダ収容室47には、鉄などの強磁性体材料により形成されるロッド42が収容され、ロッド42の軸方向両端部が一対の端壁46により固定されている。ロッド42の軸方向中央部は磁石組立体14内に挿通されており、ロッド42の軸方向中央部の外周面には、磁石組立体14と径方向に所定の隙間を介して対向するコイル組立体20が取り付けられている。このコイル組立体20の各コイル21は、ロッド11の軸方向基端部に設けられたケーブル52を介して給電回路に接続されており、各コイル21に形成される磁極が切り換えられることで、磁石組立体14とコイル組立体20との電磁気力により、磁石組立体14が取り付けられたリニアテーブル41が軸方向に駆動されるようになっている。このように、リニアモータはロッド式に限定されず、テーブル式としても良い。
【0068】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前記実施の形態においては、コイル組立体20の各コイル21に供給される直流電流の向きを切り換える、または直流電流が供給されるコイル21を切り換えるために、給電回路に複数のトランジスタを設けるようにしたが、トランジスタの代わりに他のスイッチング素子等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11 ロッド
11a 取付孔
12 モータケース
12a センサ溝
13 円孔
14 磁石組立体
15a〜15c 永久磁石
16 係止部材
17 ガイド部材
18 ストローク溝
19 ねじ部材
20 コイル組立体
21 コイル
21A1〜21A6,21B1〜21B6 コイル
21Ax1,21Ax2,21Ay1,21Ay2 コイル
21Bx1,21Bx2,21By1,21By2 コイル
23 コネクタ
25 A相コイル群、Ax相コイル群
26 B相コイル群、Bx相コイル群
27 Ay相コイル群
28 By相コイル群
30〜34 端子
36 直流電源
37 コントローラ(コイル通電制御手段)
41 リニアテーブル(往復動部材)
42 ロッド
43 モータケース
44 基台
44a 底壁部
45 ガイドレール
46 端壁
47 スライダ収容室
48 ストローク溝
49 連結部材
50 スライダ
51 円孔
52 ケーブル
Tr1〜Tr8 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にコイル組立体が取り付けられたロッドと、前記ロッドを取り囲むように配置される磁石組立体とを有し、前記ロッドと前記磁石組立体の一方が前記ロッドの軸方向に一定のストロークで往復動するリニアモータであって、
軸方向に着磁された円筒形状の複数の永久磁石を相互に同極性の磁石端面を隣接させて径方向集中磁束を生じる前記磁石組立体を形成し、
それぞれ前記永久磁石の半分の軸方向長さを有する複数のコイルを相互にコイル端面を隣接させて前記ロッドの軸方向に並べて前記コイル組立体を形成し、
前記コイル組立体のうち1組以上の前記コイルの隣接された前記コイル端面の極性を同極性励磁して径方向集中磁束を生じることにより前記磁石組立体の前記径方向集中磁束を引き付け、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁を移動励磁するコイル通電制御手段を有し、
前記ロッドと前記磁石組立体とを前記ストロークの範囲において、軸方向に相対駆動することを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアモータにおいて、他の組の前記コイルの隣接させた前記コイル端面の極性を異極性励磁し、前記複数のコイルにそれぞれ供給される電流の向きを前記コイル通電制御手段により切り換えることで、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁と前記異極性励磁を移動励磁することを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
請求項1記載のリニアモータにおいて、隣り合う前記コイルが相互に逆巻きとなるように配置し、電流が供給される前記コイルを前記コイル通電制御手段により切り換えることで、前記コイル組立体の一端側から他端側に向けて前記同極性励磁を移動励磁することを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
請求項2または3記載のリニアモータにおいて、前記コイルに供給される電流値を段階的に変化させることを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアモータにおいて、前記コイル組立体が取り付けられた前記ロッドをケースに軸方向に往復動自在に装着し、前記ケースに前記磁石組立体を固定し、前記ロッドを直線方向に駆動することを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアモータにおいて、前記コイル組立体が取り付けられた前記ロッドをケースに固定し、前記ケースに当該ケースの長手方向に往復動自在に装着される往復動部材に前記磁石組立体を連結し、前記往復動部材と前記磁石組立体を直線方向に駆動することを特徴とするリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−114889(P2011−114889A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266819(P2009−266819)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】