レーザー加工方法、およびそれを用いたノズルプレート製造方法ならびにインクジェットヘッド
【課題】インク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液液の着弾精度の向上を実現し得るノズル孔を形成することができるレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】基板にノズルとなる孔9を形成してノズルプレート8を製造するために、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に照射する。このとき、レーザー光の偏心量、例えば傾き角度を、より大きな偏心量(角度)から小さな偏心量に変化させる。大きな偏心量を第1の偏心量とし、これより小さな偏心量を第2の偏心量とする。
【解決手段】基板にノズルとなる孔9を形成してノズルプレート8を製造するために、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に照射する。このとき、レーザー光の偏心量、例えば傾き角度を、より大きな偏心量(角度)から小さな偏心量に変化させる。大きな偏心量を第1の偏心量とし、これより小さな偏心量を第2の偏心量とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法、およびそれを用いたノズルプレート製造方法ならびにインクジェットヘッドに関するものであり、特に、インクジェット吐出装置のノズル孔として好適に用いることのできる貫通孔をレーザーアブレーションによって形成することのできるレーザー加工方法、およびそれを用いたノズルプレートの製造方法、ならびに当該製造方法によって製造されるノズルプレートを備えるインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料からなるインクジェットヘッド用ノズルプレートにノズル孔を形成する方法として、エキシマレーザーによるアブレーション加工が用いられている。エキシマレーザーによるアブレーション加工は、常温、常圧の条件下において、短時間で、サブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔や溝を加工できる。また、エキシマレーザーによるアブレーション加工は、マスクを透過したエキシマレーザー光を、レンズによって被加工物上に結像させることにより、複数のノズル孔を一括加工できるという特徴がある。エキシマレーザーは短パルス(〜20ns)、高輝度(〜数10MW)の紫外光を出力できる。発振波長は、レーザーガスの種類により異なるが、アブレーションによりよく使用されるのは、XeCl(波長308nm)、KrF(波長248nm)である。
【0003】
ところで、インクジェットヘッドのノズルプレートにおけるノズル孔の断面(テーパー角度)、およびノズル孔の出口側形状は、ノズル孔から吐出するインク液滴の速度(吐出速度)を大きく支配する(例えば、非特許文献1参照)。例えば、図8に示すように、ノズル孔の出口径に応じて、ノズル孔から吐出されるインク液滴の速度が異なる。なお、図8では、インク液滴として、粘度3.0mPa・secのインクを用いている。図8から明らかなように、インク液滴の速度は、ノズル孔の出口径が22μmである場合に最大となり、出口径が小さくなるにしたがって徐々に小さくなる。また、図9に示すように、ノズル孔のテーパー角度に応じて、ノズル孔から吐出されるインク液滴の速度が異なる。なお、図9では、ノズル孔の出口径を20μmとしてテーパー角度を変化させたときのインク液滴の速度を示している。図9から明らかなように、テーパー角度が小さくなるにしたがって、インク液滴の速度も小さくなる。
【0004】
上記形状を有するノズル孔を形成するためのレーザー加工方法として、従来から、複数枚のマスクの開口が重なり合うことによって形成される開口のレーザー光の出口側の形状を規定することによって、ノズル孔を形成する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、図10に示すように、マスク101aとマスク101bとが重なり合って備えられている。上記マスク101aには、マスクパターン(開口)102a・103aが形成され、上記マスク101bには、マスクパターン102b・103bが形成されている。マスク101aとマスク101bとは、それぞれマスク支持枠104aとマスク支持枠104bとに取り付けられており、上記マスク支持枠104aとマスク支持枠104bとは、それぞれ螺子スライダ105aと螺子スライダ105bとに沿って、矢印の方向に移動することができる。したがって、マスク支持枠104aとマスク支持枠104bとを移動させることによって、マスク101aとマスク101bとを移動させることができる。その結果、マスクパターン102aとマスクパターン102b、マスクパターン103aと103bとが互いに接離する方向にスライドすることができる。そして、マスクパターン102aとマスクパターン102bとの重なり、およびマスクパターン103aと103bとの重なりによって形成されるレーザー透過部100
の面積を変えることができる。
【0005】
次いで、図11(a)〜(c)を用いて、上記従来の構成によってテーパー部を形成する方法について説明する。図11(a)に示すように、テーパー部を形成するには、まず、レーザー透過部110の面積が孔114aの面積と対応するようにマスクパターン(例えば、マスクパターン102aとマスクパターン102b)の重なり度合いを調製し、その後、当該レーザー透過部110を介してノズルプレート材料111にレーザー光Lを照射することによって孔114aを形成する。次いで、マスクパターンの重なり度合いを大きくする方向にマスクを若干移動させることにより、レーザー透過部110の面積を若干大きくした後、孔114aが形成されているノズルプレート材料111の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより最初に形成された孔114aよりも若干直径の大きな孔114bが形成される。次いで、図11(b)に示すように、マスクパターンの重なり度合いを更に大きくすることによって、レーザー透過部110の面積を更に大きくし、その後、ノズルプレート材料111の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより、上記孔114bよりも若干直径の大きな孔114cが形成される。そして、図11(c)に示すように、上記操作を繰り返すことによってテーパー部115が形成される。
【0006】
また、従来から、所望の孔を形成するために、レーザー光をその照射光軸に対して偏心させた状態で回転させつつ照射して加工部位を加工し、加工の進行にともなってレーザー光の偏心量および/または焦点を変化させるレーザー加工方法が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、従来から、酸素ガスをレーザー光と同軸で流しつつレーザー光を集光して鋼などの熱加工を行うレーザー加工ヘッドであって、偏心レーザー光を用いて熱加工を行うレーザー加工ヘッドが用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−153260号公報(平成17年6月16日公開)
【特許文献2】特開2002−248591号公報(平成14年9月3日公開)
【特許文献3】特開2003−311455号公報(平成15年11月5日公開)
【非特許文献1】KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT 2005 vol.2 pp.89−92
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、広範囲の吐出エリアに対して短時間でインク液滴を吐出する要請が高まる中、インク吐出装置の製造時におけるノズルサイズの制御や、インク吐出装置に設けられるノズル数の増加が必要不可欠となってきている。このとき、エキシマレーザーのビームサイズには限界があるため、一括加工できるノズルエリアには限界がある。そのため、大きなノズルシートに対し、ノズルピッチを保ったままで同一のパターンを複数個形成する場合、マスクパターンとマスクの駆動ステージ(マスク送り方向)との高精度アライメント(数ミクロン程度)が必要となる。更に、エキシマレーザーのビーム強度安定エリアも限られており、前記ビーム強度安定エリアとマスクパターンとのアライメントも同時に必要となる。更に、インクジェットの用途が広がる中、モデルチェンジも頻繁であって、その都度マスク交換が必要となる。つまり、前記アライメントをかなり頻繁に行う必要がある。したがって、上記従来のレーザー加工方法は、例えば以下に示すような問題点を有している。
【0009】
例えば、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、複数のマスクを重ね合わせて用いるため、高精度なアライメントを各マスクに対して行わなければならない。例えば、マスク同士の相対的な位置関係を規定するための高精度なアライメントを、各マスクに対して
行う必要があり、上記アライメント作業に必要以上の労力を要するという問題点を有する。また、複数枚のマスクを使用するとともに、駆動ステージや、調整用カメラなども必要となることから、大幅に製造コストが上昇するという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、複数のマスクにおける開口の重なりによって形成されるレーザー透過部を介して、被加工部にレーザー光を照射するので、ノズル孔のテーパー部の真円度(短径/長径比)が低下するという問題点を有している。テーパー部の真円度が低下すれば、ノズル孔から安定した液滴量を吐出することができないのみならず、インクの吐出方向が安定化しないという問題を生じる。この問題点を解決するために、従来から、ノズル孔を形成するときのレーザーのパワー密度を高める方法が用いられている。しかしながら、レーザーのパワー密度を上げた場合、テーパー角度が小さくなるという問題が発生する。図9にて説明したように、テーパー角度が小さくなると液滴速度が低下する。その結果、安定した液滴の吐出を行うことができないという問題を生じる。
【0011】
また、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、テーパー部の形状が階段状となるため、階段のエッジ部において、インク流の乱れ、ダスト詰まり、インク凝集などの問題点を生じる。
【0012】
また、特許文献2に記載のレーザー加工装置は、レーザー光の偏心回転手段と、集光レンズとを備え、かつ、加工に伴い偏心回転手段の偏心度を変える機構、および集光レンズの位置を変える機構を備えている。その結果、ノズルの3次元的な形状操作と、逆テーパー形状のノズル製造を可能としている。しかしながら、上記構成によって複数のノズル孔を一括加工した場合、以下のような問題が発生する。ノズル孔の精密加工においては、個々のノズル孔のテーパー形状や孔径の他に、一括加工したノズル孔間の孔径のバラツキが小さいことが重要である。特に、インクジェット用ノズルは、数10μm以下のノズル径となるが、その場合、ノズル孔間の孔径のバラツキはサブミクロン(0.数μm)のオーダーであることが必要とされる。ノズル孔間の孔径のバラツキを小さくするためには、高いレーザーパワーに加え、レーザー光のフォーカス位置を正確に設定することが必要である。また、偏心回転手段においては、パルスレーザーを用いる場合、レーザーの発振周波数と上記偏心回転手段の回転周波数とを適宜設定する必要がある。具体的には、発振周波数をf、回転周波数をφとした場合、φ=nf or f/n(n:整数)となるポイントから、少しずらしたポイントに回転周波数を設定したほうが、良好な加工形状を得られる。更に、偏心回転手段の傾き角(レーザー光の偏心度)を変更した場合、同一箇所に照射されるレーザーのパワー密度が変わり、その結果、ノズル形状に影響を与える。したがって、良好なノズル形状を得るためには、レーザーの発振周波数とフォーカス位置、回転周波数、偏心度の最適化が必要であること、更には、レーザーパワーとフォーカス位置、回転周波数、偏心度との最適化も必要であることがわかる。特許文献2に記載のレーザー加工装置は、ノズル加工時にフォーカス位置、および/またはレーザー光の偏心度を変更しながら加工を行うというものであり、上記最適化を頻繁に行わねばならず、非常に複雑なプロセスとなる。更に、特許文献2には、逆テーパー形状のノズル孔加工方法について記載されているが、この場合、加工面(レーザー照射面)がインク吐出面となる。インクジェットヘッド用ノズルにおいて、インク吐出面の清浄度は、インクジェットヘッドの着弾精度を規定する重要な要素となっておいる。したがって、特許文献2に記載のノズル孔加工方法では、加工後に発生するデブリを除去する工程の複雑化を招くという問題点を有している。
【0013】
また、特許文献3に記載の機構は、偏心回転手段におけるウェッジプレートの回転数のバラツキや、ショット毎のレーザーパワー密度のバラツキのため、結果的にノズル孔出口形状のバラツキが大きくなってしまうという問題点を有している。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、インク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液滴の着弾精度の向上を実現し得るノズル孔を形成することができるレーザー加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のレーザー加工方法は、上記課題を解決するために、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、前記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して前記レーザー光を照射して孔を形成するレーザー加工方法において、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、上記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して上記レーザー光を照射するので、上記基板には、出射当初のレーザー光よりも直径の大きなレーザー光を照射することができる。その結果、出射当初のレーザー光の直径よりも大きな直径を有する孔を形成することができる。さらにレーザー光の偏心量を、第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、かつ第1の偏心量は、第2の偏心量よりも大きいので、大きなテーパー角度を有する孔を形成することができる。また、第1の偏心量は、第2の偏心量よりも大きいので、孔の形成が進むにしたがって、レーザーパワー密度が大きな状況下にて孔を形成することができる。そして、レーザーパワー密度が大きな状況下にて孔の開口(出口側)を形成することができるので、当該開口の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成することができる。また、上記偏心量を連続的に変化させることができるので、段差のない平滑な漏斗形状の孔を形成することができる。
【0017】
本発明のレーザー加工方法では、前記偏心量は、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角度を変化させることによって、容易に偏心量を変化させることができる。
【0019】
本発明のレーザー加工方法では、前記第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、前記照射光軸と一致することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、孔の開口を形成する場合に、レーザー光の光軸を照射光軸と一致させることができる。つまり、レーザーパワー密度が最大の条件下で、孔の開口を形成することができるので、当該開口の形状を、更に所望の形状に近い形状に形成することができる。
【0021】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、該レーザー光を透過させるためのパターンが形成されたマスクを透過した後に偏心および回転することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、マスク上に所望の形状を有するパターン(開口)を形成することによって、当該パターンの形状に応じたレーザー光を基板上に照射することができる。その結果、基板に、所望の形状を有する孔を形成することができる。
【0023】
本発明のレーザー加工方法では、前記マスクには、少なくとも、基板上に形成される孔に対応する同じ数のパターンが形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、上記マスク上のパターンによって、1つのレーザー光を複数のレー
ザー光に分けることができる。つまり、マスク上の各パターンを透過した複数のレーザー光を、基板上に照射することができる。そして、基板上に照射されるレーザー光は、それぞれ、孔を形成することができる。つまり、一度のレーザー照射によって、複数の孔を同時に基板に形成することができる。
【0025】
本発明のレーザー加工方法では、前記マスクを透過した後の各レーザー光は、集光手段によって各々集光されることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、上記マスクを透過した後のレーザー光を集光手段によって集光するので、レーザー光を損失することなく基板上に照射することができる。また、マスクを透過した後のレーザー光を集光するので、マスク上に形成されたパターンの大きさに関係なく、所望の大きさ(例えば、直径)のレーザー光を基板に照射することができる。換言すれば、マスク上に形成されるパターンを大きく形成することができるので、所望の形状のパターンを容易かつ安価に形成することができる。
【0027】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、前記照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように備えられたレーザー光誘導手段を透過することによって偏心および回転することが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、レーザー光誘導手段の照射光軸に対する角度を変化させ、かつレーザー光誘導手段を回転させることによって、当該レーザー光誘導手段を透過するレーザー光を、偏心および回転させることができる。つまり、容易かつ安価に、レーザー光を偏心および回転させることができる。
【0029】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光の発振、偏心および回転を同期させることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、孔の開口を高精度に加工することができるとともに、上記孔の3次元形状を精密に制御することができる。
【0031】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、エキシマレーザーであることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、基板に所望の孔を形成することができる。つまり、エキシマレーザーを用いることによって、常温、常圧の条件下において、短時間で、基板にサブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔を形成することができる。更に、パターンが形成されたマスクを用いれば、一度に複数の孔を形成することができる。
【0033】
本発明のレーザー加工方法では、前記基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォンを主成分とすることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、所望の形状を有する孔を容易に形成することができる。また、上記構成によれば、撥水性を有する孔を形成することができる。したがって、当該孔をインクジェットヘッドのノズル孔として用いれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズル孔を形成することができる。
【0035】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光のレーザー強度が、前記偏心量を変化させる工程中に変化することが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、所望の形状を有する孔を容易に形成することができる。例えば、孔
の開口を形成するときにレーザー強度を上昇させることによって、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の開口を形成することが容易になる。
【0037】
本発明のノズルプレート製造方法は、上記レーザー加工方法を用いてノズル孔を形成することを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズル孔を有するノズルプレートを形成することができる。
【0039】
本発明のインクジェットヘッドは、上記ノズルプレート製造方法によって製造されたノズルプレートを有することを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズルプレートを有するインクジェットヘッドを形成することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のレーザー加工方法は、以上のように、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むものである。
【0042】
また、本発明のノズルプレート製造方法は、上記レーザー加工方法を用いてノズル孔を形成するものである。
【0043】
また、本発明のインクジェットヘッドは、上記ノズルプレート製造方法によって製造されたノズルプレートを有するものである。
【0044】
それゆえ、本発明では、レーザー光を、偏心量を変化させながら回転させて照射する過程を含むので、大きなテーパー角度を有し、かつ所望の形状の開口(例えば、真円度が略1の円)を有する孔を形成することができる。したがって、ノズル孔から吐出されるインク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液滴の着弾精度の向上させ得るノズル孔を形成することができる。また、従来に比べてシンプルな構成にて、低コストかつ高精度なノズル孔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0046】
本発明は、レーザー光を照射対象物に照射して、当該照射対象物に加工を施す技術であり、特に、照射対象物が基板である場合に、当該基板に孔を形成する加工に好適に用いられる技術である。本発明において照射対称物となる基板の具体的な形状は特に限定されるものではなく、かつ、基板の用途も特に限定されるものではないが、本実施形態では、孔の形成に関する技術的な要求の高い分野である、「インクジェットヘッドのノズルプレートの製造」を例示して、本発明をより具体的に説明する。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー発振器1から出射されたレーザー光は、第1ミラー2aにて反射されたあと、マスク3に照射される。マスク3にはパターン4が形成されており、マスク3に照射されたレーザー光は、上記パターン4を透過して第2ミラー2bに照射される。第2ミラー2bに照射されたレーザー光は当該第2ミラー2bにて反射されて、Wobbleプレート6(レーザー光誘導手段)に照射される。Wobbleプレート6に照射されたレーザー光は、当該Wobbleプレ
ート6によって偏心および回転されて、その後、第3ミラー2cに照射される。第3ミラー2cに照射されたレーザー光は縮小投影レンズ7(集光手段)によって集光された後、ノズルプレート8(基板)に対して照射される。その結果、ノズルプレート8においてレーザー光が照射された領域には、孔9が形成される。
【0048】
上記レーザー発振器1から出射されるレーザー光としては特に限定されず、適宜公知のレーザー光を用いることができる。例えば、レーザー光としては、エキシマレーザーを用いることが好ましい。エキシマレーザーを用いれば、常温、常圧の条件下において、短時間で、サブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔や溝を加工できる。また、エキシマレーザーを用いれば、マスク3を透過したエキシマレーザーを、縮小投影レンズ7によって被加工物上に結像させることにより、複数のノズル孔を一括加工できる。上記エキシマレーザーの発振波長は特に限定されないが、XeCl(波長308nm)またはKrF(波長248nm)であることが好ましい。
【0049】
本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー光の方向を変更するために第1ミラー2a〜第3ミラー2cが用いられている。上記第1ミラー2a〜第3ミラー2cとしては、レーザー光を反射させて、当該レーザー光の照射方向を変更し得るものであればよく特に限定されない。
【0050】
例えば、図1においては、レーザー発信器1から出射したレーザー光は、第1ミラー2a、第2ミラー2b、および第3ミラー2cにより反射されることによって、その光路(進行方向)が3回変更されているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各構成(例えば、レーザー発振器1、マスク3、Wobbleプレート6、縮小投影レンズ7、およびノズルプレート8)の相対的な位置関係によっては、第1ミラー2a〜第3ミラー2cを適宜省略し、各構成にレーザー光を直接照射する構成とすることもできる。
【0051】
本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー発振器1から出射されたレーザー光は、ミラー2を介してマスク3に照射される。このとき、ミラー2とマスク3との間には、アパーチャー(開口パターン)を設けることも可能である(図示せず)。上記アパーチャーは、マスク3上の特定の位置のみにレーザー光を照射するためのものであって、上記アパーチャーを通過したレーザー光は、マスク3上のパターン4に照射される。上記アパーチャーを用いることによって、レーザー光を所望の形状に絞ることができる。上記アパーチャーの形状は特に限定されるものではなく、マスク3のパターン4に対してレーザー光を照射することができる形状であればよい。例えば、上記アパーチャーは矩形であってもよい。この場合、図1に示すように、矩形レーザー光5がマスク3上のパターン4に照射される。
【0052】
上述したように、マスク3にはパターン4が形成されている。上記パターン4の形状、大きさ、および数は特に限定されず、ノズルプレート8に形成される孔の形状、大きさ、および数に応じて適宜選択すればよい。また、本実施の形態のレーザー加工方法は縮小投影レンズ7を用いるので、マスク3を透過した後のレーザー光を、当該縮小投影レンズ7によって所望の倍率に縮小することができる。したがって、マスク3に形成されるパターン4は、孔9よりも大きく形成することができる。例えば、円形の孔9を形成しようとした場合、パターン4も円形に形成される。そして、このとき、パターン4の直径を孔9の直径よりも大きく形成したとしても、上記パターン4を透過したレーザー光は、縮小投影レンズ7によって所望の倍率に縮小される。その結果、所望の形状を有する孔9を形成することができる。
【0053】
上述したように、パターン4を孔9よりも大きく形成することができるので、微細なパ
ターン4を形成する必要がない。その結果、パターン4の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成することが容易であるとともに、上記パターン4を形成するためのコストを低く抑えることができる。そして、パターン4を所望の形状に形成することができれば、孔9を所望の形状に形成することも容易となる。
【0054】
次いで、パターン4を透過したレーザー光は、ミラー2を介してWobbleプレート6に入射する。上記Wobbleプレート6は、レーザー光を照射光軸(レーザー光の入射方向)に対して偏心させ得るとともに、前記照射光軸を中心軸としてレーザー光を回転させ得る。そのため、上記Wobbleプレート6は、照射光軸と直行する軸(以下、垂直軸と称する)から傾いた状態で配置され得るとともに、照射光軸を中心軸として回転され得る。垂直軸からの上記Wobbleプレート6の傾き角度が大きいほど、レーザー光の偏心は大きくなり、傾き角度が小さいほど、レーザー光の偏心は小さくなる。そして、レーザー光の偏心が大きいほど、ノズルプレート8に照射されるレーザー光の直径が大きくなるとともに、レーザー強度が小さくなる。一方、レーザー光の偏心が小さいほど、ノズルプレート8に照射されるレーザー光の直径が小さくなるとともに、レーザー強度が大きくなる。
【0055】
上記Wobbleプレートを用いて孔を形成する場合の具体的な工程について、図2(a)〜(f)を用いて更に詳細に説明する。図2(a)〜(f)示すように、ノズルプレートに形成される孔の直径は、垂直軸20からのWobbleプレート6の傾き角度αに依存する。なお、図2(a)・(c)・(e)の各図面は、各工程におけるWobbleプレート6の傾きを示す。また、図2(b)・(d)・(f)の各図面は、各工程において形成されている孔の形状を示す。
【0056】
図2(a)に示すように、本実施の形態のレーザー加工方法では、孔の形成開始時に、Wobbleプレート6が垂直軸20に対して大きく傾いた状態(傾き角度αが大きい)で回転している。このときの状態を「第1の偏心量」とする。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lは、照射光軸21に対して大きく偏心する。そして、図2(b)に示すように、照射光軸21に対して大きく偏心したレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、大きなものとなる。なお、上記撥水膜12としては、例えば、フッ素系シランカップリング剤を用いることができるが、特に限定されない。
【0057】
次いで、本実施の形態のレーザー加工方法では、図2(c)に示すように、孔の加工深度が増すとともにWobbleプレート6の垂直軸20に対する傾きを、徐々に小さくする(傾き角度αが小さい)。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lの、照射光軸21に対する偏心量も徐々に小さくなる。つまり、「第1の偏心量」を徐々に変化させて偏心量を小さくすることになる。そして、図2(d)に示すように、照射光軸21に対する偏心量の小さいレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、小さなものとなる。なお、このとき、孔の形成開始時と比較して、ノズルプレート11等に照射されるレーザー光のレーザーパワー密度が大きくなっているので、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の孔を容易に形成することができる。
【0058】
次いで、本実施の形態のレーザー加工方法では、図2(e)に示すように、Wobbleプレート6の垂直軸20に対する傾きを、0にする(傾き角度αが0)ことが好ましい。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lの、照射光軸21に対する偏心量は0となる。このとき、偏心量は最小となり、本実施形態では、この状態を「
第2の偏心量」と規定する。そして、図2(f)に示すように、照射光軸21に対する偏心量が0であるレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、最小となる。なお、このとき、孔の形成工程においてレーザー光のレーザーパワー密度が最大であるので、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の孔を最も正確に形成することができる。したがって、ノズル出口側形状を最も安定に形成することができる。
【0059】
上記のように、本実施形態では、レーザー光を偏心して回転照射させる場合に、最大の偏心量である「第1の偏心量」と、最小の偏心量である「第2の偏心量」とを予め定めておき、第1の偏心量から第2の偏心量へ徐々に偏心量を変化させる。これによって、例えば、大きなテーパー角度を有し、かつ所望の形状の開口(例えば、真円度が略1の円)を有する孔を形成することができる。
【0060】
また、上記偏心量は、垂直軸に対する傾き角度αによって規定される。言い換えれば、照射光軸をレーザー光の直進方向とすれば、上記偏心量は、レーザー光の直進方向に対する傾斜角となる。本実施形態では、最大の角度αmaxから最小の角度α=0まで徐々に傾
き角度αを変化させている。このように偏心量を徐々に変化させることで、所望の形状の孔を良好に形成することが可能となる。
【0061】
なお、偏心量については、上記傾斜角に限定されるものではなく、レーザー光の偏心の状態を数値化できるものであれば、他のパラメータでもよい。また、第1の偏心量は、必ずしも最大値でなくてもよく、第2の偏心量に対して大きな偏心量を有していればよい。したがって、例えば、α=10°の偏心量を維持しながらレーザー光を照射して途中まで孔を形成し、その後、α=5°の偏心量を「第1の偏心量」に設定して偏心量の変化を開始し、α=0°まで偏心量を小さくしてもよい。これによって、一方の開口が大口径で、途中で口径が小さくなる段差が生じ、さらに徐々に口径が小さくなって他方の開口が最小の口径となるような孔を形成することもできる。
【0062】
つまり、本発明においては、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を徐々に変化させる過程を含んでいればよく、第1の偏心量が最大でなくてもよいし、第2の偏心量が最小でなくてもよい。
【0063】
本実施形態では、偏心量の変化に上記Wobbleプレートを用いるが、このWobbleプレートの具体的な構成としては、レーザー光の吸収が少なく、かつレーザー光を偏心および回転させ得るものであればよく、特に限定されない。例えば、透明石英などを用いることができる。なお、Wobbleプレートは、当該プレート表面でのレーザー光の反射を抑えるための反射防止膜を備えることができる。これによって、レーザー光の損失を抑え、強度の強いレーザー光にてノズル孔を形成することができる。そして、強度の強いレーザー光を用いれば、例えば真円に近い形状のノズル孔を形成することができる。
【0064】
上述したように、本実施の形態のレーザー加工方法では、上記Wobbleプレート6は、垂直軸から傾いた状態で配置され得るとともに、照射光軸を中心軸として回転され得る。このとき、Wobbleプレート6を垂直軸から任意の角度だけ傾けるための駆動機構としては、例えば、Wobbleプレート6を螺子スライダもしくはリニアステージに固定する方法(接触式)、またはマグネットカップリングを用いる方法(非接触式)を用いることができる。また、Wobbleプレート6を、照射光軸を中心軸として回転させるための回転機構としては、例えば、Wobbleプレート6の外枠に回転モーターを設ける方法、または上記マグネットカップリングさせた箇所を非接触で回転させる方法を用いることができる。
【0065】
また、本実施の形態のレーザー加工方法では、上記駆動機構、回転機構およびレーザー発振器を同期させるための制御機構を用いることが好ましい。なお、上記制御機構としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。複数のノズル孔を一括して精密に加工する場合、個々のノズル孔のテーパー形状や孔径の他に、ノズル孔間の孔径のバラツキが小さいことが重要である。特に、インクジェット用ノズルは、数10μm以下のノズル径となるが、その場合、ノズル孔間の孔径のバラツキはサブミクロンのオーダーであることが必要とされる。ノズル孔間の孔径のバラツキを小さくするためには、高いレーザーパワーに加え、レーザー光のフォーカス位置を正確に設定することが好ましい。例えば、パルスレーザーを用いる場合、上記制御機構によって、レーザー発振器の発振周波数と、Wobbleプレート6の回転周波数とを適宜設定することが好ましい。なお、Wobbleプレート6の回転周波数は、上記回転機構によって制御される。具体的には、発振周波数をf、回転周波数をφとした場合、φ=nf、またはf/n(n:整数)となるポイントから、少しずらしたポイントに回転周波数を設定することが好ましい。これによって、良好な形状のノズル孔を形成することができる。更に、Wobbleプレート6の傾き角(レーザー光の偏心度)を変更した場合、同一箇所に照射されるレーザーのパワー密度が変わり、その結果、ノズル孔の形状に影響を与える。したがって、所望のノズル孔の形状を得るためには、レーザーの発振周波数とフォーカス位置、回転周波数、レーザー光の偏心度を最適化することが好ましい。更には、レーザーパワーとフォーカス位置、回転周波数、レーザー光の偏心度を最適化することが好ましい。上記制御機構によって、上記駆動機構、回転機構およびレーザー発振器を同期させることにより、ノズル孔の開口を高精度に加工することができるとともに、ノズル孔の3次元形状を精密に制御することができる。
【0066】
次いで、Wobbleプレート6にて偏心および回転されたレーザー光は、ミラー2を介して縮小投影レンズ7に入射される。上記縮小投影レンズ7は、レーザー光を所望の倍率に縮小することができる。その結果、ノズルプレート8に所望の大きさの孔9を形成することができる。上記縮小投影レンズ7は、レーザー光をノズルプレート8上に集光することができればよく、適宜、公知の構成を用いることができる。例えば、様々な集光レンズを交換可能に構成してもよいし、集光レンズをレーザー光の入射方向に対して移動可能に構成してもよい。
【0067】
次いで、上記縮小投影レンズ7を透過したレーザー光は、ノズルプレート8上に照射されて孔9が形成される。上記ノズルプレート8の材料は特に限定されず、適宜、公知の材料を用いることができる。例えば、上記材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォン等の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、レーザー光によって容易にアブレーションできるので、所望の孔9を容易に形成することができる。
【0068】
なお、本実施の形態のレーザー加工方法では、適宜、レーザー光を均一化するためのホモジナイザーと呼ばれる光学系を用いることができる(図示せず)。上記ホモジナイザーとしては、適宜公知の光学系を用いることができる。上記ホモジナイザーの位置としては、特に限定されないが、少なくともアッテネーターよりも上流側に配置することが好ましい。なお、アッテネーターとは、レーザーパワーを調節するための機構である。ホモジナイザーを用いることによって、ノズルプレート8に対して、均一なレーザー光を照射することができる。その結果、複数の孔9を同時に形成する場合でも、各孔9間の形状のバラツキを抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態のレーザー加工方法では、孔の形成工程に応じてレーザー発振器1によって出射されるレーザー光のレーザーパワー(レーザー強度)を変化させることもで
きる。これによって、形成される孔の形状を更に微細に制御することができる。レーザーパワーの変化のさせ方は特に限定されず、形成したい孔の形状にあわせて適宜変化させればよい。例えば、孔の開口を形成するときにレーザーパワーが上昇するように変化させれば、開口の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成し易くなる。
【0070】
以下に、本実施の形態のレーザー加工法によって製造された孔の形状について、更に詳細に説明する。
【0071】
図3(a)はWobbleプレートを用いることなく形成された孔の断面を示しており、図3(b)はWobbleプレートを用いて形成された孔の断面を示している。図3(a)に示すように、Wobbleプレートを用いない場合、ノズルプレート上の加工面に入射するレーザー光軸は偏心回転をしないため、Wobbleプレートを用いた場合に比べて加工エリアが狭いが、当該加工エリアに入射するレーザー光の単位時間当たりのエネルギー密度は高くなる。その結果、ノズル孔の出口側形状が安定化する。しかしながら、この場合、テーパー角を制御できないため、吐出安定領域は狭くなるので、実用的でない。一方、Wobbleプレートを用いた場合は、Wobbleプレートの傾き角度を変えることにより、ノズル孔のテーパー角度を制御することは可能であるが、所定の箇所に入射するレーザー光の単位時間当たりのエネルギー密度は低くなるのでノズル孔の出口側形状のバラツキが大きくなってしまう。
【0072】
なお、本実施形態では、上記Wobbleプレートは、レーザー光を所定の角度かつ回転可能に基板に対して誘導するレーザー光誘導手段として機能する。したがって、本発明では、レーザー光を、照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように基板に誘導できる部材や手段であれば、レーザー光誘導手段は上記Wobbleプレートに限定されるものではなく、公知の構成を好適に用いることができる。
【0073】
上記内容を、図4および図5を用い、更に具体的に説明する。図4に、種々のレーザーパワー密度にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示す。なお、ノズル孔の出口径バラツキとは、ノズル孔の出口径の最大値と最小値の差のことである。図4に示すように、ノズル孔を形成するときのレーザーパワーを上げるにしたがって、出口孔径バラツキは小さくなるが、それとともにテーパー角度も小さくなってしまう。また、図5に、種々のレーザー光軸偏心量にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示す。なお、レーザー光軸偏心量とは、照射光軸に対するレーザー光軸の偏心量のことである。図5に示すように、レーザー光軸偏心量を大きくするにしたがって、テーパー角度を大きくすることができるが、それとともに出口径バラツキも大きくなってしまう。
【0074】
そこで、本実施の形態のレーザー加工方法では、1)レーザー光の偏心量を第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、2)第1の偏心量は第2の偏心量よりも大きい、という構成を備えている。さらに、本実施の形態のレーザー加工方法では、第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、照射光軸と一致することが好ましい。上記構成によれば、テーパー角度を自在に制御できるWobblingの効果を保ちつつ、ノズル孔の出口側開口(液滴吐出開口)を形成するときには、ノズル孔の出口側形状を安定化するようにレーザーパワー密度を上昇させた状態にて形成することができる。また、上記構成によれば、段差の無い平滑な漏斗形状の孔を形成することができる。
【0075】
次いで、本発明のインクジェットヘッドについて説明する。当該インクジェットヘッドは、上記方法にて製造されたノズルプレートを有するものである。図6に示すように、インクジェットヘッド32は、ノズルプレート11を有している。当該ノズルプレート11には、ノズル30が備えられている。そして、当該ノズル30が、上述したレーザー加工
方法にて形成された孔に相当する。上記ノズルプレート11はインク流路31に接するように設けられ、さらに上記ノズルプレート11の端部(インク流路31に接する面と反対側の面)には撥水膜が形成されている。そして、インクは、上記インク流路31を通過した後、各インク流路31に対応したノズル30から吐出される。なお、インク流路31の形成方法は特に限定されず、適宜公知の方法にて形成すればよい。なお、上記ノズル30は本発明のレーザー加工方法によって形成されているので、ノズルテーパー形状が漏斗形状になっている。
【0076】
なお、本発明は、ノズルプレートのノズル形成加工に限定されるものではなく、レーザー光を用いてテーパー状の構造を含む孔を形成する用途に広く用いることができることは言うまでもない。
【実施例】
【0077】
本発明について、実施例および比較例、並びに図7に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0078】
〔レーザー光〕
本実施例および比較例では、レーザー光として波長248nmのエキシマレーザーを用いた。なお、具体的なレーザー発振器としては、NovaLine100(ラムダフィジック社製)を用いた。また、レーザー励起ガスとしては純度99.9%のハロゲンガス(フッ素とNeの混合ガス、フッ素濃度5%)、Rareガスとしては純度99.995%のKrガス、バッファーガスとしては純度99.995%のNeガス、不活性ガスとしては純度99.995%のHeガスを用いた。
【0079】
〔ノズルプレート〕
本実施例および比較例では、ノズルプレートとして、ポリイミドを主成分とする厚さ50μmのユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)を用いた。
【0080】
〔Wobbleプレート〕
本実施例および比較例では、Wobbleプレートとして、透明石英(248nm用ARコート(反射防止膜)付、厚さ10nm)を用いた。
【0081】
〔マスク〕
本実施例および比較例では、円形のパターン(60個のノズルに対応)が形成されたマスクを用いた。
【0082】
〔各種パラメータの算出方法〕
ノズル出口径の平均は、60個のノズル出口径を、ミツトヨ製画像計測器Apexシリーズによって測定し、これらの値の平均値として算出した。また、ノズル出口径バラツキは、前記60個のノズル孔出口径の最大、最小値の差と定義する。また、真円度は、60個のノズル孔の出口径について、短径/長径比を算出し、これらの平均値として算出した。テーパー角度は、60個の各ノズル孔の出口径、入口径を測定し、そこからテーパー角度を算出し、これらの値の平均値として示した。テーパー角をθ、出口径をa、入口径をb、ノズルプレートの厚さをtとした場合、テーパー角は、
θ=tan−1((a−b)/2t)
であらわされる。
【0083】
また、安定吐出速度限界の測定に際しては、各条件で作製したノズルプレートを、60個のインク室を有し、その側壁を分極されたPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸
ジルコン亜鉛)により構成してなるアクチュエーター基板の前端面に接着剤を用いて接着してインクジェット記録ヘッドを作製した。その後、各記録ヘッドについて駆動電圧を徐々に大きくして吐出速度を上げながら、測定を行った。
【0084】
〔結果〕
本実施例および比較例のノズル孔の形態、および当該ノズル孔を有するノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの性能について、図7を用いて説明する。図7において、条件Aには、Wobbleプレートを使用せずに形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。また、条件Bには、Wobbleプレートを使用しているが、当該Wobbleプレートの傾き角度を固定して形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。また、条件Cには、Wobbleプレートを使用しており、かつ当該Wobbleプレートの傾き角度を変化させながら形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。つまり、図7には、上記各条件下における、ノズル出口径の平均、ノズル出口径バラツキ、真円度、テーパー角度、および安定吐出速度限界が示されている。
【0085】
ノズル出口径バラツキの値は、吐出液適量のバラツキを低減するために、小さいほど好ましい。具体的には、ノズル孔出口径バラツキの値は、1.0μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。
【0086】
また、真円度の値は、円形の短径/長径比を示している。上記真円度の値は、液滴の吐出方向のバラツキを低減するために、小さいほど好ましい。具体的には、真円度の値は、1μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。
【0087】
また、安定吐出速度限界の値は、実際に画像記録を行う際の吐出速度に対するマージンが大きくなることによって、インク滴を安定的に吐出することができるため、大きいほど好ましい。具体的には、安定吐出速度限界の値は、10m/sec以上、より好ましくは12m/sec以上である。
【0088】
ノズル出口径の平均は、各条件とも略25.0μmであるが、条件Aでは安定吐出速度限界が他の条件に比べ著しく低く、上記好適な値よりも低い。また、条件Bではノズル出口径バラツキ、真円度とも、かろうじて上記好適な値であるが、他の条件に比べて悪い結果である。これに対し、条件Cでは全ての指標において、他の条件に比べ良好な結果を得ている。
【0089】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明では、レーザー光の偏心量を、第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、上記第1の偏心量は、上記第2の偏心量よりも大きいため、所望の形状の孔を形成することができる。例えば、インク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液液の着弾精度の向上を実現し得るノズル孔を形成することができる。そのため、本発明は、基板に孔を形成する各種レーザー加工装置やその部品を製造する分野に利用することができるのみならず、インクジェット記録装置に代表される各種液滴吐出装置に用いられるノズルプレートや、それらの部品を製造する分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明におけるレーザー加工方法の実施の一形態を示す概略図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明におけるレーザー加工方法の各工程におけるWobbleプレート6の傾き、および孔の形状を示す模式図である。
【図3】(a)Wobbleプレートを用いない場合、(b)Wobbleプレートを用いる場合におけるノズル孔の形状を示す断面図である。
【図4】種々のレーザーパワーにてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示すグラフである。
【図5】種々のレーザー光軸偏心量にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示すグラフである。
【図6】本発明におけるインクジェットの実施の一形態を示す斜視図である。
【図7】本発明におけるインクジェットヘッドの性能を示すグラフである。
【図8】ノズル孔の出口径と液滴速度との関係を示すグラフである。
【図9】テーパー角度と液滴速度との関係を示すグラフである。
【図10】従来のレーザー加工方法を示すものであり、複数のマスクを用いてノズル孔を形成する方法を示す模式図である。
【図11】上記レーザー加工方法によって形成されるノズル孔の断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 レーザー発振器
2 ミラー
3 マスク
4 パターン
6 Wobbleプレート(レーザー光誘導手段)
7 縮小投影レンズ(集光手段)
8 ノズルプレート(基板)
20 垂直軸
21 照射光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法、およびそれを用いたノズルプレート製造方法ならびにインクジェットヘッドに関するものであり、特に、インクジェット吐出装置のノズル孔として好適に用いることのできる貫通孔をレーザーアブレーションによって形成することのできるレーザー加工方法、およびそれを用いたノズルプレートの製造方法、ならびに当該製造方法によって製造されるノズルプレートを備えるインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料からなるインクジェットヘッド用ノズルプレートにノズル孔を形成する方法として、エキシマレーザーによるアブレーション加工が用いられている。エキシマレーザーによるアブレーション加工は、常温、常圧の条件下において、短時間で、サブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔や溝を加工できる。また、エキシマレーザーによるアブレーション加工は、マスクを透過したエキシマレーザー光を、レンズによって被加工物上に結像させることにより、複数のノズル孔を一括加工できるという特徴がある。エキシマレーザーは短パルス(〜20ns)、高輝度(〜数10MW)の紫外光を出力できる。発振波長は、レーザーガスの種類により異なるが、アブレーションによりよく使用されるのは、XeCl(波長308nm)、KrF(波長248nm)である。
【0003】
ところで、インクジェットヘッドのノズルプレートにおけるノズル孔の断面(テーパー角度)、およびノズル孔の出口側形状は、ノズル孔から吐出するインク液滴の速度(吐出速度)を大きく支配する(例えば、非特許文献1参照)。例えば、図8に示すように、ノズル孔の出口径に応じて、ノズル孔から吐出されるインク液滴の速度が異なる。なお、図8では、インク液滴として、粘度3.0mPa・secのインクを用いている。図8から明らかなように、インク液滴の速度は、ノズル孔の出口径が22μmである場合に最大となり、出口径が小さくなるにしたがって徐々に小さくなる。また、図9に示すように、ノズル孔のテーパー角度に応じて、ノズル孔から吐出されるインク液滴の速度が異なる。なお、図9では、ノズル孔の出口径を20μmとしてテーパー角度を変化させたときのインク液滴の速度を示している。図9から明らかなように、テーパー角度が小さくなるにしたがって、インク液滴の速度も小さくなる。
【0004】
上記形状を有するノズル孔を形成するためのレーザー加工方法として、従来から、複数枚のマスクの開口が重なり合うことによって形成される開口のレーザー光の出口側の形状を規定することによって、ノズル孔を形成する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、図10に示すように、マスク101aとマスク101bとが重なり合って備えられている。上記マスク101aには、マスクパターン(開口)102a・103aが形成され、上記マスク101bには、マスクパターン102b・103bが形成されている。マスク101aとマスク101bとは、それぞれマスク支持枠104aとマスク支持枠104bとに取り付けられており、上記マスク支持枠104aとマスク支持枠104bとは、それぞれ螺子スライダ105aと螺子スライダ105bとに沿って、矢印の方向に移動することができる。したがって、マスク支持枠104aとマスク支持枠104bとを移動させることによって、マスク101aとマスク101bとを移動させることができる。その結果、マスクパターン102aとマスクパターン102b、マスクパターン103aと103bとが互いに接離する方向にスライドすることができる。そして、マスクパターン102aとマスクパターン102bとの重なり、およびマスクパターン103aと103bとの重なりによって形成されるレーザー透過部100
の面積を変えることができる。
【0005】
次いで、図11(a)〜(c)を用いて、上記従来の構成によってテーパー部を形成する方法について説明する。図11(a)に示すように、テーパー部を形成するには、まず、レーザー透過部110の面積が孔114aの面積と対応するようにマスクパターン(例えば、マスクパターン102aとマスクパターン102b)の重なり度合いを調製し、その後、当該レーザー透過部110を介してノズルプレート材料111にレーザー光Lを照射することによって孔114aを形成する。次いで、マスクパターンの重なり度合いを大きくする方向にマスクを若干移動させることにより、レーザー透過部110の面積を若干大きくした後、孔114aが形成されているノズルプレート材料111の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより最初に形成された孔114aよりも若干直径の大きな孔114bが形成される。次いで、図11(b)に示すように、マスクパターンの重なり度合いを更に大きくすることによって、レーザー透過部110の面積を更に大きくし、その後、ノズルプレート材料111の被加工部に対してレーザー光Lを照射する。これにより、上記孔114bよりも若干直径の大きな孔114cが形成される。そして、図11(c)に示すように、上記操作を繰り返すことによってテーパー部115が形成される。
【0006】
また、従来から、所望の孔を形成するために、レーザー光をその照射光軸に対して偏心させた状態で回転させつつ照射して加工部位を加工し、加工の進行にともなってレーザー光の偏心量および/または焦点を変化させるレーザー加工方法が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、従来から、酸素ガスをレーザー光と同軸で流しつつレーザー光を集光して鋼などの熱加工を行うレーザー加工ヘッドであって、偏心レーザー光を用いて熱加工を行うレーザー加工ヘッドが用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−153260号公報(平成17年6月16日公開)
【特許文献2】特開2002−248591号公報(平成14年9月3日公開)
【特許文献3】特開2003−311455号公報(平成15年11月5日公開)
【非特許文献1】KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT 2005 vol.2 pp.89−92
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、広範囲の吐出エリアに対して短時間でインク液滴を吐出する要請が高まる中、インク吐出装置の製造時におけるノズルサイズの制御や、インク吐出装置に設けられるノズル数の増加が必要不可欠となってきている。このとき、エキシマレーザーのビームサイズには限界があるため、一括加工できるノズルエリアには限界がある。そのため、大きなノズルシートに対し、ノズルピッチを保ったままで同一のパターンを複数個形成する場合、マスクパターンとマスクの駆動ステージ(マスク送り方向)との高精度アライメント(数ミクロン程度)が必要となる。更に、エキシマレーザーのビーム強度安定エリアも限られており、前記ビーム強度安定エリアとマスクパターンとのアライメントも同時に必要となる。更に、インクジェットの用途が広がる中、モデルチェンジも頻繁であって、その都度マスク交換が必要となる。つまり、前記アライメントをかなり頻繁に行う必要がある。したがって、上記従来のレーザー加工方法は、例えば以下に示すような問題点を有している。
【0009】
例えば、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、複数のマスクを重ね合わせて用いるため、高精度なアライメントを各マスクに対して行わなければならない。例えば、マスク同士の相対的な位置関係を規定するための高精度なアライメントを、各マスクに対して
行う必要があり、上記アライメント作業に必要以上の労力を要するという問題点を有する。また、複数枚のマスクを使用するとともに、駆動ステージや、調整用カメラなども必要となることから、大幅に製造コストが上昇するという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、複数のマスクにおける開口の重なりによって形成されるレーザー透過部を介して、被加工部にレーザー光を照射するので、ノズル孔のテーパー部の真円度(短径/長径比)が低下するという問題点を有している。テーパー部の真円度が低下すれば、ノズル孔から安定した液滴量を吐出することができないのみならず、インクの吐出方向が安定化しないという問題を生じる。この問題点を解決するために、従来から、ノズル孔を形成するときのレーザーのパワー密度を高める方法が用いられている。しかしながら、レーザーのパワー密度を上げた場合、テーパー角度が小さくなるという問題が発生する。図9にて説明したように、テーパー角度が小さくなると液滴速度が低下する。その結果、安定した液滴の吐出を行うことができないという問題を生じる。
【0011】
また、特許文献1に記載のレーザー加工方法では、テーパー部の形状が階段状となるため、階段のエッジ部において、インク流の乱れ、ダスト詰まり、インク凝集などの問題点を生じる。
【0012】
また、特許文献2に記載のレーザー加工装置は、レーザー光の偏心回転手段と、集光レンズとを備え、かつ、加工に伴い偏心回転手段の偏心度を変える機構、および集光レンズの位置を変える機構を備えている。その結果、ノズルの3次元的な形状操作と、逆テーパー形状のノズル製造を可能としている。しかしながら、上記構成によって複数のノズル孔を一括加工した場合、以下のような問題が発生する。ノズル孔の精密加工においては、個々のノズル孔のテーパー形状や孔径の他に、一括加工したノズル孔間の孔径のバラツキが小さいことが重要である。特に、インクジェット用ノズルは、数10μm以下のノズル径となるが、その場合、ノズル孔間の孔径のバラツキはサブミクロン(0.数μm)のオーダーであることが必要とされる。ノズル孔間の孔径のバラツキを小さくするためには、高いレーザーパワーに加え、レーザー光のフォーカス位置を正確に設定することが必要である。また、偏心回転手段においては、パルスレーザーを用いる場合、レーザーの発振周波数と上記偏心回転手段の回転周波数とを適宜設定する必要がある。具体的には、発振周波数をf、回転周波数をφとした場合、φ=nf or f/n(n:整数)となるポイントから、少しずらしたポイントに回転周波数を設定したほうが、良好な加工形状を得られる。更に、偏心回転手段の傾き角(レーザー光の偏心度)を変更した場合、同一箇所に照射されるレーザーのパワー密度が変わり、その結果、ノズル形状に影響を与える。したがって、良好なノズル形状を得るためには、レーザーの発振周波数とフォーカス位置、回転周波数、偏心度の最適化が必要であること、更には、レーザーパワーとフォーカス位置、回転周波数、偏心度との最適化も必要であることがわかる。特許文献2に記載のレーザー加工装置は、ノズル加工時にフォーカス位置、および/またはレーザー光の偏心度を変更しながら加工を行うというものであり、上記最適化を頻繁に行わねばならず、非常に複雑なプロセスとなる。更に、特許文献2には、逆テーパー形状のノズル孔加工方法について記載されているが、この場合、加工面(レーザー照射面)がインク吐出面となる。インクジェットヘッド用ノズルにおいて、インク吐出面の清浄度は、インクジェットヘッドの着弾精度を規定する重要な要素となっておいる。したがって、特許文献2に記載のノズル孔加工方法では、加工後に発生するデブリを除去する工程の複雑化を招くという問題点を有している。
【0013】
また、特許文献3に記載の機構は、偏心回転手段におけるウェッジプレートの回転数のバラツキや、ショット毎のレーザーパワー密度のバラツキのため、結果的にノズル孔出口形状のバラツキが大きくなってしまうという問題点を有している。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、インク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液滴の着弾精度の向上を実現し得るノズル孔を形成することができるレーザー加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のレーザー加工方法は、上記課題を解決するために、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、前記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して前記レーザー光を照射して孔を形成するレーザー加工方法において、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、上記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して上記レーザー光を照射するので、上記基板には、出射当初のレーザー光よりも直径の大きなレーザー光を照射することができる。その結果、出射当初のレーザー光の直径よりも大きな直径を有する孔を形成することができる。さらにレーザー光の偏心量を、第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、かつ第1の偏心量は、第2の偏心量よりも大きいので、大きなテーパー角度を有する孔を形成することができる。また、第1の偏心量は、第2の偏心量よりも大きいので、孔の形成が進むにしたがって、レーザーパワー密度が大きな状況下にて孔を形成することができる。そして、レーザーパワー密度が大きな状況下にて孔の開口(出口側)を形成することができるので、当該開口の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成することができる。また、上記偏心量を連続的に変化させることができるので、段差のない平滑な漏斗形状の孔を形成することができる。
【0017】
本発明のレーザー加工方法では、前記偏心量は、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角度を変化させることによって、容易に偏心量を変化させることができる。
【0019】
本発明のレーザー加工方法では、前記第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、前記照射光軸と一致することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、孔の開口を形成する場合に、レーザー光の光軸を照射光軸と一致させることができる。つまり、レーザーパワー密度が最大の条件下で、孔の開口を形成することができるので、当該開口の形状を、更に所望の形状に近い形状に形成することができる。
【0021】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、該レーザー光を透過させるためのパターンが形成されたマスクを透過した後に偏心および回転することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、マスク上に所望の形状を有するパターン(開口)を形成することによって、当該パターンの形状に応じたレーザー光を基板上に照射することができる。その結果、基板に、所望の形状を有する孔を形成することができる。
【0023】
本発明のレーザー加工方法では、前記マスクには、少なくとも、基板上に形成される孔に対応する同じ数のパターンが形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、上記マスク上のパターンによって、1つのレーザー光を複数のレー
ザー光に分けることができる。つまり、マスク上の各パターンを透過した複数のレーザー光を、基板上に照射することができる。そして、基板上に照射されるレーザー光は、それぞれ、孔を形成することができる。つまり、一度のレーザー照射によって、複数の孔を同時に基板に形成することができる。
【0025】
本発明のレーザー加工方法では、前記マスクを透過した後の各レーザー光は、集光手段によって各々集光されることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、上記マスクを透過した後のレーザー光を集光手段によって集光するので、レーザー光を損失することなく基板上に照射することができる。また、マスクを透過した後のレーザー光を集光するので、マスク上に形成されたパターンの大きさに関係なく、所望の大きさ(例えば、直径)のレーザー光を基板に照射することができる。換言すれば、マスク上に形成されるパターンを大きく形成することができるので、所望の形状のパターンを容易かつ安価に形成することができる。
【0027】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、前記照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように備えられたレーザー光誘導手段を透過することによって偏心および回転することが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、レーザー光誘導手段の照射光軸に対する角度を変化させ、かつレーザー光誘導手段を回転させることによって、当該レーザー光誘導手段を透過するレーザー光を、偏心および回転させることができる。つまり、容易かつ安価に、レーザー光を偏心および回転させることができる。
【0029】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光の発振、偏心および回転を同期させることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、孔の開口を高精度に加工することができるとともに、上記孔の3次元形状を精密に制御することができる。
【0031】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光は、エキシマレーザーであることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、基板に所望の孔を形成することができる。つまり、エキシマレーザーを用いることによって、常温、常圧の条件下において、短時間で、基板にサブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔を形成することができる。更に、パターンが形成されたマスクを用いれば、一度に複数の孔を形成することができる。
【0033】
本発明のレーザー加工方法では、前記基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォンを主成分とすることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、所望の形状を有する孔を容易に形成することができる。また、上記構成によれば、撥水性を有する孔を形成することができる。したがって、当該孔をインクジェットヘッドのノズル孔として用いれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズル孔を形成することができる。
【0035】
本発明のレーザー加工方法では、前記レーザー光のレーザー強度が、前記偏心量を変化させる工程中に変化することが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、所望の形状を有する孔を容易に形成することができる。例えば、孔
の開口を形成するときにレーザー強度を上昇させることによって、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の開口を形成することが容易になる。
【0037】
本発明のノズルプレート製造方法は、上記レーザー加工方法を用いてノズル孔を形成することを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズル孔を有するノズルプレートを形成することができる。
【0039】
本発明のインクジェットヘッドは、上記ノズルプレート製造方法によって製造されたノズルプレートを有することを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、安定かつ正確にインクを吐出することのできるノズルプレートを有するインクジェットヘッドを形成することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のレーザー加工方法は、以上のように、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むものである。
【0042】
また、本発明のノズルプレート製造方法は、上記レーザー加工方法を用いてノズル孔を形成するものである。
【0043】
また、本発明のインクジェットヘッドは、上記ノズルプレート製造方法によって製造されたノズルプレートを有するものである。
【0044】
それゆえ、本発明では、レーザー光を、偏心量を変化させながら回転させて照射する過程を含むので、大きなテーパー角度を有し、かつ所望の形状の開口(例えば、真円度が略1の円)を有する孔を形成することができる。したがって、ノズル孔から吐出されるインク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液滴の着弾精度の向上させ得るノズル孔を形成することができる。また、従来に比べてシンプルな構成にて、低コストかつ高精度なノズル孔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0046】
本発明は、レーザー光を照射対象物に照射して、当該照射対象物に加工を施す技術であり、特に、照射対象物が基板である場合に、当該基板に孔を形成する加工に好適に用いられる技術である。本発明において照射対称物となる基板の具体的な形状は特に限定されるものではなく、かつ、基板の用途も特に限定されるものではないが、本実施形態では、孔の形成に関する技術的な要求の高い分野である、「インクジェットヘッドのノズルプレートの製造」を例示して、本発明をより具体的に説明する。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー発振器1から出射されたレーザー光は、第1ミラー2aにて反射されたあと、マスク3に照射される。マスク3にはパターン4が形成されており、マスク3に照射されたレーザー光は、上記パターン4を透過して第2ミラー2bに照射される。第2ミラー2bに照射されたレーザー光は当該第2ミラー2bにて反射されて、Wobbleプレート6(レーザー光誘導手段)に照射される。Wobbleプレート6に照射されたレーザー光は、当該Wobbleプレ
ート6によって偏心および回転されて、その後、第3ミラー2cに照射される。第3ミラー2cに照射されたレーザー光は縮小投影レンズ7(集光手段)によって集光された後、ノズルプレート8(基板)に対して照射される。その結果、ノズルプレート8においてレーザー光が照射された領域には、孔9が形成される。
【0048】
上記レーザー発振器1から出射されるレーザー光としては特に限定されず、適宜公知のレーザー光を用いることができる。例えば、レーザー光としては、エキシマレーザーを用いることが好ましい。エキシマレーザーを用いれば、常温、常圧の条件下において、短時間で、サブミクロン〜ミクロンオーダーの精度の、熱歪みやバリのない孔や溝を加工できる。また、エキシマレーザーを用いれば、マスク3を透過したエキシマレーザーを、縮小投影レンズ7によって被加工物上に結像させることにより、複数のノズル孔を一括加工できる。上記エキシマレーザーの発振波長は特に限定されないが、XeCl(波長308nm)またはKrF(波長248nm)であることが好ましい。
【0049】
本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー光の方向を変更するために第1ミラー2a〜第3ミラー2cが用いられている。上記第1ミラー2a〜第3ミラー2cとしては、レーザー光を反射させて、当該レーザー光の照射方向を変更し得るものであればよく特に限定されない。
【0050】
例えば、図1においては、レーザー発信器1から出射したレーザー光は、第1ミラー2a、第2ミラー2b、および第3ミラー2cにより反射されることによって、その光路(進行方向)が3回変更されているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各構成(例えば、レーザー発振器1、マスク3、Wobbleプレート6、縮小投影レンズ7、およびノズルプレート8)の相対的な位置関係によっては、第1ミラー2a〜第3ミラー2cを適宜省略し、各構成にレーザー光を直接照射する構成とすることもできる。
【0051】
本実施の形態のレーザー加工方法では、レーザー発振器1から出射されたレーザー光は、ミラー2を介してマスク3に照射される。このとき、ミラー2とマスク3との間には、アパーチャー(開口パターン)を設けることも可能である(図示せず)。上記アパーチャーは、マスク3上の特定の位置のみにレーザー光を照射するためのものであって、上記アパーチャーを通過したレーザー光は、マスク3上のパターン4に照射される。上記アパーチャーを用いることによって、レーザー光を所望の形状に絞ることができる。上記アパーチャーの形状は特に限定されるものではなく、マスク3のパターン4に対してレーザー光を照射することができる形状であればよい。例えば、上記アパーチャーは矩形であってもよい。この場合、図1に示すように、矩形レーザー光5がマスク3上のパターン4に照射される。
【0052】
上述したように、マスク3にはパターン4が形成されている。上記パターン4の形状、大きさ、および数は特に限定されず、ノズルプレート8に形成される孔の形状、大きさ、および数に応じて適宜選択すればよい。また、本実施の形態のレーザー加工方法は縮小投影レンズ7を用いるので、マスク3を透過した後のレーザー光を、当該縮小投影レンズ7によって所望の倍率に縮小することができる。したがって、マスク3に形成されるパターン4は、孔9よりも大きく形成することができる。例えば、円形の孔9を形成しようとした場合、パターン4も円形に形成される。そして、このとき、パターン4の直径を孔9の直径よりも大きく形成したとしても、上記パターン4を透過したレーザー光は、縮小投影レンズ7によって所望の倍率に縮小される。その結果、所望の形状を有する孔9を形成することができる。
【0053】
上述したように、パターン4を孔9よりも大きく形成することができるので、微細なパ
ターン4を形成する必要がない。その結果、パターン4の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成することが容易であるとともに、上記パターン4を形成するためのコストを低く抑えることができる。そして、パターン4を所望の形状に形成することができれば、孔9を所望の形状に形成することも容易となる。
【0054】
次いで、パターン4を透過したレーザー光は、ミラー2を介してWobbleプレート6に入射する。上記Wobbleプレート6は、レーザー光を照射光軸(レーザー光の入射方向)に対して偏心させ得るとともに、前記照射光軸を中心軸としてレーザー光を回転させ得る。そのため、上記Wobbleプレート6は、照射光軸と直行する軸(以下、垂直軸と称する)から傾いた状態で配置され得るとともに、照射光軸を中心軸として回転され得る。垂直軸からの上記Wobbleプレート6の傾き角度が大きいほど、レーザー光の偏心は大きくなり、傾き角度が小さいほど、レーザー光の偏心は小さくなる。そして、レーザー光の偏心が大きいほど、ノズルプレート8に照射されるレーザー光の直径が大きくなるとともに、レーザー強度が小さくなる。一方、レーザー光の偏心が小さいほど、ノズルプレート8に照射されるレーザー光の直径が小さくなるとともに、レーザー強度が大きくなる。
【0055】
上記Wobbleプレートを用いて孔を形成する場合の具体的な工程について、図2(a)〜(f)を用いて更に詳細に説明する。図2(a)〜(f)示すように、ノズルプレートに形成される孔の直径は、垂直軸20からのWobbleプレート6の傾き角度αに依存する。なお、図2(a)・(c)・(e)の各図面は、各工程におけるWobbleプレート6の傾きを示す。また、図2(b)・(d)・(f)の各図面は、各工程において形成されている孔の形状を示す。
【0056】
図2(a)に示すように、本実施の形態のレーザー加工方法では、孔の形成開始時に、Wobbleプレート6が垂直軸20に対して大きく傾いた状態(傾き角度αが大きい)で回転している。このときの状態を「第1の偏心量」とする。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lは、照射光軸21に対して大きく偏心する。そして、図2(b)に示すように、照射光軸21に対して大きく偏心したレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、大きなものとなる。なお、上記撥水膜12としては、例えば、フッ素系シランカップリング剤を用いることができるが、特に限定されない。
【0057】
次いで、本実施の形態のレーザー加工方法では、図2(c)に示すように、孔の加工深度が増すとともにWobbleプレート6の垂直軸20に対する傾きを、徐々に小さくする(傾き角度αが小さい)。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lの、照射光軸21に対する偏心量も徐々に小さくなる。つまり、「第1の偏心量」を徐々に変化させて偏心量を小さくすることになる。そして、図2(d)に示すように、照射光軸21に対する偏心量の小さいレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、小さなものとなる。なお、このとき、孔の形成開始時と比較して、ノズルプレート11等に照射されるレーザー光のレーザーパワー密度が大きくなっているので、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の孔を容易に形成することができる。
【0058】
次いで、本実施の形態のレーザー加工方法では、図2(e)に示すように、Wobbleプレート6の垂直軸20に対する傾きを、0にする(傾き角度αが0)ことが好ましい。この場合、Wobbleプレート6を透過した後のレーザー光Lの、照射光軸21に対する偏心量は0となる。このとき、偏心量は最小となり、本実施形態では、この状態を「
第2の偏心量」と規定する。そして、図2(f)に示すように、照射光軸21に対する偏心量が0であるレーザーパターン15を有するレーザー光Lが、ノズルプレート11、撥水膜12および保護テープ13に照射されて孔16が形成される。このとき形成される孔16の直径は、最小となる。なお、このとき、孔の形成工程においてレーザー光のレーザーパワー密度が最大であるので、所望の形状(例えば、真円度が略1の円)の孔を最も正確に形成することができる。したがって、ノズル出口側形状を最も安定に形成することができる。
【0059】
上記のように、本実施形態では、レーザー光を偏心して回転照射させる場合に、最大の偏心量である「第1の偏心量」と、最小の偏心量である「第2の偏心量」とを予め定めておき、第1の偏心量から第2の偏心量へ徐々に偏心量を変化させる。これによって、例えば、大きなテーパー角度を有し、かつ所望の形状の開口(例えば、真円度が略1の円)を有する孔を形成することができる。
【0060】
また、上記偏心量は、垂直軸に対する傾き角度αによって規定される。言い換えれば、照射光軸をレーザー光の直進方向とすれば、上記偏心量は、レーザー光の直進方向に対する傾斜角となる。本実施形態では、最大の角度αmaxから最小の角度α=0まで徐々に傾
き角度αを変化させている。このように偏心量を徐々に変化させることで、所望の形状の孔を良好に形成することが可能となる。
【0061】
なお、偏心量については、上記傾斜角に限定されるものではなく、レーザー光の偏心の状態を数値化できるものであれば、他のパラメータでもよい。また、第1の偏心量は、必ずしも最大値でなくてもよく、第2の偏心量に対して大きな偏心量を有していればよい。したがって、例えば、α=10°の偏心量を維持しながらレーザー光を照射して途中まで孔を形成し、その後、α=5°の偏心量を「第1の偏心量」に設定して偏心量の変化を開始し、α=0°まで偏心量を小さくしてもよい。これによって、一方の開口が大口径で、途中で口径が小さくなる段差が生じ、さらに徐々に口径が小さくなって他方の開口が最小の口径となるような孔を形成することもできる。
【0062】
つまり、本発明においては、孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を徐々に変化させる過程を含んでいればよく、第1の偏心量が最大でなくてもよいし、第2の偏心量が最小でなくてもよい。
【0063】
本実施形態では、偏心量の変化に上記Wobbleプレートを用いるが、このWobbleプレートの具体的な構成としては、レーザー光の吸収が少なく、かつレーザー光を偏心および回転させ得るものであればよく、特に限定されない。例えば、透明石英などを用いることができる。なお、Wobbleプレートは、当該プレート表面でのレーザー光の反射を抑えるための反射防止膜を備えることができる。これによって、レーザー光の損失を抑え、強度の強いレーザー光にてノズル孔を形成することができる。そして、強度の強いレーザー光を用いれば、例えば真円に近い形状のノズル孔を形成することができる。
【0064】
上述したように、本実施の形態のレーザー加工方法では、上記Wobbleプレート6は、垂直軸から傾いた状態で配置され得るとともに、照射光軸を中心軸として回転され得る。このとき、Wobbleプレート6を垂直軸から任意の角度だけ傾けるための駆動機構としては、例えば、Wobbleプレート6を螺子スライダもしくはリニアステージに固定する方法(接触式)、またはマグネットカップリングを用いる方法(非接触式)を用いることができる。また、Wobbleプレート6を、照射光軸を中心軸として回転させるための回転機構としては、例えば、Wobbleプレート6の外枠に回転モーターを設ける方法、または上記マグネットカップリングさせた箇所を非接触で回転させる方法を用いることができる。
【0065】
また、本実施の形態のレーザー加工方法では、上記駆動機構、回転機構およびレーザー発振器を同期させるための制御機構を用いることが好ましい。なお、上記制御機構としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。複数のノズル孔を一括して精密に加工する場合、個々のノズル孔のテーパー形状や孔径の他に、ノズル孔間の孔径のバラツキが小さいことが重要である。特に、インクジェット用ノズルは、数10μm以下のノズル径となるが、その場合、ノズル孔間の孔径のバラツキはサブミクロンのオーダーであることが必要とされる。ノズル孔間の孔径のバラツキを小さくするためには、高いレーザーパワーに加え、レーザー光のフォーカス位置を正確に設定することが好ましい。例えば、パルスレーザーを用いる場合、上記制御機構によって、レーザー発振器の発振周波数と、Wobbleプレート6の回転周波数とを適宜設定することが好ましい。なお、Wobbleプレート6の回転周波数は、上記回転機構によって制御される。具体的には、発振周波数をf、回転周波数をφとした場合、φ=nf、またはf/n(n:整数)となるポイントから、少しずらしたポイントに回転周波数を設定することが好ましい。これによって、良好な形状のノズル孔を形成することができる。更に、Wobbleプレート6の傾き角(レーザー光の偏心度)を変更した場合、同一箇所に照射されるレーザーのパワー密度が変わり、その結果、ノズル孔の形状に影響を与える。したがって、所望のノズル孔の形状を得るためには、レーザーの発振周波数とフォーカス位置、回転周波数、レーザー光の偏心度を最適化することが好ましい。更には、レーザーパワーとフォーカス位置、回転周波数、レーザー光の偏心度を最適化することが好ましい。上記制御機構によって、上記駆動機構、回転機構およびレーザー発振器を同期させることにより、ノズル孔の開口を高精度に加工することができるとともに、ノズル孔の3次元形状を精密に制御することができる。
【0066】
次いで、Wobbleプレート6にて偏心および回転されたレーザー光は、ミラー2を介して縮小投影レンズ7に入射される。上記縮小投影レンズ7は、レーザー光を所望の倍率に縮小することができる。その結果、ノズルプレート8に所望の大きさの孔9を形成することができる。上記縮小投影レンズ7は、レーザー光をノズルプレート8上に集光することができればよく、適宜、公知の構成を用いることができる。例えば、様々な集光レンズを交換可能に構成してもよいし、集光レンズをレーザー光の入射方向に対して移動可能に構成してもよい。
【0067】
次いで、上記縮小投影レンズ7を透過したレーザー光は、ノズルプレート8上に照射されて孔9が形成される。上記ノズルプレート8の材料は特に限定されず、適宜、公知の材料を用いることができる。例えば、上記材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォン等の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、レーザー光によって容易にアブレーションできるので、所望の孔9を容易に形成することができる。
【0068】
なお、本実施の形態のレーザー加工方法では、適宜、レーザー光を均一化するためのホモジナイザーと呼ばれる光学系を用いることができる(図示せず)。上記ホモジナイザーとしては、適宜公知の光学系を用いることができる。上記ホモジナイザーの位置としては、特に限定されないが、少なくともアッテネーターよりも上流側に配置することが好ましい。なお、アッテネーターとは、レーザーパワーを調節するための機構である。ホモジナイザーを用いることによって、ノズルプレート8に対して、均一なレーザー光を照射することができる。その結果、複数の孔9を同時に形成する場合でも、各孔9間の形状のバラツキを抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態のレーザー加工方法では、孔の形成工程に応じてレーザー発振器1によって出射されるレーザー光のレーザーパワー(レーザー強度)を変化させることもで
きる。これによって、形成される孔の形状を更に微細に制御することができる。レーザーパワーの変化のさせ方は特に限定されず、形成したい孔の形状にあわせて適宜変化させればよい。例えば、孔の開口を形成するときにレーザーパワーが上昇するように変化させれば、開口の形状を所望の形状(例えば、真円度が略1の円)に形成し易くなる。
【0070】
以下に、本実施の形態のレーザー加工法によって製造された孔の形状について、更に詳細に説明する。
【0071】
図3(a)はWobbleプレートを用いることなく形成された孔の断面を示しており、図3(b)はWobbleプレートを用いて形成された孔の断面を示している。図3(a)に示すように、Wobbleプレートを用いない場合、ノズルプレート上の加工面に入射するレーザー光軸は偏心回転をしないため、Wobbleプレートを用いた場合に比べて加工エリアが狭いが、当該加工エリアに入射するレーザー光の単位時間当たりのエネルギー密度は高くなる。その結果、ノズル孔の出口側形状が安定化する。しかしながら、この場合、テーパー角を制御できないため、吐出安定領域は狭くなるので、実用的でない。一方、Wobbleプレートを用いた場合は、Wobbleプレートの傾き角度を変えることにより、ノズル孔のテーパー角度を制御することは可能であるが、所定の箇所に入射するレーザー光の単位時間当たりのエネルギー密度は低くなるのでノズル孔の出口側形状のバラツキが大きくなってしまう。
【0072】
なお、本実施形態では、上記Wobbleプレートは、レーザー光を所定の角度かつ回転可能に基板に対して誘導するレーザー光誘導手段として機能する。したがって、本発明では、レーザー光を、照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように基板に誘導できる部材や手段であれば、レーザー光誘導手段は上記Wobbleプレートに限定されるものではなく、公知の構成を好適に用いることができる。
【0073】
上記内容を、図4および図5を用い、更に具体的に説明する。図4に、種々のレーザーパワー密度にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示す。なお、ノズル孔の出口径バラツキとは、ノズル孔の出口径の最大値と最小値の差のことである。図4に示すように、ノズル孔を形成するときのレーザーパワーを上げるにしたがって、出口孔径バラツキは小さくなるが、それとともにテーパー角度も小さくなってしまう。また、図5に、種々のレーザー光軸偏心量にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示す。なお、レーザー光軸偏心量とは、照射光軸に対するレーザー光軸の偏心量のことである。図5に示すように、レーザー光軸偏心量を大きくするにしたがって、テーパー角度を大きくすることができるが、それとともに出口径バラツキも大きくなってしまう。
【0074】
そこで、本実施の形態のレーザー加工方法では、1)レーザー光の偏心量を第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、2)第1の偏心量は第2の偏心量よりも大きい、という構成を備えている。さらに、本実施の形態のレーザー加工方法では、第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、照射光軸と一致することが好ましい。上記構成によれば、テーパー角度を自在に制御できるWobblingの効果を保ちつつ、ノズル孔の出口側開口(液滴吐出開口)を形成するときには、ノズル孔の出口側形状を安定化するようにレーザーパワー密度を上昇させた状態にて形成することができる。また、上記構成によれば、段差の無い平滑な漏斗形状の孔を形成することができる。
【0075】
次いで、本発明のインクジェットヘッドについて説明する。当該インクジェットヘッドは、上記方法にて製造されたノズルプレートを有するものである。図6に示すように、インクジェットヘッド32は、ノズルプレート11を有している。当該ノズルプレート11には、ノズル30が備えられている。そして、当該ノズル30が、上述したレーザー加工
方法にて形成された孔に相当する。上記ノズルプレート11はインク流路31に接するように設けられ、さらに上記ノズルプレート11の端部(インク流路31に接する面と反対側の面)には撥水膜が形成されている。そして、インクは、上記インク流路31を通過した後、各インク流路31に対応したノズル30から吐出される。なお、インク流路31の形成方法は特に限定されず、適宜公知の方法にて形成すればよい。なお、上記ノズル30は本発明のレーザー加工方法によって形成されているので、ノズルテーパー形状が漏斗形状になっている。
【0076】
なお、本発明は、ノズルプレートのノズル形成加工に限定されるものではなく、レーザー光を用いてテーパー状の構造を含む孔を形成する用途に広く用いることができることは言うまでもない。
【実施例】
【0077】
本発明について、実施例および比較例、並びに図7に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0078】
〔レーザー光〕
本実施例および比較例では、レーザー光として波長248nmのエキシマレーザーを用いた。なお、具体的なレーザー発振器としては、NovaLine100(ラムダフィジック社製)を用いた。また、レーザー励起ガスとしては純度99.9%のハロゲンガス(フッ素とNeの混合ガス、フッ素濃度5%)、Rareガスとしては純度99.995%のKrガス、バッファーガスとしては純度99.995%のNeガス、不活性ガスとしては純度99.995%のHeガスを用いた。
【0079】
〔ノズルプレート〕
本実施例および比較例では、ノズルプレートとして、ポリイミドを主成分とする厚さ50μmのユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)を用いた。
【0080】
〔Wobbleプレート〕
本実施例および比較例では、Wobbleプレートとして、透明石英(248nm用ARコート(反射防止膜)付、厚さ10nm)を用いた。
【0081】
〔マスク〕
本実施例および比較例では、円形のパターン(60個のノズルに対応)が形成されたマスクを用いた。
【0082】
〔各種パラメータの算出方法〕
ノズル出口径の平均は、60個のノズル出口径を、ミツトヨ製画像計測器Apexシリーズによって測定し、これらの値の平均値として算出した。また、ノズル出口径バラツキは、前記60個のノズル孔出口径の最大、最小値の差と定義する。また、真円度は、60個のノズル孔の出口径について、短径/長径比を算出し、これらの平均値として算出した。テーパー角度は、60個の各ノズル孔の出口径、入口径を測定し、そこからテーパー角度を算出し、これらの値の平均値として示した。テーパー角をθ、出口径をa、入口径をb、ノズルプレートの厚さをtとした場合、テーパー角は、
θ=tan−1((a−b)/2t)
であらわされる。
【0083】
また、安定吐出速度限界の測定に際しては、各条件で作製したノズルプレートを、60個のインク室を有し、その側壁を分極されたPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸
ジルコン亜鉛)により構成してなるアクチュエーター基板の前端面に接着剤を用いて接着してインクジェット記録ヘッドを作製した。その後、各記録ヘッドについて駆動電圧を徐々に大きくして吐出速度を上げながら、測定を行った。
【0084】
〔結果〕
本実施例および比較例のノズル孔の形態、および当該ノズル孔を有するノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの性能について、図7を用いて説明する。図7において、条件Aには、Wobbleプレートを使用せずに形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。また、条件Bには、Wobbleプレートを使用しているが、当該Wobbleプレートの傾き角度を固定して形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。また、条件Cには、Wobbleプレートを使用しており、かつ当該Wobbleプレートの傾き角度を変化させながら形成された場合のノズル孔の形態およびインクジェットヘッドの性能が示されている。つまり、図7には、上記各条件下における、ノズル出口径の平均、ノズル出口径バラツキ、真円度、テーパー角度、および安定吐出速度限界が示されている。
【0085】
ノズル出口径バラツキの値は、吐出液適量のバラツキを低減するために、小さいほど好ましい。具体的には、ノズル孔出口径バラツキの値は、1.0μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。
【0086】
また、真円度の値は、円形の短径/長径比を示している。上記真円度の値は、液滴の吐出方向のバラツキを低減するために、小さいほど好ましい。具体的には、真円度の値は、1μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。
【0087】
また、安定吐出速度限界の値は、実際に画像記録を行う際の吐出速度に対するマージンが大きくなることによって、インク滴を安定的に吐出することができるため、大きいほど好ましい。具体的には、安定吐出速度限界の値は、10m/sec以上、より好ましくは12m/sec以上である。
【0088】
ノズル出口径の平均は、各条件とも略25.0μmであるが、条件Aでは安定吐出速度限界が他の条件に比べ著しく低く、上記好適な値よりも低い。また、条件Bではノズル出口径バラツキ、真円度とも、かろうじて上記好適な値であるが、他の条件に比べて悪い結果である。これに対し、条件Cでは全ての指標において、他の条件に比べ良好な結果を得ている。
【0089】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明では、レーザー光の偏心量を、第1の偏心量から第2の偏心量まで変化させながら孔を形成し、上記第1の偏心量は、上記第2の偏心量よりも大きいため、所望の形状の孔を形成することができる。例えば、インク液滴の安定吐出速度限界を向上させ、かつインク液液の着弾精度の向上を実現し得るノズル孔を形成することができる。そのため、本発明は、基板に孔を形成する各種レーザー加工装置やその部品を製造する分野に利用することができるのみならず、インクジェット記録装置に代表される各種液滴吐出装置に用いられるノズルプレートや、それらの部品を製造する分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明におけるレーザー加工方法の実施の一形態を示す概略図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明におけるレーザー加工方法の各工程におけるWobbleプレート6の傾き、および孔の形状を示す模式図である。
【図3】(a)Wobbleプレートを用いない場合、(b)Wobbleプレートを用いる場合におけるノズル孔の形状を示す断面図である。
【図4】種々のレーザーパワーにてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示すグラフである。
【図5】種々のレーザー光軸偏心量にてノズル孔を形成した場合の、ノズル孔の出口径バラツキ、およびノズル孔のテーパー角度を示すグラフである。
【図6】本発明におけるインクジェットの実施の一形態を示す斜視図である。
【図7】本発明におけるインクジェットヘッドの性能を示すグラフである。
【図8】ノズル孔の出口径と液滴速度との関係を示すグラフである。
【図9】テーパー角度と液滴速度との関係を示すグラフである。
【図10】従来のレーザー加工方法を示すものであり、複数のマスクを用いてノズル孔を形成する方法を示す模式図である。
【図11】上記レーザー加工方法によって形成されるノズル孔の断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 レーザー発振器
2 ミラー
3 マスク
4 パターン
6 Wobbleプレート(レーザー光誘導手段)
7 縮小投影レンズ(集光手段)
8 ノズルプレート(基板)
20 垂直軸
21 照射光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、前記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して前記レーザー光を照射して孔を形成するレーザー加工方法において、
孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記偏心量は、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、前記照射光軸と一致することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
前記レーザー光は、該レーザー光を透過させるためのパターンが形成されたマスクを透過した後に偏心および回転することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項5】
前記マスクには、少なくとも、基板上に形成される孔に対応する同じ数のパターンが形成されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザー加工方法。
【請求項6】
前記マスクを透過した後の各レーザー光は、集光手段によって各々集光されることを特徴とする請求項4または5に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、前記照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように備えられたレーザー光誘導手段を透過することによって偏心および回転することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項8】
前記レーザー光の発振、偏心および回転を同期させることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項9】
前記レーザー光は、エキシマレーザーであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項10】
前記基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項11】
前記レーザー光のレーザー強度が、前記偏心量を変化させる工程中に変化することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のレーザー加工方法を用いてノズル孔を形成することを特徴とするノズルプレート製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法にて製造されたノズルプレートを有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項1】
レーザー光を照射光軸に対して偏心させた状態で、前記照射光軸を中心軸として回転させながら、基板に対して前記レーザー光を照射して孔を形成するレーザー加工方法において、
孔の形成時に、第1の偏心量から、当該第1の偏心量よりも小さい第2の偏心量まで、偏心量を変化させる工程を含むことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記偏心量は、照射光軸に対するレーザー光の傾斜角であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記第2の偏心量まで変化させたレーザー光の光軸は、前記照射光軸と一致することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
前記レーザー光は、該レーザー光を透過させるためのパターンが形成されたマスクを透過した後に偏心および回転することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項5】
前記マスクには、少なくとも、基板上に形成される孔に対応する同じ数のパターンが形成されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザー加工方法。
【請求項6】
前記マスクを透過した後の各レーザー光は、集光手段によって各々集光されることを特徴とする請求項4または5に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、前記照射光軸に対する角度を変化でき、かつ回転できるように備えられたレーザー光誘導手段を透過することによって偏心および回転することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項8】
前記レーザー光の発振、偏心および回転を同期させることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項9】
前記レーザー光は、エキシマレーザーであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項10】
前記基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドまたはポリサルフォンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項11】
前記レーザー光のレーザー強度が、前記偏心量を変化させる工程中に変化することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のレーザー加工方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のレーザー加工方法を用いてノズル孔を形成することを特徴とするノズルプレート製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法にて製造されたノズルプレートを有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−254327(P2008−254327A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99295(P2007−99295)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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