説明

ロボットハンドとこれを用いた対象物の把持方法

【課題】把持部の交換をすることなく、複数種類の対象物を把持でき、対象物の上方に障害物が存在しても、対象物へのアクセスを容易に行えを提供する。
【解決手段】取出位置にある対象物を挟持して別の位置まで搬送する搬送ロボットのロボットハンドであって、種類が異なる第1および第2の対象物2,3をそれぞれ挟持する第1および第2の挟持部5,7を備える。第1および第2の挟持部5、7は、開閉駆動される共通のフレーム9に設けられる。第1の挟持部5は、フレーム9の閉動作により第1の対象物2を挟むように動作し、第2の挟持部7も、フレーム9の閉動作により第2の対象物3を挟むように動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボットのロボットハンドとこれを用いた対象物の把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ロボットは、取出位置にある対象物を別の位置まで搬送する産業用ロボットであり、対象物を把持するためのロボットハンドを有する。
【0003】
搬送ロボットは、例えば下記特許文献1に多関節ロボットとして記載されている。特許文献1は、複数種類の対象物を搬送ロボットで把持して搬送するための構成を持つ。下記特許文献1に記載された多関節ロボットを図6に示す。
図6の構成を説明する。多関節ロボット11のアーム先端部にはハンド交換用着脱装置12が設けられており、用意されたハンド(把持部)13〜15のいずれか1つがハンド交換用着脱装置12を介してロボット11に取り付けられる。図6には、ハンド13を取り付けて、ワーク16を把持した状態が示されている。各ハンド13〜15には、それぞれワーク16〜18の把持に適した配置、形状及びサイズを有する把持爪と、それら把持爪に把持動作を行なわせるためのアクチュエータが組み込まれている。ロボット11の各軸は周知の態様でロボット制御装置(図示省略)により制御される一方、ハンド交換用着脱装置12及び各ハンドの把持動作のためのアクチュエータの制御もロボット制御装置によって行なわれる。
【0004】
このように、複数種類の対象物(ワーク)を把持する場合、複数種類の対象物をそれぞれ把持する複数種類の把持部(把持爪)を交換可能にロボットハンドに着脱できるようになっている。
【特許文献1】特許第3790759号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の把持部を交換すると、把持部を保管する場所が必要で、かつロボットハンドの構造が複雑となっていた。
また、通常、把持部(把持爪)を鉛直姿勢にして、対象物に対して上方からアクセスしている。そのため、対象物の上方に障害物がある場合には、対象物へのアクセスが困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、把持部の交換をすることなく、複数種類の対象物を把持でき、対象物の上方に障害物が存在しても、対象物へのアクセスを容易に行え、さらなる効果も奏するロボットハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によると、取出位置にある対象物を挟持して別の位置まで搬送する搬送ロボットのロボットハンドであって、
種類が異なる第1および第2の対象物をそれぞれ挟持する第1および第2の挟持部を備え、
第1および第2の挟持部は、開閉駆動される共通のフレームに設けられ、
第1の挟持部は、前記フレームの閉動作により第1の対象物を挟むように動作し、第2の挟持部も、前記フレームの閉動作により第2の対象物を挟むように動作する、ことを特徴とするロボットハンドが提供される。
【0008】
上述した本発明のロボットハンドでは、種類が異なる第1および第2の対象物をそれぞれ把持する第1および第2の挟持部を備えるので、挟持部(把持部)を交換することなく、複数種類の対象物を把持できる。
しかも、第1および第2の挟持部は、開閉駆動される共通のフレームに設けられ、第1の挟持部は、前記フレームの閉動作により第1の対象物を挟むように動作し、第2の挟持部も、前記フレームの閉動作により第2の対象物を挟むように動作するので、共通のフレームを閉動作させることで、複数種類の対象物を把持・挟持できる。即ち、1つのアクチュエータで共通のフレームを開閉することで複数種類の対象物を挟持することができる。従って、単純な構造で、しかも重量の増加を招くことなく、複数種類の対象物を挟持することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の挟持部は、水平姿勢で第1の対象物を把持するように構成され、第2の挟持部は、鉛直姿勢で第2の対象物を把持するように構成されている。
【0010】
上記構成では、障害物が第1の対象物の上方に存在する場合、障害物に干渉しないように第1の挟持部を水平姿勢にして、第1の対象物を第1の挟持部で挟持できる。
一方、障害物が第2の対象物の上方に存在しない場合、第2の挟持部を鉛直姿勢にして、第2の対象物を第2の挟持部で挟持できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の挟持部は、前記フレームに対し第1方向を向くように前記フレームに取り付けられ、第2の挟持部は、前記フレームに対し第1方向と直交する第2方向を向くように前記フレームに取り付けられている。
【0012】
この構成により、次の方法で第1および第2の対象物を把持することが可能になる。
【0013】
即ち、上記目的を達成するため、本発明によると、上述のロボットハンドを用いて対象物を把持する対象物の把持方法であって、
前記ロボットハンドは、搬送ロボットに取り付けられており、
前記搬送ロボットの動作により、前記フレームから見て同じ方向にロボットハンドを移動させることで、第1の対象物を挟持できる位置へ第1の挟持部を水平移動させ、第2の対象物を挟持できる位置へ第2の挟持部を鉛直移動させ、
(A)第1の挟持部を水平姿勢にした状態で、前記水平移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第1の挟持部で第1の対象物を挟持し、
(B)第2の挟持部を鉛直姿勢にした状態で、前記鉛直移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第2の挟持部で第2の対象物を挟持する、ことを特徴とする対象物の把持方法が提供される。
【0014】
上述の本発明による対象物の把持方法では、(A)第1の挟持部を水平姿勢にした状態で、前記水平移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第1の挟持部で第1の対象物を挟持することと、(B)第2の挟持部を鉛直姿勢にした状態で、前記鉛直移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第2の挟持部で第2の対象物を挟持することとを行う場合に、第1の対象物へのアクセスと、第2の対象物へのアクセスとは、前記フレームから見て同じ方向にロボットハンドを移動させることでなされる。即ち、ロボットハンドを同じ方向に移動させることで、第1の対象物へのアクセスも第2の対象物へのアクセスもなされる。よって、搬送ロボットの動作制御が簡単になる。
例えば、ロボットハンドが、搬送装置の伸縮アームとして機能するシリンダ装置のピストン先端に取り付けられている場合に、このシリンダ装置の直線的な伸長動作により前記水平移動と前記鉛直移動とを行うことができる。従って、対象物2、3へのアクセス制御がシリンダ装置の伸長動作の制御だけとなるので、制御が簡単になる。
【0015】
第1の挟持部、第2の挟持部およびフレームは、次の具体的構成を有してよい。
【0016】
第1の挟持部は、第1の対象物を挟んで把持する1対の開閉部からなり、
第2の挟持部は、第2の対象物を挟んで把持する1対の開閉部からなり、
前記共通のフレームは開閉駆動される1対の開閉フレーム部からなり、
第1の挟持部の前記1対の開閉部の一方と、第2の挟持部の前記1対の開閉部の一方とは、前記1対の開閉フレーム部の一方に設けられ、第1の挟持部の前記1対の開閉部の他方と、第2の挟持部の前記1対の開閉部の他方とは、前記1対の開閉フレーム部の他方に設けられる。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によると、挟持部の交換をすることなく、複数種類の対象物を把持でき、対象物の上方に障害物が存在しても、対象物へのアクセスを容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態によるロボットハンド10の構成図である。ロボットハンド10は、複数種類の対象物2、3を把持できるものであり、取出位置にある対象物2、3を別の位置へ搬送する搬送ロボットに取り付けられる。例えば、図1において、搬送ロボットの取付部4にロボットハンド10が取り付けられてよい。取付部4は、搬送ロボットのアーム先端にあってよい。
ロボットハンド10は、第1の挟持部5、第2の挟持部7、フレーム9、および、単一のアクチュエータ(図示せず)を備える。
【0020】
複数種類の対象物2、3は、図1の例では、互いに形状と寸法が異なる第1および第2の対象物2、3である。本実施形態では、第1および第2の対象物2、3は、それぞれ同じ回転機械(例えば、電動モータ)の構成部品である。図1では、第1の対象物2は、取出位置にあり、支持具6により支持されている。
【0021】
第1および第2の挟持部5,7は、フレーム9を介して搬送ロボットの取付部4に支持されており、搬送ロボットの動作により、第1および第2の挟持部5,7(即ち、フレーム9)の向きが、図1の状態と図2の状態にされる。即ち、図1において、例えば図1の左右方向を向く水平軸を中心にロボットハンド10を90度回転させることで、ロボットハンド10の向きを90度変えて図2の状態にする。図2に示す構成は、図1のII−II線矢視による構成に相当する。なお、図2では、第1の対象物2の代わりに第2の対象物3を記載している。
第1の挟持部5は、第1の対象物2を挟持する。第1の挟持部5は、第1の対象物2を挟んで把持する1対の開閉部5a,5bからなる。同様に、第2の挟持部7は、第2の対象物3を挟持する。第2の挟持部7は、第2の対象物3を挟んで把持する1対の開閉部7a,7bからなる。
本実施形態では、第1の挟持部5は、水平姿勢(図1の姿勢)で第1の対象物2を把持するように構成され、第2の挟持部7は、鉛直姿勢(図2の姿勢)で第1の対象物2を把持するように構成されている。なお、第1の挟持部5が水平姿勢であるとは、第1の挟持部5が水平方向を向いていることをいい、第2の挟持部7が鉛直姿勢であるとは、第2の挟持部7が鉛直下方を向いていることをいう。
また、第1の挟持部5は、フレーム9に対し第1方向(図1において図の左右方向)を向くようにフレーム9に取り付けられ、第2の挟持部7は、フレーム9に対し第1方向と直交する第2方向(図1において紙面と直交する方向)を向くようにフレーム9に取り付けられている。なお、第1の挟持部5が第1方向を向くとは、第1の挟持部5がフレーム9から第1方向に延びていることをいい、第2の挟持部7が第2方向を向くとは、第2の挟持部7がフレーム9から第2方向に延びていることをいう。
【0022】
フレーム9は、開閉駆動される。第1および第2の挟持部5、7は、この共通のフレーム9に設けられる。即ち、第1の挟持部5は、フレーム9の閉動作により第1の対象物2を挟んで把持するように動作し、第2の挟持部7も、フレーム9の閉動作により第2の対象物3を挟んで把持するように動作する。図3は、フレーム9が開いている図1の状態から、フレーム9の閉動作により第1の対象物2を第1の挟持部5で挟持した状態を示す。図4(B)は、フレーム9が開いている図4(A)の状態から、フレーム9の閉動作により第2の対象物3を第2の挟持部7で挟持した状態を示す。なお、図4(A)は、図2の状態から、搬送ロボットの動作によりロボットハンド10を下降させた状態を示す。
共通のフレーム9は開閉駆動される1対の開閉フレーム部9a、9bからなる。1対の開閉フレーム部9a、9bの一方には、第1の挟持部5の1対の開閉部5a,5bの一方と、第2の挟持部7の1対の開閉部7a,7bの一方とが固定される。1対の開閉フレーム部9a、9bの他方には、第1の挟持部5の1対の開閉部5a,5bの他方と、第2の挟持部7の1対の開閉部7a,7bの他方とが固定される。
1対の開閉フレーム部9a、9bは、開閉動作をするために、例えば、搬送ロボットの取付部4に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って往復移動自在となっている。また、開閉フレーム部9a、9bは、往復移動自在に搬送ロボットの取付部4に設けられた支持部に支持されている。この支持部は、前記ガイドレールであってよい。
【0023】
単一のアクチュエータにより、フレーム9が開閉駆動される。アクチュエータは、例えば、空圧または油圧によるシリンダ装置であってよい。この場合、シリンダ装置において、シリンダが1対の開閉フレーム部9a、9bの一方に固定され、シリンダ内部を往復運動するピストンの先端部が、1対の開閉フレーム部9a、9bの他方に固定されてよい。アクチュエータは、搬送ロボットの取付部4に設けられてよい。
また、アクチュエータが、電動サーボモータである場合には、例えば、サーボモータにより回転駆動されるピニオンと、このピニオンを間に挟んで該ピニオンに噛み合う1対のラックと、が設けられ、1対のラックの一方が1対の開閉フレーム部9a、9bの一方に固定され、1対のラックの他方が1対の開閉フレーム部9a、9bの他方に固定され、これにより、サーボモータの回転により1対の開閉フレーム9が開閉される。
なお、1対の開閉フレーム部9a、9bの一方のみが往復運動させられるようにしてもよい。
【0024】
なお、ロボットハンド10は、第1または第2の挟持部5、7が、第1または第2の対象物2、3を挟持する力を検知する力センサ(図示せず)を有するのがよい。例えば、力センサは、第1または第2の挟持部5、7に組み込まれた圧電センサやひずみ式ゲージセンサであってよい。また、アクチュエータが、電動サーボモータである場合には、力センサは、サーボモータのトルクを検知するものであってよい。
このような力センサを設けることで、各対象物2、3が各挟持部5、7から落下してしまったことを検知できる。また、フレーム9を閉じる時に、力センサにより検知された力に基づいて、制御装置(図示せず)が前記アクチュエータを制御することでフレーム9の移動を停止させてよい。これにより、各対象物2、3に適切な値の挟持力が作用している状態とすることができる。
【0025】
上述したロボットハンド10は、多関節ロボットなどの搬送ロボットに取り付けられて、搬送ロボットにより3次元的に移動させられてよい。例えば、ロボットハンド10は、搬送ロボットにより鉛直方向、第1水平方向、および、第1水平方向とは異なる第2水平方向に移動させられてよい。また、ロボットハンド10は、搬送ロボットにより所定の軸を中心に旋回させられてもよい。なお、多関節ロボットは、例えば特許文献1に記載されている。
【0026】
上述の構成を有するロボットハンド10を用いた対象物2,3を把持方法を説明する。図5は、この把持方法を示すフローチャートである。
【0027】
(第1の対象物を把持する場合)
まず、ステップS1において、前記搬送ロボットの動作により、第1の挟持部5を水平姿勢にするとともに、第1の挟持部5の高さを、取出位置にある第1の対象物2を第1の挟持部5が挟持する時の高さと同じにする。
ステップS2において、前記搬送ロボットの動作により、ロボットハンド10を第1の挟持部5と共に水平移動させる。即ち、図1において、図1の紙面の裏から紙面の表へ向かう水平方向に、ロボットハンド10を、水平姿勢の第1の挟持部5と共に水平移動させる。この水平移動により、第1の挟持部5を第1の対象物2を挟持できる位置へ到達させる(図1の状態)。従って、第1の対象物2の上方に障害物があっても、障害物に干渉しないように、第1の対象物2の位置まで第1の挟持部5を到達させることができる。この障害物は、例えば、前記取出位置にある第1の対象物2のネジを締めるネジ締め装置である。
次いで、ステップS3において、フレーム9を閉じることで、図1の状態から図3の状態にして、第1の対象物2を第1の挟持部5で挟持する。
その後は、ステップS4において、前記搬送ロボットの動作により、第1の対象物2を所定の位置まで搬送する。例えば、ステップS2の前記水平方向と逆方向にロボットハンド10を移動させて、第1の対象物2を所定の位置まで搬送してよい。なお、第1の対象物2の一部(図1の破線部)が支持具6に上方から差し込まれている場合には、ロボットハンド10を少しだけ上昇させることで、第1の対象物2を支持具6から引き抜き、次いで、ステップS2の前記水平方向と逆方向にロボットハンド10を移動させて、第1の対象物2を所定の位置まで搬送してよい。
【0028】
(第2の対象物を把持する場合)
まず、ステップS11において、前記搬送ロボットの動作により、第2の挟持部7を鉛直姿勢にするとともに、第2の挟持部7を、取出位置にある第2の対象物3の上方に位置させる(図2の状態)。なお、第2の対象物3の上方には、障害物が上方に存在しない。また、第2の対象物3の前記取出位置は、第1の対象物2の前記取出位置と異なる。
ステップS12において、前記搬送ロボットの動作により、ロボットハンド10を第2の挟持部7と共に鉛直移動(下降)させる。即ち、図2において、図2の上側から下側へ向かう鉛直方向に、ロボットハンド10を、鉛直姿勢の第2の挟持部7と共に鉛直移動させる。この鉛直移動により、第2の挟持部7を第2の対象物3を挟持できる位置へ到達させる(図4(A)の状態)。
次いで、ステップS13において、フレーム9を閉じることで、図4(A)の状態から図4(B)の状態にして、第2の対象物3を第2の挟持部7で挟持する。
その後は、ステップS14において、前記搬送ロボットの動作により、第2の対象物3を所定の位置まで搬送する。例えば、ステップS12の前記鉛直方向と逆方向にロボットハンド10を移動(上昇)させて、第2の対象物3を所定の位置まで搬送してよい。
【0029】
本実施形態では、ステップS2における前記水平移動の方向と、ステップS12における前記鉛直移動の方向とは、フレーム9から見て同じ方向である。即ち、前記搬送ロボットの動作により、フレーム9(と取付部4)から見て同じ方向にロボットハンド10を移動させることで、第1の対象物2を挟持できる位置へ第1の挟持部5を水平移動させ、第2の対象物3を挟持できる位置へ第2の挟持部2を鉛直移動させる。
【0030】
上述した実施形態のロボットハンド10によると、種類が異なる第1および第2の対象物2,3をそれぞれ把持する第1および第2の挟持部5,7を備えるので、挟持部(把持部)を交換することなく、複数種類の対象物2,3を把持できる。
しかも、第1および第2の挟持部5,7は、開閉駆動される共通のフレーム9に設けられ、第1の挟持部5は、フレーム9の閉動作により第1の対象物2を挟むように動作し、第2の挟持部7も、フレーム9の閉動作により第2の対象物3を挟むように動作するので、共通のフレーム9を閉動作させることで、複数種類の対象物2,3を把持・挟持できる。即ち、1つのアクチュエータで共通のフレーム9を開閉することで複数種類の対象物2,3を挟持することができる。従って、単純な構造で、しかも重量の増加を招くことなく、複数種類の対象物2,3を挟持することができる。
【0031】
また、(A)第1の挟持部5を水平姿勢にした状態で、ステップS2の前記水平移動を行い、次いで、フレーム9の閉動作により第1の挟持部5で第1の対象物2を挟持することと、(B)第2の挟持部7を鉛直姿勢にした状態で、ステップS12の前記鉛直移動を行い、次いで、フレーム9の閉動作により第2の挟持部7で第2の対象物3を挟持することとを行う場合に、第1の対象物2へのアクセス(前記水平移動)と、第2の対象物3へのアクセス(前記鉛直移動)とは、フレーム9から見て同じ方向にロボットハンド10を移動させることでなされる。即ち、ロボットハンド10を同じ方向に移動させることで、第1の対象物2へのアクセスも第2の対象物3へのアクセスもなされる。よって、搬送ロボットの動作制御が簡単になる。
例えば、搬送ロボットのアームとして設けられたシリンダ装置の直線的な伸長動作により対象物2、3へのアクセスを行う場合には、同じ前記伸長動作により、前記水平移動と前記鉛直移動とを行うことができる。即ち、第1の対象物2への前記水平移動(アクセス)は、搬送ロボットの動作により水平姿勢にされた前記シリンダ装置を伸長させることで行われ、第2の対象物3への前記鉛直移動(アクセス)は、搬送ロボットの動作により鉛直姿勢にされた前記シリンダ装置を伸長させることで行われる。従って、対象物2、3へのアクセス制御がシリンダ装置の同じ伸長動作の制御だけとなるので、制御が簡単になる。この場合、当該シリンダ装置のピストンの先端に取付部4が固定されていてよい。
【0032】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0033】
例えば、上述の実施形態では、共通のフレーム9に第1の挟持部5と第2の挟持部7を1つずつ設けたが、共通のフレーム9に2つ以上の第1の挟持部5を設けてもよいし、共通のフレーム9に2つ以上の第2の挟持部7を設けてもよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、第1および第2の対象物は回転機械の構成部品であったが、第1および第2の対象物は他の搬送物であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態によるロボットハンドの構成図である。
【図2】図1の状態からロボットハンドの向きを90度だけ変化させた場合を示す。
【図3】図1の状態からフレームを閉じた状態を示す。
【図4】(A)は、図2の状態からロボットハンドを下降させた状態を示し、(B)は、(A)の状態からフレームを閉じた状態を示す。
【図5】図1のロボットハンドを用いた対象物の把持方法を示すフローチャートである。
【図6】特許文献1の多関節ロボットの構成図である。
【符号の説明】
【0036】
2 第1の対象物、3 第2の対象物、4 取付部、5 第1の挟持部、6 支持具、7 第2の挟持部、9 フレーム、10 ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取出位置にある対象物を挟持して別の位置まで搬送する搬送ロボットのロボットハンドであって、
種類が異なる第1および第2の対象物をそれぞれ挟持する第1および第2の挟持部を備え、
第1および第2の挟持部は、開閉駆動される共通のフレームに設けられ、
第1の挟持部は、前記フレームの閉動作により第1の対象物を挟むように動作し、第2の挟持部も、前記フレームの閉動作により第2の対象物を挟むように動作する、ことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
第1の挟持部は、水平姿勢で第1の対象物を把持するように構成され、第2の挟持部は、鉛直姿勢で第2の対象物を把持するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
第1の挟持部は、前記フレームに対し第1方向を向くように前記フレームに取り付けられ、第2の挟持部は、前記フレームに対し第1方向と直交する第2方向を向くように前記フレームに取り付けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
第1の挟持部は、第1の対象物を挟んで把持する1対の開閉部からなり、
第2の挟持部は、第2の対象物を挟んで把持する1対の開閉部からなり、
前記共通のフレームは開閉駆動される1対の開閉フレーム部からなり、
第1の挟持部の前記1対の開閉部の一方と、第2の挟持部の前記1対の開閉部の一方とは、前記1対の開閉フレーム部の一方に設けられ、第1の挟持部の前記1対の開閉部の他方と、第2の挟持部の前記1対の開閉部の他方とは、前記1対の開閉フレーム部の他方に設けられる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
請求項3に記載のロボットハンドを用いて対象物を把持する対象物の把持方法であって、
前記ロボットハンドは、搬送ロボットに取り付けられており、
前記搬送ロボットの動作により、前記フレームから見て同じ方向にロボットハンドを移動させることで、第1の対象物を挟持できる位置へ第1の挟持部を水平移動させ、第2の対象物を挟持できる位置へ第2の挟持部を鉛直移動させ、
(A)第1の挟持部を水平姿勢にした状態で、前記水平移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第1の挟持部で第1の対象物を挟持し、
(B)第2の挟持部を鉛直姿勢にした状態で、前記鉛直移動を行い、次いで前記フレームの閉動作により第2の挟持部で第2の対象物を挟持する、ことを特徴とする対象物の把持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23120(P2010−23120A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183448(P2008−183448)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】