説明

レーザレーダ装置と出射調整方法

【課題】天候の急変にも即時に追随して人体に障害を与えることなく位置計測が可能なレーザレーダ装置を提供することが目的である。
【解決手段】天候の急変にも即時に追随して、対象物31での第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの強度を所定の強度以下になるように、前記第一のレーザ光12Aおよび前記第二のレーザ光12Bの出射強度を調整するレーザレーダ装置1と出射調整方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置等を計測するレーザレーダ装置とその計測方法、特に、車両の前方にレーザ光を出射し、対象物から反射したレーザ光に基づいて対象物の位置情報等を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザレーダ装置は、レーザ光を出射し位置計測する対象物で反射され受光されるまでの時間と放射角度情報から位置情報を算出している。
【0003】
特許文献1では、水に吸収され易い長波長のレーザ光と、水に吸収され難い短波長のレーザ光により位置計測を行なっている。水に吸収され難い短波長のレーザ光の人の目に対する露光量を検出し、露光量が所定の基準値より大きい場合は、水に吸収され難い短波長のレーザ光を出射しないで、水に吸収され易い長波長のレーザ光を出射していた。
【0004】
また、対象物が近く車両速度が遅い時には人の目に悪影響を与えない長波長のレーザ光を、対象物が遠く車両速度が速い時には計測能力の高い短波長のレーザ光をと、情況に応じてレーザ光を切り替えて単一波長で位置計測を行なっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−243729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
日本工業規格C6802「レーザ製品の安全基準」によれば、180nmから1mmまでがレーザ光の波長域とされ、前記レーザ光を用いるレーザ機器に人体に障害を与えないための安全基準が設けられている。また、前記レーザ光が人の眼に入った時や人の皮膚に当たった時に許容できる安全なレベルとして最大許容露光量(MPE:Maximum Permissible Exposure)がある。
【0007】
従来技術である特許文献1の実施形態では、長波長のレーザ光の波長は1300nmであり、短波長のレーザ光の波長は850nmである。よって、どちらも日本工業規格C6802「レーザ製品の安全基準」に従い安全な取り扱いが必要である。
【0008】
ところが、特許文献1に開示された従来技術では、前記短波長のレーザ光は、人の目に対する露光量が最大許容露光量より大きい際には出射を止められ、前記長波長のレーザ光が出射される。前記長波長のレーザ光は、人の目に対する露光量に制限を設けずに使用しており、安全面に問題があった。
【0009】
特許文献1に開示された従来技術では、対象物が近く車両速度が遅い時には人の目に悪影響を与えない長波長のレーザ光を、対象物が遠く車両速度が速い時には計測能力の高い短波長のレーザ光をと、情況に応じてレーザ光を切り替えて位置計測を行なっている。ところが、前記長波長のレーザ光と前記短波長のレーザ光ともにレーザ光であるので、情況に応じての切り替えだけでは安全な処置とは言い難い。人体に障害を与えないための安全処置として、前記長波長のレーザ光及び前記短波長のレーザ光の人の目に対する露光量は安全基準を満たすべきである。
【0010】
空気中の湿度変化により空気中を進行するレーザ光の強度は変化する。このため、人等の対象物での前記レーザ光の強度が強くなり安全基準を超える危険性がある。また、前記レーザ光の強度が弱まり位置計測ができなることもある。
【0011】
特許文献1に開示された従来技術では、天候の急変による空気中の湿度変化に起因した前記レーザ光の強度変化に対する調整がなされていない。ところが、人等の対象物での前記レーザ光の強度は安全基準を満たす強度以下に調整すべきである。
【0012】
本発明の目的は、このような課題を鑑みてなされたものであり、天候の急変にも即時に追随し人体に悪影響を与えることなく位置計測が可能なレーザレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光と水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光を対象物に向けて出射する出射器と、前記第一のレーザ光が前記対象物で反射された第三のレーザ光と前記第二のレーザ光が前記対象物で反射された第四のレーザ光とを受光する受光器とを備え、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射器でのそれぞれの出射強度の比と前記第三のレーザ光および前記第四のレーザ光の前記受光器でのそれぞれの受光強度の比とから、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が所定の強度以下になるように、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度をそれぞれ調整する出射調整器を備えたことを特徴とする。
【0014】
このような態様によれば、天候の急変にも即時に追随して、前記対象物での前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の強度を所定の強度以下に、即ち、安全基準を満足するように、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度を調整することができる。
【0015】
よって、天候の急変にも即時に追随し人体に悪影響を与えることなく位置計測が可能なレーザレーダ装置を提供することができる。
【0016】
前記出射器にはコリメート光サブモジュールが内設され、前記コリメート光サブモジュールが、レーザ光を出射する半導体レーザと、前記レーザ光を平行光にするコリメートレンズと、前記半導体レーザと前記コリメートレンズを連結する保持部材とを有し、前記出射器は、前記第一のレーザ光を出射するコリメート光サブモジュールと、前記第二のレーザ光を出射するコリメート光サブモジュールとを有することが好ましい。
【0017】
このような態様であれば、前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光を出射することができるとともに前記第一のレーザ光及び前記第二のレーザ光を平行光にすることで拡散による強度低下が防げる。また、前記保持部材が前記半導体レーザと前記コリメートレンズを強固に固定し、光軸や焦点がずれる等を防止でき、精度の良い位置計測が可能である。
【0018】
前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光とを合波する波長分割多重フィルタを組み込んだ前記出射器であることが好ましい。
【0019】
前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光とを合波することで、前記出射器から対象物を経由し受光器に至る光路及び前記対象物で反射される箇所が前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光とで同一となるので、高精度な算出が可能となる。
【0020】
水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光と水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光を出射する出射器と、前記第一のレーザ光が対象物で反射された第三のレーザ光と前記第二のレーザ光が前記対象物で反射された第四のレーザ光とを受光する受光器と、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が所定の強度になる前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射器での出射強度をそれぞれ算出する出射調整器と、それぞれの前記出射強度以下で前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光を前記出射器から出射させる制御器と、を有するレーザレーダ装置の出射調整方法であって、前記出射調整器において、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の出射強度の値と、前記第三のレーザ光および前記第四のレーザ光の受光強度の値と、前記第一のレーザ光および前記第三のレーザ光の距離あたりの透過損失係数と、前記第二のレーザ光および前記第四のレーザ光の距離あたりの透過損失係数とが、前記出射強度を算出する所定の出射調整演算式に代入され、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が前記所定の強度となる前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度が算出され、前記制御器が前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度以下で前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光を前記出射器から出射させることにより、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度がそれぞれ前記所定の強度以下になるように調整されることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、天候の急変にも即時に追随し、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が所定の強度以下になるように、即ち、安全基準を満足するように調整する出射調整方法が可能となる。
【0022】
よって、前記出射調整方法を備えるレーザレーダ装置において、天候の急変にも即時に追随して人体に悪影響を与えることなく位置計測が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、天候の急変にも即時に追随して、水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光と水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光との出射強度の比と、前記第一のレーザ光が対象物で反射された第三のレーザ光と前記第二のレーザ光が対象物で反射された第四のレーザ光との受光強度の比とから、前記対象物での前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の強度を所定の強度以下になるように、即ち、安全基準を満足するように調整することができる。
【0024】
よって、天候の急変にも即時に追随して人体に悪影響を与えることなく位置計測が可能なレーザレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態であるレーザレーダ装置の全体構成図と対象物を示す。
【図2】本発明の実施形態である出射器の概略図である。
【図3】本発明の実施形態である波長分割多重フィルタを備える出射器の概略図である。
【図4】本発明の実施形態である受光器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施形態であるレーザレーダ装置1の全体構成図と対象物31を示す。制御器35からの信号で出射器11は水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光12Aと水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光12Bを出射する。制御器35は、第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの出射強度を出射調整器34に送信する。
【0027】
出射器11から出射された第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bは、レーザレーダ装置1の前方に向けて一次元的または二次元的にレーザ光を出射するスキャナ32によって、レーザレーダ装置1の前方に出射される。
【0028】
スキャナ32から出射された第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bは対象物31によりそれぞれ第三のレーザ光22Aと第四のレーザ光22Bとして反射される。第三のレーザ光22Aと第四のレーザ光22Bは受光器21に受光される。
【0029】
制御器35は、受光器21に受光された第三のレーザ光22Aおよび第四のレーザ光22Bの受光強度を出射調整器34に送信する。
【0030】
第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bの出射器11から出射された時刻とスキャナ32の放射角度情報が制御器35によって距離演算器33に送信されるとともに、第三のレーザ光22Aと第四のレーザ光22Bの受光器21に受光された時刻が制御器35によって距離演算器33に送信され、距離演算器33によって対象物31の位置が算出される。この対象物31の位置情報は、図1に記載されていない後続の電気回路に送信される。
【0031】
対象物31が人間または人間が運転する自動車等の場合には、対象物31での第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bの強度は、人体に悪影響を与えない強度に調整することが必要である。
【0032】
晴天、曇り、雨天、降雪、濃霧等による天候変化に伴い空気中の水分子量が変化すると、空気中を伝播するレーザ光の強度は変化する。空気中の湿度が高くなると、レーザ光が空気中の水分子に吸収され減衰するので、対象物31でのレーザ光の強度を保つには、レーザ光の出射強度を強める必要がある。
【0033】
ところが、空気中の乾燥が進むとレーザ光は空気中で減衰しなくなり対象物31でのレーザ光の強度は強まるため、レーザ光の出射強度は弱める必要がある。
【0034】
次に、出射調整器34が行うレーザ光の出射調整方法について説明する。空気中を伝播するレーザ光の強度の変化は、(1)式および(2)式で表される。
【0035】
【数1】

【0036】
Pe1は、第一のレーザ光12Aの出射器11での強度である出射強度である。
Pi1は、第三のレーザ光22Aの受光器21での強度である受光強度である。
Pe2は、第二のレーザ光12Bの出射器11での強度である出射強度である。
Pi2は、第四のレーザ光22Bの受光器21での強度である受光強度である。
k1は、第一のレーザ光12Aおよび第三のレーザ光22Aの湿度による距離あたりの透過損失係数である。
k2は、第二のレーザ光12Bおよび第四のレーザ光22Bの湿度による距離あたりの透過損失係数である。
Dは、レーザ光が出射器11を出射し対象物31で反射され受光器21に到達するまでの距離である。
MLは、空気中の水分量に相関する湿度係数である。
R1、R2は、第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bとの対象物31での反射損失率である。
【0037】
本発明の実施形態では、レーザ光が空気中水分子に吸収され減衰する様子を表す式として、(1)式と(2)式を使っているが、これらの式に限られるものではなく、レーザ光が空気中水分子に吸収され減衰する様子を表すことができる式であれば構わない。
【0038】
次に、(1)式を(2)式で除して、第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bとは波長が異なるが反射損失率の差は小さいと仮定し、(3)式が求まる。また、(3)式から(4)式が求まる。
【0039】
【数2】

【0040】
本発明の実施形態では、第一のレーザ光12Aの波長は1280nm〜1320nmの範囲から、第二のレーザ光12Bの波長は1410nm〜1490nmの範囲から選択しており、近い波長のレーザ光を選択している。反射損失率はレーザ光の波長により変化すると考えられるが、このように近い波長のレーザ光を採用することで、反射損失率の差は極力抑えられ、反射損失率はほぼ同じであると仮定できる。
【0041】
k1およびk2は、レーザ光の波長に依存する物理量であり、Pe1およびPe2は設定値であり、Pi1およびPi2は計測値である。出射調整器34は、予め記憶されていたk1およびk2、出射器11から制御器35によって送信されたPe1およびPe2の値、受光器21から制御器35によって送信されたPi1およびPi2の値を、(4)式に代入することにより、D×MLを一律に決めることができる。このことは、波長の異なる二波長のレーザ光を同時に出射し受光することで可能となる。特に、水分子に吸収され難い波長のレーザ光と水分子に吸収され易い波長のレーザ光を選んだことで、空気中の湿度の変化によりPi1/Pi2の比が大きく変化するために、天候の急激な変化に敏感に反応するレーザレーダ装置1及びその出射調整方法が可能となる。
【0042】
第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bが、それぞれPe1とPe2の出射強度で出射器11から出射され、対象物31でのそれぞれの強度をPs1とPs2とする。次に、(1)式と(2)式を使って、Ps1とPe1およびPs2とPe2の関係式を求めることを説明する。Ps1とPs2は、対象物31で反射される前のレーザ光の強度であるからR1およびR2は削除し、対象物31は出射器11と受光器21の中心にあると仮定することでD×MLをD×ML/2に変更して、(1)式、と(2)式から(5)式と(6)式が求まる。
【0043】
【数3】

【0044】
光速度は約30万km/秒であることから、例えば、レーザ光が出射器11から200m離れた対象物31を経由して受光器21に到達するまでの距離400mmを伝播する時間は、およそ1.3×10−6秒である。この時、レーザレーダ装置1と対象物31とが時速200km/時間で接近していたとすると、1.3×10−6秒の間に7.4×10−5mしか接近しない。よって、対象物31が出射器11と受光器21の中心にあると言う仮定は、実際的に正しく、この仮定による計算での誤差はほとんど生じない。
【0045】
ここで、対象物31が、人間または人間が運転する自動車である等の場合には、対象物31での強度であるPs1及びPs2は、人体に悪影響を与えないために所定の強度以下、即ち、安全基準以下であることが必要である。
【0046】
本発明の実施形態では、日本工業規格C6802による許容できる安全なレベルとしての最大許容露光量以下にPs1およびPs2がなるように調整している。最大許容露光量に相当する強度をCPとすると、(5)式と(6)式に代入して、出射調整演算式として、(7)式と(8)式が得られる。
【0047】
【数4】

【0048】
出射調整器34は、この出射調整演算式によって第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの出射強度を算出する。
【0049】
出射調整器34は、例えば、余裕を設けて、出射強度を出射調整演算式である(7)式および(8)式から決まる値の0.9倍とし、常に対象物31での第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの強度を0.9×CPになるように調整する。即ち、空気が乾燥する際は、第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの前記出射強度は弱められ、空気中の湿度が高くなる際は、第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの前記出射強度は強められ、対象物31での強度が常に0.9×CPになるように調整される。
【0050】
ところが、空気中の湿度が非常に高くなると、対象物31で反射された後、第三のレーザ光22Aおよび第四のレーザ光22Bは空気中で減衰しながら伝播し、水分子に吸収され易い波長の第四のレーザ光22Bが受光器21に検知されなくなることも想定される。
【0051】
その際には、前述の出射強度調整は停止し、その時点での強度により第一のレーザ光12Aと第三のレーザ光22Aとで位置計測を行う。空気中の乾燥が進み、第四のレーザ光22Bが受光器21に検知されるようになった時点から、再び、前述の出射強度調整を再開し、例えば、対象物31での強度を常に0.9×CPに調整する。
【0052】
なお、第四のレーザ光22Bが受光器21に検知されない間は、第四のレーザ光22Bが受光器21に検知されなくなった時点より空気中の湿度は高いので、第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの対象物31での強度は、常に0.9×CP以下であり安全上問題はない。
【0053】
このようにして、時々刻々に変化する天候に対して、第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの対象物31での強度は人体に悪影響を与えないように調整されるとともに、対象物31の位置計測が可能となる。
【0054】
よって、天候の急変にも即時に追随して人体に悪影響を与えることなく位置計測が可能なレーザレーダ装置1と出射調整方法を提供することができる。
【0055】
本発明での実施形態では、人体に悪影響を与えない所定の強度を、日本工業規格C6802による最大許容露光量に選択したが、これに限られるものではない。例えば、日本工業規格C6802「レーザ製品の安全基準」による人体に障害を与えない低出力おおむね0.39μW以下(クラス1)や最大許容露光量に係数を乗じた値等を選ぶこともできる。
【0056】
スキャナ32は必ずしも必要ではなく、出射器11から前方に直接にレーザ光を出射する場合もある。
【0057】
本発明の実施形態では、レーザ光を用いて位置計測しているが、レーザ光に限られるものではない。180nmから1mmまでの波長域のレーザ光以外の光、可視光、紫外光、電磁波等も用いることができる。
【0058】
図2に、本発明の実施形態である出射器11の概略図を示す。出射器11は、コリメート光サブモジュール(A)41Aとコリメート光サブモジュール(B)41Bとが筐体48Aに収容されて構成されている。前記コリメート光サブモジュール(A)41Aはレーザダイオード(A)43Aとコリメートレンズ45と保持部材47とから構成され、レーザダイオード(A)43Aが水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光12Aを発光しコリメートレンズ45で平行光にされる。また、コリメート光サブモジュール(B)41Bはレーザダイオード(B)43Bとコリメートレンズ45と保持部材47とから構成され、レーザダイオード(B)43Bが水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光12Bを発光しコリメートレンズ45で平行光にされる。
【0059】
本構成によれば、波長の異なる第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bとが出射されるとともに、コリメートレンズ45によって平行光にされるので拡散による強度の減衰が防げる。また、保持部材47がレーザダイオード(A)43Aおよびレーザダイオード(B)43Bと、それぞれコリメートレンズ45と強固に固定するので、光軸や焦点がずれる等の光学的不具合を防止できるので、精度の良い位置計測が可能である。
【0060】
図3に、本発明の実施形態である波長分割多重フィルタ49を備える出射器11の概略図を示す。この出射器11は、第一のレーザ光12Aを出射するコリメート光サブモジュール(A)41Aと第二のレーザ光12Bを出射するコリメート光サブモジュール(B)41Bおよび第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bとを合波する波長分割多重フィルタ49が筐体48Bに収容されて構成されている。第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bとは、波長分割多重フィルタ49により合波され、出射器11の前方に出射される。
【0061】
本構成によれば、第一のレーザ光12Aと第二のレーザ12Bとが合波されることで、出射器11から対象物31を経由し受光器21に至る光路が同一であり、対象物31の同一点で反射される。よって、出射調整器34が行う第一のレーザ光12Aおよび第二のレーザ光12Bの出射強度の算出精度が向上する。
【0062】
図4に、本発明の実施形態である受光器21の概略図を示す。この受光器21は、水分子に吸収され難い反射された第三のレーザ光22Aと水分子に吸収され易い反射された第四のレーザ光22Bとを受光する二つの受光部が筐体48Cに収容されて構成されている。前記二つの受光部は、レーザ光を受光する面にそれぞれフィルタ(A)50Aとフィルタ(B)50Bを備えている。フィルタ(A)50Aは第三のレーザ光22Aを透過し、フィルタ(B)50Bは第四のレーザ光22Bを透過させる。フィルタ(A)50Aとフィルタ(B)50Bを透過したレーザ光は、それぞれ集光レンズ46によって、フォトダイオード(A)44Aとフォトダイオード(B)44Bとの検出部に集光され高感度に受光される構成となっている。
【0063】
本構成によれば、受光器21は、第三のレーザ光22Aと第四のレーザ光22Bとのみを選択的に高感度に受光することが可能となる。よって、他の波長のレーザ光を受光することを防止できるので、出射調整器34が行う第一のレーザ光12A及び第二のレーザ光12Bの出射強度の算出精度が向上する。
【0064】
第一のレーザ光12Aと第二のレーザ光12Bは、制御器35からの信号により出射器11から出射される。この際に、第一のレーザ光12A及び第二のレーザ光12Bの出射強度は、制御器35によって出射器11の駆動電流が増減されることにより調整される。ただし、前記出射強度の調整は、前記駆動電流による調整方法に限られるものではなく、レーザレーダ装置の使用状況等に合わせて適宜選択し得る。
【符号の説明】
【0065】
1 レーザレーダ装置
11 出射器
12A 第一のレーザ光
12B 第二のレーザ光
21 受光器
22A 第三のレーザ光
22B 第四のレーザ光
31 対象物
32 スキャナ
33 距離演算器
34 出射調整器
35 制御器
41A コリメート光サブモジュール(A)
41B コリメート光サブモジュール(B)
43A レーザダイオード(A)
43B レーザダイオード(B)
44A フォトダイオード(A)
44B フォトダイオード(B)
45 コリメートレンズ
46 集光レンズ
47 保持部材
48A 第一の筐体
48B 第二の筐体
48B 第三の筐体
49 波長分割多重フィルタ
50A フィルタ(A)
50B フィルタ(B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光と水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光を対象物に向けて出射する出射器と、
前記第一のレーザ光が前記対象物で反射された第三のレーザ光と前記第二のレーザ光が前記対象物で反射された第四のレーザ光とを受光する受光器とを備え、
前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射器でのそれぞれの出射強度の比と前記第三のレーザ光および前記第四のレーザ光の前記受光器でのそれぞれの受光強度の比とから、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が所定の強度以下になるように、前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度をそれぞれ調整する出射調整器を備えたことを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記出射器にはコリメート光サブモジュールが内設され、
前記コリメート光サブモジュールが、
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記レーザ光を平行光にするコリメートレンズと、
前記半導体レーザと前記コリメートレンズを連結する保持部材と、
を有し、
前記出射器は、
前記第一のレーザ光を出射するコリメート光サブモジュールと、
前記第二のレーザ光を出射するコリメート光サブモジュールと、
を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光とを合波する波長分割多重フィルタを組み込んだ前記出射器を備えたことを特徴とする請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
水分子に吸収され難い波長の第一のレーザ光と水分子に吸収され易い波長の第二のレーザ光を出射する出射器と、
前記第一のレーザ光が対象物で反射された第三のレーザ光と前記第二のレーザ光が前記対象物で反射された第四のレーザ光とを受光する受光器と、
前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が所定の強度になる前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射器での出射強度をそれぞれ算出する出射調整器と、
それぞれの前記出射強度以下で前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光を前記出射器から出射させる制御器と、
を有するレーザレーダ装置の出射調整方法であって、
前記出射調整器において、
前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の出射強度の値と、
前記第三のレーザ光および前記第四のレーザ光の受光強度の値と、
前記第一のレーザ光および前記第三のレーザ光の距離あたりの透過損失係数と、
前記第二のレーザ光および前記第四のレーザ光の距離あたりの透過損失係数とが、
前記出射強度を算出する所定の出射調整演算式に代入され、
前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度が前記所定の強度となる前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度が算出され、
前記制御器が前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記出射強度以下で前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光を前記出射器から出射させることにより前記第一のレーザ光および前記第二のレーザ光の前記対象物での強度がそれぞれ前記所定の強度以下になるように調整されることを特徴とする出射調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122827(P2012−122827A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273336(P2010−273336)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】