説明

レーザレーダの光軸検査方法及び検査システム

【課題】簡易な手法によって視認性よく合否を判定することが可能な検査システム等を提供する。
【解決手段】検査システム1は、自動車AMに取り付けられたレーザ装置5の基準光軸に関する検査を行うためのシステムであって、自動車AMの位置を検出する車両検出部41と、自動車AMの基準設置軸上において対象物TGの位置を調整する対象物調整部30とを備える。検査システム1では、光軸検査工程において、制御装置が、車両検出部41から入力された検出データに基づく演算値を対象物調整部30に出力することで、自動車AMに対して所定の検査距離に対象物TGを配置する。そして、レーザ装置5に、カメラ軸がレーザ装置5の基準光軸と一致するように検査用カメラ20を取り付け、その撮像画像内の中心領域に対象物TGが位置する場合に、レーザ装置5の基準光軸と自動車AMの基準設置軸とが一致することになるので、検査合格とするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられたレーザレーダの光軸検査方法、及び、その検査方法を実現する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行安全性を向上させるための各種制御に必要な構成部品として、レーザレーダが車両に搭載されている。レーザレーダは、例えば車両の前面中央部に取り付けられ、車両の全長方向を基準軸とし、この基準軸を中心に含む所定領域に渡って前方にレーザ光を照射し、そのレーザ光の反射光を受光することにより、先行車両や歩行者、障害物等の物体を検出する。そして、この検出結果は、例えば先行車両との車間距離を一定に保つ走行制御や、歩行者や障害物の位置を知らせる報知制御等に利用される。
【0003】
このようなレーザレーダを車両に搭載する場合、物体の位置を正確に検出するためには、レーザレーダの基準軸(以下「基準光軸」という)が、車両の基準軸(以下「基準設置軸」という)に一致するように、レーザレーダを車両に取り付ける必要がある。なお、レーダ光については、照射源の構造上の理由等により、赤外光等の目視できない波長の光が採用されることが多い。
【0004】
このため、基準光軸が基準設置軸に一致しているか否かの合否を検査する光軸検査方法として、入射された赤外光を可視光に変換して出射するように構成された光変換装置を、入出射の基準光軸が一致するようにレーザレーダに取り付け、光変換装置から出射される可視光のスポットが投影されたスクリーン上の位置に基づいて合否を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−225271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の光軸検査方法では、可視光のスポットの輪郭が視認しにくいため、スクリーン上の投影位置を正確に把握することに困難を伴う可能性があった。また、このような事態を回避しようとすると、スクリーン上の投影光の強度を測定するために構成部品を増やしたり、測定した強度に基づいて投影光の中心位置を検出するために演算処理を増やしたりすることに繋がり、結果的に検査コストが増大する虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するために、簡易な手法によって視認性よく合否を判定することが可能なレーザレーダの光軸検査方法、及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた第一発明であるレーザレーダの光軸検査方法は、一つの光軸を基準光軸としてその基準光軸を含む所定領域に渡ってレーザ光を照射し、そのレーザ光の反射波を受光することで物体を検出するレーザレーダが、車両において予め規定された基準設置軸と上記基準光軸とが一致するように車両に取り付けられているか否かの合否を検査する方法である。
【0009】
本発明の方法では、上記基準設置軸上において車両に対して予め設定された検査距離に配置された対象物を撮像する撮像装置を、その撮像装置の光軸であるカメラ軸と上記基準光軸とが一致するようにレーザレーダに取り付け、その撮像装置による撮像画像内の中心領域に対象物が位置する場合に、検査合格とすることにした。
【0010】
なお、撮像装置の光軸(カメラ軸)は、撮像装置が有するレンズに垂直、且つレンズの中心を通る直線であるので、対象物が撮像画像内の中心領域に位置すれば、カメラ軸が車両の基準軸(基準設置軸)に一致していることになる。
【0011】
従って、本発明の方法によれば、レーザレーダから照射されるレーダ光を視認しようとする従来の着想から離れ、レーザレーダの基準軸にカメラ軸が合うように取り付けた撮像装置に、車両の基準軸上の所定位置に配置した物を撮像させることにより、その撮像物の位置から容易に検査可能となり、ひいては簡易な手法によって視認性よく合否を判定することができる。
【0012】
また、第二発明である検査システムは、一つの光軸を基準光軸としてその基準光軸を含む所定領域に渡ってレーザ光を照射し、そのレーザ光の反射波を受光することで物体を検出するレーザレーダが、車両において予め規定された基準設置軸と上記基準光軸とが一致するように車両に取り付けられているか否かの合否を検査するシステムである。
【0013】
本発明の検査システムは、上記基準設置軸上において車両に対して予め設定された検査距離に配置されるように対象物の位置を調整する対象物調整手段と、当該撮像手段の光軸であるカメラ軸と上記基準光軸とが一致するようにレーザレーダに取り付けられ、対象物調整手段によって車両に対する位置が調整された対象物を撮像する撮像手段とを備える。そして、撮像手段による撮像画像内の中心領域に対象物が位置する場合に、検査合格とするようにした。
【0014】
このように構成された検査システムによれば、第一発明のレーザレーダの光軸検査方法を実現することができ、さらには、対象物の位置を調整することによって、例えば車両の製造ライン上において車両を対象物の位置に応じて移動させずに済むので、車両の製造時における検査時間を短縮することが可能となり、効率よく検査することができる。
【0015】
なお、撮像画像内の中心領域は、例えば撮像画像内の対象物の輪郭にマージンを設けた大きさを有する領域であってもよいが、上記輪郭に合致する大きさを有する領域であれば、より合否を正確に判定しやすい。
【0016】
このため、本発明の検査システムでは、対象物から検査距離だけ離間した位置における車両の向きを検出する姿勢検出手段を備え、対象物調整手段が、姿勢検出手段による検出結果に基づいて、対象物の向きを調整するように構成してもよい。
【0017】
このように構成された検査システムによれば、例えば対象物が正面を向いた状態で対象物を撮像することが可能となるので、撮像画像内の中心領域が対象物の正面の輪郭に合致する大きさの領域である場合であっても、対象物の形状にかかわらず、常に検査精度を維持することができる。具体的には、対象物について、円柱等の同心円状のものに限らず、角柱やその他のあらゆる形状のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された検査システムの概要を示す説明図である。
【図2】レーザ装置の構成および動作を示す説明図である。
【図3】レーザ装置および取付機構の外観を示す説明図である。
【図4】検査システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】レーザ装置および検査用カメラの外観を示す説明図である。
【図6】検査システムにおいて実施される光軸検査工程を示すフローチャートである。
【図7】光軸検査工程においてレーザ装置の基準光軸の調整過程を示す説明図である。
【図8】自動車と対象物との位置調整を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された検査システムの概要を示す説明図であり、(a)が上方から見た俯瞰図であり、(b)が側方から見た側視図である。
【0020】
本実施形態の検査システム1が検査の対象となるレーザ装置5は、レーダ波としてのレーザ光を規定範囲に渡って送信(照射)し、その照射したレーザ光の反射光(即ち、反射波)を受光することで、規定範囲内に存在する物体を検知するレーザレーダである。このようなレーザ装置5は、自動車AMに規定された基準設置軸に、当該レーザ装置5に規定された基準光軸が一致するように、自動車AMの製造ラインにて自動車AMの前部に取り付けられる。
【0021】
但し、自動車AMに取り付けられたレーザ装置5は、基準配置軸と基準光軸とが不一致、即ち、メーカー側によって意図された規定条件を満たしていない可能性があるため、基準配置軸と基準光軸とが規定条件を満たしているか否かを、自動車AMの検査工程にて検査する必要がある。この検査を実施するシステムとして、本実施形態の検査システム1が構成されている。
【0022】
[レーザ装置について]
まず、検査システム1が検査の対象とするレーザ装置5について説明する。ここで、図2は、本実施形態のレーザ装置の構成および動作を示す説明図である。
【0023】
本実施形態のレーザ装置5は、図2に示すように、レーザ光を発生させるレーザダイオード(以下「LD」)11と、LD11を駆動するLD駆動部13と、LD11により出力されたレーザ光をスキャニングする走査部15と、LD11により出力されたレーザ光を走査部15に導くとともにレーザ光のビーム幅を拡大して照射光Sを生成する照射レンズ17と、走査部15のスキャン方向を検出する走査検出部19と、照射光Sの反射光を受光する複数のフォトダイオード(以下「PD」)21と、照射光Sの反射光をPD21に導く受光レンズ23と、PD21の受光量に応じた電気信号(以下「受光量信号」とする)を増幅する増幅部25と、LD駆動部13および走査部15を制御する制御部27とを備えている。
【0024】
走査部15は、照射レンズ17を通過したレーザ光を、回動駆動するポリゴンミラー等により左右方向の所定角度にスキャニングして照射するもので、制御部27により制御されて所定のタイミング及び周期で作動する。
【0025】
LD駆動部13は、制御部27により制御されて、制御部27で生成された発光タイミング毎にLD11を作動させてレーザ光を出力する発光回路である。
走査検出部19は、走査部15のスキャン方向を検出してその検出信号(以下「スキャン方向信号」とする)を制御部27に入力するセンサである。
【0026】
PD21は、照射光Sが検出対象となる物に反射して戻ってきた反射光を受光し、上記の受光量信号を出力するものであり、このPD21から出力された受光量信号が増幅部25を介して制御部27に入力されるように構成されている。
【0027】
制御部27は、例えばCPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成され、装置の通常運転時には、基本的に以下のような制御処理により測距動作を行う。即ち、LD駆動部13および走査部15を制御するとともに、発光から受光までの伝搬遅延時間から検出対象までの距離を演算し、その際のスキャン方向から検出対象物の方向を判定し、さらに受光量信号の大きさから受光量を判定するとともに、これらデータ(距離、方向、受光量)から、検出対象物の判別や移動状態などを判定することで、検出対象の種別情報,位置情報,大きさ情報などを含む検出データを出力するものである。
【0028】
このように、レーザ装置5は、照射レンズ17(又は走査部15)の中心を通るレーザ光を基準光軸として、その基準光軸を含む所定領域に渡ってレーザ光を照射し、その照射光Sの反射波を受光することで物体を検出するように構成されている。
【0029】
また、このように構成されたレーザ装置5は、自動車AMの前進方向(即ち、全長方向)を基準設置軸として、基準光軸が基準設置軸に一致し、その基準設置軸から自動車AMの左右方向(即ち、車幅方向)に広がる所定領域に渡ってレーダ波が送信されるように、自動車AMを製造する製造ラインにて、自動車AMの前部に設けられた取付機構10(図3参照)に取り付けられる。
【0030】
なお、図3は、レーザ装置5および取付機構10の外観を示す説明図であり、(a)が上面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
取付機構10は、図3に示すように、取付ネジ及び配置軸調整ネジ31と、レーザ装置5を自動車AMに取り付けた際の姿勢を調整するため(基準光軸を調整するため)の光軸調整ネジ33とを備えている。
【0031】
取付ネジ及び配置軸調整ネジ31は、単に取付機構10及びレーザ装置5を自動車AMに取り付けるネジ以外に、配置軸調整ネジとして自動車AMの車体に対する取付機構10の本体の姿勢を調整するためのものであってもよく、例えば水準器やスケール等(図示せず)とともに用いられ、取付機構10の本体が自動車AMの前面に対して垂直となり、自動車AMの全長方向が基準設置軸と一致するように手動で調整可能なものとしてもよい。
【0032】
光軸調整ネジ33は、取付機構10の本体に対するレーザ装置5の本体の姿勢を調整するためのものであり、後述する光軸検査工程における検査結果を参照しつつ、レーザ装置5の基準光軸が自動車AMの基準設置軸と一致するように手動で調整可能になっている。なお、光軸調整ネジ33は、レーザ装置5の基準光軸について、上下方向に調整するための上下調整ネジ33aと、左右方向に調整するための左右調整ネジ33bと、照射方向を軸とする回転方向に調整するための回転調整ネジ33cとを有して構成される。
【0033】
[検査システムについて]
本実施形態の検査システム1は、自動車AMの製造ラインにて自動車AM(取付機構10)に取り付けられたレーザ装置5を、当該自動車AMを出荷する前に検査するシステムである。
【0034】
図1に戻り、自動車AMの製造ラインは、予め規定された経路に沿って自動車AMを搬送するように可動する搬送部90と、搬送部90の両脇に設けられた非可動な部位である非可動部93とを有している。
【0035】
この製造ラインでは、プレス工程、車体組立工程、塗装工程、艤装工程、ユニットマウント工程、検査工程といった一連の工程が実施される。これらの全工程は、通常、少なくとも一つの搬送部90が自動車AMを搬送する過程で実行される。
【0036】
なお、検査工程は、複数の工程から構成されており、本実施形態の検査システム1によって実現される工程を、以下では、光軸検査工程と称す。この光軸検査工程では、基準設置軸と基準光軸とが一致するように、自動車AM(取付機構10)にレーザ装置5が取り付けられているか否かの合否が検査される。ちなみに、この光軸検査工程の前工程において、自動車AMの全長方向が基準設置軸と一致するように、自動車AMに取付機構10が取り付けられているか否かの合否が検査されており、その検査に合格した自動車AMについて光軸検査工程を行うものとする。
【0037】
図4は、検査システムの概略構成を示すブロック図である。
そして、図4に示すように、検査システム1は、非可動部93に設けられた車両検出部41と、自動車AMのレーザ装置5に取り付けられた検査用カメラ20と、搬送部90に配置される対象物TGの位置を調整する対象物調整部30と、検査用カメラ20によって撮像された画像を表示する表示装置43と、検査員による各種操作を入力する操作入力部44と、対象物調整部30および表示装置43を制御する制御装置45とを備えている。
【0038】
車両検出部41は、搬送部90によって搬送される自動車AMが、予め規定された位置である計測開始ラインSLに到達したか否かを検出するとともに(図1参照)、この計測開始ラインSL上の自動車AMのY座標位置(搬送方向に直交する座標位置)と、自動車AMの搬送方向に対する全長方向のズレ量(左右方向の回転量)とを検出し(図8(a)参照)、これら計測開始ラインSLの到達有無、計測開始ラインSL上のY座標位置およびズレ量の検出データを制御装置45に入力するものである。具体的には、計測開始ラインSL上において、搬送部90を挟むように非可動部93に設けられた一対のカメラやラインセンサ等によって構成される(図1参照)。
【0039】
対象物調整部30は、制御装置45により制御されて、制御装置45で生成された対象物TGのY座標位置と回転量を基に、計測開始ラインSLから搬送方向に予め設定された検査距離だけ離間した搬送部90の位置に対象物TGを、対象物TGの正面が自動車AMの前面を向くように配置する(図8(b)参照)。具体的には、計測開始ラインSLより検査距離だけ離間したところで、搬送部90を上方から挟むようにY座標方向を移動可能に設置されたレールや、そのレール上のY座標位置から下側に移動可能にレールに接続されたアーム、そのアームにおいて搬送方向および回転方向に移動可能にアームに接続され、対象物TGを搬送部90に配置する把持部等によって構成される(図1参照)。
【0040】
なお、本実施形態の対象物TGは、四角柱の形状であり、その正面に高さを表す目盛りが付されたものであるが(図1参照)、この形状や模様等はこれに限らず、各種のものが採用され得る。
【0041】
検査用カメラ20は、個体撮像素子を二次元格子状に配列することで構成されたイメージセンサ(CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ)、及び被写体からの光をイメージセンサ上に集光するレンズ等を用いて構成された周知のものであり、イメージセンサの検出信号に基づく画像(撮像画像)を出力する。
【0042】
なお、図5は、レーザ装置5および検査用カメラ20の外観を示す説明図であり、(a)が上面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
図5に示すように、検査用カメラ20は、レーザ装置5に簡易に取り付けることを可能とするために、レーザ装置5に本体を嵌め込んで装着するだけで、レンズの中心軸(即ち、カメラ軸)がレーザ装置5の基準光軸と一致するように、本体における最適なレンズの位置および向きが予め決められて作られている。また、検査用カメラ20は、検出距離だけ離間した対象物TGが撮像画像内に収まるように、予めカメラ調整がなされている。
【0043】
図4に戻り、制御装置45は、例えばCPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成され、以下のような制御処理を行う。即ち、計測開始ラインSL上に自動車AMが到達すると、その計測開始ラインSL上の自動車AMのY座標位置およびズレ量から、自動車AMの位置および向きを特定し、これらデータ(位置、向き)から、自動車AMから検出距離だけ離間して対象物TGが自動車AMの正面を向くように、対象物TGのY座標位置と回転量を演算して、その演算結果を対象物調整部30に出力する。
【0044】
[光軸検査工程]
次に、図6は、このように構成された検査システム1において実施される光軸検査工程を示すフローチャートである。また、図7は、この光軸検査工程において、レーザ装置5の基準光軸の調整過程を示す説明図である。
【0045】
図6に示すように、光軸検査工程の前工程において、検査員が検査用カメラ20をレーザ装置5に装着する(S110)。そして、光軸検査工程では、まず、制御装置45が、車両検出部41から入力された検出データに基づく演算値(対象物TGのY座標位置と回転量)を対象物調整部30に出力することで、対象物調整部30が対象物TGを、自動車AMの基準設置軸上において検査距離だけ離間した位置にその正面が自動車AMの前面を向くように配置する(S120)。
【0046】
次に、制御装置45によって、検査用カメラ20から入力された撮像画像が表示装置43に表示されているので、検査員が、表示装置43に表示される撮像画像(映像)を確認する(S130)。ここで、検査員が、撮像画像内の対象物TGの位置に基づいて、レーザ装置5の基準光軸が自動車AMの基準設置軸と一致しているか否かの合否、即ち、軸ズレが有るか否かを判定し(S140)、軸ズレが無い場合には(S140;NO)、検査合格とし、検査用カメラ20をレーザ装置5から取り外すとともに(S180)、操作入力部44の入力操作によって、対象物調整部30に対象物TGを搬送部90から除去し(S190)、本処理を終了する。
【0047】
なお、軸ズレの有無は、撮像画像内の中心領域内に対象物TGが収まるか否かを検査員が目視することによって行われる(図7(a)参照)。ここで、軸ズレが有る場合には(S140;YES)、検査員が、その軸ズレの方向が左右方向であるか否かを判定し(S150)、左右方向であれば(S150;YES)、撮像画像内の対象物TGの左右側輪郭(左右側エッジ)が中心領域における左右基準線に一致するように(図7(b)参照)、左右調整ネジ33bを用いて基準光軸を調整し(S160)、S130に戻る。
【0048】
また、軸ズレの方向が上下方向であれば(S150;NO)、撮像画像内の対象物TGの上下側輪郭(上下側エッジ)が中心領域における上端基準線および下端基準線に一致するように(図7(c)参照)、上下調整ネジ33aを用いて基準光軸を調整し(S170)、S130に戻る。ちなみに、撮像画像内の対象物TGの上下側エッジが上端基準線および下端基準線に平行となるようにするには、回転調整ネジ33cが用いられる。
【0049】
[効果]
以上説明したように、検査システム1では、光軸検査工程において、レーザ装置5に検査用カメラ20を装着し、検査用カメラ20による撮像画像内の中心領域に対象物TGが位置する場合に、検査合格とするようにした。
【0050】
これにより、検査システム1によれば、対象物TGの輪郭(エッジ)が視認しやすいため、スクリーン上に可視光のスポットを投影させる従来の方法と比べて、撮像画像内の対象物TGの位置を容易に特定することが可能となり、ひいては、簡易な手法によって視認性よく合否を判定することができる。
【0051】
また、検査システム1では、光軸検査工程において、対象物TGの輪郭(エッジ)が撮像画像内の中心領域の全ての基準線に一致する場合に、検査合格とするようにしたので、判定精度を向上させることができる。
【0052】
さらには、検査システム1では、光軸検査工程において、自動車AMの位置に応じて、自動的に対象物TGの位置を調整するようにしたので、自動車AMの位置を調整する従来の方法と比べて、調整に必要な装置に係るコストを低減することができ、結果的に自動車AMの製造コストを低減させることが可能となる。
【0053】
[発明との対応]
なお、本実施形態において、車両検出部41、対象物調整部30および制御装置45が対象物調整手段、検査用カメラ20が撮像手段、車両検出部41が姿勢検出手段に相当する。
【0054】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態のレーザ装置5は、ポリゴンミラー等の反射ミラーを有する走査部15によって、レーザ光をスキャニングするものであるが、これに限らず、レーザ光を所定領域に一括投光するものであっても、検査システム1の検査対象となり得る。なお、レーザ光は、赤外光であってもよいし、それ以外の波長を有する光(例えば可視光)であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態のレーザ装置5は、基準光軸を調整する際に、光軸調整ネジ33を用いて手動で行うように構成されているが、これに限らず、例えば、制御部27によって制御されるアクチュエータを用いて自動で行うように構成されてもよい。後者の場合、光軸検査工程におけるレーザ装置5の基準光軸の調整について、制御装置45が、検査用カメラ20から入力された撮像画像に基づいて、軸ズレに関するデータを生成し、レーザ装置5の制御部27に送信するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態の検査システム1では、光軸検査工程において、検査員が軸ズレの有無を判定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、制御装置45が、検査用カメラ20から入力された撮像画像に基づいて判定し、その判定結果を、スピーカ等の報知手段によって報知するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態の検査システム1では、自動車AMの向きに応じて、自動的に対象物TGの向きを調整するようにしているが、これに限定されるものではなく、対象物TGの形状を例えば円柱形状にすることにより、対象物TGの向きの調整を省略することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、自動車AMの製造ラインにおいて実施される光軸検査工程について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばディーラーの整備スペースにおいて実施されるレーザ装置5の光軸検査方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…検査システム、5…レーザ装置、10…取付機構、13…LD駆動部、15…走査部、17…照射レンズ、19…走査検出部、20…検査用カメラ、23…受光レンズ、25…増幅部、27…制御部、30…対象物調整部、31…取付ネジ及び配置軸調整ネジ、33…光軸調整ネジ、33a…上下調整ネジ、33b…左右調整ネジ、33c…回転調整ネジ、41…車両検出部、43…表示装置、44…操作入力部、45…制御装置、90…搬送部、93…非可動部、AM…自動車、S…照射光、SL…計測開始ライン、TG…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの光軸を基準光軸として該基準光軸を含む所定領域に渡ってレーザ光を照射し、該レーザ光の反射波を受光することで物体を検出するレーザレーダが、車両において予め規定された基準設置軸と前記基準光軸とが一致するように該車両に取り付けられているか否かの合否を検査するレーザレーダの光軸検査方法であって、
前記基準設置軸上において前記車両に対して予め設定された検査距離に配置された対象物を撮像する撮像装置を、該撮像装置の光軸であるカメラ軸と前記基準光軸とが一致するように前記レーザレーダに取り付け、該撮像装置による撮像画像内の中心領域に前記対象物が位置する場合に、検査合格とすることを特徴とするレーザレーダの光軸検査方法。
【請求項2】
一つの光軸を基準光軸として該基準光軸を含む所定領域に渡ってレーザ光を照射し、該レーザ光の反射波を受光することで物体を検出するレーザレーダが、車両において予め規定された基準設置軸と前記基準光軸とが一致するように該車両に取り付けられているか否かの合否を検査する検査システムであって、
前記基準設置軸上において前記車両に対して予め設定された検査距離に配置されるように対象物の位置を調整する対象物調整手段と、
当該撮像手段の光軸であるカメラ軸と前記基準光軸とが一致するように前記レーザレーダに取り付けられ、前記対象物調整手段によって前記車両に対する位置が調整された対象物を撮像する撮像手段と、
を備え、
前記撮像手段による撮像画像内の中心領域に前記対象物が位置する場合に、検査合格とすることを特徴とする検査システム。
【請求項3】
前記対象物から前記検査距離だけ離間した位置における前記車両の向きを検出する姿勢検出手段を備え、
前記対象物調整手段は、前記姿勢検出手段による検出結果に基づいて、前記対象物の向きを調整することを特徴とする請求項2に記載の検査システム。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229987(P2012−229987A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98357(P2011−98357)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】