説明

レーザレーダ装置

【課題】検出物体の検出精度を高め得るレーザレーダ装置を提供する。
【解決手段】フォトダイオード20により検出時間Tが所定の時間範囲ΔT内にあるとして検出される反射光のうち、その光量に対応する受光信号の振幅Aが、異物反射光量Lsより低く設定された異物検出閾値Ad以上であり異物反射光量Lsより高く設定された近点検出閾値An未満である反射光を無効とし、当該振幅Aが近点検出閾値An以上である反射光の検出時間Tに基づいて検出物体までの距離が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を用いて検出物体までの距離や方位を検出するレーザレーダ装置に関する技術として、下記特許文献1に示すレーザ光走査型距離測定装置が知られている。このレーザ光走査型距離測定装置は、レーザ光走査部から送信するレーザ光を予め決めた所定の走査角度方向へ送信した場合に、このレーザ光が透光性の窓で正反射する正反射レーザ光を検出可能な位置に光検出素子が設けられている。そして、レーザ光走査部から送信するレーザ光の送信方向が上記所定の走査角度以外の場合に、光検出素子で検出したレーザ光の強度が予め決めた所定の強度以上に上昇すると、透光性の窓に汚れが存在すると判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−223937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す構成では、窓部に付着する異物を検出するために別途光検出素子等の受光手段を用意する必要があるため、制御が複雑になるだけでなく低コスト化および小型化が困難である。特に、比較的短時間で反射光を受光した場合、この反射光が近点にある検出物体からの反射によるものか、窓部に付着する異物からの反射によるものかを判断することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、検出物体の検出精度を高め得るレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のレーザレーダ装置では、レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出する光検出手段と、所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を窓部を介して空間に向けて偏向させ、かつ前記窓部を透過した前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、を備えたレーザレーダ装置であって、前記距離測定手段は、前記窓部に付着して前記レーザ光の透過を抑制する異物が当該窓部に照射されるレーザ光の面積よりも大きく付着する場合に、当該異物にて反射された反射光の光量および前記検出時間を異物反射光量および異物反射時間とするとき、前記光検出手段により前記検出時間が前記異物反射時間に相当する時間にて検出される前記反射光のうち、その光量が前記異物反射光量より低く設定された第1閾値以上であり前記異物反射光量より高く設定された第2閾値未満である反射光を無効とし、その光量が前記第2閾値以上である反射光の前記検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザレーダ装置において、前記距離測定手段は、前記異物反射時間よりも長い検出時間の反射光では、前記第1閾値より低く設定された第3閾値に基づいて前記検出物体までの距離を測定することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のレーザレーダ装置において、前記光検出手段により前記検出時間が前記異物反射時間に相当する時間にて検出される前記反射光の光量が前記第1閾値以上になるとき、前記異物の付着を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、窓部に付着してレーザ光の透過を抑制する異物が当該窓部に照射されるレーザ光の面積よりも大きく付着する場合に、当該異物にて反射された反射光の光量および検出時間を異物反射光量および異物反射時間とする。そして、光検出手段により検出時間が上記異物反射時間に相当する時間にて検出される反射光のうち、その光量が上記異物反射光量より低く設定された第1閾値以上であり上記異物反射光量より高く設定された第2閾値未満である反射光を無効とし、その光量が第2閾値以上である反射光の検出時間に基づいて検出物体までの距離が測定される。
【0010】
上記異物反射時間に相当する時間にて検出される反射光は、近点にある検出物体からの反射によるものか、窓部に付着する異物からの反射によるものか、のいずれかである。異物からの反射光の光量は、異物が大きくなるほど増加し、この異物が当該窓部に照射されるレーザ光の面積よりも大きくなると反射量が一定になるために一定の値(異物反射光量)となる。そして、一般に、検出物体は窓に付着する異物よりも反射率が高いため、近点の検出物体からの反射光の光量は、異物からの反射光に対して高くなる。
【0011】
そのため、上記異物反射時間に相当する時間にて検出される反射光の光量が、第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合にはその反射光は異物からの反射によるものと判断し、第2閾値以上である場合にはその反射光は検出物体からの反射によるものと判断することができる。これにより、異物からの反射によるものと判断される反射光の検出を無効とすることで、異物の付着に起因する誤検出をなくすとともに近点にある検出物体を確実に検出することができる。
したがって、窓部に異物等が付着する場合でもこの異物からの反射光の検出を無効として検出物体の検出精度を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明では、異物反射時間よりも長い検出時間の反射光については、第1閾値より低く設定された第3閾値に基づいて、距離測定手段により検出物体までの距離が測定される。
【0013】
異物反射時間よりも長い検出時間にて検出される反射光は、遠点の検出物体からの反射によるものであり異物からの反射によるものではないため、異物からの反射を考慮する必要がないので、反射光を検出するための閾値を小さくすることができる。そのため、異物反射時間よりも長い検出時間では、上記第3閾値に基づいて反射光を検出することで、異物反射光量よりも低い光量の反射光でも検出されるので、検出精度をさらに高めることができる。
【0014】
請求項3の発明では、異物反射時間に相当する検出時間にて検出される反射光の光量が第1閾値以上になるとき、異物の付着を報知する報知手段が設けられている。窓部に付着した異物が大きくなると、この異物からの反射光の光量は、第1閾値以上になる。このため、検出される反射光の光量が第1閾値以上になる場合には、報知手段により異物の付着を報知することで、使用者に異物の除去を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るレーザレーダ装置を概略的に例示する断面図である。
【図2】窓部に付着した異物の状態を例示する拡大断面図である。
【図3】窓部に付着した異物の大きさとその異物からの反射光に応じた受光信号との関係を示す波形図である。
【図4】制御回路における検出処理の流れを例示するフローチャートである。
【図5】遠点の検出物体からの反射光に応じた受光信号を示す波形図である。
【図6】近点の検出物体からの反射光に応じた受光信号を示す波形図である。
【図7】異物からの反射光による受光信号と近点の検出物体からの反射光による受光信号とが重なった状態を示す波形図である。
【図8】窓部に付着した異物からの反射光に応じた受光信号を示す波形図である。
【図9】異物を透過したレーザ光の一部が検出物体によって反射されて反射光として受光された受光信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L3を受光するフォトダイオード20と、レーザダイオード10およびフォトダイオード20を制御する制御回路70とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、制御回路70の制御により図略のレーザ駆動回路からパルス電流を供給されてパルスレーザ光(レーザ光L0)を投光するものである。
【0017】
フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当するものであり、レーザダイオード10からレーザ光L0が発生したときに、このレーザ光L0が検出物体によって反射した反射光L3等を検出し受光信号に変換して制御回路70に出力する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが取り込まれる構成となっており、図1の例では、符号L3で示す2つのライン間の領域の反射光が取り込まれるようになっている。
【0018】
また、レーザ光L0の光軸上にはレンズ60及びミラー30が設けられている。レンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L0を平行光に変換する。
【0019】
ミラー30は、レーザダイオード10からのレーザ光L0の透過と、検出物体側からの反射光L3の反射を実現するものである。具体的には、レーザ光L0の光軸に対し所定角度で傾斜してなる反射面31を有するとともに、反射面31と交差する方向の貫通路32を備えている。本構成では、レーザ光L0の光軸と反射光L3の光軸とを一致させる構成としており、ミラー30は、共通の光軸上に配されて貫通路32を介してレーザ光L0を通過させる一方、反射面31により反射光L3をフォトダイオード20に向けて反射する構成をなしている。
【0020】
なお、上述したように、レーザダイオード10から貫通路32までのレーザ光L0の光路上に、レーザ光L0を平行光に変換するレンズ60が設けられているが、このレンズ60は、貫通路32においてほぼすべての光を通過させる平行光を発生させる形態とすると良い。逆に、貫通路32に着目した場合、当該貫通路32は、レンズ60によって平行光とされたレーザ光L0のほぼすべての光を通過させるサイズとすると良い。
【0021】
また、ミラー30を通過するレーザ光L0の光軸上には、回動偏向機構40が設けられている。この回動偏向機構40は、レーザ光L0の光軸方向に延びる中心軸を中心として回動可能に配設されるとともに、この中心軸上に焦点位置が設定される凹面鏡41によってレーザ光L0を空間に向けて反射させ且つ反射光L3をミラーに向けて偏向させている。なお、回動偏向機構40および凹面鏡41は、特許請求の範囲に記載の「回動偏向手段」および「偏向手段」の一例に相当する。
【0022】
さらに、回動偏向機構40を回転駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸42を回転させることで、軸42と連結された回動可能な凹面鏡41を回転駆動する構成となっている。モータ50は、ここではステップモータによって構成されている。ステップモータは、種々のものを利用でき、1ステップ毎の角度が小さいものを使用すれば、緻密な回動が可能となる。また、モータ50としてステップモータ以外の駆動手段を用いてもよい。例えばサーボモータ等を用いても良いし、定常回転するモータを用い、凹面鏡41が測距したい方向を向くタイミングに同期させてパルスレーザ光を出力することで、所望の方向の検出を可能としてもよい。なお、本実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸42の回転角度、即ち凹面鏡41の回転角度を検出する回転角度センサ52が設けられており、この回転角度センサ52は、凹面鏡41の回転角度に対応する角度信号を制御回路70に出力する。当該回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸42の回転角度を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用でき、また、検出対象となるモータ50の種類も特に限定されず、様々な種類のものに適用できる。
【0023】
また、本実施形態では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動偏向機構40、モータ50や制御回路70等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3における凹面鏡41の周囲には、当該凹面鏡41を取り囲むようにレーザ光L0及び反射光L3の通過を可能とする導光部4が形成されている。導光部4は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部4を閉塞する形態でレーザ光が透過可能なガラス板等からなる窓部5が配され、防塵が図られている。
【0024】
窓部5は、凹面鏡41に入光するレーザ光L0の光軸と直交する仮想平面に対し全周にわたり傾斜した構成となっている。即ち、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0に対して板面が傾斜した構成をなしている。従って、凹面鏡41から空間に向かうレーザ光L0が窓部5にて反射してもノイズ光となりにくくなっている。
【0025】
制御回路70は、例えば、マイコンやメモリ(ROM、RAM、EEPROM等)等から構成されており、上述したレーザダイオード10およびフォトダイオード20等を制御することで、検出物体までの距離や方向を検出する検出処理を所定のコンピュータプログラムにより実行する機能を有するものである。
【0026】
この制御回路70には、ランプ71が制御可能に接続されている。このランプ71は、制御回路70からの報知信号に応じて発光することで、後述する異物Dの検出時にその旨を視覚的に報知する報知手段として機能するものである。なお、ランプ71に代えて、例えばブザー等を報知手段として採用してもよい。
【0027】
次に、本実施形態に係るレーザレーダ装置1の制御回路70における検出処理について説明する。
この検出処理では、図2に例示するように窓部5に付着した汚れ等の異物Dからの反射光の検出を無効とするために、反射光を検出するための閾値が変更される。
【0028】
まず、異物Dからの反射光の検出を無効とする本検出処理の原理について説明する。
図2に例示するように、凹面鏡41からのレーザ光L0の透過を抑制するように異物Dが窓部5に付着すると、レーザ光L0の一部が反射光としてケース3内に反射される。この場合、図3の実線にて例示するように、レーザ光L0の出力から比較的短い検出時間で検出された反射光に応じた受光信号がフォトダイオード20から出力される。この検出時間を異物反射時間Tsとすると、付着する異物Dが大きくなるほど異物反射時間Tsにて検出される反射光の光量が増加する(図3の波線部参照)。そして、異物Dが窓部5に照射されるレーザ光L0の面積よりも大きくなると、反射量が一定になるために検出される反射光の光量が一定の値(以下、異物反射光量Lsともいう)となる。
【0029】
レーザ光L0の照射後に上記異物反射時間Tsに相当する時間にて検出される反射光は、上述のように窓部5に付着する異物Dからの反射によるものか、窓部5に対して近点にある検出物体からの反射によるものか、のいずれかである。そして、一般に、検出物体は窓部5に付着する異物Dよりも反射率が高いため、近点の検出物体からの反射光の光量は、異物Dからの反射光の光量に対して高くなる。そこで、本実施形態では、異物Dからの反射光の検出を無効とし検出物体からの反射光の検出を有効とするために、フォトダイオード20からの受光信号と比較される所定の閾値を、検出時間に応じて変更する。
【0030】
以下、検出処理の具体的な流れについて図4のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の検出処理中では、制御回路70により駆動制御されたモータ50が回転することにより、凹面鏡41が一定速度で回転しているものとする。また、上記異物反射時間Tsおよび異物反射光量Lsは、測定方向毎に予め測定されて制御回路70のメモリ等にそれぞれ記憶されているものとする。
【0031】
まず、ステップS101において、レーザ発光処理がなされる。この処理では、タイミング信号発生部にて生成された発光トリガに応じた所定のパルス幅の発光信号がレーザ駆動回路に出力される。これにより、レーザ駆動回路に駆動制御されて、レーザダイオード10から上記所定のパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L0)が出力される。このレーザ光L0は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ60を通過することで平行光に変換される。レンズ60を通過したレーザ光L0は、ミラー30に形成された貫通路32を通過して凹面鏡41に入射し、この凹面鏡41にて平行光として反射され空間に向けて照射される。
【0032】
次に、ステップS103において、レーザ受光処理がなされる。レーザ光L0が検出物体等によって反射光として反射されると、この反射光は、凹面鏡41にて集光されてミラー30を介してフォトダイオード20へ向けて反射される。これにより、上記レーザ受光処理では、フォトダイオード20から反射光の受光に応じた受光信号が制御回路70に入力される。
【0033】
続いて、ステップS105において、フォトダイオード20からの受光信号の振幅Aが、その測定方向における異物反射光量Lsに対応する値よりも所定量小さく設定された閾値(以下、遠点検出閾値Afともいう)以上であるか否かについて判定される。ここで、受光信号の振幅Aが遠点検出閾値Afは未満であれば(S105でNo)、反射光が受光されていないと判断されて、ステップS101からの処理が繰り返される。なお、遠点検出閾値Afは、より遠点の検出物体からの反射光を検出可能として検出精度を高めるために、後述する異物検出閾値Adよりも小さく設定されている。そして、受光信号の振幅Aが遠点検出閾値Af以上になると、反射光を受光したとしてステップS105にてYesと判定される。
【0034】
次に、ステップS107において、レーザ光L0の出力から上述のように反射光を受光するまでの時間(以下、検出時間Tともいう)が、所定の時間範囲ΔT内にあるか否かについて判定される。なお、所定の時間範囲ΔTは、その受光信号が異物Dからの反射によるものか否かを判断するために、異物反射時間Tsに相当し得る時間として、当該異物反射時間Tsを基準に前後に所定の時間幅を有するように設定されている。
【0035】
ここで、図5に例示するように、受光信号の振幅Aが遠点検出閾値Af以上になる検出時間Tが、所定の時間範囲ΔT内にない場合、すなわち、異物反射時間Tsよりも所定時間以上長い場合、この反射光は、遠点の検出物体からの反射によるものであり異物Dからの反射によるものではないと判断される。この場合、ステップS107にてNoと判定されて、ステップS109にて遠点距離測定処理がなされて、遠点検出閾値Afに応じて検出された検出時間Tに基づいて検出物体までの距離が測定される。このように測定された距離に関する情報は、ステップS111における出力処理により、軸42の回転角度、すなわち検出物体の方向に関する情報とともに、図略の外部装置等に対して出力される。なお、ステップS109および後述するステップS115を実行する制御回路70は、特許請求の範囲に記載の「距離測定手段」の一例に相当し得る。
【0036】
一方、検出時間Tが所定の時間範囲ΔT内にある場合には(S107でYes)、ステップS113にて、受光信号の振幅Aが、その測定方向における異物反射光量Lsに対応する値よりも所定量大きく設定された閾値(以下、近点検出閾値Anという)以上であるか否かについて判定される。ここで、図6に例示するように受光信号の振幅Aが近点検出閾値An以上である場合、異物Dからの反射光の光量は異物反射光量Ls以上にならないことから、この反射光は、近点の検出物体からの反射によるものであり異物Dからの反射によるものではないと判断される。この場合、ステップS113にてYesと判定されて、ステップS115にて近点距離測定処理がなされて、近点検出閾値Anに応じて検出された検出時間に基づいて検出物体までの距離が測定される。このように測定された距離は、上記ステップS111にて出力処理がなされて、外部装置等に対して出力される。
【0037】
これにより、例えば、図7に例示するように、異物Dからの反射光による受光信号と近点の検出物体からの反射光による受光信号とが重なる場合であっても、異物反射光量Lsに対応する値よりも所定量大きく設定された近点検出閾値Anに基づき反射光の検出がなされるので、近点の検出物体からの反射光を検出することができる。
【0038】
一方、ステップS113において、受光信号の振幅Aが近点検出閾値An以上でない場合には(S113でNo)、ステップS117にて、当該振幅Aが、その測定方向における異物反射光量Lsに対応する値よりも所定量小さく設定された閾値(以下、異物検出閾値Adという)以上であるか否かについて判定される。上述したように異物検出閾値Adは遠点検出閾値Afよりも大きく設定されており、図8に例示するように受光信号の振幅Aが異物検出閾値Ad以上になると、この反射光は、異物Dからの反射によるものであると判断されて、ステップS117にてYesと判定される。
【0039】
このように異物Dからの反射光であると判断されると、ステップS119にて報知処理がなされて、ランプ71に対して報知信号が出力される。これにより、ランプ71が所定の状態で発光することで、窓部5に異物Dが付着していることが報知されて、反射光の検出が無効とされる。
【0040】
そして、ステップS121において、上述のように異物Dからの反射光が検出された受光信号に、検出物体からの反射光の受光に応じた信号が含まれるか否かについて判定される。すなわち、異物Dを透過したレーザ光L0の一部が検出物体によって反射されて反射光として受光されたか否かについて判定するものであり、図9に例示するように、他の受光信号の振幅Aが遠点検出閾値Af以上になる検出時間Tが所定の時間範囲ΔTよりも遠点側になる場合には、ステップS121にてYesと判定される。そして、ステップS109にて、この遠点側の受光信号について、検出物体までの距離が測定される。これにより、窓部5に異物Dが付着する場合であっても、遠点の検出物体までの距離を測定することができる。
【0041】
一方、ステップS117において、受光信号の振幅Aが異物検出閾値Ad以上でない場合には(S117でNo)、異物Dからの反射光であるものの報知すべき大きさでないとして、上記報知処理がなされずに反射光の検出が無効とされて、上記ステップS121以降の処理がなされる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、フォトダイオード20により検出時間Tが所定の時間範囲ΔT内にあるとして検出される反射光のうち、その光量に対応する受光信号の振幅Aが、異物反射光量Lsより低く設定された異物検出閾値Ad以上であり異物反射光量Lsより高く設定された近点検出閾値An未満である反射光を無効とし、当該振幅Aが近点検出閾値An以上である反射光の検出時間Tに基づいて検出物体までの距離が測定される。
【0043】
これにより、異物Dからの反射によるものと判断される反射光の検出を無効とすることで、異物Dの付着に起因する誤検出をなくすとともに近点にある検出物体を確実に検出することができる。
したがって、窓部5に異物D等が付着する場合でもこの異物Dからの反射光の検出を無効として検出物体の検出精度を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、所定の時間範囲ΔT内にない検出時間の反射光、すなわち、異物反射時間Tsよりも長い検出時間の反射光については、異物検出閾値Adより低く設定された遠点検出閾値Afに基づいて、検出物体までの距離が測定される。
【0045】
これにより、異物反射時間よりも所定時間以上長い検出時間では、遠点検出閾値Afに基づいて反射光を検出することで、異物反射光量Lsよりも低い光量の反射光でも検出されるので、検出精度をさらに高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、異物反射時間Tsに相当する検出時間Tにて検出される反射光の光量に対応する受光信号の振幅Aが異物検出閾値Ad以上になるとき、異物Dの付着を報知する報知手段としてランプ71が設けられている。これにより、受光信号の振幅Aが異物検出閾値Ad以上になる場合には、ランプ71により異物Dの付着を報知することで、使用者に異物Dの除去を促すことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)ステップS107では、検出時間Tが、所定の時間範囲ΔT内にあるか否かについて判定することに限らず、異物反射時間Tsに相当し得るように設定される時間閾値以下であるか否かについて判定してもよい。この場合、検出時間Tが時間閾値以下である場合は、検出時間Tが所定の時間範囲ΔT内にある場合に相当するものとする。
【0048】
(2)ステップS117を廃止することで、検出時間Tが所定の時間範囲ΔT内にあり、受光信号の振幅Aが遠点検出閾値Af以上かつ近点検出閾値An未満である反射光を受光した場合は、全てステップS119にて報知処理を実施してもよい。これにより、より小さな異物Dでもその付着を報知することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…レーザレーダ装置
3…ケース
5…窓部
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
40…回動偏向機構(回動偏向手段)
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(距離測定手段)
71…ランプ(報知手段)
Ad…異物検出閾値(第1閾値)
Af…遠点検出閾値(第3閾値)
An…近点検出閾値(第2閾値)
D…異物
Ls…異物反射光量
T…検出時間
Ts…異物反射時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段から前記レーザ光が発生されたときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出する光検出手段と、
所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を窓部を介して空間に向けて偏向させ、かつ前記窓部を透過した前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、
前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記レーザ光発生手段での前記レーザ光の発生からこのレーザ光が前記検出物体にて反射された反射光が前記光検出手段により検出されるまでの検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定する距離測定手段と、
を備えたレーザレーダ装置であって、
前記距離測定手段は、
前記窓部に付着して前記レーザ光の透過を抑制する異物が当該窓部に照射されるレーザ光の面積よりも大きく付着する場合に、当該異物にて反射された反射光の光量および前記検出時間を異物反射光量および異物反射時間とするとき、
前記光検出手段により前記検出時間が前記異物反射時間に相当する時間にて検出される前記反射光のうち、その光量が前記異物反射光量より低く設定された第1閾値以上であり前記異物反射光量より高く設定された第2閾値未満である反射光を無効とし、その光量が前記第2閾値以上である反射光の前記検出時間に基づいて前記検出物体までの距離を測定することを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記距離測定手段は、前記異物反射時間よりも長い検出時間の反射光では、前記第1閾値より低く設定された第3閾値に基づいて前記検出物体までの距離を測定することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記光検出手段により前記検出時間が前記異物反射時間に相当する時間にて検出される前記反射光の光量が前記第1閾値以上になるとき、前記異物の付着を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−128112(P2011−128112A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289335(P2009−289335)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】