説明

レンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法

【課題】形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を、被検レンズの外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易なレンズ中心厚測定器を提供すること。
【解決手段】測距用のセンサヘッド22a,22bを有する2台の非接触型測長計2a,2bと、これら2台の非接触型測長計それぞれのセンサヘッドを互いに対向させ、各センサヘッドの測定軸MA1,MA2を互いに一致させて支持する測長計支持部3Aと、センサヘッド間に設けられ、被検レンズL1の少なくとも光学中心Lc,Ldを露出させて且つ該被検レンズの光軸Lxを測定軸に一致させて該被検レンズを保持するレンズ保持部4Aとを用いてレンズ中心厚測定器1Aを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ中心厚を測定する測定器としては、片方のレンズ面のみに測定端子を接触させてレンズ中心厚を測定する片面接触型や、両方のレンズ面の各々に測定端子を接触させてレンズ中心厚を測定する両面接触型の測定器が用いられている。片凸レンズや片凹レンズのように片方のレンズ面が平面に成形された被検レンズのレンズ中心厚の測定には、片面接触型の測定器が用いられ、両凸レンズや両凹レンズやメニスカスレンズのように両方のレンズ面が曲面に成形された被検レンズのレンズ中心厚の測定には、両面接触型の測定器が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、被検レンズが置かれる測定台と、ダイヤルゲージと、該ダイヤルゲージのスピンドルの先端に取り付けられた測定端子と、ダイヤルゲージを支持するための支柱と、該支柱に取り付けられてダイヤルゲージを測定台の上方に保持するブラケットとを備え、平面に成形されているレンズ面を下にして測定台上にセットされた被検レンズのレンズ中心厚をダイヤルゲージにより測定する片面接触型測定器が記載されている。
【0004】
この片面接触型測定器によりレンズ中心厚を測定するにあたっては、まず、ダイヤルゲージのスピンドルの上下位置を調整して測定端子を測定台の上面に当接させ、このときのダイヤルゲージの計測値を0(ゼロ)にリセットする。この後、ダイヤルゲージのスピンドルを上方に移動させ、被検レンズをそのレンズ中心(光軸)が測定端子の下方にくるように測定台上にセットしてから当該スピンドルを下降させて、測定端子をレンズ中心に当接させる。このときのダイヤルゲージの計測値がレンズ中心厚となる。
【0005】
また、特許文献2には、コラムに取り付けられた第1ブラケットによりスピンドルを下側にして保持された被検査用ダイヤルゲージと、該被検査用ダイヤルゲージのスピンドルの先端に取り付けられた測定端子と、上記のコラムに取り付けられた第2ブラケットによりスピンドルを上側にして保持された基準測長器(マイクロメータヘッド)とを備え、両方のレンズ面が曲面に成形された被検レンズの上下方向から上記の測定端子と基準測長器のスピンドルとを当該被検レンズに当接させることでレンズ中心厚を測定する両面接触型測定器が記載されている。
【0006】
この両面接触型測定器によりレンズ中心厚を測定するにあたっては、まず、被検査用ダイヤルゲージのスピンドルの上下位置を調整し、上記の測定端子をマクロメータヘッドのスピンドルの上端面に当接させて、このときの被検査用ダイヤルゲージの計測値を0(ゼロ)にリセットする。この後、被検査用ダイヤルゲージのスピンドルを上方に移動させ、被検レンズをそのレンズ中心(光軸)が被検査用ダイヤルゲージの測定端子の下方、マイクロメータヘッドのスピンドルの上方にくるようにセットしてから、被検査用ダイヤルゲージのスピンドルを下降させて上記の測定端子をレンズ中心に当接させる。このときの被検査用ダイヤルゲージの計測値がレンズ中心厚となる。
【0007】
従来の片面接触型測定器および両面接触型測定器の各々では、被検レンズの形状やレンズ面の曲率半径等に応じて測定端子を交換することができる。球状、平板状、リング状等の測定端子があり、使用する測定端子の形状を適宜選択することで、より正確にレンズ中心厚を測定することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−264003号公報
【特許文献2】特公平4−31531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の接触型測定器では、レンズ中心厚をより正確に測定するために測定端子を別形状のものと交換したときに、測定端子の取付け精度が変わったり測定器の測定軸が被検レンズの光軸から外れたりすることがあるため、測定者によって測定値にばらつきが生じる等、測定の再現性が比較的低い。このため、レンズ中心厚を正確に測定し難い。また、測定端子をレンズ面に当接させるので、研磨後の被検レンズでは、レンズ中心厚の測定時に測定端子との接触により外観品質が低下してしまうことがある。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を、該被検レンズの外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易なレンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレンズ中心厚測定器は、測距用のセンサヘッドを有する2台の非接触型測長計と、前記2台の非接触型測長計それぞれの前記センサヘッドを互いに対向させ、各センサヘッドの測定軸を互いに一致させて支持する測長計支持部と、前記センサヘッド間に設けられ、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを保持するレンズ保持部と、を備える。
【0012】
本発明のレンズ中心厚測定器には、被検レンズの光軸を測定軸に一致させるための芯出し部を設けることができる。
【0013】
上記の芯出し部としては、測定軸に中心軸を一致させて配置された一対のヤトイを有し、一対のヤトイにより被検レンズの厚さ方向両側から被検レンズを挟み込んで固定することにより、被検レンズの光軸を測定軸に一致させるものを用いることができる。
【0014】
また、上記の芯出し部としては、測定軸と直交する方向に配置された一対のヤトイを有し、一対のヤトイにより被検レンズの径方向外側から被検レンズを挟み込んで固定することにより、被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させるものを用いることもできる。
【0015】
さらには、上記の芯出し部として、被検レンズをレンズ保持部上に固定する1つのレンズ固定部を有し、レンズ固定部は、被検レンズの光軸をパッシブアライメントにより測定軸に一致させるための基準部位を有するものを用いることができる。
【0016】
本発明のレンズ中心厚測定器には、レンズ保持部に配置された被検レンズの位置を測定軸に沿って変位させる位置調整機構を設けることもできる。
【0017】
本発明のレンズ中心厚測定器には、センサヘッド間の距離を調整する距離調整機構を設けることもできる。
【0018】
本発明のレンズ中心厚測定器には、センサヘッド間の距離を測定する測距部を設けることもできる。
【0019】
一方、本発明のレンズ中心厚測定方法は、2台の非接触型測長計が有するセンサヘッドであって、それぞれの測定軸を互いに一致させて互いに対向配置された各センサヘッドの間に、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを配置する工程と、前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記被検レンズまでの距離を測定する工程と、前記2台の非接触型測長計の各々が測定した前記被検レンズまでの距離の和を前記センサヘッド間の距離から差し引いて、前記被検レンズのレンズ中心厚を求める工程と、を含む。
【0020】
本発明のレンズ中心厚測定方法には、センサヘッド間の距離を測定する工程を更に含ませることができる。
【0021】
また、本発明の他のレンズ中心厚測定方法は、2台の非接触型測長計が有するセンサヘッドであって、それぞれの測定軸を互いに一致させて互いに対向配置された各センサヘッドの間に、レンズ中心厚が既知のマスターレンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該マスターレンズの光軸を前記測定軸に一致させて該マスターレンズを配置する工程と、前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記マスターレンズまでの距離を測定する第1測定工程と、前記センサヘッド間に、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを配置する工程と、前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記被検レンズまでの距離を測定する第2測定工程と、前記第1測定工程で測定した前記マスターレンズまでの距離の和と、前記第2測定工程で測定した前記被検レンズまでの距離の和との差を求め、該差と前記マスターレンズのレンズ中心厚とから前記被検レンズのレンズ中心厚を求める工程と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレンズ中心厚測定器では、2台の非接触型測長計それぞれのセンサヘッドの測定軸に被検レンズの光軸を一致させた後は、センサヘッドの測定軸が被検レンズの光軸から外れてしまうような作業を行うことなく、非接触の下に被検レンズのレンズ中心厚を測定することができるので、当該レンズ中心厚測定器によれば、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を該被検レンズの外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易になる。
【0023】
同様に、本発明のレンズ中心厚測定方法では、2台の非接触型測長計それぞれのセンサヘッドの測定軸に被検レンズの光軸を一致させた後は、センサヘッドの測定軸が被検レンズの光軸から外れてしまうような作業を行うことなく、非接触の下に被検レンズのレンズ中心厚を測定することができるので、当該レンズ中心厚測定方法によれば、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を該被検レンズの外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明のレンズ中心厚測定器の一基本構成例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示したレンズ中心厚測定器に被検レンズをセットした状態を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、センサヘッド間の距離を調整する距離調整機構を備えたものの一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の他の例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたものの一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の更に他の例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたものの他の例を示す概略図である。
【図9】図9は、図8に示した芯出し部と被検レンズとを概略的に示す上面図である。
【図10】図10は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたものの更に他の例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、位置調整機構が芯出し部と併設されていないものの一例を示す概略図である。
【図12】図12は、本発明のレンズ中心厚測定器のうちで、被検レンズのレンズ中心厚を算出する演算部を備えたものの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のレンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法それぞれの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明のレンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法は、下記の形態に限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明のレンズ中心厚測定器の一基本構成例を示す概略図であり、図2は、図1に示したレンズ中心厚測定器に被検レンズをセットした状態を示す概略図である。これら図1および図2に示すレンズ中心厚測定器1Aは、被検レンズL1(図2参照)の厚さ方向両側に配置した2台の非接触型測長計2a,2bの各々により被検レンズL1までの距離を測定する。そのために、レンズ中心厚測定器1Aは、2台の非接触型測長計2a,2bに加えて、これら2台の非接触型測長計2a,2bそれぞれの測長計本体21a,21bを支持することで各非接触型測長計2a,2bのセンサヘッド22a,22bを支持する測長計支持部3Aと、センサヘッド22a,22b間に設けられたレンズ保持部4Aとを備えている。
【0027】
レンズ中心厚の測定者は、非接触型測長計2aのセンサヘッド22aと非接触型測長計2bのセンサヘッド22bとの間の距離Dと、各非接触型測長計2a,2bの測定結果とを用いて被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。以下、レンズ中心厚測定器1Aの各構成要素について説明した後、レンズ中心厚測定器1Aを用いた被検レンズL1のレンズ中心厚の測定方法について説明する。
【0028】
レンズ中心厚測定器1Aを構成する各非接触型測長計2a,2bは、対象物と接触することなく対象物までの距離を測定するものであり、距離算出部(図示せず)等が内蔵された測長計本体21a,21bと、センサヘッド22a,22bと、測定結果を表示する表示部23a,23bとを有している。個々の非接触型測長計2a,2bとしては、レーザ光等を測定光として用いた光学方式の測長計や、超音波方式の測長計を用いることができる。導電性材料を用いた反射防止膜等が被検レンズL1に設けられている場合には、渦電流方式の測長計を非接触型測長計2a,2bとして用いることもできる。なお、各非接触型測長計2a,2bでは、測長計本体21a,21bにセンサヘッド22a,22bが組み込まれているが、センサヘッドが光ファイバやケーブル等により測長計本体に接続されて測長計本体の外部に引き出されている非接触型測長計を用いることもできる。
【0029】
測長計支持部3Aは、上側支持部31、下側支持部32、および上側支持部31と下側支持部32とを連結する連結部33を有しており、上側支持部31は連結部33の上端側から水平に、また下側支持部32は連結部33の下端側から水平に張り出している。この測長計支持部3Aは、各非接触型測長計2a,2bのセンサヘッド22a,22bを互いに対向させて、またセンサヘッド22aの測定軸MA1とセンサヘッド22bの測定軸MA2とを互いに一致させて、これらのセンサヘッド22a,22bを支持する。図示の例ではセンサヘッド22a,22bが測長計本体21a,21bに組み込まれているので、測長計支持部3Aは、測長計本体21a,21bを支持することでセンサヘッド22a,22bを支持する。上側支持部31に測長計本体21aが取り付けられており、下側支持部32に測長計本体21bが取り付けられている。
【0030】
測長計支持部3Aへの各測長計本体21a,21bの取付けは、例えば、レンズ中心厚測定器1Aの製造者側で、各測定軸MA1,MA2が互いに一致し、かつセンサヘッド22a,22b間の距離Dが固定値となるようにして行われる。また、測定者がレンズ中心厚の測定に先だって各測長計本体21a,21bを測長計支持部3Aに取り付けるようにレンズ中心厚測定器1Aを構成することもできる。
【0031】
測定者が各測長計本体21a,21bを測長計支持部3Aに取り付けるようにレンズ中心厚測定器1Aを構成する場合には、例えば、各測定軸MA1,MA2をパッシブアライメントにより互いに一致させるための面、凹部、凸部等の基準部位(軸合わせ用の基準部位)が測長計支持部3Aの製造時に上側支持部31および下側支持部32の各々に形成されると共に、各測長計本体21a,21bに軸合わせ用の基準部位が予め形成される。これら軸合わせ用の基準部位は、上側支持部31、下側支持部32、および各測長計本体21a,21b毎に、レンズ中心厚測定器1Aでの前後軸方向および左右軸方向の各々に少なくとも1つずつ配置される。また、測長計本体21aに形成された軸合わせ用の基準部位に対するセンサヘッド22aの位置公差、および測長計本体21bに形成された軸合わせ用の基準部位に対するセンサヘッド22bの位置公差がそれぞれ所定の値となるように、各非接触型測長計2a,2bが作製される。
【0032】
上側支持部31に形成された軸合わせ用の基準部位と測長計本体21aに形成された軸合わせ用の基準部位とを互いに密着させて上側支持部31に測長計本体21aを固定し、下側支持部32に形成された軸合わせ用の基準部位と測長計本体21bに形成された軸合わせ用の基準部位とを互いに密着させて下側支持部32に測長計本体21bを固定することにより、センサヘッド22aの測定軸MA1とセンサヘッド22bの測定軸MA2とを互いに一致させることができる。
【0033】
センサヘッド22a,22b間の距離Dは、例えば、測長計支持部3Aに各測長計本体21a,21bをパッシブアライメントにより取り付けた後に測定者が測定する。また、測長計支持部3Aに各測長計本体21a,21bをパッシブアライメントにより取り付けたときに距離Dが所定値となるように、距離合わせ用の基準部位を測長計支持部3Aおよび各測長計本体21a,21bに形成してもよい。距離Dを複数の値の中から測定者が任意に選択することができるように、測長計支持部3Aおよび各測長計本体21a,21bの各々に距離合わせ用の基準部位を複数形成することもできる。
【0034】
上側支持部31に形成された距離合わせ用の基準部位と測長計本体21aに形成された距離合わせ用の基準部位とを互いに密着させて上側支持部31に測長計本体21aを固定し、下側支持部32に形成された距離合わせ用の基準部位と測長計本体21bに形成された距離合わせ用の基準部位とを互いに密着させて下側支持部32に測長計本体21bを固定することにより、センサヘッド22a,22b間の距離Dを所定値にすることができる。勿論、測定者が各測定軸MA1,MA2をアクティブアライメントにより互いに一致させて各測長計本体21a,21bを測長計支持部3Aに取り付け、このときのセンサヘッド22a,22b間の距離Dを測定者が測定するようにレンズ中心厚測定器1Aを構成することも可能である。なお、図1および図2においては、各測定軸MA1,MA2を一本の一点鎖線で表している。
【0035】
レンズ保持部4Aは、被検レンズL1の光軸Lxを各センサヘッド22a,22bの測定軸MA1,MA2に一致させて被検レンズL1をセンサヘッド22a,22b間に保持するためのものであり、被検レンズL1が各レンズ面La,Lb(図2参照)での少なくとも光学中心Lc,Ldを露出させて配置されるレンズ支持部材41Aと、レンズ支持部材41Aをセンサヘッド22a,22b間に保持する支持部(図示せず)とを有している。本実施の形態では、被検レンズL1は、各レンズ面La,Lbでの光学中心Lc,Ldおよびその周辺を露出させてレンズ支持部材41Aに支持されている。
【0036】
レンズ支持部材41Aは、互いに離隔して配置された2つの平板状部材41a,41bにより構成されている。各平板状部材41a,41bは、被検レンズL1での一方のレンズ面Lbの曲面形状に対応した形状の支持面を有している。被検レンズL1は、レンズ面Lbを当該支持面に面接触させてレンズ支持部材41A上に配置される。被検レンズL1の光軸Lxを各センサヘッド22a,22bの測定軸MA1,MA2に一致させることができるように、例えば、レンズ支持部材41Aおよび被検レンズL1の各々に予めアライメントマークが付される。
【0037】
上述の各構成要素を有するレンズ中心厚測定器1Aによる被検レンズL1のレンズ中心厚の測定は、本発明のレンズ中心厚測定方法に従って、非接触型測長計2aのセンサヘッド22aと非接触型測長計2bのセンサヘッド22bとの間の距離Dと各非接触型測長計2a,2bの測定結果とから、例えば測定者が求める。以下、本発明のレンズ中心厚測定方法の一例について、図3を参照して具体的に説明する。
【0038】
図3は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の一例を示すフローチャートである。図示の手順は、図1および図2のレンズ中心厚測定器1Aにより被検レンズL1(図2参照)のレンズ中心厚を測定する際の手順に相当し、図3に示すステップS1〜S6のうちのステップS1〜S4をこの順番で順次行うことにより被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。
【0039】
最初に行われるステップS1では、各非接触型測長計2a,2bの測長計本体21a,21bを測長計支持部3A(図2参照)に取り付ける。このとき、非接触型測長計2aのセンサヘッド22aと非接触型測長計2bのセンサヘッド22bとを互いに対向させ、センサヘッド22aの測定軸MA1とセンサヘッド22bの測定軸MA2(図2参照)とを互いに一致させる。また、測長計支持部3Aへの各測長計本体21a,21bの取付け時にパッシブアライメントによりセンサヘッド22a,22b間の距離D(図2参照)を所定値にするか、または測長計支持部3Aへの各測長計本体21a,21bの取付け後にセンサヘッド22a,22b間の距離Dを測定者が測定する。なお、レンズ中心厚測定器1Aのメーカにより測長計支持部3Aへの各測長計本体21a,21bの取付けが行われている場合や、測長計支持部3Aへの各測長計本体21a,21bの取付けが測定者により既に終わっている場合には、ステップS1は省略される。
【0040】
ステップS2では、被検レンズL1の光軸Lx(図2参照)を各測定軸MA1,MA2に一致させて、被検レンズL1をセンサヘッド22a,22b間に配置する。具体的には、被検レンズL1の各レンズ面La,Lb(図2参照)での光学中心Lc,Ldおよびその周辺を露出させて、かつ被検レンズL1の光軸Lxを測定軸MA1,MA2に一致させて、被検レンズL1をレンズ保持部4Aのレンズ支持部材41A(図2参照)上に配置する。
【0041】
ステップS3では、各非接触型測長計2a,2bによりセンサヘッド22a,22bから被検レンズL1までの距離を測定する。具体的には、レンズ面La,Lbまでの距離を測定する。非接触型測長計2aはセンサヘッド22aからレンズ面Laまでの距離を測定し、非接触型測長計2bはセンサヘッド22bからレンズ面Lbまでの距離を測定する。
【0042】
ステップS4では、各非接触型測長計2a,2bが測定した被検レンズL1までの距離の和をセンサヘッド22a,22b間の距離Dから差し引いて、被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。非接触型測長計2aの測定値が表示部23a(図2参照)に表示され、非接触型測長計2bの測定値が表示部23b(図2参照)に表示されるので、測定者は、各表示部23a,23bの表示値から上記の和を求めることができる。
【0043】
この後に行われるステップS5では、レンズ保持部4Aから被検レンズL1を取り外し、ステップS6では、レンズ中心厚を測定すべき別の被検レンズがあるか否かを測定者が判断する。別の被検レンズがないときには測定を終了し、別の被検レンズがあるときにはステップS2に戻ってステップS2以降を繰り返す。
【0044】
上述のようにして本発明のレンズ中心厚測定方法により被検レンズL1のレンズ中心厚を測定することができるレンズ中心厚測定器1Aでは、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する際に用いられる測定端子が不要であるので、測定端子の交換も不要である。このため、各センサヘッド22a,22bの測定軸MA1,MA2に被検レンズL1の光軸Lxを一致させた後は、センサヘッド22a,22bの測定軸MA1,MA2が被検レンズL1の光軸Lxから外れてしまうような作業を行うことなく、非接触の下に被検レンズL1のレンズ中心厚を測定することができる。
【0045】
したがって、レンズ中心厚測定器1Aを用いて被検レンズのレンズ中心厚を測定すれば、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する場合に比べて、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚をその外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易になる。また、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を正確に測定するために行われる測定端子の交換作業が不要であるので、測定の再現性を向上させ易い。測定端子の保管管理も不要である。
【0046】
さらには、被検レンズの片側に配置した1台の光学方式の非接触型測長計により被検レンズに測定光を照射し、各レンズ面からの反射光に基づいてレンズ中心厚を測定しようとすると、奥側のレンズ面からの反射光の受光量が少ないために厚肉の被検レンズではレンズ中心厚を正確に測定し難くなるが、レンズ中心厚測定器1Aでは、各非接触型測長計2a,2bとして光学方式のものを用いた場合でも、個々の非接触型測長計2a,2bが手前側のレンズ面からの反射光に基づいて該レンズ面までの距離を測定するので、レンズ中心厚を正確に測定し易い。
【0047】
(実施の形態2)
本発明のレンズ中心厚測定器では、2台の非接触型測長計でのセンサヘッド間の距離を調整する距離調整機構を設けて、センサヘッド間の距離を測定軸に沿って可変に構成することができる。距離調整機構は手動式および電動式のいずれであってもよい。
【0048】
図4は、センサヘッド間の距離を調整する距離調整機構を備えたレンズ中心厚測定器の一例を示す概略図である。同図に示すレンズ中心厚測定器1Bは、図2に示した測長計支持部3Aに代えて測長計支持部3Bを備えているという点を除き、図2に示したレンズ中心厚測定器1Aと同様の構成を有している。図4に示す構成要素のうちで図2に示した構成要素と共通するものについては、図2で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0049】
上記の測長計支持部3Bは、上側支持部35、下側支持部36、上側支持部35と下側支持部36とを連結する連結部37、およびセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整するための調整ねじ38を有している。上側支持部35は、レンズ保持部4A上に張り出した第1張出し部35aと、第1張出し部35aの下方で外方に張り出した第2張出し部35bとを有するクランク状に折曲しており、第2張出し部35bには調整ねじ38が螺入されるねじ孔(図4には現れていない)が設けられている。一方、下側支持部36は、レンズ保持部4Aの下方に張り出した第1張出し部36aと、第1張出し部36aの上方で外方に張り出した第2張出し部36bとを有するクランク状に折曲しており、第2張出し部36bには、調整ねじ38が挿通される貫通孔(図4には現れていない)が設けられている。ただし、上記の貫通孔での調整ねじ38の貫通長は、調整ねじ38に設けられたストッパ(図示せず)により一定長に保たれる。
【0050】
また、上側支持部35と連結部37とは、上側支持部35が連結部37に沿って上下方向に滑動可能に、かつ連結部37を軸とした上側支持部35の回転運動は不能に連結されており、下側支持部36と連結部37とは互いに固定されている。したがって、調整ねじ38を上記のねじ孔への螺入方向に回転させると上側支持部35が連結部37に沿って下方向に滑動し、螺入方向とは逆方向に回転させると上側支持部35が連結部37に沿って上方向に滑動する。図4では、上側支持部35の移動方向を実線の矢印Aで示している。
【0051】
上側支持部35の第1張出し部35aに非接触型測長計2aの測長計本体21aが取り付けられており、下側支持部36の第1張出し部36aに非接触型測長計2bの測長計本体21bが取り付けられているので、レンズ中心厚測定器1Bでは、調整ねじ38の回転方向および回転量を測定者が手作業で調整することにより、測長計本体21aを測定軸MA1,MA2に沿って移動させてセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することができる。上側支持部35、下側支持部36の第2張出し部36b、連結部37、および調整ねじ38は、前述した距離調整機構DRを構成している。
【0052】
なお、距離Dの調整可能範囲を個々の非接触型測長計2a,2bの測定可能範囲よりも長く設定する場合には、距離Dを測定するための測距部(図示せず)をレンズ中心厚測定器1Bに設けることが好ましい。この測距部は、例えば、接触型の測距計や非接触型の測距計を用いて、あるいは接触型の変位計や非接触型の変位計を用いて構成することができる。距離Dの調整可能範囲が個々の非接触型測長計2a,2bの測定可能範囲内に設定され、かつ非接触型測長計2aまたは非接触型測長計2bにより距離Dを測定することが可能な場合には、上記の測距計は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0053】
また、距離調整機構DRに代えて、変位量を制御可能なリニアアクチュエータにより測長計支持部3Bの上側支持部35を変位させることでセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することもできる。上記のリニアアクチュエータを用いて距離調整機構を構成した場合には、たとえ距離Dの調整可能範囲を個々の非接触型測長計2a,2bの測定可能範囲よりも長く設定するときでも、リニアアクチュエータの変位量が0(ゼロ)のときの距離Dとリニアアクチュエータの現在の変位量とから現在の距離Dを求めることができるので、上記の測距部を省略することができる。
【0054】
上述のように構成されたレンズ中心厚測定器1Bによる被検レンズL1のレンズ中心厚の測定は、本発明のレンズ中心厚測定方法に従って行うことができる。この場合のレンズ中心厚測定方法は実施の形態1で説明したレンズ中心厚測定方法とは多少異なるので、以下、本発明のレンズ中心厚測定方法の他の例について、図5を参照して詳述する。
【0055】
図5は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の他の例を示すフローチャートである。図示の手順は、図4のレンズ中心厚測定器1Bにより被検レンズL1(図4参照)のレンズ中心厚を測定する際の手順に相当し、図5に示すステップS1,S11,S12,S2〜S6のうちのステップS1,S11,S12,S2〜S4をこの順番で順次行うことにより、被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。ステップS1,S2〜S6は図3に示したステップS1〜S6と同様にして行われるので、ここではステップS11,S12についてのみ詳述する。
【0056】
ステップS11は、各測長計本体21a,21b(図4参照)を測長計支持部3Bに取り付けた後に行われるステップであり、このステップS11では、被検レンズL1をレンズ支持部材41A上に配置する際の作業のし易さ、各非接触測長計2a,2bの測定可能範囲の広さ、被検レンズL1の総厚等を考慮して、センサヘッド22a,22b間の距離Dを測定者が距離調整機構DR(図4参照)により所望値に調整する。
【0057】
次いで行われるステップS12では、レンズ中心厚測定器1Bでのセンサヘッド22a,22b間の距離Dの調整可能範囲の広さに応じて、例えば非接触型測長計2a、非接触型測長計2b、または前述した測距部により距離Dを測定する。この後は、実施の形態1で説明したステップS2〜S4をこの順番で順次行って被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。そして、被検レンズL1をレンズ保持部4Aから取り外すステップS5、およびレンズ中心厚を測定すべき別の被検レンズがあるか否かを判断するステップS6を順次行い、レンズ中心厚を測定すべき別の被検レンズがあるときにはステップS11に戻ってステップS11以降を繰り返す。
【0058】
上述のようにして被検レンズL1のレンズ中心厚を測定することができるレンズ中心厚測定器1Bでは、実施の形態1のレンズ中心厚測定器1Aにおけるのと同様の理由から、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する場合に比べて、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚をその外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易である。また、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を正確に測定するために行われる測定端子の交換作業が不要であるので、測定の再現性を向上させ易いと共に、測定端子の保管管理も不要である。
【0059】
さらには、光学方式の非接触型測長計を被検レンズの片側に1台のみ配置してレンズ中心厚を測定する場合に比べ、厚肉の被検レンズでもそのレンズ中心厚を正確に測定し易い。そして、距離調整機構DRによりセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することができるので、レンズ中心厚測定器1Bでは、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を測定可能な利便性が高いものを構成し易い。
【0060】
(実施の形態3)
本発明のレンズ中心厚測定器には、被検レンズをその厚さ方向両側から挟み込んで固定することにより芯出しする、すなわち被検レンズの光軸を各非接触型測長計のセンサヘッドの測定軸に一致させるための芯出し部を設けることができる。
【0061】
図6は、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたレンズ中心厚測定器の一例を示す概略図である。同図に示すレンズ中心厚測定器1Cは、図2に示したレンズ保持部4Aに代えてレンズ保持部4Bを備えているという点、および芯出し部5Aを備えているという点をそれぞれ除き、図4に示したレンズ中心厚測定器1Bと同様の構成を有している。図6に示す構成要素のうちで図4に示した構成要素と共通するものについては、図4で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0062】
上記のレンズ保持部4Bは、レンズ支持部材41Aに加えて、レンズ支持部材41Aに保持された被検レンズL1の位置を測定軸MA1,MA2に沿ってレンズ支持部材41Aごと変位させる位置調整機構PRを有している。この位置調整機構PRは、被検レンズL1の形状、大きさ、厚み等に応じて、あるいは各非接触型測長計2a,2bの測定可能範囲の広さに応じて被検レンズL1の位置を測定軸MA1,MA2に沿って変位可能にするものであり、2本のガイドシャフト42a,42bと、2つの連結部43a,43bとを含んでいる。各ガイドシャフト42a,42bは、レンズ支持部材41Aを支持すると共に、測定軸MA1,MA2に沿ってレンズ支持部材41Aを変位させる際の変位方向をガイドする。また、各連結部43a,43bは、レンズ支持部材41Aを各ガイドシャフト42a,42bに滑動可能かつ位置固定可能に連結する。
【0063】
例えば、レンズ支持部材41Aを下方に変位させて被検レンズL1を配置した後に、レンズ支持部材41Aを測定軸MA1,MA2に沿って所望の高さまで上方に変位させるようにすれば、たとえ各非接触型測長計2a,2bの測定可能範囲が比較的狭く、センサヘッド22a,22b間の距離D(図2参照)が比較的短い場合でも、レンズ支持部材41Aが距離Dの中央あたりに固定されている場合に比べて、被検レンズL1をレンズ支持部材41A上に容易に配置することできる。
【0064】
芯出し部5Aは、被検レンズL1をその厚さ方向両側から挟み込んで固定することにより被検レンズL1の芯出しを可能にする一対のヤトイ、すなわち上側ヤトイ51aと下側ヤトイ51bとを有している。これら一対のヤトイ51a,51bの各々はリング状を呈しており、その厚さ、内径、外径等は、被検レンズL1の有効径の外側で被検レンズL1に当接するように、被検レンズL1の形状および大きさに応じて適宜選定されている。形状および大きさが異なる複数種類のヤトイ51a,51bを予め用意し、被検レンズL1の形状および大きさに応じてヤトイ51a,51bを所望のものに交換できるように芯出し部5Aを構成してもよい。
【0065】
また、芯出し部5Aは、上記一対のヤトイ51a,51bに加えて、ヤトイ軸52aと、ヤトイ軸52aの外周にヤトイ軸52aと同軸に設けられた筒状のヤトイホルダー53aと、ヤトイ軸52bと、ヤトイ軸52bの外周にヤトイ軸52bと同軸に設けられた筒状のヤトイホルダー53bと、各ヤトイ軸52a,52bを測定軸MA1,MA2と同軸に保持するヤトイ軸支持部54も有している。ヤトイホルダー53aはヤトイ軸52aに沿って滑動可能かつ位置固定可能に設けられており、ヤトイホルダー53aの下端に上側ヤトイ51aがヤトイホルダー53aと同軸に取り付けられている。同様に、ヤトイホルダー53bはヤトイ軸52bに沿って滑動可能かつ位置固定可能に設けられており、ヤトイホルダー53bの上端に下側ヤトイ51bがヤトイホルダー53bと同軸に取り付けられている。
【0066】
したがって、ヤトイ軸52aに沿ってヤトイホルダー53aを滑動させることにより、上側ヤトイ51aを被検レンズL1の上方から被検レンズL1のレンズ面Laに当接させることができる。同様に、ヤトイ軸52bに沿ってヤトイホルダー53bを滑動させることにより、下側ヤトイ51bを被検レンズL1の下方から被検レンズL1のレンズ面Lbに当接させることができる。なお、ヤトイ軸支持部54は、測長計支持部3Bの上方に配置された上側ヤトイ軸保持部54aと、測長計支持部3Bの下方に配置された下側ヤトイ軸保持部54bと、これらのヤトイ軸保持部54a,54bを互いに連結させる連結部54cとを有しており、図示を省略したジグにより測長計支持部3Bの下側支持部36に固定されている。
【0067】
上述のように構成されたレンズ中心厚測定器1Cによる被検レンズL1のレンズ中心厚の測定は、本発明のレンズ中心厚測定方法に従って行うことができる。この場合のレンズ中心厚測定方法は、実施の形態2で説明したレンズ中心厚測定方法と同様のものとすることもできるし、レンズ中心厚が既知のマスターレンズを利用して被検レンズの中心厚を求めるものとすることもできる。以下、本発明のレンズ中心厚測定方法の更に他の例について、図7を参照して詳述する。
【0068】
図7は、本発明のレンズ中心厚測定方法によるレンズ中心厚の測定手順の更に他の例を示すフローチャートである。図示の手順は、レンズ中心厚が既知のマスターレンズを利用して図6のレンズ中心厚測定器1Cにより被検レンズL1(図6参照)のレンズ中心厚を測定する際の手順に相当し、図7に示すステップS1,S11,S12,S21〜S25,S2,S31,S3〜S6のうちのステップS1からステップS4までを図示の順番で順次行うことにより、被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。ステップS1,S11,S12,S2,S3は図5に示したS1,S11,S12,S2,S3と同様にして行われるので、ここではステップS21〜S25,S31,S4についてのみ詳述する。
【0069】
ステップS21は、センサヘッド22a,22b間の距離D(図5参照)を測定するステップS12に続いて行われるステップであり、このステップS21では、レンズ中心厚が既知のマスターレンズをレンズ保持部4B(図6参照)に配置する。具体的には、マスターレンズの光学中心およびその周辺を露出させてマスターレンズをレンズ支持部材41A(図6参照)上に配置する。このとき、必要に応じて、レンズ支持部材41Aの高さを位置調整機構PR(図6参照)により所望の高さに予め調整しておく。
【0070】
ステップS22では、必要に応じて測定者が位置調整機構PRを手作業で操作してレンズ支持部材41Aを変位させることにより、レンズ保持部4Bに配置されたマスターレンズの位置を測定軸M1,M2に沿って所望位置まで変位させる。また、ステップS23では、一対のヤトイ51a,51b(図6参照)それぞれの位置を測定者が手作業で調整し、レンズ支持部材41A上に配置されているマスターレンズをその厚さ方向両側から一対のヤトイ51a,51bで挟み込んで固定することにより芯出しして、マスターレンズの光軸を測定軸MA1,MA2に一致させる。
【0071】
例えば、下側ヤトイ51bをマスターレンズでの下側(非接触型測長計2b側)のレンズ面に当接させた後に、上側ヤトイ51aをマスターレンズでの上側(非接触型測長計2a側)のレンズ面に当接させてマスターレンズを各ヤトイ51a,51bで挟み込むことにより芯出しして、マスターレンズの光軸を測定軸MA1,MA2に一致させる。マスターレンズの形状および大きさが被検レンズL1(図6参照)の形状および大きさと同じである場合には、下側ヤトイ51bの上面での内側稜部がその全周に亘って下側のレンズ面に接触し、上側ヤトイ51aの下面での外側稜部がその全周に亘って上側のレンズ面に接触するようにマスターレンズの位置を調整することにより、マスターレンズの光軸を測定軸MA1,MA2に一致させることができる。
【0072】
ステップS24では、各非接触型測長計2a,2bによりマスターレンズまでの距離を測定する(第1測定工程)。具体的には、マスターレンズの各レンズ面までの距離を測定する。非接触型測長計2aは、そのセンサヘッドからマスターレンズでの上側のレンズ面までの距離を測定し、非接触型測長計2bは、そのセンサヘッドからマスターレンズでの下側のレンズ面までの距離を測定する。
【0073】
ステップS25では、レンズ保持部4Bからマスターレンズを取り外す。次いで、被検レンズL1をレンズ保持部4Bに配置するステップS2を行ってから、ステップS31に移行する。
【0074】
このステップS31では、各ヤトイ51a,51bの位置を測定者が手作業で調整し、レンズ支持部材41Aに配置されている被検レンズL1をその厚さ方向両側から一対のヤトイ51a,51bで挟み込んで固定することにより、被検レンズL1の光軸を測定軸MA1,MA2に一致させる。すなわち、被検レンズL1を芯出しする。被検レンズL1の芯出しは、上述したステップS23でのマスターレンズの芯出しと同様にして行われる。次いで、各非接触型測長計2a,2bのセンサヘッドにより被検レンズL1までの距離、具体的には各センサヘッドから該センサヘッドに対向するレンズ面までの距離を測定するステップS3(第2測定工程)を行ってから、ステップS4に移行する。
【0075】
ステップS4では、各非接触型測長計2a,2bが測定したマスターレンズまでの距離の和と、各非接触型測長計2a,2bが測定した被検レンズL1までの距離の和との差を測定者が求め、この差とマスターレンズのレンズ中心厚とから被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。具体的には、マスターレンズまでの距離の和の方が被検レンズL1までの距離の和よりも大きいときには、これらの和の差をとってその絶対値をマスターレンズのレンズ中心厚に加算することで被検レンズL1のレンズ中心厚を求め、マスターレンズまでの距離の和の方が被検レンズL1までの距離の和よりも小さいときには、これらの和の差をとってその絶対値をマスターレンズのレンズ中心厚から差し引くことで被検レンズL1のレンズ中心厚を求める。
【0076】
この後は、被検レンズL1をレンズ保持部4Bから取り外すステップS5、およびレンズ中心厚を測定すべき別の被検レンズがあるか否かを判断するステップS6を順次行い、レンズ中心厚を測定すべき別の被検レンズがあるときにはステップS11に戻ってステップS11以降を繰り返す。
【0077】
上述のようにして被検レンズL1のレンズ中心厚を測定することができるレンズ中心厚測定器1Cでは、実施の形態2のレンズ中心厚測定器1Bにおけるのと同様の理由から、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する場合に比べて、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚をその外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易である。また、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を正確に測定するために行われる測定端子の交換作業が不要であるので、測定の再現性を向上させ易いと共に、測定端子の保管管理も不要である。
【0078】
そして、光学方式の非接触型測長計を被検レンズの片側に1台のみ配置してレンズ中心厚を測定する場合に比べ、厚肉の被検レンズでもそのレンズ中心厚を正確に測定し易い。また、距離調整機構DRによりセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することができるので、レンズ中心厚測定器1Cでは、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を測定可能な利便性が高いものを構成し易い。また、位置調整機構PRを備えているので、各非接触型測長計2a,2bとして測定可能範囲が比較的狭いものを用いた場合でも、被検レンズL1をレンズ支持部材41A上に容易に配置することができる。
【0079】
さらには、芯出し部5Aにより被検レンズL1の光軸を測定軸MA1,MA2に容易に一致させることができるので、実施の形態1,2で説明したレンズ中心厚測定器1A,1Bに比べても被検レンズL1のレンズ中心厚を正確に測定し易い。なお、被検レンズL1の形状および大きさに応じて各ヤトイ51a,51bを所望の形状および大きさのものに交換できるように芯出し部5Aを構成した場合でも、各ヤトイ51a,51bは接触型測定器で用いられる測定端子に比べて大幅に大きいので、ヤトイの交換時にヤトイの取付け精度が変わったり測定軸MA1,MA2が互いにずれたりしてしまうことが起こり難い。
【0080】
(実施の形態4)
本発明のレンズ中心厚測定器には、各非接触型測長計の測定軸と直交する方向に配置した一対のヤトイで被検レンズをその径方向外側から挟み込んで固定することにより、被検レンズを芯出しすることができる芯出し部を設けることもできる。この芯出し部を設けた場合、被検レンズとしては、光軸と幾何学的中心とが一致ないし略一致するように成形したものが用いられる。
【0081】
ここで、光軸と幾何学的中心とが略一致した被検レンズとは、レンズ中心厚測定器に用いられている非接触型測長計の分解能の範囲内で光軸と幾何学的中心とがずれている被検レンズや、レンズ中心厚を測定するにあたって許容可能な測定誤差範囲内で光軸と幾何学的中心とがずれている被検レンズを含む。
【0082】
図8は、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたレンズ中心厚測定器の他の例を示す概略図であり、図9は、図8に示した芯出し部と被検レンズとを概略的に示す上面図である。図8に示すレンズ中心厚測定器1Dは、図6に示したレンズ保持部4Bに代えてレンズ保持部4Cを備えているという点、および図6に示した芯出し部5Aに代えて芯出し部5Bを備えているという点をそれぞれ除き、図6に示したレンズ中心厚測定器1Cと同様の構成を有している。図8に示す構成要素のうちで図6に示した構成要素と共通するものについては、図6で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0083】
上記のレンズ保持部4Cは、図6に示したレンズ支持部材41Aに代えてレンズ支持部材41Bを有している。このレンズ支持部材41Bは、所定の形状および大きさ(径)を有する貫通孔Thが設けられた1つの平板状部材であり、測定軸MA1,MA2が貫通孔Thを通るように各連結部43a,43bによりガイドシャフト42a,42bに連結されて、位置調整機構PRを構成している。レンズ支持部材41Bにおける貫通孔Thの大きさは、光軸と幾何学的中心とが一致ないし略一致するように成形された被検レンズL2での有効径以上とすることが好ましい。
【0084】
芯出し部5Bは、被検レンズL2をその径方向外側から挟み込んで固定することにより被検レンズL2の芯出しを可能にする一対のヤトイ、すなわち移動ヤトイ56aと固定ヤトイ56bとを有している。これら移動ヤトイ56aと固定ヤトイ56bとは、各々の中心軸CA(水平軸;図9参照)を一致させてレンズ支持部材41B上に配置されている。移動ヤトイ56aは、レンズ支持部材41Bに設けられたガイド部(図示せず)に沿って各測定軸MA1,MA2と直交する方向に滑動可能かつ位置固定可能であり、当該方向は中心軸CAの延在方向と平行である。一方、固定ヤトイ56bには、図9に示すように調整穴Ahが形成されており、調整穴Ahを通ってレンズ支持部材41Bに固定されるねじ等の固定具(図示せず)によりレンズ支持部材41B上に固定されている。ただし、調整穴Ahは中心軸CAに沿った方向に長い長穴であり、調整穴Ah内での上記の固定具の相対的な位置を適宜変えて固定ヤトイ56bをレンズ支持部材41Bに固定することにより、固定ヤトイ56bの取付け位置を変更することができる。
【0085】
また、図9に示すように、移動ヤトイ56aにはV字状の切欠き部NP1が設けられており、固定ヤトイ56bにはV字状の切欠き部NP2が設けられている。これらの切欠き部NP1,NP2が被検レンズL2の外周面に当接される。被検レンズL2の大きさに応じて固定ヤトイ56bの取付け位置を適宜変更し、移動ヤトイ56aを適宜変位させて移動ヤトイ56aと固定ヤトイ56bとで被検レンズL2をその径方向外側から挟み込んで固定することにより、被検レンズL2を芯出することができる。
【0086】
上述の構成を有するレンズ中心厚測定器1Dを用いてのレンズ中心厚の測定は、例えば実施の形態2または実施の形態3で説明した本発明のレンズ中心厚測定方法に準じて行うことができる。このレンズ中心厚測定器1Dでは、実施の形態3のレンズ中心厚測定器1Cにおけるのと同様の理由から、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する場合に比べて、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚をその外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易である。また、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を正確に測定するために行われる測定端子の交換作業が不要であるので、測定の再現性を向上させ易いと共に、測定端子の保管管理も不要である。
【0087】
そして、光学方式の非接触型測長計を被検レンズの片側に1台のみ配置してレンズ中心厚を測定する場合に比べ、厚肉の被検レンズでもそのレンズ中心厚を正確に測定し易い。また、距離調整機構DRによりセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することができるので、レンズ中心厚測定器1Dでは、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を測定可能な利便性が高いものを構成し易い。また、位置調整機構PRを備えているので、各非接触型測長計2a,2bとして測定可能範囲が比較的狭いものを用いた場合でも、被検レンズL1をレンズ支持部材41B上に容易に配置することができる。さらには、芯出し部5Bにより被検レンズL2の光軸を測定軸MA1,MA2に容易に一致させることができるので、実施の形態1,2で説明したレンズ中心厚測定器1A,1Bに比べても被検レンズL2のレンズ中心厚を正確に測定し易い。
【0088】
(実施の形態5)
本発明のレンズ中心厚測定器には、被検レンズが固定される1つのレンズ固定部を有する芯出し部を設けることもできる。上記のレンズ固定部は、パッシブアライメントにより被検レンズを芯出しするための基準部位を有する。例えば、レンズ固定部に所定の形状公差の下に形成された少なくとも1つの側面や、レンズ固定部に所定の形状公差、位置公差の下に形成された少なくとも1つの凸部ないし凹部を上記の基準部位とすることができる。この芯出し部を設けた場合、被検レンズとしては、光軸と幾何学的中心とが一致ないし略一致するように成形したものが用いられる。
【0089】
図10は、被検レンズを芯出するための芯出し部を備えたレンズ中心厚測定器の更に他の例を示す概略図である。図10に示すレンズ中心厚測定器1Eは、図8に示したレンズ保持部4Cに代えてレンズ保持部4Dを備えているという点、および図8に示した芯出し部5Bに代えて芯出し部5Cを備えているという点をそれぞれ除き、図8に示したレンズ中心厚測定器1Dと同様の構成を有している。図10に示す構成要素のうちで図8に示した構成要素と共通するものについては、図8で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0090】
上記のレンズ保持部4Dは、図8に示したレンズ保持部材41Bに代えて、レンズ保持部材41Bから移動ヤトイ56a(図8参照)用のガイド部を省略した構成のレンズ保持部材41Cを有しているという点を除き、図8に示したレンズ保持部4Cと同様の構成を有している。
【0091】
一方、芯出し部5Cは、被検レンズL2をレンズ保持部4D上に固定する1つのレンズ固定部58を有している。このレンズ固定部58は、上端面が被検レンズL2での1つのレンズ面に対応した曲面形状に成形されている中空の円筒体であり、その中心軸(上下軸)を測定軸MA1,MA2に一致させてレンズ支持部材41C上に固定されている。レンズ固定部58での上端面には、被検レンズL2を固定するための粘着剤が塗布されている。また、レンズ固定部58の外径は被検レンズL2の外径と一致しており、レンズ固定部58の外周面全体が上述の基準部位として機能する。したがって、被検レンズL2の外周面がレンズ固定部58の外周面と全周に亘って一続きとなるように被検レンズL2をレンズ固定部58の上端面に固定することにより、被検レンズL2を芯出しして被検レンズL2の光軸を測定軸MA1,MA2に一致させることができる。
【0092】
上述の構成を有するレンズ中心厚測定器1Eを用いてのレンズ中心厚の測定は、例えば実施の形態2または実施の形態3で説明した本発明のレンズ中心厚測定方法に準じて行うことができる。このレンズ中心厚測定器1Eでは、実施の形態4のレンズ中心厚測定器1Dにおけるのと同様の理由から、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を測定する場合に比べて、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚をその外観品質を低下させることなく正確に測定することが容易である。また、接触型測定器を用いてレンズ中心厚を正確に測定するために行われる測定端子の交換作業が不要であるので、測定の再現性を向上させ易いと共に、測定端子の保管管理も不要である。
【0093】
そして、光学方式の非接触型測長計を被検レンズの片側に1台のみ配置してレンズ中心厚を測定する場合に比べ、厚肉の被検レンズでもそのレンズ中心厚を正確に測定し易い。また、距離調整機構DRによりセンサヘッド22a,22b間の距離Dを調整することができるので、レンズ中心厚測定器1Eでは、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を測定可能な利便性が高いものを構成し易い。また、位置調整機構PRを備えているので、各非接触型測長計2a,2bとして測定可能範囲が比較的狭いものを用いた場合でも、被検レンズL1をレンズ支持部材41B上に容易に配置することができる。さらには、芯出し部5Cにより被検レンズL2の光軸を測定軸MA1,MA2に容易に一致させることができるので、実施の形態1,2で説明したレンズ中心厚測定器1A,1Bに比べても被検レンズL2のレンズ中心厚を正確に測定し易い。
【0094】
以上、本発明のレンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上記の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態1〜5の各々で説明したレンズ中心厚測定器は、2台の非接触型測長計が上下方向に配置される縦型のものであるが、本発明のレンズ中心厚測定器は、2台の非接触型測長計が左右方向に配置される横型のものとすることもできる。横型にする場合には、被検レンズの落下を防止する落下防止部をレンズ保持部に設けることが好ましい。
【0095】
センサヘッド間の距離を調整する距離調整機構や、レンズ保持部に保持された被検レンズの位置をセンサヘッドの測定軸に沿ってレンズ支持部材ごと変位させる位置調整機構は、手動式および電動式のいずれであってもよく、その構造は適宜変更可能である。必要に応じて、レンズ保持部あるいはレンズ支持部材の位置をセンサヘッドの測定軸と直交する方向に変位させる第2位置調整機構や、センサヘッドまたはレンズ保持部もしくはレンズ支持部材の傾き角を変えることで測定軸の相対的な傾き角を変化させる手動式または電動式の傾き調整機構を付加してもよい。
【0096】
実施の形態3〜5の各々で説明したレンズ中心厚測定器では、レンズ保持部に保持された被検レンズの位置をセンサヘッドの測定軸に沿ってレンズ支持部材ごと変位させる位置調整機構と、被検レンズの光軸をセンサヘッドの測定軸に一致させるための芯出し部とが併設されているが、これら位置調整機構と芯出し部とを互いに併設するか否かは適宜選択可能である。
【0097】
図11は、位置調整機構が芯出し部と併設されていないレンズ中心厚測定器の一例を示す概略図である。同図に示すレンズ中心厚測定器1Fは、図6に示したレンズ中心厚測定器1Cから芯出し部5Aを取り除いたものに相当する。図11に示す各構成要素については、図6を参照して既に説明しているので、ここではその説明を省略する。なお、上記の位置調整機構は、センサヘッド間の距離を調整する距離調整機を有していないレンズ中心厚測定器に設けることも可能である。ただし、形状や厚みが異なる種々の被検レンズのレンズ中心厚を測定し易いレンズ中心厚測定器を得るという観点からは、位置調整機構と距離調整機構とを互いに併設した方が好ましい。
【0098】
また、実施の形態1〜5の各々で説明したレンズ中心厚測定器は、各非接触型測長計の測定結果とセンサヘッド間の距離の値とを用いて測定者が被検レンズのレンズ中心厚を算出するものであるが、本発明のレンズ中心厚測定器は、各非接触型測長計の測定結果とセンサヘッド間の距離の値とを用いて被検レンズのレンズ中心厚を算出する演算部を備えたものとすることもできる。
【0099】
図12は、被検レンズのレンズ中心厚を算出する演算部を備えたレンズ中心厚測定器の一例を示す概略図である。同図に示すレンズ中心厚測定器1Gは、図2に示したレンズ中心厚測定器1Aに演算部61、入力部62、および出力部63を付加した構成を有する。演算部61は、各非接触型測長計2a,2bの測長計本体21a,21bに接続されて、これら測長計本体21a,21bの各々から被検レンズL1までの距離の測定データを取得し、取得した測定データと入力部62から入力されたセンサヘッド22a,22b間の距離D(図2参照)の値とを用いて被検レンズL1のレンズ中心厚を算出して出力部63に出力させる。
【0100】
このレンズ中心厚測定器1Gを用いれば、ヒューマンエラーが起こり難くなるので、レンズ中心厚の測定結果の信頼性が向上する。なお、実施の形態2で説明した測距部を備えたレンズ中心厚測定器に上述の演算部61、入力部62、および出力部63を具備させてもよい。この場合には、演算部61を測距部にも接続し、測距部から取得したセンサヘッド22a,22b間の距離Dの測定データと各測長計本体21a,21bから取得した被検レンズL1までの距離の測定データとを用いて演算部61が被検レンズL1のレンズ中心厚を算出し、その結果を出力部63に出力させるように構成することができる。
【0101】
また、本発明のレンズ中心厚測定方法は、実施の形態1,2で説明した方法におけるようにマスターレンズのレンズ中心厚の値を用いることなく被検レンズのレンズ中心厚を求める方法であってもよいし、実施の形態3で説明した方法におけるようにマスターレンズのレンズ中心厚の値を用いて被検レンズのレンズ中心厚を求める方法であってもよい。どちらの方法で被検レンズのレンズ中心厚を求めるかは、使用するレンズ中心厚測定器の構成によらず、適宜選択可能である。本発明のレンズ中心厚測定器およびレンズ中心厚測定方法の各々については、上述した形態以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G レンズ中心厚測定器
2a,2b 非接触型測長計
3A,3B 測長計支持部
4A,4B,4C,4D レンズ保持部
5A,5B,5C 芯出し部
22a,22b センサヘッド
38 調整ねじ
41A,41B,41C レンズ支持部材
51a 上側ヤトイ
51b 下側ヤトイ
56a 移動ヤトイ
56b 固定ヤトイ
58 レンズ固定部
L1,L2 被検レンズ
DR 距離調整機構
PR 位置調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距用のセンサヘッドを有する2台の非接触型測長計と、
前記2台の非接触型測長計それぞれの前記センサヘッドを互いに対向させ、各センサヘッドの測定軸を互いに一致させて支持する測長計支持部と、
前記センサヘッド間に設けられ、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを保持するレンズ保持部と、を備える、レンズ中心厚測定器。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ中心厚測定器において、
前記被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させるための芯出し部を更に有する、レンズ中心厚測定器。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ中心厚測定器において、
前記芯出し部は、前記測定軸に中心軸を一致させて配置された一対のヤトイを有し、該一対のヤトイにより前記被検レンズの厚さ方向両側から該被検レンズを挟み込んで固定することにより、前記被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させる、レンズ中心厚測定器。
【請求項4】
請求項2に記載のレンズ中心厚測定器において、
前記芯出し部は、前記測定軸と直交する方向に配置された一対のヤトイを有し、該一対のヤトイにより前記被検レンズの径方向外側から該被検レンズを挟み込んで固定すること
により、前記被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させる、レンズ中心厚測定器。
【請求項5】
請求項2に記載のレンズ中心厚測定器において、
前記芯出し部は、前記被検レンズを前記レンズ保持部上に固定するレンズ固定部を有し、
前記レンズ固定部は、前記被検レンズの光軸をパッシブアライメントにより前記測定軸に一致させるための基準部位を有する、レンズ中心厚測定器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のレンズ中心厚測定器において、
前記レンズ保持部に保持された前記被検レンズの位置を前記測定軸に沿って変位させる位置調整機構を更に有する、レンズ中心厚測定器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載のレンズ中心厚測定器において、
前記センサヘッド間の距離を調整する距離調整機構を更に有する、レンズ中心厚測定器。
【請求項8】
2台の非接触型測長計が有するセンサヘッドであって、それぞれの測定軸を互いに一致させて互いに対向配置された各センサヘッドの間に、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを配置する工程と、
前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記被検レンズまでの距離を測定する工程と、
前記2台の非接触型測長計の各々が測定した前記被検レンズまでの距離の和を前記センサヘッド間の距離から差し引いて、前記被検レンズのレンズ中心厚を求める工程と、を含む、レンズ中心厚測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズ中心厚測定方法において、
前記センサヘッド間の距離を測定する工程を更に含む、レンズ中心厚測定方法。
【請求項10】
2台の非接触型測長計が有するセンサヘッドであって、それぞれの測定軸を互いに一致させて互いに対向配置された各センサヘッドの間に、レンズ中心厚が既知のマスターレンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該マスターレンズの光軸を前記測定軸に一致させて該マスターレンズを配置する工程と、
前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記マスターレンズまでの距離を測定する第1測定工程と、
前記センサヘッド間に、被検レンズの少なくとも光学中心を露出させて且つ該被検レンズの光軸を前記測定軸に一致させて該被検レンズを配置する工程と、
前記2台の非接触型測長計の各々により、前記センサヘッドから前記被検レンズまでの距離を測定する第2測定工程と、
前記第1測定工程で測定した前記マスターレンズまでの距離の和と、前記第2測定工程で測定した前記被検レンズまでの距離の和との差を求め、該差と前記マスターレンズのレンズ中心厚とから前記被検レンズのレンズ中心厚を求める工程と、を含む、レンズ中心厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−145135(P2011−145135A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5212(P2010−5212)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】