説明

レーザ測量装置及びレーザ測量方法

【課題】 飛行体に搭載されるレーザ測量装置において、地上局への測量データの提供のリアルタイム性を実現する。
【解決手段】 レーザ計測部は、飛行体が直線飛行航路32を飛行している計測期間においてレーザ計測データを順次出力する。送信部は、直線飛行航路32上にて、レーザ計測データが規定のファイルサイズに達すると、随時、圧縮処理を行い、レーザ計測データを地上局へ伝送する。直線飛行航路32上では、GPS/IMUが取得する飛行状態データは地上局へは伝送されず、飛行体が飛行する旋回航路34上に位置する計測中断期間に、送信部は飛行状態データを地上局へ伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体と地上との間で行うレーザ測量装置及びレーザ測量方法に関し、特に測量に関するデータの飛行体から地上局への伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の飛行体からレーザビームを照射して地上の凹凸情報を取得するレーザ計測方法として、下記特許文献1に記載されるものが知られている。一般に、航空機を用いた計測は比較的大きな面積を測定対象領域とすることや、それを精度良く測量するために、多数のレーザパルスが地上との間で送受信される。またレーザパルス毎に発射時刻、発射方向、複数のリターンパルスに関する情報が得られる。そのため、航空機上で得られるデータのサイズが膨大なものとなる。従来技術においては、航空機上で取得されたデータは、航空機に搭載したデータ記録部に格納され、計測終了後に地上のデータ処理装置に移され処理、解析される。
【0003】
しかし、例えば、災害時における地上の状況把握等のような利用目的では、即応性が要求される。そこで、航空機の着陸を待たずにデータ解析を行うことを可能とするレーザ計測システムの開発が進められている。
【特許文献1】特開2003−156330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即応性を高めるには、航空機上で取得される膨大な観測データを無線伝送で地上に送ることが要求されるが、当該データを限られた伝送容量で効率的に地上に送ることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、飛行体にて得られるデータを地上へ効率的に伝送するレーザ測量装置及びレーザ測量方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ測量装置は、飛行体からレーザパルスを地表に照射して地表形状を測量するものであって、順次発生する前記レーザパルスによりレーザ計測を行って、前記各レーザパルス毎にレーザ計測データを取得するレーザ計測部と、飛行位置を含む飛行状態データを取得する飛行状態計測部と、前記レーザ計測データ及び前記飛行状態データを地上局へ無線伝送するデータ伝送部と、を有し、前記データ伝送部が、前記レーザ計測部が前記レーザ計測を継続する計測期間にて、当該計測期間に得られる前記レーザ計測データを順次、伝送処理する一方、前記計測期間相互間に生じる計測中断期間内に、前記計測期間に得られた前記飛行状態データを伝送処理するものである。
【0007】
本発明の好適な態様は、前記飛行体が直線飛行での往復を繰り返して計測対象領域上を走査し、前記計測期間が、前記直線飛行の期間に応じて設定され、前記計測中断期間が、前記直線飛行から次の直線飛行までの旋回飛行の期間に応じて設定されるレーザ測量装置である。
【0008】
本発明の他の好適な態様は、前記データ伝送部が、前記レーザ計測データ及び前記飛行状態データを蓄積した後に伝送処理を行い、前記計測期間及び前記計測中断期間の区別が、前記データ蓄積の状況に基づいて行うレーザ測量装置である。
【0009】
本発明に係るレーザ測量方法は、飛行体からレーザパルスを地表に照射して地表形状を測量する方法であって、前記飛行体が計測対象領域上にて直線飛行を行う間、順次発生する前記レーザパルスによりレーザ計測を行って、前記各レーザパルス毎にレーザ計測データを取得し、かつ前記レーザ計測データの取得と並行して、飛行位置を含む飛行状態データを取得する計測ステップと、前記直線飛行の期間に取得される前記レーザ計測データを当該期間に順次、地上局へ無線伝送するレーザ計測データ伝送ステップと、前記計測対象領域上での先行する前記直線飛行から次の前記直線飛行へ移行するための旋回飛行の期間に、前記先行する直線飛行の期間に取得した前記飛行状態データを前記地上局へ無線伝送する飛行状態データ伝送ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飛行状態データに比べて高いデータレートで生成されるレーザ計測データを飛行状態データに先行して、順次、例えば、圧縮や符号化等の処理を行って地上局へ伝送する。レーザ計測データは、生成レートが高い分、短時間に圧縮処理や伝送処理に好適なデータ量が溜まり、当該レーザ計測データを優先的に連続処理することで飛行体上でのデータ圧縮処理の効率化及び伝送路の利用効率の向上が図られる。一方、飛行状態データに関しては、計測期間にて得られるデータを蓄積して、まとまったデータ量を処理することで、伝送効率の確保が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、航空機、ヘリコプター等の飛行体を使用したレーザ測量の概要を示す説明図である。飛行体1は、レーザ計測部4、GPS/IMU(Global Positioning System/Inertial Measurement Unit)22及び送信部6を搭載し、レーザ計測部4はレーザスキャナ2、反射波受信センサ8及びPOS(Position Orientation System)20を含んで構成される。
【0013】
レーザスキャナ2は、制御部(図示せず)により、所定時間間隔でレーザパルスを発射するレーザ発射部2aと、レーザパルスの照射方向を所定角度範囲内で振って地上のスキャンを可能とする回転ミラー2bとを備える。
【0014】
反射波受信センサ8は、レーザの発射パルスに対する地表からの反射パルス(リターンパルス)を検出する。
【0015】
POS20は、データ取得時の時刻情報であるタイムスタンプを生成する。
【0016】
GPS/IMU22は飛行状態データとして、飛行体1のGPS位置及び傾き情報を出力する。
【0017】
送信部6は、レーザ計測部4にて得られたデータ(レーザ計測データ)及びGPS/IMU22から得られるデータ(飛行状態データ)を蓄積し、圧縮等の処理を施した上で地上基地局へ無線送信する。
【0018】
図2は、リターンパルスを示す説明図である。発射された1発のレーザパルスに対して、地上物による複数回(通常1ないし5回程度)の反射が生じ、それに応じてリターンパルスも複数回検出され得る。反射波受信センサ8は、n発目の発射パルスに対するk番目のリターンパルスの捕捉時刻情報をリターンパルスデータPknとして出力する。リターンパルスデータPknは発射されたレーザパルスが地表や地物に反射し、反射波受信センサ8に戻って来るまでの時間である。
【0019】
レーザ計測部4では、リターンパルスデータPknに加えて、レーザパルスの発射時刻データTn、そのときの回転ミラー2bの回転角データθn及びタイムスタンプTSnがレーザ計測データとして取得される。レーザ発射部2aから発射されたレーザパルスは回転ミラー2bの反射により照射方向が変化するため、回転角データθnは、レーザパルスの照射角度を意味する。
【0020】
後述するように、地上基地局では、GPS/IMU情報を評定要素として、リターンパルスデータPkn等からなる観測データにより飛行体1と地表面との距離を演算し、地表の位置、高さを演算する。
【0021】
なお、レーザ計測データ及び飛行状態データはレーザ計測部4やGPS/IMU22の構造により適宜無次元化された数値として出力されるものであってもよく、またレーザパルス発射時刻、或いはリターンパルスデータ等の時刻情報は、例えば、計測開始からの経過時間であってもよい。
【0022】
図3はレーザ計測部4、GPS/IMU22及び送信部6の構成を示すブロック図である。上述したようにレーザ計測部4は、レーザスキャナ2、反射波受信センサ8、及びPOS20を備え、レーザ計測データはパルスデータ生成部9に出力される。また、GPS/IMU22が出力する飛行状態データはGPS/IMUデータ生成部10へ出力される。
【0023】
図4は、パルスデータ生成部9からのデータの出力フォーマットを示す模式図である。また、図5は、GPS/IMUデータ生成部10からのデータの出力フォーマットを示す模式図である。パルスデータ生成部9は、上述したように、発射パルス(レーザパルス)を単位として、当該発射パルスに対応する各出力値を所定の順序で配列したデータ列を出力する。図4に示す例は、各発射パルスに対して最大5次までのリターンパルスデータPknが取得され得ることを想定した場合のデータフォーマットを示すものであり、先頭からタイムスタンプTSn、レーザパルスの発射時刻データTn、ミラー回転角データθn、及びリターンパルスデータPknの順に格納される(図4)。ちなみに、上述したように、リターンパルスデータPknは必ずしも5次まで取得されるとは限らないため、取得されなかった次数の格納位置には、例えば“0”を格納する。
【0024】
一方、GPS/IMUデータ生成部10からは、図5に示すように、GPS時間TAn、IMU時間TBn、x方向加速度VXn、x方向角度AXn、y方向加速度VYn、y方向角度AYn、z方向加速度VZn、z方向角度AZnが出力される。ここで、GPS/IMU22のデータ取得タイミングは、レーザパルスより低い頻度ではあるが、レーザパルスの発射タイミングに同期するように設定される。そこで、GPS/IMUデータ生成部10からの出力値は、パルス番号を表す添え字“n”を介して、パルスデータ生成部9の出力値と対応付けられる。
【0025】
飛行体1におけるレーザ計測が開始されると、レーザ計測部4及びGPS/IMU22にて取得されるデータは、パルスデータ生成部9或いはGPS/IMUデータ生成部10へ出力される。パルスデータ生成部9及びGPS/IMUデータ生成部10は、入力されたデータから所定のデータ列を生成し送信部6へ出力する。例えば、パルスデータ生成部9の出力は送信部6の圧縮部11へ入力される(ステップS1)。
【0026】
圧縮部11は、データ分離部11a、圧縮処理部11b及び符号化処理部11cを含んで構成され、入力されたデータを圧縮する。この圧縮処理は、即時性の向上を図るために、データ全体の容量に対し、例えば、4Mバイト程度の比較的小さな単位で行われる。
【0027】
データ分離部11aは、図4に示すように、パルスデータ生成部9から出力されたパルスデータを、タイムスタンプTSn、レーザパルス発射時刻データTn、ミラー回転角データθn及びリターンパルスデータPknの4種類のデータ列SD(TS)、SD(T)、SD(θ)及びSD(P)に分割し(ステップS2)、これら各分離データSDを圧縮処理部11bへ出力する。図4に示すように、分離データ列SD(TS)、SD(T)及びSD(θ)それぞれにおけるタイムスタンプTSn、レーザパルス発射時刻データTn、ミラー回転角データθnは、パルス発射順に並ぶ。また、分離データ列SD(P)におけるリターンパルスデータPknは、パルス発射順が同じ5個のデータからなるデータ群がパルス発射順に並び、各データ群の中では、5個のデータが反射次数順に並んだフォーマットを有する。この分離データSD(P)には、必要に応じて、データ群の境界にデータ終端マークが挿入される。
【0028】
圧縮処理部11bは、各分離データ列SDの特徴を利用して、それぞれ異なったアルゴリズムでデータ圧縮を行う(ステップS3)。
【0029】
具体的には、本実施形態のPOS20が出力するタイムスタンプTSnは、ほとんどの場合に、ミラー回転角データθnの下位2桁と同じ値であることから、TSnとθnとの差分値で置き換える。これにより、ほとんどのTSnは0に置き換えることができ、データ量が圧縮される。
【0030】
図6は、レーザ発射時刻データの変化を示すグラフであり、横軸がレーザパルス発射順序、縦軸が発射時刻である。この図に示されるように、レーザパルス発射順序に対して発射時刻は、周期的に繰り返す右上がりの直線上に分布する傾向がある。この性質から、隣接する発射時刻データTnの二次差分値は0近傍に分布する小さな値となることが期待され、この二次差分値を用いることにより発射時間データの圧縮を図ることができる。
【0031】
次に、ミラー回転角データθnに対する圧縮操作を説明する。縦軸にミラー回転角データθn、横軸にレーザパルスの発射順序をとった、レーザパルス発射順序-ミラー回転角線図は正弦曲線に近似可能であり、その連続性に着目して、二次差分値を保存データとする。なお、二次差分値である各圧縮値から元データを算出可能とするために、圧縮データの最初に元データ、次に一次差分値が挿入され、これに続いて二次差分値が記述される。
【0032】
リターンパルスPknの圧縮においては、以下に説明するように、時系列及びパルス次数それぞれについての一次差分値が求められる。まず、分離データ列SD(P)には、1発のレーザパルスに対して5個のリターンパルスデータ(P1n,P2n,…,P5n)の領域が確保され、リターンパルスデータPknのない部分には“0”が格納されている。図2に示すように、リターンパルスは森林等における樹木の葉の間から漏れたレーザパルスが、さらに地表側に位置する他の反射物に反射して得られるもので、全ての領域が埋まることは比較的少なく、さらに“0”等の小さな値で“値なし”を示す場合であっても、そうでない他のリターンパルスデータの値を格納するのと同じ所定のビット長の領域が割り当てられる。
【0033】
このようなデータ構造に伴うデータの冗長性を解消するために、(n−1)発目のレーザパルスに対するリターンパルスデータ群とn発目のレーザパルスに対するリターンパルスデータ群との区切りにヘッダ情報Head_nを挿入する一方で、n発目のレーザパルスに対するリターンパルスデータのうち高次側に存在し得る“値なし”データを削除する。本実施形態において、ヘッダ情報Head_nには1バイトの領域が与えられ、その下位5ビットで最終次数及びリターンパルスデータ格納位置を示す。
【0034】
さらに、n発目のレーザパルスに対するリターンパルスデータ群の先頭には、時系列の一次差分値となるQ1nが格納される。ここで、
Q1n=P1n−P1,n-1
である。なお、n=1の場合にはP11をそのまま格納することとする。Q1nの後には、パルス次数の一次差分値となるRknが格納される。ここで、
Rkn=Pkn−Pk-1,n
であり、kは2から、n発目のレーザパルスに対するリターンパルスの最終次数までの値である。
【0035】
以上、パルスデータ生成部から出力されたレーザ計測データについての圧縮処理を説明したが、GPS/IMUデータ生成部10から出力される飛行状態データについても圧縮部11にて圧縮処理を行うように構成することも可能である。
【0036】
以上のようにして各々の分離データ列SDに対する圧縮処理が終了すると、結合処理がなされて1ファイルにまとめられ、次いで、図3に示す符号化処理部11cにおける符号化処理を行う(ステップS4)。符号化処理にはエントロピー符号化等が利用できる。
【0037】
符号化処理が終了したレーザ計測データは、まず、データ伝送中にて地上基地局での解析を可能とするためにストリーミング処理部12におけるストリーミング処理が行われ(ステップS5)、次いで伝送データ変換処理部13において搬送波の整形が行われ(ステップS6)、出力部14から伝送される(ステップS7)。また、飛行状態データについても同様にして出力部14から地上基地局へ向けて伝送される。
【0038】
ちなみに、上記送信部6及びパルスデータ生成部9、GPS/IMUデータ生成部10は、コンピュータに当該機能を実行させるコンピュータプログラムを使用して達成可能である。
【0039】
次に、飛行体1から地上基地局への伝送方法について説明する。図7は、当該伝送方法を説明する模式図である。計測対象領域30は、その上空に複数設定される直線飛行航路32に沿って飛行する飛行体1からのレーザパルス照射で走査される。レーザパルスは回転ミラー2bの回転によって照射角度を変更され、航路32に交差する方向にジグザグにレーザパルスによる走査が行われる。そのため、1回の直線飛行により、直線飛行航路32に沿った帯状の領域がレーザパルスで走査される。その帯の幅は飛行体1の高度や回転ミラー2bの回転角度幅によって決まる。複数の直線飛行航路32はその帯の幅以内の間隔で平行に配列される。例えば、航路32の間隔をレーザパルスにより走査される帯の幅より小さく設定することで、隣接航路間でレーザパルスの走査領域を重複させることができ、それにより測量精度の向上を図ることもできる。
【0040】
飛行体1は飛行距離の短縮のため、平行に設定された直線飛行航路32を通って計測対象領域30上を往復する。例えば、飛行体1は直線飛行航路32-1を図7において左から右へ飛行した後、旋回航路34-1に沿って旋回し、別の直線飛行航路32-2に右から進入し、当該航路32-2を右から左へ飛行する。また当該航路32-2の左終端に到達すると、飛行体1は、旋回航路34-2に沿って旋回し、さらに別の直線飛行航路32-3に左から進入し、当該航路32-3を左から右へ飛行する。このように、飛行体1は計測対象領域30上での直線飛行と計測対象領域30外での旋回飛行とを交互に繰り返して、複数の直線飛行航路32に沿った計測を順次実行していく。
【0041】
ここで、レーザ測量装置による計測期間は航路32上の直線飛行の期間に設定され、航路34上を旋回している期間は計測中断期間に設定される。すなわち、レーザ計測部4及びGPS/IMU22は、直線飛行の間だけデータを取得し、パルスデータ生成部9及びGPS/IMUデータ生成部10を経由して、送信部6へデータを渡す。
【0042】
GPS/IMU22はレーザパルスの発射タイミングのうち間欠的にしかデータを取得しないように設定されることや、レーザ計測データに関してはデータ種類が多いことなどから、レーザ計測部4が取得するレーザ計測データのデータ量はGPS/IMU22が取得する飛行状態データに比べてはるかに大きくなり得るため、送信部6にデータが溜まる速度はレーザ計測データの方が飛行状態データより早い。そこで、送信部6は、計測期間中はレーザ計測データの処理を優先し、受け取ったレーザ計測データが規定のファイルサイズになると、随時、上述した地上基地局への圧縮伝送処理を行う。この計測期間中、飛行状態データの処理を行わないことで、送信部6は処理能力をレーザ計測データの処理に振り向け、レーザ計測データを優先的に連続処理することができる。これにより、飛行体上でのデータ圧縮処理の効率化及び伝送路の利用効率の向上が図られる。
【0043】
一方、送信部6は直線飛行の間、飛行状態データを蓄積する。蓄積した飛行状態データに対する伝送処理は、飛行体1が旋回航路34に入り、計測中断期間となると行われる。具体的には、計測中断期間となり、計測期間に得られたレーザ計測データについての伝送が完了すると、飛行状態データについての伝送処理が開始される。このように飛行状態データを計測中断期間に行うことは、飛行状態データは上述のようにデータ量が少ないので、計測期間中に処理する必要性が低いことや、また例えば、データ圧縮処理を行う場合には、計測期間に亘って蓄積することで、圧縮処理を効率的に行える程度のデータ量を確保し得ることから好適である。また、飛行状態データは、飛行体1が飛行状態の間、つまり計測期間中か否かを問わずGPS/IMU22から出力されるようにも構成することができ、その場合には送信部6でのその蓄積データ量が旋回飛行中においても増加し処理単位のファイルサイズに達し得る点でも、飛行状態データの処理を計測中断期間である旋回期間に行うのが好適である。
【0044】
なお、例えば、送信部6は、レーザ計測データの蓄積が所定時間停止したことを検知して、飛行体1が直線飛行(又は計測期間)から旋回飛行(又は計測中断期間)に移ったと判断し、飛行状態データの処理に移行するように構成される。また、レーザ計測データの蓄積が開始したことを検知して、飛行体1が旋回飛行(又は計測中断期間)から直線飛行(又は計測期間)に遷移したと判断し、レーザ計測データを優先的に処理するモードに移行するように構成することができる。
【0045】
地上基地局は、飛行体1から送信されるレーザ計測データ及び飛行状態データを受信し、元のデータを復元する。具体的には、飛行体1の計測期間においては、地上基地局は飛行体1から送信されるレーザ計測データを蓄積しつつ、並行してその復号処理を行い、データ列SD(TS)、SD(T)、SD(θ)及びSD(P)を再現する。再現されたデータ列は、一旦、保持される。地上基地局は、当該データ列に対応する計測期間における飛行状態データを計測中断期間にある旋回飛行中の飛行体1から受信し、これを復号処理して、先に保持されているレーザ計測データのデータ列と組み合わせて、地表形状データを生成する。具体的には、地上基地局は、飛行体1の光学系の特性に基づく内部評定要素、及び飛行状態データとして得られるGPS/IMUデータに基づく外部評定要素を利用してリターンパルスの反射点の所定投影空間上での位置、高さを演算する。なお、一般にGPS/IMUからのデータ数は、レーザパルス発射数に比して小数であり、一対一対応しないために、上述したように、添え字“n”に対応するレーザデータ以外のレーザデータに対する外部評定要素には、取得されたGPS/IMUデータに対する補間値が使用される。
【0046】
このようにして得られた各ポイントデータは三次元情報を有しているために、これを使用して地表面を点描状に表示することが可能である。また、地上基地局は、算出したポイントデータ群をもとに、例えば、三次元ポリゴン、テクスチャ等を備えた3D画像を形成し得る。
【0047】
また、地上基地局は、即応性を利用して例えば地殻変動、災害等の情報を直ちに得ることができるように、比較部を備えてもよい。比較部は、新たに得られた3D画像データを既存の3D画像データと比較して、画像上の相違点を検出する。地上基地局は検出結果を表示部に表示し、必要に応じて上空の飛行体1に再計測、或いは計測範囲の拡大等を指示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】航空機、ヘリコプター等の飛行体を使用したレーザ計測の概要を示す説明図である。
【図2】リターンパルスを示す説明図である。
【図3】レーザ計測部、GPS/IMU及び送信部の構成を示すブロック図である。
【図4】パルスデータ生成部からのデータの出力フォーマットを示す模式図である。
【図5】GPS/IMUデータ生成部からのデータの出力フォーマットを示す模式図である。
【図6】レーザ発射時刻データの変化を示すグラフである。
【図7】飛行体から地上基地局への伝送方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 飛行体、2 レーザスキャナ、4 レーザ計測部、5 データ解析部、6 送信部、7 データ再生部、8 反射波受信センサ、9 パルスデータ生成部、10 GPS/IMUデータ生成部、11 圧縮部、11a データ分離部、11b 圧縮処理部、11c 符号化処理部、12 ストリーミング処理部、13 伝送データ変換処理部、14 出力部、20 POS、22 GPS/IMU、30 計測対象領域、32 直線飛行航路、34 旋回航路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体からレーザパルスを地表に照射して地表形状を測量するレーザ測量装置において、
順次発生する前記レーザパルスによりレーザ計測を行って、前記各レーザパルス毎にレーザ計測データを取得するレーザ計測部と、
飛行位置を含む飛行状態データを取得する飛行状態計測部と、
前記レーザ計測データ及び前記飛行状態データを地上局へ無線伝送するデータ伝送部と、
を有し、
前記データ伝送部は、前記レーザ計測部が前記レーザ計測を継続する計測期間にて、当該計測期間に得られる前記レーザ計測データを順次、伝送処理する一方、前記計測期間相互間に生じる計測中断期間内に、前記計測期間に得られた前記飛行状態データを伝送処理すること、
を特徴とするレーザ測量装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ測量装置において、
前記飛行体は直線飛行での往復を繰り返して計測対象領域上を走査し、
前記計測期間は、前記直線飛行の期間に応じて設定され、
前記計測中断期間は、前記直線飛行から次の直線飛行までの旋回飛行の期間に応じて設定されること、
を特徴とするレーザ測量装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレーザ測量装置において、
前記データ伝送部は、前記レーザ計測データ及び前記飛行状態データを蓄積した後に伝送処理を行い、
前記計測期間及び前記計測中断期間の区別は、前記データ蓄積の状況に基づいて行うこと、
を特徴とするレーザ測量装置。
【請求項4】
飛行体からレーザパルスを地表に照射して地表形状を測量するレーザ測量方法において、
前記飛行体が計測対象領域上にて直線飛行を行う間、順次発生する前記レーザパルスによりレーザ計測を行って、前記各レーザパルス毎にレーザ計測データを取得し、かつ前記レーザ計測データの取得と並行して、飛行位置を含む飛行状態データを取得する計測ステップと、
前記直線飛行の期間に取得される前記レーザ計測データを当該期間に順次、地上局へ無線伝送するレーザ計測データ伝送ステップと、
前記計測対象領域上での先行する前記直線飛行から次の前記直線飛行へ移行するための旋回飛行の期間に、前記先行する直線飛行の期間に取得した前記飛行状態データを前記地上局へ無線伝送する飛行状態データ伝送ステップと、
を有することを特徴とするレーザ測量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−64811(P2007−64811A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251748(P2005−251748)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、総務省、「次世代GISの実用化に向けた情報通信技術の研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】