説明

ロードポート、EFEM

【課題】FOUP内にウェーハを出し入れする際に、設置時における水平バランスの不的確さに起因するFOUP又はウェーハとの不意な干渉を防止することが可能なロードポートを提供する。
【解決手段】マッピング装置Mを、高さ方向に移動可能な昇降部6と、昇降部6に接続され且つ先端部にセンサ部8を設けた進退部7とを用いて構成し、進退部7をFOUPx内にセンサ部8を進入させてウェーハWを検知可能とするマッピング位置(P2)と先端部をFOUPx外に退避させた状態とする退避位置(P1)との間で移動可能とするとともに、進退部7をマッピング位置(P2)よりも先端部をFOUPx内に進入させてウェーハWを載置可能とする載置位置(P3)に移動可能とし、この進退部7及び昇降部6を用いてウェーハWをFOUPx内とウェーハ搬送室B内との間で移送する移送装置Hを構成したロードポート1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内に設けられるロードポート、及びこのようなロードポートを備えたEFEM(Equipment Front End Module)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でのウェーハの処理がなされている。しかしながら、素子の高集積化や回路の微細化、ウェーハの大型化が進んでいる今日では、小さな塵をクリーンルーム内の全体で管理することは、コスト的にも技術的にも困難となってきている。このため、近年では、クリーンルーム内全体の清浄度向上に代わる方法として、ウェーハの周囲の局所的な空間についてのみ清浄度をより向上させる「ミニエンバイロメント方式」を取り入れ、ウェーハの搬送その他の処理を行う手段が採用されている。ミニエンバイロメント方式では、ウェーハを高清浄な環境で搬送・保管するためのFOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる格納用容器が用いられ、ウェーハ搬送室とともにEFEM(Equipment Front End Module)を構成し、FOUP内のウェーハをウェーハ搬送室との間で出し入れする際や、FOUP搬送装置との間でFOUPの受け渡しを行う際のインターフェース部として機能するロードポート(Load Port)が重要な装置として利用されている。
【0003】
そして、ロードポートに設けたドア部をFOUPの背面に設けた扉に密着させた状態でこれらドア部及び扉が同時に開けられ、FOUP内のウェーハがロードポートを通じてウェーハ搬送室内に供給される。その後、半導体製造装置で種々の処理または加工が施されたウェーハは、ウェーハ搬送室内からロードポートを通じてFOUP内に再度収容される。
【0004】
通常、ロードポートには、FOUP内に多段積みされたウェーハの数や収納姿勢を認識(マッピング)するマッピング装置が設けられている。マッピング装置としては、ドア部の開閉動作に伴って昇降移動する昇降部と、昇降部の上端部に設けられFOUP内に進入させて先端部に設けたセンサ部によってウェーハを検知可能なマッピング位置とFOUP外に退避させた退避位置との間で移動可能な進退部とを備えたものが挙げられる(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、ロードポートの主たる機能はロードポートのドア部及びFOUPの扉を開閉することでFOUP内のウェーハを出し入れできる状態とするものであり、FOUP内のウェーハを取り出す作業及びウェーハをFOUP内に挿入して収納する作業は、ウェーハ搬送室に設けたアームロボット等のウェーハ搬送ロボットにより行っている(特許文献2参照)。なお、斯かるウェーハ搬送ロボットは、ウェーハを1枚ずつ移送するもの(ウェーハ搬送ロボット)であり、ウェーハ搬送ロボットを配置した空間(ウェーハ搬送室)、及びロードポートとからなるモジュールは、EFEM(Equipment Front End Module)と呼ばれている。そして、1つのEFEMには通常一台のウェーハ搬送ロボットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−92339号公報
【特許文献2】特開2008−103755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来では、上述したようにFOUP内のウェーハを取り出す作業及びウェーハをFOUP内に挿入して収納する作業をロードポートとは別体のウェーハ搬送ロボットにより行っているため、ウェーハの出し入れ作業時にウェーハ搬送ロボットのアームがFOUP又はウェーハと不意に干渉してウェーハが損傷するという事態を回避するためには、ロードポートの設置時にロードポートとウェーハ搬送ロボットとの相対位置を極めて高い精度で調整しなければない。特に、並設した複数のロードポートに対して1台のウェーハ搬送ロボットがアクセスできるようにしたEFEMでは、全てのロードポートとウェーハ搬送ロボットとの水平出し(水平バランス:水平レベル)を高精度で調整しなければならない。また、特許文献2に開示されているように、並設した複数のロードポートに対して1台のウェーハ搬送ロボットをアクセスさせるようにしたEFEMも開発されているが、この場合、ウェーハ搬送ロボットのアーム長は必然的に長くなるため、このアームが自重によって撓む可能性があり、この撓みに起因して、アームがFOUP又はウェーハと不意に干渉し、ウェーハを損傷する事態が考えられた。なお、アームの長大化を回避すべく、ウェーハ搬送ロボットをロードポートの並設方向に沿ってスライド移動可能に構成する態様も考えられるが、この場合も全てのロードポートに対してウェーハ搬送ロボットが正確に水平移動するように設定しなければならず、この設定(設置)に極めて高い精度が要求されるという問題があった。
【0008】
また、従来のロードポートを用いてEFEMを構成した場合、ウェーハの取り出し・挿入作業は専ら1台のウェーハ搬送ロボットで行う態様となるため、このウェーハ搬送ロボットによってFOUP内とウェーハ搬送室との間でウェーハを出し入れしている間は、このウェーハ搬送ロボットによってウェーハをウェーハ搬送室と半導体製造装置との間で移送することは当然のことながら不可能である。したがって、EFEMの処理能力は、ウェーハ搬送ロボットの移送処理能力によって決まる傾向があった。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、FOUP内にウェーハを出し入れする際に、設置時における水平バランスの不的確さに起因するFOUP又はウェーハとウェーハ搬送ロボットとの不意な干渉を防止することができるとともに、EFEMに用いた場合にはウェーハ搬送の処理能力を向上させることが可能なロードポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係るロードポートは、ウェーハ搬送室に隣接して設けられ、このウェーハ搬送室とともにEFEMを構成し、搬送されてきたFOUPを受け取りFOUP内に格納されているウェーハをウェーハ搬送室内とFOUP内との間で出し入れする際に用いられるものであって、ウェーハに対してマッピングを行うマッピング装置と、FOUP内のウェーハをウェーハ搬送室内との間で移送する移送装置とを備えていることを特徴としている。
【0011】
このように、マッピング装置に加えて、FOUP内のウェーハをウェーハ搬送室内との間で移送する移送装置を備えた本発明のロードポートであれば、FOUPに対するウェーハの出し入れ処理を、ロードポートとは別体のウェーハ搬送ロボットを用いずとも当該ロードポートの移送装置で行うことができる。そして、ロードポート自体が移送装置を備えているものであるため、従来であればロードポートとウェーハ搬送ロボットの設置時に双方に求められていた高精度の水平出し処理が要求されることがない。したがって、ロードポートの設置時における水平バランスの不的確さに起因するFOUP又はウェーハとウェーハ搬送ロボットとの不意な干渉やウェーハの損傷が生じることがなく、ウェーハの出し入れ作業時をスムーズ且つ適切に行うことができる。また、本発明のロードポートを複数並べて配置し、これら複数のロードポートと1台のウェーハ搬送ロボットとを備えたEFEMを構成した場合、ウェーハ搬送ロボットのアーム長は必然的に長くなって撓み得るが、ロードポート自体が移送装置を備えているものであるため、ウェーハ搬送ロボットのアームをFOUP内に進入させたり、FOUP内から退出させる必要がなく、アームの撓みに起因するFOUP又はウェーハとウェーハ搬送ロボットとの不意な干渉やウェーハの損傷が生じることがない。また、アームの長大化を回避すべく、ウェーハ搬送ロボットをロードポートの並設方向に沿ってスライド移動可能に構成した場合であっても、ロードポート自体が移送装置を備えているものであるため、従来であれば全てのロードポートとウェーハ搬送ロボットの設置時に双方に求められていた高精度の水平出し処理が要求されることがない。
【0012】
そして、このようなロードポートを用いてEFEMを構成した場合には、ロードポートの移送装置によってFOUP内に対するウェーハの取り出し・挿入作業を行うことができる一方で、FOUP内からウェーハ搬送室内に移送されたウェーハをウェーハ搬送室内に設けたウェーハ搬送ロボットによって、ロードポート以外のポート(例えばプロセスポートやプリアライナポート等)や半導体製造装置に移送することができたり、半導体製造装置で適宜の処理が施されたウェーハをウェーハ搬送ロボットによって半導体製造装置からウェーハ搬送室内に移送することができる。このように、ロードポートの移送装置によるウェーハの取り出し・挿入作業中であっても、ウェーハ搬送室内のウェーハ搬送ロボットによってロードポート以外のポートや半導体製造装置との間でウェーハを移送することができ、EFEMの処理能力が格段に向上する。
【0013】
特に、本発明のロードポートでは、マッピング装置を、ウェーハを検知するセンサ部と、高さ方向に移動可能な昇降部と、昇降部に接続され且つセンサ部を設けた先端部をFOUP内に進入させてウェーハを検知可能とするマッピング位置と先端部をFOUP外に退避させた状態とする退避位置との間で移動可能な進退部とを用いて構成するとともに、進退部を、マッピング位置よりも先端部をFOUP内にさらに進入させてウェーハを載置可能とする載置位置に移動可能にし、当該進退部と昇降部とを用いて移送装置を構成している。
【0014】
ここで、進退部の構成としては、先端部を進退動作させるに際し、進退部自体がFOUPに対して前後動する態様や、伸縮や折り畳み動作により形状変化する態様、或いは回転動作等により姿勢変更する態様を例示することができる。また「ウェーハを検知するセンサ部」とは、ウェーハの有無、ウェーハの傾き、ウェーハが複数枚重なっているか否か、これらのうち少なくとも1つを検知するものであればよい。
【0015】
このように、マッピング装置を構成する昇降部及び進退部を用いて移送装置を構成しているため、部品の共用化を図ることができ、構造の複雑化を招来することなく移送装置を構成することができる。特に、進退部をマッピング位置よりもさらにFOUP内に先端部を進入させた状態とする載置位置と退避位置との間で移動させることにより、FOUPに対するウェーハの出し入れ作業を好適に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明のロードポートでは、進退部の先端部に水平方向に離間させた一対の先端アーム要素を設け、マッピング装置を構成するセンサ部を、何れか一方の先端アーム要素に設けられる発光部と、他方の先端アーム要素に設けられる受光部とを用いて構成し、進退部をマッピング位置に移動させた際にこれら発光部及び受光部によってウェーハを検知するように構成することができる。このようなマッピング装置の構造及び進退部の形状を利用してウェーハを安定した状態で出し入れできる移送装置を実現するには、進退部を載置位置にした際に二股状をなす先端部、つまり一対の先端アーム要素上にウェーハを載置するように構成すればよい。
【0017】
また、本発明に係るEFEMは、上述した構成の1台以上のロードポートと、ロードポートに隣接するウェーハ搬送室とを備え、ウェーハ搬送室に、ロードポートに対応して配置され、ロードポートの移送装置がアクセス可能なウェーハ仮置き台を1台以上配置していることを特徴としている。
【0018】
ここで、ロードポートとウェーハ仮置き台との台数比率は任意に設定することができ、例えば、ロードポート1台に対してウェーハ仮置き台を1台の割合で配置する態様や、ロードポート1台に対してウェーハ仮置き台を複数台(2台等)の割合で配置する態様を採用することができる。
【0019】
このようなEFEMであれば、ロードポートの移送装置によってFOUPから取り出したウェーハをウェーハ搬送室内のウェーハ仮置き台に載置したり、或いは半導体製造装置での処理を終えてウェーハ仮置き台に載置されているウェーハを、ウェーハ仮置き台にアクセスしたロードポートの移送装置によってFOUP内に収容することができる。このように、1又は複数のロードポートがそれぞれウェーハ仮置き台にアクセス可能な構成を採用することによって、ウェーハの出し入れ処理能力が高い(タクトタイムが速い)EFEMを実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロードポートによれば、FOUP内にウェーハを出し入れする際に、ロードポートの設置時における水平バランスの不的確さに起因するFOUP又はウェーハとウェーハ搬送ロボットとの不意な干渉を防止することができるとともに、EFEMに用いた場合にはウェーハ搬送の処理能力向上に資する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードポートの平面図であって、ロードポートとウェーハ搬送装置との相対位置関係、EFEMと半導体製造装置との相対位置関係を模式的に示す図。
【図2】同実施形態において進退部が退避位置にあるロードポートの全体概略図。
【図3】同実施形態において進退部が載置位置にあるロードポートの全体概略図。
【図4】同実施形態に係るロードポートの正面図を模式的に示す図。
【図5】同実施形態において進退部が退避位置にあるロードポートを模式的に示す平面図。
【図6】同実施形態において進退部がマッピング位置にあるロードポートを模式的に示す平面図。
【図7】同実施形態において進退部が載置位置にあるロードポートを模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係るロードポート1は、半導体の製造工程において用いられ、図1に示すように、共通のクリーンルームA内においてウェーハ搬送室Bに隣接して配置されるものであり、同図に二点鎖線で示したFOUPxの扉(図示省略)を密着させて開閉し、ウェーハWをFOUPx内とウェーハ搬送室B内との間で出し入れするために用いられるものである。なお、図1はロードポート1とその周辺を上から見た平面図として、クリーンルームAにおけるロードポート1とウェーハ搬送室Bとの相対位置関係、及びこれらロードポート1とウェーハ搬送室Bとによって構成されるEFEM(Equipment Front End Module)と半導体製造装置Cとの相対位置関係を模式的に示している。
【0024】
本実施形態で適用するFOUPxは、外壁のうち対向する側壁の内向面にFOUPxの外縁部が載置可能な段部(図示省略)を高さ方向に所定ピッチで複数設けた既知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施形態に係るロードポート1は、図1〜図4に示すように、ほぼ矩形板状をなし略鉛直姿勢で配置されるフレーム2と、このフレーム2の高さ方向中央部からやや上方寄りの位置に略水平姿勢で設けた載置板3と、フレーム2のうち載置板3とほぼ同じ高さ位置に開口下縁を設定しウェーハ搬送室B内に連通し得る開口部4と、この開口部4を開閉するドア部(図示省略)とを備えたものである。本実施形態では、フレーム2の背面がウェーハ搬送室Bの前面に接した状態でこのフレーム2を配設している(図1参照)。また、載置板3は側面視下向きL字状をなす支持台5に支持されている。
【0026】
載置板3には、上向きに突出させた3つの突起31を形成している。これら3つの突起31は、これら3つの突起31をFOUPxの底面に形成された穴(図示省略)に係合させることで、載置板3上におけるFOUPxの位置決めを図っている。
【0027】
ドア部は、FOUPxを載置板3に載置した状態においてFOUPxの背面に設けた扉(図示省略)に密着した状態でその扉を開ける開状態と、隣接するウェーハ搬送室Bの内部空間とFOUPxの内部空間とを遮断する閉状態との間で作動可能なものであり、具体的な開閉構造は既知のものに準じたものである。なお、各図では開状態にあるドア部を省略している。
【0028】
また、本実施形態に係るロードポート1は、FOUPx内に格納されたウェーハWの枚数や位置をマッピングするマッピング装置Mを設けている。
【0029】
マッピング装置Mは、高さ方向に移動可能な昇降部6と、基端部を昇降部6の上端部に接続して前後方向(開口部4の奥行き方向=前後方向)に進退動作可能な進退部7と、進退部7の先端に設けたセンサ部8とを備えたものである。
【0030】
昇降部6は、フレーム2の背面に設けた昇降ガイド支持部21に高さ方向に移動可能に支持された左右一対の昇降脚61と、各昇降脚61の上端部同士を接続し進退部7の基端部を支持する昇降ベース62とを備えたものである。本実施形態では、一対の昇降脚61の上端部間を跨ぐ位置に昇降ベース62を設け、これら昇降脚61及び昇降ベース62を一体的に形成している。なお、これら各昇降脚61の上端部側には、上方に向かって漸次後方に膨出させた幅広部611を形成し、昇降ベース62の奥行き寸法(前後方向の寸法)を大きく設定している。これにより、昇降ベース62における進退部7の基端部を支持する支持面積を大きく設定し、安定した支持状態を維持することができる。なお、昇降ガイド支持部21の上端部は、開口部4の開口下縁よりも低い位置に設定している(図4参照)。
【0031】
進退部7は、図1〜図3、図5〜図7に示すように、先端部をFOUPx外に退避させた状態とする退避位置(P1)と、先端部をFOUPx内に進入させた位置(後述するマッピング位置(P2)、載置位置(P3))との間で移動可能なものである。具体的には、昇降ベース62に固定した固定部71と、固定部71に基端部を枢着した第1アーム72と、基端部を第1アーム72の先端部に枢着した第2アーム73と、第2アーム73に支持され且つ第1アーム72と第2アーム73との相対角度変更に伴って直線移動する第3アーム74とを備えたリンク構造体である。固定部71は、昇降ベース62の幅方向中央部に載置した状態で固定された平板状のものであり、前後寸法(長手寸法)を昇降ベース62の奥行き寸法とほぼ同一又は若干大きく設定している。第1アーム72は、二本の平行第1アーム要素72aからなり、各平行第1アーム要素72aの基端部を相互に前後方向に離間させてそれぞれ固定部71に枢着している。第2アーム73は、二本の平行第2アーム要素73aからなり、各平行第2アーム要素73aの基端部をそれぞれ平行第1アーム要素72aの先端部に枢着している。なお、本実施形態において、進退部7は、各平行第1アーム要素72aと各平行第2アーム要素73aとの枢着部分を上下方向から挟持する挟持部75を備えており、この挟持部75によって各平行第1アーム要素72aと各平行第2アーム要素73aとの良好な枢着状態を維持している。第3アーム74は、前後方向に離間する各平行第2アーム要素73aの先端部に跨って載置した状態で固定された平板状のアームベース74aと、基端部をアームベース74aに固定した第3アーム本体74bとを備えたものである。第3アーム74の前後方向(長手方向)に沿った軸線L1と固定部71の前後方向(長手方向)に沿った軸線L2とを平面視同一線上又はほぼ同一線上に設定し、第1アーム72と第2アーム73との相対角度変位に伴って第3アーム74が前後方向に直線移動するようにしている。第3アーム本体74bは、基端部をアームベース74aに載置した状態で固定されたものであり、第1アーム72と第2アーム73との相対角度変位に伴ってアームベース74aと共に前後方向に直線移動する。この第3アーム本体74bは水平方向に相互に離間させた二股状をなす左右一対の先端アーム要素74cを一体に有する。
【0032】
センサ部8は、一方の先端アーム要素74cの先端部に設けた発光部81と、他方の先端アーム要素74cの先端部に設けた受光部82とを備えたものである。
【0033】
このようなセンサ部8(発光部81、受光部82)を先端部に設けた進退部7は、第1アーム72と第2アーム73との相対角度変位に伴って、第3アーム74のうち先端アーム要素74cをFOUPx内に進入させて発光部81及び受光部82によってFOUPx内のウェーハWを検知可能とするマッピング位置(P2)(図6参照)と、先端アーム要素74cを含めた第3アーム74全体をFOUPx外に退避させた状態とする退避位置(P1)(図5参照)との間で少なくとも姿勢変更可能なものである。具体的には、進退部7を退避位置(P1)からマッピング位置(P2)に移動させると、第1アーム72及び第2アーム73は相互に重なり合う方向に移動して、進退部7は全体として折り畳まれた形状になる。なお、先端アーム要素74cは、進退部7をマッピング位置(P2)に位置付けた際にウェーハWと干渉しない形状に設定されている。
【0034】
そして、本実施形態に係るロードポート1は、マッピング装置Mを構成する昇降部6及び進退部7を用いて、FOUPx内とウェーハ搬送室B内との間でウェーハWを移送する移送装置Hを構成している。すなわち、移送装置Hは、マッピング装置MによってFOUPx内に正常に収納されていることが検知されたウェーハWを、進退部7のうち第3アーム74、具体的には二股状をなす先端アーム要素74cに載置した状態でウェーハ搬送室B内へ移送するとともに、半導体製造装置Cでの処理を終えてウェーハ搬送室B内に搬送されたウェーハWを進退部7のうち第3アーム74、具体的には二股状をなす先端アーム要素74cに載置した状態でFOUPx内へ移送するものである。FOUPx内からウェーハWをウェーハ搬送室B内へ移送する際、進退部7は、先端アーム要素74cをマッピング位置(P2)よりもさらにFOUPx内へ進入させて先端アーム要素74cによってFOUPx内のウェーハWを載置可能とする載置位置(P3)(図7参照)をとる。進退部7を載置位置(P3)に位置付けた際、第1アーム72及び第2アーム73はマッピング位置(P2)時よりもさらに相互に近付く方向に移動し、進退部7は最も折り畳まれた形状となる。
【0035】
また、ロードポート1とともにEFEMを構成するウェーハ搬送室Bには、ロードポート1に対応して配置され、ウェーハWを仮置きしておくが可能なウェーハ仮置き台B1を設けている。本実施形態に係るEFEMは、複数台(図示例では3台)のロードポート1を備え、ウェーハ搬送室B内において各ロードポート1に正対する位置にウェーハ仮置き台B1を設けている。すなわち、本実施形態では、1台のロードポート1に対して1台のウェーハ仮置き台B1を配置し、各ロードポート1がそれぞれ正対するウェーハ仮置き台B1に移送装置Hでアクセスできるように設定している。ウェーハ仮置き台B1には緩衝台(バッファ台)としての機能を付与させることもできる。
【0036】
また、このウェーハ搬送室Bには、ウェーハ仮置き台B1に載置されているウェーハWを半導体製造装置Cに搬送したり、半導体製造装置Cで適宜の処理が施されたウェーハWをウェーハ仮置き台B1に載置できる位置まで搬送可能なウェーハ搬送ロボットB2を設けている。本実施形態では、1台のウェーハ搬送ロボットB2が全てのウェーハ仮置き台B1にアクセスできるように設定し、このウェーハ搬送ロボットB2によってウェーハ搬送室Bと半導体製造装置Cとの間でウェーハWを搬送可能に構成している。
【0037】
このようなウェーハ仮置き台B1及びウェーハ搬送ロボットB2を備えたウェーハ搬送室BとロードポートとによってEFEM(Equipment Front End Module)を構成している。
【0038】
本実施形態においてこのEFEMに関連付けて設けられる半導体製造装置Cは、ウェーハ搬送室Bに隣接するロードロックC1と、このロードロックC1を経由してウェーハ搬送室Bから搬送されたウェーハWに対して適宜の処理を施す半導体製造装置本体C2とを備えたものである。
【0039】
次に、このような構成をなすロードポート1を用いてマッピング処理及びウェーハWの出し入れ(ハンドリング)処理を行う手順及びロードポート1の作用、さらにはEFEM全体の処理手順及び作用について説明する。
【0040】
先ず、図示しないFOUP搬送装置によりFOUPxがロードポート1に搬送される。搬送されたFOUPxは、載置板3に載置され、この際、載置板3上に設けた突起31がFOUPxの底部に形成した穴に係合する。
【0041】
そして、載置板3にFOUPxを載置した後に、ロードポート1はマッピング処理を行う。具体的には、ロードポート1は、ドア部をFOUPxの扉(図示省略)に密着させた状態で閉状態から開状態とし、開口部4を開放した状態で、進退部7を退避位置(P1)からマッピング位置(P2)に移動させる。そして、ロードポート1は、進退部7をマッピング位置(P2)に位置付けたまま昇降部6を昇降移動させて、発光部81から光を照射させるとともに受光部82が受ける光量及び光を受ける時間に基づいてFOUPx内に設けた各段部にそれぞれウェーハWが載置されているか否か、ウェーハWが傾いていないか否か、及び複数のウェーハWが重なっていないか否かを検出する。
【0042】
マッピング処理の終了後、引き続いて、ロードポート1は、FOUPx内のウェーハWをウェーハ搬送室B内に順次払い出す処理を行う。具体的には、ロードポート1は、ドア部をFOUPxの扉(図示省略)に密着させた状態で閉状態から開状態とし、開口部4を開放した状態で、進退部7を退避位置(P1)又はマッピング位置(P2)から載置位置(P3)に移動させて、マッピング処理工程において異常が検出されなかったウェーハWを進退部7の先端部、具体的には第3アーム74の先端アーム要素74c上に載置する。引き続き、ロードポート1は進退部7を載置位置(P3)から退避位置(P1)に移動させることによりウェーハWをFOUPx外へ払い出す。本実施形態のロードポート1は、図1に示すように、進退部7が載置位置(P3)から退避位置(P1)へ移動する際、第3アーム74がFOUPxの幅方向中央を通る仮想直線L3上に沿って直線移動するように構成しているため、ウェーハW及び第3アーム74が進退部7の載置位置(P3)から退避位置(P1)への移動時にFOUPxのうち側壁の内向面や開口部4の縁部に干渉することを防止できる。なお、本実施形態では、FOUPxの幅方向中央を通る仮想直線L3を、前述した第3アーム74の前後方向(長手方向)に沿った軸線L1、及び固定部71の前後方向(長手方向)に沿った軸線L2と平面視同一線上又はほぼ同一線上に設定している(図1参照)。
【0043】
本実施形態のロードポート1は、移送装置Hの進退部7によりFOUPxからウェーハWをウェーハ搬送室B内へ持ち出して、さらに、先端アーム要素74c上に載置するウェーハをウェーハ仮置き台B1に載置可能な高さまで昇降部6を昇降移動させてウェーハ仮置き台B1に一旦載置する。この際、移送装置Hの一部として機能する進退部7は、退避位置(P1)よりも先端部(ここでいう先端部は第3アーム74を指す)をさらにFOUPxから離間させる方向に移動(回転)することによって、ウェーハWをウェーハ仮置き台B1に載置することが可能な位置(受渡位置:図示省略)となる。引き続いて、ウェーハ搬送室B内のウェーハ搬送ロボットB2によって、ウェーハ仮置き台B1に載置されているウェーハをウェーハ搬送室B内から半導体製造装置CのロードロックC1に搬送する。ロードロックC1から半導体製造装置本体C2内へ搬送されたウェーハWは半導体製造装置本体C2内で適宜の処理が施される。
【0044】
半導体製造処理工程を終えたウェーハWは、ロードロックC1を経由してウェーハ搬送ロボットB2によりウェーハ搬送室B内に移送されてウェーハ仮置き台B1に載置される。そして、ロードポート1は、移送装置Hの進退部7を上述した受渡位置にして昇降部6を適宜昇降動作させて進退部7の先端部(具体的には先端アーム要素74c)上にウェーハWを載置する。この状態で、進退部7を受渡位置から退避位置(P1)及びマッピング位置(P2)を経て載置位置(P3)に移動させる。なお、進退部7が受渡位置から載置位置(P3)へ移動する際、退避位置(P1)及びマッピング位置(P2)で一時的に停止するか否かは任意に設定することができる。
【0045】
以上の手順により、本実施形態に係るロードポート1は、ウェーハWをウェーハ搬送室B内からFOUPx内に移送することができ、引き続き、昇降部6を作動させてウェーハWの外縁部をFOUPx内の段部に載置することにより、ウェーハWをFOUPx内に安定した状態で収納することができる。なお、進退部7が受渡位置から退避位置(P1)及びマッピング位置(P2)を経て載置位置(P3)へ移動する過程のうち、少なくとも退避位置(P1)から載置位置(P3)へ移動する際、第3アーム74がFOUPxの幅方向中央を通る仮想直線L3上に沿って直線移動するように構成しているため、ウェーハW及び第3アーム74が進退部7の退避位置(P1)から載置位置(P3)への移動時にFOUPxのうち側壁の内向面や開口部4の縁部に干渉することを防止できる。
【0046】
このように、本実施形態に係るロードポート1は、ウェーハWをFOUPx内とウェーハ搬送室B内との間で移送する移送装置Hを備えたものであるため、この移送装置HによってウェーハWを出し入れする際の移送経路を、ウェーハWがFOUPx及びロードポート1における開口部4の開口縁部に干渉しない経路にさえ設定すれば、ウェーハWの出し入れ処理(ハンドリング処理)をスムーズ且つ的確に行うことができる。したがって、従来のようにウェーハ搬送室内のウェーハ搬送ロボットでFOUP内のウェーハを直接出し入れする態様であれば生じていた問題、つまり、ロードポートとウェーハ搬送ロボットとの相対取付位置やロードポート及びウェーハ搬送ロボットの設置時における水平バランスを精度良く設定しなければ、ウェーハの出し入れ作業時に、ウェーハがFOUP又はロードポートの一部と干渉して損傷するといった問題や、ウェーハの損傷を防止するためにFOUPに対する出し入れ作業を慎重に(時間をかけて)行わなければならないといった問題を、本実施形態に係るロードポート1によって悉く解消することができる。
【0047】
そして、ウェーハ仮置き台B1を設けたウェーハ搬送室Bと、ロードポート1とを用いてEFESを構成した場合には、移送装置HによってFOUPx内に対するウェーハWの出し入れ作業を行うことができる一方で、ロードポート1に対応付けてウェーハ搬送室B内に設けたウェーハ仮置き台B1にウェーハWを仮置きして次工程に提供することができる。このように、ウェーハWの出し入れ作業中であっても、ウェーハ仮置き台B1に載置したウェーハWを次工程に移送することが可能な状態を実現することができ、EFES全体のウェーハ搬送処理能力(タクトタイム)が格段に向上する。
【0048】
しかも、本実施形態のロードポート1は、マッピング装置Mを構成する昇降部6及び進退部7を用いてFOUPx内のウェーハWをウェーハ搬送室B内との間で移送する移送装置Hを構成しているため、部品の共通化を図り、構造の複雑化を招来することなく移送装置Hを付帯させることができる。特に、進退部7をマッピング位置(P2)よりもさらにFOUPx内に先端部を進入させてウェーハWを載置可能とする載置位置(P3)と、先端部に載置したウェーハWをFOUPx外に退避させることが可能な退避位置(P1)との間で移動させることにより、FOUPxに対するウェーハWの出し入れ作業を好適に行うことができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、複数台(図示例では3台)のロードポート1を並設しているため、各ロードポート1の載置板3にセットしたFOUPx内のウェーハWに対するマッピング処理及びハンドリング処理を各ロードポート1に設けたマッピング装置M及び移送装置Hによって個別集中的に行うことができるのはもちろんのこと、各FOUPxに対するウェーハWの出し入れ作業にウェーハ搬送ロボットB2が直接関与しないため、複数台のロードポートに対して1台のウェーハ搬送ロボットを用いたEFEMとした場合、ウェーハ搬送ロボットのアーム長は比較的大きくなって自重により撓む可能性があるが、この撓みに起因してアームがFOUPと不意に干渉する事態は起こらず、また、EFEMの導入時(設置時)に全てのロードポート1に対するウェーハ搬送ロボットB2の水平出し(水平バランス)を高い精度で調整せずとも、水平出しの不良に起因するアームとFOUP1又はウェーハWとの干渉や、ウェーハWの損傷を回避することができる。
【0050】
また、本発明のロードポート1は、進退部7の先端部に水平方向に離間させ対をなして二股状をなす先端アーム要素74cを設け、マッピング装置Mを構成するセンサ部8を、何れか一方の先端アーム要素74cに設けた発光部81と、他方の先端アーム要素74cに設けた受光部82とを用いて構成し、進退部7をマッピング位置(P2)に位置付けた際にこれら発光部81及び受光部82によってウェーハWを検知するようにしたものである。そして、このようなマッピング装置Mの構造を利用し、一対の先端アーム要素74c上にウェーハWを載置するように構成しているため、移送装置HによるウェーハWの出し入れ処理を安定した状態で行うことができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、進退部として、アームの数や移動軌跡が上述した実施形態と異なるものであってもよい。また、進退部が、スライド伸縮動作可能な1または複数のスライドアームを複数備えたものであり、スライドアームのスライド伸縮動作によって各位置に移動するものであっても構わない。進退部が、水平面面内における回転動作に伴って姿勢することによりそれぞれの位置に移動可能なものであってもよい。
【0052】
昇降部や進退部の駆動源は共通のものであってもよく、それぞれ個別の駆動源であっても構わない。昇降部や進退部の駆動機構(駆動原理)としては、ボールネジ機構や歯車機構等が挙げられる。
【0053】
また、マッピング装置によってFOUP内に適正な状態で収納されていることを検知したウェーハをその都度移送装置によってFOUP内から半導体製造装置内へ移送する処理手順、つまり、マッピング処理と出し入れ処理(ハンドリング処理)とを各ウェーハ毎に交互に行うロードポートであってもよい。さらには、マッピング装置と移送装置とを、部品の共用化を図ることなく、それぞれ専用の部材から構成したロードポートであっても構わない。
【0054】
また、1つのEFEMが備えるロードポートの台数は適宜変更することができ、ウェーハ搬送室に設けるウェーハ仮置き台の台数も適宜変更することができる。さらには、ロードポートとウェーハ仮置き台との比率は、1対1に限らず、1対複数であってもよい。
【0055】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ロードポート
6…昇降部
7…進退部
74c…先端アーム要素
8…センサ部
81…発光部
82…受光部
B…ウェーハ搬送室
B1…ウェーハ仮置き台
H…移送装置
M…マッピング装置
W…ウェーハ
x…FOUP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ搬送室に隣接して設けられ、当該ウェーハ搬送室とともにEFEMを構成し、搬送されてきたFOUPを受け取り当該FOUP内に格納されているウェーハを前記ウェーハ搬送室内と前記FOUP内との間で出し入れする際に用いられるロードポートであって、
ウェーハに対してマッピングを行うマッピング装置と、ウェーハを前記FOUP内と前記ウェーハ搬送室内との間で移送する移送装置とを具備していることを特徴とするロードポート。
【請求項2】
前記マッピング装置が、ウェーハを検知するセンサ部と、高さ方向に移動可能な昇降部と、当該昇降部に接続され且つ前記センサ部を設けた先端部を前記FOUP内に進入させてウェーハを検知可能とするマッピング位置と前記先端部を前記FOUP外に退避させた状態とする退避位置との間で移動可能な進退部とを備えたものであり、
前記昇降部と、前記マッピング位置よりも先端部をFOUP内に進入させてウェーハを載置可能とする載置位置まで移動可能な前記進退部とを用いて前記移送装置を構成し、
前記進退部は、先端部に設けられ水平方向に離間させた一対の先端アーム要素を備えたものであり、
前記センサ部は、何れか一方の先端アーム要素に設けられる発光部と、他方の先端アーム要素に設けられる受光部とを備えたものであり、前記マッピング装置が前記進退部を前記マッピング位置に移動させた際に前記発光部及び前記受光部によってウェーハを検知するように構成したものであり、
前記移送装置が前記進退部を前記載置位置に移動させた際に前記先端アーム要素上にウェーハを載置するように構成したものである請求項1に記載のロードポート。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載の1台以上のロードポートと、当該ロードポートに隣接するウェーハ搬送室とによって構成したEFEMであって、
前記ウェーハ搬送室に、前記ロードポートに対応して配置され、前記ロードポートの前記移送装置がアクセス可能なウェーハ仮置き台を1台以上配置していることを特徴とするEFEM。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49382(P2012−49382A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191016(P2010−191016)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】