説明

レーザ加工装置

【課題】加工対象物に照射するレーザパワーを常に目的のパワーに維持することができ、常に同一品質のレーザ加工を加工対象物に施すことのできるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】偏光ビームスプリッター15を通過しないで反射する実反射レーザ光を検知する第1受光素子S1を設ける。制御装置24は、第1受光素子S1からの検知信号SG1に基づいて、その時々の偏光ビームスプリッター15を通過し加工対象物Wに照射される実通過レーザ光の実通過パワー値Psを求める。そして、求めた実通過パワー値Psと入力装置23にて設定力した設定加工パワー値Poとを比較し、実通過パワー値Psが設定加工パワー値Poと相違したとき、制御装置24は、回動装置18を介して、1/2波長板14を回動制御しての偏光ビームスプリッター15に対する相対回動角を調整し、実通過パワー値Psを設定加工パワー値Poに一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を加工対象物に照射して加工を行うレーザ加工装置がある。そのレーザ加工装置の1つとして、レーザマーキング装置がある。レーザマーキング装置は、金属、樹脂、セラミック、半導体装置、紙、図形等の多種多様の加工対象物の表面に、レーザを照射して多種多様な文字・記号・図形等のマーキングを行う。
【0003】
レーザマーキング装置は、加工対象物の素材に応じて、または、マーキング濃度に応じて、照射するレーザ光のパワーを調整する必要がある。そこで、レーザ光のパワーの調整として、1/2波長板の回動角度を変えることにより、その回動角度に応じて出力レーザとして取り出せるレーザ光のレーザパワーを調整することができるレーザ加工装置(レーザマーキング装置)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この種の1/2波長板は、0度から45度の回動角の範囲で回動することで、レーザ発振器から出力されたレーザ光のパワーを0%から100%の範囲で光学的に調整することができる。これによって、レーザマーキング装置は、加工対象物を、所望のマーキング濃度にマーキングすることができることになる。
【特許文献1】特開2007−268581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したレーザ加工装置(レーザマーキング装置)において、レーザ発振器から出力されたレーザ光のパワーを光学的に調整しても、何らかの原因で目的にパワーを得られない場合がある。このような場合、加工対象物を、当初目的としていたマーキング濃度でマーキングすることができない。
【0006】
また、複数のレーザマーキング装置を使って、同一の加工対象物に対して同じマーキングを大量に行う場合、装置ごとで加工対象物のマーキングが一様であることが必要である。しかしながら、装置ごとに機差(個体差)があるため、レーザ発振器から出力されたレーザ光のパワーを同一になるように光学的に調整しても、全てが同一にならないことが多々生じていた。
【0007】
その結果、全ての加工対象物に一様なマーキングを生産することは、同一品質を維持する上で大きな問題となっていた。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加工対象物に照射するレーザパワーを常に目的のパワーに維持することができ、常に同一品質のレーザ加工を加工対象物に施すことのできるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から入射したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向の光を出射させる光通過手段と、前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を変更する角度変更手段とを備えたレーザ加工装置であって、前記光通過手段からのレーザ光の一部を受光する第1受光手段と、前記第1受光手段の受光量に基づいて、前記角度変更手段を駆動して前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を調整する角度微調整制御手段とを設けた。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記第1受光手段は、前記光通過手段から通過又は反射するレーザ光のいずれか一方を受光する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ発振器がレーザ光を出射する前に、前記レーザ発振器から出射するレーサ光の相対的パワーを設定する外部操作可能なレーザパワー設定手段と、前記レーザパワー設定手段にて設定した相対的パワーの設定量に基づいて、前記レーザ発振器がレーザ光を出射する前に、前記角度変更手段を駆動させて前記相対的な回動角度を変化させ、加工対象物に照射される前記光通過手段で通過または反射する一方の前記レーザ光のパワーを調整するパワー調整制御手段とを備え、前記角度微調整制御手段は、加工前に前記レーザ発振器からレーザ光を出射させた状態であって、前記光通過手段で通過または反射する一方の前記レーザ光が加工対象物に照射される前に、前記第1受光手段の受光量に基づいて、前記一方のレーザ光のパワーが前記レーザパワー設定手段により設定した設定量になるように、前記角度変更手段を駆動して前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を調整する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、前記レーザ発振器と前記光通過手段との間に配設され、前記レーザ発振器からのレーザ光を前記光通過手段側へ導くとともに、このレーザ光の一部を前記光通過手段側とは別方向に分岐する分岐手段と、前記一部のレーザ光を受光する第2受光手段と、前記第2受光手段の受光量に基づいて、前記レーザ発振器から出射されるレーザ光の予め設定された基準レーザ出力値になるように、前記レーザ発振器への駆動信号を調整するレーザ駆動制御手段とを備えた。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のレーザ加工装置において、少なくとも前記第1受光手段、及び、前記第2受光手段を収容するヘッドユニットと、前記ヘッドユニットに、励起光又はレーザ光を伝搬させる光ファイバとを備えた。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれ1つに記載のレーザ加工装置において、前記第1受光手段の受光量が、予め設定される前記設定量に対応する受光量に対して所定量以上の開きがあった場合には、レーザパワーの異常と判断して報知手段にて報知させるエラー報知制御手段を備えた。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれ1つに記載のレーザ加工装置において、前記第2受光手段からの受光量が、予め設定される下限基準値を下回った場合には、レーザ劣化と判断して表示手段に劣化を出力するレーザ劣化検知制御手段を備えた。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、第1受光手段を設けたことにより、角度微調整制御手段は、第1受光手段が受光した受光量に基づいて、角度変更手段を駆動してレーザ発振器と光通過手段との相対的な回動角度を調整する。従って、何らかの原因で光通過手段から出射するレーザ光のパワーが変動したとき、角度微調整制御手段は、第1受光手段が受光した受光量にてその変動を検出し、一方のレーザ光のパワーがレーザパワー設定手段により設定した設定量になるように制御することができる。
【0015】
その結果、加工対象物に照射するレーザパワーを常に目的のパワーに維持することができ、常に同一品質のレーザ加工を加工対象物に施すことができる。
請求項2に記載の発明によれば、角度微調整制御手段は、第1受光手段が受光する光通過手段から通過又は反射するレーザ光のいずれか一方に基づいて、角度変更手段を駆動してレーザ発振器と光通過手段との相対的な回動角度を調整する。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、加工対象物にレーザ光を直接照射してレーザ加工する前に、レーザ光のパワーがレーザパワー設定手段にて設定したレーザパワーに調整することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、第2受光手段を設けたことにより、レーザ駆動制御手段は、第2受光手段が受光した受光量に基づいて、レーザ発振器から出射されるレーザ光の予め設定された基準レーザ出力値になるように、レーザ発振器の駆動信号を調整する。従って、何らかの原因でレーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーが変動したとき、又はしているとき、レーザ駆動制御手段は、第2受光手段が受光した受光量にてその変動を検出し、レーザ発振器から出射されるレーザ光のパワーが予め設定した基準レーザ出力値になるように制御することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、ヘッドユニットに光ファイバを介してレーザ光又は励起光が伝搬して離間した位置あるヘッドユニットからレーザ光を出射することができる。
請求項6に記載の発明によれば、第1受光手段を設けたことにより、エラー報知制御手段は、第1受光手段が受光した受光量に基づいてレーザパワーの異常を判断でき、その異常を報知手段にて報知させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、第2受光手段を設けたことにより、レーザ劣化検知制御手段は、第2受光手段は受光した受光量に基づいてレーザ加工装置の劣化を判断でき、劣化しているときはその旨を表示手段に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のレーザ加工装置をレーザマーキング装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、レーザマーキング装置1は、励起光に基づいて発振するレーザ光を加工対象物Wに出射するヘッド部10、前記励起光を生成するコントロール部20、ヘッド部10とコントロール部20との間に接続され励起光をヘッド部10に伝送する可撓性の光ファイバ30とを備えている。ヘッド部10は、励起光に基づいてレーザ光を発振し、発振したレーザ光を光学的にパワー調整してレーザ光を加工対象物Wに出射する。コントロール部20は、レーザ光を発振させるための励起光であって、該レーザ光のパワーを制御する励起光を生成し光ファイバ30を介してヘッド部10に出射するようになっている。
【0021】
まず、ヘッド部10について説明する。
ヘッド部10は、コリメータレンズ11、レーザ発振器12、第1〜第3全反射ミラー13a,13b,13c、光通過手段を構成する1/2波長板14、光通過手段を構成する偏光ビームスプリッター15、ガルバノミラー16、収束レンズ17を備えている。また、ヘッド部10は、1/2波長板14を回動させる角度変更手段としての回動装置18、加工対象物Wに出射される光学的にパワー調整されたレーザ光のパワーを検出する第1受光手段としての第1受光素子S1、レーザ発振器12から出射されるレーザ光のパワーを検出するための第2受光手段としての第2受光素子S2を備えている。
【0022】
コリメータレンズ11は、後述するコントロール部20からの出射される励起光を、光ファイバ30を介して入射し、平行光にしてレーザ発振器12に出射する。
レーザ発振器12は、入射した励起光に基づいて共振してレーザ光を出射する。レーザ発振器12は、入射した励起光のパワー値に基づいて、該レーザ発振器12から出射するレーザ光のパワーが制御される。レーザ発振器12から出射したレーザ光は、第1〜第3全反射ミラー13a,13b,13cを介して1/2波長板14に出射される。
【0023】
1/2波長板14は、第1〜第3全反射ミラー13a,13b,13cを介してレーザ発振器12から出射されたレーザ光の光軸に対して垂直かつ該光軸を回動中心に回動可能に設けられていて、その回動角度(レーザ発振器12との相対的な回動角度)に応じて該レーザ光の偏光方向(向き)を変更するようになっている。
【0024】
例えば、1/2波長板14は、0°〜45°で回動されることにより、直線偏光(レーザ発振器12から出射されたレーザ光)の偏光面の角度を0°〜90°に偏光し、水平な直線偏光を垂直な直線偏光に変える。
【0025】
偏光ビームスプリッター15は、1/2波長板14を通過したレーザ光の光軸に対して垂直に設けられ、1/2波長板14を通過したレーザ光を入射する。偏光ビームスプリッター15は、1/2波長板14との相対回動角度(1/2波長板14との偏光面の相対回動角度)に応じて該レーザ光の偏光方向(向き)を変更させ且つ該レーザ光のうち、所定の偏光方向のレーザ光のみを通過させるようになっている。つまり、偏光ビームスプリッター15は、所定の偏光方向以外のレーザ光を通過させずに該レーザ光を予め設定した反射方向に反射させる。
【0026】
偏光ビームスプリッター15を通過したレーザ光は、ガルバノミラー16及び収束レンズ17を介して加工対象物Wに照射される。ガルバノミラー16は、図示しないモータにて回動制御されて回動し、偏光ビームスプリッター15を通過したレーザ光を走査する。その走査されたレーザ光は収束レンズ17の焦点距離に配置された加工対象物Wの表面に結像されて照射される。そして、加工対象物Wの表面に照射されレーザ光により、多種多様な文字、記号、図形等がマーキングされる。
【0027】
前記1/2波長板14は、回動装置18にて回動制御される。回動装置18は、ステッピングモータを備え、ステッピングモータにて1/2波長板14をレーザ光の光軸を回動中心に回動制御する。回動装置18は、ステッピングモータに駆動電流が供給されることで、本実施形態では1/2波長板14を、0°〜45°の範囲において1ステップの単位で回動させて所定の回動角度に回動させるようになっている。
【0028】
回動装置18にて1/2波長板14を回動させることによって、偏光ビームスプリッター15に対する1/2波長板14の相対回動角度が変更される。これによって、偏光ビームスプリッター15を通過して加工対象物Wに照射されるレーザ光(実通過レーザ光)と、偏光ビームスプリッター15を通過しないで予め設定した反射方向に反射させるレーザ光(実反射レーザ光)との割合が変更される。
【0029】
つまり、レーザ光の偏光方向(向き)を変更させることによって、偏光ビームスプリッター15を通過して加工対象物Wに照射されるレーザ光(実通過レーザ光)のパワーを光学的に調整することができる。
【0030】
第1受光素子S1は、レーザ光が偏光ビームスプリッター15にて反射される反射方向に配置され、偏光ビームスプリッター15にて反射されたレーザ光にパワーを検知する。第1受光素子S1は、偏光ビームスプリッター15を通過して加工対象物Wに照射されるレーザ光(実通過レーザ光)を除く、偏光ビームスプリッター15を通過しないで予め設定した反射方向に反射させるレーザ光(実反射レーザ光)を受光する。
【0031】
そして、第1受光素子S1は、偏光ビームスプリッター15を通過しないで予め設定した反射方向に反射する実反射レーザ光を受光して、偏光ビームスプリッター15を通過して加工対象物Wに照射される実通過レーザ光のパワーを算出するための第1検知信号SG1を出力するようになっている。
【0032】
第2受光素子S2は、分岐手段としての第3全反射ミラー13cの裏面側に設けられている。第2受光素子S2の受光面は、第2全反射ミラー13bと第3全反射ミラー13cとの間で形成されるレーザ光の光軸の延長線上に配置されている。
【0033】
第2受光素子S2は、第2全反射ミラー13bからのレーザ光が、第3全反射ミラー13cを反射しないで、そのまま通過する一部レーザ光のパワーを検知する。本実施形態の第3全反射ミラー13cは、第2全反射ミラー13bからレーザ光を1/2波長板14へ100%反射するものではなく、僅かに透過する反射ミラーである。そして、第2受光素子S2は、その僅かに第3全反射ミラー13cを透過したレーザ光を受光して、レーザ発振器12が出射するレーザ光のパワーを算出するための第2検知信号SG2を出力するようになっている。
【0034】
コントロール部20は、励起光発生装置21、駆動装置22、レーザパワー設定手段としての入力装置23、パワー調整制御手段、角度微調整制御手段、レーザ駆動制御手段、エラー報知制御手段又はレーザ劣化検知制御手段としての制御装置24を備えている。
【0035】
励起光発生装置21は、励起光を出射する半導体レーザを備えている。半導体レーザから出射された励起光は、前記レーザ発振器12においてレーザ光を生成し出射させるための励起光であって、その励起光のパワーを調整することによってレーザ発振器12にて生成されるレーザ光のパワーが制御される。励起光のパワーは、駆動装置22から励起光を出射する半導体レーザに供給する電気的駆動量としての駆動電流(パルス幅、波高値等)によって制御されるようになっている。
【0036】
駆動装置22は、励起光発生装置21に備えた励起光を出射する半導体レーザに対して、制御装置24からの励起光のパワーを決定するパルス幅、波高値を指定する制御信号に基づいて駆動信号を供給する。そして、駆動装置22から半導体レーザに供給される駆動電流に基づいて、励起光のパワーが制御され、レーザ発振器12で生成されるレーザ光のパワーが変更される。
【0037】
入力装置23は、ユーザがレーザ発振器12から出射するレーザ光の基準レーザ出力値としてのパワー上限値(設定パワー上限値Pk)を設定するため操作スイッチ、及び、そのパワー上限値(設定パワー上限値Pk)の範囲で加工対象物Wに照射するレーザ光のパワー値(設定加工パワー値Po)を設定するため操作スイッチを備えている。そして、入力装置23は、これらの操作スイッチの操作に基づいて、設定した設定パワー上限値Pk及び設定加工パワー値Poを、それぞれ相対的パワーの設定量として制御装置24に出力する。
【0038】
制御装置24は、中央処理装置(CPU)及び記憶装置(ROM及びRAM)を備え、記憶装置に記憶した制御プログラム及びアプリケーションプログラムに従って、回動装置18及び駆動装置22に制御信号SG3,SG4をそれぞれ出力する。
【0039】
制御装置24は、入力装置23から入力したレーザ発振器12が出射するレーザ光の設定パワー上限値Pkに基づいて、励起光発生装置21に備えた励起光を出射する半導体レーザが、レーザ発振器12が設定パワー上限値Pkを出射するために必要な、半導体レーザに供給するための駆動電流を算出する。制御装置24は、駆動電流を算出すると、その算出した駆動電流を半導体レーザに供給するための、即ち、半導体レーザが出射する励起光のパワーを決定する駆動電流のパルス幅、波高値を指定する制御信号SG3を生成し駆動装置22に出力する。
【0040】
また、制御装置24は、入力装置23から入力した加工対象物Wに照射するレーザ光の設定加工パワー値Poに基づいて、偏光ビームスプリッター15を通過する実通過レーザ光のパワーが該設定加工パワー値Poとなるための該偏光ビームスプリッター15に対する1/2波長板14の相対回動角度を算出する。制御装置24は、相対回動角度を算出すると、その算出した相対回動角度に1/2波長板14を回動するための制御信号SG4を生成し回動装置18に出力する。
【0041】
さらに、制御装置24は、第1受光素子S1からの第1検知信号SG1を入力する。制御装置24は、第1検知信号SG1に基づいて、その時の偏光ビームスプリッター15を通過しないで反射した実反射レーザ光のパワー値(実反射パワー値Pr)を算出する。制御装置24は、算出した実反射パワー値Prと、その時の偏光ビームスプリッター15に対する1/2波長板14の相対回動角度とから、偏光ビームスプリッター15を通過する実通過レーザ光のパワー値(実通過パワー値Ps)を求める。
【0042】
制御装置24は、実通過パワー値Psを求めると、その実通過パワー値Psと入力装置23から入力した設定加工パワー値Poとを比較する。そして、実通過パワー値Psが何らかの原因で設定加工パワー値Poと相違したとき、制御装置24は、実通過パワー値Psを設定加工パワー値Poに一致させるべく、1/2波長板14を回動制御しての偏光ビームスプリッター15に対する相対回動角を調整する。
【0043】
詳述すると、制御装置24は、実通過パワー値Psと設定加工パワー値Poの偏差(=Ps−Po)を求め、その偏差に基づいて1/2波長板14の回動方向とその回動量を算出する。制御装置24は、算出した回動方向と回動量に1/2波長板14を回動すべく、回動装置18に制御信号SG4を出力する。回動装置18は、この制御信号SG4に基づいて1/2波長板14を算出した回動制御して実通過パワー値Psを設定加工パワー値Poにする。
【0044】
なお、実通過パワー値Psが設定加工パワー値Poと同じのときは、制御装置24は、1/2波長板14を回動制御して光学的パワー調整のための処理は行わない。
また、制御装置24は、実通過パワー値Psが設定加工パワー値Poより予め定められた基準値より開きがあるとき、レーザマーキング装置1が何らかの原因で異常があると判断する。制御装置24は、レーザマーキング装置1に異常があると判断すると、入力装置23の表示パネルに設けた報知手段又は表示手段としての表示部23aにその旨を表示させるようになっている。なお、基準値は、予め試験等で求めた値であって、制御装置24の記憶装置に予め記憶させている。
【0045】
さらにまた、制御装置24は、第2受光素子S2からの第2検知信号SG2を入力する。制御装置24は、第2検知信号SG2に基づいて、その時のレーザ発振器12から出射された実パワー上限値Pmを算出する。詳述すると、制御装置24は、第2検知信号SG2に基づいて、第3全反射ミラー13cを透過したレーザ光のパワー値Pmsを演算し、その演算したパワー値Pmsと予め求められている第3全反射ミラー13cのレーザ透過率aとで実パワー上限値Pm(=Pms/a)を求める。なお、レーザ透過率aは、予め試験等で求めた値であって、制御装置24の記憶装置に予め記憶させている。
【0046】
制御装置24は、算出した実パワー上限値Pmと入力装置23から入力した設定パワー上限値Pkとを比較する。そして、実パワー上限値Pmが何らかの原因で設定パワー上限値Pkと相違したとき、制御装置24はレーザ光の実パワー上限値Pmを設定パワー上限値Pkに一致させるべく、励起光発生装置21の半導体レーザから出射する励起光のパワー値を調整する。
【0047】
詳述すると、制御装置24は、実パワー上限値Pmと設定パワー上限値Pkの偏差(=Pm−Pk)を求め、その偏差に基づいて、励起光を出射する励起光発生装置21に備えた半導体レーザに供給する駆動電流を算出する。制御装置24は、算出した駆動電流を半導体レーザに供給するための制御信号SG3を生成し、該制御信号SG3を駆動装置22に出力する。駆動装置22は、この制御信号SG3に基づいて半導体レーザに算出した駆動電流を供給し励起光のパワーを制御して実パワー上限値Pmを設定パワー上限値Pkにする。
【0048】
なお、実パワー上限値Pmが設定パワー上限値Pkと同じのときは、制御装置24は、励起光のパワーを制御して実パワー上限値Pmの調整のための処理は行わない。
また、制御装置24は、実パワー上限値Pmが設定パワー上限値Pkより予め定められた下限基準値より小さいとき、目的のパワーが得られないとしてレーザマーキング装置1の部材が何らかの原因で劣化したと判断する。制御装置24は、レーザマーキング装置1の部材が劣化したと判断すると、入力装置23の表示パネルに設けた表示部23aにその旨を表示させるようになっている。なお、下限基準値は、予め試験等で求めた値であって、制御装置24の記憶装置に予め記憶させている。
【0049】
ヘッド部10とコントロール部20との間に接続された光ファイバ30は、励起光発生装置21に備えた半導体レーザから出射した励起光を伝搬し、ヘッド部10のコリメータレンズ11を介してレーザ発振器12に出射する。従って、半導体レーザから出射した励起光は、離間したレーザ発振器12に出射され、レーザ発振器12は励起光に基づいて発振しレーザ光を出射する。
【0050】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、偏光ビームスプリッター15を通過しないで反射する実反射レーザ光を検知する第1受光素子S1を設けたので、その時々の偏光ビームスプリッター15を通過し加工対象物に照射される実通過レーザ光の実通過パワー値Psを求めることができる。
【0051】
そして、求めた実通過パワー値Psと入力装置23にて設定力した設定加工パワー値Poとを比較し、実通過パワー値Psが何らかの原因で設定加工パワー値Poと相違したとき、1/2波長板14を回動制御して偏光ビームスプリッター15に対する相対回動角を調整し、実通過パワー値Psを設定加工パワー値Poに一致させるようにした。従って、加工対象物Wに照射するレーザパワーを常に一定のパワーに維持することができ、常に同一品質のレーザ加工を加工対象物Wに施すことができる。
【0052】
(2)また、本実施形態によれば、求めた実通過パワー値Psが入力装置23から入力した設定加工パワー値Poより予め定められた基準値より開きが生じたとき、制御装置24は、レーザマーキング装置1が何らかの原因で異常があると判断し、入力装置23の表示パネルの表示部23aにその旨を表示した。従って、ユーザは、入力装置23の表示部23aを見て、レーザマーキング装置1の異常を、即座に確認できる。
【0053】
(3)上記実施形態によれば、第3全反射ミラー13cを反射しないで、そのまま透過する僅かなレーザ光のパワーを検知する第2受光素子を設けたので、その時々のレーザ発振器12からから出射された実パワー上限値Pmを求めることができる。
【0054】
そして、求めた実パワー上限値Pmと入力装置23にて設定した設定パワー上限値Pkとを比較し、実パワー上限値Pmが何らかの原因で設定パワー上限値Pkと相違したとき、励起光発生装置21の半導体レーザから出射する励起光のパワー値を調整して、レーザ光の実パワー上限値Pmを設定パワー上限値Pkに一致させるようにした。
【0055】
従って、加工対象物Wに照射するレーザパワーを常に一定のパワーに維持することができ、常に同一品質のレーザ加工を加工対象物Wに施すことができる。
(4)また、本実施形態によれば、求めた実パワー上限値Pmが設定パワー上限値Pkより予め定められた下限基準値より小さくなったとき、制御装置24は、レーザマーキング装置1の部材が何らかの原因で劣化したと判断し、入力装置23の表示パネルに設けた表示部23aにその旨を表示した。従って、ユーザは、入力装置23の表示部23aを見て、レーザマーキング装置1が劣化したことを、即座に確認できる。
【0056】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、レーザ光を加工対象物Wに照射してレーザ加工を行っている時々に、レーザパワーの調整をフィードバック制御した。これを、レーザ加工を開始する前に、レーザ発振器12を発振させ第1受光素子S1及び第2受光素子S2からの検出信号に基づいて、設定加工パワー値Poになるように事前に調整した後に、レーザ加工を開始するようにして実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、偏光ビームスプリッター15を通過する実通過レーザ光を一方のレーザ光として加工対象物Wに照射し、偏光ビームスプリッター15を反射する実反射レーザ光を他方のレーザ光として第1受光素子S1に受光させたが、これを反対にして、実反射レーザ光を加工対象物Wに照射し、実通過レーザ光を第1受光素子S1に受光させて実施してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、偏光ビームスプリッター15を反射する実反射レーザ光を他方のレーザ光として第1受光素子S1に受光させた。これを偏光ビームスプリッター15を通過した実通過レーザ光の実通過レーザ光の一部を取り出す分割手段(ハーフミラー、ビームスプリッタ、部分透過ミラー、部分反射ミラー等)を設け、その分割手段から取り出した実通過レーザ光の一部を第1受光素子S1で受光するようにして実施してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、1/2波長板14を偏光ビームスプリッター15に対して回動させるようにしたが、偏光ビームスプリッター15を1/2波長板14に対して回動させるように実施してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、波長板として1/2波長板14を用いたが、他の波長板、例えば1/4波長板等を用いて実施してもよい。この場合、1/4波長板を0度〜90度の範囲で回転させることで、レーザ発振器12から出射されるレーザ光のパワーを0%〜100%の間で変更される。
【0061】
・上記実施形態では、第2受光素子は第3全反射ミラー13cの僅かな透過光を検知したが、これを、第1又は第2全反射ミラー13a,13bの僅かな透過光を検知するようにして実施してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、1/2波長板14と偏光ビームスプリッター15を、第3全反射ミラー13cとガルバノミラー16との間に設けた。これを、第1全反射ミラー13aと第2全反射ミラー13bと間に設けたり、第2全反射ミラー13bと第3全反射ミラー13cと間に設けて実施してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、ヘッド部10にレーザ発振器12を設けたが、レーザ発振器12をコントロール部20に設けても良い。この場合、光ファイバ30は、コントロール部20に設けたレーザ発振器12が出射したレーザ光を、ヘッド部10に設けた例えば第1全反射ミラー13aに出射することになる。
【0064】
・上記実施形態では、表示部23aに異常、及び、劣化を表示するようにしたが、ブザーで知らせたり、音声で知らせるようにしてもよい。また、制御装置24が算出したその時々の実パワー上限値Pm及び実通過パワー値Psを、表示部23aに表示するようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、本発明のレーザ加工装置をレーザマーキング装置に具体化したが、例えば、加工対象物の表面に溝を形成するレーザ加工装置等に応用してもよい。この場合、常に、加工対象物に均一な深さの溝を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態のレーザマーキング装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0067】
1…レーザマーキング装置、10…ヘッド部、11…コリメータレンズ、12…レーザ発振器、13a…第1全反射ミラー、13b…第2全反射ミラー、13c…第3全反射ミラー、14…1/2波長板、15…偏光ビームスプリッター、16…ガルバノミラー、17…収束レンズ、18…回動装置、20…コントロール部、21…励起光発生装置、22…駆動装置、23…入力装置、23a…表示部、24…制御装置、30…光ファイバ、Pk…設定パワー上限値、Po…設定加工パワー値、Pm…実パワー上限値、Pms…パワー値、Ps…実通過パワー値、Pr…実反射パワー値、S1…第1受光素子、S2…第2受光素子、W…加工対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から入射したレーザ光のうち、予め定めた偏光方向の光を出射させる光通過手段と、
前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を変更する角度変更手段と
を備えたレーザ加工装置であって、
前記光通過手段からのレーザ光の一部を受光する第1受光手段と、
前記第1受光手段の受光量に基づいて、前記角度変更手段を駆動して前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を調整する角度微調整制御手段と
を設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記第1受光手段は、前記光通過手段から通過又は反射するレーザ光のいずれか一方を受光することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ発振器がレーザ光を出射する前に、前記レーザ発振器から出射するレーサ光の相対的パワーを設定する外部操作可能なレーザパワー設定手段と
前記レーザパワー設定手段にて設定した相対的パワーの設定量に基づいて、前記レーザ発振器がレーザ光を出射する前に、前記角度変更手段を駆動させて前記相対的な回動角度を変化させ、加工対象物に照射される前記光通過手段で通過または反射する一方の前記レーザ光のパワーを調整するパワー調整制御手段と
を備え、
前記角度微調整制御手段は、
加工前に前記レーザ発振器からレーザ光を出射させた状態であって、前記光通過手段で通過または反射する一方の前記レーザ光が加工対象物に照射される前に、前記第1受光手段の受光量に基づいて、前記一方のレーザ光のパワーが前記レーザパワー設定手段により設定した設定量になるように、前記角度変更手段を駆動して前記レーザ発振器と前記光通過手段との相対的な回動角度を調整することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ発振器と前記光通過手段との間に配設され、前記レーザ発振器からのレーザ光を前記光通過手段側へ導くとともに、このレーザ光の一部を前記光通過手段側とは別方向に分岐する分岐手段と、
前記一部のレーザ光を受光する第2受光手段と、
前記第2受光手段の受光量に基づいて、前記レーザ発振器から出射されるレーザ光の予め設定された基準レーザ出力値になるように、前記レーザ発振器への駆動信号を調整するレーザ駆動制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、
少なくとも前記第1受光手段、及び、前記第2受光手段を収容するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに、励起光又はレーザ光を伝搬させる光ファイバと
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれ1つに記載のレーザ加工装置において、
前記第1受光手段の受光量が、予め設定された前記設定量に対応する受光量に対して所定量以上の開きがあった場合には、レーザパワーの異常と判断して報知手段にて報知させるエラー報知制御手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれ1つに記載のレーザ加工装置において、
前記第2受光手段の受光量が、予め設定された下限基準値を下回った場合には、レーザ劣化と判断して表示手段に劣化を出力するレーザ劣化検知制御手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−262224(P2009−262224A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118284(P2008−118284)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】