説明

レーザ装置、光ピックアップ、光ディスクドライブ装置

【課題】駆動パルスの直流成分を制御することにより、半導体レーザから短パルスのレーザ光を発生させることを可能にする、レーザ装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ13と、この半導体レーザ13を駆動するためのパルス信号S1を発生させる信号発生回路11と、パルス信号S1を増幅する増幅回路12と、この増幅回路12と半導体レーザ13との間に設けられ、パルス信号S1の交流成分は通過させて、パルス信号S1の直流成分の少なくとも一部を除去して、パルス信号S1を制御する、制御回路部21とを含むレーザ装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ装置に係わる。また、本発明は、このレーザ装置を備えた光ピックアップ、並びに、光ディスクドライブ装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、光情報記録媒体としては、円盤状の光情報記録媒体(光ディスク)が広く普及している。
一般には、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu-ray Disc(登録商標)等が用いられている。
【0003】
一方、光情報記録媒体に対応した光ディスク装置は、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いは、コンピュータ用の各種データ等のような種々の情報を当該光情報記録媒体に記録するように構成されている。
特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により、情報量が増大しており、また1枚の光情報記録媒体に記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、光情報記録媒体のさらなる大容量化が求められている。
【0004】
そこで、光に応じて2光子吸収反応を生じさせることによって記録ピットを形成する材料を用いて、光情報記録媒体の厚み方向に3次元的に情報を記録する構成の光情報記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような構成とすることにより、光情報記録媒体を大容量化することが可能になる。
【0005】
ところで、この2光子吸収反応は、光強度の大きい光に応じてのみ生じる現象であるため、光源として出射光強度の大きい光源を用いる必要がある。
そして、出射光強度の大きい光源としては、レーザ光を短パルス出力する、いわゆるピコ秒レーザやフェムト秒レーザ等の短パルス光源があり、例えば、チタンサファイヤレーザやYAGレーザ等が知られている。
【0006】
しかし、これらの短パルス光源は、光発生器の外部に設けられた光学部品の作用によって、短パルス出力を実現しているため、一般的にサイズが大きくなり、また価格も高価である。
従って、短パルス光源を光ディスク装置に搭載することは非現実的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−37658公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光ディスク装置において一般的に使用されている、小型の光発生器として、半導体レーザが挙げられる。
この半導体レーザから直接的にレーザ光をパルス出力することができれば、光発生器の外部に光学部品を設ける必要がなくなるので、短パルス光源を大幅に小型化することができると考えられる。
【0009】
しかし、半導体レーザから短パルスのレーザ光を発生させるためには、非常に高い電圧を短時間に半導体レーザに印加しなければならない。そのため、駆動パルス信号を広帯域なRFアンプ等で増幅する必要がある。
【0010】
通常、RFアンプの出力インピーダンスは、特性インピーダンスが50Ωで設計され、出力はAC結合されている。
一方、半導体レーザの特性インピーダンスは、オフ状態では高くなり、オン状態では低くなり、パルス印加時に急激にインピーダンスが変化する。このため、駆動パルス波形の平均値にオフセットを生じる。
このように駆動パルス波形の平均値にオフセットが生じると、半導体レーザに印加するパルスのピーク電圧が下がり、半導体レーザからレーザを発生させるための閾値電圧を下回ってしまい、短パルスのレーザ光を発生させることができない。
【0011】
上述した問題の解決のために、本発明においては、駆動パルスの直流成分を制御することにより、半導体レーザから短パルスのレーザ光を発生させることを可能にする、レーザ装置を提供するものである。また、このレーザ装置を備えた光学ピックアップ、並びに、光ディスク装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のレーザ装置は、半導体レーザと、この半導体レーザを駆動するためのパルス信号を発生させる信号発生回路と、パルス信号を増幅する増幅回路とを含む。さらに、増幅回路と半導体レーザとの間に設けられ、パルス信号の交流成分は通過させて、パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、パルス信号を制御する、制御回路部を含む。
【0013】
本発明の光学ピックアップは、光記録媒体にレーザ光を照射して、光記録媒体への情報の記録又は光記録媒体に記録された情報の再生を行うものである。そして、半導体レーザと、この半導体レーザを駆動するためのパルス信号を発生させる信号発生回路と、パルス信号を増幅する増幅回路とを含む。さらに、増幅回路と半導体レーザとの間に設けられ、パルス信号の交流成分は通過させて、パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、パルス信号を制御する、制御回路部とを含む。即ち、上述した本発明のレーザ装置の構成を備えている。また、半導体レーザからのレーザ光を集光して光記録媒体に照射させる対物レンズと、光記録媒体からの戻り光を受光する受光部とを含む。
【0014】
本発明の光ディスク装置は、光ディスクにレーザ光を照射して、光ディスクへの情報の記録又は光ディスクに記録された情報の再生を行うものである。そして、上述した本発明のレーザ装置の構成と、半導体レーザからのレーザ光を集光して光ディスクに照射させる対物レンズと、光ディスクからの戻り光を受光する受光部とを含む光学ピックアップを含んでいる。さらに、光ディスクを回転させる光ディスク駆動部と、光学ピックアップを光ディスクに対して移動させる光学ピックアップ駆動部と、受光部からの光出力信号の信号処理を行う信号処理部とを含んでいる。
【0015】
上述の本発明のレーザ装置の構成によれば、増幅回路と半導体レーザとの間に設けられ、パルス信号の交流成分は通過させて、パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、パルス信号を制御する、制御回路部を含んでいる。これにより、パルス信号の直流成分の一部又は全部が除去されて半導体レーザに供給されるので、半導体レーザに供給される信号から、DCオフセットを低減又は除去して、半導体レーザがパルス発光するための適切なパルス信号とすることが可能になる。従って、半導体レーザを短いパルスで発光させることが可能になる。
【0016】
上述の本発明の光学ピックアップの構成によれば、上述した本発明のレーザ装置の構成を備えているので、半導体レーザを短いパルスで発光させることが可能になり、短いパルスのレーザ光を光記録媒体に照射することができる。
【0017】
上述の本発明の光ディスク装置の構成によれば、上述した本発明のレーザ装置の構成を含む光学ピックアップを含んでいるので、半導体レーザを短いパルスで発光させることが可能になり、短いパルスのレーザ光を光ディスクに照射することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述の本発明によれば、半導体レーザを短いパルスで発光させることが可能になるため、増幅回路での増幅を大きくして半導体レーザの出射光の強度を大きくしても、パルス幅が短いので半導体レーザが劣化することを防ぐことができる。これにより、半導体レーザを用いて、出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になる。
【0019】
また、本発明の光学ピックアップや本発明の光ディスク装置の構成によれば、短いパルスのレーザ光を光ディスク等の光記録媒体に照射することができ、また、半導体レーザによって、出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になる。
これにより、光ディスク等の光記録媒体を、厚み方向に3次元的に情報を記録する構成として、大容量化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光学ピックアップの概略構成図(ブロック図)である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の光学ピックアップの概略構成図(ブロック図)である。
【図3】第2の実施の形態に対する変形例の概略構成図(ブロック図)である。
【図4】本発明の第3の実施の形態のレーザ装置の概略構成図(ブロック図)である。
【図5】特性の測定を行ったレーザ装置の概略構成図(ブロック図)である。
【図6】図5の半導体レーザの発光波形の一例を示す図である。
【図7】半導体レーザがオン状態のときの等価回路の一例を示す図である。
【図8】A、B 制御回路部を挿入した構成とスルーで接続した構成とにおいて、観測したモニタ信号を比較して示す図である。
【図9】図5の半導体レーザを図7の等価回路に置換して、制御回路部を挿入した構成とスルーで接続した構成とにおいて、観測したモニタ信号を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
4.第3の実施の形態
5.特性の測定
【0022】
<1.第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態の光学ピックアップの概略構成図(ブロック図)を、図1に示す。
【0023】
この光学ピックアップ10は、信号発生回路11と、RFアンプ12と、半導体レーザ13と、コリメータレンズ14と、ビームスプリッタ15と、対物レンズ16,17A,17Bと、フォトディテクタ18A,18Bとを備えている。
そして、この光学ピックアップ10は、光ディスク20にレーザ光を照射して、光ディスク20への情報の記録や、光ディスク20に記録された情報の再生を行う。
【0024】
信号発生回路11は、半導体レーザ13を駆動して半導体レーザ13からレーザ光を出射させるための、短パルス信号S1を発生させる。
この短パルス信号S1は、好ましくは、数ナノ秒(例えば、1ナノ秒)のパルス幅を有し、繰り返し周波数が10〜200MHzのパルス信号とする。
【0025】
RFアンプ12は、信号発生回路11で発生させた短パルス信号S1の振幅を増幅させる。例えば、40〜50V程度、30dB程度増幅させる。
このRFアンプ12としては、例えば、R&K社製のALM00110を使用することができる。
なお、RFアンプ12の終端の特性インピーダンスは、負荷とのインピーダンス整合のため通常50Ωで設計される。
【0026】
半導体レーザ13には、光学ピックアップ10が記録や再生の対象とする光ディスク20の種類に対応して、所定の波長帯域のレーザ光を出射する半導体レーザを使用する。
【0027】
コリメータレンズ14は、半導体レーザ13から出射したレーザ光を平行光にする。
ビームスプリッタ15は、半導体レーザ13からのレーザ光を、光ディスク20へ向かう光と、第1のフォトディテクタ18Aに向かう光とに分離する。
対物レンズ16は、半導体レーザ13からのレーザ光を集束して、光ディスク20に照射させる。
【0028】
対物レンズ17A及び第1のフォトディテクタ18Aは、半導体レーザ13から出射した光をモニタするための構成である。
対物レンズ17B及び第2のフォトディテクタ18Bは、光ディスク20で反射した戻り光を検出するための構成である。
第1のフォトディテクタ18A及び第2のフォトディテクタ18Bには、半導体層によって形成したフォトダイオードを含む受光素子を使用することができる。
【0029】
さらに、この光学ピックアップ10は、RFアンプ12と半導体レーザ13との間に、パルス信号を制御する制御回路部21を備えている。
この制御回路部21は、RFアンプ12及び半導体レーザ13に直列に接続されたコンデンサCと、コンデンサCの半導体レーザ13側に一端が接続されたコイルLとを有している。コイルLの他端は、抵抗Rを介して接地電位GNDに接続されているので、コイルLの他端が抵抗Rの抵抗値に対応した電位となる。
【0030】
この制御回路部21では、コンデンサC及びコイルLを接続した回路の作用によって、パルス信号の交流成分は通過するが、パルス信号の直流成分は少なくとも一部(一部又は全部)が除去される。
これにより、制御回路部21によってRFアンプ12で増幅された短パルス信号S1の直流成分が変化するので、半導体レーザ13に供給されるレーザ駆動信号S2におけるDCオフセットを低減又は除去することができる。
制御回路部21において、パルス信号の直流成分を全部除去するように構成した場合には、レーザ駆動信号S2におけるDCオフセットを除去して、レーザ駆動信号S2の平均値を0に制御することが可能になる。
【0031】
そして、制御回路部21のコンデンサCの容量及びコイルLのインダクタンスの値により、どの程度パルス信号の交流成分が除去されるかを変えることができる。
【0032】
図1に示す光学ピックアップ10は、例えば以下に説明するように、動作する。
信号発生回路11により、短パルス信号S1、例えば、数ナノ秒(例えば、1ナノ秒)のパルス幅を有し、繰り返し周波数が10〜200MHzのパルス信号を発生させる。
信号発生回路11で発生した短パルス信号S1は、RFアンプ12により、半導体レーザ13から短パルスが発光する程度の振幅まで増幅される。
RFアンプ12により増幅された短パルス信号S1は、制御回路部21により、直流成分の一部又は全部が除去されて、DCオフセットが低減又は除去される。これにより、DCオフセットが低減又は除去されたレーザ駆動信号S2が、半導体レーザ13に供給される。レーザ駆動信号S2は、DCオフセットが低減又は除去されているので、半導体レーザ13から約10ピコ秒程度の短パルス光が発光される。
半導体レーザ13から出力された短パルス光は、コリメータレンズ14を経て平行光となり、ビームスプリッタ15により、モニタ用の光が一部分岐して、残りの光が光ディスク20に向かう。ビームスプリッタ15を透過した光は、対物レンズ17Aで集光されて、モニタ用の第1のフォトディテクタ18Aで受光される。ビームスプリッタ15で反射された光は、対物レンズ16により集光されて、光ディスク20に照射される。
光ディスク20で反射した戻り光は、ビームスプリッタ15を透過して、対物レンズ17Bで集光されて、第2のフォトディテクタ18Bで受光される。
【0033】
上述の第1の実施の形態の光学ピックアップ10の構成によれば、信号発生回路11で発生した短パルス信号S1を増幅するRFアンプ12と、半導体レーザ13との間に、コンデンサC及びコイルLから成る制御回路部21を設けている。そして、制御回路部21は、コンデンサCをRFアンプ12及び半導体レーザ13と直列に接続して、コイルLはコンデンサCの一端と接地電位に接続された抵抗Rとに接続した構成である。
これにより、制御回路部21によって、短パルス信号S1のうち、交流成分は通過させて、直流成分の一部又は全部を除去することができるので、半導体レーザ13に供給されるレーザ駆動信号S2においてDCオフセットを低減又は除去することが可能になる。
従って、レーザ駆動信号S2を適切なパルス信号にして、半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になる。
【0034】
半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になるので、RFアンプ12での増幅を大きくして、半導体レーザ13の出射光の強度を大きくしても、パルス幅が短いので半導体レーザ13が劣化することを防ぐことができる。これにより、半導体レーザ13を用いて、出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になる。
そして、このように出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になるので、前述したように、光ディスク20を厚み方向に3次元的に情報を記録する構成として、光ディスク20を大容量化することも可能になる。
【0035】
<2.第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態の光学ピックアップの概略構成図(ブロック図)を、図2に示す。
【0036】
この光学ピックアップ30は、RFアンプ12と半導体レーザ13との間に、パルス信号を制御する制御回路部として、Bias Tee22を備えている。
Bias Tee22は、コンデンサやコイル等を含んで構成されており、第1の実施の形態の制御回路部21と同様に、パルス信号の交流成分を通過させて、パルス信号の直流成分の少なくとも一部(一部又は全部)を除去することができる。
Bias Tee22としては、市販のBias Teeを使用することができる。そして、この光学ピックアップ30の制御回路部に要求される条件を満たす仕様のBias Teeを使用する。
【0037】
その他の構成は、第1の実施の形態の光学ピックアップ10と同様であるので、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0038】
上述の第2の実施の形態の光学ピックアップ30の構成によれば、信号発生回路11で発生した短パルス信号S1を増幅するRFアンプ12と、半導体レーザ13との間に、制御回路部としてBias Tee22を設けている。
これにより、制御回路部によって、短パルス信号S1のうち、交流成分は通過させて、直流成分の一部又は全部を除去することができるので、半導体レーザ13に供給されるレーザ駆動信号S2においてDCオフセットを低減又は除去することが可能になる。
従って、レーザ駆動信号S2を適切なパルス信号にして、半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になる。
【0039】
半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になるので、RFアンプ12での増幅を大きくして、半導体レーザ13の出射光の強度を大きくしても、パルス幅が短いので半導体レーザ13が劣化することを防ぐことができる。これにより、半導体レーザ13を用いて、出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になる。
そして、このように出射光強度が大きく、かつ小型の光源を構成することが可能になるので、前述したように、光ディスク20を厚み方向に3次元的に情報を記録する構成として、光ディスク20を大容量化することも可能になる。
【0040】
<3.変形例>
図2に示した第2の実施の形態では、DCオフセットを除去する制御回路部(Bias Tee22)を、抵抗Rを介して接地電位GNDに接続していた。
これに対して、変形例として、光学ピックアップの概略構成図(ブロック図)を図3に示す。
【0041】
図3に示す光学ピックアップ31では、図2に示した第2の実施の形態の光学ピックアップ30の構成に対して、制御回路部(Bias Tee22)を接地電位GNDに接続する代わりに、制御回路部を直流電源部であるDC電源23に繋いでいる。
このように構成することにより、DC電源23によって、制御回路部(Bias Tee22)に外部から直流バイアス電圧を印加することが可能になる。
【0042】
また、制御回路部をDC電源23に繋ぐことにより、制御回路部によって制御される、レーザ駆動信号S2の平均値レベルを、DC電源23から印加する電圧に応じて、設定することが可能になる。
そして、例えば、DC電源23を可変電源とした場合には、レーザ駆動信号S2の平均値レベルを任意の値に制御することも可能になる。
このことにより、さらに半導体レーザ13に供給されるレーザ駆動信号S2のピーク電圧を上げることが可能であるので、レーザ駆動信号S2の振幅を下げても半導体レーザ13を発光させることが可能になる。
ただし、レーザ駆動信号S2の平均値レベルが通常発光するレベルを超えると、半導体レーザ13が常に発光することになり、半導体レーザ13の発光効率が悪くなる。そのため、レーザ駆動信号S2の平均値レベルが、半導体レーザ13が発光するレベルを超えないように制御する必要がある。
【0043】
図3は、第2の実施の形態の制御回路部(Bias Tee22)にDC電源23を接続した構成であった。
第1の実施の形態の制御回路部(コンデンサC及びコイルL)21に、同様に、DC電源を接続した構成とすることも可能である。
【0044】
上述した各実施の形態では、光ディスクに半導体レーザからのレーザ光を照射する構成であった。
本発明では、レーザ光を照射する光記録媒体は、光によって情報の記録や再生を行う構成であれば、ディスク状の光ディスクに限らず、カード状の光記録媒体等、他の形状の光記録媒体であってもよい。
【0045】
上述した各実施の形態では、光ディスク20からの戻り光をフォトディテクタにより受光していた。本発明では、光ディスク等の光記録媒体からの戻り光を受光する受光部は、フォトディテクタに限定されず、その他の構成の受光素子を受光部に使用してもよい。
また、本発明では、パルス信号を増幅する増幅回路は、上述した各実施の形態のRFアンプ12に限定されず、その他の構成の増幅回路を使用してもよい。
【0046】
上述した各実施の形態及び変形例の光学ピックアップ10,30,31を用いて、光ディスク20に対して情報の記録や情報の再生を行う光ディスク装置を構成することができる。
具体的な光ディスク装置としては、パーソナルコンピュータやビデオデッキやビデオカメラ等の各種の電子機器への内蔵型の光ディスクドライブや、単体の光ディスクドライブが挙げられる。
【0047】
光ディスク装置は、光学ピックアップの他に、光ディスクを回転させる光ディスク駆動部、光学ピックアップを光ディスクに対して移動させる光学ピックアップ駆動部、フォトディテクタ等からの光出力信号の信号処理を行う信号処理部、等を備えて構成される。
光ディスク駆動部としては、スピンドルモータ等が挙げられる。光学ピックアップ駆動部としては、スレッドモータ等が挙げられる。
【0048】
<4.第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態のレーザ装置の概略構成図(ブロック図)を、図4に示す。
図4に示すレーザ装置40は、レーザ治療装置やレーザ加工装置に適用して好適なものである。
【0049】
このレーザ装置40は、半導体レーザ13から出射して、コリメータレンズ14によって平行光とされたレーザ光を、治療または加工対象物41に照射する。
このレーザ装置40の場合は、対象物からの戻り光は生じないので、モニタ用の対物レンズ17及びフォトディテクタ18のみが設けられている。
その他の構成は、第1の実施の形態の光学ピックアップ10と同様である。
【0050】
上述の第3の実施の形態のレーザ装置40の構成によれば、信号発生回路11で発生した短パルス信号S1を増幅するRFアンプ12と、半導体レーザ13との間に、第1の実施の形態の光学ピックアップ10と同様の構成の制御回路部21を設けている。
これにより、制御回路部21によって、短パルス信号S1のうち、交流成分は通過させて、直流成分の一部又は全部を除去することができるので、半導体レーザ13に供給されるレーザ駆動信号S2においてDCオフセットを低減又は除去することが可能になる。
従って、レーザ駆動信号S2を適切なパルス信号にして半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になる。
【0051】
半導体レーザ13を短パルス発光させることが可能になるので、RFアンプ12での増幅を大きくして、半導体レーザ13の出射光の強度を大きくしても、パルス幅が短いので半導体レーザ13が劣化することを防ぐことができる。
また、パルス幅が短いので、治療または加工対象物41のうち、レーザ光が照射された箇所及びそのごく近傍のみを加熱することができるので、治療または加工対象物41に与えるダメージを少なくして、治療または加工を行うことが可能になる。
【0052】
なお、図4に示すレーザ装置40の構成に対して、図2や図3に示したような、Bias Teeによる制御回路部やDC電源による外部から制御回路への直流電圧の供給を適用することも可能である。
【0053】
<5.特性の測定>
続いて、本発明の構成のレーザ装置を作製して、レーザ駆動信号及び半導体レーザから出射した光の状態を調べた。
作製したレーザ装置の概略構成図(ブロック図)を、図5に示す。
【0054】
図5に示すレーザ装置において、図1の光学ピックアップ10と比較して異なる構成は、以下の通りである。
コリメータレンズ14の後段に、対物レンズ43及びフォトディテクタ44が設けられている。また、制御回路部21と半導体レーザ13との間に、Pickoff Tee42が設けられ、このPickoff Tee42で分岐した線に接続して、オシロスコープ45が設けられている。
Pickoff Tee42は、レーザ駆動信号S2の一部を−20dBの出力で取り出して、モニタ信号S4としている。
フォトディテクタ44によって、光を受光・検出して、光を電気信号に変換して光出力信号S3として出力する。
また、オシロスコープ45には、フォトディテクタ44で検出した光出力信号S3と、Pickoff Tee42において取り出されたモニタ信号S4と、信号発生回路11からのマーカー信号S5とが、供給される。マーカー信号S5は、短パルス信号S1に同期しており、オシロスコープ45における波形観測時のトリガ信号として利用する。
【0055】
ここで、図5のレーザ装置において、半導体レーザ13の発光波形を調べた。得られた発光波形の一例を、図6に示す。図6の縦軸は光出力(W)であり、横軸は時間(ns;ナノ秒)である。
図6より、半導体レーザ13が、0.02ns以下のごく短いパルス幅を有する短パルスで発光していることがわかる。
【0056】
また、半導体レーザがオン状態の等価回路は、抵抗及びコンデンサの受動素子を用いて、図7のように表すことができる。
図7では、一例として、ソニー製青紫色レーザダイオード(SLD-3233)を用いた場合の抵抗値及び容量の数値を示している。
図7に示すように、抵抗値が15Ωの第1の抵抗R1と容量が15pFの第1のコンデンサC1とが並列に接続され、これらに直列に抵抗値が3.3Ωの第2の抵抗R2が接続され、さらにこれらに並列に容量が1pFの第2のコンデンサC2が接続されている。
なお、半導体レーザがオフ状態であるときには、第1の抵抗R1の抵抗値が数kΩと大きくなり、その分半導体レーザ全体のインピーダンスも大きくなる。
即ち、半導体レーザは、オン状態とオフ状態とでインピーダンスが変化する。
【0057】
図5に示したレーザ装置について、オシロスコープ45においてモニタ信号S4を観測した。
また、比較対照として、図5に示したレーザ装置のRFアンプ12と半導体レーザ13との間を直接接続して、制御回路部21をスルーさせた場合においても、同様に、オシロスコープ45においてモニタ信号S4を観測した。
いずれの構成においても、短パルス信号S1を繰り返し周波数200MHzでパルス幅0.5nsとした。そして、短パルス信号S1を、半導体レーザ13が発光しない程度の小さい振幅で発生させた場合と、半導体レーザ13を発光させるための大きい振幅で発生させた場合とで、それぞれモニタ信号S4を観測した。
【0058】
観測結果として、制御回路部(オフセット除去回路)21を挿入した構成と、RFアンプ12と半導体レーザ13との間をスルーで接続した構成とにおいて、観測したモニタ信号S4を比較して、図8A及び図8Bに示す。図8Aは短パルス信号S1の振幅が小さい場合を示し、図8Bは短パルス信号S1の振幅が大きい場合を示す。
なお、図8A及び図8Bにおいて、縦軸は、観測されたモニタ信号S4をレーザ駆動信号S2の電圧に換算して示している。また、モニタ信号S4には、レーザ駆動信号S2の他に、半導体レーザ13で反射したパルスも含まれており、2.5ns付近及び7.5ns付近のピークがレーザ駆動信号S2に該当する。
【0059】
図8Aより、短パルス信号S1の振幅が小さく、半導体レーザ13が短パルス発光しない程度である状態のときは、両者の構成とも、レーザ駆動信号S2の平均値にオフセットは生じていない。
【0060】
図8Bより、短パルス信号S1の振幅を大きくした状態では、制御回路部(オフセット除去回路)21を挿入した構成では、レーザ駆動信号S2の平均値にオフセットは生じていないため、半導体レーザ13は短パルス発光をする。
これに対して、RFアンプ12と半導体レーザ13との間をスルーで接続した構成では、レーザ駆動信号S2の平均値に負電圧側へのオフセットが生じて、ピーク電圧が5V程度に下がるので、半導体レーザ13は短パルス発光しない。それどころか、半導体レーザにかかる逆電圧が大きくなるため、半導体レーザを劣化させてしまうおそれがある。
【0061】
一方、図5に示した半導体レーザ13を、図7に示した半導体レーザの等価回路に置換して、同様にモニタ信号を観測した。
図8A及び図8Bと同様に観測されたモニタ信号を、図9に示す。
【0062】
図9より、上述したパルス発光していない状態(図8Aを参照)と同じく、制御回路部(オフセット除去回路)21を挿入した構成でも、スルーで接続した構成でも、レーザ駆動信号S2の平均値にオフセットが生じない。
以上の結果から、半導体レーザが短パルス発光する際にインピーダンスが急激に変化するため、レーザ駆動信号の平均値にオフセットが生じることがわかる。
【0063】
なお、本発明のレーザ装置において、図8A、図8B、図9に示したような、半導体レーザで反射したパルスが問題になる場合には、信号発生回路と半導体レーザとの間の適切な箇所に減衰器を設ける。減衰器を設けると、減衰器によって短パルス信号も減衰するため、その分を見越して、信号発生回路から発生させるパルス信号の振幅を大きくしたり、RFアンプ等の増幅回路の増幅率を大きくしたりする。
【0064】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0065】
10,30,31 光学ピックアップ、11 信号発生回路、12 RFアンプ、13 半導体レーザ、14 コリメータレンズ、15 ビームスプリッタ、16,17,17A,17B 対物レンズ、18,18A,18B フォトディテクタ、20 光ディスク、21 制御回路部、22 Bias Tee、23 DC電源、40 レーザ装置、41 治療または加工対象物、45 オシロスコープ、C,C1,C2 コンデンサ、L コイル、R,R1,R2 抵抗、S1 短パルス信号、S2 レーザ駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザを駆動するためのパルス信号を発生させる信号発生回路と、
前記パルス信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路と前記半導体レーザとの間に設けられ、前記パルス信号の交流成分は通過させて、前記パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、前記パルス信号を制御する、制御回路部とを含む
レーザ装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記増幅回路及び前記半導体レーザに直列に接続されたコンデンサと、前記コンデンサの一端に接続されたコイルとから構成されている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記制御回路部の外部から、直流電圧を前記制御回路部に印加する直流電源部をさらに含む、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記制御回路部において、前記パルス信号の直流成分を全て除去して、前記パルス信号の平均値を0に制御する、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
光記録媒体にレーザ光を照射して、前記光記録媒体への情報の記録又は前記光記録媒体に記録された情報の再生を行う、光学ピックアップであって、
半導体レーザと、
前記半導体レーザを駆動するためのパルス信号を発生させる信号発生回路と、
前記パルス信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路と前記半導体レーザとの間に設けられ、前記パルス信号の交流成分は通過させて、前記パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、前記パルス信号を制御する、制御回路部と、
前記半導体レーザからのレーザ光を集光して前記光記録媒体に照射させる対物レンズと、
前記光記録媒体からの戻り光を受光する受光部とを含む
光学ピックアップ。
【請求項6】
前記光記録媒体が光ディスクである請求項5に記載の光学ピックアップ。
【請求項7】
光ディスクにレーザ光を照射して、前記光ディスクへの情報の記録又は前記光ディスクに記録された情報の再生を行う、光ディスク装置であって、
半導体レーザと、前記半導体レーザを駆動するためのパルス信号を発生させる信号発生回路と、前記パルス信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路と前記半導体レーザとの間に設けられ、前記パルス信号の交流成分は通過させて、前記パルス信号の直流成分の少なくとも一部を除去して、前記パルス信号を制御する、制御回路部と、前記半導体レーザからのレーザ光を集光して前記光ディスクに照射させる対物レンズと、前記光ディスクからの戻り光を受光する受光部とを含む光学ピックアップと、
前記光ディスクを回転させる光ディスク駆動部と、
前記光学ピックアップを前記光ディスクに対して移動させる光学ピックアップ駆動部と、
前記受光部からの光出力信号の信号処理を行う信号処理部とを含む
光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−165273(P2011−165273A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27362(P2010−27362)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】