レーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器
【課題】基板の内部に形成された改質層の形成状態を容易に検査することができるレーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器を提供する。
【解決手段】第1基板11の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って、第1基板11の内部に改質層Rを形成すべく、レーザ光44を照射するレーザ照射工程と、第1基板11に向けて超音波99を送信して、第1基板11の内部で反射した反射波W1,W2を受信する超音波送受信工程(図7(a))と、受信した反射波W1,W2の電気的特性に基づいて、改質層Rが形成されるべき領域に改質層Rが形成されていない欠陥部分Fがあるか否かを検査する検査工程(図7(b))とを含む。
【解決手段】第1基板11の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って、第1基板11の内部に改質層Rを形成すべく、レーザ光44を照射するレーザ照射工程と、第1基板11に向けて超音波99を送信して、第1基板11の内部で反射した反射波W1,W2を受信する超音波送受信工程(図7(a))と、受信した反射波W1,W2の電気的特性に基づいて、改質層Rが形成されるべき領域に改質層Rが形成されていない欠陥部分Fがあるか否かを検査する検査工程(図7(b))とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を照射して基板を切断するレーザスクライブ方法が知られている。この方法では、基板の内部にレーザ光を集光させ、当該集光点の部分に改質層を形成した後、基板に外力を加えることにより、改質層を起点として基板を切断するというものである。改質層の形成方法としては、例えば、特許文献1に示すように、基板に設けられた切断予定ラインに対して基板の厚み方向に集光点の位置を変え、複数回レーザ光走査を行って、複数の改質層を重ねて形成する方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−205180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該改質層は基板の内部に形成されるため、外観から改質層の形成状態を確認することは困難であった。また、当該改質層が適正に形成されずに基板を切断すると、チッピング等の発生により基板に損傷を与える恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、基板の内部に形成された改質層の形成状態を容易に検査することができるレーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、基板の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインに沿って、基板の内部に改質層を形成すべく、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、基板に向けて超音波を送信して、基板の内部で反射した反射波を受信する超音波送受信工程と、受信した反射波の電気的特性に基づいて、改質層で反射した反射波と改質層以外の個所で反射した反射波とを識別して、切断予定ラインに沿った改質層が形成されるべき領域に、改質層が形成されていない欠陥部分があるか否かを検査する検査工程とを含むことを要旨とする。
【0007】
本発明に係るレーザスクライブ方法によれば、基板に設けられた切断予定ラインに沿って、レーザ光を照射することにより改質層が形成される。そして、当該基板に向けて超音波が送信され、基板の内部で反射した反射波が受信される。当該反射波の電気特性に基づいて、改質層で反射した反射波と改質層以外の個所で反射した反射波とが識別される。従って、反射波を識別することにより、基板の内部に形成された改質層の形成状態を容易に検査することができる。
【0008】
本発明のレーザスクライブ方法の超音波送受信工程では、切断予定ラインに沿って、超音波を送信するとともに、基板の内部で反射した反射波を受信してもよい。
【0009】
これによれば、切断予定ラインに沿って超音波の送受信を行うので、切断予定ラインに沿って形成されるべき改質層の形成状態を効率良く検査することができる。
【0010】
本発明のレーザスクライブ方法の超音波送受信工程では、基板の内部の一定の深さにおける仮想平面領域に超音波を発信するとともに、仮想平面領域で反射した反射波を受信してもよい。
【0011】
これによれば、基板の一定の深さ位置に超音波の送受信を行うことにより、基板の深さ方向における改質層の形成状態を容易に検査することができる。
【0012】
本発明のレーザスクライブ方法の検査工程において、基板の改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が無いと判断した後に、基板に外力を与え、基板を切断する基板切断工程を有してもよい。
【0013】
これによれば、検査工程において、改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が無いと判断された基板に対して、外力を加えるので、基板は、改質層に倣って切断され、切断した際、チッピングの発生を抑えることができる。
【0014】
本発明のレーザスクライブ方法の検査工程において、基板の改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が有ると判断した後に、基板を保留または保留された基板の欠陥部分に対して、レーザ光を照射してもよい。
【0015】
これによれば、検査工程において、改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が有ると判断された基板は、一旦保留されるので、良品基板と識別することができる。また、保留された基板の欠陥部分に対して、再度、レーザ光を照射することにより、当該欠陥部分に改質層を形成することができるので、容易に修復作業ができ、歩留りを向上させることができる。
【0016】
本発明の電気光学装置は、上記のレーザスクライブ方法によって分割されたことを要旨とする。
【0017】
本発明に係る電気光学装置によれば、チッピングの発生を抑えた電気光学装置を提供することができる。
【0018】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを要旨とする。
【0019】
本発明による電子機器によれば、品質の良い装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(マザー基板の構成)
まず、マザー基板の構成について説明する。図1は、マザー基板の構成を示し、図1(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図を示す。
【0022】
図1(a),(b)において、マザー基板10は、ウエハ形状であり、第1基板11と第2基板12とが接着され、複数の電気光学装置としての液晶表示パネル20で構成されている。1つの液晶表示パネル20は、マザー基板10の液晶表示パネル20の区画形成領域であって、第1基板11に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って切断して、マザー基板10から分割される。
【0023】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。図2は、電気光学装置としての液晶材表示パネルの構成を示し、図2(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のB−B線で切った概略断面図を示す。
【0024】
図2において、液晶表示パネル20は、図2(a)および(b)に示すように、TFT(Thin Film Transistor)素子23を有する第1基板11と、対向電極26を有する第2基板12と、シール材24によって接着された両基板11,12の隙間に充填された液晶材25とを備えている。第1基板11は第2基板12より一回り大きく額縁状に張り出した状態となっており、当該張り出した第1基板11の面には、パターンとしての端子部11aが形成されている。
【0025】
第1基板11は、厚みおよそ1.2mmの石英ガラス基板を用いており、その表面には画素を構成する画素電極(図示省略)と、3端子のうちの一つが画素電極に接続されたTFT素子23が形成されている。TFT素子23の残りの2端子は、画素電極を囲んで互いに絶縁状態で格子状に配置されたデータ線(図示省略)と走査線(図示省略)とに接続されている。データ線は、Y軸方向に引き出されて端子部11aに形成されたデータ線駆動回路部29に接続されている。走査線は、X軸方向に引き出され、左右の額縁領域に形成された2つの走査線駆動回路部33に個々に接続されている。各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33の入力側配線は、端子部11aに沿って配列した実装端子31にそれぞれ接続されている。端子部11aとは反対側の額縁領域には、2つの走査線駆動回路部33を繋ぐ配線32が設けられている。
【0026】
第2基板12は、厚みおよそ1.2〜1.1mmの透明なガラス基板を用いており、共通電極としての対向電極26が設けられている。対向電極26は、第2基板12の四隅に設けられた上下導通部34を介して第1基板11側に設けられた配線と導通しており、当該配線も端子部11aに設けられた実装端子31に接続されている。
【0027】
液晶材25に面する第1基板11の表面および第2基板12の表面には、それぞれ配向膜27,28が形成されている。
【0028】
液晶表示パネル20は、外部駆動回路と電気的に繋がる中継基板が実装端子31に接続される。そして、外部駆動回路からの入力信号が各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33に入力されることにより、TFT素子23が画素電極ごとにスイッチングされ、画素電極と対向電極26との間に駆動電圧が印加されて表示が行われる。
【0029】
(レーザ照射装置の構成)
次に、マザー基板10に形成された液晶表示パネル20の区画形成領域にあたる切断予定ラインDx,Dyに沿ってレーザ光を照射して、当該レーザ光が照射された部分に改質層を形成するためのレーザ照射装置の構成について説明する。
【0030】
図3は、レーザ照射装置の構成を示す模式図である。図3において、レーザ照射装置40は、パルスレーザ光を出射するレーザ光源41と、出射されたパルスレーザ光を反射するダイクロイックミラー42と、反射したパルスレーザ光を集光する集光手段としての集光レンズ43とを備えている。また、基板10を載置するステージ47と、ステージ47を集光レンズ43に対してX,Y軸方向に移動させる移動手段としてのX軸スライド部48およびY軸スライド部51とを備えている。また、ステージ47に載置された基板10に対して集光レンズ43のZ軸方向の位置を変えて、パルスレーザ光の集光点の位置を調整する調整手段としてのZ軸スライド機構54を備えている。さらに、ダイクロイックミラー42を挟んで集光レンズ43と反対側に位置する撮像装置55を備えている。
【0031】
レーザ照射装置40は、上記各構成を制御するメインコンピュータ60を備えており、メインコンピュータ60には、CPUや各種メモリの他に撮像装置55が撮像した画像情報を処理する画像処理部61を有している。撮像装置55は、同軸落射型光源とCCD(固体撮像素子)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した可視光は、集光レンズ43を透過して焦点を結ぶ。
【0032】
メインコンピュータ60には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部63とレーザ加工時の各種情報を表示する表示部64が接続されている。また、レーザ光源41の出力やパルス幅、パルス周期を制御するレーザ制御部66と、Z軸スライド機構54を駆動して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部67とが接続されている。さらに、X軸スライド部48とY軸スライド部51をそれぞれレール68,69に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部70が接続されている。
【0033】
集光レンズ43をZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構54には、移動距離を検出可能な位置センサ(図示せず)が内蔵されており、レンズ制御部67は、この位置センサの出力を検出して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御可能となっている。したがって、撮像装置55の同軸落射型光源から出射した可視光の焦点が基板10の表面と合うように集光レンズ43をZ軸方向に移動させれば、基板10の厚みを計測することが可能である。
【0034】
レーザ光源41は、例えばチタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザである。この場合、パルスレーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ20nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、パルス周期は1kHz、出力はおよそ700mWである。
【0035】
集光レンズ43は、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。集光レンズ43はZ軸スライド機構54から延びたスライドアーム54aによって支持されている。
【0036】
なお、本実施形態では、ステージ47は、Y軸スライド部51に支持されているが、X軸スライド部48とY軸スライド部51との位置関係を逆転させてX軸スライド部48に支持される形態としてもよい。また、ステージ47をθテーブル(図示せず)を介してY軸スライド部51に支持することが好ましい。これによれば、基板10を光軸41aに対してより垂直な状態とすることが可能である。
【0037】
(超音波走査装置の構成)
次に、マザー基板10に向けて超音波を送信するとともに、マザー基板10の内部で反射した反射波を受信することにより、マザー基板10の内部に形成された改質層の形成状態を検査するための超音波走査装置の構成について説明する。
【0038】
図4は、超音波走査措置の構成を示す模式図である。図4において、超音波走査装置80は、超音波99の送受信を行う超音波センサ81を備えている。超音波センサ81は、超音波の送受信を行うための圧電素子であり、当該圧電素子にパルス状の電圧を加えて振動させることにより超音波の送信を行い、超音波の振動により発生した歪を電圧として計測することにより受信を行うことができる。超音波センサ81の超音波発信部には、音響レンズ(図示せず)が設置されており、送信される超音波99を収束させることができるようになっている。
【0039】
超音波走査装置81には、マザー基板10を載置するステージ82と、ステージ82を超音波センサ81に対してX,Y軸方向に移動させる移動手段としてのX軸スライド部85およびY軸スライド部83とを備えている。また、ステージ82に載置されたマザー基板10に対して超音波センサ81のZ軸方向の位置を変えて、超音波99の焦点の位置を調整する調整手段としてのZ軸スライド機構87を備えている。
【0040】
超音波走査装置80は、上記各構成を制御するメインコンピュータ90を備えており、メインコンピュータ90には、CPUや各種メモリの他に超音波センサ81が受信した反射波を輝度変換処理する画像処理部91を有している。
【0041】
また、メインコンピュータ90には、超音波や検査位置条件等のデータを入力する入力部93と超音波の送受信時の各種情報を表示する表示部92が接続されている。また、超音波センサ81に対するパルス状の電圧や送受信波の増幅を制御する超音波制御部88と、Z軸スライド機構87を駆動して超音波センサ81のZ軸方向の位置を制御するセンサ位置制御部94とが接続されている。さらに、X軸スライド部85とY軸スライド部83をそれぞれレール84,86に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部95が接続されている。
【0042】
また、超音波制御部88には、オシロスコープ89が接続されており、超音波センサ99の送信波や受信波、その他超音波設定条件等を確認することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ステージ82は、Y軸スライド部83に支持されているが、X軸スライド部85とY軸スライド部83との位置関係を逆転させてX軸スライド部85に支持される形態としてもよい。また、ステージ82をθテーブル(図示せず)を介してY軸スライド部83に支持することが好ましい。これによれば、マザー基板10を超音波センサ81の超音波99の送受信面に対してより平行な状態とすることが可能である。
【0044】
(レーザスクライブ方法)
次に、レーザスクライブ方法について説明する。図5は、レーザスクライブ方法を示すフローチャート図である。また、図6はレーザ照射工程を示す概略図、図7は超音波送受信工程を示す概略図、図8は検査工程の画像処理表示例を示す概略図、図9は基板切断工程を示す概略図である。
【0045】
図5のステップS1では、マザー基板10の第1基板11に向けてレーザ照射する。当該レーザ照射工程では、図6に示すように、レーザ照射装置40を用いて、第1基板11のTFT素子23等が形成された第1の面S1に向けてレーザ光44を照射する。レーザ光44は、第1基板11の第1の面S1の反対面となる第2の面S2の近傍に集光点が設定され、第2の面S2に平行方向であって、切断予定ラインDx,Dyに沿って照射しながら走査される。その後、集光点の位置を第1の面S1に近づくようにZ軸方向に移動させ、レーザ光44を照射させながら切断予定ラインDx,Dyに沿って走査する。そして、さらにZ軸方向に集光点の位置を移動させ、複数回走査することにより、切断予定ラインDx,Dyに沿った領域に改質層Rが形成される。
【0046】
図5のステップS2では、第1基板11の切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波を送信するとともに、第1基板11の内部で反射した反射波を受信する。当該超音波送受信工程では、図7(a)に示すように、超音波走査装置80の超音波センサ81から送信される超音波99は、第1基板11の第2の面S2の近傍に設定され、第2の面S2に平行方向であって、切断予定ラインDx,Dyに沿って送信しながら走査される。その後、焦点の位置を第1の面S1に近づくようにZ軸方向に移動させ、超音波99を送信させながら切断予定ラインDx,Dyに沿って走査する。そして、焦点の位置が、第1基板11の第2の面S2に達するまで複数回走査しながら超音波99の送受信を行う。ここで、超音波センサ81から送信される超音波周波数は、およそ25〜100MHzであり、第1基板11の材質や厚みを顧慮して適宜設定することができる。
【0047】
図7(b)は、超音波99の送受信波を示す波形である。超音波99の送受信は、前述したように超音波センサ81を介して電気的に行う。すなわち、超音波センサ81に加わる電圧を測定することにより、送信した超音波及び第1基板11の内部で反射した反射波を測定することができる。例えば、図7(b)に示すように、第1基板11に送信波W0、第1基板11の内部で反射して戻ってきた反射波W1,W2を電圧値として測定することができる。さらに、反射波W1,W2は、改質層Rに反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とを超音波の減衰によって識別することができる。すなわち、改質層Rに反射した超音波99は、改質層Rに到達したときに、超音波99が散乱するので、改質層R以外の領域で反射した反射波W2と比較して相対的に受信した電圧値が低くなる。
【0048】
図5のステップS3では、超音波送受信工程において受信した反射波W1,W2の電気的特性に基づいて、改質層Rで反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とを識別して、切断予定ラインDx,Dyに沿った改質層Rが形成されるべき領域に、改質層Rが形成されていない欠陥部分Fがあるか否かを検査する。具体的には、改質層Rで反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とでは、受信した電圧値が異なる。当該異なる電圧値の特性を検査することにより、超音波センサ81を走査した領域に欠陥部分Fがあるか否かを検査することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、改質層Rで反射した反射波W1の電圧値と改質層R以外の個所で反射した反射波W2の電圧値をもとに、画像処理して検査している。具体的には、予め設けられた電圧しきい値を基準に、電圧値を輝度変換して画像処理を行い、画像処理された表示を確認することにより、超音波センサ81を走査した領域のうち改質層Rが形成されるべき領域に欠陥部分Fが形成されているか否かを検査することができる。
【0050】
図8(a),(b)は、検査工程における画像処理表示例を示す概略図である。図8(a)における画像処理表示例では、一様な輝度を有する表示情報が得られており、改質層Rが適正に形成されていると判断される。一方、同図(b)の画像処理表示例では、画像処理表示に異なる輝度情報が得られており、改質層Rの形成領域内に値欠陥部分Fがあると判断される。
【0051】
図5のステップS4では、ステップS3でNOの場合、すなわち、改質層Rが形成されるべき領域に欠陥部分Fがないと判断された場合に、マザー基板10を切断する。当該切断工程では、図9(a)に示すように、マザー基板10に外力を与える。外力が与えられると、第1基板11の内部に形成された改質層Rに応力が生じ、改質層Rに倣って第1基板11が切断され、同図(b)に示すように、液晶表示パネル20ごとに分割される。
【0052】
図5のステップS5では、ステップS4のYESの場合、すなわち、改質層Rの形成領域内に欠陥部分Fがあると判断された場合に、マザー基板10の加工を一旦保留し、欠陥部分Fがないと判断されたマザー基板10と識別する。欠陥部分Fがあると判断されたマザー基板10は、レーザ光44が適正に照射されず、改質層Rが形成されるべき領域に改質層Rが形成されていない可能性が高いため、この状態でマザー基板10を切断すると、チッピング等の不具合が生じるおそれがあるからである。なお、保留されたマザー基板10は、その後、生産性、信頼性を考慮して、修復すべく、ステップS1のレーザ照射に移行することもできる。
【0053】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。図10は、電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図である。図10において、プロジェクタ110を構成する光学系に液晶表示パネル20が搭載されている。
【0054】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0055】
(1)第1基板11に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って、レーザ光44を照射して改質層Rを形成する。第1基板11の改質層Rが形成された領域に向けて超音波99を送信して、第1基板11の内部で反射した反射波W1,W2を受信する。改質層Rに反射した反射波W1と改質層R以外の部分に反射した反射波W2とでは、電圧値の特性が異なるので、受信した反射波W1,W2の電圧特性に基づいて、第1基板11の内部に形成された改質層Rの形成状態を容易に検査することができる。
【0056】
(2)検査工程において改質層Rの形成領域内に欠陥部分Fがあるか否かを判断し、欠陥部分Fがないと判断されたマザー基板10が切断されるので、チッピングの発生を抑えることができる。
【0057】
(3)第1基板11の内部の改質層Rの形成状態は、超音波によって非破壊検査されるので、液晶表示パネル20の品質特性に影響を与えることなく、容易に検査することができる。
【0058】
(4)超音波送受信工程では、切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波99の送受信が行われるので、切断予定ラインDx,Dyに対する改質層Rの形成領域ごとに改質層Rの形成状態を検査することできる。
【0059】
(5)検査工程では、第1基板11の内部から反射された反射波W1,W2に基づいて画像処理された画像を検査するので、容易に欠陥部分Fの有無を検査することができる。
【0060】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0061】
(変形例1)本実施形態では、一つの超音波センサ81を用いて超音波99の送受信を行ったが、これに限定されない。例えば、送受信を別々に独立させた超音波センサを用いてもよい。このようにしても、第1基板11の内部の改質層Rの形成状態を検査することができる。
【0062】
(変形例2)本実施形態では、画像処理された画像を基に改質層Rの形成状態を検査したが、これに限定されず、例えば、オシロスコープ89を用いて検査してもよい。このようにしても、反射波W1,W2による電圧値の特性に基づいて検査することができるとともに、画像処理負担を軽減することができる。
【0063】
(変形例3)本実施形態では、レーザ照射工程の後に、超音波送受信工程を行ったが、これに限定されず、レーザ照射工程と超音波送受信工程とを同時期に行ってもよい。このようにすれば、レーザスクライブの作業効率を向上させることができる。
【0064】
(変形例4)本実施形態では、超音波送受信工程において第1基板11の切断予定ラインDx,Dyに沿って、改質層形成予定領域を総て走査し、検査工程では改質層形成予定領域の全領域について検査したが、これに限定されない。例えば、任意の個所のみについて、超音波を走査するとともに当該個所のみを検査してもよい。このようにすれば、超音波送受信工程および検査工程における作業効率を向上させることができる。
【0065】
(変形例5)本実施形態では、第1基板11の面と垂直方向に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波99を走査したが、これに限定されない。例えば、図11に示すように、第1基板11の内部の一定深さにおける仮想平面領域FSに、超音波99を送信するとともに、仮想平面領域FSで反射した反射波W1,W2を受信するようにしてもよい。このようにすれば、第1基板11に積み上げられて形成された改質層R毎の形成状態を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】マザー基板の構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図2】電気光学装置としての液晶表示パネルの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図3】レーザ照射装置の構成を示す模式図。
【図4】超音波走査装置の構成を示す模式図。
【図5】レーザスクラブ方法を示すフローチャート図。
【図6】レーザ照射工程を示す概略図。
【図7】超音波送受信工程を示す概略図。
【図8】検査工程の画像処理表示例を示す概略図。
【図9】基板切断工程を示す概略図。
【図10】電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図。
【図11】変形例における超音波送受信工程を示す概略図。
【符号の説明】
【0067】
10…マザー基板、11…第1基板、12…第2基板、20…電気光学装置としての液晶表示パネル、40…レーザ照射装置、43…集光レンズ、44…レーザ光、80…超音波走査装置、81…超音波センサ、88…超音波制御部、89…オシロスコープ、90…メインコンピュータ、91…画像処理部、92…表示部、93…入力部、99…超音波、110…電子機器としてのプロジェクタ、Dx,Dy…切断予定ライン、R…改質層、F…欠陥部分、W0…送信波、W1,W2…反射波、S1…第1の面、S2…第2の面、FS…仮想平面領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を照射して基板を切断するレーザスクライブ方法が知られている。この方法では、基板の内部にレーザ光を集光させ、当該集光点の部分に改質層を形成した後、基板に外力を加えることにより、改質層を起点として基板を切断するというものである。改質層の形成方法としては、例えば、特許文献1に示すように、基板に設けられた切断予定ラインに対して基板の厚み方向に集光点の位置を変え、複数回レーザ光走査を行って、複数の改質層を重ねて形成する方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−205180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該改質層は基板の内部に形成されるため、外観から改質層の形成状態を確認することは困難であった。また、当該改質層が適正に形成されずに基板を切断すると、チッピング等の発生により基板に損傷を与える恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、基板の内部に形成された改質層の形成状態を容易に検査することができるレーザスクライブ方法、電気光学装置、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、基板の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインに沿って、基板の内部に改質層を形成すべく、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、基板に向けて超音波を送信して、基板の内部で反射した反射波を受信する超音波送受信工程と、受信した反射波の電気的特性に基づいて、改質層で反射した反射波と改質層以外の個所で反射した反射波とを識別して、切断予定ラインに沿った改質層が形成されるべき領域に、改質層が形成されていない欠陥部分があるか否かを検査する検査工程とを含むことを要旨とする。
【0007】
本発明に係るレーザスクライブ方法によれば、基板に設けられた切断予定ラインに沿って、レーザ光を照射することにより改質層が形成される。そして、当該基板に向けて超音波が送信され、基板の内部で反射した反射波が受信される。当該反射波の電気特性に基づいて、改質層で反射した反射波と改質層以外の個所で反射した反射波とが識別される。従って、反射波を識別することにより、基板の内部に形成された改質層の形成状態を容易に検査することができる。
【0008】
本発明のレーザスクライブ方法の超音波送受信工程では、切断予定ラインに沿って、超音波を送信するとともに、基板の内部で反射した反射波を受信してもよい。
【0009】
これによれば、切断予定ラインに沿って超音波の送受信を行うので、切断予定ラインに沿って形成されるべき改質層の形成状態を効率良く検査することができる。
【0010】
本発明のレーザスクライブ方法の超音波送受信工程では、基板の内部の一定の深さにおける仮想平面領域に超音波を発信するとともに、仮想平面領域で反射した反射波を受信してもよい。
【0011】
これによれば、基板の一定の深さ位置に超音波の送受信を行うことにより、基板の深さ方向における改質層の形成状態を容易に検査することができる。
【0012】
本発明のレーザスクライブ方法の検査工程において、基板の改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が無いと判断した後に、基板に外力を与え、基板を切断する基板切断工程を有してもよい。
【0013】
これによれば、検査工程において、改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が無いと判断された基板に対して、外力を加えるので、基板は、改質層に倣って切断され、切断した際、チッピングの発生を抑えることができる。
【0014】
本発明のレーザスクライブ方法の検査工程において、基板の改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が有ると判断した後に、基板を保留または保留された基板の欠陥部分に対して、レーザ光を照射してもよい。
【0015】
これによれば、検査工程において、改質層が形成されるべき領域に欠陥部分が有ると判断された基板は、一旦保留されるので、良品基板と識別することができる。また、保留された基板の欠陥部分に対して、再度、レーザ光を照射することにより、当該欠陥部分に改質層を形成することができるので、容易に修復作業ができ、歩留りを向上させることができる。
【0016】
本発明の電気光学装置は、上記のレーザスクライブ方法によって分割されたことを要旨とする。
【0017】
本発明に係る電気光学装置によれば、チッピングの発生を抑えた電気光学装置を提供することができる。
【0018】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを要旨とする。
【0019】
本発明による電子機器によれば、品質の良い装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(マザー基板の構成)
まず、マザー基板の構成について説明する。図1は、マザー基板の構成を示し、図1(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図を示す。
【0022】
図1(a),(b)において、マザー基板10は、ウエハ形状であり、第1基板11と第2基板12とが接着され、複数の電気光学装置としての液晶表示パネル20で構成されている。1つの液晶表示パネル20は、マザー基板10の液晶表示パネル20の区画形成領域であって、第1基板11に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って切断して、マザー基板10から分割される。
【0023】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。図2は、電気光学装置としての液晶材表示パネルの構成を示し、図2(a)は平面図を示し、同図(b)は同図(a)のB−B線で切った概略断面図を示す。
【0024】
図2において、液晶表示パネル20は、図2(a)および(b)に示すように、TFT(Thin Film Transistor)素子23を有する第1基板11と、対向電極26を有する第2基板12と、シール材24によって接着された両基板11,12の隙間に充填された液晶材25とを備えている。第1基板11は第2基板12より一回り大きく額縁状に張り出した状態となっており、当該張り出した第1基板11の面には、パターンとしての端子部11aが形成されている。
【0025】
第1基板11は、厚みおよそ1.2mmの石英ガラス基板を用いており、その表面には画素を構成する画素電極(図示省略)と、3端子のうちの一つが画素電極に接続されたTFT素子23が形成されている。TFT素子23の残りの2端子は、画素電極を囲んで互いに絶縁状態で格子状に配置されたデータ線(図示省略)と走査線(図示省略)とに接続されている。データ線は、Y軸方向に引き出されて端子部11aに形成されたデータ線駆動回路部29に接続されている。走査線は、X軸方向に引き出され、左右の額縁領域に形成された2つの走査線駆動回路部33に個々に接続されている。各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33の入力側配線は、端子部11aに沿って配列した実装端子31にそれぞれ接続されている。端子部11aとは反対側の額縁領域には、2つの走査線駆動回路部33を繋ぐ配線32が設けられている。
【0026】
第2基板12は、厚みおよそ1.2〜1.1mmの透明なガラス基板を用いており、共通電極としての対向電極26が設けられている。対向電極26は、第2基板12の四隅に設けられた上下導通部34を介して第1基板11側に設けられた配線と導通しており、当該配線も端子部11aに設けられた実装端子31に接続されている。
【0027】
液晶材25に面する第1基板11の表面および第2基板12の表面には、それぞれ配向膜27,28が形成されている。
【0028】
液晶表示パネル20は、外部駆動回路と電気的に繋がる中継基板が実装端子31に接続される。そして、外部駆動回路からの入力信号が各データ線駆動回路部29および走査線駆動回路部33に入力されることにより、TFT素子23が画素電極ごとにスイッチングされ、画素電極と対向電極26との間に駆動電圧が印加されて表示が行われる。
【0029】
(レーザ照射装置の構成)
次に、マザー基板10に形成された液晶表示パネル20の区画形成領域にあたる切断予定ラインDx,Dyに沿ってレーザ光を照射して、当該レーザ光が照射された部分に改質層を形成するためのレーザ照射装置の構成について説明する。
【0030】
図3は、レーザ照射装置の構成を示す模式図である。図3において、レーザ照射装置40は、パルスレーザ光を出射するレーザ光源41と、出射されたパルスレーザ光を反射するダイクロイックミラー42と、反射したパルスレーザ光を集光する集光手段としての集光レンズ43とを備えている。また、基板10を載置するステージ47と、ステージ47を集光レンズ43に対してX,Y軸方向に移動させる移動手段としてのX軸スライド部48およびY軸スライド部51とを備えている。また、ステージ47に載置された基板10に対して集光レンズ43のZ軸方向の位置を変えて、パルスレーザ光の集光点の位置を調整する調整手段としてのZ軸スライド機構54を備えている。さらに、ダイクロイックミラー42を挟んで集光レンズ43と反対側に位置する撮像装置55を備えている。
【0031】
レーザ照射装置40は、上記各構成を制御するメインコンピュータ60を備えており、メインコンピュータ60には、CPUや各種メモリの他に撮像装置55が撮像した画像情報を処理する画像処理部61を有している。撮像装置55は、同軸落射型光源とCCD(固体撮像素子)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した可視光は、集光レンズ43を透過して焦点を結ぶ。
【0032】
メインコンピュータ60には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部63とレーザ加工時の各種情報を表示する表示部64が接続されている。また、レーザ光源41の出力やパルス幅、パルス周期を制御するレーザ制御部66と、Z軸スライド機構54を駆動して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部67とが接続されている。さらに、X軸スライド部48とY軸スライド部51をそれぞれレール68,69に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部70が接続されている。
【0033】
集光レンズ43をZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構54には、移動距離を検出可能な位置センサ(図示せず)が内蔵されており、レンズ制御部67は、この位置センサの出力を検出して集光レンズ43のZ軸方向の位置を制御可能となっている。したがって、撮像装置55の同軸落射型光源から出射した可視光の焦点が基板10の表面と合うように集光レンズ43をZ軸方向に移動させれば、基板10の厚みを計測することが可能である。
【0034】
レーザ光源41は、例えばチタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザである。この場合、パルスレーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ20nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、パルス周期は1kHz、出力はおよそ700mWである。
【0035】
集光レンズ43は、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。集光レンズ43はZ軸スライド機構54から延びたスライドアーム54aによって支持されている。
【0036】
なお、本実施形態では、ステージ47は、Y軸スライド部51に支持されているが、X軸スライド部48とY軸スライド部51との位置関係を逆転させてX軸スライド部48に支持される形態としてもよい。また、ステージ47をθテーブル(図示せず)を介してY軸スライド部51に支持することが好ましい。これによれば、基板10を光軸41aに対してより垂直な状態とすることが可能である。
【0037】
(超音波走査装置の構成)
次に、マザー基板10に向けて超音波を送信するとともに、マザー基板10の内部で反射した反射波を受信することにより、マザー基板10の内部に形成された改質層の形成状態を検査するための超音波走査装置の構成について説明する。
【0038】
図4は、超音波走査措置の構成を示す模式図である。図4において、超音波走査装置80は、超音波99の送受信を行う超音波センサ81を備えている。超音波センサ81は、超音波の送受信を行うための圧電素子であり、当該圧電素子にパルス状の電圧を加えて振動させることにより超音波の送信を行い、超音波の振動により発生した歪を電圧として計測することにより受信を行うことができる。超音波センサ81の超音波発信部には、音響レンズ(図示せず)が設置されており、送信される超音波99を収束させることができるようになっている。
【0039】
超音波走査装置81には、マザー基板10を載置するステージ82と、ステージ82を超音波センサ81に対してX,Y軸方向に移動させる移動手段としてのX軸スライド部85およびY軸スライド部83とを備えている。また、ステージ82に載置されたマザー基板10に対して超音波センサ81のZ軸方向の位置を変えて、超音波99の焦点の位置を調整する調整手段としてのZ軸スライド機構87を備えている。
【0040】
超音波走査装置80は、上記各構成を制御するメインコンピュータ90を備えており、メインコンピュータ90には、CPUや各種メモリの他に超音波センサ81が受信した反射波を輝度変換処理する画像処理部91を有している。
【0041】
また、メインコンピュータ90には、超音波や検査位置条件等のデータを入力する入力部93と超音波の送受信時の各種情報を表示する表示部92が接続されている。また、超音波センサ81に対するパルス状の電圧や送受信波の増幅を制御する超音波制御部88と、Z軸スライド機構87を駆動して超音波センサ81のZ軸方向の位置を制御するセンサ位置制御部94とが接続されている。さらに、X軸スライド部85とY軸スライド部83をそれぞれレール84,86に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部95が接続されている。
【0042】
また、超音波制御部88には、オシロスコープ89が接続されており、超音波センサ99の送信波や受信波、その他超音波設定条件等を確認することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ステージ82は、Y軸スライド部83に支持されているが、X軸スライド部85とY軸スライド部83との位置関係を逆転させてX軸スライド部85に支持される形態としてもよい。また、ステージ82をθテーブル(図示せず)を介してY軸スライド部83に支持することが好ましい。これによれば、マザー基板10を超音波センサ81の超音波99の送受信面に対してより平行な状態とすることが可能である。
【0044】
(レーザスクライブ方法)
次に、レーザスクライブ方法について説明する。図5は、レーザスクライブ方法を示すフローチャート図である。また、図6はレーザ照射工程を示す概略図、図7は超音波送受信工程を示す概略図、図8は検査工程の画像処理表示例を示す概略図、図9は基板切断工程を示す概略図である。
【0045】
図5のステップS1では、マザー基板10の第1基板11に向けてレーザ照射する。当該レーザ照射工程では、図6に示すように、レーザ照射装置40を用いて、第1基板11のTFT素子23等が形成された第1の面S1に向けてレーザ光44を照射する。レーザ光44は、第1基板11の第1の面S1の反対面となる第2の面S2の近傍に集光点が設定され、第2の面S2に平行方向であって、切断予定ラインDx,Dyに沿って照射しながら走査される。その後、集光点の位置を第1の面S1に近づくようにZ軸方向に移動させ、レーザ光44を照射させながら切断予定ラインDx,Dyに沿って走査する。そして、さらにZ軸方向に集光点の位置を移動させ、複数回走査することにより、切断予定ラインDx,Dyに沿った領域に改質層Rが形成される。
【0046】
図5のステップS2では、第1基板11の切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波を送信するとともに、第1基板11の内部で反射した反射波を受信する。当該超音波送受信工程では、図7(a)に示すように、超音波走査装置80の超音波センサ81から送信される超音波99は、第1基板11の第2の面S2の近傍に設定され、第2の面S2に平行方向であって、切断予定ラインDx,Dyに沿って送信しながら走査される。その後、焦点の位置を第1の面S1に近づくようにZ軸方向に移動させ、超音波99を送信させながら切断予定ラインDx,Dyに沿って走査する。そして、焦点の位置が、第1基板11の第2の面S2に達するまで複数回走査しながら超音波99の送受信を行う。ここで、超音波センサ81から送信される超音波周波数は、およそ25〜100MHzであり、第1基板11の材質や厚みを顧慮して適宜設定することができる。
【0047】
図7(b)は、超音波99の送受信波を示す波形である。超音波99の送受信は、前述したように超音波センサ81を介して電気的に行う。すなわち、超音波センサ81に加わる電圧を測定することにより、送信した超音波及び第1基板11の内部で反射した反射波を測定することができる。例えば、図7(b)に示すように、第1基板11に送信波W0、第1基板11の内部で反射して戻ってきた反射波W1,W2を電圧値として測定することができる。さらに、反射波W1,W2は、改質層Rに反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とを超音波の減衰によって識別することができる。すなわち、改質層Rに反射した超音波99は、改質層Rに到達したときに、超音波99が散乱するので、改質層R以外の領域で反射した反射波W2と比較して相対的に受信した電圧値が低くなる。
【0048】
図5のステップS3では、超音波送受信工程において受信した反射波W1,W2の電気的特性に基づいて、改質層Rで反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とを識別して、切断予定ラインDx,Dyに沿った改質層Rが形成されるべき領域に、改質層Rが形成されていない欠陥部分Fがあるか否かを検査する。具体的には、改質層Rで反射した反射波W1と改質層R以外の個所で反射した反射波W2とでは、受信した電圧値が異なる。当該異なる電圧値の特性を検査することにより、超音波センサ81を走査した領域に欠陥部分Fがあるか否かを検査することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、改質層Rで反射した反射波W1の電圧値と改質層R以外の個所で反射した反射波W2の電圧値をもとに、画像処理して検査している。具体的には、予め設けられた電圧しきい値を基準に、電圧値を輝度変換して画像処理を行い、画像処理された表示を確認することにより、超音波センサ81を走査した領域のうち改質層Rが形成されるべき領域に欠陥部分Fが形成されているか否かを検査することができる。
【0050】
図8(a),(b)は、検査工程における画像処理表示例を示す概略図である。図8(a)における画像処理表示例では、一様な輝度を有する表示情報が得られており、改質層Rが適正に形成されていると判断される。一方、同図(b)の画像処理表示例では、画像処理表示に異なる輝度情報が得られており、改質層Rの形成領域内に値欠陥部分Fがあると判断される。
【0051】
図5のステップS4では、ステップS3でNOの場合、すなわち、改質層Rが形成されるべき領域に欠陥部分Fがないと判断された場合に、マザー基板10を切断する。当該切断工程では、図9(a)に示すように、マザー基板10に外力を与える。外力が与えられると、第1基板11の内部に形成された改質層Rに応力が生じ、改質層Rに倣って第1基板11が切断され、同図(b)に示すように、液晶表示パネル20ごとに分割される。
【0052】
図5のステップS5では、ステップS4のYESの場合、すなわち、改質層Rの形成領域内に欠陥部分Fがあると判断された場合に、マザー基板10の加工を一旦保留し、欠陥部分Fがないと判断されたマザー基板10と識別する。欠陥部分Fがあると判断されたマザー基板10は、レーザ光44が適正に照射されず、改質層Rが形成されるべき領域に改質層Rが形成されていない可能性が高いため、この状態でマザー基板10を切断すると、チッピング等の不具合が生じるおそれがあるからである。なお、保留されたマザー基板10は、その後、生産性、信頼性を考慮して、修復すべく、ステップS1のレーザ照射に移行することもできる。
【0053】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。図10は、電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図である。図10において、プロジェクタ110を構成する光学系に液晶表示パネル20が搭載されている。
【0054】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0055】
(1)第1基板11に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って、レーザ光44を照射して改質層Rを形成する。第1基板11の改質層Rが形成された領域に向けて超音波99を送信して、第1基板11の内部で反射した反射波W1,W2を受信する。改質層Rに反射した反射波W1と改質層R以外の部分に反射した反射波W2とでは、電圧値の特性が異なるので、受信した反射波W1,W2の電圧特性に基づいて、第1基板11の内部に形成された改質層Rの形成状態を容易に検査することができる。
【0056】
(2)検査工程において改質層Rの形成領域内に欠陥部分Fがあるか否かを判断し、欠陥部分Fがないと判断されたマザー基板10が切断されるので、チッピングの発生を抑えることができる。
【0057】
(3)第1基板11の内部の改質層Rの形成状態は、超音波によって非破壊検査されるので、液晶表示パネル20の品質特性に影響を与えることなく、容易に検査することができる。
【0058】
(4)超音波送受信工程では、切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波99の送受信が行われるので、切断予定ラインDx,Dyに対する改質層Rの形成領域ごとに改質層Rの形成状態を検査することできる。
【0059】
(5)検査工程では、第1基板11の内部から反射された反射波W1,W2に基づいて画像処理された画像を検査するので、容易に欠陥部分Fの有無を検査することができる。
【0060】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0061】
(変形例1)本実施形態では、一つの超音波センサ81を用いて超音波99の送受信を行ったが、これに限定されない。例えば、送受信を別々に独立させた超音波センサを用いてもよい。このようにしても、第1基板11の内部の改質層Rの形成状態を検査することができる。
【0062】
(変形例2)本実施形態では、画像処理された画像を基に改質層Rの形成状態を検査したが、これに限定されず、例えば、オシロスコープ89を用いて検査してもよい。このようにしても、反射波W1,W2による電圧値の特性に基づいて検査することができるとともに、画像処理負担を軽減することができる。
【0063】
(変形例3)本実施形態では、レーザ照射工程の後に、超音波送受信工程を行ったが、これに限定されず、レーザ照射工程と超音波送受信工程とを同時期に行ってもよい。このようにすれば、レーザスクライブの作業効率を向上させることができる。
【0064】
(変形例4)本実施形態では、超音波送受信工程において第1基板11の切断予定ラインDx,Dyに沿って、改質層形成予定領域を総て走査し、検査工程では改質層形成予定領域の全領域について検査したが、これに限定されない。例えば、任意の個所のみについて、超音波を走査するとともに当該個所のみを検査してもよい。このようにすれば、超音波送受信工程および検査工程における作業効率を向上させることができる。
【0065】
(変形例5)本実施形態では、第1基板11の面と垂直方向に設けられた切断予定ラインDx,Dyに沿って超音波99を走査したが、これに限定されない。例えば、図11に示すように、第1基板11の内部の一定深さにおける仮想平面領域FSに、超音波99を送信するとともに、仮想平面領域FSで反射した反射波W1,W2を受信するようにしてもよい。このようにすれば、第1基板11に積み上げられて形成された改質層R毎の形成状態を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】マザー基板の構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図2】電気光学装置としての液晶表示パネルの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図3】レーザ照射装置の構成を示す模式図。
【図4】超音波走査装置の構成を示す模式図。
【図5】レーザスクラブ方法を示すフローチャート図。
【図6】レーザ照射工程を示す概略図。
【図7】超音波送受信工程を示す概略図。
【図8】検査工程の画像処理表示例を示す概略図。
【図9】基板切断工程を示す概略図。
【図10】電子機器としてのプロジェクタの構成を示す斜視図。
【図11】変形例における超音波送受信工程を示す概略図。
【符号の説明】
【0067】
10…マザー基板、11…第1基板、12…第2基板、20…電気光学装置としての液晶表示パネル、40…レーザ照射装置、43…集光レンズ、44…レーザ光、80…超音波走査装置、81…超音波センサ、88…超音波制御部、89…オシロスコープ、90…メインコンピュータ、91…画像処理部、92…表示部、93…入力部、99…超音波、110…電子機器としてのプロジェクタ、Dx,Dy…切断予定ライン、R…改質層、F…欠陥部分、W0…送信波、W1,W2…反射波、S1…第1の面、S2…第2の面、FS…仮想平面領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインに沿って、前記基板の内部に改質層を形成すべく、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、
前記基板に向けて超音波を送信して、前記基板の内部で反射した反射波を受信する超音波送受信工程と、
受信した前記反射波の電気的特性に基づいて、前記改質層で反射した反射波と前記改質層以外の個所で反射した反射波とを識別して、前記切断予定ラインに沿った前記改質層が形成されるべき領域に、前記改質層が形成されていない欠陥部分があるか否かを検査する検査工程と、を含むことを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記超音波送受信工程では、前記切断予定ラインに沿って、前記超音波を送信するとともに、前記基板の内部で反射した前記反射波を受信することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記超音波送受信工程では、前記基板の内部の一定の深さにおける仮想平面領域に、前記超音波を発信するとともに、前記仮想平面領域で反射した前記反射波を受信することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記検査工程において、前記基板の前記改質層が形成されるべき領域に前記欠陥部分が無いと判断した後に、
前記基板に外力を与え、前記基板を切断する基板切断工程を有することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記検査工程において、前記基板の前記改質層が形成されるべき領域に前記欠陥部分が有ると判断した後に、
前記基板を保留または保留された前記基板の欠陥部分に対して、前記レーザ光を照射することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法によって分割されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板の切断すべき位置に設けられた切断予定ラインに沿って、前記基板の内部に改質層を形成すべく、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、
前記基板に向けて超音波を送信して、前記基板の内部で反射した反射波を受信する超音波送受信工程と、
受信した前記反射波の電気的特性に基づいて、前記改質層で反射した反射波と前記改質層以外の個所で反射した反射波とを識別して、前記切断予定ラインに沿った前記改質層が形成されるべき領域に、前記改質層が形成されていない欠陥部分があるか否かを検査する検査工程と、を含むことを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記超音波送受信工程では、前記切断予定ラインに沿って、前記超音波を送信するとともに、前記基板の内部で反射した前記反射波を受信することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記超音波送受信工程では、前記基板の内部の一定の深さにおける仮想平面領域に、前記超音波を発信するとともに、前記仮想平面領域で反射した前記反射波を受信することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記検査工程において、前記基板の前記改質層が形成されるべき領域に前記欠陥部分が無いと判断した後に、
前記基板に外力を与え、前記基板を切断する基板切断工程を有することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記検査工程において、前記基板の前記改質層が形成されるべき領域に前記欠陥部分が有ると判断した後に、
前記基板を保留または保留された前記基板の欠陥部分に対して、前記レーザ光を照射することを特徴とするレーザスクライブ方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法によって分割されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2007−283392(P2007−283392A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116488(P2006−116488)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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