レーダ装置
【課題】検出エリア外に外れる物体についてその存在位置を推定し続けることができ、かつ検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】レーザレーダ装置(車両用測距装置)は、レーザ光を2次元スキャンするスキャナ13と、制御回路11とを備えている。制御回路11は、スキャナ13の検出エリア左右端において、片斜面分布を抽出する。この片斜面分布の距離値、受光レベル、検出領域幅、および面積値からなる割り込み情報を記録する。今回のフレームで抽出した割り込み情報を過去の割り込み情報と比較し、割り込み可能性を算出する。この割り込み可能性に基づいて検出エリア外からの侵入車両を早期に検出する。
【解決手段】レーザレーダ装置(車両用測距装置)は、レーザ光を2次元スキャンするスキャナ13と、制御回路11とを備えている。制御回路11は、スキャナ13の検出エリア左右端において、片斜面分布を抽出する。この片斜面分布の距離値、受光レベル、検出領域幅、および面積値からなる割り込み情報を記録する。今回のフレームで抽出した割り込み情報を過去の割り込み情報と比較し、割り込み可能性を算出する。この割り込み可能性に基づいて検出エリア外からの侵入車両を早期に検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光やミリ波等の電磁波をスキャンすることにより、前方に存在する物体の存在、物体までの距離、および方向を測定するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方をレーザ光等でスキャンして、物体が存在するかどうか、および物体までの距離を測定する車両用測距装置が有る。このような車両用測距装置を用いて、先行車との距離を測定し、車間距離を一定に保つ定車間距離追従走行(ACC:Adaptive Cruise Control)が行われている。また、障害物との距離が安全な距離以下になると運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御が行われている。
【0003】
このような車両用測距装置では、スキャン方向(走査方向)に広がる検出エリア(レーザ光が照射可能な範囲と略同一範囲)をスキャン方向に分割した複数の検出領域毎に測定動作を行っていた。近年、一般道や混雑路といた場面に上記安全制御等の適用範囲を広げるため、車両用測距装置においては、より広い検出エリアが求められている。検出エリアを広げるためには、スキャン範囲の拡大が考えられるが、単純にスキャン範囲を拡大するとコスト増と装置大型化という弊害を招く。そこで、スキャン範囲端部において、レーザ光のビーム幅を大きくし、検出エリアを拡大したレーダ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、既に検出していた物体が移動して検出エリアから外れ、物体の全体を検出できなくなった場合においても、既検出物体の幅に基づいて物体全体の存在位置を推定する物体検知装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−283138号公報
【特許文献2】特開2002−296350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置のようにむやみに検出エリアを拡大すると、隣接車線を走行している車両を誤って検出してしまうという問題が有った。ここで、特許文献1の装置では、各分割検出領域毎の受信強度データからスキャン方向のピークを抽出し、このピークが検出されなければ物体が存在しないとして判定する構成が開示されているが、このような構成では、検出エリア外から検出エリア内に新たに侵入してくる障害物を早期に検出することができなかった。つまり、検出エリア外から急接近してくる障害物(例えば隣接車線から自車の車線に急に車線変更をする車など)について、スキャン方向のピークを検出するまでは物体ではないと判定してしまい、制動等の安全制御が間に合わない危険性が有った。
【0006】
また、特許文献2の装置では、検出エリア内から検出エリア外に外れる物体についてもその存在位置を推定し続けることが可能であるが、そのためにはまず物体全体の幅を求める必要が有り、検出エリア外から検出エリア内に新たに侵入してくる障害物を早期に検出するこはできなかった。
【0007】
本発明は、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーダ装置は、電磁波を照射する電磁波照射部と、前記電磁波の照射方向からの反射波を受波する電磁波受波部と、前記電磁波照射部の電磁波照射方向、および前記電磁波受波部の受波方向を所定の検出エリアの範囲で揺動させるスキャン部と、前記揺動による角度刻みの照射方向毎に、前記電磁波照射部に電磁波を照射させてその反射波を前記電磁波受波部に受波させ、この反射波の受波強度の時間軸上でのピークに基づいて当該照射方向における反射点の距離を測定する制御部と、を備えたレーダ装置であって、前記制御部は、隣接する複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在するとき、反射点の受波強度が最大となる方向、およびその距離に物体が存在すると判定する判定処理、前記検出エリアの端部の複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在し、かつその反射点の受波強度が前記検出エリアの端部に向けて上昇しているとき、前記検出エリアの外に物体が存在すると推定する推定処理を実行することを特徴とする。
【0009】
この発明では、各照射方向において、時間軸における反射強度のピーク(最大強度となるタイミング)に基づいてその反射点(ターゲット)の距離値を検出する。また、各ターゲットの受波強度のスキャン方向分布を算出する。受波強度のスキャン方向分布において、極大となるピークが存在し、各ターゲットの距離が同一であれば、物体が存在すると判定する。受波強度のスキャン方向分布が、反射波検出エリア範囲の端部にかけて上昇し、受波強度が極大となるピークが存在せず、かつ各ターゲットの距離が略同一である場合に、検出エリア外に物体が存在すると推定する。
【0010】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記判定処理で、略同方向、および同距離に複数回物体が存在すると判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する確定処理を実行し、前記推定処理で物体が存在すると推定された後、前記判定処理で、前記推定処理の反射点と略同一の距離で物体が存在すると前記確定処理の判定回数よりも少ない回数で判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定することを特徴とする。
【0011】
この発明では、物体が存在すると判定したときの距離値が、過去に物体が存在すると推定したときの距離値と略一致した場合、これらを対応付ける。物体と判定した回数が所定数以上であれば物体であると確定するが、その物体が過去に推定した物体の距離値と対応付けられていた場合は、それよりも少ない回数(例えば1回)物体であると判定した場合に、物体であると確定する。物体であると確定した場合、上位システム(車両制御装置)に通知し、その結果早期に安全制御が行われる。
【0012】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記推定処理における各反射点の距離が、過去の推定処理の反射点と略同一の距離である場合、所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、過去の推定処理における所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、を比較して推定した物体の割り込み可能性を算出し、前記割り込み可能性が所定値以上となった場合に、前記検出エリアの端部の近傍に物体が存在すると判定することを特徴とする。
【0013】
この発明では、物体が存在すると推定された場合、各ターゲットの距離値、受波強度に基づき、検出エリア端からのターゲットの幅(走査方向の幅)、およびその幅における受波強度の積算値(面積値)を割り込み情報として記録する。過去の割り込み情報と現在の割り込み情報とを対応付け、割り込み可能性を算出する。例えば上記の各値(ターゲットの幅、面積値)が上昇した場合、割り込み可能性を高くする。この割り込み可能性が所定値以上となった場合に検出エリア端部の近傍に物体が存在すると判定する。
【0014】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記推定処理における反射点の距離が、過去の判定処理で判定した物体の距離と略同一の距離である場合、前記推定処理で推定した物体の存在位置を、過去の判定処理で判定した物体の位置に基づいて推定することを特徴とする。
【0015】
この発明では、割り込み情報の距離値が、過去に物体が存在すると判定したときの物体の距離値と略一致した場合に、これらを対応付ける。この過去の物体情報(距離、位置、幅等)に基づいて、推定した物体の距離、位置、幅等を推定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受波強度のスキャン方向分布を算出し、検出エリア端部の分布から、検出エリア外に存在する物体の分布形状を抽出し、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができる。また、一度検出した物体の存在位置を記録しておくことで、検出エリア外に外れた物体についてその存在位置を推定し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態であるレーザレーダ装置(車両用測距装置)のブロック図である。図2(A)は、レーザレーダ装置の車載搭載例を示す図であり、同図(B)は、レーザレーダ装置の検出エリアを示す図である。レーザレーダ装置2は、自車1の前方にレーザ光を照射するように設置されている。
LD(Laser Diode)駆動回路10は、制御回路11で生成された駆動信号に基づいて、LD12の発光を制御する。スキャナ13は、制御回路11の制御に基づいて、LD12により発生されたレーザ光を所定のスキャン範囲でスキャン(走査)させる。スキャナ13より出射されたレーザ光は、投光レンズを介して自車1の走行方向(前方)に出射される(図2(A)参照)。走査位置検出装置14は、スキャナ13におけるレーザ光のスキャン(走査)位置をそれぞれ検出して、制御回路11に出力する。
【0018】
LD12が出射したレーザ光が、検出対象としての前方の物体(例えば、車両)に反射して戻ってきた反射光は、受光レンズにより集光され、PD(Photo Diode)15によって受光され、その反射光の強さに対応する信号が受光回路16に出力される。受光回路16は、入力された反射光の信号レベル(以下、受光レベル、または受光量と言う。)を数値化して、制御回路11に出力する。制御回路11は、入力された受光レベルを、走査位置検出装置14から入力されたスキャン位置に対応してメモリ17に記億する。LD12から出た光は、投光レンズによって所定の広がり角を有するビームに整形される。投光強度は、ビーム中心から外れるにしたがって低下する。本実施形態では、発光強度のピーク値に対してその強度が略半分(または所定の割合)となる角度をビーム広がり角としている。きわめて弱い光であっても、物体からの反射光は存在するが、その反射光を観測できる程度の強度が望まれる程度に、発光強度が必要だからである。このため、ビーム中心の投光強度の半分になる範囲をビーム広がり角としている。この結果、ビーム広がり角の外側であっても投光された光が存在するため、定義したビーム広がり角の外側に物体が存在した場合には、その反射光を観測することが出来る場合がある。この様な測定を、図2(B)に示すように、検出エリア(ビーム広がり角内)を水平スキャン方向(走査方向)に一定幅で分割してなる複数の検出領域(レーザ照射方向)のそれぞれにて行う。各検出領域においては所定回数の発光および受光が行われる。「検出エリア」とは、図2(B)に示すように、レーザ照射範囲と略同一、またはレーザ照射範囲より狭い所定範囲を言う。通常、検出エリア中心(光軸)を自車1の直進時の進行方向に一致するように設置して使用する。
また、メモリ17には、上記計測の際に用いる一時的な変数の他に、検出した物体を判定する手順などのプログラムも記憶している。
【0019】
次に、スキャナ13の投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を図3に示す。
図3において、制御回路11からの制御信号が、駆動回路30に入力される。駆動回路30は、入力された制御信号に基づき、駆動用コイル31に駆動電流を供給する。駆動用コイル31は、電流値に応じた磁界を発生し、設置されている図示しない永久磁石との間で、引力もしくは反力を生じるため、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に支持する支持部材(図示せず)を、それぞれ、水平方向に移動させる。支持部材は、板バネ32により、水平方向に移動自在に支持されている。したがって、支持部材(投光レンズ33と受光レンズ34)は、駆動電流により駆動用コイル31に発生した力と板バネ32に発生する反力がつりあう水平方向の位置に移動して、静止する。なお、各レンズの位置は図示していないセンサにより検出し、このセンサ出力を駆動回路30に入力することでサーボ機構を構成している。
【0020】
このようにして、投光レンズ33と受光レンズ34は、水平方向の所定の位置に移動することができる。
【0021】
スキャナ13によって駆動された、投光レンズ33と受光レンズ34の光路を図4に示す。投光レンズ33は、LD12の前面に設けられ、受光レンズ34は、PD15の前面に設けられている。
【0022】
LD12から出射されたレーザ光は、投光レンズ33の中心方向に偏光される。投光レンズ33の位置が中心にある場合は、図4の実線で示されるような光路で、レーザ光は正面に出射される。出射されたレーザ光は、前方の物体(例えば、車両)で反射され、図4の実線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD15によって受光される。
【0023】
また、スキャナ13によって、図中、上方向に投光レンズ33が移動した場合、レーザ光は、図4の点線で示されるような光路で、図中、上方向に出射される。そして、出射されたレーザ光は、図中、上方向の物体で反射され、図4の点線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD15によって受光される。
【0024】
このようにして、スキャナ13は、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に水平方向の所定の位置に移動することで、レーザ光を水平方向にスキャンする。なお、上記例では、水平方向にのみスキャンする構成を示したが、さらに鉛直方向にスキャンするようにしてもよい。鉛直方向にスキャンする場合、水平方向スキャンの末端で鉛直角度を変更すればよい。
【0025】
本実施形態のレーザレーダ装置2は、水平方向1スキャンの測定を1フレームとし、以下の処理を行う。
【0026】
制御回路11は、メモリ17に記録した各検出領域の受光レベル(受光量)のうち、時間軸上でのピークを検出し、このピークを受光タイミング(投光から受光までの時間)としてその受光量を検出する。制御回路11は、この受光量のスキャン方向の分布を算出する。図5(A)は、受光量のスキャン方向の分布(グラフ)の一例を示したものである。図5(A)に示すグラフの横軸はスキャン水平方向を表し、縦軸は受光量を表す。同図(B)は、その受光タイミングに基づいて算出した距離値を各検出領域毎に表した分布を示すものである。
【0027】
制御回路11は、同図(A)に示す受光量分布からスキャン方向のピークを検出する。例えば、隣接する検出領域の受光量の差分を計算し、この差分が検出領域の変化(スキャン方向)に対してプラスからマイナスに変化する箇所があるか否かによりピークを検出する。また、各検出領域の中心位置に各受光量データをプロットした点を直線で結ぶことによって、折れ線状の連続波形(図3(A)参照)を設定し、これに基づいてピークを抽出するようにしてもよい。制御回路11は、このピークが検出された場合、物体を検出したと判定する。また、受光レベルが所定の閾値以上となる検出領域(または上記連続波形)の両端を物体の両端として判断することで、物体の幅を検出する。この閾値は、予め決定しておいてもよいし、ピークの受光レベルから(例えば50%として)決定してもよい。
【0028】
さらに、制御回路11は、検出エリアの左右端のそれぞれにおいて、検出エリア外から侵入してくる物体が存在するか否かを判断する。図6(A)は、検出エリアの右端外に物体(車両)が存在する例を示す図である。このように、検出エリア外であってもその近傍に物体が存在した場合、同図(B)に示すように、左右端にかけて受光レベルが上昇し、ピークに達しない(スキャン方向に対してプラスからマイナスに変化する箇所がない)分布を形成する。制御回路11は、このような受光レベルの分布を検出した場合、左右端のそれぞれにおいて、各検出領域の受光レベル、閾値以上となる検出領域の幅(走査方向の幅)、受光量の面積値(連続波形の積分値)の情報を割り込み情報として抽出する。
【0029】
また、上述したように、制御回路11は、レーザ光を出射してからその反射光を受光するまでの時間に基づいて、それぞれの検出領域での反射点(ターゲットという)について、自車との距離を測定する。図5(B)は、距離の分布の一例を示したものである。なお、このグラフの横軸はスキャン水平方向を表し、図5(A)で示した受光レベルのスキャン方向分布に対応する。図5(B)に示すように、この例においては、各検出領域において略同一の距離値が得られる。制御回路11は、各ターゲットの距離値、およびスキャン方向(レーザ照射方向)の位置に基づいて、これらをグループ化し、各ターゲットを同一の物体(または物体の候補)であると判断する。なお、本実施形態では、水平方向にのみスキャンする構成を示しているが、さらに鉛直方向にスキャンする場合、距離値、水平方向の検出領域、鉛直方向の検出領域、の3次元の値に基づいてグループ化を行うものとする。
【0030】
制御回路11は、以上の様な処理を毎フレーム行うことで、物体の移動ベクトル(存在位置の変化)を算出し、この物体の幅、反射強度に基づいて、当該物体が先行車であるか否かを判定する。また、上記割り込み情報に基づいて検出エリア内に割り込む物体が存在するか否かを判定する。
【0031】
以下、制御回路11の具体的な処理につき、図7〜図13を参照して詳細に説明する。
図7は、制御回路11の全体処理フローを表す図である。
処理が開始されると、まずST1で、各検出領域に対する上述した測定動作(レーザ光の出射と受光、および受光レベルのデータ取得)を行う。ST2においては、全ての検出領域に対して測定動作が終了したか否か判断する。すなわち1フレーム分のデータを取得したか否かを判断する。全ての検出領域で測定動作が終了していればST3〜ST7の処理を順次実行し、全ての検出領域で測定動作が終了していなければST1に戻って次の検出領域について測定動作を繰り返す。
【0032】
そしてST3では、各ターゲットのグループ化を行い、ターゲット集合としてまとめる。上述したように、制御回路11は、各ターゲットの距離値、およびスキャン方向の位置が近接する場合に、これらをグループ化する。ST4では、ST3でグループ化されたターゲットから、個々の物体、および割り込み情報を抽出(分離)を行う。物体の抽出では、中心位置(距離、および方向)や幅を算出する処理を実行する。なお、上記グループ化されたターゲットが無ければ、処理を簡略化するために、この物体抽出処理は実行しないようにしてもよい。また、検出エリアの全範囲についてこの物体抽出処理を実行するのではなく、グループ化したターゲットの範囲についてのみ、この物体抽出処理を実行するようにしてもよい。
【0033】
次にST5では、前回のフレームにおいてST4で抽出された物体のデータと、今回のフレームにおけるST4で抽出された物体のデータ、および割り込み情報のデータを比較し、これらを対応付ける処理を行う。例えば、前回の物体の位置を基準に所定の広がりを持つ位置範囲を設定し、この位置範囲内に今回の物体の位置が存在すると、同一物と判定するといった処理を実行する。
【0034】
ST6では、前回のフレームにおけるST4で抽出された割り込み情報のデータと、今回のフレームにおけるST4で抽出された割り込み情報のデータとを比較し、対応付けることで割り込み可能性を算出する。割り込み可能性が高い情報については、物体であると確定する。詳細は図12を用いて後述する。
【0035】
ST7では、検出した物体の認識処理を行い、上位システム(車速をコントロールする車両制御装置等)に通知する。ここで、物体の認識とは、検出した物体をST5で対応付けた結果、mフレーム(例えばm=5)継続して検出された場合に、この検出物体を物体であると確定する処理である。
【0036】
以下、ST4の物体抽出、割り込み情報抽出処理、ST5の物体情報の対応付け処理、およびST6の割り込み情報の対応付け処理について詳細に説明する。
図8は、ST4の物体抽出、割り込み情報抽出処理を示すフローチャートである。まず、s11において、制御回路11は、各検出領域の受光レベルから検出エリアの受光レベル分布を算出する(図5(A)、図6(B)参照)。受光レベルの分布を作成した後、ピークの有無を判断する(s12)。例えば上述した連続波形を微分し、この微分値がプラスからマイナスに転じる頂点(微分値がゼロで極大となる点)をピークとすればよい。ピークが有れば、物体が存在するとして、その中心位置、幅を算出し、これを物体情報としてメモリ17に記録する(s13)。中心位置は、抽出したピークのデータに基づいて決定し、物体の幅は、閾値以上となる受光レベルのスキャン方向の幅から決定すればよい。
【0037】
次に、検出エリア左右端で、その左右端にかけて受光レベルが上昇し、ピークに達しない分布(以下、片斜面分布という)が有るか否かを判断し、さらに各検出領域における距離値が略等しいか否かを判断して、検出エリアの近傍に物体が有るか否かを判断する(s14)。片斜面分布だけでは、道路側面におけるガードレール等である可能性が有るが、各検出領域における距離値を判断基準とすることで、割り込み物体を抽出することができる。
【0038】
図9は、ガードレールにレーザ光が反射した場合の受光量レベルを示す図である。同図(A)に示すように、検出エリア右端にガードレールが存在し、道路形状が左カーブであった場合、検出エリア右端が最も自車に近いため、レーザ光の反射強度が強く、同図(B)に示すような片斜面分布を形成する。しかし、このような片斜面分布が存在したとしても、図10に示すように、割り込み物体とガードレールでは距離分布が異なる。同図(A)は、割り込み物体の距離分布を示し、同図(B)は、ガードレールの距離分布を示す。割り込み物体であれば各検出領域で検出されるターゲットは略同じ距離値を示すが、図9(A)のようなガードレールであれば検出エリア右端に向かって距離値が小さくなる。したがって制御回路11は、片斜面分布が存在し、かつ各検出領域における距離値が略等しい場合にこの物体を割り込み物体であると判断する。
【0039】
s14で片斜面分布が存在し、かつ各検出領域における距離値が略等しいと判断した場合、閾値以上となる検出領域数(すなわちスキャン方向の幅)、各検出領域の受光レベル、各領域の距離値、および片斜面分布の面積値を抽出し、これらを割り込み情報としてメモリ17に記録する(s15)。以上の処理を終えると図7の全体処理フローにリターンする。
【0040】
図11は、ST5の物体情報の対応付け処理を示すフローチャートである。s21では、今回のフレームで抽出した各物体、および割り込み情報を過去のフレームの物体情報と比較する。その結果、まずs22において、今回のフレームで抽出した物体情報に対応する過去の物体情報が有るか否かを判断する。例えば、前回のフレームでの物体位置を基準に所定の広がりを持つ位置範囲を設定し、この位置範囲内に今回のフレームの物体位置が存在するか否かを判断すればよい。
【0041】
対応する過去の物体情報が有ると判断した場合、これらを対応付け、この物体が存在すると判定されたフレーム数をカウントする(s23)。このフレーム数がST7の処理で物体の確定処理に用いられる。
【0042】
図12は、ST6の割り込み情報の対応付け処理を示すフローチャートである。s31では、今回のフレームで抽出した各物体、および割り込み情報を過去のフレームの割り込み情報(以下、過去割り込み情報と言う)と比較する。その結果、まずs32において、今回のフレームで抽出した割り込み情報に対応する過去割り込み情報が有るか否かを判断する。例えば、各領域における距離値が略同一であれば対応付けるといった処理を実行する。
【0043】
対応する割り込み情報が有ると判断した場合は、割り込み可能性を算出する(s33)。この割り込み可能性は、検出エリア左右端で検出した片斜面分布が物体である可能性を表すものである。割り込み可能性が高いほど物体が検出エリア外から侵入してくる可能性が高いと判断することができる。割り込み可能性は以下のような数式で表される。
割り込み可能性=前回の値+Ka*ΔD+Kb*ΔE+Kc*ΔF
ここで、Ka、Kb、およびKcは、各項の重み付け係数である。ΔDは、受光レベルの変化量であり、検出エリア端における今回の割り込み情報の受光レベルから過去割り込み情報の受光レベルを減算した値である。ΔEは、検出領域幅の変化量であり、今回の割り込み情報の検出領域幅から過去割り込み情報の検出領域幅を減算した値である。ΔFは、面積値の変化量であり、今回の割り込み情報の面積値から過去割り込み情報の面積値を減算した値である。なお、割り込み可能性の初期値(前回の値が無い場合)は、割り込み情報が過去の物体情報と対応付けてられていなければゼロとなる。過去の物体と対応付けられていた場合、すなわちピーク消失直後に新規検出した割り込み情報の場合は後述する。
【0044】
次に、制御回路11は、この割り込み可能性が所定値以上となったか否かを判断する(s34)。所定値以上となっていればこの割り込み情報が物体であると判定する(s35)。物体の存在方向は、検出エリア端部とすればよい。この場合、ST7の物体確定処理を行わずに、即座に物体であると確定して、上位システムへ通知してもよいし、ST7でmフレーム継続した場合に物体であると確定して上位システムへ通知するようにしてもよい。また、後述するように、この物体に割り込みフラグを割り当て、ST7でmフレームよりも少ないnフレーム(n<m)継続した場合に物体であると確定して上位システムへ通知するようにしてもよい。
【0045】
次に、制御回路11は、新規検出物体(ピークを検出したが、ST5で過去の物体と対応付けできなかった物体)に対応する過去割り込み情報が有るか否かを判断する(s36)。この場合、物体の各領域における距離値と過去割り込み情報の各領域における距離値が略同一であれば対応付けるといった処理を実行する。対応する割り込み情報が有ると判断した場合は、この検出物体について割り込みフラグを割り当て、ST7で物体と確定するフレーム数を、mフレームよりも少ないnフレーム(n<m、例えばn=1)とする。
【0046】
次に、制御回路11は、今回の割り込み情報に対応する過去の物体情報が有るか否かを判断する(s38)。この場合、割り込み情報の各領域における距離値と過去の物体情報の各領域における距離値が略同一であれば、これらを対応付けるといった処理を実行する。割り込み情報が過去の物体情報と対応付けられた場合、この割り込み情報は、検出エリア内から検出エリア外に出た物体であると判定し、過去の物体情報を保持しながら、その物体情報に基づいて検出エリア外に出た物体の位置を推定する(s39)。検出エリア外に出た物体の位置は、過去の物体情報、および割り込み情報から推測される物体の位置である。なお、過去の物体情報から検出エリア外に出た物体の幅を推定するようにしてもよい。物体の位置の推測手法は、どのようなものであってもよいが、例えば次のようにして行う。
【0047】
まず、割り込み可能性を基に、検出エリア端からの角度を推定する。図13(A)は、検出エリア端からの角度と割り込み可能性を示す図である。同図(A)に示すグラフの横軸は検出エリア端からの角度を示し、縦軸は割り込み可能性をピーク消失直後の割り込み可能性で除算した値を示す。ピーク消失直後の割り込み可能性とは、新規に割り込み情報を抽出し、これが過去の物体情報と対応付けられた場合の、割り込み可能性の初期値を表す。ピーク消失直後の割り込み可能性は、以下の数式で表される。
ピーク消失直後の割り込み可能性=Ka*ΔG+Kb*ΔH+Kc*ΔI
ここでKa、Kb、およびKcは、各項の重み付け係数である。ΔGは、新規に抽出した割り込み情報の受光レベルであり、検出エリア端部での受光レベルの値である。ΔEは、検出領域幅である。ΔFは、面積値である。物体が検出エリア外に移動して受光レベルの分布からピークを消失した場合、新規に割り込み情報を抽出するが、割り込み可能性を初期値を上記のように設定することで、検出エリア端から離れるにしたがって割り込み可能性が小さくなる。これにより、物体の検出エリア端からの角度を推定する。物体の距離については、対応付けられている過去の物体情報の距離から推定する。また、今回抽出した割り込み情報の物体の距離値から推定してもよい。検出エリア端からの角度と距離値により検出エリア外に出た物体の位置を推測する。また、検出エリア外に出た物体の幅は、過去の物体情報の幅を用いればよい。
【0048】
また、検出エリアよりも広い撮影視野をもつカメラ(望ましくは高ダイナミックレンジを有するCMOSセンサ)を用いて自車前方を撮影し、この画像を用いて物体の位置を計測するようにしてもよい。このセンサにより計測される物体の位置を検出エリア外に出た物体情報として用いればよい。
【0049】
図12において、最後に、不要となった割り込み情報、物体情報をメモリから削除する(s40)。例えば、そのフレームにおいて、対応付けされる物体情報、および割り込み情報が無かった情報を削除する。これらの処理を終えると、図7の全体処理にリターンする。
【0050】
図7のST7において、検出した物体の認識処理を行い、上位システムに通知する。ここで、検出した物体をs23でのカウント数を用い、mフレーム継続して検出された場合に、この検出物体を物体であると確定し、上位システムに通知する。また、s35、またはs37で割り込みフラグが割り当てられていた場合は、nフレーム継続して検出されていた場合に、この検出物体を物体であると確定し、上位システムに通知する。
【0051】
以上のようにして、本実施形態のレーザレーダ装置は、割り込み情報、割り込み可能性を用いることで、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができる。また、割り込み情報を過去に検出していた物体と対応付けることで、検出エリア外に外れた物体についてその存在位置を推定し続けることができる。
【0052】
なお、本実施形態においてはレーザレーダ装置について説明したが、本発明の構成は、ミリ波レーダなど、他のレーダ装置に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態であるレーザレーダ装置のブロック図
【図2】レーザレーダ装置の車載搭載例と検出エリアを示す図
【図3】スキャナの投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図
【図4】スキャナによって駆動された投光レンズと受光レンズの光路を示す図
【図5】受光レベルと距離値の分布を示す図
【図6】検出エリア右端の検出エリア外近傍に物体が存在する例を示す図
【図7】全体処理の手順を示すフローチャート
【図8】物体抽出、割り込み情報抽出処理の具体的な手順を示すフローチャート
【図9】ガードレールにレーザ光が反射した場合の受光量レベルを示す図
【図10】割り込み物体とガードレールの距離分布を示す図
【図11】割り込み情報の対応付け処理の具体的な手順を示すフローチャート
【図12】割り込み情報の対応付け処理を示すフローチャート
【図13】検出エリア端からの角度と割り込み可能性を示す図
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光やミリ波等の電磁波をスキャンすることにより、前方に存在する物体の存在、物体までの距離、および方向を測定するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方をレーザ光等でスキャンして、物体が存在するかどうか、および物体までの距離を測定する車両用測距装置が有る。このような車両用測距装置を用いて、先行車との距離を測定し、車間距離を一定に保つ定車間距離追従走行(ACC:Adaptive Cruise Control)が行われている。また、障害物との距離が安全な距離以下になると運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御が行われている。
【0003】
このような車両用測距装置では、スキャン方向(走査方向)に広がる検出エリア(レーザ光が照射可能な範囲と略同一範囲)をスキャン方向に分割した複数の検出領域毎に測定動作を行っていた。近年、一般道や混雑路といた場面に上記安全制御等の適用範囲を広げるため、車両用測距装置においては、より広い検出エリアが求められている。検出エリアを広げるためには、スキャン範囲の拡大が考えられるが、単純にスキャン範囲を拡大するとコスト増と装置大型化という弊害を招く。そこで、スキャン範囲端部において、レーザ光のビーム幅を大きくし、検出エリアを拡大したレーダ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、既に検出していた物体が移動して検出エリアから外れ、物体の全体を検出できなくなった場合においても、既検出物体の幅に基づいて物体全体の存在位置を推定する物体検知装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−283138号公報
【特許文献2】特開2002−296350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置のようにむやみに検出エリアを拡大すると、隣接車線を走行している車両を誤って検出してしまうという問題が有った。ここで、特許文献1の装置では、各分割検出領域毎の受信強度データからスキャン方向のピークを抽出し、このピークが検出されなければ物体が存在しないとして判定する構成が開示されているが、このような構成では、検出エリア外から検出エリア内に新たに侵入してくる障害物を早期に検出することができなかった。つまり、検出エリア外から急接近してくる障害物(例えば隣接車線から自車の車線に急に車線変更をする車など)について、スキャン方向のピークを検出するまでは物体ではないと判定してしまい、制動等の安全制御が間に合わない危険性が有った。
【0006】
また、特許文献2の装置では、検出エリア内から検出エリア外に外れる物体についてもその存在位置を推定し続けることが可能であるが、そのためにはまず物体全体の幅を求める必要が有り、検出エリア外から検出エリア内に新たに侵入してくる障害物を早期に検出するこはできなかった。
【0007】
本発明は、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーダ装置は、電磁波を照射する電磁波照射部と、前記電磁波の照射方向からの反射波を受波する電磁波受波部と、前記電磁波照射部の電磁波照射方向、および前記電磁波受波部の受波方向を所定の検出エリアの範囲で揺動させるスキャン部と、前記揺動による角度刻みの照射方向毎に、前記電磁波照射部に電磁波を照射させてその反射波を前記電磁波受波部に受波させ、この反射波の受波強度の時間軸上でのピークに基づいて当該照射方向における反射点の距離を測定する制御部と、を備えたレーダ装置であって、前記制御部は、隣接する複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在するとき、反射点の受波強度が最大となる方向、およびその距離に物体が存在すると判定する判定処理、前記検出エリアの端部の複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在し、かつその反射点の受波強度が前記検出エリアの端部に向けて上昇しているとき、前記検出エリアの外に物体が存在すると推定する推定処理を実行することを特徴とする。
【0009】
この発明では、各照射方向において、時間軸における反射強度のピーク(最大強度となるタイミング)に基づいてその反射点(ターゲット)の距離値を検出する。また、各ターゲットの受波強度のスキャン方向分布を算出する。受波強度のスキャン方向分布において、極大となるピークが存在し、各ターゲットの距離が同一であれば、物体が存在すると判定する。受波強度のスキャン方向分布が、反射波検出エリア範囲の端部にかけて上昇し、受波強度が極大となるピークが存在せず、かつ各ターゲットの距離が略同一である場合に、検出エリア外に物体が存在すると推定する。
【0010】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記判定処理で、略同方向、および同距離に複数回物体が存在すると判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する確定処理を実行し、前記推定処理で物体が存在すると推定された後、前記判定処理で、前記推定処理の反射点と略同一の距離で物体が存在すると前記確定処理の判定回数よりも少ない回数で判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定することを特徴とする。
【0011】
この発明では、物体が存在すると判定したときの距離値が、過去に物体が存在すると推定したときの距離値と略一致した場合、これらを対応付ける。物体と判定した回数が所定数以上であれば物体であると確定するが、その物体が過去に推定した物体の距離値と対応付けられていた場合は、それよりも少ない回数(例えば1回)物体であると判定した場合に、物体であると確定する。物体であると確定した場合、上位システム(車両制御装置)に通知し、その結果早期に安全制御が行われる。
【0012】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記推定処理における各反射点の距離が、過去の推定処理の反射点と略同一の距離である場合、所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、過去の推定処理における所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、を比較して推定した物体の割り込み可能性を算出し、前記割り込み可能性が所定値以上となった場合に、前記検出エリアの端部の近傍に物体が存在すると判定することを特徴とする。
【0013】
この発明では、物体が存在すると推定された場合、各ターゲットの距離値、受波強度に基づき、検出エリア端からのターゲットの幅(走査方向の幅)、およびその幅における受波強度の積算値(面積値)を割り込み情報として記録する。過去の割り込み情報と現在の割り込み情報とを対応付け、割り込み可能性を算出する。例えば上記の各値(ターゲットの幅、面積値)が上昇した場合、割り込み可能性を高くする。この割り込み可能性が所定値以上となった場合に検出エリア端部の近傍に物体が存在すると判定する。
【0014】
また、本発明のレーダ装置は、さらに、前記制御部は、前記推定処理における反射点の距離が、過去の判定処理で判定した物体の距離と略同一の距離である場合、前記推定処理で推定した物体の存在位置を、過去の判定処理で判定した物体の位置に基づいて推定することを特徴とする。
【0015】
この発明では、割り込み情報の距離値が、過去に物体が存在すると判定したときの物体の距離値と略一致した場合に、これらを対応付ける。この過去の物体情報(距離、位置、幅等)に基づいて、推定した物体の距離、位置、幅等を推定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受波強度のスキャン方向分布を算出し、検出エリア端部の分布から、検出エリア外に存在する物体の分布形状を抽出し、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができる。また、一度検出した物体の存在位置を記録しておくことで、検出エリア外に外れた物体についてその存在位置を推定し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態であるレーザレーダ装置(車両用測距装置)のブロック図である。図2(A)は、レーザレーダ装置の車載搭載例を示す図であり、同図(B)は、レーザレーダ装置の検出エリアを示す図である。レーザレーダ装置2は、自車1の前方にレーザ光を照射するように設置されている。
LD(Laser Diode)駆動回路10は、制御回路11で生成された駆動信号に基づいて、LD12の発光を制御する。スキャナ13は、制御回路11の制御に基づいて、LD12により発生されたレーザ光を所定のスキャン範囲でスキャン(走査)させる。スキャナ13より出射されたレーザ光は、投光レンズを介して自車1の走行方向(前方)に出射される(図2(A)参照)。走査位置検出装置14は、スキャナ13におけるレーザ光のスキャン(走査)位置をそれぞれ検出して、制御回路11に出力する。
【0018】
LD12が出射したレーザ光が、検出対象としての前方の物体(例えば、車両)に反射して戻ってきた反射光は、受光レンズにより集光され、PD(Photo Diode)15によって受光され、その反射光の強さに対応する信号が受光回路16に出力される。受光回路16は、入力された反射光の信号レベル(以下、受光レベル、または受光量と言う。)を数値化して、制御回路11に出力する。制御回路11は、入力された受光レベルを、走査位置検出装置14から入力されたスキャン位置に対応してメモリ17に記億する。LD12から出た光は、投光レンズによって所定の広がり角を有するビームに整形される。投光強度は、ビーム中心から外れるにしたがって低下する。本実施形態では、発光強度のピーク値に対してその強度が略半分(または所定の割合)となる角度をビーム広がり角としている。きわめて弱い光であっても、物体からの反射光は存在するが、その反射光を観測できる程度の強度が望まれる程度に、発光強度が必要だからである。このため、ビーム中心の投光強度の半分になる範囲をビーム広がり角としている。この結果、ビーム広がり角の外側であっても投光された光が存在するため、定義したビーム広がり角の外側に物体が存在した場合には、その反射光を観測することが出来る場合がある。この様な測定を、図2(B)に示すように、検出エリア(ビーム広がり角内)を水平スキャン方向(走査方向)に一定幅で分割してなる複数の検出領域(レーザ照射方向)のそれぞれにて行う。各検出領域においては所定回数の発光および受光が行われる。「検出エリア」とは、図2(B)に示すように、レーザ照射範囲と略同一、またはレーザ照射範囲より狭い所定範囲を言う。通常、検出エリア中心(光軸)を自車1の直進時の進行方向に一致するように設置して使用する。
また、メモリ17には、上記計測の際に用いる一時的な変数の他に、検出した物体を判定する手順などのプログラムも記憶している。
【0019】
次に、スキャナ13の投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を図3に示す。
図3において、制御回路11からの制御信号が、駆動回路30に入力される。駆動回路30は、入力された制御信号に基づき、駆動用コイル31に駆動電流を供給する。駆動用コイル31は、電流値に応じた磁界を発生し、設置されている図示しない永久磁石との間で、引力もしくは反力を生じるため、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に支持する支持部材(図示せず)を、それぞれ、水平方向に移動させる。支持部材は、板バネ32により、水平方向に移動自在に支持されている。したがって、支持部材(投光レンズ33と受光レンズ34)は、駆動電流により駆動用コイル31に発生した力と板バネ32に発生する反力がつりあう水平方向の位置に移動して、静止する。なお、各レンズの位置は図示していないセンサにより検出し、このセンサ出力を駆動回路30に入力することでサーボ機構を構成している。
【0020】
このようにして、投光レンズ33と受光レンズ34は、水平方向の所定の位置に移動することができる。
【0021】
スキャナ13によって駆動された、投光レンズ33と受光レンズ34の光路を図4に示す。投光レンズ33は、LD12の前面に設けられ、受光レンズ34は、PD15の前面に設けられている。
【0022】
LD12から出射されたレーザ光は、投光レンズ33の中心方向に偏光される。投光レンズ33の位置が中心にある場合は、図4の実線で示されるような光路で、レーザ光は正面に出射される。出射されたレーザ光は、前方の物体(例えば、車両)で反射され、図4の実線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD15によって受光される。
【0023】
また、スキャナ13によって、図中、上方向に投光レンズ33が移動した場合、レーザ光は、図4の点線で示されるような光路で、図中、上方向に出射される。そして、出射されたレーザ光は、図中、上方向の物体で反射され、図4の点線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD15によって受光される。
【0024】
このようにして、スキャナ13は、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に水平方向の所定の位置に移動することで、レーザ光を水平方向にスキャンする。なお、上記例では、水平方向にのみスキャンする構成を示したが、さらに鉛直方向にスキャンするようにしてもよい。鉛直方向にスキャンする場合、水平方向スキャンの末端で鉛直角度を変更すればよい。
【0025】
本実施形態のレーザレーダ装置2は、水平方向1スキャンの測定を1フレームとし、以下の処理を行う。
【0026】
制御回路11は、メモリ17に記録した各検出領域の受光レベル(受光量)のうち、時間軸上でのピークを検出し、このピークを受光タイミング(投光から受光までの時間)としてその受光量を検出する。制御回路11は、この受光量のスキャン方向の分布を算出する。図5(A)は、受光量のスキャン方向の分布(グラフ)の一例を示したものである。図5(A)に示すグラフの横軸はスキャン水平方向を表し、縦軸は受光量を表す。同図(B)は、その受光タイミングに基づいて算出した距離値を各検出領域毎に表した分布を示すものである。
【0027】
制御回路11は、同図(A)に示す受光量分布からスキャン方向のピークを検出する。例えば、隣接する検出領域の受光量の差分を計算し、この差分が検出領域の変化(スキャン方向)に対してプラスからマイナスに変化する箇所があるか否かによりピークを検出する。また、各検出領域の中心位置に各受光量データをプロットした点を直線で結ぶことによって、折れ線状の連続波形(図3(A)参照)を設定し、これに基づいてピークを抽出するようにしてもよい。制御回路11は、このピークが検出された場合、物体を検出したと判定する。また、受光レベルが所定の閾値以上となる検出領域(または上記連続波形)の両端を物体の両端として判断することで、物体の幅を検出する。この閾値は、予め決定しておいてもよいし、ピークの受光レベルから(例えば50%として)決定してもよい。
【0028】
さらに、制御回路11は、検出エリアの左右端のそれぞれにおいて、検出エリア外から侵入してくる物体が存在するか否かを判断する。図6(A)は、検出エリアの右端外に物体(車両)が存在する例を示す図である。このように、検出エリア外であってもその近傍に物体が存在した場合、同図(B)に示すように、左右端にかけて受光レベルが上昇し、ピークに達しない(スキャン方向に対してプラスからマイナスに変化する箇所がない)分布を形成する。制御回路11は、このような受光レベルの分布を検出した場合、左右端のそれぞれにおいて、各検出領域の受光レベル、閾値以上となる検出領域の幅(走査方向の幅)、受光量の面積値(連続波形の積分値)の情報を割り込み情報として抽出する。
【0029】
また、上述したように、制御回路11は、レーザ光を出射してからその反射光を受光するまでの時間に基づいて、それぞれの検出領域での反射点(ターゲットという)について、自車との距離を測定する。図5(B)は、距離の分布の一例を示したものである。なお、このグラフの横軸はスキャン水平方向を表し、図5(A)で示した受光レベルのスキャン方向分布に対応する。図5(B)に示すように、この例においては、各検出領域において略同一の距離値が得られる。制御回路11は、各ターゲットの距離値、およびスキャン方向(レーザ照射方向)の位置に基づいて、これらをグループ化し、各ターゲットを同一の物体(または物体の候補)であると判断する。なお、本実施形態では、水平方向にのみスキャンする構成を示しているが、さらに鉛直方向にスキャンする場合、距離値、水平方向の検出領域、鉛直方向の検出領域、の3次元の値に基づいてグループ化を行うものとする。
【0030】
制御回路11は、以上の様な処理を毎フレーム行うことで、物体の移動ベクトル(存在位置の変化)を算出し、この物体の幅、反射強度に基づいて、当該物体が先行車であるか否かを判定する。また、上記割り込み情報に基づいて検出エリア内に割り込む物体が存在するか否かを判定する。
【0031】
以下、制御回路11の具体的な処理につき、図7〜図13を参照して詳細に説明する。
図7は、制御回路11の全体処理フローを表す図である。
処理が開始されると、まずST1で、各検出領域に対する上述した測定動作(レーザ光の出射と受光、および受光レベルのデータ取得)を行う。ST2においては、全ての検出領域に対して測定動作が終了したか否か判断する。すなわち1フレーム分のデータを取得したか否かを判断する。全ての検出領域で測定動作が終了していればST3〜ST7の処理を順次実行し、全ての検出領域で測定動作が終了していなければST1に戻って次の検出領域について測定動作を繰り返す。
【0032】
そしてST3では、各ターゲットのグループ化を行い、ターゲット集合としてまとめる。上述したように、制御回路11は、各ターゲットの距離値、およびスキャン方向の位置が近接する場合に、これらをグループ化する。ST4では、ST3でグループ化されたターゲットから、個々の物体、および割り込み情報を抽出(分離)を行う。物体の抽出では、中心位置(距離、および方向)や幅を算出する処理を実行する。なお、上記グループ化されたターゲットが無ければ、処理を簡略化するために、この物体抽出処理は実行しないようにしてもよい。また、検出エリアの全範囲についてこの物体抽出処理を実行するのではなく、グループ化したターゲットの範囲についてのみ、この物体抽出処理を実行するようにしてもよい。
【0033】
次にST5では、前回のフレームにおいてST4で抽出された物体のデータと、今回のフレームにおけるST4で抽出された物体のデータ、および割り込み情報のデータを比較し、これらを対応付ける処理を行う。例えば、前回の物体の位置を基準に所定の広がりを持つ位置範囲を設定し、この位置範囲内に今回の物体の位置が存在すると、同一物と判定するといった処理を実行する。
【0034】
ST6では、前回のフレームにおけるST4で抽出された割り込み情報のデータと、今回のフレームにおけるST4で抽出された割り込み情報のデータとを比較し、対応付けることで割り込み可能性を算出する。割り込み可能性が高い情報については、物体であると確定する。詳細は図12を用いて後述する。
【0035】
ST7では、検出した物体の認識処理を行い、上位システム(車速をコントロールする車両制御装置等)に通知する。ここで、物体の認識とは、検出した物体をST5で対応付けた結果、mフレーム(例えばm=5)継続して検出された場合に、この検出物体を物体であると確定する処理である。
【0036】
以下、ST4の物体抽出、割り込み情報抽出処理、ST5の物体情報の対応付け処理、およびST6の割り込み情報の対応付け処理について詳細に説明する。
図8は、ST4の物体抽出、割り込み情報抽出処理を示すフローチャートである。まず、s11において、制御回路11は、各検出領域の受光レベルから検出エリアの受光レベル分布を算出する(図5(A)、図6(B)参照)。受光レベルの分布を作成した後、ピークの有無を判断する(s12)。例えば上述した連続波形を微分し、この微分値がプラスからマイナスに転じる頂点(微分値がゼロで極大となる点)をピークとすればよい。ピークが有れば、物体が存在するとして、その中心位置、幅を算出し、これを物体情報としてメモリ17に記録する(s13)。中心位置は、抽出したピークのデータに基づいて決定し、物体の幅は、閾値以上となる受光レベルのスキャン方向の幅から決定すればよい。
【0037】
次に、検出エリア左右端で、その左右端にかけて受光レベルが上昇し、ピークに達しない分布(以下、片斜面分布という)が有るか否かを判断し、さらに各検出領域における距離値が略等しいか否かを判断して、検出エリアの近傍に物体が有るか否かを判断する(s14)。片斜面分布だけでは、道路側面におけるガードレール等である可能性が有るが、各検出領域における距離値を判断基準とすることで、割り込み物体を抽出することができる。
【0038】
図9は、ガードレールにレーザ光が反射した場合の受光量レベルを示す図である。同図(A)に示すように、検出エリア右端にガードレールが存在し、道路形状が左カーブであった場合、検出エリア右端が最も自車に近いため、レーザ光の反射強度が強く、同図(B)に示すような片斜面分布を形成する。しかし、このような片斜面分布が存在したとしても、図10に示すように、割り込み物体とガードレールでは距離分布が異なる。同図(A)は、割り込み物体の距離分布を示し、同図(B)は、ガードレールの距離分布を示す。割り込み物体であれば各検出領域で検出されるターゲットは略同じ距離値を示すが、図9(A)のようなガードレールであれば検出エリア右端に向かって距離値が小さくなる。したがって制御回路11は、片斜面分布が存在し、かつ各検出領域における距離値が略等しい場合にこの物体を割り込み物体であると判断する。
【0039】
s14で片斜面分布が存在し、かつ各検出領域における距離値が略等しいと判断した場合、閾値以上となる検出領域数(すなわちスキャン方向の幅)、各検出領域の受光レベル、各領域の距離値、および片斜面分布の面積値を抽出し、これらを割り込み情報としてメモリ17に記録する(s15)。以上の処理を終えると図7の全体処理フローにリターンする。
【0040】
図11は、ST5の物体情報の対応付け処理を示すフローチャートである。s21では、今回のフレームで抽出した各物体、および割り込み情報を過去のフレームの物体情報と比較する。その結果、まずs22において、今回のフレームで抽出した物体情報に対応する過去の物体情報が有るか否かを判断する。例えば、前回のフレームでの物体位置を基準に所定の広がりを持つ位置範囲を設定し、この位置範囲内に今回のフレームの物体位置が存在するか否かを判断すればよい。
【0041】
対応する過去の物体情報が有ると判断した場合、これらを対応付け、この物体が存在すると判定されたフレーム数をカウントする(s23)。このフレーム数がST7の処理で物体の確定処理に用いられる。
【0042】
図12は、ST6の割り込み情報の対応付け処理を示すフローチャートである。s31では、今回のフレームで抽出した各物体、および割り込み情報を過去のフレームの割り込み情報(以下、過去割り込み情報と言う)と比較する。その結果、まずs32において、今回のフレームで抽出した割り込み情報に対応する過去割り込み情報が有るか否かを判断する。例えば、各領域における距離値が略同一であれば対応付けるといった処理を実行する。
【0043】
対応する割り込み情報が有ると判断した場合は、割り込み可能性を算出する(s33)。この割り込み可能性は、検出エリア左右端で検出した片斜面分布が物体である可能性を表すものである。割り込み可能性が高いほど物体が検出エリア外から侵入してくる可能性が高いと判断することができる。割り込み可能性は以下のような数式で表される。
割り込み可能性=前回の値+Ka*ΔD+Kb*ΔE+Kc*ΔF
ここで、Ka、Kb、およびKcは、各項の重み付け係数である。ΔDは、受光レベルの変化量であり、検出エリア端における今回の割り込み情報の受光レベルから過去割り込み情報の受光レベルを減算した値である。ΔEは、検出領域幅の変化量であり、今回の割り込み情報の検出領域幅から過去割り込み情報の検出領域幅を減算した値である。ΔFは、面積値の変化量であり、今回の割り込み情報の面積値から過去割り込み情報の面積値を減算した値である。なお、割り込み可能性の初期値(前回の値が無い場合)は、割り込み情報が過去の物体情報と対応付けてられていなければゼロとなる。過去の物体と対応付けられていた場合、すなわちピーク消失直後に新規検出した割り込み情報の場合は後述する。
【0044】
次に、制御回路11は、この割り込み可能性が所定値以上となったか否かを判断する(s34)。所定値以上となっていればこの割り込み情報が物体であると判定する(s35)。物体の存在方向は、検出エリア端部とすればよい。この場合、ST7の物体確定処理を行わずに、即座に物体であると確定して、上位システムへ通知してもよいし、ST7でmフレーム継続した場合に物体であると確定して上位システムへ通知するようにしてもよい。また、後述するように、この物体に割り込みフラグを割り当て、ST7でmフレームよりも少ないnフレーム(n<m)継続した場合に物体であると確定して上位システムへ通知するようにしてもよい。
【0045】
次に、制御回路11は、新規検出物体(ピークを検出したが、ST5で過去の物体と対応付けできなかった物体)に対応する過去割り込み情報が有るか否かを判断する(s36)。この場合、物体の各領域における距離値と過去割り込み情報の各領域における距離値が略同一であれば対応付けるといった処理を実行する。対応する割り込み情報が有ると判断した場合は、この検出物体について割り込みフラグを割り当て、ST7で物体と確定するフレーム数を、mフレームよりも少ないnフレーム(n<m、例えばn=1)とする。
【0046】
次に、制御回路11は、今回の割り込み情報に対応する過去の物体情報が有るか否かを判断する(s38)。この場合、割り込み情報の各領域における距離値と過去の物体情報の各領域における距離値が略同一であれば、これらを対応付けるといった処理を実行する。割り込み情報が過去の物体情報と対応付けられた場合、この割り込み情報は、検出エリア内から検出エリア外に出た物体であると判定し、過去の物体情報を保持しながら、その物体情報に基づいて検出エリア外に出た物体の位置を推定する(s39)。検出エリア外に出た物体の位置は、過去の物体情報、および割り込み情報から推測される物体の位置である。なお、過去の物体情報から検出エリア外に出た物体の幅を推定するようにしてもよい。物体の位置の推測手法は、どのようなものであってもよいが、例えば次のようにして行う。
【0047】
まず、割り込み可能性を基に、検出エリア端からの角度を推定する。図13(A)は、検出エリア端からの角度と割り込み可能性を示す図である。同図(A)に示すグラフの横軸は検出エリア端からの角度を示し、縦軸は割り込み可能性をピーク消失直後の割り込み可能性で除算した値を示す。ピーク消失直後の割り込み可能性とは、新規に割り込み情報を抽出し、これが過去の物体情報と対応付けられた場合の、割り込み可能性の初期値を表す。ピーク消失直後の割り込み可能性は、以下の数式で表される。
ピーク消失直後の割り込み可能性=Ka*ΔG+Kb*ΔH+Kc*ΔI
ここでKa、Kb、およびKcは、各項の重み付け係数である。ΔGは、新規に抽出した割り込み情報の受光レベルであり、検出エリア端部での受光レベルの値である。ΔEは、検出領域幅である。ΔFは、面積値である。物体が検出エリア外に移動して受光レベルの分布からピークを消失した場合、新規に割り込み情報を抽出するが、割り込み可能性を初期値を上記のように設定することで、検出エリア端から離れるにしたがって割り込み可能性が小さくなる。これにより、物体の検出エリア端からの角度を推定する。物体の距離については、対応付けられている過去の物体情報の距離から推定する。また、今回抽出した割り込み情報の物体の距離値から推定してもよい。検出エリア端からの角度と距離値により検出エリア外に出た物体の位置を推測する。また、検出エリア外に出た物体の幅は、過去の物体情報の幅を用いればよい。
【0048】
また、検出エリアよりも広い撮影視野をもつカメラ(望ましくは高ダイナミックレンジを有するCMOSセンサ)を用いて自車前方を撮影し、この画像を用いて物体の位置を計測するようにしてもよい。このセンサにより計測される物体の位置を検出エリア外に出た物体情報として用いればよい。
【0049】
図12において、最後に、不要となった割り込み情報、物体情報をメモリから削除する(s40)。例えば、そのフレームにおいて、対応付けされる物体情報、および割り込み情報が無かった情報を削除する。これらの処理を終えると、図7の全体処理にリターンする。
【0050】
図7のST7において、検出した物体の認識処理を行い、上位システムに通知する。ここで、検出した物体をs23でのカウント数を用い、mフレーム継続して検出された場合に、この検出物体を物体であると確定し、上位システムに通知する。また、s35、またはs37で割り込みフラグが割り当てられていた場合は、nフレーム継続して検出されていた場合に、この検出物体を物体であると確定し、上位システムに通知する。
【0051】
以上のようにして、本実施形態のレーザレーダ装置は、割り込み情報、割り込み可能性を用いることで、検出エリア外から検出エリア内に侵入してくる障害物などを早期に検出することができる。また、割り込み情報を過去に検出していた物体と対応付けることで、検出エリア外に外れた物体についてその存在位置を推定し続けることができる。
【0052】
なお、本実施形態においてはレーザレーダ装置について説明したが、本発明の構成は、ミリ波レーダなど、他のレーダ装置に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態であるレーザレーダ装置のブロック図
【図2】レーザレーダ装置の車載搭載例と検出エリアを示す図
【図3】スキャナの投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図
【図4】スキャナによって駆動された投光レンズと受光レンズの光路を示す図
【図5】受光レベルと距離値の分布を示す図
【図6】検出エリア右端の検出エリア外近傍に物体が存在する例を示す図
【図7】全体処理の手順を示すフローチャート
【図8】物体抽出、割り込み情報抽出処理の具体的な手順を示すフローチャート
【図9】ガードレールにレーザ光が反射した場合の受光量レベルを示す図
【図10】割り込み物体とガードレールの距離分布を示す図
【図11】割り込み情報の対応付け処理の具体的な手順を示すフローチャート
【図12】割り込み情報の対応付け処理を示すフローチャート
【図13】検出エリア端からの角度と割り込み可能性を示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を照射する電磁波照射部と、
前記電磁波の照射方向からの反射波を受波する電磁波受波部と、
前記電磁波照射部の電磁波照射方向、および前記電磁波受波部の受波方向を所定の検出エリアの範囲で揺動させるスキャン部と、
前記揺動による角度刻みの照射方向毎に、前記電磁波照射部に電磁波を照射させてその反射波を前記電磁波受波部に受波させ、この反射波の受波強度の時間軸上でのピークに基づいて当該照射方向における反射点の距離を測定する制御部と、
を備えたレーダ装置であって、
前記制御部は、隣接する複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在するとき、反射点の受波強度が最大となる方向、およびその距離に物体が存在すると判定する判定処理、
前記検出エリアの端部の複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在し、かつその反射点の受波強度が前記検出エリアの端部に向けて上昇しているとき、前記検出エリアの外に物体が存在すると推定する推定処理を実行するレーダ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定処理で、略同方向、および同距離に複数回物体が存在すると判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する確定処理を実行し、
前記推定処理で物体が存在すると推定された後、前記判定処理で、前記推定処理の反射点と略同一の距離で物体が存在すると前記確定処理の判定回数よりも少ない回数で判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記推定処理における各反射点の距離が、過去の推定処理の反射点と略同一の距離である場合、
所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、過去の推定処理における所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、を比較して推定した物体の割り込み可能性を算出し、
前記割り込み可能性が所定値以上となった場合に、前記検出エリアの端部の近傍に物体が存在すると判定する請求項1、または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記推定処理における反射点の距離が、過去の判定処理で判定した物体の距離と略同一の距離である場合、
前記推定処理で推定した物体の存在位置を、過去の判定処理で判定した物体の位置に基づいて推定する請求項1、請求項2、または請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項1】
電磁波を照射する電磁波照射部と、
前記電磁波の照射方向からの反射波を受波する電磁波受波部と、
前記電磁波照射部の電磁波照射方向、および前記電磁波受波部の受波方向を所定の検出エリアの範囲で揺動させるスキャン部と、
前記揺動による角度刻みの照射方向毎に、前記電磁波照射部に電磁波を照射させてその反射波を前記電磁波受波部に受波させ、この反射波の受波強度の時間軸上でのピークに基づいて当該照射方向における反射点の距離を測定する制御部と、
を備えたレーダ装置であって、
前記制御部は、隣接する複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在するとき、反射点の受波強度が最大となる方向、およびその距離に物体が存在すると判定する判定処理、
前記検出エリアの端部の複数の照射方向のそれぞれに、略同一距離の反射点が存在し、かつその反射点の受波強度が前記検出エリアの端部に向けて上昇しているとき、前記検出エリアの外に物体が存在すると推定する推定処理を実行するレーダ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定処理で、略同方向、および同距離に複数回物体が存在すると判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する確定処理を実行し、
前記推定処理で物体が存在すると推定された後、前記判定処理で、前記推定処理の反射点と略同一の距離で物体が存在すると前記確定処理の判定回数よりも少ない回数で判定されたとき、この判定処理の方向、および距離に物体が存在すると確定する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記推定処理における各反射点の距離が、過去の推定処理の反射点と略同一の距離である場合、
所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、過去の推定処理における所定強度以上の反射点が存在する走査方向の幅、およびその幅における各反射点の受波強度の積算値と、を比較して推定した物体の割り込み可能性を算出し、
前記割り込み可能性が所定値以上となった場合に、前記検出エリアの端部の近傍に物体が存在すると判定する請求項1、または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記推定処理における反射点の距離が、過去の判定処理で判定した物体の距離と略同一の距離である場合、
前記推定処理で推定した物体の存在位置を、過去の判定処理で判定した物体の位置に基づいて推定する請求項1、請求項2、または請求項3に記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−240384(P2007−240384A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64677(P2006−64677)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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