説明

レーダ装置

【課題】機械走査方式のレーダ装置における受光素子の数を低減して、装置のコストダウン、小型化を図ることが可能な機械走査方式のレーダ装置を提供する。
【解決手段】アンテナをモータで往復動させて走査する機械走査方式のレーダ装置であって、アンテナの反転、振り角をスリット板8と発光素子と受光素子を備えるエンコーダ7で検出する機械走査方式のレーダ装置において、エンコーダ7には、発光素子と、受光素子28を設け、スリット板8に設けるスリット4は、スリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで、パターンを非対称とした。パターンを非対称とするには、スリット板8の左端と右端でスリット数を変える、スリットの幅を左右で変える、等がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、特に、レーダ装置の中心軸に対して、アンテナ面が機械的に左右方向にスイングさせられて走査を行う機械走査方式のレーダ装置において、簡単な構成でレーダ装置のアンテナの走査角度を検出することができる機械走査方式のレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路を走行する前後の車両の衝突事故を未然に防止するために、車間距離警報システムが実用段階にあり、このシステムに使用される車間距離計測装置として車載用のレーダ装置が開発されている。このようなレーダ装置の1つとしてミリ波を使用したミリ波レーダ装置がある。ミリ波レーダ装置は、車両の前方にミリ波を所定の角度範囲で発射し、ターゲットに当たって反射して返ってきたミリ波を受信することによってターゲットとの距離、相対速度、角度(相対横位置)を求め、制御ECUにターゲットの位置を伝えるシステムである。
【0003】
ミリ波レーダ装置においてターゲットとの角度を検出する方式には、大きく分けて機械走査方式と電子走査方式とがある。また、制御ECUにおいては、ミリ波レーダ装置から得たターゲット情報からブレーキ制御、アクセル制御、シートベルト制御、ドライバーへの警告などを行い、前方車両との車間を制御するアダプティブクルーズコントロール(ACC)や、緊急ブレーキング時にシートベルトをモータによって巻き取って乗員の初期拘束性を高めるプリクラッシュセーフティ(PCS)などのシステムを構築している。
【0004】
本願出願人は、機械走査方式のミリ波レーダ装置を車両に取り付ける際のアンテナの電波の送信軸の、車両軸との軸合わせとして、レーダ装置の電波の照射角度を計測して、これが車両軸と平行になるように調整する方法を特許文献1において提案している。
【0005】
図1(a)は、このようなレーダ装置10の車両(自動車)50への取り付け位置の一例を示すものである。この例のレーダ装置10は、車両50のバンパ51の背後に搭載されている。レーダ装置はこの他にも、フロントグリル52の背後に設置される場合もある。図1(b)は(a)のレーダ装置10の外観を示すものである。レーダ装置10は、シャーシ1とカバー2とから構成されている。一般に、シャーシ1は金属製であり、カバー2は樹脂製である。シャーシ1とカバー2は風雨が侵入しないように接続部11で密封され、接続部11の周囲に設けられた取付片12にネジやボルトが挿通されて自動車に取り付けられる。
【0006】
図2(a)は、図1(b)に示したレーダ装置10からカバー2を取り外した状態を示すものであり、機械走査方式の構成を示している。この図から分かるように、シャーシ1の内部には電波の送信、及び受信を行うアンテナ3が設けられている。シャーシ1のカバー2との接続部11には溝部13が形成されており、この溝部13にカバー2の開口端23が挿入されてカバー2がシャーシ1に取り付けられる。そして、この溝部13とカバー2との間を、図示しないシール材でシールすることにより、溝部13に嵌め込まれたカバー2によりシャーシ1が密封されることになる。
【0007】
そして、機械走査方式のレーダ装置10には、アンテナ3を左右に振るための駆動機構が内蔵されていると共に、左右に振られたアンテナ3の振り角(アンテナ位置)を検出するためのエンコーダ7とスリット板8が設けられている。図2(b)は(a)のシャーシ1を側面から見たものである。シャーシ1の中には、詳細な機構は図示及び説明を省略するが、アンテナ3を(c)のように左右にスイングさせることができるアンテナ3の駆動機構30が設けられている。4はスリット板8に設けられているスリットである。この駆動機構30により、アンテナ3は(c)に実線で示す位置から破線で示す位置の間でスイングすることができる。なお、図2(a)〜(c)に示す取付片12に取り付けられている符号6で示す部材は、弾性体で形成されたグロメットである。
【0008】
図3(a)は、図2(a)から(c)に示したスリット板8の詳細な構成を示すものである。スリット板8にはアンテナ3にスリット板8を取り付けるための3つの取付孔81と、複数のスリット4が設けられている。これら複数のスリット4は、同じ形状をしていると共に、スリット板8がアンテナ3に取り付けられた時のアンテナ3のスイング中心Yに対して放射状に等間隔で並んでいる。この図に示す一点鎖線Tがスリット4の中心部のスイング軌跡であり、後述するエンコーダの受光素子はこのスイング軌跡Tの上に配置されている。
【0009】
図3(b)は、説明を簡単にするために、図2に示したスリット板8に設けられた複数個のスリット4の数を減らすと共に、スリット4の配置を直線状にし、スリット板8の往復動作も直線としたモデル図である。このモデル図ではスリット板8は矢印で示すように左右に往復直線運動するものとし、スリット4は同じ大きさのものがこのスリット板8の上に等間隔に並んでいるものとする。そして、エンコーダ7は、図3(c)に拡大して示すように、発光部7Aと受光部7Bとから構成され、発光部7Aと受光部7Bはこのスリット板8を挟むように設けられている。また、エンコーダ7は図示しない基板の上に実装されており、この基板にはエンコーダ7からの信号とアンテナからの信号を処理してターゲット位置情報を演算する演算装置がある。演算装置については後述する。
【0010】
スリット板8の一方の側にあるエンコーダ7の発光部7Aは、1個の発光素子17を備えており、スリット板8の他方の側にある受光部7Bは、2個の受光素子27を備えている。発光素子17は、スリット板8に向けて光を照射する。2個の受光素子27は、スリット板8に開けられたスリット4を通して入力される発光素子17からの光が同時に入射されるように、スリット4の幅の範囲に並んで配置されている。エンコーダ7の発光部7Aと受光部7Bの間をスリット板8が通過することにより、発光部7Aから受光部7Bへの光が通過、遮断を繰り返す。演算装置は2チャンネルあるエンコーダ7の出力のエッジを検出し、エンコーダ7の出力パターンからアンテナの反転位置、アンテナの走査方向を検出する。
【0011】
図4(a)は、図3(c)に示した構成のエンコーダ7において、スリット板8が図3(c)に示す状態から左方に移動した時の状態を示すものである。状態Aは、図3(c)に示す状態と同じ状態であり、発光素子17からの光がスリット4を通じて2つの受光素子27に入っている。ここで、左側の受光素子27の出力をCHA,右側の受光素子27の出力をCHBとすると、状態Aの受光素子27の出力CHA,CHBは、図4(b)に示すように共に”H”になる。
【0012】
状態Bは、状態Aからスリット板8が左方に移動し、発光素子17からの光がスリット4を通じて一方の受光素子27(CHA)には入っているが、他方の受光素子27(CHB)には入っていない状態である。状態Bの受光素子27の出力CHA,CHBは、図4(b)に示すように、出力CHAが”H”のままであるが、出力CHBは”L”となる。状態Cは、状態Bからスリット板8が左方に移動し、発光素子17からの光がスリット板8に遮断されて2つの受光素子27の何れにも入っていない状態である。状態Cの受光素子27の出力CHA,CHBは、共に”L”である。
【0013】
状態Dは、状態Cからスリット板8が左方に移動し、発光素子17からの光がスリット板8に遮断されて一方の受光素子27(CHA)には入っていないが、他方の受光素子27(CHB)にはスリット4を通じて入っている状態である。状態Dの受光素子27の出力CHA,CHBは、出力CHAが”L”のままであるが、出力CHBは”H”となる。この後、受光素子27の出力は、状態Aの出力から状態Dの出力を繰り返す。
【0014】
図5(a)は、スリット板8の左方への移動が状態Cで止まり、この後に右方に折り返す状態を示すものである。このときは、状態Aから状態Cに進んだ後、スリット板8が逆方向に移動するので、状態Cの次は状態Bに戻り、以後は状態A、状態D、状態C、状態Bが繰り返される。図5(b)は時間に対するアンテナの振り角の変化を示すものであり、図5(c)はこの時の受光素子27の出力CHA,CHBの変化の一例を示すものである。
【0015】
例えば、スリット板8に設けられたスリット4が図3(b)に示されるようなパターンであった場合、エンコーダ7の出力CHA,CHBの”H”と”L”の変化は図5(b)、(c)に示すようになり、出力CHA,CHBが共に”H”になる組み合わせが2回続いたところがスリット板8の反転位置となる。そして、反転位置で検出したエッジが出力CHBであれば、スリット板8が左から右へ反転したと判定でき、反転位置で検出したエッジが出力CHAであれば、スリット板8が右から左へ反転したと判定できる。
【0016】
図6はレーダ装置10の演算装置とその周辺30の構成を示すものであり、マイクロプロセッサ20を備えている。アンテナ3の背面側にはミリ波ユニット5が設けられている。アンテナ3とミリ波ユニット5は、マイクロプロセッサ20からの駆動パルスが入力されるモータドライバ31によってモータ32が駆動されると、走査動作を行う。また、アンテナ3とミリ波ユニット5の近傍には、前述のエンコーダ7が設けられており、エンコーダ7からのパルスはマイクロプロセッサ20に入力される。更にミリ波ユニット5から出力されるIF信号は、ミキサ、アンプ、フィルタを内蔵する処理回路9に入力され、この処理回路9においてターゲット信号(ビート信号)が生成されてマイクロプロセッサ20に入力される。
【0017】
マイクロコンピュータ20は、エンコーダ9からのパルスと、処理回路9からのターゲット信号を処理してターゲット位置情報を演算する。また、2チャンネルあるエンコーダ7の出力のエッジを検出し、エンコーダ7の出力パターンからアンテナの反転位置、アンテナの走査方向を検出する。
【0018】
【特許文献1】特開2003−255041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、一般に、図3(b)に示したスリット板8には、アンテナ3の振り角より広い角度範囲でスリット4が設けられており、アンテナの軌跡に対してエンコーダ7の出力波形は図5(b)に示したように、スリット板8とアンテナの位置関係のずれやバラツキ、スリット幅のバラツキ等により、スリット板8の反転位置におけるエンコーダ7の出力波形CHA、CHBの論理、パルス幅にはあらゆるパターンが想定される。従来技術では、エンコーダ7の受光素子27を2個設け、2つの出力波形CHA、CHBを処理することにより、スリット板8の反転位置の検出及び走査方向を検出していた。従って、どうしてもエンコーダ7には受光素子27が2個必要であり、数を減らすことができなかった。
【0020】
そこで、本発明は、前記従来の機械走査方式のレーダ装置における受光素子の数を減らすことにより、演算装置の演算負荷を低減することができるレーダ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成する本発明のレーダ装置は、アンテナをモータで往復動させて走査し、アンテナの反転、振り角を、スリット板と発光素子と受光素子を備えるエンコーダで検出する機械走査方式のレーダ装置において、エンコーダには、対向する位置に発光素子と受光素子の1組のみを設け、スリット板に設けるスリットは、スリット板の中心に対して左方向と右方向とで、パターンを非対称としたことを特徴としている。
【0022】
パターンを非対称とする方法としては、(1)スリットのパターンを、スリット板の中心に対して左端部に設けるスリット数と、右端部に設けるスリット数を変える、(2)スリットの幅を、スリット板の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合をスリット板の中心に対して左方向と右方向とで変える、(3)スリットの幅を、スリット板の中心に対して離れる程狭くすると共に、狭くする割合をスリット板の中心に対して左方向と右方向とで変える、等がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーダ装置に設けるスリット板のスリットのパターンをスリット板の中心に対して左右方向で変更することにより、エンコーダの受光素子の数を減らすことができ、レーダ装置の小型化、及びコストダウンを図ることができるという効果がある。また、演算装置の演算負荷を低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図7(a)は本発明の第1の実施例のスリット板8の構成を示すものである。第1の実施例のスリット板8に対しては、二点鎖線で示す位置にあるエンコーダ7には、1個の受光素子28しか設けておらず、エンコーダ7からの出力は1チャンネルである。
【0025】
本発明では、スリット板8に設けるスリット4は、スリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで、配置パターンを非対称としており、第1の実施例ではスリット板8の中心Cに対して左端部と右端部のみでスリット4の大きさ(幅)を変えたり、無くしたりしている。即ち、第1の実施例では、左端部に設けるスリット4は幅を拡大し、右端部に設けるスリット4は埋めて無くしており、具体的には、左端部では2つのスリット4を繋げて1つの大きなスリットとし、右端部では2つのスリット4を埋めて光遮断部を作り、スリットの数を0としている。
【0026】
第1の実施例のスリット板8は、その全長に対して、符号Dで示す部分がエンコーダ7の受光素子28の前を通過する部分であり、符号A,Bで示す部分がスリット板8の反転位置である。そして、第1の実施例では、反転位置Aではスリット4の幅を広くして、エンコーダ7の受光素子28の前をこの広くしたスリット4が通過するようにしてあり、反転位置Bではスリット4を無くして、エンコーダ7の受光素子28の前をこのスリット4を無くした部分が通過するようにしてある。
【0027】
図7(b)は、図7(a)に示すスリット板8がスイングした時に、エンコーダ7から出力される出力信号を示すものである。図6に示したマイクロプロセッサ20は、エンコーダ7から出力されるパルス信号の立ち上がり、立ち下がりエッジを検出し、各エッジ間の時間を検出しておく。エンコーダ7の前に反転位置Aが来た場合について説明すると、この場合は、反転位置Aの前では各エッジ間の時間tnー3,tn−2,tn−1が略一定であるのに対して、反転位置Aではスリット板8の移動が一旦停止し、反転位置Aにおけるスリット4の幅が他のスリット4の幅より広いために、反転位置Aにおけるエッジ間の時間tnが長くなっている。
【0028】
従って、第1の実施例では、パルス幅が長くなったことによって反転位置を検出することができる。そして、反転位置Aでは、スリット4の幅が他のスリット4の幅より広いために、長時間に渡って”H”レベルが維持されるので。これによって反転位置Aを特定することができる。逆に、反転位置Bでは、パルス幅が長くなったことによって反転位置を検出し、反転位置Bにはスリット4がないので、長時間に渡って”L”レベルが維持されることによって反転位置Bを特定することができる。
【0029】
このように、第1の実施例では、スリット板4の両端部のスリットを、一方では幅を広くし、他方ではスリットを埋めて無くしているので、スリット板8の反転位置におけるエンコーダ7の出力パルス幅が大きくなると共に、出力論理が必ず反転するため、スリット板8の反転位置と動作方向を、1つの受光素子28のみで検出することができる。この結果、機械走査方式のレーダ装置に比較的安価な1チャンネル出力のエンコーダを使用することができ、製品コストを下げることができる。また、一般的に2チャンネルのエンコーダに比べて1チャンネルの方がサイズが小さいため、製品を小型化できる。
【0030】
図7(c)は、第1の実施例の変形例のスリット板8の構成を示すものである。図7(a)に示したスリット板8では、左端部において2つのスリット4を繋げて1つの大きなスリットとし、右端部では2つのスリット4を埋めて光遮断部を作ってスリットの数を0とした。一方、この変形例ではスリット板8の左端部に位置する1つのスリット4の幅を端部側に広げて大きなスリット4とし、右端部では1つのスリット4を埋めて光遮断部を作っている。このように、第1の実施例では、スリット板8の中心Cに対して左端部と右端部のみでスリット4の幅を広げるか、スリット4を埋めているが、スリット4の広げ方とスリットの埋め方にはこの他にも種々の実施例が可能である。
【0031】
図8(a)は、本発明の第2の実施例のスリット板8の構成とエンコーダ7を示すものである。第2の実施例では、スリット板8に設けるスリット4の幅を、スリット板8の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合をスリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで変えている。
【0032】
例えば、図8(a)に示す実施例では、スリット板8が左右に振れていない状態の時にエンコーダ7の前に位置するスリット4の幅を「1」とした場合に、スリット板8の中心に対して右側のスリット4の幅を、「1.1」、「1.3」、「1.5」、「1.7」のように定め、スリット板8の中心に対して左側のスリット4の幅を、「1.2」、「1.4」、「1.6」、「1.8」のように定めてある。スリット4とスリット4の間の光の遮断部分の幅についても同様に、その幅を、スリット板8の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合を、スリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで変えている。
【0033】
なお、スリット板8に設けるスリット4の幅を、スリット板8の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合をスリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで変えておけば、スリット4とスリット4の間の光の遮断部分の幅については一定であっても構わない。
【0034】
図8(b)は、スリット板8に設けるスリット4の幅、及びスリット4とスリット4の間の光の遮断部分の幅を、共にスリット板8の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合をスリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで変えた場合の、エンコーダ7の出力波形を示すものである。図8(a)に示すスリット板8が、例えば、矢印Rで示す右方向に振れた場合、エンコーダ7からの出力波形のパルス幅(各エッジ間の時間)はtn−4,tn−3,tn−2,tn−1,tn,tn+1,tn+2,tn+3,tn+4のように変化する。
【0035】
ここで、パルス幅がtn−4から次第に大きくなっていき、パルス幅tnが最大であったとすると、パルス幅tnが最大となった位置がスリット板8の反転位置であると判断できる。また、左右で異なるパルス幅の増大率を予め図6に示したマイクロプロセッサ20に記憶させておけば、パルス幅の大きさによって、スリット板8の動作方向を判別することができる。パルス幅の変化は、ハイレベル”H”のパルス幅だけでも判断できるので、スリット4とスリット4の間の光の遮断部分の幅については一定であっても構わないのである。
【0036】
図8(c)は、本発明の第3の実施例のスリット板8の構成とエンコーダ7を示すものである。第3の実施例では、スリット板8に設けるスリット4の幅を、スリット板8の中心に対して離れる程狭くすると共に、狭くする割合をスリット板8の中心Cに対して左方向と右方向とで変えている。また、第3の実施例では、スリット4とスリット4の間の光の遮断部分の幅については一定としている。
【0037】
第3の実施例では、エンコーダからのパルス出力波形の図示は省略するが、スリット板8がどちらかの方向に振れた場合、エンコーダ7からの出力波形のパルス幅が次第に小さくなっていき、最小のパルス幅となった後に再び増大する。よって、パルス幅が最小となった位置がスリット板8の反転位置であると判断できる。また、左右で異なるパルス幅の縮小率を予め図6に示したマイクロプロセッサ20に記憶させておけば、パルス幅の大きさによって、スリット板8の動作方向を判別することができる。第3の実施例では、パルス幅の変化は、ハイレベル”H”のパルス幅だけで判断する。
【0038】
図9(a)は、本発明の第4の実施例のスリット板の構成とエンコーダを示すものである。第4の実施例は、スリット板8に設けるスリット4のパターンを、スリット板8の中心Cに対して左端部と右端部のみで変更したものである。具体的には、スリット板8の左端部に設ける幅の狭いスリットの数と、右端部に設ける幅の狭いスリットの数を変えている。(a)に示す例では、スリット板8の左端部には幅の狭いスリット14を2個設けており、右端部には幅の狭いスリット14を1個設けている。残りのスリット4の幅は同じである。
【0039】
図9(b)は、(a)に示したスリット板8を挟んで設けられる図示しないエンコーダからの出力波形を示すものである。図8(a)に示すスリット板8が、例えば、最初に矢印Rで示す右方向に振れた場合、(b)の上側の波形に示すように、エンコーダ7からの出力波形には、スリット板8の反転位置において2個の幅の狭いパルスが現れる。逆に、矢印Lで示す左方向に振れた場合、(b)の下側の波形に示すように、エンコーダ7からの出力波形には、スリット板8の反転位置において1個の幅の狭いパルスが現れる。従って、パルス信号の各エッジ間の時間(パルス幅)を計算し、パルス幅が小さくなった時に反転位置と判定し、小さくなったパルス幅の数により、スリット板8の動作方向を判定することができる。
【0040】
図10は、図7(a)に示したスリット板8を使用した時に、エンコーダ7から出力されるパルスにより、アンテナの振り角を計算する方法を説明するものである。縦軸がアンテナの振り角(deg)、横軸が時間を示しており、符号ATがアンテナの軌跡である。そして、アンテナの軌跡ATが+方向に変位している時には図7(a)のスリット板8が左方向に移動しており、アンテナの軌跡ATが−方向に変位している時には図7(a)のスリット板8が右方向に移動していることを示す。
【0041】
前述のように、エンコーダ7からの出力パルスの幅が大きくなってから後のエッジ検出位置がスリット板8の反転位置、即ちアンテナ反転位置である。この図では、エンコーダ7からの出力パルスの幅が長くハイレベル”H”を維持した後のエッジAと、エンコーダ7からの出力パルスの幅が長くローレベル”L”を維持した後のエッジBでアンテナ反転判定が行われる。アンテナの正確な反転位置は、例えば、アンテナ反転判定位置Bと、この前のエッジの位置B’の中心として求めることができ、アンテナの振り角0°の位置は、アンテナ反転判定位置Aとアンテナ反転判定位置Bの中心として求めることができる。
【0042】
また、エンコーダパルスのエッジ−エッジ間の時間と角度の関係は、スリット板8のスリット間隔(パルス幅Tn)で決まるため、アンテナの振り角0°の位置からの対象エッジまでの時間を計算すれば、アンテナの振り角を算出することができる。
【0043】
以上本発明の実施例を機械走査方式のレーダ装置について説明したが、本発明のスリット板の構成は、レーダ装置以外にも、コピー機やプリンタ等で使用されているリニアエンコーダにも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は車両において従来のレーダ装置を搭載する位置の一例を示す斜視図、(b)はレーダ装置の一例の全体構造を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1(b)に示したレーダ装置が機械走査方式である場合の、カバーと本体の分解斜視図、(b)は(a)の本体を側面から見た側面図、(c)はレーダ装置のアンテナが走査する範囲を示す図である。
【図3】(a)は従来の機械走査方式のレーダ装置に使用するスリット板の拡大図、(b)は(a)のスリット板とスリット板のスリットを読み取るエンコーダを正面から見たモデル図、(c)は(b)のスリット板とエンコーダを部分的に拡大して示す平面図である。
【図4】(a)は従来の機械走査方式のレーダ装置におけるスリット板の動作とエンコーダの位置関係を説明する説明図、(b)は(a)に示されるエンコーダの出力信号をスリット板に対応させて示すテーブルである。
【図5】(a)は従来の機械走査方式のレーダ装置におけるスリット板の折り返し動作とエンコーダの位置関係を説明する説明図、(b)は(a)に示されるスリット板の振り角とエンコーダの出力信号を対比させて示す説明図、(c)はエンコーダの出力信号の変化からスリット板の折り返し位置を検出する手順を説明するテーブルである。
【図6】従来の機械走査方式のレーダ装置の内部構成を示すブロック構成図である。
【図7】(a)は本発明の第1の実施例のスリット板の構成を示す正面図、(b)は受光素子の出力波形を示す波形図、(c)は本発明の第1の実施例の変形例のスリット板の構成を示す正面図である。
【図8】(a)は本発明の第2の実施例のスリット板の構成とエンコーダを示す正面図、(b)は受光素子の出力波形を示す波形図、(c)は本発明の第3の実施例のスリット板の構成を示す正面図である。
【図9】(a)は本発明の第4の実施例のスリット板の構成とエンコーダを示す正面図、(b)は受光素子の出力波形を示す波形図である。
【図10】エンコーダからの出力パルスにより、アンテナの振り角を計算する方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 シャーシ
2 カバー
3 アンテナ
4 スリット
5 ミリ波ユニット
7 エンコーダ
7A 発光部
7B 受光部
8 スリット板
10 レーダ装置
14 幅の狭いスリット
17 発光素子
27,28 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナをモータで往復動させて走査し、アンテナの反転、振り角を、スリット板と発光素子と受光素子を備えるエンコーダで検出するレーダ装置において、
前記エンコーダには、対向する位置に発光素子と受光素子を設け、
前記スリット板に設けるスリットは、前記スリット板の中心に対して左方向と右方向とで、パターンを非対称としたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記スリット板に設けるスリットのパターンを、前記スリット板の中心に対して左端部と右端部のみで変更したことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記左端部に設けるスリット数と、前記右端部に設けるスリット数を変えたことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記スリット板に設けるスリットの幅を、前記スリット板の中心に対して離れる程広くすると共に、広くする割合を前記スリット板の中心に対して左方向と右方向とで変えたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記スリット板に設けるスリットの幅を、前記スリット板の中心に対して離れる程狭くすると共に、狭くする割合を前記スリット板の中心に対して左方向と右方向とで変えたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−204505(P2009−204505A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48037(P2008−48037)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】