説明

レーザ電圧画像化状態マッピングのためのシステム及び方法

【課題】DUT内の様々な能動デバイスの応答についてのさらなる情報を非侵入的に得る。
【解決手段】DUT260をレーザプロービングするための装置及び方法が開示されている。システムは、DUTにおけるデバイスのレーザ電圧による画像化状態マッピングを可能にする。DUTが、能動デバイスに変調させるテスト信号240を受信している間に、DUTの選択領域が照射される。DUTから反射された光は収集され、電気信号に変換される。位相情報が電気信号から抽出され、その位相情報から前記選択領域と空間的に対応する2次元画像が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射を用いて集積回路を調査するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2009年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/174962号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体が信頼でき、参照することにより本明細書中に組み込まれるものである。
【0003】
プロービングシステムは、集積回路(IC)の設計及びレイアウトを検査及びデバッグするための技術で用いられている。ICをプロービングするための様々なレーザに基づいたシステムが従来技術で知られている。いくつかの従来技術の説明が本明細書中に記載されるが、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1ないし3を検討することも読者に奨励する。
【0004】
さらなる関連情報は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる非特許文献1ないし12及び非特許文献13の中に見い出し得る。
【0005】
知られているように、例えば、自動試験装置のような、自動試験評価(ATE)テスタとしても知られている商用の試験プラットホームが、ICのデバッグ及び試験の間、試験されるICデバイス(DUT)に供給されるテストパターン(試験ベクトルとも呼ばれる)を生成するために用いられる。そのとき、様々なシステム及び方法が、DUTの試験ベクトルに対する応答を試験するために用いられ得る。そのような方法の1つは、一般的に、レーザ電圧プロービング(LVP)と呼ばれている。LVPのようなレーザに基づいたシステムがプロービングに用いられるときには、DUTはレーザによって照射されて、DUTから反射された光は、プロービングシステムによって集められる。レーザビームがDUTに当たると、レーザビームは、試験ベクトルに対するDUTの様々な要素の応答によって変調される。このことは、自由な電荷密度の電気的な変調、及び、IC材料、最も一般的にはシリコン、の屈折率及び吸収係数の合わさった乱れが原因である。従って、反射光の分析は、DUTの様々なデバイスの動作についての情報を提供する。
【0006】
図1は、従来技術に係るレーザに基づいた電圧プローブシステムのアーキテクチャの主要な構成要素100を描いた概略図である。図1において、破線の矢印は、光の経路を表している一方、実線の矢印は、電気信号の経路を表している。曲線によって表された光の経路は、一般的に、光ファイバケーブルを用いて作られている。プローブシステム100は、この特定の例においてはデュアルレーザ光源であるレーザ光源DLS110、光学載置台112、及び、データ取得分析装置114を備えている。光学載置台112は、DUT160を搭載するための設備を含んでいる。通常のATEテスタ140は、DUT160へ刺激信号を提供して、DUT160からの応答信号142を受信し、さらに、トリガ及びクロック信号144をタイムベースボード(Time base board)155に提供し得る。テスタからの信号は、一般的に、テストボード、DUTボード(アダプタプレート)、並びに、これらの全ての構成要素を接続する、様々なケーブル及びインタフェースを経由して、DUTに伝達される。タイムベースボード155は、信号取得を、DUTの刺激及びレーザパルスと同期させる。ワークステーション170は、信号取得ボード150、タイムベースボード155、及び、光学載置台112からのデータを制御し、受信し、処理し、表示する。
【0007】
次に、プローブシステム100の様々な要素を、さらに詳細に説明する。DUTの試験においては、時間分解能の重要性が高いので、図1の実施形態では、従来技術のパルスレーザを使用している。このレーザのパルス幅は、システムの時間分解能を決定する。デュアルレーザ光源110は、2つのレーザ光源を有する。すなわち、デュアルレーザ光源110は、幅10−35ピコ秒のパルスを発生させるために使用される、パルスモードロックレーザMML104の光源、及び、幅約1マイクロ秒のパルスを発生させるために、外部からゲート制御され得る連続波レーザ光源CWL106で構成されている。MLL104光源は、固定周波数、典型的には100MHzで作動すると共に、タイムベースボード155の位相同期回路(PLL)を経由して、DUT160に提供される刺激142及び、ATEテスタによって提供されたトリガ及びクロック信号144と同期されなければならない。DLS110の出力は、光ファイバケーブル115を使用している光学載置台112に伝達される。次に、レーザビームは、ビームオプティクス125で処理され、ビームオプティクス125は、レーザビームを導いて、DUT160の選択部分を照射させる。ビームオプティクス125は、レーザ走査顕微鏡(LSM130)と、ビーム操作オプティクス(Beam manipulation optics)(BMO135)とを有する。対物レンズ等のような光学構成が従来通りの特定の要素は、図示されていない。一般的に、BMO135は、ビームを、要求された形状、焦点、偏光等に処理するために必要な光学素子を有する。一方、LSM130は、DUTの特定の領域上にビームを走査するために必要な素子を有する。ビームを走査することに加えて、LSM130は、レーザビームをLSM及び対物レンズの視野内の任意の箇所に向けるためのベクトル指示モード(vector-pointing mode)を有している。X−Y−Zステージ120は、静止したDUT160に対してビームオプティクス125を移動させる。ステージ120及びLSM130のベクトル指示モードを使用することによって、DUT160の関心のあるどんなポイントでも照射し、調査し得る。
【0008】
DUT160をプロービングするために、ATE140は、タイムベースボード155の位相同期回路に提供されたトリガ及びクロック信号と同期して、DUTに刺激信号142を送信する。位相同期回路は、MLL104を、その出力パルスがDUTへの刺激信号142と同期するように制御する。MLL104は、刺激されているDUTにおける関心のある特定デバイスを照射するレーザパルスを放射する。DUTからの反射光は、ビームオプティクス125によって集光されると共に、光ファイバケーブル134を経由して光検出器138に伝達される。反射したビームは、刺激信号に対するデバイスの反応により特性を変化させる。レーザ出力の変動を補正することを目的として、入射レーザ出力を監視するために、例えば、光学載置台112は、MLL104入射パルスの一部を光ファイバケーブル132を経由して光検出器136にそらす手段を有している。光センサ136,138の出力信号は、信号取得ボード150に送信され、次に、その信号取得ボード150は、信号をコントローラ170に送信する。タイムベースボード155の位相同期回路の処理によって、コントローラ170は、DUT160の刺激信号142に対してMLL104パルスの正確な時間位置を制御する。この時間位置を変更すると共に、光センサ信号を監視することによって、コントローラ170は、刺激信号142に対するDUTの時間的応答を分析することができる。分析の時間分解能は、MLL104のパルス幅に依存する。
【0009】
連続波LVPで実行する技術も知られている。その技術では、連続波レーザを用いてDUTのデバイスが照射され、連続的な反射光(continuously reflected light)が収集される。連続反射光は、様々な刺激信号に対する能動デバイスの応答、即ち、切り替えに関するタイミング情報を含んでいる。反射光信号は、光検出器、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)によって、連続的に電気信号に変換されると共に、増幅される。タイミング情報は、電気信号に含まれると共に、デバイスの検出された変調を表す。タイミング情報は、オシロスコープを用いて時間領域、又はスペクトラムアナライザを用いて周波数領域で表示され得る。
【0010】
最近、レーザ電圧画像化(laser voltage imaging)の技術は発展し、DUTの領域内の異なったポイントでの電圧に対応する2次元のグレースケール画像を提供することができる。より具体的には、LSMは、DUTの領域をラスタスキャンするために用いられ、その領域内の各ポイントで、反射光信号が収集され、単一のデータ値を提供する。つまり、周波数帯域全体のスペクトルを提供するというよりはむしろ、各ポイントで、特定の周波数スペクトルにおける信号の振幅がスペクトラムアナライザにより得られる。実際には、スペクトラムアナライザは、関心のある単一の周波数(ゼロスパンと呼ばれる)を抽出し、その周波数で受信した信号の強さに正比例する出力値を提供するように設定される。従って、LSMがDUTの選択領域を走査しながら、関心のある周波数に活性がない場合には、スペクトラムアナライザは、低い出力を提供する又は出力が無い一方、その周波数に活性がある場合には、スペクトラムアナライザは、高い出力を提供する。つまり、関心のある選択された周波数での信号の強さに比例する振幅を有する出力信号を提供する。この出力は、走査領域における各ポイントでのデバイス活性に対応するグレースケールレベルを示す、走査領域のマップを生成するために用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5208648号
【特許文献2】米国特許第5220403号
【特許文献3】米国特許第5940545号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Yee,W.M.ら、Laser Voltage Probe(LVP):A Novel Optical Probing Technology for Flip-Chip Packaged Microprocessors、International Symposium for Testing and Failure Analysis(ISTFA)、2000年、p.3−8
【非特許文献2】Bruce,M.ら、Waveform Acquisition from the Backside of Silicon Using Electro-Optic Probing、International Symposium for Testing and Failure Analysis(ISTFA)、1999年、p.19−25
【非特許文献3】Kolachina,S.ら、Optical Waveform Probing - Strategies for Non-Flipchip Devices and Other Applications、International Symposium for Testing and Failure Analysis(ISTFA)、2001年、p.51−57
【非特許文献4】Soref,R.A.及びB.R.Bennett、Electrooptical Effects in Silicon、IEEE Journal of Quantum Electronics、1987年、QE−23(1)、p.123−9
【非特許文献5】Kasapi,S.ら、Laser Beam Backside Probing of CMOS Integrated Circuits、Microelectronics Reliability、1999年、39、p.957
【非特許文献6】Wilsher,K.ら、Integrated Circuit Waveform Probing Using Optical Phase Shift Detection、International Symposium for Testing and Failure Analysis(ISTFA)、2000年、p.479−85
【非特許文献7】Heinrich H.K.、Picosecond Noninvasive Optical Detection of Internal Electrical Signals in Flip-Chip-Mounted Silicon Integrated Circuits、IBM Journal of Research and Development、1990年、34(2/3)、p.162−72
【非特許文献8】Heinrich H.K.、D.M.Bloom及びB.R.Hemenway、Noninvasive sheet charge density probe for integrated silicon devices、Applied Physics Letters、1986年、48(16)、p.1066−1068
【非特許文献9】Heinrich H.K.、D.M.Bloom及びB.R.Hemenway、Erratum to Noninvasive sheet charge density probe for integrated silicon devices、Applied Physics Letters、1986年、48(26)、p.1811
【非特許文献10】Heinrich H.K.ら、Measurement of real-time digital signals in a silicon bipolar junction transistor using a noninvasive optical probe、IEEE Electron Device Letters、1986年、22(12)、p.650−652
【非特許文献11】Hemenway,B.R.ら、Optical detection of charge modulation in silicon integrated circuits using a multimode laser-diode probe、IEEE Electron Device Letters、1987年、8(8)、p.344−346
【非特許文献12】A.Black、C.Courville、G Schultheis、H.Heinrich、Optical Sampling of GHz Charge Density Modulation in Silicon Bipolar Junction Transistors、Electronics Letters、1987年、23巻、15号、p.783−784
【非特許文献13】Kindereit U、Boit C、Kerst U、Kasapi S、Ispasoiu R、Ng R、Lo W、Comparison of Laser Voltage Probing and Mapping Results in Oversized and Minimum Size Devices of 120nm and 65nm Technology、第19回European Symposium on Reliability of Electron Devices,Failure Physics and Analysis(ESREF 2008)、2008年、48、1322−1326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記システム及び方法は、DUTの機能性についての有用な情報を提供する一方、DUT内の様々な能動デバイスの応答についてのさらなる情報を非侵入的(non-invasively)に得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の要約は、本発明のいくつかの側面及び特徴の基本的な理解を提供するために記載されている。この要約は、本発明の概要よりも広いものではなく、特に本発明の要部や重要な要素を明らかにしたり、本発明の範囲を線引きすることを意図するようなものではない。その唯一の目的は、以下で提示されるさらに詳細な説明に対する前置きとして簡単な形で本発明のいくつかの概念を提示することである。
【0015】
本発明の様々な実施形態は、DUTのレーザ電圧画像化状態マッピングのための装置及び方法を提供する。
【0016】
DUTのレーザプロービングのための装置及び方法が開示されている。システムは、DUT内のデバイスのレーザ電圧画像化状態マッピングを可能にする。DUTが、ある能動デバイスを切り替えるための試験信号を受信している間、DUTの選択領域が照射される。該DUTから反射された光は、収集され、電気信号に変換される。その電気信号から位相情報が抽出され、その位相情報から選択領域と空間的に対応する2次元画像が生成される。
【0017】
本発明の他の側面及び特徴は、本明細書中に記載された様々な実施形態の記載から明らかになり、その側面及び特徴は、添付された特許請求の範囲で請求されたような本発明の意図及び精神の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、従来技術に係るレーザに基づいた電圧プローブシステムの主要な構成要素を描いた概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るシステムの主要な構成要素を示した図である。
【図3】図3は、選択されたポイントA及びBにおける信号の波形を示した図である。
【図4】図4は、選択されたポイントA及びBの信号の波形並びに加えられた干渉信号との干渉を示した図である。
【図5】図5は、「RF干渉」信号がAPDからの「調整された」信号に加えられ、スペクトラムアナライザに印加される、本発明の実施形態を示した図である。ここにおいて、「調整された」とは、増幅された、シフトされた、電流から電圧及び電圧から電流への変換されたことなどを意味する。
【図6】図6は、図5の実施形態の変形例に係る本発明の実施形態を示す。
【図7】図7は、「RF干渉」信号がAPDからの「調整された」信号に加えられると共に、スペクトラムアナライザに供給される、本発明の別の実施形態を示す。
【図8】図8は、「RF干渉」信号がAPDからの「調整された」信号に加えられると共に、スペクトラムアナライザに供給される、本発明のさらに別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、図に例示された特定の実施形態を参照しながら、本明細書中に説明されている。但し、図に示した様々な実施形態は単なる例示であり、添付された特許請求の範囲に定義された本発明を制限するものではない。
【0020】
本発明の様々な実施形態は、従来のICの設計知識を除いた、DUTの選択領域内における活性トランジスタ(active transistors)の相対極性を区別するための、非侵入でかつ、非接触の方法のための装置及び方法を提供する。これらのシステム及び方法は、本明細書中で、DUTのレーザ電圧画像化(laser voltage imaging(LVI))状態マッピング(state mapping)と呼ばれる。前記方法論は、DUT内の様々な能動デバイスの位相情報を提供することにより、従来技術のシステムを増補する。位相情報は、DUTの走査領域のマップの形で提供され得る。マップでは、走査領域に配設された能動デバイス、即ち、トランジスタの位相情報を示すためにグレースケールが用いられる。このことは、回路設計が利用可能でないときにさえ、ICの試験及びデバッグを可能にする。
【0021】
本発明の一実施形態によると、ロックインアンプは、DUT内の関心のある領域のLVI状態マッピングを実行するために用いられる。この実施形態は、反射レーザ光から位相情報を抽出することによって、様々な活性トランジスタの相対的な論理状態を観察するための能力を提供する。一実施形態によると、ロックインアンプは、当該ロックインアンプによって内部的に生成される又は外部から当該ロックインアンプに供給される参照信号に対する反射信号の位相を測定するために使用される。一つの実装例によると、このことは、従来のLVIのスペクトラムアナライザをロックインアンプに置き換えることによって達成される。
【0022】
図2は、位相検出及びマッピングを実行するための本発明の実施形態に係るシステムの概略図である。図2において、ロックインアンプは、従来技術で知られているシステムにおいて使用されているスペクトラムアナライザの代わりに用いられる。レーザ光源210は、入力光ファイバ215に送られるレーザビーム(実線矢印で示された)を提供する。光学I/Oモジュール214は、当該ビームを成形して、調整されたビームをLSM230へ提供する。LSM230は、DUT260の選択領域の上で調整されたビームを走査する。この特定の例では、LSM230からDUT260への経路には、走査レンズ、反射鏡、チューブレンズ、波長板(waveplate)、及び対物レンズを含んでいる。これらの素子は、DUTの選択された領域にわたってレーザビームを適切にスキャンするために設けられるが、それ以外の素子も、特定の設計のために必要に応じて使用され得る。
【0023】
レーザビームがDUT260の選択領域に亘って走査しながら、刺激信号240が、DUT260内の能動素子がビームを変調するように、即ち、DUT内のトランジスタが切り替わるように、DUT260に印加される。刺激信号240は、ファンクションジェネレータ、ATE等によって生成され得る。能動デバイスが切り替わるときに、能動デバイスは、デバイスを作る材料、例えば、シリコンの吸収係数及び屈折率を変化させ、反射されるレーザビーム(破線矢印で示された)の振幅は、それに相応して変調される。反射されたビームは光学素子によって集光されて、出力ファイバ232に導かれる。出力ファイバ232は、ビームをセンサへ導く。この特定の例では、アバランシェフォトダイオードAPD236が使用されているが、例えばPINセンサのような他の光センサを用いてもよい。APDの出力信号は、トランスインピーダンスアンプ(trans-impedance amplifier)237に入力され、このTIAの出力は、DC成分とAC成分を出力するバイアスティ(ダイプレクサ)250のような信号分離器に入力される。DC成分は、ビデオアンプ252によって増幅され、DUTの走査領域の画像を生成するためのフレームグラバ254に送られる。(RF周波数の)AC成分はRFアンプ273によって調整され、それからロックインアンプ270に送信される。ロックインアンプ270の出力は、ビデオアンプ256によっても増幅され、走査領域の位相画像を生成するために使用される。以下にさらに十分に記載されるように、ロックインアンプのX/Y又はR/Θ出力は、走査領域のグレースケール画像に変換される。ここで、グレースケールの値は、DUTの走査領域における能動デバイスの位相を表している。
【0024】
次に、ロックインアンプを利用する本発明の実施形態の動作について説明する。ロックインアンプのX及びY値は、信号の振幅及び相対位相に比例する、即ち、
X∝VsigcosΘ
Y∝VsigsinΘ
である。ここで、Vsigは関心のある信号(反射レーザビーム)の振幅であり、Θは関心のある信号と参照信号(例えば、参照クロック信号)との間の位相差、即ち、Θ=Θsig - Θrefである。反対の状態又は極性に調整された一対のトランジスタにとっては、X又はY出力値は、入力参照周波数の位相にかかわらず、反対の極性になるであろう。例えば、トランジスタAがΘで変調している場合には、トランジスタBがΘ = Θ +/- 180°(非同期)で変調している。それゆえ、トランジスタAに対するX値は、cosΘに比例する一方、トランジスタBに対するX値は、cosΘ+/-180°に比例する。つまり、
∝VsigcosΘ
∝Vsigcos(Θ1 +/- 180°) = -VsigcosΘ = - X
同様に、
∝VsigsinΘ
∝Vsigsin(Θ1 +/- 180°) = -VsigsinΘ = - Y
である。
それゆえ、相対論理状態がロックインアンプのX又はY出力から抽出され得る。但し、この論理体系は、同期及び非同期検出に制限されないことに注意すべきである。むしろ、2つのトランジスタ間の位相の違いが90°よりも大きい限り、絶対振幅が異なっていたとしても、これらの2つのトランジスタのX及びY値が反対極性のものになる。ロックインアンプのX又はY出力は、グレースケール画像に変換される。ここで、各ピクセルの値は、その空間位置における位相に対応する。
【0025】
別の実施形態によると、ロックインアンプのRとΘ値の組み合わせが使用される。この実施形態によると、
R = Vsig = √(X+Y
Θ = tan-1(Y/X)
Θは、関心のある信号と参照信号との間の位相差である。但し、レーザビームがICにおいてトランジスタがない領域を走査するときには、反射するRF電気信号がなく、Θ値は、乱雑になる。結果として、ロックインアンプのΘ出力電圧は乱雑であり、この電圧は、ノイズとしてみなされる。このことは、トランジスタ由来のΘ値をΘ「ノイズ」によって覆い隠すようにする。それゆえ、一実施形態によると、R出力は、Θ出力電圧値が用いられるべきか否か、即ち、Θ値が乱雑であるか否かを決定するために監視される。反射したRF電気信号は、Rがゼロでない値になると、Θ値をICの走査領域における特定の画素に用いることができる。他方、反射したRF電気信号が存在しない場合には、Rがほぼゼロ値となり、Θ値を特定のピクセルに使用することができない。一例では、Θ値の使用を許可する/許可しないR値の大きさに、閾値が設定される。
【0026】
上記実施形態によると、反対の状態に変調する一対のトランジスタにおいては、Θ値の差は、入力参照周波数の位相にかかわらず、一定の180°(ΔΘ = Θ - Θ = 180°)となる。ロックインアンプは、典型的には、測定された+/−180°の位相差に対応するように、+/−Vのアナログ電圧を出力する。位相差は180°なので、アナログ電圧の振幅差は、V(ΔV = V - V = V)となる。そして、2つのトランジスタ間の相対極性は、様々な方法を使用して、VとVとの間の閾値を設定することによって抽出され得る。
【0027】
本発明の様々な他の実施形態によると、LVIの相対論理状態を観察する能力は、「RF干渉」を取得システムへ導入し且つ、その結果として生じる信号をスペクトラムアナライザへ供給することによって明らかにされる。取得システムという言葉は、APD、TIA、バイアスティ、RFアンプ、及びスペクトラムアナライザの何れか1つ又はそれらの組み合わせを含む意味であり、すなわち、「RF干渉」は、これらの何れか又はこれらの接続ポイントに結合され得る。本明細書では、この「RF干渉」の周波数スペクトルを「干渉」スペクトルと呼んでおり、それは、図2の実施形態中の参照信号といくぶん類似した機能を発揮する。以下の実施形態では、掃引同調されたスーパーヘテロダインスペクトラムアナライザの使用例が図示されているが、同様の結果は、リアルタイムスペクトラムアナライザ(FFTスペクトラムアナライザとも呼ばれる)や、ベクトルシグナルアナライザ等のような他の手段を用いても達成され得る。
【0028】
効果的な結果のためには、「RF干渉」を、分析下の内部信号と同じ周波数とし、同期させるべきである。これらの要求を満たす場合は、この「RF干渉」は、分析下の内部信号を運ぶトランジスタの検出された変調(取得システムにより光から電気へ変換された変調)と建設的に又は破壊的に干渉する。破壊的な干渉により、電気信号の振幅が、「RF干渉」のみの電気信号の振幅よりも小さくなる場合には、結果として生じるスペクトルは、「干渉」スペクトルよりも少ないエネルギを有することになるだろう。最適/最大の建設的な又は破壊的な干渉のために、「RF干渉」信号が、関心のある信号と同期及び非同期することを確実にすべく、「RF干渉」信号の位相シフトが行われてもよい。
【0029】
ここで、選択されたポイントA及びBにおける信号の波形を示している図3を参照することにする。この例において、ポイントA及びポイントBが同じインバータの例であって、直列に接続されている場合を考える。このことは、ポイントA及びポイントBにおける信号が互いに対し非同期又は反対の論理状態であることを意味する。現実には、信号レベルがサブマイクロボルトから数百マイクロボルトと、非常に低く、所望のSNRを達成するために平均化が必要であるが、取得システムにより検出された変調が、図3に示されている。この図では、「信号」という言葉は、検出された光学変調の電気信号を指す。通常のスペクトラムアナライザでは、両方の波形が同じ振幅を有しているので、関心のある周波数のパワースペクトルは同じである。つまり、ポイントAとポイントBとの間に差がない。
【0030】
本発明の実施形態を使用すると、上記変調した信号と同じ周波数で且つ同期もしている「RF干渉」電気信号が取得システムに導入される場合には、ポイントA及びBにおいて検出した変調の電気信号は、この導入された信号と干渉する。そのような状況が、図4に示されている。fintとして示され且つ、振幅x a.u.を有する「RF干渉」信号がポイントAの信号(大きさx a.u.を有する)と干渉する場合には、結果として生じる電気信号は、波形Σf+Aによって示されるように、合計した振幅、即ち、2x a.u.を有する。一方、干渉信号fintがポイントBの信号と干渉する場合には、結果として生じる電気信号は、波形Σf+Bによって示されるように、ゼロ、即ち、0 a.u.となる。それゆえ、スペクトラムアナライザが測定する関心のあるスペクトルでは、3つの異なった振幅をとるであろう。
-ポイントAでの2x a.u.
-活性がない(RF干渉信号のみが測定される)場所でのx a.u.
-ポイントBでの0 a.u.
これをグレースケールレベルに標準化すると、ポイントAは白色画素に、活性のないポイントは灰色画素(背景レベル)、ポイントBは黒色画素に見え、これによりポイントAとBとの間での相対的な論理状態マッピングを提供する。
【0031】
上述のように、干渉信号の導入は、取得システムの異なったポイントで実行され得る。テストセル(刺激、DUT等)から放出された「RF干渉」の電磁波がある程度の量存在している場合は、「RF干渉」信号は、例えば、電気コネクタを通じて、又は、アンテナによる受信などの様々な方法により収集され得る。「RF干渉」信号は、次に、様々な方法で、例えばサミングアンプ/電圧加算器を用いて、又は、「RF干渉」電磁波の意図的な送信を通じて、又は、簡単な電気的なT結線を通じて、取得器に入力され得る。
【0032】
「RF干渉」の収集及び入力の態様に関係なく、収集された「RF干渉」信号は(上記の具体例に基づいて簡単に言えば)ゲインを調整される必要がある。プログラマブルRFアンプは、信号がどのように収集されたかによって、収集された「RF干渉」信号の振幅を増幅又は減衰することが求められる。「RF干渉」信号は、最大の干渉を可能にするために位相が調整されてもよい。分析下の特定の信号に対して「RF干渉」信号の位相がわずかにずれていることが原因で、ゲインの調整によっては十分な建設的又は破壊的な干渉を達成できない場合には、「RF干渉」信号を位相シフトする必要があり得る。
【0033】
図5は、「RF干渉」信号がケーブル(電気信号)又はアンテナ(RF電磁波)を通じて収集された、本発明の実施形態を示している。RF干渉は、DUT、試験器(例えば、ATE)、テスタボード、DUTボード、又はこれらの構成要素のインタフェースとなるケーブルから収集され得る。「RF干渉」信号は、RFアンプの後であって、サミングアンプ又は電圧加算器で加算される前に、調整(増幅/減衰及び位相シフト)される。図5の実施形態の照射及びビームの反射を収集する部分は、図2のそれと同様であり、それゆえここでは再び説明しない。続いて、図2の実施形態と異なる要素について説明する。最も顕著なことは、図5では、図2のロックインアンプがスペクトラムアナライザ572によって置換されていることである。しかしながら、スペクトラムアナライザが位相を示す信号を検出し、生成できるように、以下の要素が加えられている。すなわち、干渉信号がアンテナ580又はケーブル582から収集される(アンテナ及びケーブルの両方がこの実施形態中に示されているが、これは単に説明のためであり、一方だけ又は他方だけ又はその両方を含んでいる場合があってもよい)。干渉信号は、信号調整器571によって調整、即ち、増幅又は減衰され、次に、フェイズシフタ570によって位相をシフトされる。調整された干渉信号は、次に、サミングアンプ又は電圧加算器574に入力され、APDの調整信号と加算される。その出力は、次に、スペクトラムアナライザ572に供給される。スペクトラムアナライザの出力は、ビデオアンプに供給される。ビデオアンプは、その信号をデータ取得モジュールに供給する。この例では、フレームグラバは、DUTの走査領域内の能動素子の位相を示すグレースケール画像マッピングを生成するために使用される。もちろん、他のデータ取得カードやモジュールを用いてもよい。
【0034】
図6は、図5の実施形態の変形例である、本発明の実施形態を示す。特に、図6では、「RF干渉」信号の加算がRFアンプ273の前に実行される。つまり、調整された干渉信号は、サミングアンプ又は電圧加算器674によって、バイアスティ250からのRF信号と加算される。加算器674の出力は、次に、RFアンプ273によって増幅され、それから、スペクトラムアナライザに入力される。
【0035】
図7は、図5の実施形態の変形例である、本発明の実施形態を示す。特に、図7では、干渉信号をAPD信号の電気経路に放射することによって、「RF干渉」信号の加算が行われる。つまり、調整された干渉信号は、RFゲイン/減衰器570及び/又はフェーズシフタ571によってアンテナ700に印加される。アンテナ700は、その放射がAPDからの信号の電気経路に向かい、TIA237、バイアスティ250及び/又はアンプ273の信号によって検波されて、該信号に干渉するように、配設される。こうして、干渉信号は、スペクトラムアナライザ572に入力される信号に加算される。
【0036】
図8は、図5の実施形態の変形例である、本発明のさらに別の実施形態を示す。特に、図8では、「RF干渉」信号の加算は、干渉信号を調整されたAPD信号にT結線結合器を用いて連結することによって行われる。つまり、調整された干渉信号は、アンプ273から調整信号を受信もするT結線に印加される。こうして、干渉信号は、スペクトラムアナライザ572に入力される信号に加算される。
【0037】
本発明は、その特別な実施形態に関して記載されているが、それらの実施形態に制限されるものではない。特に、様々な変形例及び改良例は、添付された特許請求の範囲により定義されている本発明の精神及び意図から外れない限りにおいて、当業者により実行され得る。加えて、上述の従来技術の参考箇所の全てが参照により本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被テストデバイス(DUT)における能動デバイスの状態マッピングのための方法であって、
能動デバイスに変調させるテスト信号をDUTが受信している間に、その中に少なくとも2つの能動デバイスを有する、DUTにおける選択領域を照射する工程と、
前記選択領域からの反射光を収集する工程と、
前記反射光を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号から位相情報を抽出する工程と、
前記位相情報から、前記選択領域と空間的に対応する2次元画像を生成する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記位相情報を抽出する工程は、前記電気信号と干渉信号を混合する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記混合する工程は、前記電気信号をロックインアンプに印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記2次元画像を生成する工程は、前記ロックインアンプの出力信号をデータ取得モジュールに印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記出力信号を印加する工程は、前記ロックインアンプのX又はY出力の1つを印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
前記出力信号を印加する工程は、前記ロックインアンプのR−Θ出力を印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記Rの閾値を設定する工程と、
各画素に対し、検出された前記Rの振幅を検査して、検出された振幅Rが前記閾値よりも高いときには、その画素に対してΘの値を使用する一方、検出された振幅Rが前記閾値よりも低いときには、その画素に対してΘの使用を許可しない工程とをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、
前記混合する工程は、前記電気信号及び前記干渉信号をスペクトラムアナライザに印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
DUT、テスター、テストボード、DUTボード、及びケーブルのうちの少なくとも1つにより放射された電磁放射線を収集して干渉信号を生成する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記混合する工程の前に、前記干渉信号を調整する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記調整する工程は、増幅工程、減衰工程、及び位相シフト工程のうちの少なくとも1つを有していることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、
前記混合する工程は、サミングアンプ及び電圧加算器の何れか一つにおいて、前記電気信号及び前記干渉信号を合成する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記合成する工程の前に、前記電気信号をRF増幅する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法において、
前記混合する工程は、前記干渉信号を前記電気信号の電気経路に放射する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法において、
前記混合する工程は、前記電気信号及び前記干渉信号をT結線に印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項8に記載の方法において、
前記2次元画像を生成する工程は、前記スペクトラムアナライザの出力をデータ取得モジュールに印加する工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項17】
ICである被テストデバイス(DUT)を試験するためのシステムであって、
レーザビームを生成するレーザ光源と、
前記レーザビームを調整して、前記DUTの選択領域上で該レーザビームを走査するための光学素子と、
前記DUTからの反射ビームを収集するための光学素子と、
前記反射ビームを電気信号に変換するためのセンサと、
干渉信号を前記電気信号に混合して、前記反射ビームの位相情報を抽出するための電気部品と、
前記位相情報から2次元画像を生成して、それにより前記DUTの選択領域の位相マップを提供するためのデータ取得モジュールとを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記電気部品は、ロックインアンプを有していることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記電気部品は、干渉信号発生器と、前記電気信号と前記干渉信号とを合成して、合成された信号を生成するための合成器と、該合成された信号を受信するスペクトラムアナライザとを有していることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記合成器は、サミングアンプ、電圧加算器、放射アンテナ、T型コネクタのうちの何れか1つを有していることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−271307(P2010−271307A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−106569(P2010−106569)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508261219)ディーシージー システムズ インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】