説明

リング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置

【課題】 リングのセンタリングをリングの把持と同時に高精度に行うことができるリング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置を提供する。
【解決手段】 リング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される1個の円筒形の固定爪と、同じくリング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される2個の円筒形の可動爪と、2個の円筒形の可動爪を同時に駆動するエアシリンダとを備えたリング搬送用ハンドにおいて、これら3個の円筒形の爪が3角形状に配置され、2個の円筒形可動爪は、その中心を結ぶ線に直角で、円筒形固定爪の中心を通る線と平行に移動する構成とする。これら3個の円筒形の爪はリングの把持時にはリングを把持し、かつ、3点でリングと接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の被搬送物(以下、単にリングという)を搬送する搬送用ハンドと、それを用いた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リングを搬送する場合において、搬送後にリングの位置を高精度に決めるには、搬送のいずれかの時点においてリングの位置決めを行う必要がある。そして、搬送前に位置決め装置にてリングの位置決めを行った場合は、搬送装置はその動きを正確に再現することによって搬送後のリングの位置を高精度に決める。また、搬送後にリングの位置決めを行う場合は、大まかにリングを搬送した後に位置決め装置がリングの位置決めを行う。
例えば、従来のリング搬送用ハンドとしては、図13に示したものが用いられている。
図13において、リングAは固定爪38と可動爪39の2個の把持爪で把持される。各爪のリングとの接触部はリングの内径と同じ曲率半径をもっている。可動爪39は可動ブロック33に取り付けられ、ジョイント36を介してエアシリンダ37の伸縮動作により図中左右方向に移動する。
また、センタリング機構付搬送用ハンドとして、図14及び図15に示したものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
これは、X軸方向に開閉する一対のクランプ爪10,10とY軸方向に開閉する一対のクランプ爪11,11とを、2駆動エアチャック12により個別に開閉駆動するとともに、X軸方向に開閉するクランプ爪10にボールベアリング10bを用いたものである。なお、図14において、10aはボルト、12は2駆動エアチャック、13は支持奸、14はボディー、15aと15bはエアシリンダである。
【特許文献1】実開平5−16181(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のリング搬送用ハンドは、リングの大きさに合わせた把持爪が必要であるとともに、リングを2個の爪で把持するためリングのセンタリング能力が十分ではなく、搬送後にリングの位置を高精度に決めるには、搬送の前後いずれかにおいてリングの位置決めを行う必要があった。さらに、リングのサイズが変わると、爪のリングとの接触部の形状(曲率半径)をリングに合わせて変える必要があった。
また、特許文献1に係るセンタリング機構付搬送用ハンド(図14及び図15)においては四角形状を対象としていることから構造が複雑で、大きくなるという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、リングのセンタリングをリングの把持と同時に高精度に行うことができるリング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、リング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される1個の円筒形の固定爪と、同じくリング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される2個の円筒形の可動爪と、2個の円筒形の可動爪を同時に駆動するエアシリンダとを備えたリング搬送用ハンドにおいて、これら3個の円筒形の爪が3角形状に配置され、2個の円筒形可動爪は、その中心を結ぶ線に直角で、円筒形固定爪の中心を通る線と平行に移動することを特徴とするものである。これら3個の円筒形の爪はリングの把持時にはリング内径または外径を把持し、かつ、3点でリングと接触する。
請求項2に記載の発明は、前記2個の円筒形の可動爪が、軸受等の回転する爪であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、搬送装置が、請求項1または2記載のリング搬送用ハンドを可動部の先端部に備えていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記可動部がマニピュレータの手首部材で構成され、搬送装置がマニピュレータで構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、リングと把持爪が3点で接触することで、コンパクトな構成でリングを把持することができるとともに、同時にリングのセンタリングを行うことができる。
請求項2に記載の発明によると、爪部を軸受等の回転体とすることで、リングと爪との間の摩擦を小さくすることができ、より高精度なセンタリングが可能となる。
また、請求項3,4に記載の発明によると、コンパクトな構成でリングを把持することができるとともに、同時にリングのセンタリングを行うことができ、かつリングと爪との間の摩擦を小さくすることができ、さらに、より高精度なセンタリングが可能となるリング搬送用ハンドを、例えば、可動部であるマニピュレータの手首部材に取り付けて搬送装置を構成することができるので、精度がよく、かつ自由度が高い搬送が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のリング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置の側面図である。図2は図1におけるマニピュレータを上方から見た平面図である。
図1において、本発明のリング搬送用ハンド30は、それを用いた搬送装置であるマニピュレータ本体20の手首部材27に取り付けられている。マニピュレータ20は、マニピュレータ本体21と、リング搬送用ハンド30とから成る。
図1,2において、22は架台、23はベース、24は旋回台、25は下腕、26は上腕、31はハンドベース、32はリニアレール、33は可動ブロック、34は固定爪、35は可動爪、36はジョイント、37はエアシリンダである。
本発明が従来のリング搬送用ハンドと異なる部分は、把持爪が、円筒形の固定爪34が1個、同じく円筒形の可動爪35が2個の合計3個となり、これらが3角形状に配置され、2個の可動爪35は、その中心を結ぶ線に直角で固定爪34の中心を通る線と平行に移動することであり、マニピュレータ21と連動してリングを搬送することである。
図2は、リング供給ステーション1上に大まかに位置決めされたリングAをマニピュレータ20により把持して90°位置がずれるリング挿入ステーション2に高精度に位置決め搬送するようにした前記搬送装置のレイアウトを示している。
マニピュレータ本体21は従来から周知のものであって、架台22に支持されたベース23上に旋回台24を取り付け、その旋回台24に下腕25の下端部を連結し、その下腕25の上端部に上腕26の後端部を連結し、上記上腕26の先端部に手首部材27を設けた構成とされている。
ここで、旋回台24はS軸を中心とする自由度をもち、図示省略したモータによって旋回動作される。
また下腕25はL軸を中心とする自由度をもち、図示省略したモータによって揺動される。
さらに、上腕26は、U軸を中心とする自由度をもち、図示省略したモータによってU軸を中心に上下方向に揺動される。
また、手首部材27は、B軸及びT軸を中心とする自由度をもち、上腕26の内部に組込まれた2台のモータのそれぞれによって、B軸を中心に揺動され、かつT軸を中心に回転動作される。
上記マニピュレータ20は予め登録されたデータに従って動作され、手首部材27の位置、角度、姿勢が制御される。
図3及び図4は、リング搬送用ハンド30の詳細を示すもので、図3は側面図、図4は底面図である。
図3,4に示すように、手首部材27に連結されたハンドベース31には固定爪34と、リニアレール32と、エアシリンダ37が取り付けられ、さらにリニアレールの可動ブロック33には可動爪35が2個取り付けられる。そして可動ブロック33及び可動爪35はジョイント36を介してエアシリンダ37と繋がっており、エアシリンダ37の動作により、可動爪35は図中左右方向に移動する。
実施例で示すリング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置は上記の構造から成り、図5及至図10は、上記マニピュレータ20がリングを把持する際の動きと、リングの把持と同時にリングのセンタリングを行う様子を示すものである。以下、マニピュレータ20がリングを把持する際の動きを説明する。
図5は、リング供給ステーション1上にラフガイド3により大まかに位置決めされたリングAの上方にリング搬送用ハンド30が待機している図である。ここで可動爪35はエアシリンダ37の動作により固定爪34側に寄っている。
図6は、マニピュレータ20が下方に移動することにより、リングAの内側にリング搬送用ハンド30の固定爪34と可動爪35が入り込んだ図である。
図7は、エアシリング37の動作により固定爪34と可動爪35の距離が広がり、リングAを把持した図である。
図8は、マニピュレータ20が上方に移動することにより、把持したリングAを上方に搬送した図である。
次に、上記動作をリングAのセンタリングの観点から説明する。
リングAはラフガイド3により、その位置を大まかに規制されている。
リングAとリング搬送用ハンド30との位置関係は、例えば図9に示すようなものである。
リング搬送用ハンド30はマニピュレータ本体21によってその位置関係を制御されているが、リングAは大まかに位置決めされているだけなので、リングとハンドの中心は一致していない。
ここで、エアシリング37の動作により固定爪34と可動爪35の距離が広がると、リングAは安定した位置(固定爪34と2個の可動爪35が全てリングAと接触した位置)に移動する。これにより、リングAのセンタリングが完了する。
なお、爪を円筒形としたことで、様々なサイズのリングに対応することができる。
また、このセンタリングの機能は、固定爪34と2個の可動爪35との位置関係が正三角形となる位置が最も高い。リングが大きい、あるいはラフガイドとの関係で可動爪35同士の距離が大きく取れない等の理由により正三角形の位置関係を確保できない場合には、リングAと爪との間の摩擦等によりセンタリングの機能が落ちる。このような場合、可動爪を軸受等の回転体で構成することにより摩擦を低減することができ、センタリング機能を高く維持することができる。
さらに、固定爪34を半円形状とすることも可能である(図11)。
このように、リング搬送用ハンドはそのリング把持爪が円筒形をしており、リングの内径と把持爪が3点で接触することにより、リングの把持と同時にリングのセンタリングを行うことができる。また、爪部を軸受等の回転体としリングと爪との間の摩擦を小さくすることにより、より高精度なセンタリングを可能とすることができる。
【実施例2】
【0008】
なお、図12に示すように、把持する方向を逆にすることによって、リングAの外側を把持したり、円筒形の物品を搬送するという用途にも適用することができる。なお、図12において、図9と同一符号は、同一もしくは相当する部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における本発明のリング搬送用ハンドとそれを用いた搬送装置の側面図である。
【図2】図1におけるマニピュレータを上方から見た平面図である。
【図3】図1におけるリング搬送用ハンドの詳細を示す側面図である。
【図4】図1におけるリング搬送用ハンドの詳細を示す底面図である。
【図5】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す側面図である。
【図6】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す側面図である。
【図7】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す側面図である。
【図8】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す側面図である。
【図9】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す底面図である。
【図10】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す底面図である。
【図11】搬送時におけるリング搬送用ハンドの作動状態を示す底面図である。
【図12】実施例2におけるリング搬送用ハンドの詳細を示す底面図である。
【図13】従来技術におけるリング搬送用ハンドを示す底面図である。
【図14】従来技術におけるリング搬送用ハンドを示す側面図である。
【図15】従来技術におけるリング搬送用ハンドを示す底面図である。
【符号の説明】
【0010】
A リング
B 位置決めされたリング
1 リング供給ステーション
2 リング挿入ステーション
3 リングラフガイド
20 マニピュレータ
21 マニピュレータ本体
22 架台
23 ベース
24 旋回台
25 下腕
26 上腕
27 手首部材
30 リング搬送用ハンド
31 ハンドベース
32 リニアレール
33 可動ブロック
34 固定爪
35 可動爪
36 ジョイント
37 エアシリンダ
38 従来の固定爪
39 従来の可動爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される1個の円筒形の固定爪と、同じくリング状の被搬送物の内側もしくは外側に挿入される2個の円筒形の可動爪と、2個の円筒形の可動爪を同時に駆動するエアシリンダとを備えたリング搬送用ハンドにおいて、
これら3個の円筒形の爪が3角形状に配置され、
2個の円筒形可動爪は、その中心を結ぶ線に直角で、円筒形固定爪の中心を通る線と平行に移動することを特徴とするリング搬送用ハンド。
【請求項2】
前記2個の円筒形の可動爪は、軸受等の回転する爪であることを特徴とする請求項1記載のリング搬送用ハンド。
【請求項3】
請求項1または2記載のリング搬送用ハンドを可動部の先端部に備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
前記可動部が、マニピュレータの手首部材で構成されたことを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−21691(P2007−21691A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210175(P2005−210175)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】