説明

レーダ装置及び測角装置

【課題】 マルチパス波のような相関の高い信号を含む複数の入射波の到来方向を、アンテナのビーム幅で決まる角度分解能以上の精度で推定し、かつ全体の演算量を低減する。
【解決手段】 比較的広い探索範囲に対して粗い探索グリッド間隔を用いて最尤推定測角処理を行い、その結果に基づいて探索領域を絞る探索範囲更新処理部106bとともに、前回よりも狭い間隔による探索グリッドを設定する探索角度分解能更新処理部106cを備え、再び最尤推定測角処理を行うことによって測角精度を逐次的に向上していくこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入射波の到来方向を測定する測角装置に係るものであり、特にパッシブセンサアレイを用いて最尤推定原理に基づく入射角到来方向推定処理を行う技術に関するものである
【背景技術】
【0002】
アンテナのビーム幅で決まる角度分解能以上の精度で入射波の到来方向を推定する測角方法の一つとして、パッシブセンサアレイを用いて最尤推定原理に基づいて高分解能に入射波の到来方向を推定する方式がある。この方式は、まず波源の存在が予想される位置の近傍の領域に細かい探索グリッドを定義して、「K個の波源が探索グリッド上のどの点に存在すると仮定すれば最も受信信号の状態とつじつまが合うか」を探索する手法である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Ilan Ziskind and Mati Wax, "Maximum Likelihood Localization of Multiple Sources by Alternating Projection,"IEEE Tans. On Acoustics, Speech, and Signal Processing, Vol.36, No.10, Oct. 1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法では、探索グリッドの間隔(または「探索角度分解能」)を細かくすることにより、測角精度を向上できるが、演算量が爆発的に増える問題がある。この問題に対する対策として、演算量増加を抑えるため、局所探索を利用する方式が知られている。しかしこの方法では、局所解に陥り、測角精度が大幅に劣化する可能性がある。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。すなわち、最尤推定原理に基づく入射角到来方向推定処理を用いて測角精度を維持しつつも、演算量を削減して計算機資源の節約、処理性能の向上を達成するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るレーダ装置は、波源からの入射波を受信する受信アンテナと、
受信アンテナが受信した受信信号のサンプル値を記憶する記憶部と、
外部受信アンテナに到来する入射波の波源が存在する領域に探索範囲と探索角度分解能を設定する探索範囲設定手段と、
前記探索範囲より前記探索角度分解能に基づいて得た部分領域から、その部分領域に前記波源が存在するとすれば前記受信信号の状態に最も符合する部分領域を、前記波源が存在する領域として選択し出力する最尤推定測角手段と、
を備えるレーダ装置であって、
前記探索範囲設定手段は、前記最尤推定測角手段が出力した前記波源が存在する部分領域の近傍に絞って、新たな探索範囲を設定するとともに、前記探索角度分解能よりも細かい新たな探索角度分解能を設定するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るレーダ装置によれば、まず比較的広い探索範囲に対して粗い探索グリッド間隔を用いて最尤推定測角処理を行い、その結果に基づいて探索領域を絞ると共に探索グリッド間隔を狭めて、再び最尤推定測角処理を行うことによって測角精度を逐次的に向上していくこととしたので、演算量を削減しながらアンテナのビーム幅で決まる角度分解能以上の精度で推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態による測角機能を有するレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において、受信アンテナ101は、観測領域をカバーするようにビームを走査するアンテナであって、走査の方法としては機械的な方法によるものの他、あるいは、受信アンテナ101をアレイアンテナの構成として、シングルビームを電子的に走査する方式、または複数アンテナを用いてマルチビームを形成することによって観測領域をカバーする方式、またはマルチビームのアンテナを機械的に走査する方式を採用しても良い。アンテナ方式に関しては上記のいずれの方式を採用しても本実施の形態1で説明するその他の処理を適用することが可能であるが、以下では、図3に示すように、観測領域をM本のビームを用いて観測する場合に一般化して説明する。また、M本のビームのビームパターンは事前の計測などにより既知であるものとする。
【0009】
受信機102は、受信アンテナ101により受信された信号に対して検波処理を施す部位である。A/D変換器103は受信機102が出力するアナログ受信信号をディジタル受信信号に変換して、サンプリングデータを出力する回路又は素子である。記憶部104はA/D変換器103がサンプリングしたデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)回路又は素子により構成されるが、このRAMを管理するコントローラやコンピュータプログラムを含んでいてもよい。
【0010】
初期設定部105aおよび尤度関数算出部105b、判定部105cは、最尤推定測角処理を行う部位であって、初期設定部105aは探索グリッドを初期化する部位である。尤度関数算出部105bは、所定の探索グリッドに基づいて、当初は記憶部104に蓄積された受信信号について尤度関数の算出を行う部位である。ここで、この所定のグリッドとは、初回の演算においては初期設定部105aが初期化した探索グリッドであり、2回目以降の演算においては、後述する探索範囲設定処理の処理結果に基づいて設定された探索グリッドである。判定部105cは、尤度関数算出部105bが算出した尤度関数から、受信アンテナ101に到来した入射波の到来方向を判定する部位である。
【0011】
評価関数算出部106aおよび探索範囲更新処理部106b、探索角度分解能更新処理部106cは、探索範囲設定処理を行う部位である。評価関数算出部106aは、尤度関数算出部105bが算出した尤度関数に基づいて、所定の評価関数を算出する部位である。また、探索範囲更新処理部106bは、評価関数算出部106aが算出した評価関数から新たな探索範囲を設定する部位である。探索角度分解能更新処理部106cは、探索範囲更新処理部106bが設定した探索範囲において、分解能を設定する部位である。
【0012】
なお、受信機102およびA/D変換部103、メモリ104は受信手段を構成する。また、尤度関数算出部105bおよび判定部105cは最尤推定測角手段を構成する。さらに、初期設定部105aおよび評価関数算出部106a、探索範囲更新処理部106b、探索角度分解能更新処理部106cは探索範囲設定処理手段を構成する。また、各部位は専用の装置又は回路によって構成されていてもよいが、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)またはDSP(Digital Signal Processor)によって処理されるプログラムとして実現されていてもよい。
【0013】
次に、この発明の実施の形態による測角装置の動作について、図を用いて説明する。まず受信アンテナ101から記憶部104までの動作について説明する。受信アンテナ101は波源から到来する入射波を受信すると、信号を受信機102に送る。受信機102は、受信アンテナ101が受信した入射波の受信信号に対して、検波処理を施し、検波後の受信信号をA/D変換器103に送る。A/D変換器103は、検波後の受信信号をA/D変換して、受信信号の振幅を示すディジタル受信信号のx(n)を出力する。ここで、x(n)は第m番目のビーム(m=1,2,・・・,M; Mはビーム本数を表す。)で受信された信号のn番目(n=1,2,…,N; Nはサンプル数)のサンプル値である。以下ではM本のビームで受信された受信信号をまとめて、次式のようにベクトル形式Xで表す。
【数1】

ここで、上付きのTは行列の転置を表す。また、この受信信号Xは、複数の波源からの入射波と、受信機雑音をはじめとする雑音成分の和で表される。
【0014】
次に記憶部104は、A/D変換器103から出力された受信信号Xを一時蓄積する。
【0015】
続いて、この発明の実施の形態の測角装置によって行われる探索範囲設定処理と最尤推定測角処理について説明する。まず、これらの処理について大まかに説明しておくと、次のようになる。すなわち、初めに比較的広い探索範囲に対して粗い探索グリッド間隔を用いて最尤推定測角処理を行う。次に、その結果に基づいて探索領域を絞ると共に探索グリッド間隔を狭めて再度最尤推定測角処理を行うことを反復することによって測角精度を逐次的に向上していくのである。
【0016】
これにより、マルチパス波のような相関の高い信号を含む複数の入射波の到来方向を、アンテナのビーム幅で決まる角度分解能以上の精度で推定することを可能にすると同時に、全体の演算量を低減するのである。また、逐次的に分解能を向上していく処理であるため、処理の途中経過において、その時点での到来方向の推定結果を出力することができる。そのため、すべての処理が完了する前であっても、複数の入射波の到来方向について、おおまかな推定値を得ることができるのである。
【0017】
続いて、以上の処理を各構成部位の作用とともに、より詳細に説明することとする。図2は探索範囲設定処理と最尤推定測角処理を示すフローチャートである。まず、初期設定部105aは、図4に示すように入射波の到来方向を探索する探索範囲201を設定して、その中に探索グリッド202を設定する初期化を行う(ステップST1)。このとき、観測対象とする領域全体を初期の探索範囲とすればよい。また、初期の探索グリッドの間隔は、後述の処理において計算に要する時間と、測角結果の出力までに許容される遅延時間を考慮して決定される設計事項である。
【0018】
尤度関数算出部105bは、記憶部104に蓄積された受信信号X(n=1,2,・・・N)を読み出す。そして、受信信号の共分散行列Rを式(2)によって算出する(ステップST2)。
【0019】
なおステップST2以降、ステップST9までの処理はループをなして複数回実行されうるが、式(2)によって受信信号の共分散行列Rを算出するのは初回のステップST2実行のみであり、2回目以降は前回算出された共分散行列Rと新たな受信信号XN+1を用いて、式(3)によって共分散行列RN+1を算出する。
【数2】

【数3】

ここで、Wは過去のデータに適当な重みをつけるための係数であって、1以下の値とする。
【0020】
次に、尤度関数算出部105bは、入射波の数Kを推定する(ステップST3)。ここで、入射波の数Kは、赤池の情報基準(AIC:Akaike Information Criteria)や、MDL(Minimum Description Length)等のモデル選択の基準を用いて推定する。上記の入射波数推定方法は、文献M.Wax,T.Kailath,"Detection of Signals by Information Theoretic Criteria,"(IEEE Trans. Acoustics, Speech and Signal Processing, vol. ASSP−33, no.2, pp.387−392, Apr. 1985)などに記載されている。
【0021】
さらに、尤度関数算出部105bは、尤度関数P(Θp)を算出する(ステップST4)。そのために、まず尤度関数算出部105bは、各探索グリッドに対応するステアリングベクトルa(θ)(q=1,2,・・・,Q; Qは探索グリッド数)を生成する。ここでは、ステアリングベクトルa(θ)は式(4)によって表される。
【数4】

ここで、θはq番目の探索グリッドの方向(角度)を表すパラメータの組であり、例えば、アジマスとエレベーションの角度の組で表される。また、a(θq)は、第m番目のビーム(m=1,2,・・・,M)の、θの方向のゲインである。
【0022】
続いて、尤度関数算出部105bは設定されたQ個の探索グリッドから、K個の探索グリッドのすべての組み合わせΘ=(θα θβ...θγ)に対して、上記ステアリングベクトルを並べた行列A(Θp)を設定し,尤度関数P(Θ)を式(5)によって算出する。ただし、pはp=1,2,・・・,Pを満たすものであって、PはQ個の探索グリッドからK個を選択するすべての組み合わせ、すなわちP=である。
【数5】

また式(5)において、上付きの+は、式(6)で定義されるように、行列のMoore−Penrose擬似逆行列を表す。
【数6】

【0023】
式(5)において、尤度関数P(Θ)は、K個の入射波が、Θの組み合わせで表される方向から到来していると仮定したときに、現在の観測値X(n=1,2,…,N)と一致する程度を測る指標である。尤度関数P(Θ)の値域は、0以上1以下であり、尤度関数P(Θ)の値が1のとき、K個の入射波の到来方向はΘの組み合わせに一致する。また、ここでの入射波到来方向の推定精度は、図4に示した探索グリッド202の間隔を超えることはない。なお、式(5)の尤度関数P(Θ)は、受信信号Xが多次元正規分布に従うと仮定したときの対数尤度として導出されたものである
【0024】
次に判定部105cは、尤度関数P(Θ)の最大値を探索し、P(Θ)の最大値を与えるΘを、K個の入射波の到来方向であると判定して判定結果を出力する(ステップST5)。あるいは、判定部105cは事前に設定された閾値と尤度関数P(Θ)の値を比較し、尤度関数P(Θ)の値が閾値を超える領域に入射波が存在する可能性があると判定して判定結果を出力するような構成としてもよい。
【0025】
以後、ステップST6からステップST8までの処理は、探索範囲設定処理であって、探索範囲設定処理部106によって行われるものである。まず、探索範囲設定処理部106は評価関数算出部106aにおいて、尤度関数算出部105bにおいて算出された尤度関数P(Θ)を用いて次式で表される評価関数I(θ)(q=1,2,・・・,Q; Qは探索グリッド数)を算出する(ステップST6)。
【数7】

ここで、Uは注目する探索グリッド点qを含むすべてのΘの集合である。なお、評価関数P(Θ)は、探索範囲201に設定したQ個の探索グリッド上でK個の探索グリッドの各組み合わせに対して値が定義される関数であるが、評価関数I(θ)は評価関数P(Θ)を注目点qについて積分しているため、各探索グリッド202に対して値が定義される。
【0026】
1/{1−P(Θ)}は、Θが入射波の真の到来方向の組み合わせに一致するとき極めて大きな極大値をとる。したがって、評価関数I(θ)は、Uが入射波の真の到来方向の組み合わせに一致するΘを含んでいるとき、極大値を取ることが期待される。つまり評価関数I(θ)は、探索グリッド点q(q=1,2,・・・,Q)近傍の角度から入射波が到来している可能性の高さの指標として用いることができる。
【0027】
次に、探索範囲更新処理部106bは、図4に示すように、評価関数算出部106aにおいて算出された評価関数203を、事前に設定した閾値204と比較して、評価関数203の値が閾値204を超える領域の近傍を新たな探索範囲205に設定する(ステップST7)。そして、探索角度分解能更新処理部106cは、探索範囲更新処理部106bの中に新たな間隔で探索グリッド206を設定する(ステップST8)。このときグリッド間隔は、探索範囲内に設定する探索グリッドの総数が、ある一定値(探索グリッドの最大数)を超えないように設定する。探索グリッドの最大数は、一般に、演算回路の処理速度と許容される計算時間から決定される設計事項である。
【0028】
以上によって探索範囲設定処理部106において更新された探索範囲と探索グリッドの情報は、再び、最尤推定測角処理部105に送られる。最尤推定測角処理部105は更新された探索範囲と探索グリッドに対して上記で説明した処理を反復する。なお、2回目以降の反復において、尤度関数算出部105bにおける入射波の数の推定は、必要なければ実施しなくてもよい。
【0029】
次に、所望の測角精度が得られたかどうか判断する(ステップST9)。所望の測角精度が得られていない場合はステップST3に戻って、より細かな探索グリッドに基づいて尤度関数の算出を繰り返す。なお、この尤度関数の算出処理の繰り返しについては、ステップST3に戻らずに、ステップST2に戻るようにしてもよい。すなわち、ステップST2に戻る場合は、次回の尤度関数算出処理において、新たな受信信号の影響を考慮することになる。またステップST3に戻る場合は、すでに得られている受信信号のみで、尤度関数の算出を再度行うことになる。
【0030】
またステップST9で所望の測角精度が得られたのであれば、処理を終了する。
【0031】
以上から明らかなように、この発明の実施の形態によるレーダ装置では、段階的に測角精度を向上していくこととした。これにより、マルチパス波のような相関の高い信号を含む複数の入射波の到来方向を、アンテナのビーム幅で決まる角度分解能以上の精度で推定することを可能とすると共に、全体の演算量を低減できる。
【0032】
また、逐次的に分解能を向上していく処理であるため、処理の過程において、その時点での到来方向の推定結果を出力することができ、全ての処理が完了する前に、複数の入射波の到来方向について、おおまかな推定値を得ることができるのである。
【0033】
なお、上記の説明では、受信アンテナ101から探索角度分解能更新処理部106cに至るまでの構成要素を一体のレーダ装置の中で構成する例について説明した。しかし、受信アンテナ101から記憶部104までについては既存のレーダ装置を用い、それ以外の測角機能を実現する部位を、レーダ装置とは別体に構成された測角装置として実現するようにして、記憶部104を介して受信信号データを共有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1によるレーダ装置の受信アンテナの構成を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるレーダ装置における探索範囲と探索グリッドの設定方法の概念を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0035】
101 受信アンテナ、
102 受信機、
103 A/D変換器、
104 記憶部、
105a 初期設定部、
105b 尤度関数算出部、
105c 判定部、
106a 評価関数算出部、
106b 探索範囲更新処理部、
106c 探索角度分解能更新処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波源からの入射波を受信する受信アンテナと、
受信アンテナが受信した受信信号のサンプル値を記憶する記憶部と、
外部受信アンテナに到来する入射波の波源が存在する領域に探索範囲と探索角度分解能を設定する探索範囲設定手段と、
前記探索範囲より前記探索角度分解能に基づいて得た部分領域から、その部分領域に前記波源が存在するとすれば前記受信信号の状態に最も符合する部分領域を、前記波源が存在する領域として選択し出力する最尤推定測角手段と、
を備えるレーダ装置において、
前記探索範囲設定手段は、前記最尤推定測角手段が出力した前記波源が存在する部分領域の近傍に絞って、新たな探索範囲を設定するとともに、前記探索角度分解能よりも細かい新たな探索角度分解能を設定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
外部受信アンテナに到来する入射波の波源が存在する領域に探索範囲と探索角度分解能を設定する探索範囲設定手段と、
前記探索範囲より前記探索角度分解能に基づいて得た部分領域から、その部分領域に前記波源が存在するとすれば前記受信信号の状態に最も符合する部分領域を、前記波源が存在する領域として選択し出力する最尤推定測角手段と、
を備えるレーダ装置において、
前記探索範囲設定手段は、前記最尤推定測角手段が出力した前記波源が存在する部分領域の近傍に絞って、新たな探索範囲を設定するとともに、前記探索角度分解能よりも細かい新たな探索角度分解能を設定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
前記探索範囲設定手段は、前記探索範囲において前記探索角度分解能に基づく間隔で探索グリッドを設定するとともに、前記最尤推定測角手段が前記波源が存在する領域を出力した場合には、その領域の近傍に絞って、前記間隔よりも狭い間隔で新たな探索グリッドを設定し、
前記最尤推定測角手段は、前記探索グリッドの中から前記波源に近いグリッドを選択し、その探索グリッドの近傍を前記波源が存在する領域として出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記最尤推定測角手段は、前記探索グリッドから、その探索グリッドの位置に前記波源があるとすれば前記受信信号の状態に最も符合する探索グリッドを選択することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記最尤推定測角手段は、前記探索グリッドのそれぞれについて所定の尤度関数値を算出し、その尤度関数値が最大となる探索グリッドを前記受信信号の状態に最も符合する探索グリッドとして選択することを特徴とする請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記探索範囲設定手段は、前記最尤推定測角手段が算出した尤度関数値に基づいて前記探索グリッド近傍の角度から入射波が到来している可能性を示す評価値を算出し、この評価値に基づいて新たな探索範囲を設定するとともに、この新たな探索範囲内に新たな探索グリッドを設定することを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記最尤推定測角手段は、所定の判定基準に基づいて入射波の波源の個数を推定し、前記個数と同数の探索グリッドを選択することを特徴とする請求項3乃至6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記最尤推定測角手段は、前記探索範囲設定手段が設定した新たな探索グリッドから前記入射波の波源の個数の探索グリッドを選ぶすべての組み合わせについて対数尤度を算出することを特徴とする請求項7に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記最尤推定測角手段は、前記探索範囲設定手段によって設定された新たな探索範囲と新たな探索角度分解能に基づいて前記波源が存在する部分領域を選択するにあたり、前記新たな探索範囲と新たな探索角度分解能とが設定されるまでに前記受信アンテナにより新たに受信された受信信号を前記受信信号の状態に反映させてから、前記部分領域を選択することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載のレーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−96137(P2008−96137A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274878(P2006−274878)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】