説明

ロボットの制御プログラム構築方法およびロボットシステム

【課題】 生活空間において,移動ロボットが種々の物品の把持や,会話による動作など,多様な動作を実現するためのロボット制御プログラムの作成において,プログラムの複雑化を抑制し,操作者の負担を軽減できるプログラミング環境を提供する。
【解決手段】 物品の把持シーケンスプログラムを,データベースの物品情報ごとに記憶し,ロボット10の制御プログラムの実行時に,把持対象物品の電子タグ情報を電子タグリーダ13で読み取り,その電子タグ情報をキーとしてデータベースより該物品の把持シーケンスを取得し,ロボット制御プログラムに挿入する,という手順で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,移動ロボットの制御プログラムに関するものであり,特に,生活空間で要求される多種多様な動作を,移動ロボットの取得する情報と,データベースの格納情報とを使用して実現するプログラム構築方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より,種々の環境において人間の行う作業の代行や補助を行う,たとえばサービスロボットなどのロボット,およびロボットシステムの研究が進められている。人間の生活環境において,衣服を取り出す,食器を片付けるなど様々なサービスを提供するためには,多種多様な動作をすることがロボットに要求される。
多様な動作を可能とするシステムとしては,車輪を駆動して移動する自律移動型ロボットと,該自律移動型ロボットに着脱自在に取り付けられ,所定の機能(掃除機,配膳機能,車椅子機能,把持機能)を実行する複数の機能モジュールとを目的に応じて組み合わせ,容易に動作させる機能可変型ロボットシステムが提案されている。(たとえば,特許文献1参照)。該ロボットは,使用する機能モジュールの制御プログラムをデータベースからダウンロードすることで,対象機能を有した自律移動型ロボットとしてパーソナルコンピュータから制御可能とするものである。
【特許文献1】特開2007−193736号公報 第10頁 図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,人間の生活環境においては,あるひとつのサービス内容においても動作対象に応じて異なる動きを求められる場合がある。たとえば,衣服をハンガー掛けから取り出す場合のロボットアームの動きと,食器を掴む場合の動きは異なり,また食器のみを考えても,その種類によって求められる動作は異なる。前記従来技術では,機能モジュールとして把持機能モジュールが挙げられているが,該機能モジュールを使用可能とした後,パーソナルコンピュータ側で制御する方式(ロボット制御プログラム),たとえば把持対象物に応じた動作の切り替えについては具体的に述べられていない。すなわち,物品によって形状や重量は多種多様であるため,手先の移動位置や姿勢を数種類にパターン化するのは困難であり,状況に応じた多様な動作を実現する必要がある。また,人間との会話の内容に応じた動作や,カメラなどの環境センサからのイベントに応じた動作なども実現する必要がある。
例として,図7にロボットの把持動作のシーケンスを記述するプログラムを示す。なお,ここでロボットは,手先などに電子タグリーダが備えられており,物品に貼り付けられた電子タグを読み取り,読み取った電子タグIDをキーとしてデータベースシステムに物品情報を問い合わせているものとする。
図では,まず“ReadTag”コマンドで,物品に貼り付けされた電子タグを読み取っている。つぎに“GetTagInfo”コマンドで前記データベースに物品情報を問い合わせている。つぎに物品情報に応じて,“Switch”文で分岐し,対応する把持動作を実行する。なお,説明のため,図の左側に示す1つのケースのみ記述している。把持動作では,まず,“SetVar”コマンドにより必要なパラメータ設定を行い,つぎに“MOVLvcl”で移動台車の制御,“MOVJgrp”で左右グリッパの制御,“MOVJarm”で左右アームの制御を並列に実行している。また各コマンドのプロパティで位置情報などコマンドパラメータが設定されている。以上のようなシーケンスは,種別の異なる物品が増えるたびに分岐が必要となることが予想され,プログラムが複雑になる等の問題点がある。同様に,人間との会話の内容に応じた動作や,環境センサからのイベントに応じた動作の実現においても,音声の種類やイベントの種類に応じた分岐が必要となることが予想される。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり,多様な動作を実現するためのロボット制御プログラムの作成において,プログラムの複雑化を抑制し,操作者の負担を軽減できるプログラミング環境を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため,本発明は,次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は,物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備えたロボットシステムにおいて,前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスを記憶する第1のデータベースを備えたことを特徴とするものである。
また,請求項2に記載の発明は,前記物品識別手段は,電子タグであることを特徴とするものである。
また,請求項3に記載の発明は,前記読み取り手段は,電子タグリーダであることを特徴とするものである。
また,請求項4に記載の発明は,前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,前記第1のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とするものである。
また,請求項5に記載の発明は,マイクと,前記マイクから得られた音声を解析し,当該音声に対応する音声識別情報を得る音声識別手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備えたロボットシステムにおいて,前記音声識別手段から得られた音声識別情報および当該音声識別情報に対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第2のデータベースを備えたことを特徴とするものである。
また,請求項6に記載の発明は,前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,前記第2のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とするものである。
また,請求項7に記載の発明は,物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスを記憶する第1のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第1のデータベースから把持対象物品の物品識別情報をキーとして前記物品の把持シーケンスを取得し,前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするものである。
また,請求項8に記載の発明は,前記物品識別手段は,電子タグであることを特徴とするものである。
また,請求項9に記載の発明は,前記読み取り手段は,電子タグリーダであることを特徴とするものである。
また,請求項10に記載の発明は,前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,前記第1のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とするものである。
また,請求項11に記載の発明は,マイクと,前記マイクから得られた音声を解析し当該音声に対応する音声識別情報を得る音声識別手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と, 前記音声識別手段から得られた音声識別情報および当該音声識別情報に対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第2のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第2のデータベースから前記音声識別情報をキーとして当該音声に対応する動作プログラムシーケンスを取得し,前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするものである。
また,請求項12に記載の発明は,前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,
前記第2のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とするものである。
また,請求項13に記載の発明は,物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記移動ロボットおよび人間を含む移動体と環境をセンシングするセンシング手段を備えたロボットシステムにおいて,前記センシング手段が発行するイベント識別情報および当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第3のデータベースを備えたことを特徴とするものである。
また,請求項14に記載の発明は,前記センシング手段は,環境センサと,センシング情報を処理する第3のコンピュータと,を備えたことを特徴とするものである。
また,請求項15に記載の発明は,物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記移動ロボットおよび人間を含む移動体と環境をセンシングするセンシング手段と,前記センシング手段が発行するイベント識別情報および当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第3のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第3のデータベースから前記イベント識別情報をキーとして当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを取得し,前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするものである。
また,請求項16に記載の発明は,物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備え,前記物品識別手段に,前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスが予め記憶されたロボットシステムにおいて,前記移動ロボットの所定のコマンドの実行時に,前記物品識別手段に記憶された把持シーケンスを取得し,前記移動ロボットの制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば,物品の種別に応じて異なる把持動作を実現するシーケンスプログラムを,物品種別ごとにデータベースに格納し,ロボット制御プログラム実行時に,把持対象物品の電子タグ情報をキーとして前記データベースより該物品の把持シーケンスを取得し,前記ロボット制御プログラムに挿入するため,操作者が,予めロボット制御プログラム上に物品ごとの把持シーケンスを記述する必要がなくなり,負担を軽減できるとともにプログラムの複雑化が抑制される。音声認識情報やイベント情報についても,音声の種類,イベントの種類に対応する動作シーケンスプログラムをデータベースに格納しておきロボット制御プログラム実行時に動的に取得し,挿入できるようにすることで,同様の効果が期待できる。
また,上記データベースに格納するシーケンスプログラムは,複数のクライアントから共有することができるため,同様のシーケンスプログラムをロボット制御プログラム毎に記述する必要がなくなる効果がある。
また,物品の種別に応じて異なる把持動作を実現するシーケンスプログラムを,該物品の電子タグの記憶領域に記憶し,ロボット制御プログラム実行時に,把持対象物品の前記記憶領域より該物品の把持シーケンスを取得し,前記ロボット制御プログラムに挿入することで,同様の効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下,本発明の方法の具体的実施例について,図を用いて説明する。実施例においては,ロボットシステムが適用される場所として,住宅を例とし,居住者の作業の補助や代行,たとえば食器の取り出しや収納などを行うサービスロボットを想定している。
【実施例1】
【0007】
図1は,本発明のロボットシステムの構成を示す概略図である。図において,10は移動ロボットであり,左右アーム11,左右グリッパ12,移動台車14(移動手段)から構成される。なお,移動台車14は,脚式の移動手段であっても良い。
グリッパ12の先端に設置されている13は電子タグリーダ(読み取り手段)であり,把持対象物など物品に貼り付けられた電子タグ(物品識別手段)を読み取るのに使用される。また,移動台車14の底面に設置された電子タグリーダ15は,床面に敷設された電子タグを読み取るのに使用される。16はマイクであり,操作者の音声を認識するために使用される。17はデータベースシステムであり,物品情報などをデータベースに記憶しており,データ取得のためのインターフェースを提供している。18は,制御用コンピュータであり,移動ロボット10の制御プログラムを作成および実行するものである。
60は環境センサであり,人の存在の有無や,障害物の有無を検出するためのカメラやレーザレンジファインダなどである。61はセンサ用コンピュータであり,環境センサ60が検出した移動体の位置情報などを処理する。移動ロボット10,データベースシステム17,制御用コンピュータ18,センサ用コンピュータ61は,互いに中継装置19を使用したネットワークを介してデータの送受信を行う。
なお,制御用コンピュータ18,および,データベースシステム17は同一のコンピュータであっても良く,更には,センサ用コンピュータ61までも含んで同一のコンピュータとしても良い。すなわち,データベースシステム17,制御用コンピュータ18,センサ用コンピュータ61は,それぞれ独立していなくてもよく,要するに,データベースシステム17内のデータベースと,制御用コンピュータ18の機能と,環境センサ60とが,何らかの方法で互いにデータの送受信を行うことができればよいのである。さらには,これらの一部または全部を移動ロボット10に内蔵させることも可能である。
【0008】
図2は,本発明の方法を実施する移動ロボット10の機能的構成を示すブロック図である。図において21はアーム制御モジュールであり,移動ロボット10の左右アーム11を制御する。ここでモジュールとは,制御に必要なコントローラ,サーボモータ,ソフトウェアなどが含まれるものとする。22はグリッパ制御モジュールであり,移動ロボット10の左右グリッパ12を制御する。23は移動台車制御モジュールであり,移動ロボット10の移動台車14を制御する。24はタグリーダ制御モジュールであり,移動ロボット10のグリッパ設置の電子タグリーダ13,および移動台車設置の電子タグリーダ15の読み取りデータの処理などを行う。25は音声認識モジュールであり,移動ロボット10のマイク16から入力された音声の判別処理などを行う。モジュール管理部20は,上記各モジュールとやり取りするための情報を管理しており,通信部26を介して,情報を提供する。
【0009】
図3は,本発明の方法を実施する制御用コンピュータ18の構成を示すブロック図である。図において30はユーザインタフェースであり,入力受付部31と表示部32からなる。操作者は,表示部32に表示されるプログラミング画面を参照しながら,コマンドを配置してプログラムの作成や作成したプログラムの実行を行う。図7はこのようなユーザインタフェースを使用して作成されたプログラム例である。各コマンドはアイコン化されており,プログラム上にドラッグして作成される。図3において,33は,動作判定部でありユーザインタフェース30の操作状況に応じて処理を振り分ける。34は,プログラム解析部であり,プログラム記憶部36に保存されているプログラムを読み出し,解析して表示部32に表示する。35は,プログラム実行部であり,指定されたプログラムの実行を行う。プログラムの実行は,通信部37を介して,移動ロボット10,データベースシステム17とデータの送受信を行いながら実現される。たとえば,図7において,“ReadTag”コマンドで,物品に貼り付けされた電子タグを読み取っている。この場合,プログラム実行部35は,移動ロボット10のモジュール管理部20からタグリーダ制御モジュール24とやりとりするための情報を取得し,タグリーダ制御モジュール24に問い合わせて読み取ったタグ情報を取得する。また,“GetTagInfo”コマンドでは,プログラム実行部35は前記データベースシステム17に物品情報を問い合わせている。
“MOVJarm”コマンドで,移動ロボット10のアーム11を制御している。この場合,プログラム実行部35は,移動ロボット10のモジュール管理部20からアーム制御モジュール21とやりとりするための情報を取得し,アーム制御モジュール21に駆動指令を送信する。
なお,図7のようにして作成されたプログラムの保存は,XML(eXtensible Markup Language)で記述されたテキスト形式で保存されるものとする。
【0010】
図4は,本発明の方法を実施するデータベースシステム17の構成を示すブロック図である。図において50はデータベースであり,電子タグID(物品識別情報)と物品情報を関連付ける物品タグ情報51,電子タグIDと床面の位置情報を関連付ける床面タグ情報52,会話(音声)情報と移動ロボットの動作を関連付ける会話情報53,移動ロボットの形状情報や位置情報を含む移動体情報54,床面の電子タグ配置情報である地図情報55,イベントID(イベント識別情報)と移動ロボットの動作を関連付けるイベント情報59が格納される。56は通信部57を介して制御用コンピュータ18から送られたデータの送受信要求を解析し,前記データベース50のデータの更新や抽出を行うとともに,センサ用コンピュータ61から送信されたセンシング情報に基づいたデータの更新,またイベント情報が通知された場合に該イベントの購読者(移動ロボット)にイベント通知を行うデータベース処理モジュールである。58はデータベース50のデータを直接編集,参照するためのユーザインタフェースである。
【0011】
図5は,本発明を実施するデータベースシステム17のデータベース設定例を示す図である。図5(a)は物品タグ情報51,図5(b)は会話情報53,図5(c)はイベント情報59が記憶された例である。(a)においては,電子タグID(物品識別情報)に対応した物品タグ情報(名前,大きさ,色,把持シーケンス)がデータベース(第1のデータベース)として記憶されている。(b)においては,音声データに割り当てられたID(音声識別情報)に対応した会話情報(言葉,動作プログラムシーケンス)がデータベース(第2のデータベース)として記憶されている。(c)においては,イベントID(イベント識別情報)に対応したイベント情報(説明,動作プログラムシーケンス)がデータベース(第3のデータベース)として記憶されている。
【0012】
図6は,本発明によるプログラム構築方法を使用した場合のプログラム例を示す図である。図6(a)は物品タグ情報51を使用した例であり,図6(b)は会話情報53を使用した例である。図6(c)はイベント情報59を使用した例であり,図6(d)は電子タグに記憶されたプログラムシーケンスを使用した例である。
【0013】
図1〜図6を用いて,ロボットを制御するためのプログラムの構築方法を説明する。まず,物品を把持するプログラムシーケンスについて説明する。図5(a)の物品タグ情報51では,各物品に貼り付けられた電子タグの電子タグIDと物品情報を関連付けている。物品情報として,名前“name”,大きさ“size”,色“color”などに加え,該物品を把持する際のプログラムシーケンスを記述したXMLファイル“grip sequence”が関連付けられている。一方,制御用コンピュータ18のプログラミング画面で図6(a)のように作成し,プログラムの実行を行うと,プログラム実行部35は,まず“ReadTag”コマンドに基づき,物品に貼り付けされた電子タグを読み取り,“GetTagInfo”コマンドに基づき,前記データベースシステム17に物品情報を問い合わせる。たとえば,読み取られた電子タグIDが“E005”である場合,物品タグ情報51の該当行の情報が取得される。
“ParseGrip”コマンドでは,“GetTagInfo”コマンドの実行により得られた把持する際のプログラムシーケンスを記述したXMLファイル“dish1.xml”を該コマンドの位置に挿入し,実行を行う。これにより,物品に対応した把持動作が実行できる。
物品タグ情報51のデータとして,前記XMLファイルが関連付けられていない場合は,図7のようなプログラム記述となり,物品ごとの把持シーケンスを記述する必要が生じる。
【0014】
つぎに,音声情報により移動ロボットの動作を切り替えるプログラムシーケンスについて説明する。ここで,移動ロボット10の音声認識モジュール(音声識別手段)25は,マイク16から入力された音声を解析し,自身が管理する認識可能な音声データリストと照らしあわせ,合致すれば該音声データに割り当てられたID(音声識別情報)を,制御用コンピュータ18に送信する。
図5(b)の会話情報53では,各音声データに割り当てられたIDと該音声を認識した際の移動ロボット10の動作プログラムシーケンスを記述したXMLファイル“action sequence”が関連付けられている。一方,制御用コンピュータ18のプログラミング画面で図6(b)のように作成し,プログラムの実行を行うと,プログラム実行部35は,まず“WaitEvent”コマンドに基づき,指定されたイベント(ここでは会話イベント)を待機する。“WaitEvent”コマンドは,移動ロボット10の音声認識モジュール25より音声IDが送信された場合に,“Switch”文の第1の分岐(図左側)を実行し,それ以外の場合(たとえば中断イベント)には第2の分岐(図右側)を実行する。つぎに,“GetWordInfo”コマンドに基づき,前記データベースシステム17に会話情報を問い合わせる。たとえば,受信した音声IDが“1002”である場合,会話情報53の該当行の情報が取得される。なお,該当行の“action sequence”は玄関へ移動するためのシーケンスプログラムが格納されている。
“ParseAction”コマンドでは,“GetWordInfo”コマンドの実行により得られたプログラムシーケンスを記述したXMLファイル“entrance.xml”を該コマンドの位置に挿入し,実行を行う。操作者の音声に対応した動作を実行できる。
会話情報53がデータベースに存在しない場合,図7の把持動作と同様,音声ごとの動作シーケンスを記述する必要が生じる。
【0015】
つぎに,イベント情報により移動ロボットの動作を切り替えるプログラムの構築方法について説明する。まず,センサ用コンピュータ61は環境センサ60が検出した情報に基づき,データベースシステム17にイベント情報を通知する。ここで,イベントには,訪問者検出や障害物検出等があり,イベント情報とは,そのイベントの種類を識別するイベントIDである。
データベースシステム17のデータベース処理モジュール16は通知されたイベント情報を,移動ロボットの制御用コンピュータ18に送信する。
図5のイベント情報59では,各イベントに割り当てられたIDと該イベント発生時の移動ロボット10の動作プログラムシーケンスを記述したXMLファイル“action sequence”が関連付けられている。たとえば,イベントID“101”は訪問者検出イベントであり,プログラムシーケンスとしては“玄関まで移動し,発話する”などが考えられる。また,イベントID“103”は障害物検出イベントであり,プログラムシーケンスとしては“生活空間の地図情報を再取得する”などが考えられる。
制御用コンピュータ18のプログラミング画面で図6(c)のように作成し,プログラムの実行を行うと,プログラム実行部35は,まず“WaitEvent”コマンドに基づき,イベントを待機する。なお,本コマンドは,待機するイベントの種別(イベントID)を指定するパターンと,指定せずに任意のイベントを待機するパターンの動作が可能とし,ここでは後者のパターンで実行するものとする。
“WaitEvent”コマンドは,データベースシステム17からイベントIDが送信されると,“GetEventInfo”コマンドの実行に移る。“GetEventInfo”コマンドでは,通知されたイベントIDに基づき,前記データベースシステム17にイベント情報を問い合わせる。たとえば,受信したイベントIDが“101”である場合,イベント情報59の該当行の情報が取得される。
つぎに,“ParseAction”コマンドでは,“GetEventInfo”コマンドの実行により得られたプログラムシーケンスを記述したXMLファイル“visitor.xml”を該コマンドの位置に挿入し,実行を行う。このようにしてイベント種別に対応した動作を実行できる。
なお,イベント情報59がデータベースに登録されておらず,イベントと動作シーケンスが関連付けられていない場合,“WaitEvent”コマンドで取得したイベントIDごとに,“Switch”文で分岐し,対応する動作シーケンスを記述する必要が生じる。
【0016】
このように,本発明によれば,物品の種別に応じて異なる把持動作を実現するシーケンスプログラムを,物品種別ごとにデータベース50に格納し,ロボット制御プログラム実行時に,把持対象物品の電子タグ情報をキーとして前記データベース50より該物品の把持シーケンスを取得し,前記ロボット制御プログラムに挿入するため,操作者が予めロボット制御プログラム上に物品ごとの把持シーケンスを記述する必要がなくなり,負担を軽減できるとともにプログラムの複雑化が抑制される。
また,音声認識情報についても,音声の種類に対応する動作シーケンスプログラムを前記データベース50に格納しておきロボット制御プログラム実行時に動的に取得し,挿入できるようにすることで,同様の効果が期待できる。
また,イベント情報についても,イベントの種類に対応する動作シーケンスプログラムを前記データベース50に格納しておきロボット制御プログラム実行時に動的に取得し,挿入できるようにすることで,同様の効果が期待できる。
また,前記データベース50に格納するシーケンスプログラムは,複数のクライアントから共有することができるため,同様のシーケンスプログラムをロボット制御プログラム毎に記述する必要がなくなる。
【実施例2】
【0017】
つぎに,把持対象物など物品に貼り付けられた電子タグの記憶情報によるプログラムの構築方法を説明する。各物品に貼り付けられた電子タグの記憶領域に,電子タグIDと該物品を把持する際のプログラムシーケンス(XML形式)を予め記憶しておく。
制御用コンピュータ18のプログラミング画面で図6(d)のように作成し,プログラムの実行を行うと,プログラム実行部35は,まず“ReadTag”コマンドに基づき,物品に貼り付けされた電子タグを読み取り,このとき該物品を把持する際のプログラムシーケンスを取得する。
“ParseGrip”コマンドでは,電子タグの記憶領域から取得した把持する際のプログラムシーケンスを該コマンドの位置に挿入し,実行を行う。これにより,物品に対応した把持動作が実行できる。
前記プログラムシーケンス情報が電子タグに記憶されていない場合は,図7のようなプログラム記述となり,物品ごとの把持シーケンスを記述する必要が生じる。
【0018】
このように,本発明によれば,物品の種別に応じて異なる把持動作を実現するシーケンスプログラムを,該物品の電子タグの記憶領域に記憶し,ロボット制御プログラム実行時に,把持対象物品の前記記憶領域より該物品の把持シーケンスを取得し,前記ロボット制御プログラムに挿入することで,操作者が予めロボット制御プログラム上に物品ごとの把持シーケンスを記述する必要がなくなり,負担を軽減できるとともにプログラムの複雑化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施するロボットシステムの構成を示す概略図
【図2】本発明の方法を実施する移動ロボットの機能的構成を示すブロック図
【図3】本発明の方法を実施する制御用コンピュータの構成を示すブロック図
【図4】本発明の方法を実施するデータベースシステムの構成を示すブロック図
【図5】本発明を実施するデータベースシステムのデータベース設定例
【図6】本発明によるプログラム構築方法を使用した場合のプログラム例
【図7】従来のロボットの把持動作のシーケンスを記述するプログラム例
【符号の説明】
【0020】
10 移動ロボット
11 アーム
12 グリッパ
13 電子タグリーダ(グリッパ設置)
14 移動台車
15 電子タグリーダ(移動台車設置)
16 マイク
17 データベースシステム
18 制御用コンピュータ
19 中継装置
20 モジュール管理部
21 アーム制御モジュール
22 グリッパ制御モジュール
23 移動台車制御モジュール
24 タグリーダ制御モジュール
25 音声認識モジュール
26 通信部
30 ユーザインタフェース
31 入力受付部
32 表示部
33 動作判定部
34 プログラム解析部
35 プログラム実行部
36 プログラム記憶部
37 通信部
50 データベース
51 物品タグ情報
52 床面タグ情報
53 会話情報
54 移動体情報
55 地図情報
56 データベース処理モジュール
57 通信部
58 ユーザインタフェース
59 イベント情報
60 環境センサ
61 センサ用コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,
前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備えたロボットシステムにおいて,
前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスを記憶する第1のデータベースを備えたことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記物品識別手段は,電子タグであることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記読み取り手段は,電子タグリーダであることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,
前記第1のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,
前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項5】
マイクと,前記マイクから得られた音声を解析し,当該音声に対応する音声識別情報を得る音声識別手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,
前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備えたロボットシステムにおいて,
前記音声識別手段から得られた音声識別情報および当該音声識別情報に対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第2のデータベースを備えたことを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,
前記第2のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,
前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とする請求項5記載のロボットシステム。
【請求項7】
物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,
前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスを記憶する第1のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,
前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第1のデータベースから把持対象物品の物品識別情報をキーとして前記物品の把持シーケンスを取得し,
前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項8】
前記物品識別手段は,電子タグであることを特徴とする請求項7記載のロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項9】
前記読み取り手段は,電子タグリーダであることを特徴とする請求項7記載のロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項10】
前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,
前記第1のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,
前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とする請求項7記載のロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項11】
マイクと,前記マイクから得られた音声を解析し当該音声に対応する音声識別情報を得る音声識別手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,
前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,
前記音声識別手段から得られた音声識別情報および当該音声識別情報に対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第2のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,
前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第2のデータベースから前記音声識別情報をキーとして当該音声に対応する動作プログラムシーケンスを取得し,
前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項12】
前記制御手段は,第1のコンピュータに設けられ,
前記第2のデータベースは第2のコンピュータに設けられ,
前記移動ロボット,前記第1および第2のコンピュータは,中継装置を備えたネットワークを介してデータを送受信することを特徴とする請求項11記載のロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項13】
物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記移動ロボットおよび人間を含む移動体と環境をセンシングするセンシング手段を備えたロボットシステムにおいて,
前記センシング手段が発行するイベント識別情報および当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第3のデータベースを備えたことを特徴とするロボットシステム。
【請求項14】
前記センシング手段は,環境センサと,センシング情報を処理する第3のコンピュータと,を備えたことを特徴とする請求項13記載のロボットシステム。
【請求項15】
物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,前記移動ロボットおよび人間を含む移動体と環境をセンシングするセンシング手段と,前記センシング手段が発行するイベント識別情報および当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを記憶する第3のデータベースと,を備えたロボットシステムにおいて,
前記ロボットの制御プログラムの実行時に,前記第3のデータベースから前記イベント識別情報をキーとして当該イベントに対応する動作プログラムシーケンスを取得し,前記制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするロボット制御プログラムの構築方法。
【請求項16】
物品に設けられた物品識別手段の物品識別情報を読み取る読み取り手段と,前記物品を把持するための把持手段と,床面を移動するための移動手段と,を備えた移動ロボットと,前記移動ロボットの制御を行う制御手段と,を備え,前記物品識別手段に,前記物品識別情報および当該物品に対応する物品の把持プログラムシーケンスが予め記憶されたロボットシステムにおいて,
前記移動ロボットの所定のコマンドの実行時に,前記物品識別手段に記憶された把持シーケンスを取得し,前記移動ロボットの制御プログラムに挿入する,という手順で処理することを特徴とするロボット制御プログラムの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−269162(P2009−269162A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183866(P2008−183866)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】