説明

レジスト塗布方法及びレジスト塗布装置

【課題】レジストを均一な厚さに塗布することができるレジスト塗布方法を提供する。
【解決手段】本発明のレジスト塗布方法は、搬送ロールにより長尺の基材を搬送するとともに、レジスト供給部から引き上げロールを介して転写ロールにレジストを供給し、転写ロールにより基材にレジストを塗布する方法であって、レジスト塗布領域の両端部に当該基材の長さ方向に沿って延びる溝部を有する基材のレジスト塗布領域に、転写ロールからレジストを転写することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布方法及びレジスト塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板の製造工程において、基材であるフレキシブルテープにレジスト(フォトレジスト)を塗布する方法として、レジスト供給皿に浸した引き上げロールから転写ロールへレジストを受け渡し、転写ロールからフレキシブルテープへ転写するピックアップロール方式が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO98/02254号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ピックアップロール方式を用いてレジストを塗布すると、フレキシブルテープの幅方向の両端部において膜厚が不安定になるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、レジストを均一な厚さに塗布することができるレジスト塗布方法及びレジスト塗布装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレジスト塗布方法は、搬送ロールにより長尺の基材を搬送するとともに、レジスト供給部から引き上げロールを介して転写ロールにレジストを供給し、前記転写ロールにより前記基材に前記レジストを塗布する方法であって、レジスト塗布領域の両端部に当該基材の長さ方向に沿って延びる溝部を有する基材の前記レジスト塗布領域に、前記転写ロールから前記レジストを転写することを特徴とする。
【0007】
この塗布方法によれば、レジスト塗布領域の両端部に溝部を有する基材にレジストを塗布するので、上記の溝部によってレジストの表面張力の方向を基材の面方向に近づけることができ、レジスト塗布領域の端縁でレジストが盛り上がるのを抑制することができる。これにより、基材上に均一な膜厚でレジストを塗布することができる。
【0008】
前記レジストを塗布する前に、前記基材に前記溝部を形成する工程を有する方法としてもよい。このように基材の溝部をレジスト塗布時に形成してもよい。
【0009】
前記溝部の開口端における前記レジスト塗布領域側の角部の頂角が90°以下である方法としてもよい。このような塗布方法とすれば、溝部開口端の角部におけるレジストの表面張力の方向をより確実に基材面方向に近づけることができる。これにより、レジスト塗布領域の端縁におけるレジストの盛り上がりを抑制でき、より均一な膜厚でレジストを塗布することができる。なお、上記頂角は、溝部の延在方向に直交する面を切断面としたときの上記角部の角度である。
【0010】
前記溝部の深さは、前記基材上に形成された導電体層の厚さよりも小さい方法としてもよい。
このような塗布方法とすれば、基材に不要な溝部が形成されることがないため、基材が曲がりやすくなったり、裂けたりすることがなく、基材の強度を良好に保持することができる。
【0011】
本発明のレジスト塗布装置は、長尺の基材を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロール上の前記基材にレジストを転写する転写ロールと、レジスト供給部からレジストを引き上げて前記転写ロールに供給する引き上げロールと、前記転写ロールに向かう前記基材の搬送経路上に配置され、前記基材上のレジスト塗布領域の両端部に前記基材の長さ方向に沿って延びる溝部を形成する溝部形成装置と、を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、溝部形成装置によって基材に溝部を形成し、かかる基材にレジストを塗布する装置を提供することができる。かかるレジスト塗布装置では、レジスト塗布領域の端部に形成される溝部によってレジストの表面張力の方向を基材の面方向に近づけることができるため、レジスト塗布領域の端縁でレジストが盛り上がるのを防止することができる。これにより、基材上に均一な膜厚でレジストを塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のレジスト塗布装置の全体構成図。
【図2】溝部形成装置の説明図。
【図3】フレキシブルテープとその上のフォトレジストの液面形状とを示す図。
【図4】実施形態の作用説明図。
【図5】溝部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0015】
図1は、本実施形態のレジスト塗布装置の全体構成図である。図2は、溝部形成装置の説明図である。図3は、フレキシブルテープとフレキシブルテープ上のフォトレジストの液面形状を示す図である。図4は本実施形態の作用説明図である。
【0016】
レジスト塗布装置100は、貯蔵容器10と、ポンプ20と、レジスト調質部30と、レジスト塗布部40と、溝部形成装置70と、を備えている。貯蔵容器10とポンプ20は配管52を介して接続され、ポンプ20とレジスト調質部30は配管54を介して接続され、レジスト調質部30とレジスト塗布部40は配管56を介して接続され、レジスト塗布部40と貯蔵容器10は配管58を介して接続されている。これらの各装置と配管とが、全体としてフォトレジスト12の循環系を構成している。
【0017】
貯蔵容器10は、液体のフォトレジスト12を貯蔵するタンクである。貯蔵容器10は配管52、58が接続された状態で密閉されている。出口側の配管52は貯蔵容器10の底部付近まで延びており、開口した先端が常にフォトレジスト12中に配置される。一方、入口側の配管58は、フォトレジスト12の液面よりも上側の空間14に開口している。
【0018】
ポンプ20は、配管52を介して貯蔵容器10からフォトレジスト12を吸い出すとともに、配管54を介してレジスト調質部30へフォトレジスト12を圧送する。ポンプ20としては、公知の液送ポンプであれば特に限定されず用いることができる。
【0019】
レジスト調質部30は、密閉タンク32と、密閉タンク32に配管34を介して接続された真空ポンプ36と、フォトレジスト12をろ過するフィルタ装置39と、を備えている。
密閉タンク32は、フォトレジスト12を貯留する内側タンク32bと、内側タンク32bを収容する外側タンク32aとを有する。
【0020】
内側タンク32bには、ポンプ20から延びる配管54とフィルタ装置39とが接続されている。配管54は、内側タンク32bの底部近傍の側壁に設けられた接続部132に接続されている。フィルタ装置39は、内側タンク32bの他の側壁に設けられた接続部133に接続されている。
【0021】
外側タンク32aは、内側タンク32bを内部に密閉することができる真空容器である。外側タンク32aには配管34を介して真空ポンプ36が接続され、真空ポンプ36により空間38内を減圧可能に構成されている。空間38の圧力は1kPa〜10kPa程度とすればよい。圧力を低くしすぎるとフォトレジスト12中の溶媒が蒸発して粘度が上昇するためである。
【0022】
フィルタ装置39は、フォトレジスト12に含まれる異物を除去する装置であり、公知のろ過装置を用いることができる。フィルタ装置39としては、50μm以上の大きさの異物や気泡を除去できるものを用いることが好ましい。
【0023】
上記構成のレジスト調質部30は、配管54を介してポンプ20から供給されるフォトレジスト12を内側タンク32bに貯留した状態で、真空ポンプ36により空間38を減圧することで、フォトレジスト12に含まれる気泡を除去する。そして、気泡が除去されたフォトレジスト12を、フィルタ装置39でろ過し、浄化した後、配管56を介してレジスト塗布部40へ供給する。
【0024】
レジスト塗布部40は、レジスト供給部41と、引き上げロール42と、転写ロール44と、搬送ロール45とを備えている。
レジスト供給部41は、配管56及び配管58に接続され、上方に開口した皿形の容器である。レジスト供給部41には、レジスト調質部30から配管56を介して流入するフォトレジスト12が貯留される。また、流入量と同量のフォトレジスト12が配管58を介して貯蔵容器10へ排出される。
【0025】
引き上げロール42は、レジスト供給部41に貯留されたフォトレジスト12に部分的に浸される位置に設けられている。引き上げロール42の上方に転写ロール44が配置されている。引き上げロール42と転写ロール44は、それらの周面がほぼ当接する位置に配置されており、互いに逆方向に回転する。転写ロール44の上方に、搬送ロール45が配置されている。転写ロール44と搬送ロール45との間にはフレキシブルテープ(基材)60を通過させる間隙が設けられている。
【0026】
フレキシブルテープ60は、図3(a)に示すような長尺の基材であり、例えばポリイミド等の樹脂材料からなるものである。またフレキシブルテープ60の一方の面には、図3(b)に示すように、厚さ2〜5μm程度の銅箔などからなる導電体層62が形成されている。フレキシブルテープ60は、図1に示すように、搬送ロール45に対して導電体層62を外側に向けて架け渡され、搬送ロール45により搬送される。
【0027】
上記構成のレジスト塗布部40では、引き上げロール42の回転によりレジスト供給部41からフォトレジスト12が引き上げられ、引き上げロール42から転写ロール44へフォトレジスト12が受け渡される。そして、搬送ロール45により搬送されるフレキシブルテープ60が搬送ロール45と転写ロール44との間隙を通過する際に、転写ロール44からフレキシブルテープ60へフォトレジスト12が転写される。これにより、図3(a)に示すように、導電体層62上の所定幅の塗布領域12Aに、フォトレジスト12が塗布される。
なお、図3(a)において塗布領域12Aの外側のフォトレジスト12を塗布しない領域は、アライメントマークや製品情報等からなる識別情報66の形成領域として用いられる。
【0028】
溝部形成装置70は、フレキシブルテープ60の搬送経路上に設けられたフレキシブルテープ60用の切削加工装置である。具体的に、溝部形成装置70は、図2(a)に示すように、回転軸51に所定の間隔を空けて固定された2枚の円盤状のブレード64a及びブレード64bと、回転軸51を回転させる図示略の駆動装置とを有する。
【0029】
ブレード64a、64bは、フレキシブルテープ60の導電体層62が形成された側に設置される。そして、ブレード64a、64bを回転させた状態でフレキシブルテープ60と接触させることにより、図3(a)(b)に示すように、フレキシブルテープ60上に2本の切り込み(溝部71、72)を形成する。
【0030】
ブレード64a、64bの間隔64Aは、図2に示すように、転写ロール44の軸方向(回転軸50の長さ方向)の長さと同等である。なお、本実施形態の場合、転写ロール44の周面全体がレジスト転写領域44A(フォトレジスト12を保持する領域)とされているため、間隔64Aが転写ロール44の軸方向に一致する。すなわち、間隔64Aは、レジスト転写領域44Aの軸方向長さに設定され、転写ロール44の長さには依存しない。
【0031】
また、ブレード64a、64bは、それらの少なくとも一方が回転軸51の軸方向に沿って移動可能とされており、フレキシブルテープ60上の塗布領域12Aの幅の変更に対して自在に対応可能に構成されている。
【0032】
以上の構成を備えた本実施形態のレジスト塗布装置100では、レジスト塗布部40の前段に溝部形成装置70を備えたことで、フレキシブルテープ60上に塗布されるフォトレジスト12の膜厚を均一化することができるものとされている。以下、レジスト塗布装置100の動作及び作用効果について、図2及び図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
本実施形態のレジスト塗布装置100を用いたレジスト塗布動作は概ね以下の通りである。
まず、フレキシブルテープ60をレジスト塗布部40に供給するのに先立って、フレキシブルテープ60を溝部形成装置70に通過させる。これにより、図3(a)、(b)に示すように、フレキシブルテープ60上の導電体層62の表面に、フレキシブルテープ60の長さ方向に沿って延びる互いに平行な2本の溝部71、72を形成する。
【0034】
その後、溝部71、72が形成されたフレキシブルテープ60を、搬送ロール45により搬送し、搬送ロール45と転写ロール44との隙間を通過させる際に、転写ロール44からフレキシブルテープ60にフォトレジスト12を転写させ、図3(b)に示すように導電体層62上に所定厚さでフォトレジスト12を塗布する。
【0035】
ここで、従来のレジスト塗布装置を用いた場合に生じる膜厚の不均一について説明する。
図3(c)は、溝部形成装置70が設けられていないレジスト塗布装置を用いてフォトレジスト12を塗布したときのフレキシブルテープ60とフォトレジスト12の液面形状を示す図である。
【0036】
溝部71、72が形成されていない導電体層62上にフォトレジスト12を塗布すると、塗布領域12Aの端縁におけるフォトレジスト12の表面張力により、近傍の部位よりもフォトレジスト12が厚くなる凸部212が形成される。また、凸部212のすぐ内側(中央側)に、近傍の部位よりもフォトレジスト12が薄くなる凹部213が形成される。
【0037】
フレキシブルテープ60上のフォトレジスト12が図3(c)に示すような膜厚分布を有する場合、特に凹部213が、導電体層62のパターニング精度や回路基板の製造コスト等に影響する。具体的には、幅方向両端の凸部212は、塗布領域12Aの端縁から1〜3mmの露光範囲外の領域に位置するため、パターニング精度等に影響しないが、凹部213は、凸部212の内側端からさらに5〜10mm程度の範囲に形成されるため、通常は露光範囲に含まれてしまう。
【0038】
凹部213のフォトレジスト12が最も薄い部分では、塗布領域12Aの中央部の半分程度の膜厚になってしまうため、パターニング精度が低下し、配線寸法がばらついてしまう。そこで、凹部213が形成された領域を露光範囲から外すことも考えられるが、そうすると、無駄になるフレキシブルテープ60が大きくなり、製造コストが上昇してしまう。
【0039】
一方、本実施形態のレジスト塗布装置100では、溝部形成装置70により導電体層62に2本の溝部71、72を形成した後でフォトレジスト12を塗布する。ここで、図2に示したように、溝部形成装置70のブレード64a、64bの間隔64Aは、転写ロール44の長さと一致しているため、図3(b)に示すように、フォトレジスト12は、導電体層62の2本の溝部71、72の間の領域に塗布される。
【0040】
溝部71、72間の塗布領域12Aに塗布されたフォトレジスト12は、フレキシブルテープ60の幅方向に濡れ広がろうとするが、溝部71の開口端の角部171、及び溝部72の開口端の角部172に突き当たった位置でそれ以上外側には広がりにくくなる。これは、角部171、172では、溝部71の側壁面と溝部72の側壁面により規定されるフォトレジスト12の表面張力の方向が、フレキシブルテープ60の幅方向の外側へ向く。そのため、角部171、172においてフォトレジスト12の接触角が実質的に大きくなったような状態が形成され、フォトレジスト12の濡れ広がりが規制されるためであると考えられる。
【0041】
また、上記したように角部171、172ではフォトレジスト12の表面張力が外側へ向くため、表面張力のうちフォトレジスト12の液面を上方に盛り上がらせる成分が少なくなる。これにより、図3(b)に示すように、塗布領域12A端部において凸部210が形成されにくくなり、形成されたとしてもその突出高さは小さくなる。このように凸部210が低くなることで、凸部210に引き寄せられるフォトレジスト12の量が減少するため、図3(c)に示した凹部213も形成されにくくなる。以上により、フォトレジスト12の膜厚が均一化される。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のレジスト塗布装置100及びレジスト塗布装置100を用いたレジスト塗布方法によれば、フレキシブルテープ60上の塗布領域12Aとなる領域の両端に、フレキシブルテープ60の長さ方向に沿って延びる2本の溝部71、72を形成することで、フォトレジスト12の端縁において液面に凸部が形成されるのを抑制することを可能とした。これに伴い、フォトレジスト12の膜厚が薄くなった凹部も形成されにくくなるので、均一な膜厚でフレキシブルテープ60上に塗布されたフォトレジスト12を得ることができる。
【0043】
上記のようにフォトレジスト12の膜厚が均一化されることにより、フレキシブルテープ60上の広い範囲をパターン形成領域として使用可能となる。例えば、フォトレジスト12の膜厚の変動幅が、塗布領域12A中央部の膜厚に対して30%以内である領域を、パターン形成領域として使用する場合を考える。そうすると、図3(b)に示す本実施形態の例では、塗布領域12Aのほぼ全域をパターン形成領域(露光範囲)として使用することが可能であり、図3(c)に示す従来の例における領域62Bよりも広い範囲を使用することができる。
【0044】
また本実施形態では、溝部71、72の形成位置でフォトレジスト12の濡れ広がりが規制されるため、塗布領域12A上のフォトレジスト12の量を一定に保つことができる。これにより、フレキシブルテープ60全体としてフォトレジスト12の膜厚が均一化されたものとなる。
【0045】
なお、本実施形態において、図4に示すように、フォトレジスト12は溝部71(72)内に一部が流入しても構わない。この場合には、溝部71内への流入により塗布領域12A端部におけるフォトレジスト12の液面が下がるため、凸部が形成されにくくなる。したがって、図3(c)に示した場合と比較すると均一な膜厚のフォトレジスト12を得ることができる。
【0046】
また本実施形態では、溝部形成装置70を備えたレジスト塗布装置100を用いる場合について説明したが、予め溝部71、72が導電体層62に形成されたものを用いてもよいのはもちろんである。
また、溝部71、72の形成方法についても、ブレード64a、64bによる切り込み加工に限られず、レーザー加工やプレス加工により形成してもよく、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて形成してもよい。
【0047】
また、導電体層62に形成する溝部71、72の幅や深さは、特に限定されない。
ただし、溝部71、72の幅は、狭すぎるとフォトレジスト12が溝部71、72を乗り越えて濡れ広がりやすくなり、広すぎると無駄になるフレキシブルテープ60の量が多くなる。したがって実用的な範囲としては、溝部71、72の幅は0.1〜1mm程度である。
一方、溝部71、72の深さは、浅すぎるとフォトレジスト12が溝部71、72を乗り越えて濡れ広がりやすくなり、深すぎると基材であるフレキシブルテープ60に切り込みが入り、フレキシブルテープ60の強度が低下するおそれがある。そこで、溝部71、72の深さは1μm以上で、導電体層62の厚さ(3〜5μm程度)より小さい範囲とすることが好ましい。
【0048】
次に、図5は、溝部の変形例を示す図である。
図5(a)に示す第1変形例は、断面台形状の溝部73を形成した例である。かかる構成では、溝部73の塗布領域12A側の側壁73aが傾斜して形成されていることにより、角部171が溝部73内にせり出し、その頂角θが90°未満となる。
【0049】
このように角部171の頂角θを90°未満とすると、フォトレジスト12の端部が角部171上に配置されたときに、フォトレジスト12の表面張力の方向が、導電体層62の面方向(図示左右方向)により近い方向となる。これにより、表面張力に起因するフォトレジスト12の凸部の形成がさらに抑制されることになり、フォトレジスト12の膜厚をより均一化することができる。
【0050】
なお、頂角θを小さくするほど上記の作用効果を得やすくなるが、形成が困難になる。したがって実用的な頂角θの範囲は、75°〜90°の範囲である。
また第1変形例において、溝部73の他方の側壁73bは図示のように傾斜させなくてもよい。側壁73b側の角部はフォトレジスト12の膜厚均一化には重要ではないからである。したがって側壁73bは、図中に二点差線で示すように、導電体層62の主面に対して垂直な壁面としてもよく、対向する側壁73aと同じ傾斜方向としてもよい。
【0051】
次に、図5(b)に示す第2変形例は、断面曲面形状の溝部74を形成した例である。
この場合にも、先の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。図示のような曲面形状は加工がしやすいため、製造性に優れるという利点がある。
【0052】
曲面の形状は図示の形状に限られず、任意の形状を用いることができるが、図示のように先窄まりの半楕円形状とすると、角部171の頂角θが90°を超える角度になる場合があり、フォトレジスト12の凸部形成を抑制する効果が低くなるおそれがある。そのため、断面曲面形状の溝部74においても、頂角θは90°以下となるように形状を選択することが好ましい。
【0053】
次に、図5(c)に示す第3変形例は、断面三角形状の溝部75を形成した例である。
このような三角形状は加工がしやすいため、製造性に優れるという利点がある。その一方で、図示のように法線Lに対称な三角形状を選択すると、角部171の頂角θが90°を超えてしまい、フォトレジスト12の凸部形成を抑制する効果が低くなるおそれがある。そのため、断面三角形状の溝部75においては、非対称形状の三角形状とし、頂角θが90°以下となるように形状を選択するとよい。
【符号の説明】
【0054】
12A…塗布領域、41…レジスト供給部、42…引き上げロール、44…転写ロール、45…搬送ロール、60…フレキシブルテープ(基材)、62…導電体層、70…溝部形成装置、71,72,73,74,75…溝部、100…レジスト塗布装置、171,172…角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロールにより長尺の基材を搬送するとともに、レジスト供給部から引き上げロールを介して転写ロールにレジストを供給し、前記転写ロールにより前記基材に前記レジストを塗布する方法であって、
レジスト塗布領域の両端部に当該基材の長さ方向に沿って延びる溝部を有する基材の前記レジスト塗布領域に、前記転写ロールから前記レジストを転写することを特徴とするレジスト塗布方法。
【請求項2】
前記レジストを塗布する前に、前記基材に前記溝部を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布方法。
【請求項3】
前記溝部の開口端における前記レジスト塗布領域側の角部の頂角が90°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト塗布方法。
【請求項4】
前記溝部の深さは、前記基材上に形成された導電体層の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレジスト塗布方法。
【請求項5】
長尺の基材を搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロール上の前記基材にレジストを転写する転写ロールと、
レジスト供給部からレジストを引き上げて前記転写ロールに供給する引き上げロールと、
前記転写ロールに向かう前記基材の搬送経路上に配置され、前記基材上のレジスト塗布領域の両端部に前記基材の長さ方向に沿って延びる溝部を形成する溝部形成装置と、
を有することを特徴とするレジスト塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196586(P2012−196586A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60477(P2011−60477)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】