説明

レゾネータ

【課題】
解決しようとする課題は、溶着バリにより導伝管の導伝管有効内径が狭まり、レゾネータの固有音響周波数fが小さくなってしまうので、該溶着バリを後加工にて処理する必要があるという点である。
【解決手段】
熱可塑性樹脂のブロー成形による共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設け、熱可塑性樹脂製の吸気管の溶着座に設けられた導伝穴の外周部と該段部の縁部とを溶着してなるレゾネータを提供することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン吸気音を共鳴箱内で共鳴させることによって音響エネルギーを減衰させるレゾネータに関する。
【背景技術】
【0002】
レゾネータの固有音響周波数の関係式としては、ヘルムホルツ共鳴器の固有音響周波数fの公式で下記の数式1が知られている。
【0003】
【数1】

【非特許文献1】機械音響工学(コロナ社)40頁(4.99式)
【0004】
ここで、fは固有音響周波数、cは音速、Sは導伝管の断面積、(小文字の)Lは導伝管の長さ、Vは共鳴箱の容積を表す。
【0005】
数式1から判るように、低い固有音響周波数を意図してレゾネータを設計する場合、該導伝管の長さLを長くすることが有効であるため、図1に示すような導伝管3の長いレゾネータ1が設定されることがある。
【0006】
図1は該レゾネータ1の斜視図であり、該レゾネータ1の該導伝管3の縁部12と、該レゾネータ1と別体の吸気管2は溶着、即ち溶融圧着される。
【0007】
図2、3は図1のA−A断面であり、図2は従来の該導伝管3の該縁部12と該吸気管2の溶着座10に設けられた導伝穴11の外周部13との溶着前の状態を表し、図3は従来の該導伝管3の該縁部12と該吸気管2の該溶着座10に設けられた該導伝穴11の該外周部13との溶着後の状態を表す。
【0008】
図3に示すように該縁部12と該外周部13の溶融された部分が圧着されることにより側方にはみだして溶着バリ6が生成されるが、該溶着バリ6により該導伝管3の導伝管有効内径dが狭まり、数式1が意味するように該導伝管3の断面積Sが小さくなることによって該レゾネータ1の固有音響周波数fも小さくなってしまうので、該溶着バリ6を後加工にて処理する必要があった。
【0009】
レゾネータの溶着バリの処理に関する従来技術としては特許文献1内の図3に開示されているような例があるが、この例は導伝管が無いか、もしくは導伝管が非常に短い形状であるから、特許文献1内で開示されているような方法を図1に示すような導伝管の部分の長いレゾネータに適用することはできなかった。
【特許文献1】特開平5−77321
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、溶着バリにより導伝管の導伝管有効内径が狭まり、数式1が意味するように該導伝管の断面積Sが小さくなることによってレゾネータの固有音響周波数fも小さくなってしまうので、該溶着バリを後加工にて処理する必要があるという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形による共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設け、熱可塑性樹脂製の吸気管の溶着座に設けられた導伝穴の外周部と該段部の縁部とを溶着してなるレゾネータを提供することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設けたため、溶着バリが該段部の溶着バリ室内に生成されるので、該導伝管の径が狭まることはなく、後加工にて該溶着バリを処理する必要がないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
溶着バリを後加工にて処理する必要をなくすという目的を、共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設けることによって、
ブロー成形の持つ経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0014】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0015】
図4は、本発明の1実施例を示す図であり、図1のA−A断面に相当する。該導伝管3の端部に該導伝管3の径を太くする向きに広がる段部7を設けてある。
【0016】
次に本発明の作用を説明する。分割金型(図示せず)内に半溶融の熱可塑性樹脂パリソン(図示せず)を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0017】
尚、該パリソンに適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等を混錬させた複合材であってもよい。
【0018】
その後該パリソン内に圧縮空気を吹き込み、該レゾネータ1のブロー成形を完了させる。
【0019】
同様にして、該吸気管2のブロー成形を完了させる。
【0020】
上記の工程によって成形された該レゾネータ1と該吸気管2は図4に示すように溶着される。
【0021】
上記溶着方法としては、熱板溶着、超音波溶着、摩擦溶着等があるが、いずれの方法でも構わない。
【0022】
この時生成される該溶着バリ6は図4に示すように該段部7の溶着バリ室8内に留まるので、該導伝管3の該導伝管有効内径dが狭まることはない。
【0023】
尚、上記実施例では該吸気管2をブロー成形によって成形した例を示したが、熱可塑性樹脂のインジェクション成形によっても構わない。
【0024】
以上実施例に述べたように本発明によれば、熱可塑性樹脂のブロー成形による共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設けたため、溶着バリが該段部の溶着バリ室内に生成されるので、該導伝管の導伝管有効内径が狭まることはなく、後加工にて該溶着バリを処理する必要がないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、自動車用のレゾネータに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のレゾネータの斜視図
【図2】図1のA−A断面図であり、従来のレゾネータの溶着前の状態を表す
【図3】図1のA−A断面図であり、従来のレゾネータの溶着後の状態を表す
【図4】図1のA−A断面相当図であり、本発明のレゾネータの溶着後の状態を表す
【符号の説明】
【0027】
1 レゾネータ
2 吸気管
3 導伝管
4 共鳴箱
6 溶着バリ
7 段部
8 溶着バリ室
10 溶着座
11 導伝穴
12 縁部
13 外周部
d 導伝管有効内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形による共鳴箱と一体の導伝管の端部に該導伝管の径を太くする向きに広がる段部を設け、熱可塑性樹脂製の吸気管の溶着座に設けられた導伝穴の外周部と該段部の縁部とを溶着してなることを特徴とするレゾネータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341622(P2006−341622A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−233054(P2006−233054)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】