説明

リードフレームの製造方法

【課題】封止樹脂との密着性を維持し、且つエポキシ樹脂成分の滲み出しのない、めっき表面形態をなしたニッケルめっきと金めっきを施したリードフレームを提供する。
【解決手段】リードフレームの少なくとも半導体素子を搭載するパッド部上に、塩化物浴による結晶核となる山型状突起群が形成されるようにニッケルめっき11を施した後、その上に延展性の良いニッケルめっき層12を施して半球状の凹凸表面を形成し、更にその上にパラジウムめっき層と金めっき層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルめっきとパラジウムめっきと金めっきを施した半導体用リードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニッケルめっきとパラジウムめっきと金めっきを施した半導体用リードフレームは、めっき面と封止樹脂が弱く、衝撃を与えると封止樹脂とリードフレームが剥離する問題があった。そのため、銅合金をマイクロエッチング処理して表面を粗化することで凹凸のある形状に形成して、封止樹脂との密着性を向上させるようにした技術があるが、Siを含有する銅合金ではスマットが発生することから使用できない。
そして、特許文献1には、リードフレームの全面に、緻密で平坦なニッケルめっき層を形成し、その上に縦方向への結晶成長を優先させたニッケルめっき層を形成して凹凸を作ることで、封止樹脂との密着性を得る技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−298265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、縦方向への結晶成長を優先させたニッケルめっき層を形成した場合、その上に形成されるパラジウムめっき層と金めっき層が薄いことから、ニッケルめっきの影響を受けてアンカー効果が得られ、封止樹脂との密着性が向上する。しかし、パッド部にも同様のめっき状態が形成されるため、半導体素子を接着するためのダイボンディング用エポキシ樹脂をパッド部に塗布し、半導体素子を搭載後に加熱硬化させた時、塗布したダイボンディング用エポキシ樹脂中の未硬化のエポキシ樹脂成分が滲み出して不良品を発生させる原因となっていた。
【0004】
この現象は、ある特定方向への結晶性成長により針状あるいは柱状のめっきを作り上げることによって形成された凹凸のめっき表面により、毛管現象によって未硬化のエポキシ樹脂成分が滲み出してくる現象と考えられており、エポキシブリードアウトと呼ばれている不良現象である。
この不良現象を発生させないために、エポキシブリードアウト防止剤が市販されているが、顧客によってはこの防止剤の使用を認めないところもあり、このようなことから、封止樹脂との密着性を悪化させないアンカー効果とエポキシブリードアウトの発生の無いめっき表面形態の両方を求める要求が出てきた。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、封止樹脂との密着性を維持し、且つエポキシ樹脂成分の滲み出しのない、めっき表面形態をなしたニッケルめっきと金めっきを施したリードフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるリードフレームの製造方法は、銅合金を用いたリードフレームにおいて、少なくとも半導体素子を搭載するパッド部上に、塩化物浴による結晶核となる山型状突起群が形成されるようにニッケルめっきを施した後、その上に延展性の良いニッケルめっきを施して半球状の表面を形成し、更にその上にパラジウムめっき層と金めっき層を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半球状の突起群の形成されためっき表面を得ることができるから、封止樹脂との密着性が維持され且つエポキシ樹脂成分の滲み出しの少ない表面形態のリードフレームを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、銅合金を用いてニッケルめっき層とパラジウムめっき層と金めっき層を順番に形成するリードフレームにおいて、図1の円内に拡大して示した如く、先ず銅合金10の表面に山型状の突起となるべき結晶核のニッケルめっき11を形成し、次にこの結晶核を基点に延展性の良いニッケルめっき層12を形成し、次に図示していないがパラジウムめっき層と金めっき層を形成するリードフレームの製造方法であり、最初に塩化物浴を用いることにより成形される結晶核となるべき山型状の突起群からなるニッケルめっき層を形成し、次にスルファミン酸ニッケルめっき浴を用いて延展性の良いニッケルめっき層を形成することを特徴とするリードフレームの製造方法である。この、最初に凸となる結晶核のニッケルめっきを形成して、次にその結晶核を基点に延展性の良いニッケルめっき層を形成することで表面形態が山型状となり、特許文献1に開示された針状あるいは柱状の表面形態に比べて毛管現象の発生を抑制することができる。
【0009】
最初のニッケルめっきで山型である凸状の核を作り、その凸状の核を覆うようにニッケルめっき層を形成して山型状のニッケルめっきとすることで、凹凸のあるニッケルめっき表面が形成され、その上に形成するパラジウムめっきと金めっきが薄いため、ニッケルめっきの凹凸がめっき層の最表面に反映され、封止樹脂との密着性を維持し、且つエポキシ樹脂成分の滲み出しが少ないめっき表面形態のリードフレームを得ることができる。
【0010】
本発明は、銅合金をプレス加工やエッチング加工などによってリードフレーム形状に成形し、少なくとも半導体素子を搭載するパッド部は、塩化物浴による結晶核となる山型である凸状体群からなるニッケルめっき層を形成し、次にスルファミン酸ニッケルめっき浴による延展性の良いニッケルめっき層を形成して凹凸のあるめっき表面形態を形成し、次にパラジウムめっき層と金めっき層を形成することで、封止樹脂との密着性を維持したアンカー効果とエポキシブリードアウトの不良がないことを特徴とするリードフレームの製造方法である。
【0011】
実施例1
板厚0.2mm、幅100mmのコイル状銅合金の両面にドライフィルムレジストを貼り付けて、所定の形状のマスクを用いて露光し現像してエッチング処理を行い、10mm角のパッドとその周辺に0.2mm角のリードを60個配置したパターンを等間隔に形成して、リードフレーム形状を得た。
これをアルカリや酸で前処理し、次のようにして全面にめっきを施した。先ず塩化ニッケルとほう酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度2A/dm2で2分間めっきを行い、厚さが約1μmの結晶核となるニッケルめっきを形成した。次に、その上にスルファミン酸ニッケルめっき浴を用いて、電流密度2A/dm2で2分間めっきを行い、厚さ約1μmのニッケルめっき層を形成した。その後に、パラジウムめっきを厚さ約0.1μmになるように施し、最後に金めっきを厚さ約0.05μmになるように施して、リードフレームを完成させた。
完成したこのリードフレームのパッド中央表面に封止用樹脂をφ3mmとなるように塗布し、大気中にてホットプレートで加熱硬化させた後、パッド部を金属顕微鏡で観察したところ、約30μmのブリードアウトが生じていた。
また、めっき面上に直径2mmとなる樹脂領域を形成し(金型注入圧力100kg/cm2、金型温度175℃×90秒)、オーブンでキュア(175℃×8時間)して、評価用樹脂部を4点形成し、真横から押して強度を測定し、単位面積当たりの強度を算出したところ、平均11.8MPaの樹脂密着強度となった。
一方、現在使用している通常のニッケルとパラジウムと金の3層構造のめっきの場合を評価した結果は、平均9.5MPaの樹脂密着強度であった。
【0012】
実施例2
実施例1と同様にしてリードフレーム形状を形成し、片面側(裏面)にドライフィルムレジストを貼り付け、リードフレームの表面と側面に塩化ニッケルとほう酸からなるニッケルめっき浴を用いて、電流密度2A/dm2で2分間めっきを行い、貼り付けたドライフィルムレジストを剥離し、リードフレーム全面にスルファミン酸ニッケルめっき浴を用いて、電流密度2A/dm2で2分間めっきを行うことにより、表面と側面に2層のニッケルめっきを形成し、裏面に1層のニッケルめっきを形成した。次に、全面にパラジウムめっき(厚さ約0.1μm)と金めっき(厚さ約0.05μm)を施すことにより、半導体素子を搭載する面側に凹凸のあるめっき層が形成され、反対側面はスムースなめっき層の形成されたリードフレームが得られた。
【0013】
エポキシ樹脂成分の滲み出し(ブリードアウト)の評価は、市販のダイボンディング用エポキシ樹脂をパッド中央表面にφ2〜3mmとなるように塗布して、175℃×30分の条件で加熱硬化させた後、パッド部を金属顕微鏡で観察して判断することができる。例えば、従来のニッケルめっきとパラジウムめっきと金めっきを形成したリードフレームでは、滲み出しが10μm以下の発生であるが、特許文献1に開示された技術によるリードフレームの場合は、パッド全域に広がる結果となった。しかし、本発明によるリードフレームの製造方法によれば、滲み出しが30μm以下の発生となる結果、不良となるレベルには至らなかった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法によるリードフレームの断面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 銅合金
11 結晶核のニッケルめっき
12 延展性の良いニッケルめっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金を用いたリードフレームにおいて、少なくとも半導体素子を搭載するパッド部上に、塩化物浴による結晶核となる山型状突起群が形成されるようにニッケルめっきを施した後、その上に延展性の良いニッケルめっきを施して半球状の表面を形成し、更にその上にパラジウムめっき層と金めっき層を形成するようにしたことを特徴とするリードフレームの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236509(P2011−236509A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191822(P2011−191822)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2008−284431(P2008−284431)の分割
【原出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】