説明

レーザ半田付け装置

【課題】半田付けの品質を高めかつ半田付け時間を短縮する。
【解決手段】電気回路基板1の端子2と、フラットケーブル3の電線端部である導体4とを半田付けするべく、前工程でリフロー等により端子に半田5を設けておき、その半田には赤色レーザ光Lrを、端子には青色レーザ光をそれぞれ照射するレーザ半田付け装置6を設ける。赤色レーザ出射装置7には赤色半導体レーザ11を設け、青色レーザ出射装置8には青色半導体レーザを設け、各レーザ光を集光レンズ9でそれぞれ集光してスポットにして各対象に照射する。半田と端子との温度特性(同一レーザ光による昇温早さ)に違いがあっても、その温度特性に応じて各レーザ光源の出力を調節することができ、半田と端子とを所定温度まで概ね同時に昇温させることができるため、いずれか一方の発熱が大きくなって熱ダメージが生じてしまうことを防止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射して半田付けを行うレーザ半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電装部品の端子を基板等に半田付けする場合に、半田ごてを用いる手半田では隣り合う端子同士が近い場合にブリッジ接続(短絡)される虞があり、そのような問題を解消するために高精度に位置決めして自動で半田付けを行うことができる種々の半田付け装置が開発されている。
【0003】
自動で半田付けを行う半田付け装置として、レーザ光を半田または半田付け対象物に照射して半田付けを行うようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。レーザ光は微小なスポットにして照射することができるため、近年の高ピッチに配設された微小な端子に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−55456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1による半田付け装置では、単一のコアを有し、光増幅した光をシングルモードで出力する増幅用光ファイバを用いて出力するファイバーレーザ装置により、マイクロ秒以上のパルス幅の光として出力して、その出力光を半田または半田対象物に照射して微小サイズの半田付けを行う。また、具体的には1064nm(または532nm)の単一波長のレーザ光を用いている。
【0006】
一方、半田を構成する金属(主としてSn)と半田付け対象物(上記ランド)を構成する金属(銅または金等)とのレーザ光の波長に対する光吸収率に違いがある。そのため、上記半田装置では、半田の光吸収率が高い波長のレーザ光を照射する場合には半田に対して行い、半田付け対象物の光吸収率が高い波長のレーザ光を照射する場合には半田付け対象物に対して行う、というように波長に応じて照射対象を変えることになる。
【0007】
しかしながら、半田を溶融させて半田付けを行う場合には半田付け対象物も半田が溶融し得る温度まで昇温しておくことにより半田が円滑に行き渡るようになるが、半田付け時間をできるだけ短縮するために上記したようにいずれか一方を早く発熱させた場合には、他方に伝熱されるまでに、先に発熱させた方に熱ダメージが生じる虞がある。熱ダメージが生じた状態で半田付けされたものは、半田付け部分の品質が低下してしまう。熱ダメージが生じないようにするためには、レーザ光の照射部分が急激に発熱しないように時間を掛けて発熱させることが考えられるが、半田付け時間が長くなるため生産性が低くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、半田付けの品質を高めかつ半田付け時間を短縮し得るレーザ半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ半田付け装置は、2つの半田付け対象物と半田とを有する半田付け部分にレーザ光を照射して半田付けするレーザ半田付け装置であって、前記半田付け対象物よりも前記半田を昇温させるのに適する第1レーザ光を出射する第1レーザ光源と、前記半田よりも前記半田付け対象物を昇温させるのに適する第2レーザ光を出射する第2レーザ光源とを有し、前記第1レーザ光源と前記第2レーザ光源とは、前記半田と前記半田付け対象物とが所定温度まで概ね同時に昇温するように前記第1レーザ光と前記第2レーザ光との各出力が調節される構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの半田付け対象物同士を半田付けする場合に、半田付け対象物及び半田の両方に対して別々のレーザ光をそれぞれ照射して昇温させることから、半田と半田付け対象物との温度特性(同一レーザ光による昇温早さ)に違いがあっても、その温度特性に応じて各レーザ光源の出力を調節することができ、半田と半田付け対象物とを所定温度まで概ね同時に昇温させることができるため、いずれか一方の発熱が大きくなって熱ダメージが生じてしまうことを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるレーザ半田付け装置の一例を示す要部斜視図である。
【図2】本発明に基づくレーザ半田付け装置の内部構成を示す模式的斜視図である。
【図3】赤色レーザ出射装置の構成を示す模式図である。
【図4】青色レーザ出射装置の青色レーザ光の出射部分の構成を示す要部拡大斜視図である。
【図5】コリメータレンズの相対位置調整構造を示す要部拡大断面図である。
【図6】青色レーザ光の集光要領を示す図である。
【図7】4本の青色レーザ光の集光の変化を示す図であり、(a)は図6の矢印VIIa−VIIa線の位置で見た図であり、(b)は図6の矢印VIIb−VIIb線の位置で見た図であり、(c)は図6の矢印VIIc−VIIc線の位置で見た図である。
【図8】赤色及び青色レーザ光の半田及び導体への照射要領を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図9】赤色及び青色レーザ光の金属の種類(金・銅・スズ)の違いによる光吸収率を示す図である。
【図10】本発明のレーザ半田付け装置による半田付け後の状態を示す図であり、(a)は図8(a)に対応する図であり、(b)は図8(b)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、2つの半田付け対象物と半田とを有する半田付け部分にレーザ光を照射して半田付けするレーザ半田付け装置であって、前記半田付け対象物よりも前記半田を昇温させるのに適する第1レーザ光を出射する第1レーザ光源と、前記半田よりも前記半田付け対象物を昇温させるのに適する第2レーザ光を出射する第2レーザ光源とを有し、前記第1レーザ光源と前記第2レーザ光源とは、前記半田と前記半田付け対象物とが所定温度まで概ね同時に昇温するように前記第1レーザ光と前記第2レーザ光との各出力が調節される構成とする。
【0013】
これによると、2つの半田付け対象物同士を半田付けする場合に、半田付け対象物及び半田の両方に対して別々のレーザ光をそれぞれ照射して昇温させることから、半田と半田付け対象物との温度特性(同一レーザ光による昇温早さ)に違いがあっても、その温度特性に応じて各レーザ光源の出力を調節することができ、半田と半田付け対象物とを所定温度まで概ね同時に昇温させることができるため、いずれか一方の発熱が大きくなって熱ダメージが生じてしまうことを防止し得る。
【0014】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記第1レーザ光は、前記半田の光吸収率が前記半田付け対象物よりも高くなる波長のレーザ光であり、前記第2レーザ光は、前記半田付け対象物の光吸収率が前記半田よりも高くなる波長のレーザ光である構成とする。
【0015】
これによると、金属の光吸収率がレーザ光の波長の違いにより異なることから、半田に対してはその光吸収率が高くなる波長のレーザ光を照射し、半田付け対象物に対してはその光吸収率が高くなる波長のレーザ光を照射することから、それぞれ効率良く昇温させることができる。
【0016】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記第1レーザ光は赤色レーザ光であり、前記第2レーザ光は青色レーザ光である構成とする。
【0017】
これによると、赤色レーザ光や青色レーザ光の各レーザ光出射装置は比較的安価に入手容易であり、それらを用いた場合には、半田に対しては赤色レーザ光を照射することにより昇温を早くし、半田付け対象物として銅や金を用いた端子や芯線等に対しては青色レーザ光を照射することにより昇温を早くすることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明によるレーザ半田付け装置の一例を示す要部斜視図である。図1の例では、電気回路基板1に例えばプリント配線されている半田付け対象物としての端子2が複数配設され、それら各端子2に、フラットケーブル3のケーブル端で露出された各電線の端部である半田付け対象物としての導体4が半田付けされるようになっている。なお、端子2は、図では板状体に形成されているが、孔を有するランドとして形成されていてもよい。端子2には、例えば前工程のリフローにより所定量の半田5が設けられている。または、リフローにより半田5を端子2に半田付けしておいてもよい。
【0020】
そして、フラットケーブル3の導体4が、端子2に上記したように設けられた半田5の上に載るように位置決め設定される。端子2は導体4の延在方向に長い短冊形状に形成されており、その上面の略全面に半田5が載っている。また、図示省略のセット装置により、半田5の略半分を覆うように導体4が位置決めされている。
【0021】
位置決めされた状態の導体4及び半田5の上方には、レーザ半田付け装置6が配置されている。レーザ半田付け装置6からは、本実施形態では半田5を照射する第1レーザ光としての赤色レーザ光Lrと、導体4を照射する第2レーザ光としての青色レーザ光Lbとが出力される。なお、図1における各レーザ光Lr・Lbの半田5及び導体4におけるスポットは位置を表すものであり、大きさを限定するものではない。
【0022】
図2は、本発明に基づくレーザ半田付け装置の内部構成を示す模式的斜視図である。図に示されるように、レーザ半田付け装置6の内部には、赤色レーザ光Lrを出射する赤色レーザ出射装置7と、青色レーザ光Lbを出射する青色レーザ出射装置8と、赤色レーザ出射装置7から出射される赤色レーザ光Lrを半田5に集光させると共に青色レーザ出射装置8から出射される青色レーザ光Lbを導体4に集光させるための集光レンズ(凸レンズ)9と、赤色レーザ出射装置7と青色レーザ出射装置8との出力を制御する制御ユニット10とが設けられている。なお、図2では、各レーザ光Lr・Lb同士が交差してそれぞれ半田5・導体4を照射するようにされているが、各レーザ出射装置7・8の集光レンズ9の光軸Crに対する傾きや集光レンズ9のレンズ特性等の設定により交差せずに照射させることも可能であり、その場合には各レーザ出射装置7・8の配置が図2の場合とは左右逆になる。
【0023】
図3は赤色レーザ出射装置7の構成を示す模式図である。なお、図ではケーシングや各光学素子を固定する部材等を省略している。図に示されるように、例えば2つの第1レーザ光源としての赤色半導体レーザ11が互いに並列に配設されていると共に、赤色半導体レーザ11の光軸上には、赤色レーザ半導体11側からコリメータレンズ12と、偏光ビームスプリッタ13と、λ/4板14と、集光レンズ9とが、この順に配設されている。なお、コリメータレンズ12も、各赤色レーザ半導体11のそれぞれに対応して2つ設けられている。
【0024】
赤色レーザ半導体11から出射された赤色レーザ光Lrは、光軸を芯とする円錐状に拡散して出射されるが、コリメータレンズ12により平行光にされて偏光ビームスプリッタ13に入射する。偏光ビームスプリッタ13には、赤色レーザ光Lrの光軸に対して45度傾斜した偏光面13aが設けられている。赤色レーザ光Lrの偏光面13aを通過した成分(例えばP偏光成分)は、λ/4板14により90度位相がずれ、集光レンズ9により収束して、半田5の所定位置にスポットとして照射される。
【0025】
また、半田5からの反射光は、集光レンズ9を戻った後、λ/4板14によりさらに90度位相がずらされて偏光ビームスプリッタ13に入るため、偏光面13で反射して、偏光ビームスプリッタ13の側方(図の右側)に出射する。その偏光ビームスプリッタ13の側方には例えば黒色の吸収体15が設けられており、反射光は、吸収体15で吸収されて装置の外部に漏れ出ることはない。
【0026】
なお、図3では赤色半導体レーザ11を2つ設けたが、半田5の大きさや半田付け時間と、入手容易な赤色半導体レーザの出力性能とに応じて任意の数であってよく、1つまたは3つ以上でもよい。また、図3では赤色レーザ出射装置7について説明したが、青色レーザ出射装置8も図3と同様の構成でよく、特に偏光ビームスプリッタ13とλ/4板14の構成は同じであってよい。また、図3では集光レンズ9が赤色レーザ光Lr専用のように示されているが、図2に示したように青色レーザ光Lbと共通であってよい。
【0027】
図4は青色レーザ出射装置8の青色レーザ光Lbの出射部分の構成を示す要部拡大斜視図である。本実施形態では、4つの第2レーザ光源としての青色半導体レーザ21が格子状に配設され、それぞれに対応して4つのコリメータレンズ22が配設されている。なお、各青色レーザ半導体21は基板23に固設され、その基板23には各青色半導体レーザ21を外囲する矩形枠形状のスペーサ24が固着されている。スペーサ24の各青色半導体レーザ21とは相反する側には上記4つのコリメータレンズ22を個別に保持するための各保持部材25が設けられている。
【0028】
図5はコリメータレンズ22の相対位置調整構造を示す要部拡大断面図である。スペーサ24のコリメータレンズ22側には保持部材25を取り付けるために板状の蓋状部分24aが設けられ、蓋状部分24aには青色半導体レーザ21からの出射光(青色レーザ光Lb)を通すのに十分な開口面積を有する開口24bが設けられている。
【0029】
保持部材25は、全体として矩形枠形状をなすと共に、開口24bと連通しかつ開口24bの開口面積以上の大きさの開口25aと、その開口25aから外向き(青色レーザ光Lbの光軸Cbの出射方向)に拡開する矩形状テーパ孔を形成する4つの内側斜面25bとを有する。各内側斜面25bは、矩形の保持部材25の各辺に沿って直線状に延在し、全体で正四角形を形成している。
【0030】
コリメータレンズ22の胴体部分は円柱に形成されており、入射面22aはレンズの光軸Ccを中心とする円に形成されている。コリメータレンズ22は、その入射面22aの円形の縁を各内側斜面25bに4点で当接し、それら4点の当接状態で保持部材25に位置決めされ、例えば接着剤により保持部材25に固定される。
【0031】
上記位置決め構造により、コリメータレンズ22を接着固定する前に、コリメータレンズ22の入射面22aの縁を4つの内側斜面25bに4点で当接させた状態にしつつ、コリメータレンズ22をあおり移動させることにより、コリメータレンズ22の光軸Ccを青色半導体レーザ21の光軸Cbに対して任意の方向に傾けることができる。
【0032】
図4に示されるように、青色レーザ光Lbの光軸Cbに直交する直交軸をXY軸として、コリメータレンズ22をX軸・Y軸方向に図の弧状の矢印Xθ・Yθに示されるように傾動させると、図5に示されるように、X軸方向に対する傾き角度がθxになり、Y軸方向に対する傾き角度がθyになる。なお、図5におけるθxは図示の断面をX軸に沿わせた場合であり、同様にθyは図示の断面をY軸に沿わせた場合である。各θx・θyはそれぞれ任意の角度にすることができるため、コリメータレンズ22のレンズ軸Ccの光軸Cbに対する傾きを任意の方向に設定することができる。
【0033】
青色半導体レーザ21を基板23に固設した状態で、図5に示されるように青色半導体レーザ21のレーザ発光点Pbがコリメータレンズ22のレンズ軸Ccに対してずれている場合には、レンズ軸Cc上にレーザ発光点Pbが位置するように調整することができる。これにより、青色半導体レーザ21の組み付け誤差が生じていても、何等問題が生じることなく、コリメータレンズ22による正常な平行光が得られる。なお、本実施形態の場合には青色半導体レーザ21を4つ配設し、それぞれにコリメータレンズ22を配設していることから、上記調整を4回行う。
【0034】
上記実施形態では青色レーザ出射装置8におけるコリメータレンズ22の相対位置調整要領について説明したが、赤色レーザ出射装置7においても同様であり、その説明を省略する。本実施形態の赤色レーザ出射装置7では赤色半導体レーザ11を2つ配設していることから、上記と同じ調整を2回行えばよい。
【0035】
図6は、青色レーザ光Lbの集光要領を示す図である。また、図7は4本の青色レーザ光の集光の変化を示す図であり、(a)は図6の矢印VIIa−VIIa線の位置で見た図であり、(b)は図6の矢印VIIb−VIIb線の位置で見た図であり、(c)は図6の矢印VIIc−VIIc線の位置で見た図である。図6・7に示されるように、集光レンズ9には4本の平行光からなる青色レーザ光Lbが互いに離れた状態で入射し、それら4本の青色レーザ光Lbは、集光レンズ9により集光されて導体4に近付くにつれて互いに集められ、導体4上で1つの光になる。なお、図7(c)ではスポットとして1点に集光するようにされているが、必ずしも1つのスポットとして集光しなくてもよく、例えば図7(b)の4つの円同士が互いにさらに近付いて接する程度であってもよい。
【0036】
なお、赤色レーザ光Lrも同様に1つのスポットとして集光するようにされてよく、本実施形態では青色レーザ光Lbが4本であるのに対して、赤色レーザ光Lrの場合には2本であり、それ以外は上記と同様であってよい。
【0037】
図8は、赤色及び青色レーザ光の半田及び導体への照射要領を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。青色レーザ光Lbのスポットは、導体4の先端部の幅を略直径としかつ導体4からはみ出さない広さの範囲を照射するようにされている。赤色レーザ光Lrのスポットは、半田5における導体4により覆われない略半分の平面広さでの中央部分を中心とし、かつその略半分の平面広さの全体を照射するようにされている。
【0038】
本実施形態では、青色レーザ光Lbの照射スポットが導体4からはみ出さない大きさとされているのに対して、赤色レーザ光Lrの照射スポットが半田5からはみ出す大きさとされている。青色半導体レーザ21は、入手容易なものの出力が赤色半導体レーザ11の入手容易なものの出力に対して小さいため、上記したように数を多くしており、さらに効率良く導体4を発熱させるため、できるだけ照射損失を出さないように導体4のみを照射するようにしている。このように、青色レーザ光Lbの照射スポットは導体4からはみ出さない大きさとするのが好ましいが、その照射範囲は、概ね集中して導体4を照射するのであればよく、厳密に導体4からはみ出すことを禁じるものではない。
【0039】
それに対して、赤色半導体レーザ11においては、大きな出力のものを入手容易であることから、半田5からはみ出る部分が生じても、半田5の発熱低下に影響を及ぼす事が無い。このように、出力に余裕のある赤色レーザ光Lrの照射範囲を広くしておくことにより、レーザ半田付け装置6の位置決めにおいて、出力に余裕のない青色レーザ光Lbを基準に位置決めすればよい。また、青色レーザ光Lbの照射スポットの径は相対的に小さいことから、位置決めの基準として好適である。
【0040】
本実施形態のように、半田5には赤色レーザ光Lrを照射し、導体4には青色レーザ光Lbを照射するようにしているのは、それぞれの金属の違いによる光吸収率の違いによる。図9は、赤色及び青色レーザ光の金属の種類(金・銅・スズ)の違いによる光吸収率を示す図である。図に示されるように、青色レーザ光の光吸収率は、3種類の中ではスズが最も低く、銅がより高く、金が最も高い。それに対して、赤色レーザ光の光吸収率は、3種類の中では金と銅が低く、スズが最も高い。
【0041】
したがって、各レーザ光の照射対象としては、青色レーザ光Lbにより半田5を照射し、赤色レーザ光Lrにより導体4を照射することが好適である。このようにすることにより、赤色及び青色半導体レーザ11・21の各出力の調整により、半導体5及び導体4の各温度上昇を調整することができ、半導体及び導体4が略同時に半導体5が溶融する温度になるように制御することができる。なお、導体4は部品段階で一定形状に形成されており、自動化された半田付け工程では半田5は前工程で所定量だけ盛り付けられており、半田5及び導体4のレーザ光の照射時間を所定値に設定しておくことで、半田を常に同じ溶融状態にさせて、同じ状態の半田付けを行うことができる。
【0042】
図10は、本発明のレーザ半田付け装置による半田付け後の状態を示す図であり、(a)は図8(a)に対応する図であり、(b)は図8(b)に対応する図である。図に示されるように、半田付けが終了すると、導体4の先端部の上面を覆うように半田5が流れ込んだ状態となり、導体4と端子2とが半田5を介して好適に半田結合される。
【0043】
このように、半田付けにおけるレーザ光の照射対象別に、特に各組成金属の種類に応じて発熱させるのに好適な波長のレーザ光を選択して半田付けを行うことから、上記したように、半田と半田付け対象物とを同じように発熱かつ昇温させることができ、半田が流れる前に半田付け対象物を発熱させ過ぎてダメージを与えてしまうことがない。また、同時に半田溶融温度に達することにより、半田が半田対象物に流れ易くなり、強固な半田結合かつ見栄えの良い半田付け状態にすることができる。
【0044】
また、半田付け対象物としての導体4が銅や金を組成とする金属であり、その金属の光吸収率が高い青色レーザ光Lbを用いるとよいが、上記したように青色半導体レーザ21の入手し易いものは比較的低出力であるため、青色半導体レーザ21を複数(実施形態では4つ)設けている。複数の青色半導体レーザ21を実施形態のように格子状に配設した場合には4本の互いに平行なレーザ光を出射させることができるが、そのままでは各レーザ光が互いに離れているので導体4を速やかに発熱させることができない。
【0045】
それに対して、上記したように集光レンズ9により各レーザ光を1つのスポットとして集光させることができ、導体4の1箇所を集中的に照射することにより発熱を早めることができる。また、上記したように各青色レーザ光Lbのそれぞれにコリメータレンズ22を設けており、各コリメータレンズ22のあおり角度を調整することにより、各青色レーザ光Lbをより確実かつ容易に1点に集光させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、1つの集光レンズ9で赤色及び青色レーザ光Lr・Lbのスポット化のための集光を行わせるようにしたが、各レーザ光Lr・Lbにそれぞれ1つずつの集光レンズを配設するようにしてもよい。なお、上記実施形態のように共通の集光レンズ9を1つ設けた場合には、そのレンズ構造としては可変焦点レンズを用いるとよい。可変焦点レンズとしては、例えば液体を封入したレンズ部と、圧電素子を用いたアクチュエータとにより構成される公知構造のものであってよく、その説明を省略する。
【0047】
以上、本発明を、その好適形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかるレーザ半田付け装置は、半田と半田付け対象物とを所定温度まで概ね同時に昇温させることができ、自動で半田付けを行う装置として有用である。
【符号の説明】
【0049】
2 端子
4 導体
5 半田
6 レーザ半田付け装置
7 赤色レーザ出射装置
8 青色レーザ出射装置
11 赤色半導体レーザ(第1レーザ光源)
21 青色半導体レーザ(第2レーザ光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの半田付け対象物と半田とを有する半田付け部分にレーザ光を照射して半田付けするレーザ半田付け装置であって、
前記半田付け対象物よりも前記半田を昇温させるのに適する第1レーザ光を出射する第1レーザ光源と、前記半田よりも前記半田付け対象物を昇温させるのに適する第2レーザ光を出射する第2レーザ光源とを有し、
前記第1レーザ光源と前記第2レーザ光源とは、前記半田と前記半田付け対象物とが所定温度まで概ね同時に昇温するように前記第1レーザ光と前記第2レーザ光との各出力が調節されることを特徴とするレーザ半田付け装置。
【請求項2】
前記第1レーザ光は、前記半田の光吸収率が前記半田付け対象物よりも高くなる波長のレーザ光であり、
前記第2レーザ光は、前記半田付け対象物の光吸収率が前記半田よりも高くなる波長のレーザ光であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半田付け装置。
【請求項3】
前記第1レーザ光は赤色レーザ光であり、
前記第2レーザ光は青色レーザ光であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103263(P2013−103263A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250273(P2011−250273)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】