説明

ロイコドーパクロム誘導体を含む化粧料組成物

本発明は、生理学的に許容される媒体中に、式(I)の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする化粧料組成物または皮膚外用組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を用いて、色素沈着を低減または防止する、ならびに/あるいは皮膚を白くするおよび/または明るくするための方法にも関する。本発明はまた、式(I)に含まれる式(I’)の新規化合物にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコドーパクロムの誘導体を含む化粧料組成物に、また皮膚の脱色素剤としてのその使用に関する。本発明はまた、この組成物を用いる皮膚の脱色素方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚の色は、様々な要因に、特に、季節、人種および性別に依存する。それは、メラノサイトによって産生されるメラニンの特質および濃度によって主に決まる。メラノサイトは、特別な細胞小器官であるメラノソームによってメラニンを合成する特殊化した細胞である。さらに、特定の個人は、かれらの人生の様々な時点で、皮膚に、より顕著には手に、より暗色で、および/またはより着色した斑点が現れる経験をし、それらの斑点は皮膚に不均質性を付与する。これらの斑点もまた、皮膚表面にある角化細胞における高濃度のメラニンに起因する。
【0003】
非常に効果的である無害な局所脱色素物質の使用が、メラノサイトの過剰活動に起因する局部的な過剰色素沈着(例えば、妊娠中(「妊娠顔貌」もしくは褐色斑)、またはエストロ−プロゲスチン避妊法の間に起こる、特異性肝斑(idiopathic melasma))、メラノサイトの良性の過剰活動および増殖に起因する局所的過剰色素沈着(例えば、化学線黒子と呼ばれる老人性色素沈着斑点)、恐らく損傷後の瘢痕化もしくは光感作に起因する偶発的な色素沈着、さらにまた白皮症(leukoderma)の特定の形態(例えば、白斑(vitiligo))を治療する目的で最も際立って望まれる。後者の場合(瘢痕化は、より白い外観を皮膚に付与する傷痕を生じる可能性がある)、損傷した皮膚を再着色することは可能でないので、残っている正常な皮膚部分が、皮膚に全体として均一な白い色合いを付与するように脱色素される。
【0004】
皮膚色素沈着の生成(すなわち、メラニンの生成)メカニズムは特に複雑で、概略的には、ユーメラニン(eumelanin)に向かう2つの可能な経路が含まれる。
ドーパキノン→ロイコドーパクロム→ドーパクロム→DHI(5,6−ジヒドロキシインドールまたはDHI)→インドール−5,6−キノン
ドーパキノン→ロイコドーパクロム→ドーパクロム→DHICA(5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸)
【0005】
チロシナーゼ(モノフェノールオキシゲナーゼ EC 1.14.18.1:酸素酸化還元酵素 EC 1.14.18.1)は、この一連の反応に関与する必須の酵素である。それは、特に、その水酸化酵素活性に基づいて、チロシンのドーパ(ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換のための反応を、また、その酸化酵素活性に基づいてドーパのドーパキノンへの変換のための反応を触媒する。このチロシナーゼは、それが、特定の生体要素の作用下で成熟状態である場合にのみ働く。
【0006】
ある物質は、メラニン形成が起こる表皮メラノサイトの活力に直接作用する、および/あるいはメラニン形成に関与する酵素の1つを阻害することによるか、メラニン合成連鎖の化合物の1つの構造的類似体として挿入され、そのためにその連鎖を妨げることによるかのいずれかでメラニン生合成のステップの1つを妨げ、それにより脱色素が確実に行われる場合、脱色素物質または抗色素沈着物質であると認められる。
【0007】
脱色素物質として最も一般的に用いられる化粧料物質は、より具体的には、アスコルビルグルコシドを含めて、アスコルビン酸およびその誘導体、さらにまた特定の植物抽出物(特に、カンゾウ抽出物)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非常に効果的であり、忍容性が良好である、ヒトの皮膚を脱色するための作用剤が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに関して、本出願人は、驚くべきことに、また予想外に、特定のロイコドーパクロム誘導体が良好な脱色素活性を示すことを見出した。ロイコドーパクロム誘導体は、特にメラニン合成に含まれる、知られている化合物である。予想外にも、特定のロイコドーパクロム誘導体が、メラニンの前駆体ではあるが、脱色する特性を示すことを本発明者等は示した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、より具体的には、本発明の主題の1つは、第1の態様によれば、式(I)の少なくとも1種の化合物を生理学的に許容される媒体中に含有することを特徴とする化粧料組成物もしくは皮膚外用組成物である
【0011】
【化1】

[式中、R1は、
− 水素、または
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であり、
R2は、
− 水素、または
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であり、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 水素、または
− 式R5−COのアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である]。
【0012】
式(I)の化合物には、これらの化合物の鏡像異性体、およびあらゆる比率のこれらの混合物が含まれる。(S)鏡像異性体が、本発明において用いられるのに好ましい。
【0013】
本発明の別の主題は、第2の態様によれば、化粧料組成物もしくは皮膚外用組成物を皮膚に適用することを含む、色素沈着を低減もしくは防止する、ならびに/あるいは皮膚を脱色および/または明色化するための方法であって、この組成物が、前記の式(I)の少なくとも1種の化合物を生理学的に許容される媒体中に含有することを特徴とする方法である。
【0014】
第3の態様によれば、本発明の1つの主題は、脱色素および/または抗色素沈着および/または脱色および/または明色化作用剤としての、前記の式(I)の化合物の使用である。
【0015】
第4の態様によれば、本発明の1つの主題は、式(I’)の化合物である。
【0016】
【化2】

式中、R1は、
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であり、
R2は、
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C3〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であり、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である。
【0017】
式(I)および(I’)の化合物
本発明による式(I)および(I’)の化合物は、ヒトの皮膚を効果的に脱色素する、および/または明色化することを可能にする。それらは、茶色がかった色素沈着斑点、老化班を有する個体の皮膚に、または例えば紫外線に曝された後の、メラニン形成に由来する茶色がかった色の現れと闘うことを望む個人の皮膚に適用されることが特に意図されている。
【0018】
式(I)の化合物では、
R1は、
− 水素、または
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
を表し、
R2は、
− 水素、または
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
を表し、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 水素、または
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である。
【0019】
特定の一実施形態によれば、化合物(I)は、2量体の状態にあり、その単量体は、単結合により、またはヘテロ原子のような少なくとも1個の原子により、基R1もしくはR2に共有結合で繋がれ得る。
【0020】
【化3】

【0021】
本発明による化合物(I)の非限定的例として、特に、次のものを挙げることができる。
− 次の式の[S−(R,R)]−1,1’−[チオビス(1−オキソ−3,1−プロパンジイル)]ビス[5,6−ビス(アセチルオキシ)−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸ジメチル
【0022】
【化4】

− 次の式の(S)−5,6−ビス(アセチルオキシ)−1−[3−(アセチルチオ)−1−オキソプロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ)メチル
【0023】
【化5】

− 次の式の[S−(R,R)]−5,6−ビス(アセチルオキシ)−1−[3−(アセチルチオ)−2−メチル−1−オキソプロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸メチル
【0024】
【化6】

− 次の式の(S)−5,6−ビス(アセチルオキシ)−2,3−ジヒドロ−1−[1−オキソ−3−[(フェニルメチル)チオ]プロピル]−1H−インドール−2−カルボン酸メチル
【0025】
【化7】

− 次の式の(S)−5,6−ビス(アセチルオキシ)−1−[3−(ベンゾイルチオ)−1−オキソプロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸メチル
【0026】
【化8】

− 次の式のトリアセチルロイコドーパクロムエチルエステル
【0027】
【化9】

− 次の式のトリアセチルロイコドーパクロムメチルエステル
【0028】
【化10】

【0029】
好ましくは、式(I)および(I’)の化合物では、R1は、
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
を表す。
【0030】
好ましくは、R1は、直鎖状C1〜C18アルキルであり、より好ましくはさらに、R1はCHである。
【0031】
式(I)および(I’)の化合物では、好ましくは、R2は、
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖またはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
を表す。
【0032】
より好ましくは、R2は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を表す。実際に、出願人は、R2がポリエチレングリコール(PEG)鎖である場合に、化合物(I)もしくは(I’)の水への溶解性は向上することを確認した。結果的に、この場合、化合物(I)もしくは(I’)は、水性相を含む化粧料組成物に、より容易に導入され得る。
【0033】
変形形態として、式(I)において、R2は、直鎖状C1〜C18アルキルを表し、より好ましくは、R2は、−CHまたは−CH−CHである。
【0034】
さらに、式(I’)において、R2は、有利には、直鎖状C3〜C18アルキル基、より好ましくは、n−プロピル基を表し得る。
【0035】
特に好ましい一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物では、R1は、−CHを表し、R2は、−CHまたは−CH−CHを表す。
【0036】
好ましくは、式(I)または(I’)において、R3およびR4は、互いに独立に、
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である。
【0037】
特に好ましい一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物では、R3およびR4は、いずれも、CH−CO−のアセチル基である。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物は、トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(II)、またはトリアセチルロイコドーパクロムのエチルエステル(III)である。
【0039】
【化11】

【0040】
特に、本発明による組成物には、式(I)の2つの光学活性化合物の鏡像異性体の1つまたはラセミ(50/50)混合物が含まれる。より好ましくは、本発明による式(I)の化合物は、(S)トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル、または(S)トリアセチルロイコドーパクロムのエチルエステルである。
【0041】
さらに、式(I’)の化合物の好ましい例は、式(IV)のトリアセチルロイコドーパクロムプロピルエステルである。
【0042】
【化12】

これは、特に、その鏡像異性体の1つ、または式(IV)の2つの光学活性化合物のラセミ(50/50)混合物の形で存在し得る。
【0043】
式(I)の化合物は、特に、本発明による組成物中に、組成物の全重量に対して、0.00001から10重量%、好ましくは、0.001から5重量%の量で存在し得る。
【0044】
式(I)の化合物は、先行技術に記載されている方法によって得ることができる。例として、Wyler H., Chiovini J., Helvetica Chimica Acta, 1968, 51, 1476-1494、Woelcke Uwe; Kaiser Ado; Koch Wolfgang; Scheer Marcel, Helvetica Chimica Acta, 1970, 53(7), 1704-1708、Wyler H., Dreiding Andre S., Helvetica Chimica Acta, 1962, 45, 638-640、Mabry T. J.; Wyler H.; Sassu C.; Mercier M.; Parikh I.; Dreiding Andre S., Helvetica Chimica Acta, 1962, 45, 640-647、Berestovitskaya V. M.; Perekalin V. V.; Sopova A. S.; Zhurnal Obshchei Khimii, 1966, 2(6), 1123-1124、Omote Yoshimori; Fujinuma Yoshimori; Kuo Kung-Tu; Sugiyama Noboru, Nippon Kagaku Zasshi, 1966, 87(7), 760-762、またはDavies Roger; Laird William M.; Synge Richard L. M.; Phytochemistry, 1975, 14(7), 1591-1596の刊行物を挙げることができる。
【0045】
例示として、また非限定的に、化合物(II)は、以下で(L)−ドーパ(V)と呼ばれる、3,4−ジヒドロキシ−(L)−フェニルアラニンから得ることができる。
【0046】
生成物(L)−ドーパ(V)のエステル化によって、生成物S−(L)−ドーパメチルエステルまたは(L)−ドーパのメチルエステル(生成物(VI)と呼ばれる)が得られ、次いで、それは、酸化され、次に、酸処理の後で、(S)−5,6−ジヒドロキシインドリン−2−カルボン酸のメチルエステル((L)−シクロドーパメチルエステル、または(L)−ロイコドーパクロムメチルエステル、生成物(VII))を得るために、還元される。
【0047】
代わりに、やはり非限定的であるが、式(II)の化合物は、赤カブ(red beet)から抽出される天然分子であるベタニンから、次の合成方法に従って得ることもできる。
【0048】
【化13】

【0049】
ロイコドーパクロム(VIII)から、トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(式(II)の化合物)を合成することを可能にする、エステル化およびアセチル化のステップは、前記の方法のものと同様であり得る。
【0050】
前記の式(I)の化合物以外に、本発明による組成物はまた、例えば、エモリエントまたは湿潤剤、ゲル化剤および/または増粘剤、界面活性剤、オイル、ワックス、シリコーンエラストマー、サンスクリーン、染料、有機もしくは無機フィラー、保存剤、酸化防止剤、活性剤、金属イオン遮蔽剤(sequestrant)、ならびに芳香剤から選択される少なくとも1種の化合物のような、化粧品分野における少なくとも1種の通常の添加剤も含み得る。
【0051】
特に、本発明による組成物は、非限定的であるが、以下の添加剤の1つまたは複数を含み得る:
− 水性相をゲル化および/または増粘させるための1種または複数の作用剤(例えば、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸(AMPS)および/またはアクリルアミドおよび/またはアクリル酸および/またはアクリル酸の塩もしくはエステルの親水性もしくは両親媒性、架橋もしくは未架橋ホモポリマーおよびコポリマー(例えば、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPのコポリマー、およびアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス−25のコポリマー、特に、ClariantからAristoflex AVCおよびHMBの名称で販売されているもの)、セルロース誘導体、植物由来(グアル、イナゴマメ、アルギネート、カラギーナン、ペクチン)または微生物由来(キサンタン)のガム、クレー(ラポナイト(laponite))から選択される。前記ゲル化剤および/または増粘剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、0.01から5重量%の程度の量で存在し得る。)、
− 1種または複数の界面活性剤、好ましくは乳化剤(それらは、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性であってよく、特に、ポリオールの脂肪酸エステル、例えば、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、およびスクロース脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル;アルキルポリグルコシド;ポリエーテル変性ポリシロキサン;ベタインおよびその誘導体;ポリクオタニウム(polyquaternium);エトキシ化脂肪アルコールの硫酸エステル塩;スルホサクシネート;サルコシネート;アルキルおよびジアルキルリン酸エステルおよびこれらの塩;ならびに脂肪酸石鹸である。前記界面活性剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、0.1から8重量%、好ましくは0.5から3重量%の程度の量で存在し得る。)、
− 1種または複数の補助界面活性剤、例えば、直鎖状脂肪アルコール、特に、セチルおよびステアリルアルコール、
− 直鎖状、環状もしくは分岐状の、シリコーンもしくは炭化水素系、揮発性もしくは非揮発性オイルとして一般に知られている、室温で液体である1種または複数の脂肪物質、例えば、シリコーンオイル、例えば、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリアルキルシクロシロキサン(シクロメチコン)、およびポリアルキルフェニルシロキサン(フェニルジメチコン);合成オイル、例えば、フルオロオイル、安息香酸アルキル、および分岐状炭化水素、例えば、ポリイソブチレン;植物油、特に、大豆油もしくはホホバ油;ならびに、ミネラルオイル、例えば、液体パラフィン(組成物の全重量に対して、好ましくは、0.1から約10重量%、さらに良好には0.5から5重量%の比率)、
− 1種または複数のワックス、例えば、オゾケライト、ポリエチレンワックス、蜜蝋もしくはカルナウバ蝋(組成物の全重量に対して、好ましくは、0.01から約5重量%、好ましくは0.5から5重量%の比率)、
− 特に、触媒の存在下で、少なくとも1つの反応性基(特に、水素もしくはビニル)を有し、少なくとも1つのアルキル(特にメチル)もしくはフェニル末端基および/または側基を有するポリシロキサンと、オルガノシリコーン(例えばオルガノヒドロポリシロキサン)との反応によって得られる1種または複数のシリコーンエラストマー(組成物の全重量に対して、好ましくは、0.1から約20重量%、好ましくは0.25から15重量%の比率)、
− 1種または複数のサンスクリーン、特に有機スクリーニング剤、例えば、ジベンゾイルメタンの誘導体(特に、DSMによってParsol 1789の商用名で販売されているブチルメトキシジベンゾイルメタンが含まれる)、ケイ皮酸の誘導体(特に、DSMによってParsol MCXの商用名で販売されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシルが含まれる)、サリシレート、パラアミノ安息香酸、β−β’−ジフェニルアクリレート、ベンゾフェノン、ベンジリデンカンファーの誘導体、フェニルベンゾイミダゾール、トリアジン、フェニルベンゾトリアゾールおよびアントラニル誘導体;または被覆もしくは無被覆の顔料もしくはナノ顔料の形の鉱物酸化物系の、特に、二酸化チタンもしくは酸化亜鉛系の、無機スクリーニング剤(組成物の全重量に対して、好ましくは、0.1から約30重量%、さらに良好には0.5から20重量%の比率)、
− 1種または複数の水溶性染料、例えば、ポンソーの二ナトリウム塩、アリザリングリーンの二ナトリウム塩、キノリンイエロー、アマランスの三ナトリウム塩、タートラジンの二ナトリウム塩、ローダミンの一ナトリウム塩、フクシンの二ナトリウム塩もしくはキサントフィル(組成物の全重量に対して、好ましくは、0.1から約2重量%の比率)、
− 1種または複数のフィラー、特に、ソフトフォーカス効果を有する粉末(これらは、特に、ポリアミド、シリカ、タルク、マイカおよび繊維(特に、ポリアミドもしくはセルロースの繊維)から選択され得る)、
− 1種または複数の保存剤、
− 金属イオン遮蔽剤、例えば、EDTA塩、
− 芳香剤、
− ならびに、これらの混合物。
【0052】
このような補助剤の例は、特に、CTFAの辞典(「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association刊、11版、2006年)に記載されており、この辞典は、制約なく、スキンケア業界において通常用いられる多様な化粧品および医薬品成分を記載し、これらは、本発明による組成物に付加される成分として用いられるのに適している。
【0053】
当業者は、組成物がその特性の全てを保持するような仕方で、これらの可能な添加剤の全てから、組成物に添加されるこれらの添加剤の組成および量の両方を選択することができる。
【0054】
さらに、本発明による組成物は、様々な活性剤を任意選択で含んでいてもよく、これらは、ビタミン、酸化防止剤、水和剤、エモリエント、抗老化剤、抗汚染剤(antipollution agent)、角質溶解剤、収斂剤(astringent)、非ステロイド抗炎症剤、および脱色剤からなる群から選択され得る。
【0055】
ビタミンの例には、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E、およびこれらの誘導体、パントテン酸およびその誘導体、ならびにビオチンが含まれる。
【0056】
酸化防止剤の例には、アスコルビン酸およびその誘導体、例えば、パルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、アスコルビルグルコシド、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、およびソルビン酸アスコルビル;トコフェロールおよびその誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、ソルビン酸トコフェロール、およびトコフェロールの他のエステル;BHTおよびBHA;ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸のエステル、リン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、セファリン、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、ならびに、例えば、トチャカ(Chondrus crispus)、ロディオラ(Rhodiola)、サーマスサーモフィルス(Thermus thermophilus)、マテ茶の葉、オーク材、カユラパ(kayu rapat)の樹皮、桜の葉、およびイランイラン(ylang ylang)の葉からの植物抽出物が含まれる。
【0057】
水和剤の例には、ポリチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ムコ多糖、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびムコイチン流酸;カロン酸;アテロコラーゲン;12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル;胆汁酸塩、NHF(天然水和因子)の主成分(例えば、ピロリドンカルボン酸の塩および乳酸の塩)、アミノ酸類似体(例えば尿素)、システインおよびセリン;短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセロールPPG、2−メタクリロイル−オキシエチルホスホリルコリンのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、NOFによるLipidure HM、およびLipidure PBM;アラントイン;NOFからWilbride S 753の商用名で販売されているPEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセロール;Asahi Kasei Chemicals社によってAminocoatの商用名で販売されているトリメチルグリシン、ならびに、様々な植物抽出物、例えば、ヨーロッパグリ(Castanea sativa)の抽出物、加水分解されたヘイゼルナッツのタンパク質、チューベロース(Tuberosa polyanthes)多糖体、アルガニアスピノサ(Argania spinosa)核油、ならびに特筆すべきはMaruzen社(日本)によってPearl Extract(登録商標)の商用名で販売されている、コンキオリンを含む真珠層抽出物が含まれる。
【0058】
エモリエントの例には、メタクリル酸ポリグリセリルおよびメチルグルセス−20が含まれる。
【0059】
抗老化剤の例には、アシル化アミノ酸(例えば、SedermaによるMaxilip、Matrixyl 3000、もしくはバイオペプチドCL、またはSEPPICによるSepilift)、エンドウ(Pisum sativum)抽出物、加水分解された大豆タンパク質、メチルシラノール誘導体(例えば、マンヌロン酸メチルシラノール)、加水分解されたペポカボチャ(Curcubita pepo)ミール(meal)、ならびにセネデスムス(Scenedesmus)抽出物が含まれる。
【0060】
抗汚染剤の例には、ワサビノキ(Moringa pterygosperma)種子の抽出物(例えば、LSNによるPurisoft);シアバター抽出物(例えば、SilabによるDetoxyl);セイヨウキヅタ(ivy)抽出物、フィチン酸およびヒマワリ種子抽出物の混合物(例えば、SedermaによるOsmopur)が含まれる。
【0061】
角質溶解剤の例には、α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マンデル酸もしくは酒石酸)、およびβ−ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸)、およびこれらのエステル、例えば、C12〜13アルキル乳酸エステル、ならびにこれらのヒドロキシ酸を含む植物抽出物、例えば、ハイビスカス(Hibiscus sabdariffa)抽出物が含まれる。
【0062】
収斂剤の例には、ハマメリス(Hamamelis)抽出物が含まれる。
【0063】
抗炎症剤の例には、ビサボロール、アラントイン、トラネキサム酸、酸化亜鉛、酸化硫黄およびその誘導体、コンドロイチン硫酸、グリシルリジン酸およびその誘導体、例えば、グリシルリジネートが含まれる。
【0064】
ロイコドーパクロム誘導体以外に、本発明による組成物は、メラノサイト特異性糖タンパク質Pme117のような、メラニン形成のメカニズム(フェーズI)に関与する構造タンパク質の合成を妨げることができるさらなる脱色剤を含み得る。このような活性剤は、フェルラ酸、またはBASFによって販売されているCytovector(登録商標)(水、グリコール、レシチン、フェルラ酸、ヒドロキシエチルセルロース)であり得る。
【0065】
本発明による化粧料組成物はまた、特許出願WO2009/010356に記載の少なくとも1種のペプチド、特許出願WO2006/134282に記載の生体前駆体(bioprecursor)、またはトラネキサム酸エステル塩、例えば、セチルトラネキサム酸の塩酸塩も含み得る。
【0066】
ロイコドーパクロム誘導体以外に、本発明による組成物は、メラニン合成への阻害作用、および/またはMITFの発現への阻害作用、および/または抗チロシナーゼ活性、および/またはエンドセリン−1の合成への阻害作用を有するさらなる脱色剤、例えば、特にLicorice extract(登録商標)の商用名でMaruzen社によって販売されているカンゾウ(Glycyrrhiza glabra)抽出物を含み得る。
【0067】
変形形態または追加として、本発明による組成物は、酸化防止作用もまた有するさらなる脱色剤を、例えば、アスコルベート塩、脂肪酸もしくはソルビン酸のアスコルビルエステル、およびアスコルビン酸の他の誘導体、例えば、リン酸アスコルビル塩(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、およびリン酸アスコルビルナトリウム)、またはアスコルビン酸のサッカリドエステル(これらには、例えば、アスコルビン酸2−グルコシド、2−O−α−D−グルコピラノシルL−アスコルビン酸、もしくは6−O−β−D−ガラクトピラノシルL−アスコルビン酸が含まれる)を含めて、ビタミンC化合物を含み得る。この種の活性剤は、特に、DKSH社によってAscorbyl glucoside(登録商標)の商用名で販売されている。
【0068】
他の脱色剤もまた、本発明による組成物に含められ得る。フサザキスイセン(Narcissus tazetta)の抽出物を含めて、植物抽出物;アルブチン、コウジ酸、エラグ酸;システイン; 4−チオレゾルシン;レソルシコール(resorcicol)もしくはルシノールまたはこれらの誘導体、グリシルリジン酸およびヒドロキノン−β−グルコシドのような脱色素剤を挙げることができる。
【0069】
有利には、本発明による化粧料組成物は、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、懸濁液、溶液、ローション、クリーム、水性もしくは水−アルコール性ゲル、フォーム(foam)、セラム、エアロゾル用の溶液もしくは分散体、または脂質ベシクルの分散体の状態であり得る。
【0070】
エマルジョンの場合には、それは、油中水もしくは水中油エマルジョンであり得る。
【0071】
本発明による方法において、本組成物は、顔、胸部および/または手の皮膚に、好ましくは、過剰色素沈着した部分に、朝および/または晩に適用され得る。
【0072】
本発明を以下の実施例によって非限定的に例示する。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
ロイコドーパクロム誘導体:(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(II)の合成
化合物(II)を3,4−ジヒドロキシ−(L)−フェニルアラニン(以下では、(L)−ドーパ(V)と呼ばれる)から得る。
【0074】
生成物(L)−ドーパ(V)のエステル化によって、S−(L)−ドーパメチルエステルまたは(L)−ドーパのメチルエステル(生成物(VI)と呼ばれる)である生成物を得て、次いで、これを酸化し、次に、還元して、酸による加水分解の後で、(S)−5,6−ジヒドロキシインドリン−2−カルボン酸のメチルエステル((L)−シクロドーパメチルエステル、または(L)−ロイコドーパクロムメチルエステル、生成物(VII))を得る。
【0075】
具体的には、前記のS−(L)−ドーパメチルエステル(VI)は、次の様にして得る。
【0076】
【化14】

【0077】
窒素雰囲気下の丸底フラスコ中で、氷とNaClの浴を用い、20mlの無水メタノールを−5℃に冷却する。塩化チオニル(5ml、14当量)を滴下する。
【0078】
L−ドーパ(V)(1g、50mmol)を反応媒体に加える。該反応媒体を室温で1時間撹拌し、次いで、1時間還流させる。溶媒を蒸発させる。得られるエステルは、塩酸塩であり、白色固体状である。
【0079】
次に、ロイコドーパクロムのメチルエステル(VII)は、次の反応スキームに従って得ることができる。
【0080】
【化15】

【0081】
丸底フラスコ中で、S−(L)−ドーパメチルエステル(VI)(500mg、2.02mmol、1当量)を150mlのリン酸緩衝水溶液(pH=8、1Lの溶液のために、0.5gのKHPO、および22.6gのNaHPO.7HOを蒸留水に溶かす)に溶かす。
【0082】
反応媒体を、氷浴を用いて、0℃に冷却する。100mlのリン酸緩衝液中のKFe(CN)(3.325g、10.1mmol、5当量)の溶液を、氷浴を用いて冷却し、次いで、反応媒体に、一気に加える。
【0083】
75秒後に、50mlの緩衝溶液(氷浴によって冷却した)中、3.24gの85重量%Na(12.4mmol、6当量)を加える。
【0084】
30秒後に、5mlの37%HClを加える。水を減圧下で蒸発させる。固体残留物を10mlのトルエンで2回磨砕する。トルエン層をトルエンの蒸発によって濃縮する。
【0085】
(S)−ロイコドーパクロムのメチルエステル(VII)および反応媒体の塩を含む薄い茶色の固体残留物を得る。
【0086】
次に、生成物(VII)のアセチル化によって、(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(II)を得る。
【0087】
【化16】

【0088】
先のステップからの残留物を真空下に、次いで、窒素雰囲気下に置き、25mlのピリジンおよび25mlの無水酢酸を加える。固体塊状物を砕くために、反応媒体を磨砕し、次に、室温で4時間撹拌する。
【0089】
次いで、反応媒体をセライトで濾過し、150mlのジクロロメタンで洗い、その後、溶媒を蒸発させる。
【0090】
ジクロロメタン(50ml)を残留物に加え、次に、50mlのHCl溶液(1M)を加える。有機層をNaHCOの飽和溶液で、中性pHになるまでHOで、次に、NaClの飽和溶液で処理する。有機層をMgSOで乾燥し、溶媒を回転エバポレータによって除去する。
【0091】
所望の生成物をS−(L)−ドーパメチルエステル(2)に対して77%の収率で、茶色の固体の形態で得る。
【0092】
(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(II)は、シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール(19/1))で精製する。
【0093】
[実施例2]
ロイコドーパクロム誘導体:(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのプロピルエステル(XI)の合成
化合物(XI)を3,4−ジヒドロキシ−(L)−フェニルアラニン(以下では、(L)−ドーパ(V)と呼ばれる)から得る。
【0094】
生成物(L)−ドーパ(V)のエステル化によって、S−(L)−ドーパプロピルエステルまたは(L)−ドーパのプロピルエステル(生成物(IX)と呼ばれる)である生成物を得て、次いで、これを酸化し、次に、還元して、酸による加水分解の後で、(S)−5,6−ジヒドロキシインドリン−2−カルボン酸のプロピルエステル((L)−シクロドーパプロピルエステル、または(L)−ロイコドーパクロムプロピルエステル、生成物(X))を得る。
【0095】
具体的には、前記のS−(L)−ドーパプロピルエステル(IX)は、次の様にして得る。
【0096】
【化17】

【0097】
窒素雰囲気下の丸底フラスコ中で、氷とNaClの浴を用い、20mlの無水プロパノールを−5℃に冷却する。塩化チオニル(5ml、2当量)を滴下する。
【0098】
L−ドーパ(V)(1g、50mmol)を反応媒体に加える。該反応媒体を室温で1時間撹拌し、次いで、1時間還流させる。溶媒を蒸発させる。
【0099】
得られるエステルは、塩酸塩であり、白色固体状である。
【0100】
次に、(S)−ロイコドーパクロムのプロピルエステル(X)は、次の反応スキームに従って得ることができる。
【0101】
【化18】

【0102】
丸底フラスコ中で、S−(L)−ドーパプロピルエステル(IX)(500mg、2.02mmol、1当量)を1当量のEtN(トリエチルアミン)を含む150mlのMeOH/HO(75/25)溶液に溶かす。
【0103】
反応媒体を、氷浴を用いて、0℃に冷却する。KFe(CN)(3.325g、10.1mmol、4当量)の溶液。
【0104】
75秒後に、50mlのMeOH/HO溶液中、3.24gの85重量%Na(12.4mmol、6当量)。
【0105】
10分後に、5mlの3%HClを加える。水を減圧下で蒸発させる。固体残留物を10mlのトルエンで2回磨砕する。トルエン層をトルエンの蒸発によって濃縮する。
【0106】
(S)−ロイコドーパクロムのプロピルエステル(X)および反応媒体の塩を含む薄い茶色の固体残留物を得る。
【0107】
次に、生成物(X)のアセチル化によって、(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのプロピルエステル(XI)(またはトリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル)を得る。
【0108】
【化19】

【0109】
先のステップからの残留物を真空下に、次いで、窒素雰囲気下に置き、25mlのピリジンおよび25mlの無水酢酸を加える。固体塊状物を砕くために、反応媒体を磨砕し、次に、室温で4時間撹拌する。
【0110】
次いで、反応媒体をセライトで濾過し、150mlのジクロロメタンで洗い、その後、溶媒を蒸発させる。ジクロロメタン(50ml)を残留物に加え、次に、50mlのHCl溶液(1M)を加える。有機層をNaHCOの飽和溶液で、中性pHになるまでHOで、次に、NaClの飽和溶液で処理する。有機層をMgSOで乾燥し、溶媒を回転エバポレータによって除去する。
【0111】
所望の生成物をS−(L)−ドーパプロピルエステル(IX)に対して72%の収率で、茶色の固体の形態で得る。
【0112】
(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのプロピルエステル(XI)は、シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール(19/1))で精製する。
【0113】
[実施例3]
水中油エマルジョン
次の組成を有する水中油エマルジョンを調製する。
【0114】
【表1】

【0115】
皮膚に適用された生成物は、その脱色および明色化を可能にする。
【0116】
[実施例4]
水−アルコール性ゲル
次の組成を有する水−アルコール性のゲルを調製する。
【0117】
【表2】

【0118】
皮膚に適用されたゲルは、その脱色および明色化を可能にする。
【0119】
[実施例5]
トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステルのメラニン合成への作用
トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステルの3種の溶液をDMSO中、それぞれ、0.0025重量%、0.00025重量%、および0.000025重量%の濃度で調製した。
【0120】
(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステルのメラニン合成への作用を次の手順に従って評価した。
【0121】
別々のドナーの正常な新生児包皮に由来する過剰色素沈着したメラノサイトをCascade Biologics社(Portland、オレゴン州、米国)から購入した。これらの細胞を6ウェルプレートに播種し、メラノサイトの増殖培地で培養した(培地に、ウシ脳下垂体抽出物、ウシ胎児血清、ウシインスリン、トランスフェリン、通常の線維芽細胞増殖因子、ヒドロコルチゾン、ヘパリン、およびホルボール12−ミリステート13−アセテートを注ぎ足した)。
【0122】
第2段階において、活性生成物を含む増殖培地(MGM、Clonetics)で、細胞を3連で5日間インキュベートした。培地を取り除き、細胞をPBS(Gibco/Invitrogen)で洗った。細胞を溶解し、メラニンをNaOHに可溶化した。
【0123】
上澄みを遠心した。遠心後、透明な溶解物を新しいプレートに移し、メラニン含有量をELISAリーダーで、490nmで測定した。ペレットをAlphaInnotechイメージャーで可視化した。
【0124】
結果は次のとおりであった。
【0125】
【表3】

【0126】
メラニン合成の阻害が認められ、これは、溶液中の(S)−トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステルの濃度と共に増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の少なくとも1種の化合物を生理学的に許容される媒体中に含有することを特徴とする化粧料組成物または皮膚外用組成物
【化20】

[式中、R1は、
− 水素、または
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であり、
R2は、
− 水素、または
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であり、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 水素、または
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である]。
【請求項2】
R1が、
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
を表し、
R2が、
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状または分岐状C1〜C18アルキル、
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖またはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
を表すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R2が、ポリエチレングリコール(PEG)鎖であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R1が−CHであり、R2が−CHまたは−CH−CHであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
R3およびR4が、互いに独立に、
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
R3およびR4が、いずれもCH−CO−のアセチル基であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物が、トリアセチルロイコドーパクロムのメチルエステル(II)、またはトリアセチルロイコドーパクロムのエチルエステル(III)であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【化21】

【請求項8】
式(I)の2つの光学活性化合物の鏡像異性体の1つまたはラセミ(50/50)混合物を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物が、組成物の全重量に対して、0.00001から10重量%、好ましくは0.001から5重量%の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化粧料組成物または皮膚外用組成物を皮膚に適用することを含む、色素沈着を低減もしくは防止する、ならびに/あるいは皮膚を脱色および/または明色化するための方法であって、前記組成物が、式(I)の少なくとも1種の化合物を生理学的に許容される媒体中に含有し、
【化22】

[式中、R1は、
− 水素、または
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基および/またはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であり、
R2は、
− 水素、または
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であり、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 水素、または
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である]
前記組成物が、請求項1から9のいずれか一項に記載されたとおりであることを特徴とする方法。
【請求項11】
脱色素および/または抗色素沈着および/または脱色および/または明色化作用剤としての、式(I)の化合物の使用
【化23】

[式中、
R1、R2、R3およびR4は、請求項1から8において定義されたとおりである]。
【請求項12】
メラニンの合成を阻害するための組成物の製造のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式(I’)の化合物
【化24】

[式中、R1は、
− 1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキル、または
− 1つもしくは複数のヒドロキシル基もしくはアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
であり、
R2は、
− 飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C3〜C18アルキル、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であり、
R3およびR4は、互いに独立に、
− 式R5−CO−のアシル基(式中、R5は、特にアシルオキシ基により任意選択で置換された1つもしくは複数のアリール基により任意選択で置換された、飽和もしくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状C1〜C18アルキルである)、または
− 特にアシルオキシ基により任意選択で置換されたアリール
である]。
【請求項14】
R2が、
− 直鎖状C3〜C18アルキル基、または
− ポリエチレングリコール(PEG)鎖もしくはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル鎖
であることを特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式(I’)の化合物が、式(IV)のトリアセチルロイコドーパクロムプロピルエステル
【化25】

であり、任意選択で、式(IV)の2つの光学活性化合物の鏡像異性体の1つまたはラセミ(50/50)混合物の形態であることを特徴とする、請求項13または14に記載の化合物。

【公表番号】特表2013−504612(P2013−504612A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529324(P2012−529324)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051845
【国際公開番号】WO2011/033207
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508283406)シャネル パフュームズ ビューテ (23)
【Fターム(参考)】