説明

レーザ切断装置

【課題】パイプや棒の切断において、研磨等の後工程を必要とせず、安定した切断面の状態が得られるレーザ切断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】互いに平行する第1ローラ(11)及び第2ローラ(12)と、前記第1ローラ(11)の回転軸(18)の延長線上に離間部(L1)を介して設けられた第3ローラ(13)及び前記第2ローラ(12)の回転軸(19)の延長線上に他の離間部(L4)を介して設けられた第4ローラ(14)と、前記離間部(L1)にレーザ光を照射するレーザ光源(5)とを備え、前記第1ローラ(11)、前記第2ローラ(12)、前記第3ローラ(13)及び前記第4ローラ(14)は同一方向に回転することを特徴とするレーザ切断装置(10)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源によって、被切断部材を切断するレーザ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管もしくは棒を切断する場合には、切削工具による切断や、局所的な加熱による溶断が一般的である。また、細いガラス管などの場合には、切断したい個所に切削工具等により切り欠きを入れたり、この個所に対して局所的な急速加熱、冷却を行い、クラックを生じさせる。その後、切り欠き個所やクラック発生個所に曲げ加重を付加し、当該位置でガラス管などを折ることによって、切断を行っている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−241122号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、細いガラス管などの場合において、切り欠き個所又はクラック発生個所を折った後の切断面の状態は荒れており、製品として使用するには、通常研磨等の後工程が必要となる。
さらに、研磨等を行った場合であっても、官能検査で検出できないようなヘアクラックが残存する可能性もある。
【0004】
本発明は、レーザ光により切断される被切断物の品質の向上を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、互いに平行する回転軸に軸着された第1ローラ及び第2ローラと、前記第1ローラの回転軸の延長線上に離間部を介して設けられた第3ローラ及び前記第2ローラの回転軸の延長線上に別の離間部を介して設けられた第4ローラと、前記第1ローラと前記第3ローラとの間でレーザ光を照射するレーザ光源とを備え、前記各ローラは、回転軸方向に前記第2ローラ、前記第1ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラの順、もしくはその逆の順で、前記各ローラが同一方向に自由に回転するように配置されていることを特徴としている。
【0006】
前記構成によれば、切断面が均一になるので、被切断物の品質向上が図られる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加え、前記第1ローラ及び前記第3ローラの前記回転軸に延長線上の前記離間部の両側に、それぞれ他の離間部を介して第5ローラ及び第6ローラが備えられ、前記他の離間部の間隔は、前記第2ローラ及び前記第4ローラの回転軸方向の幅よりも広く、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ、前記第3ローラ、前記第5ローラ及び前記第6ローラとは、回転軸同士の間隔が、前記第1ローラの半径と前記第2ローラの半径の和よりも短いことを特徴としている。
【0008】
前記構成によれば、被切断物が安定して載置される。これによって、安定した切断工程を提供することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に加え、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラとの間にパイプ又は棒が載置され、前記レーザ光源は、前記第1ローラ及び前記第3ローラの前記回転に伴って回転している前記パイプ又は棒を溶断することを特徴としている。
【0010】
前記構成によれば、長尺の材料として想定されるパイプ又は棒を切断するに当たり、材料の載置状態が変動せず、安定した切断工程を提供することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、第1ローラ、第2ローラ、第3ローラ及び第4ローラと、前記第1ローラと前記第3ローラとの間でレーザ光を照射するレーザ光源と、前記第1ローラと第2ローラとの間及び前記第3ローラと前記第4ローラとの間に載置されるパイプ又は棒の一端が当接する当接部材とを備え、 前記第2ローラ、前記第1ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラの各回転中心は、この順、もしくはその逆の順で、水平方向に台形状の各頂点に位置し、かつ各ローラが同一方向に自由に回転するように配置され、前記第3ローラは、前記第1ローラの回転中心と前記第3ローラの回転中心を結んだ線上に離間部を介して設けられており、前記第4ローラは、前記第2ローラの回転中心と前記第4ローラの回転中心とを結んだ線上に別の離間部を介して設けられており、前記第1ローラ乃至第4ローラの少なくとも一つのローラの回転軸は、前記パイプ又は棒と前記当接部材との当接部からの離れるように鉛直方向に傾斜しており、前記他のローラは、同一の回転軸に取り付けられ、もしくは互いに平行となっていることを特徴としている。
【0012】
前記構成によれば、少なくとも一つのローラの回転軸を、他のローラの回転軸に対して所定の角度を与えることによって、前記パイプ又は棒の回転軸の長手方向の当接部材側へ、切断する前記パイプ又は棒に押圧力を付勢することができ、加工中の位置ズレ等を防ぎ、さらに安定した切断工程を提供することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明に加えて、前記第1ローラ及び前記第3ローラの前記回転軸延長線上の前記離間部の両側に、それぞれ他の離間部を介して第5ローラ及び第6ローラが備えられ、前記他の離間部の間隔は、前記第2ローラ及び前記第4ローラの回転軸方向の幅よりも広く、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ、前記第3ローラ、前記第5ローラ及び前記第6ローラとは、回転軸同士の間隔がローラの半径の和よりも短いことを特徴としている。
【0014】
前記構成によれば、長尺の材料として想定されるパイプ又は棒を切断するに当たり、材料の載置状態が変動せず、自重による材料のたわみや、回転による振れ回りの発生を防止でき、安定した切断工程を提供することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載された発明に加えて、前記パイプ又は棒が、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラとの間に載置されたときに、各ローラと前記パイプ又は棒と当接個所に対して前記パイプ又は棒の回転中心を挟んで反対側の前記パイプ又は棒の外表面の少なくとも一部に当接する補助ローラを備えることを特徴としている。
【0016】
前記構成によれば、材料として想定されるパイプ又は棒が、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラとの間に載置されるとともに、さらに外表面の少なくとも一部に補助ローラを当接させることにより、材料の載置状態が変動せず、自重による材料のたわみや、回転による振れ回りの発生を防止でき、安定した切断工程を提供することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至請求項6に記載された発明において、前記パイプ又は棒は、ガラス管であり、前記レーザ光源は、集光されたレーザ光線を照射するCOレーザ光源であることを特徴としている。
【0018】
前記構成によれば、ガラス管を溶断することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項3乃至請求項7に記載された発明において、清浄な空気もしくは窒素ガスが、前記パイプ又は前記棒のレーザ光線が照射される部分に向けて噴射されることを特徴としている。
【0020】
前記構成によれば、高速ガス流を発生させることで、レーザの入熱によって溶融した金属を吹き飛ばし、レーザ光線の光路を確保することができるので、パイプ又は棒の溶断面の寸法精度を確保することができる。
さらに、清浄な空気をパイプ又は棒の溶断される部分に噴射することによって、金属の切断において酸化反応熱を切断に利用できるため切断速度や加工限界を向上させることができる。
また、窒素ガスをパイプ又は棒の溶断される部分に噴射することによって、酸化皮膜を生成せずに切断することができ、切断面を一様な状態とすることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、レーザ切断装置と、搬送部と、を備え、前記レーザ切断装置は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレーザ切断装置であることを特徴とするレーザ切断システムである。
【0022】
前記レーザ切断装置と搬送部とを組み合わせることによって、レーザ切断システムを提供することができる.
【発明の効果】
【0023】
本発明のレーザ切断装置によれば、レーザ光により切断される被切断物の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態であるレーザ切断システム1の正面図を図1(a)に示し、側面図を図1(b)に示している。
【0026】
レーザ切断システム1は、図1(a)に示すように被切断物であるワーク(パイプ又は棒)8で示される切断する材料の加工個所の位置決めを行い、レーザ光源5を使って溶断するレーザ切断装置10(以下、「切断装置」という。)と、図1(b)に示すように切断装置10にワーク8を供給する搬送部50とを備えている。
【0027】
図2は、レーザ切断システム1の切断装置10について詳細を表した模式図である。
切断装置10について、図2を参照して説明する。ここで、図2(a)は切断装置10のレーザ光源5付近を正面から見たものであり、図2(b)は切断装置10を、図2(a)の矢視A−Aの側面から見たものを模式的に示したものである。
【0028】
図2(a)に示すように、切断装置10は、ワーク8を載置する第1ローラ11、第2ローラ12、第3ローラ13、第4ローラ14、第5ローラ15及び第6ローラ16と、複数の補助ローラ30と、ワーク8の回転軸長手方向の移動を拘束する当接部材(位置決めプレート)17と、ワーク8を溶断するレーザ光源5とを備えている。
【0029】
第1ローラ11、第2ローラ12、第3ローラ13、第4ローラ14、第5ローラ15及び第6ローラ16は、直線的なワーク8を安定して載置するように構成されている。
さらに各ローラを回転駆動させるとき同じ回転速度を与えるために、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16は、同一の回転軸18に取り付けられている。また、各々のローラ11、13、15、16の半径Rは等しくなっている。
【0030】
第5ローラ15及び第6ローラ16の設置位置は、水平方向に移動することができ、ワーク8の長尺方向の長さに応じて決定される。詳しくは、第1ローラ11、第3ローラ13の設置位置との関係から、ワーク8が安定して回転して、ワーク8を溶断できるように設置位置が決められる。
各々のローラ11、13、15、16は、図示しないローラ回転用モータが共通の回転軸18を回転駆動させることにより、回転する。
【0031】
なお、図2(a)に示すように第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16は、それぞれ水平方向に所定距離だけ離れて取り付けられている。
【0032】
また、図2(b)に示すように、第2ローラ12及び第4ローラ14の回転軸19が、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転軸18に対して、互いに平行し、水平な位置に設定されている。
【0033】
第2ローラ12及び第4ローラ14は、水平方向に所定距離だけ離れて回転軸19に取り付けられている。なお、本実施形態では、第2ローラ12及び第4ローラ14の半径は、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の半径Rと同じものとしている。
【0034】
第2ローラ12及び第4ローラ14は、それぞれ回転軸19に回転自由な状態で軸着されており、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16が、図示しないローラ回転用モータによって回転駆動されるとき、図示しないベルトを用いて、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16と同方向に回転することができる(図2(b)の各ローラ11、12、13、14、15、16、30の中心周り、回転を表す矢視方向)。これにより、ワーク8は、反対方向に回転する。
【0035】
なお、第2ローラ12及び第4ローラ14の回転軸19を図示しないローラ回転用モータによって、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転軸18の回転と同期させて、回転駆動しても良い。
【0036】
第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転軸18と第2ローラ12及び第4ローラ14の回転軸19との軸間距離Dは、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の半径Rと第2ローラ12及び第4ローラ14の半径Rとの和よりも短いものとしている。
【0037】
前記のように回転軸間距離Dを、ローラの半径Rとの関係で規定することによって、径が小さいワーク8であっても、確実に第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16と第2ローラ12及び第4ローラ14との間にワーク8を載置することができ、かつワーク8が、各ローラ11、12、13、14、15、16に引きずられる等により、落下することを防止することができる。
【0038】
各ローラは、互いに干渉せずに自由に回転できるように、第6ローラ16、第2ローラ12、第1ローラ11、第3ローラ13、第4ローラ14、第5ローラ15の順、もしくはその逆の順で、回転軸18、19方向に配置されている。
【0039】
水平方向の各ローラの配置を詳しく述べると、第1ローラ11と第3ローラとは、離間部L1を介して設けられ、第2ローラ12と第4ローラ14は、離間部L1の外側に設けられ、さらに第5ローラ15と第6ローラ16とは、第1ローラ11及び第3ローラ13の回転軸の延長線上で、離間部L1の両側に他の離間部L2を介して設けられている。
【0040】
他の離間部L2の幅は、第2ローラ12及び第4ローラ14の幅L3よりも広くしていることから、回転軸の異なるローラ同士が回転時に干渉することを防止している。
【0041】
前記のように回転軸間距離Dは、ローラの半径の和(R+R)よりも短いため、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16と第2ローラ12及び第4ローラ14とは、互いに干渉せずに自由に回転することができる。
【0042】
図2(a)に示すように、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転軸18の延長線上、第5ローラ15方向の外側に当接部材17が設置されている。
【0043】
当接部材17は、ワーク8の長尺方向の端面に当接する。図2(a)において当接部材17は、第5ローラ15側に設置されているが、第6ローラ16側に設置することもできる。
【0044】
さらに、図2(a)に示すように、2つの補助ローラ30、30が、第2ローラ12及び第4ローラ14と同一面上に、ワーク8を押さえるように配設されている。
【0045】
補助ローラ30は、ワーク8が第2ローラ12及び第4ローラ14と第1ローラ11及び第3ローラ13との間に載置されたときに、各ローラとワーク8との当接面と反対側のワーク8の外表面の少なくとも一部に当接するように配置されている。
【0046】
そして、後記するように、ワーク8が、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16と、第2ローラ12及び第4ローラ14とに載置された後、補助ローラ30は、図2(b)における下方へ移動し、ワーク8を挟み込む。
【0047】
補助ローラ30は、ワーク8において、切断に供される材料に応じて、図2(b)における鉛直下方向の拘束力を効率良く付加することできるように形状、大きさ等を決定することが好ましい。
【0048】
各々のローラ11、12、13、14、15、16におけるワーク8との接触面は、回転駆動力をワーク8に伝達するため、滑りが少ないものとし、例えば、ゴムやプラスチック、などがあり、ワーク8の材料やローラと接触する表面状態を考慮して、静止摩擦が高い材料を使用することが好ましい。また、ゴム系等の弾力性のある緩衝部材を各ローラ11、12、13、14、15、16の外表面に装着しても良い。
【0049】
ここで、第1ローラ11と第3ローラ13との間には、前記したように所定の距離を有する離間部L1が設けられている。この離間部L1において、ローラ上に載置されたワーク8に対して、レーザ光源5から集光したレーザ光が照射され、ワーク8が回転しつつ、溶断される。
【0050】
図2(b)に示すように、レーザ光源5は鉛直方向から僅かに傾けた状態となっている。これは、レーザ光源5を使用する上で、塵埃等に起因する劣化を防止するための措置であり、公知の技術として推奨される設置方法である。
【0051】
レーザ光源5の先端とワーク8との距離については、使用するレーザ光線の焦点距離、能力、特性に応じて設定することが好ましい。
【0052】
レーザ光線は、一般に溶接・溶断に使われているもので良い。例えば、ガラスならば、COレーザ、アルミ、鉄等の金属ならば、COレーザあるいは、YAG(イットリウム(Yittrium)・アルミニウム(Aluminium)・ガーネット(Garnet))レーザを、溶断する材料に応じて選択することが好ましい。
【0053】
次に搬送部50について図3を参照して説明する。図3は、搬送部50において切断される材料であるワーク8に注目して、その搬送の流れを(a)〜(d)の順で表したものであり、図1(b)と同じく側面から搬送部50を見た説明図である。
【0054】
図3(a)に示すように、ワーク8は、図示しないホッパーから切断装置10方向へ下降傾斜した搬入器51の上面を転がり、ワーク送り治具54に到達する。図3(a)において、ワーク8の上部に示している矢印はホッパーの方向を示す。また、後記する一連の工程が終了した後、ワーク8は、次工程と記載された矢印の方向に進む。
【0055】
ここで、搬入器51は、長尺の材料であるワーク8の落下や揺動等を防止しつつ搬入するように、材料の長尺方向(図3(a)における図の奥行き方向)に、複数箇所もしくは全面で当接してワーク8を載置できるようにするものが好ましい。例えば、板状の平らな上面を有するものや、平らな上面を有する棒状のものが並列に複数本備えられているものである。
【0056】
ワーク送り治具54に到達したワーク8は、ワーク送り治具54の頂部56に当接している間(図示せず)は、搬入器51上では停止している。ワーク送り治具54が図3(a)において反時計回りの矢印の方向に回転し、図3(a)に示すようにワーク送り治具54の溝部55が搬入器51の上面の下降傾斜側先端部分とほぼ一致したときに、溝部55にワーク8が一つ挿入される。
【0057】
ここで、ワーク送り治具54には、ワーク8の加工の位置決めを行う溝部55が形成されており、溝部55は、図3(a)において、正面から見た場合に、円周部を等角度分割した位置に切り欠かれている。図3(a)では、12等分、すなわち角度で30度毎に12箇所の切り欠きを設けているが、溝部55の数はこれに限定されるものではない。そして、回転角度の制御によっては、溝部55の位置についても、等分化した位置に限定されない。
【0058】
また、溝部55の切り欠きの形状についても、図3(a)では、略三角形の形状としているが、切断する材料の扱いや搬入器51との関係で決定されるものであり、特に三角形に限定されるものではない。
【0059】
なお、ワーク送り治具54の回転は、本実施形態のように12等分の溝部55を設けている場合は、ワーク8を後記する加工位置へ一つずつ順次移動するため、30度回転を一回とした間欠的な回転運動としている。ただし、これは、溝部55の位置や、材料の形状等に依存するものであり、限定されるものではない。
【0060】
次に図3(b)に示すように、ワーク送り治具54が反時計回りに回転し、溝部55に挿入されたワーク8は、ワークガイド53に当接し、回転に伴い、ワークガイド53に沿って移動する。
【0061】
ワーク8が挿入された溝部55が、図3(b)に示すように、切断装置10の切断加工位置である最頂部まで移動したとき、ワーク8は、ワークガイド53上から、第1ローラ11、第2ローラ12、第3ローラ13、第4ローラ14、第5ローラ15及び第6ローラ16上に載置されている。
【0062】
図示しないセンサが、ワーク8が溝部55に挿入されたことを検知したとき、図示しない制御装置は、図3(c)に示すように、補助ローラ30を下降させ、ワーク8は、第1ローラ11、第2ローラ12、第3ローラ13、第4ローラ14、第5ローラ15及び第6ローラ16と合わせて三方向から拘束される(図2(b)参照)。
【0063】
ワーク8が、各々のローラによって三方向から拘束された後、図示しないローラ回転駆動用モータは、回転軸18を回転駆動させる。このとき回転軸19も自転する。
【0064】
ワーク8は、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転に伴い、回転する。なお、回転速度は、切断する材料や寸法、形状、レーザ光源の能力や設置位置等によって適正な値を選択することが望ましい。
【0065】
レーザ光源5は、回転するワーク8に対して、レーザ光線を照射し、ワーク8を溶断する。このときレーザ光源5は、ワーク8を回転させることによって、ワーク8の周上に一様にレーザ光線を照射することができ、切断される被切断物であるワーク8に回転方向の変形を加えずに溶断することができる。
【0066】
ワーク8が、回転し溶断された後、図示しないローラ回転駆動用モータは停止し、図示しない制御装置は、補助ローラ30を適正な停止位置まで上昇させ、停止させる。
【0067】
図示しないセンサは、補助ローラ30の上昇、停止が完了したことを検出したことを図示しない制御装置に伝達し、図示しない制御装置はワーク送り治具54を回転させる。
【0068】
ワーク送り治具54の回転に伴い、ワーク8は、再びワークガイド53に当接し、ワークガイド53に沿って移動し、溝部55に挿入された状態に復帰する。
【0069】
そして、図3(d)に示すように、ワーク送り治具54が、間欠的な反時計回りの回転を繰り返し、溝部55に挿入されているワーク8が搬出器52の上面に当接する位置まで移動したとき、ワーク8は、溝部55から搬出器52の下降斜面となっている上面を転がり、次工程へ移動する。
【0070】
次に図4に基づき、実施形態の変形例である切断装置10´に示す少なくとも一つのローラの回転軸が傾きを持つ場合を説明する。この変形例では、レーザ光源5と当接部材17との間にある第3ローラ13、第4ローラ14そして第5ローラ15のすべてが傾きを有している(図2参照)。なお、説明では、代表して変形例の第4ローラ14´の傾きと当接部材17との関係について説明するが、第3ローラ及び第5ローラについても同様となる。
【0071】
図4は、図2(b)の矢視Bから、変形例におけるワーク8と、当接部材17と第4ローラ14´との関係を模式的に表したものである。
【0072】
第4ローラ14´の回転軸19´は、第1ローラ11、第3ローラ13、第5ローラ15及び第6ローラ16の回転軸18(図示しない)に対して、所定の角度θを有している。この所定の角度θは、他のローラの回転軸に対して、第4ローラ14´がワーク8に当接したときに、回転軸19´の延長線と当接部材17との交点がワーク8と当接部材17との当接部からの離れるように鉛直方向に傾斜している。
【0073】
このように、第4ローラ14´の回転軸19´を、第1ローラ11等の回転軸18に対して傾きを与えることによって、ワーク8の回転軸の長手方向の当接部材17側へ、すなわち、切断するワーク8に押圧力を付加している。
【0074】
このように一定の方向に押圧力を付加し、加工する材料の拘束を確実にすることによって、回転による振動、ブレやレーザパルスの振動等によって生ずる可能性がある加工中の位置ズレ等を防ぎ、安定した切断工程を提供する。
【0075】
なお、前記したように、図2において当接部材17は、第5ローラ15側に設置されているが、第6ローラ16側に設置することもできる。
【0076】
ただし、前記変形例について言えば、第4ローラ14´の回転軸19´が、第1ローラ11等の回転軸18に対して所定の角度θを有している場合は、第4ローラ14´の回転軸19´を当接部材17方向へ延長した場合に、回転軸19´の延長線と当接部材17との当接表面との交点が、第4ローラ14´の回転中心に対して、ワーク8の回転中心から離れる方向に傾いている必要がある。第4ローラ14´の回転軸19´の傾きによって、ローラ端部が当接して、ワーク8を押圧する力の方向が変わるからである(図4参照)。
【0077】
次に図5を参照して、他の変形例10´´について説明する。
レーザ光源5には高圧ボンベ101が、導入管102によってつながれている。ここで、高圧ボンベ101には、圧縮された補助ガス100(清浄な空気もしくは窒素ガス)が封入されている。レーザ光源5がレーザ光線をワーク8に照射する際に(図2参照)、補助ガスは、レーザ光源5の円錐状の先端部分から光線の光路と同方向にワーク8に向かって噴射される。
なお、補助ガス100は、切断材料の種類や要求される切断品質によって、清浄な空気もしくは窒素ガスが用いられる。
【0078】
本変形例によれば、ワーク8を回転させることによって、溶断面のレーザ照射条件を安定させるとともに、補助ガス100を噴射することによって、レーザの入熱によって溶融した金属を吹き飛ばし、レーザ光線の光路を確保することができるので、ワーク8の溶断面の寸法精度を確保でき、及びクラック等のない滑らかな溶断面が得られ、高い切断品質を提供することができる。
【0079】
以上、実施形態では、従来切断及び仕上げという複数の工程が必要だったパイプや棒の切断加工を一工程で済ますことができ、加えて、切断する材料の自動的な搬送を可能にする搬送装置と組み合わせることにより、生産性を向上させると共に、人的な作業環境の改善も図ることができる。
【0080】
また、自動的に切断する材料を位置決め、固定することにより、位置ズレ等を防止し、最小限の局所的な切断をすることができることから、製品間のバラツキの少ない高い精度の寸法を確保することができる。さらに、滑らかでヘアクラック等の潜在的な欠陥を極力省くことができることから、製品の信頼性を向上させ、検査工程等の後工程の生産性を向上させることができる。
【0081】
次に、本実施形態が適用されるワークの一例を図6に示す。図6に示すワークは、例えば放電管に使用され、外径と全長との比(WD:WL)が2〜3:1000で、肉厚と全長との比(WT:WL)が約0.8:1000の長尺薄肉ガラス管である。
【0082】
本発明は本実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明を適用したレーザ切断装置の一実施例を示す全体図である。
【図2】本発明のレーザ切断装置の切断部の一実施例について詳細を表した模式図である。
【図3】本発明の搬送部における切断される材料であるパイプ又は棒に注目して、その搬送の流れを(a)〜(d)の順で表した模式図である。
【図4】本発明の第2ローラ及び第4ローラの傾きと当接部材との関係についての説明図である。
【図5】本発明の他の変形例についての説明図である。
【図6】本発明の実施例が適用されるワークの一例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザ切断システム
5 レーザ光源
10 切断装置(レーザ切断装置)
11 第1ローラ
12 第2ローラ
13 第3ローラ
14 第4ローラ
15 第5ローラ
16 第6ローラ
17 当接部材
18 回転軸(第1ローラ、第3ローラ、第5ローラ、第6ローラ)
19 回転軸(第2ローラ、第4ローラ)
20 回転軸(補助ローラ)
30 補助ローラ
50 搬送部
51 搬入器
52 搬出器
53 ワークガイド
54 ワーク送り治具
55 溝部
56 頂部
θ 傾き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行する回転軸に軸着された第1ローラ及び第2ローラと、
前記第1ローラの回転軸の延長線上に離間部を介して設けられた第3ローラ及び前記第2ローラの回転軸の延長線上に別の離間部を介して設けられた第4ローラと、
前記第1ローラと前記第3ローラとの間でレーザ光を照射するレーザ光源とを備え、
前記各ローラは、回転軸方向に前記第2ローラ、前記第1ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラの順、もしくはその逆の順で、前記各ローラが同一方向に自由に回転するように配置されていることを特徴とするレーザ切断装置。
【請求項2】
前記第1ローラ及び前記第3ローラの前記回転軸に延長線上の前記離間部の両側に、それぞれ他の離間部を介して第5ローラ及び第6ローラが備えられ、
前記他の離間部の間隔は、前記第2ローラ及び前記第4ローラの回転軸方向の幅よりも広く、
前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ、前記第3ローラ、前記第5ローラ及び前記第6ローラとは、回転軸同士の間隔が、前記第1ローラの半径と前記第2ローラの半径の和よりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ切断装置。
【請求項3】
前記第2ローラと前記第4ローラとの間及び前記第1ローラと前記第3ローラとの間にパイプ又は棒が載置され、
前記レーザ光源は、前記回転に伴って回転している前記パイプ又は棒を溶断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ切断装置。
【請求項4】
第1ローラ、第2ローラ、第3ローラ及び第4ローラと、
前記第1ローラと前記第3ローラとの間でレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記第1ローラと第2ローラとの間及び前記第3ローラと前記第4ローラとの間に載置されるパイプ又は棒の一端が当接する当接部材とを備え、
前記第2ローラ、前記第1ローラ、前記第3ローラ及び前記第4ローラの各回転中心は、この順、もしくはその逆の順で、水平方向に台形状の各頂点に位置し、かつ各ローラが同一方向に自由に回転するように配置され、
前記第3ローラは、前記第1ローラの回転中心と前記第3ローラの回転中心を結んだ線上に離間部を介して設けられており、
前記第4ローラは、前記第2ローラの回転中心と前記第4ローラの回転中心とを結んだ線上に別の離間部を介して設けられており
前記第1ローラ乃至第4ローラの少なくとも一つのローラの回転軸は、前記パイプ又は棒と前記当接部材との当接部からの離れるように鉛直方向に傾斜しており、
前記他のローラは、同一の回転軸に取り付けられ、もしくは互いに平行となっている
ことを特徴とするレーザ切断装置。
【請求項5】
前記第1ローラ及び前記第3ローラの前記回転軸延長線上の前記離間部の両側に、それぞれ他の離間部を介して第5ローラ及び第6ローラが備えられ、
前記他の離間部の間隔は、前記第2ローラ及び前記第4ローラの回転軸方向の幅よりも広く、
前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ、前記第3ローラ、前記第5ローラ及び前記第6ローラとは、回転軸同士の間隔がローラの半径の和よりも短い
ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ切断装置。
【請求項6】
前記パイプ又は棒が、前記第2ローラ及び前記第4ローラと、前記第1ローラ及び前記第3ローラとの間に載置されたときに、各ローラと前記パイプ又は棒と当接個所に対して前記パイプ又は棒の回転中心を挟んで反対側の前記パイプ又は棒の外表面の少なくとも一部に当接する補助ローラを備える
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のレーザ切断装置。
【請求項7】
前記パイプ又は前記棒は、ガラス管であり、
前記レーザ光源は、集光されたレーザ光線を照射するCOレーザ光源であることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のレーザ切断装置。
【請求項8】
清浄な空気もしくは窒素ガスが、前記パイプ又は前記棒のレーザ光線が照射される部分に向けて噴射されることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載のレーザ切断装置。
【請求項9】
レーザ切断装置と、搬送部と、を備えたレーザ切断システムであって、
前記レーザ切断装置は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレーザ切断装置であることを特徴とするレーザ切断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168327(P2008−168327A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5327(P2007−5327)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(591145966)株式会社進興製作所 (4)
【Fターム(参考)】