説明

レジストパターン形成方法

【課題】パターン寸法の微細化を達成でき、且つ、パターン均一性を向上できるレジストパターン形成方法の提供。
【解決手段】酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を、前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターン上に被覆形成剤を塗布して被覆膜を形成する工程、前記レジストパターンの軟化点よりも低い温度で熱処理を行い、被覆膜を熱収縮させて前記レジストパターン間の間隔を狭める工程、及び前記被腹膜を除去する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン寸法の微細化を達成でき、且つ、パターン均一性を向上できるレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。
露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)の電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分とを含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
たとえば上記現像液がアルカリ現像液(アルカリ現像プロセス)の場合、ポジ型の化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分(ベース樹脂)と、酸発生剤成分とを含有するものが一般的に用いられている。かかるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、露光部において、酸発生剤成分から酸が発生し、該酸の作用により樹脂成分のアルカリ現像液に対する溶解性が増大して、露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。そして、未露光部がパターンとして残るポジ型パターンが形成される。ここで、前記ベース樹脂は、酸の作用により樹脂の極性が高くなるものが用いられ、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する一方で、有機溶剤に対する溶解性は低下する。そのため、アルカリ現像プロセスでなく、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いたプロセス(以下、溶剤現像プロセス、またはネガ型現像プロセスということがある)を適用すると、露光部では、相対的に有機系現像液に対する溶解性が低下するため、該溶剤現像プロセスにおいては、レジスト膜の未露光部が有機系現像液により溶解、除去されて、露光部がパターンとして残るネガ型のレジストパターンが形成される。
【0004】
アルカリ現像プロセスにおいてポジ型のパターンを形成するレジスト組成物を用いるポジ型現像プロセスでは、トレンチパターン(孤立スペースパターン)やホールパターンを形成する場合、ラインパターンやドットパターンを形成する場合に比べて、弱い光入射強度下でのパターン形成を強いられ、露光部および未露光部にそれぞれ入射する光の強度のコントラストが小さくなる。そのため、解像力等のパターン形成能に制限が生じやすく、高解像のレジストパターンを形成することが難しい傾向がある。
一方、ネガ型の化学増幅型レジスト組成物、つまり露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が減少する化学増幅型レジスト組成物と有機系現像液とを組み合わせたネガ型現像プロセスは、前記ポジ型現像プロセスとは逆に、トレンチパターンやホールパターンの形成に有利と考えられる。そのため近年では、微細パターンの形成にネガ型現像プロセスが重用され、ネガ型現像プロセスに適したベース樹脂等が提案されている。
たとえば特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂を含有するネガ型現像用レジスト組成物を用いたパターン形成方法が開示されている。
【0005】
レジストパターンの微細化が求められるなか、レジストパターンを熱処理で流動化させ、パターン寸法を微細化する方法が提案されている(特許文献2〜4)。例えば特許文献2には、基板上にレジストパターンを形成した後、熱処理を行い、レジストパターンの断面形状を矩形から半円状へと変化させて底辺長を増大させることにより、微細なパターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献3には、レジストパターンを形成した後、その軟化温度の前後に加熱し、レジストの流動化によりそのパターン寸法を変化させて微細なパターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献4には、特定構造の樹脂を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した後にサーマルフロー処理を行う微細パターンの形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−025723号公報
【特許文献2】特開平1−307228号公報
【特許文献3】特開平4−364021号公報
【特許文献4】特許第4657883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後、半導体デバイスの集積化や微小化の傾向がますます進むなか、より微細なパターンを形成することができるレジストパターン形成方法が求めらられている。また、該レジストパターンには、微細であることと同時に、パターンの均一性のさらなる向上も望まれている。
しかしながら、ネガ型現像において上記特許文献2〜4のような熱処理によるパターン寸法の微細化、つまりパターン間の間隔(例えば、コンタクトホールパターンであればホールの直径;スペース(トレンチ)パターンであればスペースの幅)の狭小化を試みた場合、パターン間の間隔が逆に広がってしまい、微細化が達成されない場合があるという問題があった。ネガ型現像では露光により一部の基が脱離する等して溶解性が減少した部分がパターン部(コンタクトホールパターンやスペースパターンの側壁になる部分)となる。該パターン部に対して熱処理を行うことにより、露光による基の脱離等で生じた空隙内に周囲の膜が侵入することでレジスト膜全体及びパターン部が収縮し、パターン間の間隙が広がってしまうと考えられる。そのため、ネガ型現像において、パターン部に影響を与えることなく簡便にパターン寸法の微細化を達成でき、且つ、パターン均一性を向上できる方法が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像プロセスにおいて、パターン寸法の微細化を達成でき、且つ、パターン均一性を向上できるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第一の態様は、酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を、前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターン上に被覆形成剤を塗布して被覆膜を形成する工程、前記レジストパターンの軟化点よりも低い温度で熱処理を行い、被覆膜を熱収縮させて前記レジストパターン間の間隔を狭める工程、及び前記被腹膜を除去する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法である。
【0010】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステル」における、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことを意味する。
α位の炭素原子に結合していてもよい置換基における、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
α位の炭素原子に結合していてもよい置換基における、炭素数1〜5のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
また、該置換基における、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として具体的には、上記の「置換基における、炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、該置換基におけるヒドロキシアルキル基として具体的には、上記の「置換基における、炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部又は全部がヒドロキシ基で置換された基が挙げられる。
本発明において、かかるα位の炭素原子に結合しているのは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基であることが最も好ましい。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像プロセスにおいて、レジストパターンの寸法の微細化を達成でき、且つ、レジストパターン均一性を向上できるレジストパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一の態様であるレジストパターン形成方法は、酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を、前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターン上に被覆形成剤を塗布して被覆膜を形成する工程、前記レジストパターンの軟化点よりも低い温度で熱処理を行い、被覆膜を熱収縮させて前記レジストパターン間の間隔を狭める工程、及び前記被腹膜を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のレジストパターン形成方法に用いるネガ型現像用レジスト組成物は、放射線が照射(露光)されると、酸発生剤成分(B)から酸が発生し、該酸の作用により基材成分(A)の有機溶剤に対する溶解性が減少する。そのため、該レジストパターン形成方法においては、該ネガ型現像用レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜における露光部の、前記有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性が減少する一方で、未露光部の有機系現像液に対する溶解性は変化しないため、該有機系現像液を用いたネガ型現像を行うことにより、未露光部が除去されてレジストパターンが形成される。
本発明におけるネガ型現像用レジスト組成物の詳細については後述する。
以下、本発明のレジストパターン形成方法について工程ごとに具体的に説明する。
【0014】
・レジストパターン形成方法
(I)レジスト膜形成工程
まず支持体上に、前記ネガ型現像用レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施してレジスト膜を形成する。
【0015】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と、下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)とに分けられる。
【0016】
(II)レジスト膜露光工程
次に、形成されたレジスト膜に対し、例えばArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行う。
露光の後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、露光により発生した酸による脱保護反応を十分に行うことが好ましい。
【0017】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。後述するような本発明で用いることができるレジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用としての有用性が高く、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用として特に有用である。
【0018】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0019】
(III)レジストパターン形成工程
次いで、露光後のレジスト膜を、有機系溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて現像処理した後、好ましくは有機溶剤を含有するリンス液を用いてリンス処理し、乾燥を行う。リンスを行うことにより、良好なパターン形成ができる。
現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
また、場合によっては、現像処理、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、残存する有機溶剤を除去するために、ベーク(ポストベーク)処理を行ってもよい。
【0020】
(有機系現像液)
現像に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、基材成分(A)(露光前の基材成分(A))を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤のなかから適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられ、なかでもエステル系溶剤とケトン系溶剤が好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。ケトン系溶剤としてはメチルアミルケトン(2−ヘプタノン)が好ましい。
【0021】
ケトン系溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。アルコール系溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤であり、「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。アミド系溶剤は構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも該当するものとする。また、炭化水素系溶剤は、炭化水素からなり、置換基(水素原子および炭化水素基以外の基または原子)を有さない炭化水素溶剤である。
【0022】
ケトン系溶剤としては、たとえば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)等が挙げられる。
【0023】
エステル系溶剤としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、後述する一般式(1)で表される溶剤、又は後述する一般式(2)で表される溶剤を用いることが好ましく、一般式(1)で表される溶剤を用いることがより好ましく、酢酸アルキルを用いることがさらにより好ましく、酢酸ブチルを用いることが最も好ましい。
【0024】
アルコール系溶剤としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール、3−メトキシ−1−ブタノール等の1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の、水酸基を含むグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの中でもグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0025】
アミド系溶剤としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0026】
エーテル系溶剤としては、たとえば、上記水酸基を含むグリコールエーテル系溶剤;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の、水酸基を含まないグリコールエーテル系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらのなかでも、水酸基を含むグリコールエーテル系溶剤、水酸基を含まないグリコールエーテル系溶剤等のグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0027】
炭化水素系溶剤としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。
【0028】
有機系現像液に用いる有機溶剤としては、下記一般式(1)または(2)で表される溶剤が好ましい。
00−C(=O)−O−R01 …(1)
02−C(=O)−O−R03−O−R04 …(2)
[式(1)中、R00およびR01はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基またはハロゲン原子であり、R00およびR01は互いに結合して環を形成してもよい。式(2)中、R02及びR04はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基またはハロゲン原子であり、R02およびR04は互いに結合して環を形成してもよく、R03は、アルキレン基である。]
【0029】
式(1)中、R00およびR01におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、その炭素数は1〜5が好ましい。該アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としてはたとえば水酸基、カルボキシ基、シアノ基等が挙げられる。
アルコキシ基、アルコキシカルボニル基におけるアルキル基として前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
00およびR01は、それぞれ、水素原子またはアルキル基が好ましい。
式(1)で表される溶剤の具体例としては、たとえば酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
式(1)で表される溶剤としては、上記の中でも、R00およびR01が無置換のアルキル基であるものが好ましく、酢酸アルキルがより好ましく、酢酸ブチルが特に好ましい。
【0030】
式(2)中、R02およびR04は、それぞれ前記R00およびR01と同様である。
03におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、その炭素数は1〜5が好ましい。該アルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としてはたとえば水酸基、カルボキシ基、シアノ基等が挙げられる。また、該アルキレン基の炭素数が2以上である場合、該アルキレン基の炭素原子間に酸素原子(−O−)が介在してもよい。
式(2)で表される溶剤の具体例としては、たとえばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等が挙げられる。
【0031】
前記式(1)または(2)で表される溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、他の溶剤と混合して用いてもよい。
該他の溶剤としては、使用する式(1)または(2)で表される溶剤に分離することなく混合できるものであれば特に限定されず、たとえば上述したエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等のなかから適宜選択できる。
有機系現像液に用いる有機溶剤としては、現像に用いる溶剤のコスト削減の観点から、ハロゲン原子を含まない有機溶剤を用いることが好ましい。有機系現像液の総重量に占めるハロゲン原子を含まない有機溶剤の含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
有機系現像液に用いる有機溶剤の沸点は、50℃以上250℃未満が望ましい。
有機系現像液に用いる有機溶剤の発火点は、200℃以上が望ましい。
【0032】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としてはたとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0033】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から誘導されたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0034】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)基など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0035】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)を挙げることができる。さらに、C6F13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C6F13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C8F17基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C8F17基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0036】
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0037】
有機系現像液を用いた現像処理は、公知の現像方法によって実施でき、該方法としてはたとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0038】
(リンス液)
上記現像処理の後、乾燥を行う前に、有機溶剤を含有するリンス液を用いてリンス処理することができる。リンスを行うことにより、良好なパターン形成ができる。
リンス液に用いる有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、アルコール系溶剤およびエステル系溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、アルコール系溶剤が特に好ましい。
リンス液に用いるアルコール系溶剤は、炭素数6〜8の1価アルコールが好ましく、該1価アルコールは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。具体的には、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのなかでも、1−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−ヘキサノールが好ましく、1−ヘキサノールまたは2−ヘキサノールがより好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし現像特性を考慮すると、リンス液中の水の配合量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下さらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としてはたとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、リンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法におり実施でき、該方法としてはたとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0039】
(IV)被覆膜形成工程
その後、現像処理により得られたレジストパターン上に、被覆形成剤をスピンナーなどで塗布して、被覆形成剤からなる被覆膜を形成する。被覆膜の膜厚は特に限定されるものではないが、先の工程で形成されたレジストパターンのパターン部の高さ(膜厚)と同じであるか、それよりも厚いことが好ましい。つまり、被覆膜がレジストパターンの上辺を完全に被覆することが好ましい。
被覆形成剤を塗布した後に、80〜100℃の温度条件にて30〜90秒間、被覆形成剤の乾燥を行ってもよい。
また、被覆膜形成後に、リンス処理を行い、余分な被覆形成剤の除去を行ってもよい。
【0040】
(被覆形成剤)
本発明における被覆形成剤としては、レジストパターン上に塗布してパターン間の間隔を狭めることができるものであれば特に限定されるものではないが、塗布によって膜を形成しするため、室温で水や有機溶剤に溶解する成分を含有することが好ましい。なかでも、水系の溶剤であれば塗布した際に下層となるレジストパターンに与える影響が小さいため、本発明における被覆形成剤としては室温で水に溶解しうる成分を含有することがより好ましく、水溶性ポリマーを含有することが特に好ましい。また、被覆膜は後の工程で除去されるため、除去の容易さの観点からも水溶性ポリマーが好ましい。
【0041】
水溶性ポリマーとして具体的には、アルキレングリコール系重合体、セルロース系誘導体、ビニル系重合体、アクリル系重合体、尿素系重合体、エポキシ系重合体、メラミン系重合体、及びナイロン系重合体が挙げられ、本発明における被覆形成剤は、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0042】
アルキレングリコール系重合体としては例えば、エチレングリコール、プロピレンググリコール等のアルキレングリコール系モノマーを含有する重合体や共重合体(付加重合体、付加共重合体を含む)が挙げられる。
【0043】
セルロース系誘導体としては例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース系モノマーを含有する重合体や共重合体が挙げられる。
【0044】
ビニル系重合体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、酢酸ビニル等のビニル系モノマーを含有する重合体や共重合体が挙げられる。
【0045】
アクリル系重合体としては例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン等のアクリル系モノマーを含有する重合体や共重合体が挙げられる。
【0046】
尿素系重合体としては例えば、メチロール化尿素、ジメチロール化尿素、エチレン尿素等の尿素系モノマーを含有する重合体や共重合体が挙げられる。
【0047】
エポキシ系重合体としては水に溶解するエポキシ系重合体であれば、特に限定されず、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。。
【0048】
メラミン系重合体としては例えば、メトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、メトキシエチル化メラミン等を構成成分とするものが挙げられる。
【0049】
ナイロン系重合体としては水に溶解するナイロン系重合体であれば、特に限定されず、ナイロンにアクリル酸等の親水性モノマーを重合させればよい。
【0050】
本発明における被覆形成剤としては、アルキレングリコール系重合体、セルロース系重合体、ビニル系重合体、及びアクリル系重合体の中からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、なかでも、アクリル系重合体を含むことが好ましい。アクリル系重合体を用いることにより、該アクリル系重合体は酸性寄りのpHを有するため、後述する被覆形成剤が含有していてもよい他の成分のうちアルカリ性のものと適宜組み合わせることにより、被覆形成剤のpH調整が容易となる。また、アクリル系重合体を用いた場合であれば、後述する熱処理工程において熱をかけた際に、該被覆形成剤からなる被覆膜とレジストパターンとが架橋等の反応をすることがないため、該被覆膜の除去が容易となる。
アクリル系重合体としては、アクリル系モノマーのみからなるものであってもよいが、他のモノマーとの共重合体であることにより、レジストパターンの寸法を効率的に狭小させることができるため好ましい。他のモノマーとしては、特に加熱時の収縮の割合が大きいことから、N−ビニルピロリドンモノマーが好ましい。N−ビニルピロリドンモノマーを用いた場合、該N−ビニルピロリドンモノマーがプロトン供与体として機能し、アクリル系モノマーがプロトン受容体として機能する。
【0051】
水溶性ポリマーを共重合体として用いる場合、構成成分の配合比は特に限定されるものでないが、特に経時安定性を重視するなら、アクリル系重合体の配合比を、それ以外の他の構成重合体よりも多くすることが好ましい。なお、経時安定性の向上は、アクリル系重合体を上記のように過多に配合する以外に、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物を添加することにより解決することも可能である。
水溶性ポリマーとしては1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
被覆形成剤にはさらに、水溶性アミンを配合してもよい。水溶性アミンを配合することにより、不純物の発生を防止し、且つpHの調整を容易とすることができる。
水溶性アミンとしては、後述するレジスト組成物中の(D)成分のアミンとして挙げるもののうち、25℃の水溶液におけるpKa(酸解離定数)が7.5〜13のアミン類が、不純物発生防止、pH調整等の点から好ましく、脂肪族アミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0053】
本発明における被覆形成剤が水溶性アミンを含有する場合、水溶性アミンの配合量は被覆形成剤中の全固形分に対して0.1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。上記下限値以上とすることにより被覆形成剤の経時劣化を防止することができ、上記上限値以下とすることにより、下層となるレジストパターンに悪影響を与えることがない。
【0054】
また、被覆形成剤はさらに、界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、ディフェクトの発生を効果的に防止することができる。界面活性剤としては特に限定されるものではなく、通常レジスト組成物等の用途に用いられるものを使用することができるが、N−アルキルピロリドン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤が特に好ましいものとして挙げられる。
【0055】
本発明における被覆形成剤は、水、又は、水とアルコール系溶剤との混合溶媒(アルコールの濃度は30質量%以下であることが好ましい。)に溶解して用いることが好ましい。アルコール系溶剤としては、現像液として上述したものと同様のものが挙げられる。被覆形成剤中の固形分濃度は、3〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
また本発明に用いられる被覆形成剤には、パターン寸法の微細化、ディフェクトの発生抑制などの点から、所望により、さらに非アミン系水溶性有機溶媒を配合してもよい。
【0056】
本発明において用いられる被覆形成剤のpHは特に限定されるものではないが、下層となるレジストパターンに与える影響が少ないことから、pH11以下であることが好ましく、pH1〜9であることがより好ましく、pH1〜7であることがさらに好ましくpH1〜5であることが特に好ましい。
【0057】
(V)熱処理工程
上記のようにして支持体上に形成されたレジストパターン及び被覆膜に対して、該レジストパターンの軟化点よりも低い温度で熱処理を行う。ここでレジストパターンの軟化点とは、基板上に形成したレジストパターンに対してベークを行った場合に、該パターンが熱流動して寸法が変化し始めるベーク処理温度をいう。
熱処理を行うことにより、レジストパターンを被覆した被覆膜が熱収縮し、それに従って、レジストパターンのパターン部(レジスト膜の存在する部分)の側壁が、スペース(トレンチ)パターンのスペース部やコンタクトホールパターンのホール部(すなわち、レジスト膜の除去された部分)に引き寄せられ、レジストパターン間の間隔が熱収縮前に比して狭いものとなる。
【0058】
加熱温度は、被覆膜の熱収縮を引き起こす温度であり、且つ、レジストパターンを軟化させない温度、即ちレジストパターンの軟化点よりも低い温度であれば特に限定されるものではなく、被覆形成剤やレジスト組成物の種類に応じて適宜決定することができるが、一般的な被覆形成剤やレジスト組成物を用いた場合であれば、80〜200℃程度となる。
【0059】
(VI)被覆膜除去工程
最後に、熱処理後の被覆膜を除去する。
被覆膜の除去方法は特に限定されるものではなく、被覆形成剤の種類に応じて適宜決定することができるが、例えば被覆形成剤が、水溶性ポリマーを水又は水とアルコール系溶剤との混合溶剤に溶解してなるものである場合は、水系溶剤、好ましくは純水を用いて10〜120秒間洗浄することにより、被覆膜を除去することができる。洗浄処理は、上記リンス液を用いたリンス処理と同様に実施できる。
本発明では、パターン間の間隔を狭小化した後に被覆膜を除去することにより、該被覆膜がレジストパターン形状に影響を与えたり(寸法欠陥の発生に起因したり)、エッチング等の後段の工程の妨げとなったりすることがない。
【0060】
・ネガ型現像用レジスト組成物
本発明のレジストパターン形成方法に用いるネガ型現像用レジスト組成物(以下単に「レジスト組成物」ということがある。)は、酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)(以下、「(A)成分」という。)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、「(B)成分」という。)と、含フッ素高分子化合物(F)(以下、「(F)成分」という。)とを含有するものであって、上述したレジストパターン形成方法において用いられる。
前記(A)成分としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有する樹脂成分(A1)(以下、「(A1)成分」という。)が用いられる。
かかるレジスト組成物においては、放射線が照射(露光)されると、露光部では、(B)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の有機溶剤に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、当該レジスト膜における露光部の、前記有機溶剤を含有する有機系現像液に対する溶解性が減少する一方で、未露光部の該有機系現像液に対する溶解性は変化しないため、該有機系現像液を用いたネガ型現像を行うことにより未露光部が除去されてレジストパターンが形成される。
【0061】
<(A)成分>
(A)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている有機化合物を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
前記基材成分として用いられる「分子量が500以上の有機化合物」は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、分子量が500以上4000未満の非重合体を低分子化合物という。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、分子量が1000以上の重合体を高分子化合物という。高分子化合物の場合、「分子量」としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、高分子化合物を単に「樹脂」ということがある。
(A)成分としては、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分を用いることができ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する低分子化合物成分を用いることもできる。
【0062】
本発明におけるレジスト組成物は、溶剤現像プロセスにおいてネガ型パターンを形成するレジスト組成物であるため、(A)成分としては、酸の作用により極性が増大する基材成分(A0)(以下「(A0)成分」という。)を用いることが好ましい。(A0)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、溶剤現像プロセスにおいて良好な現像コントラストを得ることができる。
該(A0)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により前記(B)成分やから酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大して有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型パターンが形成できる。
【0063】
該(A0)成分は、酸の作用により極性が増大する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ということがある。)であってもよく、酸の作用により極性が増大する低分子化合物成分(A2)(以下「(A2)成分」ということがある。)であってもよく、又はこれらの混合物であってもよい。
【0064】
[(A1)成分]
(A1)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている樹脂成分(ベース樹脂)を1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
本発明において、(A1)成分としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するものが好ましい。
本発明におけるレジスト組成物は、特に、(A1)成分が、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、構成単位(a1)に加えて、さらに、−SO−含有環式基を含み、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、及びラクトン含有環式基を含み、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位(a2)を有することが好ましい。
また、(A1)成分は、構成単位(a1)に加えて、又は構成単位(a1)及び(a2)に加えて、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含み、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することが好ましい。
【0065】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、露光により(B)成分から発生する酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、たとえば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、たとえばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(−SOH)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に−OHを含有する極性基(以下、OH含有極性基ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基がより好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基を酸解離性基で保護した基(たとえばOH含有極性基の水素原子を酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
「酸解離性基」は、露光により(B)成分から発生する酸の作用により、少なくとも、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基である。酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、アルカリ現像プロセスを適用する場合であれば、相対的に、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する。他方、溶剤現像プロセスを適用する場合であれば、有機溶剤を含有する有機系現像液に対する溶解性が減少する。
【0066】
構成単位(a1)における酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基;アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
【0067】
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基が形成されることによって、(A1)成分の極性が増大する。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」という。
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性基、脂肪族環式基を含有する酸解離性基が挙げられる。
【0068】
ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。
「脂肪族分岐鎖状酸解離性基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性基としては、炭素数4〜8の第3級アルキル基が好ましく、具体的にはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
【0069】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a1)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。「脂肪族環式基」は、多環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0070】
脂肪族環式基を含有する酸解離性基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には、下記一般式(1−1)〜(1−9)で示す基の様な、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。
また、脂肪族分岐鎖状酸解離性基としては、下記一般式(2−1)〜(2−6)で示す基の様に、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0071】
【化1】

[式中、R14はアルキル基であり、gは0〜8の整数である。]
【0072】
【化2】

[式中、R15、R16はそれぞれ独立してアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜5である)を示す。]
【0073】
上記R14のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn−ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基又はtert−ブチル基であることが最も好ましい。
gは0〜3の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましい。
15〜R16のアルキル基としては、R14のアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。
また、式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基が挙げられる。
【0074】
「アセタール型酸解離性基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性基と、当該アセタール型酸解離性基が結合した酸素原子との間で結合が切断され、カルボキシ基、水酸基等のOH含有極性基が形成されることによって(A1)成分の極性が増大する。
アセタール型酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0075】
【化3】

[式中、R’,R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Y21は炭素数1〜5のアルキル基または脂肪族環式基を表す。]
【0076】
上記式中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
’,R’の炭素数1〜5のアルキル基としては、上記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
本発明においては、R’,R’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。すなわち、酸解離性基(p1)が、下記一般式(p1−1)で表される基であることが好ましい。
【0077】
【化4】

[式中、R’、n、Y21は上記と同様である。]
【0078】
21の炭素数1〜5のアルキル基としては、上記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられる。
21の脂肪族環式基としては、従来ArFレジスト等において多数提案されている単環または多環式の脂肪族環式基の中から適宜選択して用いることができ、たとえば上記「脂肪族環式基」と同様のものが例示できる。
【0079】
また、アセタール型酸解離性基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0080】
【化5】

[式中、R17、R18はそれぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または水素原子であり、R19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。または、R17およびR19がそれぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であって、R17の末端とR19の末端とが結合して環を形成していてもよい。]
【0081】
17、R18において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特に、R17、R18の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、炭素数は、好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。
19が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
19が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的にはフッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R17及びR19が、それぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基)であってR19の末端とR17の末端とが結合していてもよい。
この場合、R17とR19と、R19が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR17が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0082】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位および下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0083】
【化6】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、Xは酸解離性基を示す。]
【0084】
【化7】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、Xは酸解離性基を示し、Y22は2価の連結基を示す。]
【0085】
一般式(a1−0−1)において、Rの炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、上記α位の炭素原子に結合していてもよい置換基の炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基と同様である。
は、酸解離性基であれば特に限定されることはなく、例えば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性基が好ましい。
【0086】
一般式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。
は、式(a1−0−1)中のXと同様である。
【0087】
22の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
該炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されていることを意味する。
該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0088】
22の炭化水素基における、前記脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0089】
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0090】
22の炭化水素基における、前記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、1価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた2価の芳香族炭化水素基;当該2価の芳香族炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等で、かつ、その芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた芳香族炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0091】
22がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−、「−A−O(酸素原子)−B−(ただし、AおよびBはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。)」、または、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基とヘテロ原子を含む2価の連結基との組み合わせ等が挙げられる。置換基を有していてもよい2価の炭化水素基としては、上述した置換基を有していてもよい炭化水素基と同様のものが挙げられ、直鎖状、分岐鎖状、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0092】
22が−NH−の場合における置換基(アルキル基、アシル基等)の炭素数としては1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。
22が「A−O−B」である場合、AおよびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。
【0093】
Aにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
Aにおける脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
Aにおける脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これらは上記同様である。
なかでもAとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0094】
Bにおける炭化水素基としては、前記Aで挙げたものと同様の2価の炭化水素基が挙げられる。
Bとしては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基またはアルキルメチレン基が特に好ましい。
アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0095】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0096】
【化8】

[式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性基を表し、Y21は炭素数1〜5のアルキル基、または脂肪族環式基を表し;nは0〜3の整数を表し;Y22は2価の連結基を表し;Rは前記と同じであり、R’、R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
【0097】
前記式中、X’は、前記Xにおいて例示した第3級アルキルエステル型酸解離性基と同様のものが挙げられる。
’、R’、n、Y21としては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR’、R’、n、Y21と同様のものが挙げられる。
22としては、上述の一般式(a1−0−2)におけるY22と同様のものが挙げられる。
【0098】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0099】
【化9】

【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
【化12】

【0103】
【化13】

【0104】
【化14】

【0105】
【化15】

【0106】
【化16】

【0107】
構成単位(a1)としては、、一般式(a1−1)、(a1−2)または(a1−3)で表される構成単位が好ましく、具体的には(a1−1−1)〜(a1−1−4)、(a1−1−20)〜(a1−1−23)、(a1−2−1)〜(a1−2−24)および(a1−3−25)〜(a1−3−28)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜式(a1−1−3)および(a1−1−26)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるもの、式(a1−1−16)〜(a1−1−17)、式(a1−1−20)〜(a1−1−23)及び(a1−1−32)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)で表されるもの、式(a1−3−25)〜(a1−3−26)の構成単位を包括する下記一般式(a1−3−01)で表されるもの、式(a1−3−27)〜(a1−3−28)の構成単位を包括する下記一般式(a1−3−02)、又は式(a1−3−29)〜(a1−3−30)の構成単位を包括する下記一般式(a1−3−03)で表されるものを用いることも好ましい。
【0108】
【化17】

[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、R11は炭素数1〜5のアルキル基を示す。R12は炭素数1〜7のアルキル基を示す。hは1〜6の整数を表す。]
【0109】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。R11の炭素数1〜5のアルキル基はRにおける炭素数1〜5のアルキル基と同様であり、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基が好ましい。
【0110】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。R12の炭素数1〜5のアルキル基はRにおける炭素数1〜5のアルキル基と同様であり、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基が好ましい。hは、1または2が好ましく、2が最も好ましい。
【0111】
【化18】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し;R14は前記同様であり、R13は水素原子またはメチル基であり、aは1〜10の整数である。]
【0112】
【化19】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し;R14は前記同様であり、R13は水素原子またはメチル基であり、aは1〜10の整数であり、n’は1〜6の整数である。]
【0113】
【化20】

[式中、Rは前記と同じであり、Y’およびY”はそれぞれ独立して2価の連結基であり、X’は酸解離性基であり、nは0〜3の整数である。]
【0114】
前記一般式(a1−3−01)〜(a1−3−03)において、Rについては上記と同様である。
13は、水素原子が好ましい。
n’は、1または2が好ましく、2が最も好ましい。
aは、1〜8の整数が好ましく、2〜5の整数が特に好ましく、2が最も好ましい。
’、Y”における2価の連結基としては、前記一般式(a1−3)におけるY22と同様のものが挙げられる。
’としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。中でも、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基が最も好ましい。
”としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。中でも、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基が最も好ましい。
X’における酸解離性基は、前記と同様のものが挙げられ、第3級アルキルエステル型酸解離性基であることが好ましく、上述した環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基であることがより好ましく、中でも前記一般式(1−1)〜(1−9)で表される基が好ましい。
nは0〜3の整数であり、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が最も好ましい。
【0115】
また、構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−5)で表される構成単位(a1−5)も好ましい。
【0116】
【化21】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、Rは単結合又は2価の連結基であり、Yは置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、OZは酸分解性基であり、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、且つa+b=1〜3であり、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数である。]
式(a1−5)中、Rは、前記同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(a1−5)中、Rは単結合又は2価の連結基である。Rの2価の連結基としては、前記式(a1−0−2)中のY22の2価の連結基と同様である。
式(a1−5)中、Yは脂肪族環式基である。「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a1−5)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環(脂肪族環)の構造は、炭素および水素からなる環(炭化水素環)であることに限定はされず、その環(脂肪族環)の構造中に酸素原子を含んでいてもよい。また、「炭化水素環」は飽和、不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族環式基は、多環式基、単環式基のいずれでもよい。脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
また、当該脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランから2個以上の水素原子を除いた基等も挙げられる。
構成単位(a1−5)における脂肪族環式基は、多環式基であることが好ましく、中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
【0117】
前記一般式(a1−5)中、OZは酸分解性基である。
OZの酸分解性基としては、分解して水酸基(−OH)となる酸分解性基が好ましく、当該分解性基としては(1)水酸基をZのアセタール型酸解離性基で保護してなる基、(2)Zがその構造内に第3級アルキルエステル型酸解離性基を有し、酸解離後さらに脱炭酸反応により分解する基等が挙げられる。
【0118】
(1)「水酸基をZのアセタール型酸解離性基で保護してなる基」におけるZのアセタール型酸解離性基としては、前記同様である。(1)のZとしては、1−n−ブトキシエチル基(−CH(CH)−O−C)、n−ブトキシメチル基(−CH−O−C)、であることが特に好ましい。
ここでOZの酸素原子は、アセタール型酸解離性基により保護された水酸基由来の酸素原子であって、酸が作用することにより該酸素原子とアセタール型酸解離性基との間で結合が切断され、極性基である水酸基(−OH)が構成単位の末端に生じる。
【0119】
(2)「Zがその構造内に第3級アルキルエステル型酸解離性基を有し、酸解離後さらに脱炭酸反応により分解する基」において、第3級アルキルエステル型酸解離性基は上述の通りであって、第3級アルキルエステル型酸解離性基が脱離し、さらに二酸化炭素を発生して、極性基である水酸基(−OH)が構成単位の末端に生じる。
【0120】
OZのZにおける第3級アルキルエステル型酸解離性基におけるアルキル基は、環状構造を有さないもの(鎖状)であってもよく、環状構造を有するものであってもよい。
鎖状の場合、OZにおけるZとしては、たとえば下記一般式(II)で表される第3級アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
式(II)中、R21〜R23は、それぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。該アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
また、一般式(II)中の−C(R21)(R22)(R23)で表される基の合計の炭素数は、4〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが最も好ましい。
一般式(II)中の−C(R21)(R22)(R23)で表される基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が好ましく挙げられ、tert−ブチル基がより好ましい。つまり、この場合のZとしては、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)、tert−ペンチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0121】
【化22】

【0122】
また、OZの酸分解性基として、(3)分解して水酸基(−OH)を生じない(例えば、カルボキシ基を生じる)場合、OZにおけるZとしては、たとえば下記一般式(III)で表される第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基も好ましい。
式(III)中のR21〜R23は、前記式(II)中のR21〜R23と同様である。
fは1〜3の整数であり、1または2が好ましい。
鎖状の第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基としては、tert−ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチルオキシカルボニルエチル基が好ましい。
これらの中で、環状構造を有さない第3級アルキル基含有基としては、第3級アルキルオキシカルボニル基または第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基が好ましく、第3級アルキルオキシカルボニル基がより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0123】
【化23】

【0124】
Zが環状構造を有する第3級アルキルエステル型酸解離性基をその構造内に有する基である場合、OZにおけるZとしては、−C(=O)−O−、又は−(CH−C(=O)−O−(fは式(III)中のfと同じである。)の末端の酸素原子に、前記式(1−1)〜(1−9)、(2−1)〜(2−6)で表される基が結合した基が挙げられる。
【0125】
上記のなかでも、OZとしては、分解して水酸基(−OH)を生じる(1)(2)の場合が好ましく、Zが前記一般式(II)で表される基であることががさらに好ましく、Zがtert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)、1、1−ジメチルプロポキシカルボニル基が最も好ましい。
【0126】
前記一般式(a1−5)中、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、かつ、a+b=1〜3である。
aは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
bは0であることが好ましい。
a+bは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
dは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
eは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
なお、bが1以上の場合、構成単位(a1−5)は後述する構成単位(a3)の定義にも含まれるが、式(a1−5)で表される構成単位は構成単位(a1−5)に該当し、構成単位(a3)には該当しないもととする。
【0127】
構成単位(a1−5)としては、特に、下記一般式(a11−1−1)、(a11−1−2)又は(a11−2)で表される構成単位が好ましく、式(a11−1−1)で表される構成単位がより好ましい。
【0128】
【化24】

[式中、R,Z,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。]
【0129】
【化25】

[式中、R,Z,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。式中の複数のeおよびZはそれぞれ互いに異なっていてもよい。]
【0130】
【化26】

[式中、R,Z,a,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じであり、c”は1〜3の整数である。]
【0131】
前記式(a11−2)中、c”は1〜3の整数であり、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
前記式(a11−2)におけるcが0の場合、アクリル酸エステルのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子は、環式基中の酸素原子に結合する炭素原子には結合していないことが好ましい。すなわち、cが0の場合、当該末端の酸素原子と当該環式基中の酸素原子との間には炭素原子が2つ以上存在する(この炭素原子の数が1である(すなわちアセタール結合となる)場合を除く)ことが好ましい。
【0132】
構成単位(a1−5)を誘導するモノマーは、例えば下記一般式(a11−0)で表される化合物(1〜3個のアルコール性水酸基を有する脂肪族環式基を含有するアクリル酸エステル)の水酸基の一部または全部を、公知の手法を用いて、アルコキシアルキル基や上記Zで保護することにより合成することができる。
【0133】
【化27】

[式中、R,Y,a,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。]
【0134】
(A1)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位に対し、5〜90モル%が好ましく、10〜85モル%がより好ましく、15〜80モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0135】
(構成単位(a2))
構成単位(a2)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、−SO−含有環式基を含む構成単位(以下、構成単位(a2)という。)、及び、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、ラクトン含有環式基を含む構成単位(以下、構成単位(a2)という。)からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位である。
構成単位(a2)は、−SO−含有環式基又はラクトン環式基を含むことにより、当該(A1)成分を含有するレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の基板への密着性を高めたり、水を含有する現像液(特にアルカリ現像プロセスの場合)との親和性を高める等により、リソグラフィー特性の向上に寄与する。
【0136】
・構成単位(a2):
構成単位(a2)は、−SO−含有環式基を含み、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
ここで、−SO−含有環式基とは、その環骨格中に−SO−を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、−SO−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO−含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
−SO−含有環式基は、特に、その環骨格中に−O−SO−を含む環式基、すなわち−O−SO−中の−O−S−が環骨格の一部を形成するサルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
−SO−含有環式基は、炭素数が3〜30であることが好ましく、4〜20であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、4〜12であることが特に好ましい。ただし、該炭素数は環骨格を構成する炭素原子の数であり、置換基における炭素数を含まないものとする。
−SO−含有環式基は、−SO−含有脂肪族環式基であってもよく、−SO−含有芳香族環式基であってもよい。好ましくは−SO−含有脂肪族環式基である。
−SO−含有脂肪族環式基としては、その環骨格を構成する炭素原子の一部が−SO−または−O−SO−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基が挙げられる。より具体的には、その環骨格を構成する−CH−が−SO−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基、その環を構成する−CH−CH−が−O−SO−で置換された脂肪族炭化水素環から水素原子を少なくとも1つ除いた基等が挙げられる。
該脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
該脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂環式炭化水素基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0137】
−SO−含有環式基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
該置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
該置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基に酸素原子(−O−)に結合した基が挙げられる。
該置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
該置換基のハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
該置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としてはフッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
前記−COOR”、−OC(=O)R”におけるR”は、いずれも、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基である。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
該置換基としてのヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1〜6であるものが好ましく、具体的には、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
−SO−含有環式基として、より具体的には、下記一般式(3−1)〜(3−4)で表される基が挙げられる。
【0138】
【化28】

[式中、A’は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、zは0〜2の整数であり、R27はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり、R”は水素原子またはアルキル基である。]
【0139】
前記一般式(3−1)〜(3−4)中、A’は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。
A’における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に−O−または−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH−、−CH−O−CH−、−S−CH−、−CH−S−CH−等が挙げられる。
A’としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
zは0〜2のいずれであってもよく、0が最も好ましい。
zが2である場合、複数のR27はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
27におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、前記で−SO−含有環式基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
以下に、前記一般式(3−1)〜(3−4)で表される具体的な環式基を例示する。なお、式中の「Ac」はアセチル基を示す。
【0140】
【化29】

【0141】
【化30】

【0142】
【化31】

【0143】
【化32】

【0144】
【化33】

【0145】
−SO−含有環式基としては、上記の中でも、前記一般式(3−1)で表される基が好ましく、前記化学式(3−1−1)、(3−1−18)、(3−3−1)および(3−4−1)のいずれかで表される基からなる群から選択される少なくとも一種を用いることがより好ましく、前記化学式(3−1−1)で表される基が最も好ましい。
【0146】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−0)で表される構成単位が挙げられる。
【0147】
【化34】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、R28は−SO−含有環式基であり、R29は単結合または2価の連結基である。]
【0148】
式(a2−0)中、Rは前記と同様である。
28は、前記で挙げた−SO−含有環式基と同様である。
29は、単結合、2価の連結基のいずれであってもよいが、2価の連結基であることが好ましい。
29における2価の連結基としては、特に限定されず、たとえば、前記式(a1−0−2)中のY22の2価の連結基と同様のものが挙げられる。それらの中でも、アルキレン基、またはエステル結合(−C(=O)−O−)を含むものが好ましい。
該アルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、前記Y22における脂肪族炭化水素基として挙げた直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
エステル結合を含む2価の連結基としては、特に、一般式:−R30−C(=O)−O−[式中、R30は2価の連結基である。]で表される基が好ましい。すなわち、構成単位(a2)は、下記一般式(a2−0−1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0149】
【化35】

[式中、RおよびR28はそれぞれ前記と同様であり、R30は2価の連結基である。]
【0150】
30としては、特に限定されず、たとえば、前記式(a1−0−2)中のY22の2価の連結基と同様のものが挙げられる。
30の2価の連結基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、またはヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。
該直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、前記Y22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、環状の脂肪族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
上記の中でも、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、またはヘテロ原子として酸素原子を含む2価の連結基が好ましい。
直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基またはエチレン基が好ましく、メチレン基が特に好ましい。
分岐鎖状のアルキレン基としては、アルキルメチレン基またはアルキルエチレン基が好ましく、−CH(CH)−、−C(CH−または−C(CHCH−が特に好ましい。
酸素原子を含む2価の連結基としては、エーテル結合またはエステル結合を含む2価の連結基が好ましく、前記式−A−O−B−、−[A−C(=O)−O]−B−または−A−O−C(=O)−B−で表される基がより好ましい。
なかでも、式−A−O−C(=O)−B−で表される基が好ましく、−(CHc1−C(=O)−O−(CHd1−で表される基が特に好ましい。c1は1〜5の整数であり、1または2が好ましい。d1は1〜5の整数であり、1または2が好ましい。
【0151】
構成単位(a2)としては、特に、下記一般式(a0−1−11)または(a0−1−12)で表される構成単位が好ましく、式(a0−1−12)で表される構成単位がより好ましい。
【0152】
【化36】

[式中、R、A’、R27、zおよびR30はそれぞれ前記と同じである。]
【0153】
式(a0−1−11)中、A’はメチレン基、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)であることが好ましい。
30としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または酸素原子を含む2価の連結基が好ましい。R30における直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、酸素原子を含む2価の連結基としては、それぞれ、前記で挙げた直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、酸素原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
式(a0−1−12)で表される構成単位としては、特に、下記一般式(a0−1−12a)または(a0−1−12b)で表される構成単位が好ましい。
【0154】
【化37】

[式中、RおよびA’はそれぞれ前記と同じであり、c’〜e’はそれぞれ独立に1〜3の整数である。]
【0155】
・構成単位(a2):
構成単位(a2)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、ラクトン含有環式基を含む構成単位である。
ここで、ラクトン含有環式基とは、その環骨格中に−O−C(O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、4〜6員環ラクトンから水素原子を1つ除いた基、たとえばβ−プロピオノラクトンから水素原子を1つ除いた基、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ−バレロラクトンから水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
構成単位(a2)の例としては、たとえば前記一般式(a2−0)中のR28をラクトン含有環式基で置換したものが挙げられ、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0156】
【化38】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり;R’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−COOR”であり、R”は水素原子またはアルキル基であり;R29は単結合または2価の連結基であり、s”は0〜2の整数であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり;mは0または1である。]
【0157】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは、前記同様である。
R’の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
R’の炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
R”におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
R”が直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
A”としては、前記一般式(3−1)中のA’と同様のものが挙げられる。A”は、炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−がより好ましい。炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基またはジメチルメチレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
29は、前記一般式(a2−0)中のR29と同様である。
式(a2−1)中、s”は1〜2であることが好ましい。
以下に、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位の具体例を例示する。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0158】
【化39】

【0159】
【化40】

【0160】
【化41】

【0161】
【化42】

【0162】
【化43】

【0163】
構成単位(a2)としては、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、前記一般式(a2−1)または(a2−3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
なかでも、前記式(a2−1−1)、(a2−1−2)、(a2−2−1)、(a2−2−7)、(a2−2−12)、(a2−2−14)、(a2−3−1)、(a2−3−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0164】
(A1)成分において、構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば構成単位(a2)として、構成単位(a2)のみを用いてもよく、構成単位(a2)のみを用いてもよく、それらを併用してもよい。また、構成単位(a2)または構成単位(a2)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0165】
(A1)成分が構成単位(a2)を含有する場合、(A1)成分中の構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜80モル%であることが好ましく、10〜75モル%であることがより好ましく、10〜70モル%であることがさらに好ましく、15〜60モル%が特に好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができ、DOF、CDU等の種々のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好となる。
【0166】
(構成単位(a3))
構成単位(a3)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位である。
(A1)成分が構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。
該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該多環式基の炭素数は7〜30であることが好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0167】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)で表される構成単位、下記式(a3−2)で表される構成単位、下記式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0168】
【化44】

[式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。]
【0169】
式(a3−1)中、jは1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが特に好ましい。
【0170】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0171】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5または6位に結合していることが好ましい。
【0172】
構成単位(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分中の構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位に対し、1〜50モル%であることが好ましく、3〜45モル%がより好ましく、5〜40モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0173】
(その他の構成単位)
(A1)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a1)〜(a3)以外の他の構成単位(以下、構成単位(a4)という。)を含んでいてもよい。
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定されるものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
構成単位(a4)としては、(1)例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含み、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、(2)α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位、(3)スチレン単量体、ビニルナフタレン単量体から誘導される構成単位、(4)ヒドロキシスチレン単量体、ビニル(ヒドロキシナフタレン)単量体から誘導される構成単位などが好ましい。該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−6)の構造のものを例示することができる。
【0174】
【化45】

[式中、Rは前記と同じである。]
【0175】
構成単位(a4)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分が構成単位(a4)を含有する場合、構成単位(a4)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、1〜20モル%が好ましく、1〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。上記範囲とすることで、良好なリソグラフィー特性と溶解速度の調整との両立を図ることができる。
【0176】
(A1)成分は、構成単位(a1)を含有する共重合体である。
かかる共重合体としては、たとえば、構成単位(a1)及び構成単位(a2)からなる共重合体;構成単位(a1)及び(a3)からなる共重合体;構成単位(a1)、(a2)及び(a3)からなる共重合体等が例示できる。
本発明において、(A1)成分としては、特に下記一般式(A1−11)〜(A1−12)に示す構成単位の組み合わせを含むものが好ましい。下記一般式中、R、R29、s”、R11、j、c、e、Z、e’、A’はそれぞれ前記と同じであり、式中に複数あるRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0177】
【化46】

【0178】
(A1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000〜50000が好ましく、1500〜30000がより好ましく、2500〜20000がさらに好ましく、6000〜15000が特に好ましく、7000〜12000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。また、質量平均分子量は現像液への溶解速度に関わるため、6000〜15000とすることにより、(A1)成分の溶解速度を適切なものとすることができる。
また、(A1)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されるものではなく、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。
なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0179】
(A)成分において、(A1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、リソグラフィー特性等の効果が向上する。
【0180】
[(A2)成分]
本発明におけるレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する基材成分(以下「(A2)成分」という。)を含有してもよい。
(A2)成分としては、分子量が500以上2500未満であって、上述の(A1)成分の説明で例示したような酸解離性基と、親水性基とを有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部が上記酸解離性基で置換されたものが挙げられる。
(A2)成分は、たとえば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や、耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
かかる低分子量フェノール化合物としては、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2〜6核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。特には、トリフェニルメタン骨格を2〜6個有するフェノール化合物が、解像性、LWRに優れることから好ましい。
酸解離性基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
(A2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
本発明におけるレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、(A)成分としては、(A1)成分を含有することが好ましい。
本発明におけるレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0182】
<(B)成分>
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤として、例えば下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0183】
【化47】

[式中、R”〜R”,R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよく;R”は、置換基を有していても良いアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0184】
式(b−1)中、R”〜R”はそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。なお、式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
また、R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
【0185】
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。
アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0186】
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
【0187】
式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。
式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つは、アリール基であることが好ましい。前記アリール基は、前記R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0188】
式(b−1)で表される化合物のカチオン部として、好ましいものとしては、下記式(I−1−1)〜(I−1−11)で表されるカチオン部が挙げられる。これらの中でも、式(I−1−1)〜(I−1−9)で表されるカチオン部等の、トリフェニルメタン骨格を有するものが好ましい。
下記式(I−1−10)〜(I−1−11)中、R、R10は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基または炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、水酸基である。
uは1〜3の整数であり、1または2が最も好ましい。
【0189】
【化48】

【0190】
【化49】

【0191】
”は、置換基を有していても良いアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表す。
”におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであっても良い。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
”におけるハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基においては、当該ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子および水素原子の合計数に対するハロゲン原子の数の割合(ハロゲン化率(%))が、10〜100%であることが好ましく、50〜100%であることが好ましく、100%が最も好ましい。該ハロゲン化率が高いほど、酸の強度が強くなるので好ましい。
前記R”におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
前記R”におけるアルケニル基は、炭素数2〜10のアルケニル基であることが好ましい。
前記R”において、「置換基を有していても良い」とは、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の他の原子または基)で置換されていても良いことを意味する。
”における置換基の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0192】
前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子、アルキル基、式:X−Q−[式中、Qは酸素原子を含む2価の連結基であり、Xは置換基を有していてもよい炭素数3〜30の炭化水素基である。]で表される基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子、アルキル基としては、R”において、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、アルキル基として挙げたもの同様のものが挙げられる。
前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0193】
X−Q−で表される基において、Qは酸素原子を含む2価の連結基である。
は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合;−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。
該組み合わせとしては、たとえば、−R91−O−、−R92−O−C(=O)−、−C(=O)−O−R93−O−C(=O)−(式中、R91〜R93はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。
91〜R93におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH−];−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CHCH−];−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CHCHCH−];−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CHCHCHCH−];−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CHCHCHCHCH−]等が挙げられる。
としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−R91−O−、−R92−O−C(=O)−または−C(=O)−O−R93−O−C(=O)−が好ましい。
【0194】
X−Q−で表される基において、Xの炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0195】
Xにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
Xにおいて、脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
Xにおける「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
炭素原子の一部を置換する置換基として、具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0196】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0197】
不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0198】
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。その炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。
具体的には、たとえば、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、たとえば下記式(L1)〜(L6)、(S1)〜(S4)等が挙げられる。
【0199】
【化50】

[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R94−または−S−R95−であり、R94およびR95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0200】
式中、Q”、R94およびR95におけるアルキレン基としては、それぞれ、前記R91〜R93におけるアルキレン基と同様のものが挙げられる。
これらの脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記アルコキシ基、ハロゲン原子はそれぞれ前記水素原子の一部または全部を置換する置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0201】
本発明において、Xは、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましい。該環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。該多環式の脂肪族環式基としては、前記ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記(L2)〜(L6)、(S3)〜(S4)等が好ましい。
【0202】
本発明において、R”は、置換基としてX−Q−を有することが好ましい。この場合、R”としては、X−Q−Y−[式中、QおよびXは前記と同じであり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基である。]で表される基が好ましい。
X−Q−Y−で表される基において、Yのアルキレン基としては、前記Qで挙げたアルキレン基のうち炭素数1〜4のものと同様のものが挙げられる。
フッ素化アルキレン基としては、該アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
として、具体的には、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CF(CF)CF−、−CF(CFCF)−、−C(CF−、−CFCFCFCF−、−CF(CF)CFCF−、−CFCF(CF)CF−、−CF(CF)CF(CF)−、−C(CFCF−、−CF(CFCF)CF−、−CF(CFCFCF)−、−C(CF)(CFCF)−;−CHF−、−CHCF−、−CHCHCF−、−CHCFCF−、−CH(CF)CH−、−CH(CFCF)−、−C(CH)(CF)−、−CHCHCHCF−、−CHCHCFCF−、−CH(CF)CHCH−、−CHCH(CF)CH−、−CH(CF)CH(CF)−、−C(CFCH−;−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−CHCHCHCH−、−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−CH(CHCHCH)−、−C(CH)(CHCH)−等が挙げられる。
【0203】
としては、フッ素化アルキレン基が好ましく、特に、隣接する硫黄原子に結合する炭素原子がフッ素化されているフッ素化アルキレン基が好ましい。このようなフッ素化アルキレン基としては、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CF(CF)CF−、−CFCFCFCF−、−CF(CF)CFCF−、−CFCF(CF)CF−、−CF(CF)CF(CF)−、−C(CFCF−、−CF(CFCF)CF−;−CHCF−、−CHCHCF−、−CHCFCF−;−CHCHCHCF−、−CHCHCFCF−、−CHCFCFCF−等を挙げることができる。
これらの中でも、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、又はCHCFCF−が好ましく、−CF−、−CFCF−又は−CFCFCF−がより好ましく、−CF−が特に好ましい。
【0204】
前記アルキレン基またはフッ素化アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が「置換基を有する」とは、当該アルキレン基またはフッ素化アルキレン基における水素原子またはフッ素原子の一部または全部が、水素原子およびフッ素原子以外の原子または基で置換されていることを意味する。
アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0205】
式(b−2)中、R”〜R”は、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のすべてが、アリール基であることが好ましい。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”は、すべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては、上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0206】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。
また、これらのオニウム塩のアニオン部をメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート、d−カンファー−10−スルホネート等のアルキルスルホネート、ベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等の芳香族スルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0207】
また、これらのオニウム塩のアニオン部を下記式(b1)〜(b8)のいずれかで表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0208】
【化51】

[式中、pは1〜3の整数であり、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、t3は1〜3の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、gは1〜20の整数であり、Rは置換基であり、n1〜n5はそれぞれ独立に0または1であり、v0〜v5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、Q”は前記と同じである。]
【0209】
の置換基としては、前記Xにおいて、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基、芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
に付された符号(r1〜r2、w1〜w5)が2以上の整数である場合、当該化合物中の複数のRはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0210】
また、オニウム塩系酸発生剤としては、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)と同様)。
【0211】
【化52】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0212】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0213】
また、下記一般式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩をオニウム塩系酸発生剤として用いることもできる。
【0214】
【化53】

[式中、R41〜R46はそれぞれ独立してアルキル基、アセチル基、アルコキシ基、カルボキシ基、水酸基またはヒドロキシアルキル基であり;n〜nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
【0215】
41〜R46において、アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、なかでも直鎖または分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、又はtert−ブチル基であることが特に好ましい。
アルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、なかでも直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
ヒドロキシアルキル基は、上記アルキル基中の一個又は複数個の水素原子がヒドロキシ基に置換した基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
41〜R46に付された符号n〜nが2以上の整数である場合、複数のR41〜R46はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
およびnは、好ましくはそれぞれ独立して0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
【0216】
式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩のアニオン部は、特に限定されず、これまで提案されているオニウム塩系酸発生剤のアニオン部と同様のものであってよい。かかるアニオン部としては、たとえば上記一般式(b−1)または(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤のアニオン部(R”SO)等のフッ素化アルキルスルホン酸イオン;上記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部等が挙げられる。
【0217】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0218】
【化54】

[式(B−1)中、R31、R32はそれぞれ独立に有機基を表す。]
【0219】
31、R32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
31の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していても良い。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
32の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R32のアルキル基、アリール基としては、前記R31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0220】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0221】
【化55】

[式(B−2)中、R33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R34はアリール基である。R35は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0222】
【化56】

[式(B−3)中、R36はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R37は2または3価の芳香族炭化水素基である。R38は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p”は2または3である。]
【0223】
前記一般式(B−2)において、R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
34のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していても良い。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0224】
前記一般式(B−3)において、R36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p”は、好ましくは2である。
【0225】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号パンフレット(65〜86頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0226】
【化57】

【0227】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0228】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(B)成分として、少なくともフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩系酸発生剤を用いることが好ましく、上記式(b1)〜(b8)で表されるアニオンを有するオニウム塩系酸発生剤と、上記式(b−3)で表されるアニオンを有するオニウム塩系酸発生剤とを併用することがより好ましい。
本発明におけるレジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0229】
<任意成分>
[(D)成分]
本発明におけるレジスト組成物においては、任意の成分として、さらに、含窒素有機化合物成分(D)(以下「(D)成分」という。)を含有することが好ましい。
この(D)成分は、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(B)成分から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものであれば特に限定されず、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0230】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0231】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0232】
また、(D)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0233】
(D)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0234】
<(E)成分>
レジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、たとえば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でもホスホン酸が特に好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分としては、有機カルボン酸が好ましく、サリチル酸が特に好ましい。
本発明におけるレジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0235】
<(F)成分>
レジスト組成物には、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤(以下、「(F)成分」という。)を含有させることができる。(F)成分としては、例えば、特開2010−002870号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記式(f1)で表される構成単位を有する共重合体が挙げられ、下記式(f1)で表される構成単位のみからなる重合体(ホモポリマー);下記式(f1)で表される構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体;下記式(f1)で表される構成単位と、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体、であることが好ましい。ここで、下記式(f1)で表される構成単位と共重合される前記構成単位(a1)としては、前記式(a1−5)で表される構成単位が好ましく、前記式(a11−1−1)で表される構成単位が特に好ましい。
【0236】
【化58】

[式中、Rは前記同様であり、a1は1〜5の整数であり、R”はフッ素原子を含む有機基である。]
【0237】
式(f1)中、Rは前記同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(f1)中、a1は1〜5の整数であって、1〜3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0238】
式(f1)中、R2”はフッ素原子を含む有機基であって、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素数は1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから、特に好ましい。
なかでも、R2”としては、炭素数1〜5のフッ素化炭化水素基が特に好ましく、メチル基、−CH−CF、−CH−CF−CF、−CH(CF、−CH−CH−CF、−CH−CH−CF−CF−CF−CFが最も好ましい。
【0239】
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(F)成分は、(A)成分100質量部あたり1〜10質量部の割合で用いられる。
【0240】
レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、たとえばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0241】
レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、たとえばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0242】
<(S)成分>
レジスト組成物は、レジスト組成物に配合される成分を有機溶剤(以下「(S)成分」という。)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
(S)成分は、たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
【0243】
(S)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)が好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよく、1:9〜9:1の範囲内とすることが好ましく、2:8〜8:2の範囲内とすることがより好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
さらに、(S)成分として、その他には、PGMEAとシクロヘキサノンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、質量比が好ましくはPGMEA:シクロヘキサノン=95〜5:10〜90とされる。
【0244】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、パターン寸法の微細化を達成し、且つ、パターン均一性を向上することができる。
上述したように、通常、ネガ型レジスト用組成物を用いたレジストパターンにおいて熱収縮によるパターン間の間隔(例えば、コンタクトホールパターンであればホールの直径;スペース(トレンチ)パターンであればスペースの幅)の狭小化を試みた場合、パターン間の間隔が逆に広がってしまう。これは一般的なネガ型レジスト組成物を用いて形成されたレジスト膜のパターン部がその内部に基の脱離等によって生じた空隙を有するため、該空隙内に向かってパターン部が収縮するためである。
一方、本発明のレジストパターン形成方法によれば、ネガ型レジスト組成物を用いたレジストパターンを被覆形成剤からなる被覆膜で被覆した後に熱処理を行うことで、被覆膜自体が熱収縮することにより、レジスト膜のパターン部の側壁をパターンの間に向けて引き寄せることができ、上記効果が得られると考えられる。
【実施例】
【0245】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0246】
[実施例1〜3、比較例1]
表1に示す各成分を混合してネガ型現像用のレジスト組成物とした。
【0247】
【表1】

【0248】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:下記高分子化合物(A)−1[Mw=8000、Mw/Mn=1.56、l/m/n/o=45/35/10/10(モル比)]。
(A)−2:下記高分子化合物(A)−2[Mw=8000、Mw/Mn=1.57、l/m/n/o/p=45/30/9/8/8(モル比)]
(B)−1:下記化合物(B)−1。
(B)−2:下記化合物(B)−2。
(B)−3:下記化合物(B)−3。
(F)−1:下記高分子化合物(F)−1[Mw=25000、Mw/Mn=1.61、l/m=30/70(モル比)]。
(S)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
(S)−2:シクロヘキサノン。
【0249】
【化59】

【0250】
【化60】

【0251】
得られたネガ型現像用のレジスト組成物を用いて、以下の手順に従ってレジストパターンを形成した。
【0252】
[レジストパターンの形成1 実施例1、実施例2、比較例1]
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、該有機系反射防止膜上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で105℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
次に、ArF露光装置NSR−S609B(ニコン社製;NA(開口数)=1.07;Cross pole(0.78/0.97) w/POLANO)により、マスクを介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。
そして、110℃で60秒間のPEB処理を行い、さらに23℃にて酢酸ブチルで13秒間現像処理を行い、振り切り乾燥を行った。その結果、ホール直径50nmのホールが等間隔(ピッチ100nm)に配置されたコンタクトホール(CH)パターンが得られた。この時の最適露光量Eopは26mJ/cmであった。
【0253】
次いで、得られた実施例1および実施例2の各CHパターン上に、アクリル酸とビニルピロリドンとのコポリマー(アクリル酸:ビニルピロリドン=2:1(質量比)、トリエチルアミン、及び界面活性剤を含むpH3の被覆形成剤をスピンナーを用いて塗布して、基板から200nmの厚さの被覆膜を形成した。
一方、比較例1のCHパターンには被覆膜を形成しなかった。
その後、基板上のCHパターンに対して、100℃(参考)、140℃、150℃、155℃、又は160℃の何れかの温度で60秒間熱処理を行った後、23℃で純水を用いて被覆膜を除去した。
各温度で加熱処理した場合の、CHパターンの寸法(ホール直径)を表2に示す。
また、各温度で加熱処理した場合において、200個のホールの直径を測定し、その結果から標準偏差の3倍値を、CDU(CD Uniformity;パターン均一性)を示す尺度として算出した。この値が小さいほど、CDUが優れていることを意味する。結果を表2に示す。
【0254】
[レジストパターンの形成2 実施例3]
上記レジストパターンの形成1において使用した被覆形成剤についてpHを7に調整(トリエチルアミン量を調整)した被覆形成剤を用いた他は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0255】
【表2】

【0256】
上記の結果から、実施例1〜3の方法により得られたレジストパターンは、比較例1の方法により得られたレジストパターンに比して、パターン寸法が小さく、パターンの均一性に優れることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用により有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有するレジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を、前記有機溶剤を含有する現像液を用いたネガ型現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターン上に被覆形成剤を塗布して被覆膜を形成する工程、前記レジストパターンの軟化点よりも低い温度で熱処理を行い、被覆膜を熱収縮させて前記レジストパターン間の間隔を狭める工程、及び前記被腹膜を除去する工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記被覆形成剤が水溶性ポリマーを含有する請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーがアルキレングリコール系重合体、セルロース系誘導体、ビニル系重合体、アクリル系重合体、尿素系重合体、エポキシ系重合体、メラミン系重合体、及びナイロン系重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
被覆形成剤のpHが11未満である請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
被覆形成剤がさらに水溶性アミンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−3155(P2013−3155A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130453(P2011−130453)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】