説明

レーダ装置

【課題】他車両の数に応じて符号信号の符号長さを調節することのできるレーダ装置を提供する。
【解決手段】カメラで自車両の走行方向を撮像した画像を画像処理することにより他車両の数を計数し、計数した数に基づいて符号信号の符号長さと次数を決定する。決定した符号長さと次数で生成した符号信号を電磁波として空間に放射し、当該符号信号と受信部によって受信された信号との相関を演算することにより、他車両との相対距離などを対象物の情報として算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置に関し、より特定的には、車両などの移動体に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体に搭載するためのレーダ装置として、送信した送信波が対象物で反射した反射波を受信し、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間や、送信波と反射波との位相差などに基づき、対象物との相対距離や相対速度などの対象物の情報を算出するレーダ装置が実用化されている。このようなレーダ装置として、例えば、特許文献1に記載されている自動車用前方警戒レーダ装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。
【0003】
従来技術では、他車両のレーダ装置から送信された送信波を自車両のレーダ装置が反射波として受信することによって対象物の誤った情報を算出することを防ぐために、車両に固有の識別符号と送信用擬似雑音信号とを混合した信号を送信波として送信している。より詳細には、従来技術では、車両に固有の識別符号とPN符号との排他的論理和を演算し、演算した符号信号で搬送波を位相変調して、変調した信号を送信波として送信する。そして、反射波を受信すると、従来技術では、受信用PN符号と反射波との積を演算し、演算結果から識別符号を復調して自車両の識別符号と比較する。従来技術では、復調した識別符号と、自車両の識別符号とが一致したときにのみ、対象物の情報を示すデータを生成する。
【特許文献1】特開平7−84035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、次に示す課題を有している。上記従来技術では、自車両のレーダ装置が送信した送信波の反射波と他車両から送信された送信波とを識別するときの、識別可能な他車両のレーダ装置の数は、多ければ多いほど誤った送信波を受信する可能性を低くすることができる。しかしながら、識別可能な他車両のレーダ装置の数を多くするためには、識別符号の情報量(ビット数)を増加させなければならない。そして、情報量の多い識別符号に基づいて送信波を生成すると、生成するために必要な電力が多くなり、生成された送信波を1度送信するのに必要な時間及び当該送信波の反射波を1度受信するのに必要な時間もそれぞれ長くなる。
【0005】
それ故に、本発明は、他車両の数に応じて符号信号の符号長さを調節することのできるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下に述べる特徴を有する。
第1の発明は、測定範囲以内に存在する対象物を測定するレーダ装置であって、測定範囲以内の画像を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に基づき、測定範囲以内に存在する他車両の数を他車両数として計数する計数手段と、他車両数に基づいて符号長さを決定し、決定した符号長さの符号信号を生成する符号信号生成手段と、符号信号を電磁波として放射する放射手段とを備える。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、電磁波が対象物で反射した反射波を受信する受信手段と、電磁波として放射される符号長さの符号信号と反射波との相関を演算する演算手段と、相関が予め定められたしきい値以上となる反射波に基づき、当該反射波を反射した対象物の情報を算出して測定する算出手段とをさらに備える。
【0008】
第3の発明は、第1の発明に従属する発明であって、符号信号生成手段は、2値のM系列符号信号を符号信号として生成する。
【0009】
第4の発明は、第3の発明に従属する発明であって、符号信号生成手段は、他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出手段と、算出手段によって算出された符号長さのM系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出手段と、次数算出手段によって算出された次数の数のシフトレジスタでM系列符号信号を生成するM系列符号生成手段とを含む。
【0010】
第5の発明は、第1の発明に従属する発明であって、符号信号生成手段は、2値のGold系列符号信号を符号信号として生成する。
【0011】
第6の発明は、第5の発明に従属する発明であって、符号信号生成手段は、他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出手段と、算出手段によって算出された符号長さのM系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出手段と、次数算出手段によって算出された次数の数のシフトレジスタでM系列符号信号を2つ生成するM系列符号生成手段と、M系列符号生成手段によって生成された2つのM系列符号信号の排他的論理和を演算することにより、Gold系列符号信号を生成するGold符号生成手段とを含む。
【0012】
第7の発明は、放射手段によって放射された電磁波と、受信手段によって受信した反射波とに基づき、測定範囲以内に存在する対象物を測定するレーダ装置で実行される測定方法であって、測定範囲以内の画像を撮像する撮像ステップと、撮像ステップにおいて撮像された画像に基づき、測定範囲以内に存在する他車両の数を他車両数として計数する計数ステップと、他車両数に基づいて符号長さを決定し、決定した符号長さの符号信号を生成する符号信号生成ステップと、符号信号を電磁波として放射する放射ステップとを備える。
【0013】
第8の発明は、第7の発明に従属する発明であって、電磁波が対象物で反射した反射波を受信する受信ステップと、電磁波として放射される符号長さの符号信号と反射波との相関を演算する演算ステップと、創刊が予め定められたしきい値以上となる反射波に基づき、当該反射波を反射した対象物の情報を算出して測定する算出ステップとをさらに備える。
【0014】
第9の発明は、第7の発明に従属する発明であって、符号信号生成ステップにおいて、2値のM系列符号信号を符号信号として生成する。
【0015】
第10の発明は、第9の発明に従属する発明であって、符号信号生成ステップは、 他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出ステップと、符号長さ算出ステップにおいて算出された符号長さのM系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出ステップと、次数算出ステップによって算出された次数の数のシフトレジスタでM系列符号信号を生成するM系列符号生成ステップとを含む。
【0016】
第11の発明は、第7の発明に従属する発明であって、符号信号生成ステップにおいて、2値のGold系列符号信号を符号信号として生成する。
【0017】
第12の発明は、第11の発明に従属する発明であって、符号信号生成ステップは、他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出ステップと、符号長さ算出ステップにおいて算出された符号長さのM系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出ステップと、次数算出ステップにおいて算出された次数の数のシフトレジスタでM系列符号信号を2つ生成するM系列符号生成ステップと、M系列符号生成ステップにおいて生成された2つのM系列符号信号の排他的論理和を演算することにより、Gold系列符号信号を生成するGold符号生成ステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、本発明に係るレーダ装置の測定範囲以内に存在する他車両の数に応じて、電磁波として放射する符号信号の符号長さを調節することができるため、1つの符号信号を生成するために必要な電力を節約することができる。
【0019】
第2の発明によれば、本発明に係るレーダ装置の測定範囲以内に存在する他車両の数に応じて符号長さが調節された符号信号で相関を演算するため、1度の相関の演算に必要な時間を短縮することができる。
【0020】
第3の発明によれば、自己相関が相対的に高く、他の信号との相関は相対的に低くなるM系列符号信号を符号信号として生成するため、他車両に搭載されたレーダ装置から放射された電磁波を受信した反射波に基づき、対象物の情報を誤って算出する可能性を低減することができる。
【0021】
第4の発明によれば、本発明に係るレーダ装置の測定範囲以内に存在する他車両の数に応じてM系列符号を生成するためのシフトレジスタの数を変えることができる。
【0022】
第5の発明によれば、他の信号との相関が前述のM系列符号信号よりもさらに相対的に低くなるGold系列符号信号を符号信号として生成することができる。
【0023】
第6の発明によれば、2つのM系列符号信号の排他的論理和を演算するだけで、他の信号との相関がM系列符号信号よりもさらに相対的に低くなるGold系列符号を生成することができる。
【0024】
また、本発明の測定方法によれば、上述した本発明に係るレーダ装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。レーダ装置1は、カメラ101と、物体検出部102と、符号信号生成部103と、送信部104と、受信部105と、相関処理部106と、情報算出部107とを備える。
【0026】
カメラ101は、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)カメラである。カメラ101は、図2に示すように、自車両の走行方向を撮像可能に自車両のルームミラーに取り付けられる。カメラ101は、自車両の走行方向に存在する他車両を含む画像を示す画像データGdを生成する。尚、カメラ101の取り付け箇所は、ルームミラーに限られるものではなく、自車両の走行方向に存在する他車両を撮像可能であれば、どのような箇所に取り付けられてもよい。また、カメラ101の撮像範囲は、自車両の走行方向を撮像できる範囲であってもよいし、本実施形態に係るレーダ装置1の測定範囲以内の画像を撮像できる範囲であってもよい。
【0027】
物体検出部102は、カメラ101によって生成された画像データGdを取得し、取得した画像データGdに対して画像処理をすることにより、当該画像データGdが示す画像に撮像されている他車両(レーダ装置1の測定範囲以内に存在する他車両であってもよい)を抽出する。そして、物体検出部102は、抽出した他車両の数(以下、他車両数と称する)を計数し、計数した他車両数を示す計数データNumを生成する。物体検出部102が他車両を抽出する手法は、任意の手法を用いて構わない。物体検出部102が、他車両を抽出する手法の具体的な一例としては、取得した画像データGdに対してエッジ検出処理をすることによって得られた他車両の輪郭に基づき、他車両が存在する画像上の領域を示す矩形形状としてそれぞれ抽出する手法が挙げられる。図3は、カメラ101から取得した画像データGdによって示される画像に、抽出した矩形形状を重畳して表示したときの画像の一例を示す図である。図3に示す例では、物体検出部102によって4つの矩形形状が抽出され、前述の他車両数として4が計数される。
【0028】
符号信号生成部103は、物体検出部102によって生成された計数データNumを取得し、取得した計数データNumが示す他車両数に基づいて、予め定められた系列の符号信号の符号長さを算出し、算出した符号長さで符号信号Fsを生成する。より詳細には、符号信号生成部103が符号信号Fsとして仮に2値のM系列の符号信号を生成するように予め定められている場合を想定すると、取得した計数データNumが示す他車両数を2値のM系列符号信号によって表現可能で、且つ、最小の符号長さの次数を算出する。符号長さとは、1つの符号信号Fsを構成するパルスの数である。M系列符号の符号長さと次数との間には、式(1)に示す関係がある。
【0029】
【数1】

【0030】
式(1)において、Nが符号長さであり、kが次数である。式(1)に示す関係より、符号信号生成部103は、例えば、図3に示すような4の他車両数を示す計数データNumを取得すると、4を表現可能な符号長さNとして3を算出する。これは、上述した2値のM系列符号信号を符号信号Fsとして生成した信号は、2値のデジタル信号と同様に考えることができ、さらに、式(1)から明らかなようにM系列符号信号の符号長さNは奇数となるためである。すなわち、4を表現可能なデジタル信号の符号長さN(デジタル信号におけるビット数)は2であるが、符号長さNは奇数でなければならないため、符号信号生成部103は、取得した計数データNumが示す他車両数4を表現可能であり、且つ、最小の奇数の符号長さNとして3を算出する。
【0031】
また、算出された符号長さNが、他車両数が相対的に少ないために1という短い符号長さになり、生成される符号信号が実質的に符号信号とならないときのために、符号長さNの下限として3を予め設定しておいてもよい。そして、符号信号生成部103は、算出した符号長さNが1であるときは、予め設定されている下限の3以上の符号長さで符号信号Fsを生成してもよい。尚、他の系列の符号信号Fsを生成する場合は、符号長さNを必ずしも奇数としなくてもよい。
【0032】
符号信号生成部103は、符号長さNを算出すると、算出した符号長さNと式(1)に基づいて次数kを算出する。次数kは、複数のシフトレジスタで構成された既知のM系列符号発生器におけるシフトレジスタの数に相当する。符号信号生成部103は、次数kを算出すると、内部に備えている複数のシフトレジスタの中から次数kの数だけのシフトレジスタを用いて、2値のM系列符号信号をパルス信号として生成する。また、符号信号生成部103は、符号長さNを算出すると、算出した符号長さNを示す情報を生成する。
【0033】
尚、符号信号生成部103の構成は複数のシフトレジスタを内部に備えているものに必ずしも限られるものではなく、k個のシフトレジスタで構成されたM系列符号発生器によって生成した信号と同じ信号を生成することが可能であれば、どのような構成であってもよい。具体的な他の一例としては、複数のシフトレジスタからなるM系列符号発生器をシミュレートしたプログラムを予め記憶部(図示せず)に記憶しておき、当該プログラムにおけるシフトレジスタの数として算出した次数kの数で当該プログラムを実行するIC、LSI、及びCPUなどで構成されたマイクロコンピュータであってもよい。
【0034】
図4は、符号信号生成部103によって生成される符号信号Fsの一例を示す図である。符号信号生成部103は、符号長さNで定まる時間長さtaの1つの符号信号Fsを時間間隔tbが到来するたびに生成する。図4に示す時間tbは、所望の相対距離の最小測定範囲を得られるのであれば、どのような時間間隔であってもよいし、空間における電磁波の伝搬速度と相対距離の最大測定範囲とに基づいて定められる時間であってもよい。これは、本実施形態に係るレーダ装置1は、送信部104から電磁波として放射した符号信号Fsが最大測定範囲の相対距離で反射した反射波を受信部105が反射信号Hsとして受信するまでの期間において、電磁波として放射した符号信号Fsと反射信号Hsとの相関を相関処理部106で繰り返して演算するためである。
【0035】
尚、符号信号生成部103が生成する符号信号Fsの系列はM系列に限られるものではなく、M系列符号と同様に擬似雑音符号(PN(Pseudo Noise)系列符号)の一種であるGold系列符号などを2値の符号信号Fsとして生成してもよい。Gold系列符号信号を生成する手法は任意の手法を用いて構わないが、例えば、同じ符号長さの2つのM系列符号信号の排他的論理和を演算してGold系列符号を生成する手法が具体的な一例として挙げられる。本実施形態では、符号信号生成部103が2値のM系列符号信号を生成する場合を一例として説明を続ける。
【0036】
送信部104は、時間間隔tbが到来するたびに符号信号生成部103によって生成される符号信号Fsを電磁波として空間に放射する。
【0037】
受信部105は、送信部104によって放射された電磁波が対象物(例えば、他車両など)で反射した反射波を反射信号Hsとして受信する。
【0038】
相関処理部106は、符号信号生成部103によって生成された符号信号Fsと、受信部105によって受信された反射信号Hsとの相関を算出する。
【0039】
より詳細には、相関処理部106は、符号信号生成部103によって算出された符号長さNを示す情報を取得する。そして、相関処理部106は、符号信号Fsが電磁波として放射されてから、時間tbが経過するまで、当該符号信号Fsと受信部105によって受信される反射信号Hsとの相関を繰り返し演算する。
【0040】
相関処理部106は、演算した相関に基づき、符号信号Fsが放射されてから、当該符号信号Fsの反射信号Hsを受信したと判断すると、反射信号Hsを受信したことを示す情報を生成する。このとき、相関処理部106は、符号信号Fsが放射されてから、当該符号信号Fsの反射信号Hsを受信するまでの時間間隔tdを算出する。
【0041】
より詳細には、相関処理部106は、符号信号生成部103によって生成された1つの符号信号Fsと、受信部105によって受信された反射信号Hsとの同期を、取得した情報が示す符号長さNで取りながら(位相を一致させながら)、混合器(図示せず)で混合した信号のレベルを相関として演算する。前述の符号信号Fsとして生成したM系列符号信号は、自己相関が相対的に高く、他の信号との相関は相対的に低くなる擬似雑音信号と呼ばれる信号の一種である。したがって、相関処理部106が図示しない混合器で混合した信号のレベルは、符号信号生成部103によって生成された符号信号Fsが対象物で反射した反射信号Hsを混合したときにピーク値(極大値)を生じ、その他の信号を反射信号Hsとして混合したときには相対的に低くなる。
【0042】
つまり、相関処理部106は、図示しない混合器で符号信号Fsと反射信号Hsとを混合した信号のレベルがピーク値(極大値)を生じたか否かを判断することで、符号信号生成部103によって生成された符号信号Fsが対象物で反射した反射信号Hsを受信したか否かを判断することができる。相関処理部106は、受信部105によって受信された反射信号Hsと混合する時間の遅延量を漸増させながら、符号信号生成部103によって生成された符号信号Fsを混合する。そして、混合した信号のレベルがピーク値(極大値)を生じたときに、当該符号信号Fsの反射信号Hsを受信したと判断し、反射信号Hsを受信したことを示す受信情報Jjを生成し、さらに、反射信号を受信したと判断したときの前述の時間の遅延量を前述の時間間隔tdとして算出する。尚、相関処理部106は、図示しない混合器で符号信号Fsと反射信号Hsとを混合した信号のレベルがピーク値を生じたか否かだけでなく、混合した信号のレベルが予め定めたしきい値以上となったか否かを判断することで、符号信号生成部103によって生成された符号信号Fsが対象物で反射した反射信号Hsを受信したか否かを判断してもよい。
【0043】
また、相関処理部106は、時間間隔tbの開始タイミングが到来してから、前述の遅延量をゼロから漸増させていき、時間間隔tbの終了タイミングが到来したときに、当該遅延量をゼロにリセットして、相関の演算を続ける。遅延量を漸増させるときの1度の増加量は、符号信号Fsのチップ長さの2分の1以下であることが好ましい。
【0044】
情報算出部107は、相関処理部106によって生成された受信情報Jjを取得すると、時間間隔tdを相関処理部106から取得し、空間における電磁波の伝搬速度と当該時間間隔tdとの関係に基づき、相関のピーク値(極大値)を生じた反射信号Hsを反射した対象物との相対距離を算出する。
【0045】
以上が、本実施形態に係るレーダ装置1の図1に示す各機能ブロックの説明である。次に、本実施形態に係るレーダ装置1の処理を図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
ステップS101において、レーダ装置1は、カメラ101で画像を撮像して画像データGdを生成する。レーダ装置1は、ステップS101の処理を完了すると、ステップS102へ処理を進める。
【0047】
ステップS102において、レーダ装置1は、物体検出部102で画像データGdを上述したように処理して、当該画像データGdが示す画像に撮像されている他車両の数を計数した数を示す計数データNumを生成する。レーダ装置1は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
【0048】
ステップS103において、レーダ装置1は、物体検出部102で計数データNumを取得して、当該データが示す他車両数に基づいて、符号信号生成部103で生成する符号信号Fsの次数kを上述したように算出する。レーダ装置1は、ステップS103の処理を完了すると、ステップS104へ処理を進める。尚、ステップS103において、レーダ装置1は、次数kを算出するために算出された符号長さNが1のときは、上述したように下限の符号長さ3、又は3以上の予め定められた符号長さNで次数kを算出する。
【0049】
ステップS104において、レーダ装置1は、ステップS103において算出した次数kの符号信号Fsを符号信号生成部103で生成し、送信部104から電磁波として放射すると同時に相関処理部106の遅延量をリセットする。レーダ装置1はステップS104の処理を完了すると、ステップS105へ処理を進める。
【0050】
ステップS105において、レーダ装置1は、相関処理部106で上述した相関の演算をして、ステップS104において放射した電磁波が対象物で反射された反射信号Hsを受信したか否かを判断し、受信したと判断したときに受信情報Jjを生成する。レーダ装置1は、ステップS105の処理を完了すると、ステップS106へ処理を進める。
【0051】
ステップS106において、レーダ装置1は、受信情報Jjを相関処理部106から取得すると、さらに、相関処理部106によって算出された時間間隔tdを取得して、対象物との相対距離を対象物の情報として算出する。レーダ装置1は、対象物との相対距離を算出すると、算出した情報を示す対象物データを生成する。レーダ装置1は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS107へ処理を進める。
【0052】
ステップS107において、レーダ装置1は、ステップS104で符号信号Fsが電磁波として放射されてから、時間tbが経過したか否かを判断する。レーダ装置1は、ステップS107において、時間tbが経過したと判断したとき、ステップS101へ処理を戻す。一方、レーダ装置1は、ステップS107において、時間tbが経過していないと判断したとき、ステップS105へ処理を戻す。
【0053】
以上が、本実施形態に係るレーダ装置1の処理の説明である。次に、図5を参照しながら本実施形態に係るレーダ装置1によって得られる効果について説明する。
【0054】
図6は、本実施形態に係るレーダ装置1によって電磁波として空間に放射される符号信号と、従来技術によって電磁波として空間に繰り返し放射される予め定められた符号長さの符号信号とを比較する図である。図6に示されているように、1度目に空間に放射する符号信号は、レーダ装置1及び従来技術のいずれによって生成されても符号長さは7である。そして、2度目に空間に放射される符号信号は、レーダ装置1が上述した処理をすることにより符号長さ3で生成されて放射されているのに対して、従来技術では1度目に放射した符号信号と同じ符号長さ7の符号信号を放射している。
【0055】
本実施形態に係るレーダ装置1は、カメラ101によって撮像された画像に基づいて他車両数を計数し、計数した他車両数に応じて符号信号の符号長さNを調節する。したがって、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、図6から明らかなように、1度目の符号信号に対して符号長さが4だけ短い2度目の符号信号を電磁波として放射することができ、従来技術と比較して1つの符号信号を生成するための電力を節約することができる。また、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、他車両数に応じて1つの符号信号の符号長さを調節するため、1つの符号信号の送信時間及び受信時間を短くすることができ、相関処理部106が相関を1度演算するために必要な時間を短縮することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るレーダ装置1は、M系列符号信号を符号信号Fsとして生成して反射信号との相関を演算するため、他のレーダ装置から放射された電磁波、或いは雑音などを反射信号Hsとして受信したときには相関が低く、本実施形態に係るレーダ装置1の送信部104から放射された電磁波を反射信号Hsとして受信したときにだけ相関が高くなる。つまり、本実施形態に係るレーダ装置1は、相関がピーク値(極大値)を生じたか否かを判断することにより、測定範囲以内に存在する他のレーダ装置から放射された電磁波を反射信号Hsとして受信して対象物の誤った情報を算出する可能性を低減することができる。
【0057】
尚、本実施形態に係るレーダ装置1は、ミリ波と呼ばれる周波数帯域の電磁波を送信部104から放射してもよい。また、本実施形態に係るレーダ装置1は、UWB(Ultra Wide Band)と呼ばれる広帯域な周波数帯域の電磁波を送信部104から放射してもよい。
【0058】
また、上述した第1の実施形態の説明では、レーダ装置1が2値の符号信号をパルス信号として放射して対象物との相対距離を測定する場合を一例として説明した。しかしながら、本発明に係るレーダ装置1は、相対距離だけでなく、対象物の情報として対象物との相対速度をドップラーシフトのシフト量に基づいて算出するレーダ装置にも適用可能である。
【0059】
レーダ装置1が対象物との相対速度を測定するときは、ドップラーシフトのシフト量を算出するために、予め定められた周波数の基準信号を符号信号で変調した変調信号を送信部104から放射する。基準信号を変調する手法は任意の手法を用いて構わないが、例えば、M系列の符号信号などの2値の符号信号で基準信号を変調するときは、ASK(Amplitude Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)、或いはBPSK(Binary Phase Shift Keying)などの手法で基準信号を変調してもよい。この場合、相関処理部106は、符号信号ではなく変調信号と反射信号との相関を上述したように演算する。
【0060】
そして、情報算出部107は、反射信号を受信したことを示す情報を相関処理部106から取得したときに、前述の時間間隔と、当該時間間隔で受信した反射信号と、当該反射信号との相関の演算に用いられた変調信号とを相関処理部106から取得する。情報算出部107は、取得した時間間隔と空間における電磁波の伝搬速度との関係に基づき、当該反射信号を反射した対象物との相対距離を算出する。さらに、情報算出部107は、取得した変調信号と反射信号とに基づき、FFT(Fast Fourier Transform)処理などをすることにより得られるドップラーシフトのシフト量に基づき、当該反射信号を反射した対象物との相対速度を算出する。レーダ装置1が対象物との相対速度を測定するときは、予め定められた周波数を有する基準信号を符号信号で変調して空間に放射するため、空間に放射される電磁波は位相を有する電磁波となり、情報算出部107がFFT処理をしてドップラーシフトのシフト量を算出することができる。
【0061】
また、相関処理部106が相関を演算するときに送信信号と反射信号との同期、或いは変調信号と反射信号との同期を取るための手法は、任意の既知の手法を用いて構わない。具体的な一例としては、従来知られているマッチドフィルターなどの手法で符号信号と反射信号との相関、或いは変調信号と反射信号との相関を演算してもよい。
【0062】
また、第1の実施形態では、パルス信号で対象物の情報を算出する手法、すなわち、パルスペア方式やパルスドップラー方式に適用できる手法を一例として説明をした。しかしながら、本発明に係るレーダ装置1が対象物の情報を算出する手法は、パルス信号で対象物の情報を算出するパルスペア方式やパルスドップラー方式などに限られず、前述の基準信号の周波数を周期的に変化させて対象物の情報を算出するFM−CW方式など、連続した波形の連続信号で対象物の情報を算出する手法にも適用可能なのはいうまでもない。
【0063】
また、本発明に係るレーダ装置1は、対象物との相対距離や相対速度に加えて、対象物の存在する水平方向の角度を対象物の情報として算出するレーダ装置にも適用可能である。本発明に係るレーダ装置1が対象物の存在する水平方向の角度を算出するときは、少なくとも2つの受信部105を予め定められた間隔で水平方向に配置する。そして、送信部104から前述の変調信号を電磁波として放射し、2つの受信部105で受信されたそれぞれの反射信号に対してFFT処理などをすることによって算出した位相差、或いはレベルの差に基づいて対象物の存在する水平方向の角度を算出してもよい。位相差に基づいて対象物の存在する水平方向の角度を算出する手法は、位相比較モノパルス方式として知られ、レベルの差に基づいて対象物の存在する水平方向の角度を算出する手法は、振幅比較モノパルス方式として知られている。
【0064】
また、第1の実施形態では、符号信号を電磁波として放射するたびに算出した符号長さNで符号信号を生成するものとしたが、同じ符号長さNの符号信号、或いは同じパターンの符号信号を予め定められた回数だけ放射した後、新たに算出した符号長さNで新たな符号信号を生成してもよい。
【0065】
また、上述したレーダ装置1の処理は、記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク等)に格納された上述した処理手順を実施可能な所定のプログラムデータが、CPU或いはマイクロコンピュータなどによって解釈実行されることで実現されてもよい。CPUとは、自動車などの移動体に搭載されるECU(Electric Control Unit)を構成するCPUなどであってもよい。また、この場合、プログラムデータは、記憶媒体を介して記憶装置内に導入されてもよいし、記憶媒体上から直接実行されてもよい。尚、記憶媒体とは、ROMやRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVDやBDなどの光ディスクメモリ、及びメモリカードなどであってもよい。また、上述したレーダ装置1のそれぞれの機能構成は、電子回路で実現されてもよい。さらに、上述したレーダ装置1の機能構成は、それぞれ電子回路、CPU、及びマイクロコンピュータなどを適宜組み合わせて実現してもよい。
【0066】
また、上述したカメラ101は、画像データGdをアナログ信号として生成してもよいし、デジタル信号として生成してもよい。そして、物体検出部102は、取得した画像データGdがアナログ信号であるときは、可能であればアナログ信号のまま上述した処理をしてもよいし、図示しないADコンバータでデジタル信号へ変換してから上述した処理をしてもよい。また、相関処理部106、及び情報算出部107のそれぞれは、取得した信号を可能であればアナログ信号として上述した処理をしてもよいし、図示しないADコンバータでデジタル信号へ変換してから上述した処理をしてもよい。
【0067】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、他車両の数に応じて符号信号の符号長さを調節することのできるレーダ装置を提供でき、例えば、車両などの移動体に搭載されるレーダ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の機能ブロック図
【図2】第1の実施形態におけるカメラの取り付け箇所の一例を説明する図
【図3】他車両を抽出する手法の一例を説明する図
【図4】第1の実施形態に係る符号信号の一例を説明する図
【図5】第1の実施形態に係るレーダ装置の処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施形態における符号信号と従来技術における符号信号とを対比する図
【符号の説明】
【0070】
1 レーダ装置
101 カメラ
102 物体検出部
103 符号信号生成部
104 送信部
105 受信部
106 相関処理部
107 情報算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定範囲以内に存在する対象物を測定するレーダ装置であって、
前記測定範囲以内の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された前記画像に基づき、前記測定範囲以内に存在する他車両の数を他車両数として計数する計数手段と、
前記他車両数に基づいて符号長さを決定し、決定した符号長さの符号信号を生成する符号信号生成手段と、
前記符号信号を電磁波として放射する放射手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記電磁波が対象物で反射した反射波を受信する受信手段と、
前記電磁波として放射される前記符号長さの符号信号と前記反射波との相関を演算する演算手段と、
前記相関が予め定められたしきい値以上となる前記反射波に基づき、当該反射波を反射した前記対象物の情報を算出して測定する算出手段とをさらに備える、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記符号信号生成手段は、2値のM系列符号信号を前記符号信号として生成する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記符号信号生成手段は、
前記他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出手段と、
前記算出手段によって算出された符号長さの前記M系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出手段と、
前記次数算出手段によって算出された前記次数の数のシフトレジスタで前記M系列符号信号を生成するM系列符号生成手段とを含む、請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記符号信号生成手段は、2値のGold系列符号信号を前記符号信号として生成する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記符号信号生成手段は、
前記他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出手段と、
前記算出手段によって算出された符号長さの前記M系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出手段と、
前記次数算出手段によって算出された前記次数の数のシフトレジスタで前記M系列符号信号を2つ生成するM系列符号生成手段と、
前記M系列符号生成手段によって生成された2つの前記M系列符号信号の排他的論理和を演算することにより、前記Gold系列符号信号を生成するGold符号生成手段とを含む、請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
放射手段によって放射された電磁波と、受信手段によって受信した反射波とに基づき、測定範囲以内に存在する対象物を測定するレーダ装置で実行される測定方法であって、
前記測定範囲以内の画像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにおいて撮像された前記画像に基づき、前記測定範囲以内に存在する他車両の数を他車両数として計数する計数ステップと、
前記他車両数に基づいて符号長さを決定し、決定した符号長さの符号信号を生成する符号信号生成ステップと、
前記符号信号を電磁波として放射する放射ステップとを備える、測定方法。
【請求項8】
前記電磁波が対象物で反射した反射波を受信する受信ステップと、
前記電磁波として放射される前記符号長さの符号信号と前記反射波との相関を演算する演算ステップと、
前記創刊が予め定められたしきい値以上となる前記反射波に基づき、当該反射波を反射した前記対象物の情報を算出して測定する算出ステップとをさらに備える、請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記符号信号生成ステップにおいて、2値のM系列符号信号を前記符号信号として生成する、請求項7に記載の測定方法。
【請求項10】
前記符号信号生成ステップは、
前記他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出ステップと、
前記符号長さ算出ステップにおいて算出された符号長さの前記M系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出ステップと、
前記次数算出ステップによって算出された前記次数の数のシフトレジスタで前記M系列符号信号を生成するM系列符号生成ステップとを含む、請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記符号信号生成ステップにおいて、2値のGold系列符号信号を前記符号信号として生成する、請求項7に記載の測定方法。
【請求項12】
前記符号信号生成ステップは、
前記他車両数と自車両とを合計した数を表現可能な符号長さを算出する符号長さ算出ステップと、
前記符号長さ算出ステップにおいて算出された符号長さの前記M系列符号信号を生成するための次数を算出する次数算出ステップと、
前記次数算出ステップにおいて算出された前記次数の数のシフトレジスタで前記M系列符号信号を2つ生成するM系列符号生成ステップと、
前記M系列符号生成ステップにおいて生成された2つの前記M系列符号信号の排他的論理和を演算することにより、前記Gold系列符号信号を生成するGold符号生成ステップとを含む、請求項11に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281928(P2009−281928A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135655(P2008−135655)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】