説明

ロックローラを備えた操作装置

本発明は、ギヤチェンジ変速機のシフト段を選択するための操作装置に関する。該操作装置は、少なくとも3つのシフト位置の間で運動可能なシフトレバー(1)と、該シフトレバー(1)の運動範囲の制限のためのロック装置とを有している。
本発明によれば、当該操作装置は、ロック装置が、アクチュエータにより回転可能な少なくとも1つのロックローラ(2,3)に配置された、少なくとも1つのロックチャンバ(9)を備えたロックチャンバ装置を有しており、シフトレバー(1)が、少なくとも1つのロック突起(7,8)を有していることにより特徴付けられる。この場合、ロック突起(7,8)は、前記ロックチャンバ(9)内へ進入しかつシフトレバー(1)の運動範囲を制限するように前記ロックチャンバ装置と係合させられるようになっている。
本発明は、僅かな構造上の手間をかけるだけで、かつ最小限の所要構成スペースを用いるだけで、シフトバイワイヤ式の変速機の範囲における複雑は操作・ロック機能をも実現することを可能にする。当該操作装置は、僅かな騒音発生ならびに短いシフト時間を有しており、シフトバイワイヤ式にシフトされるH形シフトパターンを実現することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、ギヤチェンジ変速機、たとえばシフトバイワイヤ操作式の自動化されたシフト変速機に用いられる操作装置に関する。
【0002】
自動車のギヤチェンジ変速機は一般に、運転者の手の届く範囲に配置された操作装置によってシフトされるか、もしくは制御される。一般にこのためには、シフトレバーまたはセレクトレバーのような操作エレメントが使用される。これらの操作エレメントは、たとえば自動車の両フロントシートの間に配置されているか、またはコックピットの別の範囲に配置されている。
【0003】
特にマニュアル式にシフトされる変速機の場合には、これまでしばしば純然たる機械的な操作装置および操作エレメントとギヤチェンジ変速機との間の伝達手段が使用されてきた。この伝達手段は、たとえば操作エレメントと変速機との間のボーデンケーブルまたはリンク機構のような機械的な伝達エレメントである。最新の乗用車シフト変速機は、たいてい5つまたは6つの前進ギヤと1つの後退ギヤとを有しており、この場合、シフトレバーのこれら6つまたは7つのシフト位置は一般にH形のシフトパターンの形で、シフトレバーの中央のニュートラルなセンタ位置を巡ってグループ分けされて配置されている。
【0004】
しかし、機械的に操作されるシフト変速機のためのH形シフトパターンは、変速機において必要となるシフト・セレクトストロークに基づき、ならびにエルゴノミ(人間工学)の理由から超過されるべきでないシフトレバーにおける規定の操作力に基づき、特にオートマチック変速機のセレクトレバーまたは自動化された変速機に用いられるシフトバイワイヤ式のシフト部に比べて、車両内室の範囲における操作システムのために、しばしばかなり大きな構成スペースを必要とする。
【0005】
しかし、このことは、種々異なる変速機タイプを備えた車両の種々のバリエーションに合わせて種々異なる操作システムも設定されなければならないので、これによって車両内室も、たとえばセンタコンソールの範囲、コックピットの範囲または金属薄板製のフロアパネルの範囲において、車両変速機タイプに応じて、ひいては使用される操作システムに応じて、操作システムの構成スペース需要に適合されなければならないことを意味する。これによって、使用される変速機のタイプもしくは使用される操作装置のタイプに応じて、車両内室の範囲における上記構成アッセンブリに対する、場合によっては手間のかかる変更需要が生じる恐れがある。このことは、相応する高いコストに結びつく恐れがある。操作装置と自動車のギヤチェンジ変速機との間のシフト指令の機械的な伝達に伴う別の欠点は、相応するボーデンケーブルもしくはリンク機構が、金属薄板製の車両フロアパネル、センタトンネルまたは自動車のバルクヘッドを通過することが必要となることにある。このような通過は、やはり構造上の手間の原因となるだけでなく、さらに騒音発生、固体伝播音伝達に関しても、クラッシュ特性に関しても不都合となる。
【0006】
公知先行技術において見いだされたこれらの欠点を、自動車のギヤチェンジ変速機(マニュアル式のシフト変速機もこれに属する)をシフトバイワイヤ操作式に組み換えることにより回避することが試みられている。こうして、車両内室における変速機のための操作装置の設計および配置に際して、より大きな構成上のフレキシブル性(自在性)が達成される。こうして、機械的な伝達リンク機構ならびにスペースを取る機械的な操作レバーを不要にしたことにより、さらに、自動車のあらゆる変速機バリエーションに対して、特にコックピット、フロアパネルおよびセンタコンソールの範囲に、できるだけ単一の構成アッセンブリを設けることができることが可能にされた。
【0007】
しかし、自動車変速機のためのシフトバイワイヤ式の操作装置の場合にも、安全性およびエルゴノミの理由から、実際に変速機操作を行っているという感覚を運転者に与えることが要求される。したがって、運転者には変速機操作の際に、変速機の目下のシフト状態もしくは目下の作動状態に関して視覚的なフィードバックだけでなく、明確な触覚的もしくは触感的なフィードバックが媒介されることが必要となる。
【0008】
この場合、エルゴノミおよび安全性の理由から特に、目下許容され得ないシフト状態もしくはシフト動作が存在する場合、運転者が、たとえば全同期化(フルシンクロ)された機械的なシフト変速機においてその回転数および速度に関連した同期ロックにつき知っていてかつ慣れ親しんでいるように、このようなシフト状態もしくはシフト動作が、シフトレバーの所属の操作位置の相応するロックの形で触覚的にはっきりと感じられるように運転者に信号報知されることが要求される。
【0009】
しかし、ギヤチェンジ変速機の電気的な操作もしくはシフトバイワイヤ式操作の場合には、車室内の操作エレメントと、エンジンルーム内の自動車変速機との間に、もはやこのような機械的な連結は存在していない。それどころか、操作装置から自動車変速機へのシフト指令の伝送は、「シフトバイワイヤ」式の変速機では、電気的または電子的な信号と、引き続き変速機において行われるたいていはエレクトロハイドロリック的(電気液圧的)なシフト指令変換とによって行われる。しかし、変速機アクチュエータ装置と操作レバーとの間の機械的な結合が存在していないことに基づき、変速機状態または場合によっては存在するシフトロックまたは許容され得ないシフト指令が、もはや直接に操作レバーの状態へ反映され得なくなるという事態が生ぜしめられる。したがって、運転者は、シフトバイワイヤ制御される変速機では、操作レバーにおいて知覚できるようにブロックされた特定のシフト位置につき、幾つかのレバー位置、走行段もしくはシフト指令が、目下の走行状態では場合によっては許容され得ず、ひいては選択され得ないことを容易に認識することができなくなる。
【0010】
したがって、操作したいギヤチェンジ変速機の状態に関連して、かつ自動車における別の状態ファクタ、たとえばエンジン回転数、車両速度、クラッチ位置等に関連して、シフトバイワイヤ制御される変速機における所要の触覚的なフィードバックを実現するためには一般に、操作レバーの操作範囲を変速機状態に応じてアクチュエータにより制御して制限することが必要となる。こうして、運転者には、操作レバーを把持する際にシフトバイワイヤ制御される変速機においても、運転者のシフト意志が、たとえば自動車の目下の速度もしくはギヤチェンジ変速機の目下の運転状態に基づいて、許容され得ず、ひいてはロックされていることを、触覚的に知覚できるように伝えることができる。したがって、変速機電子ユニットにより検知されかつ変速機には伝達されない、変速機によって目下変換不可能であるシフト指令が、操作エレメントにおいても入れられ得なくなることを回避することができる。なぜならば、実際の変速機状態と、操作エレメントにおいて入れられたシフト位置との間の偏倚は許容され得ないからである。
【0011】
このためには、運転者が、シフトバイワイヤ制御される変速機においても、既に相応する操作が試みられたときに、機械的に操作される変速機、たとえばシフトレバーにおける個々のギヤのギヤ入れが特に速度に関連して知覚可能にロックされるような、伝達リンク機構を備えたマニュアル式のシフト変速機の場合と同じ触覚的なフィードバックを受けることが必要となる。こうして、目下許容され得ないギヤまたは変速機によってその都度シフトされ得ない走行段のギヤ入れは電子的に無視されるだけでなく、既に相応する操作の前域において操作エレメントにおける機械的なロックによって阻止される。
【0012】
たとえば米国特許出願公開第2006/0016287号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第102005033510号明細書から明らかであるように、シフトバイワイヤ制御式のギヤチェンジ変速機の操作レバーが、複数のアクチュエータもしくは多重作用型のアクチュエータと、許容され得ないシフト指令を選択的にロックするための相応するレバーエレメントもしくは伝動装置エレメントとを備えていることによって、相応するロックを実現することが試みられている。これらのアクチュエータおよびこれによって制御されるレバーエレメントもしくは伝動装置エレメントは、車両状態もしくは変速機状態に関連して切り換えられ、これにより操作エレメントの全運動範囲が、目下の走行状態または変速機状態に相応して制限されるようになる。
【0013】
しかし、この場合に種々異なる多数のレバー位置が、種々異なる組合せにおいてアクチュエータによりロックされなければならない場合、このためには公知先行技術ではしばしば複雑なロックメカニズム(Sperrmimik)が必要となる。このことは、これに伴う手間や、相応するコスト増大に基づき、望ましくない結果を招く。また、操作装置の範囲において提供されている構成スペースに関する問題や、エネルギ消費量および熱発生に関する問題も生じ得る。
【0014】
このことは特に、シフトバイワイヤ式の操作装置において、たとえば自動化されたシフト変速機を制御するためのH形シフトパターンを実現したい場合に云える。シフトバイワイヤ式の操作装置において、たとえば自動化されたシフト変速機を制御するためのH形シフトパターンを実現することは、公知先行技術に基づき公知のロック装置を用いても、特に次の理由からほとんど実現され得ない。すなわち、H形シフトパターンは、状態に関連してロックまたはロック解除されなければならないシフト位置を有する、相並んで位置するシフトゲートを2つだけでなく、最大4つまで有することができるからである。
【0015】
このような背景に鑑み、本発明の課題は、特にギヤチェンジ変速機の電気的もしくは電子的なシフトバイワイヤ操作のためのロック装置を備えた操作装置を改良して、上で挙げた公知先行技術の欠点を克服することのできる操作装置を提供することである。特に当該ロック装置は複雑なロックロジックの場合でも単純に形成されていることが望ましく、迅速な切換時間、低い故障発生率、低いエネルギ消費量および僅かな騒音発生が達成されることが望ましい。さらに、当該操作装置はできるだけ小さな構成スペースで十分となることが望ましく、そして慣用の機械的なシフト指令伝達に比べても、公知先行技術に基づき公知のシフトバイワイヤ式の操作装置に比べても、コスト節約が得られることが望ましい。
【0016】
この課題は、請求項1に記載の操作装置、すなわちギヤチェンジ変速機のシフト段を選択するための操作装置であって、該操作装置が、少なくとも3つのシフト位置の間で運動可能なシフトレバーと、該シフトレバーの運動範囲の制限、特定のシフトレバー位置の排除もしくはシフトレバーのブロックのためのロック装置とを有している形式のものにおいて、該ロック装置が、アクチュエータにより回転可能な少なくとも1つのロックローラに配置された、少なくとも1つのロックチャンバを備えたロックチャンバ装置を有しており、シフトレバーが、少なくとも1つのロック突起を有しており、該ロック突起が、前記ロックチャンバ内へ進入しかつシフトレバーの運動範囲を制限するように前記ロックチャンバ装置と係合させられるようになっていることを特徴とする、ロックローラを備えた操作装置により解決される。
【0017】
本発明の有利な実施態様は請求項2以下に記載されている。
【0018】
それ自体さしあたり公知の形式で、本発明による操作装置は、少なくとも1つのシフトゲート内で運動可能な、少なくとも3つのシフト位置を有するシフトレバーと、ロック装置とを有している。このロック装置は、特に変速機のシフト状態または自動車の走行状態に関連して、シフトレバーの運動範囲の制御可能な制限、特定のシフトレバー位置の排除またはシフトレバーのブロックのために働く。
【0019】
しかし、本発明によれば、当該操作装置は、ロック装置が、アクチュエータにより回転可能な少なくとも1つのロックローラに配置された、少なくとも1つのロックチャンバを備えたロックチャンバ装置を有していることにより特徴付けられる。さらに、シフトレバーは少なくとも1つのロック突起を有しており、該ロック突起が前記ロックチャンバ装置と係合可能である。この場合、ロック突起は、前記ロックチャンバ内へ侵入し、こうして特にロックチャンバの目下有効な深さに関連して、シフトレバーの運動を可能にするか、または制限する。
【0020】
公知先行技術に基づき、とりわけ、複数の運転位置を備えたアクチュエータ(たとえば複動式の電磁石)、多数のアクチュエータまたは種々の伝動装置エレメントを備えた複雑なロックメカニズムを有する操作装置が知られているが、このような公知先行技術に比べて、本発明におけるロックローラを用いると、まず第1に操作装置のかなりの構造上の単純化を行うことができる。それにもかかわらず、この場合、所望の運動範囲の形成もしくはシフトレバーのためのシフト段の数に関して大きな構造上の自由度が与えられている。この自由度はロックローラにおけるロックチャンバ装置の十分に自由な形状付与によってしか制限されていない。
【0021】
したがって、本発明によれば、ボーデンケーブルまたはリンク機構を用いた操作装置から変速機へのシフト指令の機械的な伝送を、全ての変速機タイプもしくは全てのタイプの操作装置において十分に全般的に、シフト指令の電子的な伝送により代えることができる。この場合、それと同時に、機械的なシフト指令伝送により既知である触覚は維持される。このことは、特に規定の相対回転数窓もしくは速度窓の外の許容され得ないシフト指令に関するシフトレバーの触覚的なフィードバックに云える。
【0022】
したがって、本発明によれば、車両内室もしくは車両コックピット内での操作装置の設計および配置の点でかなり大きな構造上の自由度が得られる。なぜならば、ロックチャンバ装置をジオメトリ的(幾何学的)に十分に自由に形成することができるからである。これにより、シフトレバーのためのほぼ任意の多数の種々異なるシフト位置を有する、ほぼ任意の運動範囲を規定することができる。さらに、本発明によれば、操作装置全体の構造組換えまたはそれどころか自動車における周辺の構成アッセンブリの構造組換えが必要となることなしに、ロックローラの簡単な交換(モジュール式の組立てユニットシステムとして)によって、操作装置を種々異なる車両変速機もしくは顧客要望に適合させることができる。したがって、本発明によれば、決定的なコスト節約および構成スペース節約が可能となる。
【0023】
本発明はまず第1に、ロックチャンバ装置とシフトレバーに設けられた前記少なくとも1つのロック突起との規定された相互作用が保証されている限り、前記少なくとも1つのロックローラおよびこのロックローラに収納されたロックチャンバ装置がどのように形成され、構造的に構成されかつ配置されるのかとは無関係に実現され得る。しかし、本発明の特に有利な実施態様では、前記少なくとも1つのロックローラに設けられたロックチャンバ装置が、ロックローラの回転軸線に沿って相並んで配置された複数のロックチャンバを有している。
【0024】
さらに、当該操作装置が、アクチュエータにより回転可能なロックローラを1つだけでなく、2つ有しており、シフトレバーが、シフトレバー軸線に関して互いに背中合わせに位置する2つのロック突起を有していると有利である。この場合、シフトレバーの第1のロック突起には、第1のロックローラに設けられたロックチャンバ装置が対応しており、シフトレバーの第2のロック突起には、第2のロックローラに設けられたロックチャンバ装置が対応している。こうして、シフトレバーの、センタ位置を起点として走行方向に関して前方へ向かう運動も後方へ向かう運動も、アクチュエータによりコントロールされるか、もしくはロックされ得る。
【0025】
シフトレバーはこの場合、多安定性を有するシフトレバーであると有利である。この多安定性のシフトレバーは、単安定性のシフトレバーとは異なり原理的には、操作後にシフトレバーから手が離されると、各シフト位置に留まる。したがって、回転軸線に沿って相並んで配置された複数のロックチャンバならびにアクチュエータにより回転可能な2つのロックローラにより、特に多安定性のシフトレバーにおいては、シフトバイワイヤ式の操作の場合でも、機械的なセレクトレバーもしくはシフトレバーの完全なシフトパターンを完全に実現することができる。
【0026】
特に、それぞれ複数の相並んで配置されたロックチャンバを備えた2つのロックローラを有する本発明による操作装置の実施態様により、マニュアル式に操作されるシフト変速機のシフトレバーの完全なH形シフトパターンを踏襲し、かつ実物通りにシミュレートすることができる。このためには、5〜6つの前進ギヤと1つの後退ギヤとを備えた汎用のH形シフトパターンの最大4つの相並んで位置するシフトゲートのそれぞれのために、両ロックローラのそれぞれに設けられた固有のロックチャンバが設けられる。こうして、H形シフトパターンのたとえば4つのシフトゲートのそれぞれのために、それぞれ許容され得る運動範囲を別個に設定しかつ制御することができる。この場合、各シフトゲートには、両ロックローラに設けられた所属のロックチャンバのそれぞれ所定のペアリングが対応される。
【0027】
本発明によればシフトバイワイヤ式シフトの分野へも適用可能となる慣用的なH形シフトパターンの原理は、シフト変速機における以前の機械的な操作の点で運転者にはなじみ深いものである。それゆえに、本発明により可能となるH形シフトパターンに基づき、シフトバイワイヤ制御されるシフト変速機においても誤操作を十分に回避することができる。
【0028】
少なくとも1つの、有利には2つのロックローラの制御は、本発明の特に有利な実施態様では、車両速度に関連して行われる。この実施態様も、シフトバイワイヤ制御されるギヤチェンジ変速機、たとえばバイワイヤシフトされるダブルクラッチ変速機またはエレクトロハイドロリック式に操作されるシフト変速機において、運転者になじみ深いH形シフトパターンをできるだけ完全に実現するために役立つ。
【0029】
本発明のさらに別の有利な実施態様では、操作装置に設けられた前記ロックチャンバのうちの少なくとも1つのロックチャンバが、しかし有利には全てのロックチャンバが、その少なくとも一方の端部に、ロックローラの表面にまでランプウェイ状に延びる導出部を有している。こうして、できるだけ少ない手間をかけるだけで、かつロックローラを構造的に二重利用して、センタ位置もしくはニュートラル位置へのシフトレバーの信頼性の良いアクチュエータ式の戻し可能性を付加的に実現することができる。これにより、特にマニュアル式にシフトされる自動変速機において、自動車を駐車する際もしくは自動車から離れる際に、変速機操作部で実際に入れられているギヤ段とは無関係に自動的に変速機内のパークロックを入れ(Auto-P)、これにより駐車された自動車のころがり出しを阻止する変速機操作を実現することができる。
【0030】
したがって、センタ位置もしくはニュートラル位置へのシフトレバーのアクチュエータ式の戻しを可能にするこのような実施態様に基づき、シフトレバーが、次の走行開始の際に、変速機状態「パークロック」とは一致しない位置に位置することを回避することができる。
【0031】
運転者が車両から離れる際にシフトレバーが、前記シフト位置のうちの1つに残されたままだと、シフトレバー位置はAuto−Pの場合には次の走行開始の際にもはや変速機の実際のシフト状態(パークロック)とは合致しなくなってしまう。したがって、運転者が車両に戻った際もしくは車両を始動させようとする際には、シフトレバー位置につき、視覚的にまずは、実際のシフト状態には該当しない不適切な情報が運転者に与えられてしまう。シフトレバー位置から見て取る限りでは、運転者は、変速機が1つの走行段位置に位置しているものと考えざるを得ないが、しかし実際には変速機ではパークロックが入れられているという事態が起こる。
【0032】
したがって、運転者のこのような誤情報を阻止するためには、ことさら運転者のための付加的な信号装置が設けられなければならなくなる。この信号装置は運転者には、Auto−Pにつき入れられたパークロックの場合のために、シフトレバーがまず最初にマニュアル式にセンタ位置もしくはニュートラル位置へもたらされた場合にしか車両をスタートさせることができないことを信号報知する。しかし、本発明の前記実施態様により、ひいてはこれによって可能となるシフトレバーのアクチュエータ式の戻しに基づき、このような信号装置は必要とならなくなる。
【0033】
2つのロックローラと2つのロック突起とを備えた本発明の実施態様はさしあたり、両ロックローラのアクチュエータ式の駆動がどのように行われるのかとは無関係に実現され得る。すなわち、両ロックローラは、たとえばそれぞれ専用のアクチュエータ式の駆動装置を有しているか、または歯車を介して連結されていてよい。しかし、本発明の特に有利な実施態様では、当該操作装置が、両ロックローラのための1つの共通のアクチュエータ式の駆動装置により特徴付けられている。この場合、両ロックローラならびに両ロックローラに共通の前記アクチュエータ式の駆動装置が、1つの歯付きベルトを介して互いに連結されていると有利である。この場合、両ロックローラの前記共通のアクチュエータ式の駆動装置が、サーボモータにより形成されていると有利である。
【0034】
この実施態様は、唯一つの電動モータ式のアクチュエータしか有しない操作装置のコスト節約的な形成を可能にする。しかし、それにもかかわらず、このアクチュエータはシフトレバーの種々異なる全ての操作ロック、たとえばH形シフトパターンの種々のシフトゲートにおける操作ロックを、的確に制御することができる。
【0035】
本発明のさらに別の有利な実施態様では、少なくとも1つのロックローラに回転角度センサが配置されている。このことは、比較的単純な電動モータ、つまり専用のセンサ装置なしで十分となり得る電動モータを用いても、当該ロックローラの、各ロックのために必要となる回転角度位置の駆動および信頼性の良い調節を可能にする。
【0036】
本発明のさらに別の有利な実施態様では、少なくとも1つのロックローラに戻しばねが配置されている。たとえば渦巻き帯ばねの形で形成されていてよい前記戻しばねは、特にロックローラのアクチュエータ式の駆動装置の故障時もしくはイグニションのスイッチオフの後でも、シフトレバーの操作を可能にする。この場合には、ロックローラが、戻しばねに蓄えられたエネルギによって、予め規定された位置へ戻し回転させられる。この位置では、シフトレバーの全ての操作位置を選択することができる。
【0037】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による操作装置の1実施形態のロック装置を、歯付きベルト駆動装置の側から見た等角図である。
【図2】図1に示したロック装置を、ロックローラおよびアクチュエータ駆動装置の側から見た、図1に相当する等角図である。
【図3】図2に示したロック装置を、シフトレバーが変位されかつロック突起がロックチャンバ内に進入した状態で示す、図2に相当する等角図である。
【図4】図2および図3に示したロック装置を、シフトレバーが図3におけるように変位された状態で示す、部分的に断面した側面図である。
【図5】走行方向に関して後側のロックローラを概略的に示す等角図である。
【図6】走行方向に関して前側の、戻しばねを備えたロックローラを示す、図5に相当する等角図である。
【図7】図5および図6に示したロックローラのためのロックチャンバの割り当て表である。
【0039】
図1には、本発明による操作装置の1実施形態のためのロック装置を、歯付きベルト駆動装置側から見た概略的な等角図が示されている。まず第1に、シフトレバー1(スペース事情から部分的にしか図示されていない)と、ロックローラ2,3と、電動モータ式の駆動装置4と、この駆動装置4の、前記ロックローラ2,3の回転を制御するための歯付きベルト伝動装置5とが示されている。方向矢印6は、自動車の、この実施形態に該当する走行方向を表している。
【0040】
図2には、図1に示した状況を、逆の方向からロックローラ2,3および電動モータ4の側から見た図が示されている。特に図2には、シフトレバー1に配置された、本実施形態においてシフトレバー1と一体に形成されたロック突起7,8が示されている。ロック突起7,8は、シフトレバー1の旋回運動時に当該ロック突起7,8が、ロックローラ2,3に設けられた対応するロックチャンバ9内へ進入し得るように配置されている。
【0041】
ロックローラ2,3の回転角度位置に応じて(回転角度位置は歯付きベルト伝動装置5を介してサーボアクチュエータ4によって制御される)、シフトレバー1のロック突起7,8に対してロックチャンバ9の種々異なる配置が作用し、これによりロックローラ2,3の回転角度位置に関連して、シフトレバー1の相応するシフト運動をロック解除するか、またはロックすることができる。
【0042】
図2にはさらに、ディテントガイド10ならびにこのディテントガイド10内に案内された、軸方向でばね支承されたディテントピン11が示されている。ディテントガイド10とディテントピン11とは、シフトレバー1の運動時における規定された案内およびエルゴノミもしくはシフトロジックの理由から必要となるディテント力および戻し力の形成のために働く。
【0043】
図3および図4には、ロックローラ2,3に設けられた対応するロックチャンバ9内へのロック突起7,8の進入もしくは嵌入が示されている。図3および図4には、まず第1に走行方向6に関して前方へ向かって旋回させられたシフトレバー1が示されている。シフトレバー1の旋回によって、ロック突起8も旋回させられ、そしてこのロック突起8が、適切な回転角度位置に位置している場合には、走行方向に関して後側のロックローラ3に設けられたロックチャンバ9内へ進入する。
【0044】
しかし、図3および図4に示したシフトレバー1の旋回運動を、たとえば相応するシフト指令に適応しない車両速度または変速機における相対回転数に基づいて、阻止したいか、もしくは運転者にとって知覚できるようにロックしたい場合、アクチュエータ駆動装置4は変速機電子装置によって、ロック突起8に、該ロック突起8が進入するはずの適応するロックチャンバ9が対峙しないように制御される。ロック突起8はこの場合には、シフトレバー1の相応する操作が試みられると、ロックローラ3の平滑な表面12に当接する。これにより、運転者には、シフトレバーが目下、運転者が意図した方向へは運動され得ないことが触覚的にはっきりと信号報知される。この場合にシフトレバーを運動させることができない理由は、このことが、目下許容され得ないシフト指令に相当するからである(たとえば、高い車速での第2速ギヤのギヤ入れまたは車両がまだ停止していない状態での後退ギヤのギヤ入れ)。
【0045】
走行方向に対して直交する横方向におけるシフトレバー1の側方運動時では、その都度、シフトレバー1のロック突起7,8に、両ロックローラ2,3のロックチャンバ9の種々異なるペアリングが対峙する。こうして、特に走行速度に関連して、シフトレバー1の種々異なるシフトゲートのためには、シフトレバー1の各シフトゲートチェンジの際にロックローラ2,3を別の回転角度位置へもたらす必要が生じることなしに、その都度種々異なるシフト位置が許容され得るか、もしくはロックされ得るようになる。
【0046】
図4には、図3に示した、走行方向に関して後側のロックローラ3に設けられた複数のロックチャンバ9のうちの1つのロックチャンバ9内へのロック突起8の進入の過程が再度明瞭に図示されている。図4にはさらに、ディテントガイド10ならびにこのディテントガイド10内でスライドする、シフトレバー1内に軸方向でばね負荷されて運動可能なディテントピン11も認められる。さらに、図4には、ロックチャンバ9のランプウェイ(傾斜面)状の導出部の可能な1実施形態が、破線14によって概略的に示されている。たとえば渦巻き状に加工成形されたランプウェイ状の導出部14によって、シフトレバー1を、ロックローラ3のアクチュエータによる回転によって、図1および図2に示したセンタ位置へ戻すことができる。
【0047】
図5および図6には、両ロックローラ2,3が再度、拡大図で示されている。図面から判るように、ロックローラ2は渦巻き状の戻しばね13を備えている。この戻しばね13は両ロックローラ2,3の電動モータ式の駆動装置4によってプリロード(予荷重)をかけられ、システム故障が生じた場合には、両ロックローラ2,3を、シフトレバー1の全てのシフト位置が選択され得る基本位置へ自動的に戻すために働く。なぜならば、ロックローラ2,3の基本位置においては、シフトレバー1のいずれのシフト位置のためにも、ロック突起7,8のための相応するロックチャンバ9が存在しているからである。
【0048】
ロックローラ2,3のこの基本位置には、図7に示した表において「X」で示した行が相当している。図7に示した表の列見出し「R135−246」は、シフトレバー1において選択可能な個々のギヤ段の、所属のロックローラ3もしくは2に配置された各ロックチャンバ9に対する対応関係を示している。「0」と「>130」の間の行見出しは、アクチュエータ4によって、両ロックローラ3(表の左半部)もしくは2(表の右半部)のそれぞれ所属の回転角度位置が到達される際の車両速度範囲を表す。
【0049】
この表につき判るように、たとえば車両の停止した状態では後退ギヤおよび第1速のギヤを入れることができるが、その他の全てのシフト位置はロックされている。50〜60km/hの速度において、この実施形態は後退ギヤと第6速のギヤを除いた全てのギヤを選択することができ、130km/hを超える速度では第5速のギヤまたは第6速のギヤしか選択することができず、その他の全てのギヤは、ロックチャンバ9外の両ロックローラ2,3の平滑な表面12に対するロック突起7,8の当接によってロックされている。両ロックローラ2,3が、たとえば駆動装置4の故障時に戻しばね13によって自動的に占める基本位置「X」では、シフトレバー1の各シフト位置のためにそれぞれ両ロックローラ2,3に設けられた対応するロックチャンバ9が設けられているので、基本位置「X」では、全てのシフト位置を選択することができる。
【0050】
特定のシフト操作が許容され、その他のシフト操作は排除されているような車両速度範囲は、ロックローラ2,3における相応する変更により、最小限の手間をかけるだけで、相応する車両バリエーションまたは顧客嗜好に適合され得る。
【0051】
したがって、その結果、本発明によれば、公知先行技術に比べて、操作装置が、複雑なロック機能の場合でも、比較的僅かな構造的な手間をかけるだけで十分となるという利点を有する操作装置が提供されることが明らかである。重要な利点は、構成スペース要求の最小化、僅かな騒音発生ならびに短い切換時間と同時に、低い故障発生率の形で達成される。特にH形シフトパターンの場合には、機械的なシフト指令伝送に比べても、公知先行技術に基づき公知のシフトバイワイヤ式操作装置に比べても、コスト節約および構造上の利点が得られる。運転者にとっては、実際のシフト状態および目下の許容され得るシフト指令に関して、信頼性の良い触覚的なフィードバックが得られる。
【0052】
したがって、特に、単純なモジュール化可能な構造に基づき、本発明は自動車変速機のための操作装置における製品系列全般に跨るコスト有効度を向上させ、かつエルゴノミおよび安全性を改善するために重要な貢献を果たす。
【符号の説明】
【0053】
1 シフトレバー
2,3 ロックローラ
4 電動モータ、アクチュエータ
5 歯付きベルト伝動装置
6 走行方向
7,8 ロック突起
9 ロックチャンバ
10 ディテントガイド
11 ディテントピン
12 ローラ表面
13 戻しばね
14 導出ランプウェイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤチェンジ変速機のシフト段を選択するための操作装置であって、該操作装置が、少なくとも3つのシフト位置の間で運動可能なシフトレバー(1)と、該シフトレバー(1)の運動範囲の制限、特定のシフトレバー位置の排除もしくはシフトレバー(1)のブロックのためのロック装置とを有している形式のものにおいて、該ロック装置が、アクチュエータにより回転可能な少なくとも1つのロックローラ(2,3)に配置された、少なくとも1つのロックチャンバ(9)を備えたロックチャンバ装置を有しており、シフトレバー(1)が、少なくとも1つのロック突起(7,8)を有しており、該ロック突起(7,8)が、前記ロックチャンバ(9)内へ進入しかつシフトレバー(1)の運動範囲を制限するように前記ロックチャンバ装置と係合させられるようになっていることを特徴とする、ロックローラを備えた操作装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのロックローラ(2,3)に設けられたロックチャンバ装置が、ロックローラ(2,3)の回転軸線に沿って相並んで配置された複数のロックチャンバ(9)を有している、請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
前記ロック装置が、アクチュエータにより回転可能な2つのロックローラ(2,3)を有しており、シフトレバー(1)が、シフトレバー軸線に関して互いに背中合わせに位置する2つのロック突起(7,8)を有しており、第1のロック突起(7)に第1のロックローラ(2)に設けられたロックチャンバ装置が対応配置されており、第2のロック突起(8)に第2のロックローラ(3)に設けられたロックチャンバ装置が対応配置されている、請求項1または2記載の操作装置。
【請求項4】
シフトレバー(1)が、多安定性である、請求項1から3までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項5】
ロックローラ(2,3)の制御が、車両速度に関連して行われる、請求項1から4までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項6】
1つのロックチャンバ装置に設けられた複数のロックチャンバ(9)のうちの少なくとも1つのロックチャンバ(9)が、その少なくとも一方の端部に、ロックローラ(2,3)の表面にまで延びるランプウェイ状の導出部(14)を有しており、これによりシフトレバー(1)が、該ランプウェイ状の導出部(14)を用いてロックローラ(2,3)の回転によりアクチュエータにより運動させられるようになっている、請求項1から5までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項7】
両ロックローラ(2,3)のために1つの共通のアクチュエータ式の駆動装置(4)が設けられている、請求項2から4までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項8】
両ロックローラ(2,3)ならびに前記アクチュエータ式の駆動装置(4)が、1つの共通の歯付きベルト(5)を介して互いに連結されている、請求項7記載の操作装置。
【請求項9】
前記共通のアクチュエータ式の駆動装置が、サーボモータ(4)により形成されている、請求項7または8記載の操作装置。
【請求項10】
1つのロックローラ(2,3)に回転角度センサが配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項11】
1つのロックローラ(2,3)に戻しばね(13)が配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−7】
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【公表番号】特表2011−506884(P2011−506884A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538341(P2010−538341)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/DE2008/050038
【国際公開番号】WO2009/080019
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(506054589)ツェットエフ フリードリヒスハーフェン アクチエンゲゼルシャフト (151)
【氏名又は名称原語表記】ZF Friedrichshafen AG
【住所又は居所原語表記】D−88038 Friedrichshafen,Germany
【Fターム(参考)】