説明

レーザ及び/又はプラズマ処理カーボンナノチューブのマット、フィルム又はインクで作製したフィールドエミッションデバイス

【課題】本発明の課題は、レーザ又はプラズマで処理されたカーボンナノチューブマットを備えるフィールドエミッションデバイスを提供することである。
【解決手段】本発明は、フィールドエミッションデバイスであって、前記デバイスはカソードとアノードを備える。カソードは、懸濁液から複数のナノチューブをろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られるカーボンナノチューブマットを備える。マットは、上面及び反対側の下面を備えることができる。下面は、マットが形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応する。上面は、カソードのエミッション面として働くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月9日出願の米国特許仮出願第60/485918号の特典を請求する。本出願はまた、2002年6月14日出願の米国特許仮出願第60/388616号に対して特典を請求する、2003年6月16日出願のPCT/US03/19068の一部継続出願である。本出願はまた、2001年6月14日出願の米国特許仮出願第60/298193号に対して特典を請求する、2002年6月14日出願の米国特許出願第10/171760号の一部継続出願である。本出願はまた、2001年6月14日出願の米国特許仮出願第60/298228号に対して特典を請求する、2002年6月14日出願の米国特許出願第10/171773号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、レーザ又はプラズマで処理されたカーボンナノチューブのマット、フィルム又はインクから又はそれらで作製したフィールドエミッションデバイス又はフィールドエミッションカソードに関する。
【背景技術】
【0003】
フィールドエミッションデバイス
フィールドエミッションデバイスは、電子の運動を利用するデバイスである。代表的なフィールドエミッションデバイスは、少なくともカソード、エミッタチップ、及びカソードから間隔をあけて配置されたアノードを含む。カソードとアノードの間に電圧を印加すると、電子のエミッタチップからのエミッションが可能になる。電子は、カソードからアノードの方向に進む。これらのデバイスは、それだけに限定されないが、マイクロ波用真空管デバイス、電力増幅器、イオン銃、高エネルギー加速器、自由電子レーザ、電子顕微鏡、特にフラットパネルディスプレイを含めて様々な応用分野で使用することができる。フラットパネルディスプレイは、従来の陰極線管の代わりに使用することができる。従って、それはテレビジョン及びコンピュータ用モニタに利用される。
【0004】
従来のエミッタチップは、モリブデンなどの金属、又はシリコンなどの半導体から作製されている。金属製のエミッタチップの問題点として、エミッションに必要な制御電圧が比較的高く、例えば約100ボルトになることである。さらに、これらのエミッタチップには均一性がなく、その結果ピクセル間の電流密度が不均一になる。
【0005】
ごく最近では、炭素材料がエミッタチップとして使用されている。ダイアモンドは、その水素末端表面上の電子親和性が負又は低い。しかし、ダイアモンドチップは、高いエミッション電流、特に電流約30mA/cmでグラファイト化する傾向がある。カーボンフィブリルとしても知られているカーボンナノチューブは、エミッタチップ技術での最も新しい進歩である。フィールドエミッション技術におけるエミッタチップとしてのカーボンナノチューブの領域では、多くの研究が実施されてきたが、依然少なくとも3つの領域で大きな改善が必要である。すなわち、動作電圧を下げること(特定の応用分野に限定されるが)、「ターンオン」電圧を下げること、エミッション電流密度を上げること及びエミッションサイトの数を増やすことである。「ターンオン」電圧(及び動作電圧)を下げることにより、電子エミッションの容易さ及びエミッタチップの寿命が増加する傾向がある。エミッション電流及びエミッションサイトの数をともに増加させることにより明るさが増す。エミッションサイトの数が増加すると、所与の面積又は体積にわたってより均一なエミッションがもたらされる可能性が大きい。
【0006】
カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(CNT)は、直径約1ミクロン未満の虫食い状カーボンデポジットである。CNTは様々な形で存在し、炭素供給原料として固体の炭素を使用する高温炭素アーク法、及びグラファイトロッドと遷移金属の同時レーザ蒸発法によって、様々な炭素含有ガスを金属表面上で接触分解して調製する。米国特許第4663230号で、Tennentは、円筒状の規則正しいグラファイトのコア及び熱分解炭素で汚染されていない規則正しい「成長したままの」グラファイト様表面を有する直径の小さいナノチューブを成長させることに成功した。Tennentは、熱分解炭素の連続したオーバーコートのない、実質的にフィブリル軸に平行なグラファイト様の多層の表層を有するカーボンナノチューブを記載している。そのようなカーボンナノチューブは、グラファイトの湾曲した層に対する接線に垂直であり、実質的にその円筒軸に垂直である軸、すなわちc軸を有するものとして特徴づけることができる。その直径は一般に0.1ミクロン以下であり、長さと直径の比は少なくとも5である。実質的にフィブリル軸に平行なグラファイト様の層を有し、直径が3.5〜75nmであるこうしたナノチューブは、Tennentらの米国特許第5165909号及びTennentらの米国特許第5171560号に記載されており、この両者を参照により本明細書に組み込む。
【0007】
グラファイトの面は、フィブリル軸に対してある角度をなして配向することもできる。こうした構造は、平面の2次元投影のように見えるので、しばしば「魚骨」フィブリル又はナノチューブと呼ばれる。こうした形態及びその製造方法は、参照によって本明細書に組み込まれるGeusの米国特許第4855091号で論じられている。魚骨フィブリルは通常、直径10〜500nm、好ましくは50〜200nmであり、アスペクト比は10〜1000である。
【0008】
多層ナノチューブからなるマクロ集合物(assemblage)及び複合物(composite)は、参照によって本明細書に組み込まれるTennentらの米国特許第5691054号に記載されている。こうした集合物及び複合物は、物理的な特性が少なくとも2次元的に比較的均一である、ランダムに配向したカーボンフィブリルで構成されている。こうしたマクロ集合物はどんな所望のサイズでも形成できるので、「作ったまま」の集成物(aggregate)と区別される。好ましくは、こうした集成物は、少なくとも1つの次元で1mmより大きく、好ましくは1cmより大きい。こうした集合物は、2次元的に断熱性のマット又はフェルトの形をとることができる。
【0009】
米国特許第4663230号、第5165909号及び第5171560号に開示のカーボンナノチューブは、約3.5〜70nmの直径及び直径の100倍より大きい長さを有し、規則正しく並んだ炭素原子の基本的に連続した多層からなる外部領域、及び明確な内部コア領域を有することができる。さらに、この多層ナノチューブには、熱分解でデポジットした炭素が実質的に存在しない。これら参照文献はすべて参照によって本明細書に組み込む。
【0010】
米国特許第5110693号及びその参照文献(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)に開示されているように、2つ以上の個々のカーボンフィブリルは、もつれたフィブリルのミクロ集成物を形成することができる。単に例として示すと、ミクロ集成物の1つのタイプは(「綿菓子又はCC」)、直径が5〜20nmで長さが0.1〜1000ミクロンでよいもつれた繊維のスピンドル又はロッドに似ている。やはり例として示すと、フィブリルのミクロ集成物の別のタイプ(「鳥の巣又はBN」は、直径が0.1〜1000ミクロンのほぼ球状でよい。それぞれのタイプのより大きな集成物(CC及び/又はBN)又はそれぞれの混合物も形成することができる。
【0011】
単層のグラフェンシートを構成する単層のカーボンナノチューブが得られている。この単層カーボンナノチューブは、Bethuneらの米国特許第5424054号、GuoらのChem.Physics Lett.、243:1〜12(1995年)、Thessら、Science、273:483〜487(1966年)、Journetら、Nature388:756(1997年)、Vigoloら、Science 290:1331(2000年)に記載されている。その単層カーボンナノチューブは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/687665号「単層カーボンナノチューブのロープ」(Ropes of Single−Walled Carbon Nanotubes)にも記載されている。単層カーボンナノチューブは様々な手順で調製することができる。その手順には、固相の炭素源を使用し、それをアーク又はレーザで蒸発させることができる。その代わりに、且つ好ましくは、単層ナノチューブは、気相からの炭素前駆体から接触的に作製することもできる。そうした接触合成には主要な2つの方法があり、反応ゾーンで触媒種に分解する気相触媒前駆体を使用するいわゆるエアロゾル又は浮遊接触プロセス、及び古典的な担持触媒を使用するプロセスである。エアロゾルプロセスは、100気圧までの高圧が使用できるので有利である。担持触媒プロセスは、常圧で動作することができ、真空でも動作できる。好ましい気相炭素源は、CO、CH、エタノール及びベンゼンである。好ましい温度は500〜1000℃である。
【0012】
単層ナノチューブのその他の製造方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT出願PCT/US99/25702及びPCT出願PCTUS98/16071に記載されている。単層ナノチューブは、様々な応用分野で有用である。管状の構造体により、優れた強度、低い重量、安定性、柔軟性、熱伝導性、大きな表面積、及び電子的特性のホストがもたらされる。このナノチューブは、繊維強化複合構造又はハイブリッド複合構造、すなわち単層ナノチューブに加えて連続繊維などの強化材を含む複合物中で強化材として使用することができる。カーボンナノチューブは、作られたままの形で処理することができ、又は適切な基材上にフィルムとしてデポジットし、次いで処理することもできる。これらの参照文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
「ナノチューブの電気泳動デポジション(Electrophoretic Deposition of Nanotubes)」(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開2003/0090190からの引用)に開示のナノチューブのデポジション方法
電気泳動浴
カーボンナノチューブの電気泳動デポジションは、電気泳動浴中で行うことができる。この浴は、カーボンナノチューブの溶液を含むチャンバ、及び対向電極間にあるカーボンナノチューブによってある距離分離された2つの対向電極を浸漬する手段からなる。この浴の外部にある直流電源を使用して、浴に浸漬した2つの電極間に電圧を印加する。カソード側導線をパターン付アルミニウム基板に接続し、アノード側導線をもう一方の電極に接続する。タンタルを第2の金属として使用した。2つの電極に印加される電圧は、適切なレベルに調整することができる、すなわち電圧は2つの電極間に適切な電流が流れるように調整することができる。カーボンナノチューブのアルミニウムへの付着は、バインダによって向上させることができる。バインダは、銀ペースト、カーボンナノチューブ及びエタノールの混合物でよい。或いはバインダは、導電性カーボンペースト、導電性金属ペースト、又は炭素化可能なポリマーでもよい。
【0014】
基板上へのカーボンナノチューブの電気泳動デポジション
フィールドエミッタ基板を電気泳動浴中に入れる。複数のカソードをガラス基板上に配置し、孔付きの誘電体膜をカソードの上に形成する。誘電体膜の孔の上に位置する開口部付の金属ゲートを形成して、カソードの表面を露出させる。次いで、カーボンナノチューブを、室温での電気泳動デポジションによって、得られた基板上に、すなわち孔を通して露出したカソード表面上に均一にデポジットさせる。
【0015】
デポジション後の熱処理
電気泳動によってカーボンナノチューブ粒子をデポジションした後、カーボンナノチューブのカソード上へのデポジションを持続させ、デポジション中にフィールドエミッタ内に組み込まれた不純物の容易な除去を保証するために低温の加熱を行う。
【0016】
ナノチューブフィルムのアルミニウム基板上での調製(参照により本明細書に組み込まれる米国出願公開2003/0090190から引用の実施例)
図17を参照すると、イソプロピルアルコール(IPA)150ml及び酸洗したカーボンナノチューブ0.44gを含む溶液を形成する。この溶液を電気泳動浴5000に入れる。
【0017】
アルミニウムコーティングしたパターン付ガラス基板5002は、電気泳動浴5000で1つの電極として働く。パターンはピクセルサイズを形成する。最小のフィーチャサイズは約1ミクロンでよい。アルミニウムコーティングしたガラス基板5002の寸法は、約55mm×45mm×1mmである。アルミニウムパターンのサイズは、約9mm×9mmである。もう一方の電極、タンタル(Ta)電極5004も電気泳動浴5000に挿入する。スペーサ5006が、アルミニウムコーティングしたガラス基板5002をタンタル電極5004から分離する。例えば40〜120ボルトの直流電圧、例えば100ボルトを電極に印加する。1.0〜5ミリアンペアの電流、例えば3.8ミリアンペアの電流が電極間に流れる。調製時間は、約30〜約90分、例えば60分とすることができる。
【0018】
図18は、下記の英国特許出願第2353138号に開示の方法による、代替の電気泳動式フィルム作製方法を示す。まず、カーボンナノチューブ懸濁液を得る。カーボンナノチューブ粒子の長さは、0.1〜1000ミクロンでよい。懸濁液は、界面活性剤、例えば当業界で周知のアニオン、イオン、両性、ノニオンなどの界面活性剤、或いは、当技術分野で知られている他の界面活性剤も含むことができる。適切な界面活性剤の例として、オクトキシノール、ビス(1−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、並びにMg(OH)、Al(OH)、及びLa(OH)の硝酸塩が挙げられる。
【0019】
次いで、懸濁液を電界にかけてカーボンナノチューブ粒子を荷電させる。電界の強さ、及び電界をかける時間によってカーボンナノチューブ層の厚さが規定される。強さが大きく、時間が長いほど、厚い層が得られる。
【0020】
図18を参照すると、フィールドエミッタ基板6030を、カーボンナノチューブ懸濁液6010を含む電気泳動浴6000に入れる。電極板6020もフィールドエミッタ基板6030から離して電気泳動浴6000に入れる。電気泳動浴6000の外側に設置した直流電源6040のカソードを、フィールドエミッタ基板6030の別のカソードに接続し、直流電源6040のアノードを、電極板6020に接続する。次いで、直流電源6040からの約1〜約1000ボルトのバイアス電圧を、電極板6020とフィールドエミッタ基板6030のカソードの間に印加する。
【0021】
直流電源6040の正電圧を電極板6020に印加すると、カーボンナノチューブ懸濁液6010中で陽イオンを帯びたカーボンナノチューブ粒子は、フィールドエミッタ基板6030の暴露したカソードに向けて移動し、それに付着し、それにより暴露したカソードのパターンでカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0022】
インク、コーティング又はペーストとしても周知の印刷されたカーボンナノチューブのフィルムの高さは、10ミクロン未満であり得るし、酸化インジウムスズ及び蛍光体が含まれた酸化インジウムスズアノードからカーボンナノチューブカソードを分離する間隔は約125ミクロンである。
【0023】
電気泳動法は、ダイオードにも三極管にもともに適用することができる。ダイオードへの応用例では、カーボンナノチューブ粒子の表面上のチャージと反対のチャージを有する電界をフィールドエミッタ基板の暴露した電極表面に印加して、カーボンナノチューブ粒子を基板上に選択的にデポジションさせる。ゲートを有する三極管に対する応用では、正の弱い電界をゲートに印加し、正の電界をフィールドエミッタ基板の電極に印加し、それによってカーボンナノチューブ粒子がゲート上にデポジションしないようにする。具体的には、電極板を直流電源のアノードに接続し、フィールドエミッタ基板のカソードを直流電源のカソードに接続する。正の電位をゲートに印加すると、ゲートは、カーボンナノチューブ懸濁液中の陽イオンを表面で反発し、直流電源のカソードに接続されたフィールドエミッタ基板の暴露したカソードは、孔を通して懸濁液の陽イオンを引き寄せる。その結果、カーボンナノチューブは、カソードの暴露した表面全体上にのみデポジットし、フィールドエミッタ基板のゲート上にはデポジットしない。この時点で、カーボンナノチューブ粒子は、フィールドエミッタ基板のほうに引っ張られ、実質的に水平に配向し、すなわち実質的に基板と平行に配向し、これによりカーボンナノチューブ粒子が孔を通ってカソードにスムースに移動することが可能になり、こうしてカーボンナノチューブはデポジットすることができる。
【0024】
フィルムは、欧州特許出願EP1020888「アルミニウム−カーボンインク、電子エミッション素子、その作製方法、並びに電子エミッション素子及びイメージディスプレイデバイス(Carbon ink,electron−emitting element,method for manufacturing and electron−emitting element and image display device)」に開示のカーボンインクと同様に調製することもできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
一実施形態によれば、フィールドエミッションデバイスが提供される。デバイスはカソードとアノードを備える。カソードは、懸濁液から複数のナノチューブをろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られるカーボンナノチューブマットを備える。マットは、上面及び反対側の下面を備えることができる。下面は、マットが形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応する。上面は、カソードのエミッション面として働くことができる。
【0026】
その複数のナノチューブは、約1ミクロン未満の直径を有することができる。
【0027】
その複数のナノチューブは魚骨に似た形態を有することができる。その複数のナノチューブは単層でも多層でもよい。ナノチューブは酸化されてもよいし、架橋されてもよい。フィルタケーキはバインダの存在下で形成しておいてもよい。そのバインダは、ある実施形態では、溶媒に可溶なフッ素ポリマーでよい。それはPVDFでよい。
【0028】
懸濁液から複数のナノチューブをろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られるカーボンナノチューブマットを備えるフィールドエミッションカソードを提供する。
【0029】
ターンオン電圧を改善するために、ナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法も提供される。その方法は、適切な波長の放射によって十分な時間と強さでカソードを照射することを含む。その放射は紫外領域内でよい。照射の際、カソードを連続又はパルスレーザで露光することができる。放射は、約349nm未満の波長を有することができる。放射は、約10.3mJ/cmより大きいエネルギー密度を有することができる。空気中で照射することができるし、或いは少なくとも1トールの酸素分圧下で照射することもできる。カソードは、カーボンナノチューブマットから構成することができる。このようにして照射したフィールドエミッションカソードも提供する。
【0030】
別の実施形態として、カソードエミッション電流密度を改善するためにナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法が提供される。エミッションサイトの数及びカソード全体でのエミッションの均一性を向上させるためにナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法も提供される。これらの方法には、UV照射及び低温プラズマに対する暴露が含まれる。
【0031】
十分な時間と強さで構造体を照射することを含む、構造体内でナノチューブを配向させる方法が提供される。適切な条件下で構造体を低温プラズマに暴露することを含む、構造体内でナノチューブを配向させる方法が提供される。
【0032】
別の実施形態では、円筒軸と同心の1つ又は複数のグラファイト層を有する実質的に円筒状の複数のナノチューブを含み、ナノチューブが熱分解でデポジットしたカーボンオーバーコートを実質的に含まず、0.4nm〜100nmの実質的に均一な直径を有し、長さと直径の比が5より大きいフィールドエミッションデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電気泳動デポジットカーボンナノチューブ、スクリーン印刷カーボンナノチューブ、及びカーボンナノチューブマットの電子エミッション動作を、電流密度を電界の関数としてプロットした形で示す図である。
【図2】電気泳動デポジットカーボンナノチューブ、スクリーン印刷カーボンナノチューブ、及びカーボンナノチューブマットの一連の電子エミッションパターンを示す写真である。
【図3】一実施形態による、スクリーン印刷カーボンナノチューブカソードについてアルゴンプラズマ処理の有無でのエミッション電流密度対電界(I−V特性)をプロットした比較図である。
【図4】一実施形態による、アルゴンプラズマ処理で実現したエミッションサイトの数及びエミッション電流密度両方の増加を示す、エミッションパターンの比較図である。
【図5】別の実施形態による、プラズマ処理前後での配向の変化を示す、カーボンナノチューブの形態のSEM電子顕微鏡写真の比較図である。
【図6】一実施形態による、様々なバインダで作製したCNTマットカソードの上面及び下面についてエミッション電流密度対電界(I−V特性)をプロットした比較図である。
【図7】別の実施形態による、バインダで作製したCNTマットカソードの上面及び下面について照射前後におけるエミッション電流密度対電界(I−V特性)をプロットした比較図である。
【図8】別の実施形態による、UVレーザ照射後CNTマットカソードで実現したエミッションサイトの数及びエミッション電流密度両方の増加を示す、エミッションパターンの比較図である。
【図9】別の実施形態による、スクリーン印刷CNTカソードについて異なるレベルの被照射前後におけるエミッション電流密度対電界(I−V特性)をプロットした比較図である。
【図10】さらに別の実施形態による、UVレーザ照射後CNTスクリーン印刷カソードで実現したエミッションサイトの数及びエミッション電流密度両方の増加を示す、エミッションパターンの比較図である。
【図11】別の実施形態による、配向の変化を示すレーザ照射処理前後におけるカーボンナノチューブの形態のSEM電子顕微鏡写真の比較図である。
【図12】一実施形態による、異なる波長の照射後に得られたエミッション電流密度の比較図である。
【図13】一実施形態による、異なる照射雰囲気(空気及び真空)において異なる波長の照射後に得られたエミッション電流密度の比較図である。
【図14】さらに別の実施形態による、照射前後においてスクリーン印刷CNTカソード並びにCNTマット上面及び下面カソードで得られたエミッション電流密度の比較図である。
【図15】別の実施形態による、配向の変化を示す、レーザ照射処理後のCNTマット上面及び下面上のカーボンナノチューブ形態のSEM電子顕微鏡写真の比較図である。
【図16】さらに別の実施形態による、UVレーザ照射後CNTマットカソードで実現したエミッションサイトの数及びエミッション電流密度両方の増加を示す、エミッションパターンの比較図である。
【図17】カーボンナノチューブフィルム(電極)を製作するのに使用する電気泳動浴を示す図である。
【図18】カーボンナノチューブフィルム(電極)を製作するのに使用する別の電気泳動浴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付の参考文献を含めて本明細書で参照した特許、特許出願及び刊行物をすべて参照により本明細書に組み込む。
【0035】
定義
「集成物」とは、ナノチューブの粒子状ミクロ構造体をいう。
「集合物」とは、少なくとも1つの次元の軸に沿って比較的又は実質的に物理的特性が均一であり、望ましくは集合物内の1つ又は複数の平面内で比較的に又は実質的に物理的特性が均一、すなわちその平面内で物理的特性が等方性であるナノチューブ構造体をいう。集合物は、均一に分散した個々のチューブが相互に連結したナノチューブ、又はナノチューブの連結した集成物のかたまりをいう。他の実施形態では、集合物全体が1つ又は複数の物理的特性に関して比較的又は実質的に等方性である。
【0036】
「カーボンフィブリルベースのインク」とは、電子伝導性フィラーがカーボンフィブリルである電子伝導性液体複合物をいう。
【0037】
「グラフェン」カーボンは、六方晶系縮合環を形成する基本的に平面状の層内で、カーボン原子がそれぞれ3個の他のカーボン原子と結合した形のカーボンである。層は、その直径内に数個の環のみを有する薄片、又は長さ方向には複数の環を有するが幅方向には数個の環のみを有するリボンである。
【0038】
「グラフェン類似体」とは、グラフェン表面に組み込まれている構造体をいう。
【0039】
「グラファイト」カーボンは、本質的に相互に平行であり、3.6オングストローム未満しか離れていない層からなる。
【0040】
「低温プラズマ」とは、電導性となるのに十分電離しているが、それでも未だ電気的に中性であり、電子が分子より高温状態にあるガス系をいう。Baddour,R.F.及びTimmins,R.S.編「プラズマの化学処理への応用」(The Application of Plasmas to Chemical Processing)、MIT Press、Cambridge MA 1967年を参照されたい。
【0041】
「ナノチューブ」、「ナノファイバ」と「フィブリル」、及び「CNT」は互換的に使用される。それぞれ、直径1ミクロン未満の細長い中空のカーボン構造を指す。用語「ナノチューブ」には、「バッキーチューブ」、及びグラフェン面がニシンの骨又は魚の骨模様に配向したグラファイトナノファイバが含まれる。
【0042】
用語「エミッタチップ」及び「エミッタ」は互換性である。用語「チップ」の使用は、電子の放出をカーボンナノチューブのチップのみに限定することを意味しない。電子はカーボンナノチューブのどんな部分からも放出することができる。
【0043】
作製方法
電気泳動(上記の背景技術のセクションに記載)に加えて、スクリーン印刷など他の方法を、フィールドエミッションデバイスの作製に使用するパターンを得るために使用することもできる。スクリーン印刷の方法は、すでに米国特許第6239547号に開示されている。カーボンナノチューブは、スクリーン印刷の他、インクジェット印刷によっても基板に施すことができる。インク印刷は、カーボンナノチューブベースの液体媒体、又はフィブリルがほぼほぐされたインクによって実施される。インクは通常、キャリア用液体、カーボンナノチューブ、及び通常はポリマーバインダも含む。有用なバインダには、VAGH、VAGF、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、架橋可能なポリマー、及びアクリル酸ポリマーが含まれる。これらはインクの1〜7重量%の範囲で存在することができる。液体ビークルは極性有機溶媒、好ましくは沸点150℃〜200℃のものでよい。
【0044】
インクを乾燥して(すなわちキャリア液体を蒸発させる)パターン付のコーティングを得ることができる。インクは、参照により本明細書に組み込まれるPCT/US03/19068により詳しく記載されている。企図した印刷方法に応じて、インクの粘度を1〜50,000cpsとすることができる。カーボンナノチューブの装入量は、0.5〜2.5重量%が有用である。
【0045】
CNTマット
カーボンナノチューブはマットの形でデポジットさせることもできる。密度が0.10〜0.40g/ccで、表面積が100m/gより大きいこうした多孔質のマットは、ナノチューブ懸濁液ろ過によって好都合に形成される。方法は、ともに参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6099965号及び同第6031711号により詳しく開示されている。ナノチューブを集成物の形で供給する場合には、マットを作製する前にナノチューブを十分ほぐす必要はない。簡単な例として、ウオーリング(Waring)ブレンダを使用して水中ナノチューブを約0.5%含むナノチューブ懸濁液を調製した。続いて0.1%まで希釈した後、ナノチューブをプローブタイプの超音波処理装置(sonifier)によってさらに分散させた。次いで、分散液を真空ろ過してマットを形成し、次いでオーブンで乾燥した。これにより上面と下面があるフィルタケーキが得られる。当初は下面に接着していたフィルタ材料を剥がしとると、マットがうまく作製される。酸化したナノチューブは特に容易に水性媒体中に分散するが、次いでそれを水性媒体からろ別する。
【0046】
そのマットを上記に引用した特許で論じられているような剛化段階又は架橋段階にかけることができる。酸化フィブリルのマットは、空気中300℃までの温度で熱処理することによって剛化することができる。或いは、マットは、無酸素雰囲気中で600℃までの温度で熱処理することによって剛体化することもできる。CNTマットのカソードは、比較的低い印加電界で均一なエミッションサイトを有し、10mA/cmより大きい電流密度を得ることができる。電気泳動でデポジットしたカーボンナノチューブ、スクリーン印刷したカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブのマットの電子エミッション動作を、電流密度を電界の関数としてプロットしたグラフの形で比較したものを、図1に示す。電気泳動でデポジットしたカーボンナノチューブ、スクリーン印刷したカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブのマットの電子エミッションパターンのもう1つの比較を図2に示す。
【0047】
CNTマットのカソードは、様々なタイプのバインダを利用して得ることもできる。有用なバインダには、セルロース、炭水化物、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、フェノール樹脂、及び熱分解でカーボンを生成しないすべてのバインダが含まれる。熱分解の温度は、使用するバインダに依存するが、空気中では300℃まで、又は無酸素環境では900℃までよい。しかし、バインダを熱分解する必要はない。フィブリル懸濁液を含む溶媒に溶解し、次いでポリマーに対する非溶媒の添加で沈殿することができるポリマーバインダを使用して後続のろ過によってマットを形成することができる。PVDFはそうしたポリマーの一例である。
【0048】
プラズマ処理
好ましい一実施形態では、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブのマットをプラズマ処理にかける。さらに別の好ましい一実施形態では、カーボンナノチューブを含むスクリーン印刷したインクをプラズマ処理にかける。或いは、フィールドエミッションカソード自体又はフィールドエミッションデバイス自体をプラズマ処理にかけることもある。プラズマ処理すると、カーボンナノチューブのマット又はインクのフィールドエミッションの性能が改善され、従ってより良好なフィールドエミッションカソード又はフィールドエミッションデバイスがもたらされる。
【0049】
プラズマ処理は、処理中プラズマに接触するカーボンフィブリル、フィブリル構造体及び/又はマトリックスの表面特性を改変するために行い、この手段によって、処理されたフィブリル複合物は、官能化され、又はその他の方法で所望どおりに変えることができる。本明細書の教示を受ければ、当分野の技術者は、周知のプラズマ処理技術をこうした複合材料の処理に適合させ、利用することができよう。従って、プラズマを発生させ、複合材料に接触させ、所望の種類及び程度の改変をもたらすために、この処理を適切な反応容器中適切な圧力その他の条件で適切な時間行うことができる。酸素、水素、アンモニア、ヘリウム、又は化学的に活性な若しくは不活性なガスをベースとするプラズマなどのプラズマを利用することができる。
【0050】
プラズマ発生に使用する他のガスの例を挙げれば、アルゴン、水、窒素、エチレン、四塩化炭素、六フッ化硫黄、ペルフルオロエチレン、フルオロホルム、ジフルオロジクロロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタンなどがある。プラズマは、単一のガス、又は2種以上のガスの混合物から発生させることができる。複合材料を2種以上のタイプのプラズマに暴露することは有利であるかもしれない。複合材料を連続して数回プラズマに暴露することもまた有利であり、プラズマ発生に用いる条件、こうした連続処理の時間、及びこうした連続処理の間の時間間隔を変えることによって、材料中にある種の改変をもたらすこともできる。連続した処理の合間に複合材料を処理する、例えば材料をある物質でコートすること、材料の表面を洗浄することなども可能である。
【0051】
複合材料のプラズマ処理によっていくつかの変更をもたらすことができる。例えば、ポリマー及びその中に分散した複数のカーボンフィブリルを含む複合材料をプラズマに暴露することができる。プラズマに暴露することによって、ポリマーがエッチングされ、複合材料の表面にカーボンフィブリルが露出し、それにより露出したカーボンフィブリルの表面積を増加させることができ、例えばその結果として露出したフィブリルの表面積が複合物の幾何学的な表面積よりも大きくなる。ポリマーをエッチングすることによって、ポリマーに束縛されていたナノチューブの端部又はセグメントを解放することができ、ポリマーの移動又は再配向が可能になる。プラズマに暴露することによって、化学的官能基をフィブリル上又はポリマー上に導入することができる。処理は、個々のフィブリル上、及び集成物、マット、硬い多孔性のフィブリル構造体、並びにすでに官能化済みのフィブリル又はフィブリル構造体などのフィブリル構造体上で行うことができる。フィブリルの表面の改変は、F、O、NH、He、N、H、他の化学的に活性又は不活性なガス、1種又は複数の反応性ガスと1種又は複数の不活性ガスの組合せ、或いはメタン、エタン、アセチレンなどプラズマ誘起の重合ができるガスをベースにしたプラズマを含めて非常に様々なプラズマによって行うことができる。さらに、プラズマ処理では、こうした表面の改変が、溶液、洗浄、蒸発などを含む従来の「湿式」の化学的技術と違って「乾式」プロセスで行われる。例えば、気相の環境中に分散したフィブリルに対してプラズマ処理を行うことが可能かもしれない。
【0052】
本明細書の教示を受ければ、当分野の技術者は、よく知られたプラズマ技術を利用した本発明を実施することができるであろう。使用するプラズマのタイプ、及びプラズマをフィブリルと接触させる時間の長さは、求める結果に応じて変わることになる。例えば、フィブリル表面の酸化を求める場合には、Oプラズマを使用し、フィブリル表面に窒素を含む官能基を導入するためにはアンモニアプラズマを使用することになろう。本明細書の教示を所有すれば、当分野の技術者は所望の程度の改変/官能化をもたらすために処理時間を選択することができるかもしれない。
【0053】
より具体的には、フィブリル又はフィブリル構造体を、プラズマを含むことができる反応容器中にフィブリルを置くことによってプラズマ処理する。プラズマは、例えば、(1)容器内の選択されたガス又はガス混合物の圧力を例えば100〜500ミリトールまで下げること、及び(2)プラズマの形成が可能である高周波に低圧ガスを暴露することによって発生させることができる。発生したプラズマは、例えばサンプルのサイズ、反応器の幾何形態、反応器の動力及び/又はプラズマのタイプに多かれ少なかれ依存した、所定の時間、典型的には約10分の範囲でフィブリル又はフィブリル構造体との接触させたままにおき、官能化された又はその他の表面改変を受けたフィブリル又はフィブリル構造体がもたらされる。表面の改変には後続の官能化のための準備を含めることができる。
【0054】
上記のカーボンフィブリル又はカーボンフィブリル構造体を処理すると、改変された表面、従って改変された表面特性を有する生成物がもたらされることは非常に有利である。
【0055】
レーザ処理
好ましい一実施形態では、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブのマットを、レーザ処理にかける。さらに別の好ましい一実施形態では、カーボンナノチューブを含むスクリーン印刷されたインクを、レーザ処理にかける。レーザ処理によって、カーボンナノチューブのマット又はインクのフィールドエミッションの性能が改善され、従ってより良好なフィールドエミッションカソード又はフィールドエミッションデバイスがもたらされる。
【0056】
レーザ処理では、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブのマット又はカーボンナノチューブのインクが、ある時間レーザ(すなわち、UV、IRなど)照射される。或いは、フィールドエミッションカソード又はフィールドエミッションデバイスをレーザで照射することもできる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示するものである。
【0058】
(実施例1)PVDFバインダを用いたマット
良好なフィールドエミッション特性がPVDFバインダを用いたCNTマットによって得られた。マットを調製するために、PVDF(Kynar 741)0.04gをアセトン150mlに溶解した。ウオーリング(Waring)ブレンダでCCタイプのカーボンナノチューブ0.16gをPVDF/アセトン溶液中にブレンドした。懸濁液が均一になってから、脱イオン水を加え、PVDFを沈殿させた。CCタイプのカーボンナノチューブは、沈殿したPVDF内に取り込まれた。沈殿を水で洗浄し、ナイロンメンブレン上でろ過して、薄いマットを形成した。マットにマークを付けて、上面(空気面)と下面(ナイロンメンブレン面)が判別できるようにした。マットを低温のオーブン(80℃)で乾燥し、ラベル296−29−3をつけた。
【0059】
CNTマット296−29−3の切片を切り出し、銀ペーストでアルミニウムフィルム/ガラス基板の表面に貼りつけた。CNTマットのI−V特性(上面と下面の両面)を測定した。さらに、UVレーザの照射を空気中で行って、エミッション特性を改善した(下記のUVレーザによる照射処理の考察を参照されたい)。UVレーザは、波長266nmの光を放射し、パルス幅5ナノ秒、照射エネルギー密度20.3mJ/cm、反復周波数10Hzであった。それぞれの照射時間後カソード領域内でレーザスポットをオーバラップ度25%で移動させた。照射は、CNTマット上で照射アレイのそれぞれのスポットに対して60秒間行った。
【0060】
(実施例2)界面活性剤のバインダを用いたマット
疎水性のカーボンナノチューブの安定な分散液は、界面活性剤や分散助剤のような表面活性剤の使用によって得ることができる。次いで、その分散液を使用してマットを作製することができる。スルフィノール(Surfynol)CT324(Air Products製)0.55gを脱イオン水200mlに溶解した。CCタイプのカーボンナノチューブ0.15gを加え、プローブ型超音波処理装置(sonicator)(Branson製)を使用して分散した。分散した材料を、ナイロンメンブレン(ポアサイズ0.45ミクロン)でろ過し、空気中で乾燥した。乾燥後、マットを、ナイロンメンブレンから分離することができた。マットにマークを付けて、上面(空気側)と下面(ナイロンメンブレン側)が判別できるようにした。このマットにラベル296−29−1をつけた。
【0061】
或いは、マットは洗浄して、ゆるく結合したすべてのスルフィノール(Surfynol)を除去することもできた。スルフィノール(Surfynol)CT324(Air Products製)0.60gを脱イオン水200mlに溶解した。CCタイプのカーボンナノチューブ0.15gを加え、プローブ型超音波処理装置(sonicator)(Branson製)を使用して分散させた。分散した材料は、ナイロンメンブレン(ポアサイズ0.45ミクロン)でろ過し、マットを通してメタノールを吸引するために真空装置を使用してメタノールで洗浄した。次いで洗浄したマットを風乾した。乾燥後、マットは、ナイロンメンブレンから分離することができた。マットにマークを付けて、上面(空気側)と下面(ナイロンメンブレン側)が判別できるようにした。そのマットにラベル296−29−2をつけた。
【0062】
実施例1及び実施例2に記載したレーザ照射なしの試料のフィールドエミッション測定結果を図6に示す。試料296−29−2のフィールドエミッション結果を照射前後、及び上面、下面で比較したものを図7に示す。図8は、照射前後の試料296−29−2の電子エミッションパターンの一連の比較写真である。図6から、試料296−29−1及び296−29−3の上面でのターンオン電圧が296−29−2の上面に比べて劇的に低下したことが明らかである。図6の結果から、マットの上面をカソードとして使用した場合、下面とは異なり、I−V特性が大きく向上することもわかる。図7から、296−29−2が照射された後、そのエミッション特性は劇的に向上し、他の2つの試料にほぼ近いレベルまで向上したことがわかる。これらのプロットは対数目盛である。296−29−2の上面をレーザ照射の前後で比較した顕微鏡写真(図8)から、同じ動作電圧下オーバーオールの電流密度で1桁異なる試料がどのように見えるかがわかる。
【0063】
カーボンナノチューブフィルムの改変
カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブフィルムは、化学的又は機械的な処理によって改変することができる。その表面を、処理して官能基を導入することができる。使用することができる技法には、電磁放射、イオン化放射、又はプラズマに、或いは酸化剤、求電子剤、求核剤、還元剤、強酸、強塩基及び/又はそれらの組合せなどの化学試薬にカーボンナノチューブを暴露することなどが含まれる。特に重要であるのはUVレーザ照射処理及びプラズマ処理である。
【0064】
ナノチューブフィルムのUVレーザ照射処理
照射処理は、カーボンフィブリル、フィブリル構造体及び/又はその中にナノチューブを含むマトリックスの表面特性を改変するために行う。カソード動作を向上させるためにUV放射を利用して膨大な実験が行われてきた。当初はスクリーン印刷されたCNTカソードについての研究が行われたが、ごく最近にはCNTマットについての結果が得られている。
【0065】
スクリーン印刷
気相の炭化水素から触媒作用で成長させたCNTを、従来の有機バインダを使用してITO(酸化インジウムスズ)/ガラス基板上にスクリーン印刷し、空気中350〜450℃で30分間焼成した。CNTカソードの面積は8×8mmであった。150ミクロンのスペーサを備えたダイオード構造体を使用してエミッション電流を測定した。ダイオード構造体中のアノード(アノード面積:5×5mm)として働くITO/ガラス基板上の蛍光体のスクリーンを通して電子のエミッションパターンを観察した。アノードとカソードの間のスペーサは非常に薄いので、電子のエミッション領域はアノードのサイズと同じサイズになるはずである。データに示された電界は、アノードへの印加バイアスをスペーサの厚さで除し蛍光体/CNT厚さを引いた値であると定義し、エミッション電流の密度は、エミッション電流をアノード面積で除して計算した。Qスイッチ付の波長可変Nd:YAG(ネオジム:イットリウム−アルミニウム−ガーネット)レーザからの波長349及び266nmのUV照射を使用してCNTカソードを照射した。波長可変UVレーザの反復周波数は、10ヘルツであり、パルス持続時間は5ナノ秒であった。レーザのエネルギー密度20.3、10.2、及び2.25mJ/cmは、レーザのエネルギーの平均値1mJにおいてレーザスポット面積を4.9、9.8、及び44.4mmに変更することによって調整した。照射時間は10秒〜60秒で変えた。それぞれの照射時間後カソード領域内でレーザスポットをオーバラップ度25%で移動させた。雰囲気がレーザ照射に及ぼす影響を調べるために、空気中及び真空中の照射をともにエネルギー密度20.3mJ/cmで60秒間行った。またCNTカソードは、エネルギー処理を比較するために様々な条件下で、30keVのGaイオンビームで照射し、又はArプラズマに暴露した。
【0066】
図9は、空気中の266nmのレーザ照射の前後でのCNTエミッタのI−V特性を示す。印加電界5.7V/μmにおけるエミッション電流の密度は、レーザ照射後レーザのエネルギー密度20.3mJ/cmで0.0027から14.45mA/cmまで増加し(図10によって、エミッション前後のパターンの比較結果が劇的であり、エミッションのサイト数もエミッション電流の密度もともに増加したことを示すものであることがわかる)、10.2mJ/cmで0.0014から0.400mA/cmまで増加した。ターンオン電界は、20.3mJ/mmで3.7から1.2V/μmまで、10.2mJ/cmで2.8から1.52V/μmまで減少した。一方、2.25mJ/cmで照射した試料では何らの改善も見られなかった。電流密度の最高値20.15mA/cmが動作電圧6.2V/μmで観測された。蛍光体アノードがより高い電界でのより強い電子衝撃に耐えることができるような場合には、電流密度がはるかに高くなるはずであることが考えられる。
【0067】
図11は、エネルギー密度20.3mJ/cmで266nmのレーザを照射した前後でのCNTの形態を示す。スクリーン印刷して焼成した直後のCNT束は、もつれあっているが、レーザ照射後は開口端を有して配向する傾向がある。図12は、特に波長266及び349nmのレーザ照射で、エミッション電流密度をレーザエネルギー密度の関数として示す。レーザ照射前のエミッション電流密度の範囲を図中にバーで示した。電流密度は4桁増加している(レーザ照射前の約1μA/cmから照射後の14.45mA/cmまで)。266nmの照射では、349nmの照射よりはるかに良好な改善が観測された。特定の理論に拘泥するものではないが、異なる波長によって改善に差があることから、C=C結合の結合を直接に切断するためには非常に高エネルギーのレーザ光子を必要とするものの(6.3eV)、レーザ誘起の反応は単純な熱プロセスではないことが示唆される。UVレーザ照射によって誘起される効果は、主に熱効果ではなく光分解効果など光励起効果によることが示唆される。266nmのレーザ光で照射されたCNTカソードでは、エミッション電流密度は、100回露光後に飽和するように思われる。一方、349nmのレーザ照射の場合、時間の増加とともにエミッション電流も増加した。こうなるのは、266nmのレーザ照射の場合、焼成後もCNTカソード内に残留する有機バインダの化学結合C−H、H−Oのほとんどすべてが光子によって切断され且つ/又は酸化され、有機バインダがより短い照射時間で分解したことを示唆している。他方、349nmの照射では、光子のエネルギーがより低いので、表面上に残留する有機バインダを分解するためにより多数回のレーザ露光が必要である。これらの波長のレーザ光子による温度上昇はほとんどすべて同じレベルであるので、エミッション特性の改善は、熱効果というよりもむしろ光励起効果及び光分解効果であるといえるはずである。
【0068】
レーザエネルギー密度20.3mJ/cmで60秒間(600回露光)の場合に照射雰囲気がエミッション電流密度に及ぼす影響(空気対真空)を図13に示す。試料に空気中で266nmのレーザ光を照射した場合、エミッション電流密度は約3桁増加したが、真空中の照射でのエミッション電流密度の改善は、わずかしか見られなかった。これは、照射中の酸素が寄与したこと、すなわち酸化したことを示す。つまり、この場合も266nmのレーザ光照射による改善は、349nmのレーザ照射によるよりもはるかに顕著であった。レーザ照射の効果を明確にするためには、レーザ照射の酸素圧力への依存性に関するさらなる研究が必要である。
【0069】
CNTマット
アルミニウムフィルム/ガラス基板の表面上にCNTマットを銀ペーストで貼り付けた。あらかじめITO(酸化インジウムスズ)/ガラス基板上にCNT試料を有機バインダでスクリーン印刷した。CNTマットエミッタ(上面及び下面について)及びスクリーン印刷したCNTエミッタのI−V特性を試験した。さらに、UVレーザ照射を空気中で行ってエミッション特性を改善した[3、4]。266nmのUVレーザは、パルス幅5ナノ秒、照射エネルギー密度20.3mJ/cm、反復周波数10Hzである。その照射は、CNTエミッタ面上の照射アレイのそれぞれのスポットについて60秒間継続させた。
【0070】
図14は、CNTマットエミッタ及びスクリーン印刷したCNTエミッタについて、空気中のUVレーザ照射前後でのエミッション電流密度を電界の関数として示す。印加電界3.47V/μmのとき、CNTマットの上面及び下面のエミッション電流の密度は、1.99及び0.03mA/cmであり、スクリーン印刷したCNTエミッタでは、同じ電界でどんなエミッションも観測されなかった。UVレーザ照射後、エミッション電流の密度は、CNTマットの上面及び下面について1.52及び6.76mA/cmに変わり、スクリーン印刷したCNTエミッタのエミッション電流の密度は、0.33mA/cmに増加した。図15のCNTマットのSEM電子顕微鏡写真が示すように、2つの表面の形態はまったく異なっている。図16から、UVレーザ照射後エミッションの均一性も向上したことがわかる。こうしたデータを考慮に入れると、どんな表面処理もされていないCNTマットの電子エミッション動作は、レーザ照射後のスクリーン印刷したCNTカソードの動作と類似していることに留意されたい。
【0071】
(実施例3)CNTカソード
図3、4、及び5に示すように、ガラス基板上へのスクリーン印刷によって作製されたカーボンナノチューブ(CNT)カソードからのエミッション特性を、超高真空チャンバ(5.3×10−8Pa)内でエージング後に測定した。ガラス基板上のCNTカソードを、放電電圧250V、真空度40Paのアルゴン(Ar)プラズマに暴露した。プラズマへの暴露時間を以下の時間(30秒、1分、2分、3分、4分及び5分)のように変えた。CNTカソードからのエミッション特性を、超高真空チャンバ中で測定した。図3は、3分間のプラズマ処理の前後におけるCNTカソードのI−V特性を示す。エミッション電流は、3分間のArプラズマ処理後、電界4V/μmで3桁、つまり9.0×10−5から0.3mA/cmまで増加し、ターンオン電圧は3.3V/μmから1.7V/μmに低下した。図4は、4.6V/μmにおける電子のエミッションパターン、(a)はプラズマ処理前、(b)は3分間のプラズマ処理後を示す。これによって、プラズマ処理後エミッションサイトの数及び強度が増加することが明確に示されている。こうした結果から、エミッション特性はプラズマ処理で大きく向上したことがわかる。図5は、プラズマ処理前後の走査型電子顕微鏡(SEM)を使用したCNT像を示す。スクリーン印刷後もつれあっていたCNTの束はいくらかほぐれ、Arプラズマ処理後のカソード表面に垂直なある程度の配向がもたらされた。特定の理論に束縛されるものではないが、プラズマ処理後のCNTで観察することが可能なこの配向効果が、プラズマ処理後の電子エミッションの向上に寄与していると考えられる。
【0072】
プラズマ処理がナノチューブマットのカソードに及ぼす影響を調べるどんな実験も今日まで行われていない。未処理のスクリーン印刷電極を未処理のマット電極と比較した図2に示すエミッションの結果を想起すれば、プラズマ処理したマット電極が改善されたカソードをもたらすことが予想される。
【0073】
(実施例4)カーボンナノチューブインク
カーボンナノチューブを含むインク(試料296−47−02)を下記のようにして調製した。まず撹拌バー付のホットプレート上60℃でVAGH(DOW社のヒドロキシル修飾ビニルコポリマ)9.5gをγブチロラクトン100gとともに、このバインダが完全に溶解するまで混合することによって、ポリマーバインダと液体ビークルを調製した。VAGHが溶解すると、清澄なライトイエロー溶液が得られた。界面活性剤トリトン−X1gを溶液に加え、撹拌して溶解した。乾燥したカーボンフィブリル2.0gを加え、混合物をプローブ型ブランソン超音波処理装置により450Wで超音波処理した。ゲル状のスラリーが得られるまで超音波処理を続けた。次いで3ロールミルを使用して均一で粘性のあるインクになるまでインクを摩砕した。インクを3ロールミルに4回通す処理にかけ、最後にステンレス鋼製の500メッシュスクリーンフィルタでろ過した。
【0074】
(実施例5)プラズマ処理したカーボンナノチューブインク
ガラス基板上にカーボンナノチューブインクをスクリーン印刷することによって作製されたカーボンナノチューブ(CNT)カソードからのエミッションの特性を、超高真空チャンバ(5.3×10−8Pa)内でエージング後測定した。ガラス基板上のCNTカソードを、放電電圧250V、真空度40Paのアルゴン(Ar)プラズマに暴露した。プラズマへの暴露時間を以下の時間(30秒、1分、2分、3分、4分及び5分)のように変えた。CNTカソードからのエミッションの特性を、超高真空チャンバ中で測定した。エミッション電流は、3分間のArプラズマ処理後電界4V/μmで3桁、つまり9.0×10−5から0.3mA/cmまで増加し、ターンオン電圧は3.3V/μmから1.7V/μmに低下した。プラズマ処理3分間の前後の4.6V/μmにおける電子エミッションパターンから、プラズマ処理後エミッションサイトの数及び強度が増加することが明確にわかる。プラズマ処理前後のカソード表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を記録した。その像から、スクリーン印刷後もつれあっていたCNTの束はいくらかほぐれ、表面のArプラズマ処理後のカソードに垂直なある程度の配向がもたらされたことがわかる。特定の理論に束縛されるものではないが、プラズマ処理後のCNTで観察することが可能なこの配向効果が、プラズマ処理後の電子エミッションの向上に寄与していると考えられる。こうした結果によって、エミッション特性がプラズマ処理によって著しく改善したことが示されている。
【0075】
(実施例6)レーザ照射処理されたカーボンナノチューブインクから調製したカソード
ガラス基板上にカーボンナノチューブインクをスクリーン印刷することによって作製されたカーボンナノチューブ(CNT)カソードからのエミッションの特性を、UVレーザ処理の前後で測定した。波長可変レーザからの波長349及び266nmのUVレーザ光を使用して、楕円ビームのスポットサイズ4.9、9.8、及び44.4mmにそれぞれ対応する20.3、10.2、及び2.25mJ/cmの平均エネルギー密度で空気中及び真空チャンバ(圧力:1×10−5Pa)中で1分間CNT試料を照射した。レーザの反復周波数は10Hzで、パルス持続時間は5ナノ秒である。スペーサ125mmのダイオード構造体(アノード面積:5×5mm)を使用してエミッション電流を測定した。電子エミッションパターンをITOアノード上の蛍光体スクリーンを通して観察した。空気中平均照射エネルギー密度が20.3及び10.2mJ/cmの349及び266nm2つのUVレーザで照射されたCNT試料のエミッション特性は、レーザ照射後劇的に向上した。例えば、エミッション電流密度は、8.9から259.4mA/cmに増加し、ターンオン電界は3.6から2.9V/ミクロンに減少した。
【0076】
当業者には、上記の実施形態に基づく本発明のさらなる特徴及び利点が理解されよう。従って、本発明は、具体的に示し説明されてきたものによって限定されるのではなく、以下に添付の特許請求の範囲によって限定される。
【0077】
下記に列挙する参照文献をすべて参照により本明細書に組み込む:
参考文献
光源用フィールドエミッションカソードへのカーボンナノチューブの使用
PCT特許出願PCT/SE00/015221−−「光源及びフィールドエミッションカソード」(A Light Source,and a Field Emission Cathode)
その他の使用
PCT特許出願PCT/US 99/13648−−「自立型及び配列型カーボンナノチューブ、並びにその合成」(Free−Standing and Aligned Carbon Nanotubes and Synthesis Thereof)
(走査型電子顕微鏡、アルカリ金属電池、電磁干渉型シールド、及び微小電極)
追補
Yahachi Saito et al.、「カーボンナノチューブフィールドエミッタ装備の陰極線管発光素子」(Cathode Ray Tube Lighting Elements with Carbon Nanotube Field Emitters)、37 JAPAN.J.APPLIED PHYSICS 346(1998)
Yahachi Saito et al.、「多層カーボンナノチューブのフィールドエミッション及び電子管へのその応用」(Field Emission from Multi−Walled Carbon Nanotubes and its Application to Electron Tubes)、67 APPLIED PHYSICS 95、(1998)
J.D.Carey et al.、「アモルファスカーボン薄膜からのフィールドエミッションにおける電界エンハンスメントの起源」(Origin of Electric Field Enhancement in Field Emission from Amorphous Carbon Thin Films)、78 APPLIED PHYSICS LETTERS 2339(2001)
Kenneth A.Dean et al.、「カーボンナノチューブフィールドエミッタにおける電流飽和のメカニズム」(Current Saturation Mechanisms in Carbon Nanotube Field Emitters)、76 APPLIED PHYSICS LETTERS 375(2000)
W.Zhu et al.、「非ドープ型ナノ構造ダイアモンドからの低電界電子エミッション」(Low−Field Electron Emission from Undoped Nanostructured Diamond)、282 SCIENCE 1471(1998)
L.Nilsson et al.、「フィールドエミッションにおけるカーボンナノ−/マイクロ−構造:環境安定性及び電界増強分布」(Carbon Nano−/Micro−Structures in Field Emission:Environmental Stability and Field Enhancement Distribution)、383 THIN SOLID FILMS 78(2001)
K.C.Walter et al.、「イオン照射カーボンによる改善された電子フィールドエミッション」(Improved Field Emission of Electrons from Ion Irradiated Carbon)、71 APPLIED PHYSICS LETTERS 1320(1997)
S.Dimitrijevic et al.、「カーボンナノチューブフィルム及びta−C コートナノチューブからの電子エミッション」(Electron Emission From Films of Carbon Nanotubes and ta−C Coated Nanotubes)、75 APPLIED PHYSICS LETTERS 2680(1999)
A.Wadhawan et al.、「単層カーボンナノチューブ束のフィールドエミッション特性に対するセシウムデポジットの効果」(Effects of Cs Deposition on the Field−Emission Properties of Single−Walled Carbon−Nanotube Bundles)、78 APPLIED PHYSICS LETTERS 108(2001)
O.Yavas et al.、「シリコンフィールドエミッタアレイの電子エミッションのパルス型レーザ洗浄による改善」(Improvement of Electron Emission of Silicon Field Emitter Arrays by Pulsed Laser Cleaning)、18 J.VAC.SCI.TECHNOL.B.1081(2000)
O.Yavas,et al.、「電子エミッション増強のためのフィールドエミッタアレイのレーザ洗浄」(Laser Cleaning of Field Emitter Arrays for Enhanced Electron Emission)、72 APPLIED PHYSICS LETTERS 2797(1998)
M.Takai et al.、「Siフィールドエミッタアレイからの電子エミッションに対するレーザ照射の効果」(Effect of Laser Irradiation on Electron Emission from Si Field Emitter Arrays)、16 J.VAC.SCI.TECHNOL.B.780(1998)
M.Takai et al.、「ゲート付シリサイドフィールドエミッタアレイからの電子エミッション」(Electron Emission from Gated Silicide Field Emitter Arrays)、16 J.VAC.SCI.TECHNOL.B.790(1998).]
R.Khan et al.、「イオン注入によるアモルファスカーボン中の電子の非局在化」(Electron Delocalization in Amorphous Carbon by Ion Implantation)、63 PHYSICAL REVIEW B 121201−1(2001)
M.Takai et al.、「Siフィールドエミッタアレイのエミッション動作における改善に対する雰囲気ガスの影響」(Effect of Gas Ambient on Improvement in Emission Behavior of Si Field Emitter Arrays)、16 J.VAC.SCI.TECHNOL.799(1998)
O.Yavas et al.、「フォーカスドイオン及び電子ビーム誘起反応を用いて製作されたフィールドエミッタアレイ」(Field Emitter Array Fabricated Using Focused Ion and Electron Beam Induced Reaction)、18 J.VAC.SCI.TECHNOL.976(2000)
O.Yavas et al.、「フォーカスドイオン及び電子ビームによるフィールドエミッタアレイのマスクレス製作」(Maskless Fabrication of Field−Emitter Array by Focused Ion and Electron Beam)、76 APPLIED PHYSICS LETTERS 3319(2000)
A.Seidl et al.、「フィールドエミッタの陽極酸化由来の幾何効果」(Geometry Effects Arising from Anodization of Field Emitters)、18 J.VAC.SCI.TECHNOL.B 929(2000)
O.Yavas et al.、「電子エミッション改善のためのゲート付Siフィールドエミッタアレイ上へのダイアモンド類似カーボン膜のパルス型レーザデポジション」(Pulsed Laser Deposition of Diamond Like Carbon Films on Gated Si Field Emitter Arrays for Improved Electron Emission)、38 JAPAN.J.APPLIED PHYSICS 7208(1999)
カーボンナノチューブの酸化方法は、2002年1月8日出願の米国特許出願第10/041165号(2138)、米国特許第5965470号(2140)、米国特許第6099965号(3480)、米国特許第5853877号(3660)、2000年2月9日出願の米国特許出願第09/500740号(3493)、1999年7月21日出願の米国特許出願第09/358745号(4070)及び2001年10月29日出願の米国特許出願第10/005586号に記載されている。
ナノチューブマットの形成は、米国特許第5691054号(3130)、米国特許第5846658号(3140)、米国特許第6099965号(3480)、2000年2月9日出願の米国特許出願第09/500740号(3493)、米国特許第6031711号(3600)、米国特許第6099960号(3630)、米国特許第6205016号(3760)、米国特許第5800706号(3510)、米国特許第5985112号(3890)に記載されている。
単層カーボンナノチューブの製造は米国特許第6221330号(3830)に記載されている。
プラズマ処理は、1996年9月17日出願の米国特許出願第08/715027号に記載されている。
PVDFとナノチューブの組合せは、2001年7月11日出願の米国特許出願第09/903189号及び2001年11月20日出願の米国特許出願第09/988973号に記載されている。
フィブリル集成物は、米国特許第5456897号(2260)に記載されている。
カーボンナノチューブを含むカソードは2002年6月14日出願の米国特許出願第10/171760号に記載されている。
ナノチューブインクは、2003年6月16日出願のPCT出願「インク及びコーティングに基づく電子伝導性カーボンフィブリル」(Electroconductive Carbon Fibril based inks and Coatings)、PCT/US03/19068に記載されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カーボンナノチューブマットを備えるカソードとを備えるフィールドエミッションデバイスであって、前記カーボンナノチューブマットが、複数のナノチューブを液体懸濁液からろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られるデバイス。
【請求項2】
前記マットが上面及び反対側の下面を有し、前記下面は形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応し、前記上面が前記カソードのエミッティング面として働く、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記複数のナノチューブが直径約1ミクロン未満である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のナノチューブが魚骨に似た形態を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数のナノチューブが単層を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数のナノチューブが酸化されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ナノチューブが架橋されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記フィルタケーキがバインダの存在下で形成される、請求項1、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記バインダが溶媒可溶のフッ素ポリマーである、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記バインダがPVDFである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
カーボンナノチューブマットを備え、前記カーボンナノチューブマットが、複数のナノチューブを液体懸濁液からろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られる、フィールドエミッションカソード。
【請求項12】
前記マットが上面及び反対側の下面を有し、前記下面は形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応し、前記上面が前記カソードのエミッティング面として働く、請求項11に記載のカソード。
【請求項13】
ターンオン電圧を改善するために、ナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法であって、適切な波長の放射で十分な時間と強度で前記カソードを照射することを含む、上記方法。
【請求項14】
照射において、前記放射が紫外領域にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
照射において、前記カソードをレーザで露光する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザがパルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記放射が約349nm未満の波長を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記放射が約10.3mJ/cmより大きいエネルギー密度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
照射を空気中で行う、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
照射を少なくとも1トールの酸素分圧で行う、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記カソードがカーボンナノチューブマットを備え、前記カーボンナノチューブマットが、複数のナノチューブを液体懸濁液からろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られる、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記マットが上面及び反対側の下面を有し、前記下面は形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応し、前記上面が前記カソードのエミッティング面として働く、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複数のナノチューブが直径約1ミクロン未満である、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のナノチューブが魚骨に似た形態を有する、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記複数のナノチューブが単層を有する、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のナノチューブが酸化されている、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ナノチューブが架橋されている、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
フィルタケーキがバインダの存在下で形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記バインダが溶媒可溶のフッ素ポリマーである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バインダがPVDFである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項13から20までのいずれか一項に記載の処理をされたフィールドエミッションカソード。
【請求項32】
カソードエミッション電流密度を改善するために、ナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法であって、適切な波長の放射で十分な時間と強度でカソードを照射することを含む、上記方法。
【請求項33】
照射において、前記放射が紫外領域にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
照射において、前記カソードをレーザで露光する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記レーザがパルスである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記放射が約349nm未満の波長を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記放射が約10.3mJ/cmより大きいエネルギー密度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
照射を空気中で行う、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
照射を少なくとも1トールの酸素分圧で行う、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記カソードがカーボンナノチューブマットを備え、前記カーボンナノチューブマットが、複数のナノチューブを液体懸濁液からろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られる、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記マットが上面及び反対側の下面を有し、前記下面は形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応し、前記上面が前記カソードのエミッティング面として働く、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記複数のナノチューブが直径約1ミクロン未満である、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記複数のナノチューブが魚骨に似た形態を有する、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記複数のナノチューブが単層を有する、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記複数のナノチューブが酸化されている、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ナノチューブが架橋されている、請求項32から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記フィルタケーキがバインダの存在下で形成される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記バインダが溶媒可溶のフッ素ポリマーである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記バインダがPVDFである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項32から39までのいずれか一項に記載の処理をされたフィールドエミッションカソード。
【請求項51】
エミッションサイトの数を増加させ、カソード全域のエミッションの均一性を向上させるために、ナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法であって、適切な波長の放射で十分な時間及び強度で前記カソードを照射することを含む方法。
【請求項52】
ターンオン電圧を改善するために、ナノチューブを備えるフィールドエミッションカソードを処理する方法であって、十分な条件下で低温プラズマに前記カソードを暴露することを含む方法。
【請求項53】
前記プラズマが希ガスプラズマである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記プラズマがアルゴンプラズマである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記プラズマが希ガスを含むガス混合物である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記カソードがカーボンナノチューブマットを備え、前記カーボンナノチューブマットが、複数のナノチューブを液体懸濁液からろ過することによって形成されるフィルタケーキから得られる、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記マットが上面及び反対側の下面を有し、前記下面は形成される間にフィルタに隣接して配設されるフィルタケーキ表面に対応し、前記上面がカソードのエミッティング面として働く、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記複数のナノチューブが直径約1ミクロン未満である、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記複数のナノチューブが魚骨に似た形態を有する、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記複数のナノチューブが単層を有する、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記複数のナノチューブが酸化されている、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記ナノチューブが架橋されている、請求項52から55までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記フィルタケーキがバインダの存在下で形成される、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記バインダが溶媒可溶のフッ素ポリマーである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記バインダがPVDFである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
請求項52から55までのいずれか一項に記載の処理をされたフィールドエミッションカソード。
【請求項67】
十分な時間及び強度で構造体を照射することを含む、前記構造体内のナノチューブを配向させる方法。
【請求項68】
十分な条件下で低温プラズマに構造体を暴露することを含む、前記構造体内のナノチューブを配向させる方法。
【請求項69】
円筒軸と同心円状の1つ又は複数のグラファイト層を有する前記複数のナノチューブが実質的に円筒状であり、前記ナノチューブが熱分解でデポジットされたカーボンオーバーコートを実質的に含まず、0.4nm〜100nmの実質的に均一な直径を有し、長さと直径の比が5より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項70】
円筒軸と同心円状の1つ又は複数のグラファイト層を有する前記複数のナノチューブが実質的に円筒状であり、前記ナノチューブが熱分解でデポジットされたカーボンオーバーコートを実質的に含まず、0.4nm〜100nmの実質的に均一な直径を有し、長さと直径の比が5より大きい、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記カソードがフィルムを備え、前記フィルムがインクを基板上に置くことによって作製され、前記インクがキャリア液体及びカーボンナノチューブを含む、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記インクを置くことが、スクリーン印刷、インクジェット印刷及びスプレーペインティングからなる群から選択される方法によって行われる、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項71に記載の処理をされたフィールドエミッションカソード。
【請求項74】
前記プラズマが、酸素、水素、アンモニア、ヘリウム、アルゴン、水、窒素、エチレン、四塩化炭素、六フッ化硫黄、ペルフルオロエチレン、フッ素、フルオロホルム、塩素、ジフルオロジクロロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、臭素及びその混合物からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項75】
前記カソードがフィルムを備え、前記フィルムがインクを基板上に載置することによって作製され、前記インクがキャリア液体及びカーボンナノチューブを含む、請求項52から55まで及び74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記インクを載置することが、スクリーン印刷、インクジェット印刷及びスプレー塗装からなる群から選択される方法によって行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
請求項75に記載の処理をされたフィールドエミッションカソード。
【請求項78】
前記複数のナノチューブが直径約1ミクロン未満である、請求項71及び75のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記複数のナノチューブが魚骨に似た形態を有する、請求項71及び75のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記複数のナノチューブが単層を有する、請求項71及び75のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記複数のナノチューブが酸化されている、請求項71及び75のいずれかに記載の方法。
【請求項82】
前記ナノチューブが架橋されている、請求項71及び75のいずれかに記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−177214(P2010−177214A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102215(P2010−102215)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【分割の表示】特願2006−518900(P2006−518900)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(593169485)ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】