説明

ロープ

ロープは、それぞれ表面材により被覆されており、炭素を含有するフィラメントを含み、その際に表面材により被覆されたフィラメントは、マトリックスにより包囲されており、その際にマトリックスは少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含有する材料から構成されている。このロープは、特に、例えばロープ式エレベータにおいて、荷重を牽引するために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素を含有し、かつポリマー材料からなるマトリックスにより包囲されたフィラメントを含むロープ、特に荷重用途において使用するため、例えばロープ式エレベータにおいて使用するためのロープ、並びにそのようなロープを用いる荷重牽引運搬システム及びそのようなロープの製造方法に関する。
【0002】
ロープにおいて、ロープの引張強さを増加させるために、炭素を含有するフィラメントを備えさせること及びこれらをポリマー材料からなるマトリックス中に埋め込むことは知られている。
【0003】
しかしながら、炭素ベースのフィラメントを含有する公知のロープは、比較的低い耐摩耗性及び相応して低い寿命を有する。これらのロープの比較的低い耐摩耗性は特に、個々のフィラメントが、ロープの負荷中に相対的に互いに運動することによるものであり、その際に互いに摩擦し、それにより損傷、例えばクラックが、繊維の周囲面で生じうるものであり、これらの損傷は個々のフィラメントの引張強さを低下させうるか又はそれどころか個々のフィラメントの割れをまねきうる。
【0004】
さらに、前記の種類の公知のロープは、これらがロープの長軸方向に対して横方向の比較的低い柔軟性及びそのために低い湾曲性を有するという欠点を有する。故に、これらのロープは、例えば、これらが1個又はそれ以上のそらせ車(Umlenkrollen)を介して案内される荷物用エレベータにおける使用の際に、これらがそらせ車を介して比較的大きな曲げ半径ではなく案内される場合に、高められた摩耗を受ける。
【0005】
この背景に対し、本発明の課題は、改善された安定性、より良好な耐摩耗性、高められた寿命及び高められた柔軟性に優れるロープを提供すること、並びにこの種のロープを用いる荷重牽引運搬システム並びにこの種のロープの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明によれば、この課題は、特許請求項1記載のロープによって、かつ特に、それぞれ表面材(Schlichte)により被覆されており(ummantelt)、炭素を含有するフィラメントを含むロープによって解決され、その際に表面材により被覆されたフィラメントは、マトリックスにより包囲されており、その際にマトリックスは、少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含有する材料から構成されている。
【0007】
炭素ベースのフィラメントが、本発明によれば、それぞれ表面材により被覆されていることにより、個々のフィラメントが、これらを包囲するマトリックス材料に堅固にかつ耐久的に付着することが保証される。したがって、表面材からなる個々のフィラメントの被覆(Ummantelungen)は、それぞれのフィラメントとこれを包囲するマトリックスとの接着促進剤(Haftvermittler)として作用する。その際に、マトリックスは、それぞれ表面材により被覆された個々のフィラメントを互いに分離する。マトリックスが、少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含有する材料から構成されているので、このマトリックスは弾性であり、かつ引張応力をロープ中に吸収できるかもしれない。それにより、ロープに荷重載置によって大きな引張力を作用させる場合にも、個々のフィラメントが直接接触することなく、そのために互いに摩擦することなく、ロープ中の個々のフィラメントが相対的に互いに運動することができることが保証される。それに基づき、ロープは、高くかつ耐久的な耐摩耗性を有する。このことは、特に、載置された荷重を有するロープが、そらせ装置、例えばそらせ車を介して案内される場合にも当てはまる。その際に、ロープ中でさらに外側にあるフィラメントに対して、そらせ車に密着しているロープの側中に存在しているフィラメントの必然的に大きな相対運動が生じる。前記の理由から、この場合にも、表面材からなる被覆によって、フィラメントを包囲するマトリックスの弾性に基づき及びマトリックス材料へのフィラメントの堅固な付着に基づき、個々のフィラメントの摩耗をまねく互いの摩擦は確実に防止される。それに基づいて、本発明によるロープは、高められた柔軟性及び高められた湾曲性にも優れており、そのために、このロープは、例えば比較的小さい半径を有するそらせ車にも、負荷の際に損傷されることなく均一に密着することができる。
【0008】
原則的に、エラストマーもしくは熱可塑性エラストマーへの炭素ベースのフィラメントの良好な付着促進(Haftvermittlung)を保証する、すなわち炭素ベースのフィラメントへの良好な付着並びにエラストマーもしくは熱可塑性エラストマーへの良好な付着を有する、あらゆる材料が表面材として使用されることができる。良好な結果は、表面材が、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ゴム、ゴム誘導体及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されている少なくとも1種の材料を含有する場合に特に得られる。好ましくは、表面材は、前記の材料の1種からなる。
【0009】
マトリックス材料として、原則的にあらゆるエラストマー及び/又は熱可塑性エラストマーが使用されることができる。エラストマーの特に適した例は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホニル−ポリエチレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されている材料を含み、その際にマトリックスは好ましくは前記の材料の1種又はそれ以上からからなる。これらの材料は、良好な弾性を有し、そのうえ、付着促進により表面材により炭素ベースのフィラメントに堅固にかつ耐久的に付着することができる。
【0010】
マトリックス中で使用されるべき熱可塑性エラストマーの適した例は、スチレン−ブロックコポリマー、スチレン−ジエン−ブロックコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム並びにポリプロピレンの混合物、ウレタンベースの熱可塑性エラストマー、コポリエステルベースの熱可塑性エラストマー、コポリアミドベースの熱可塑性エラストマー及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されている材料を含み、その際にマトリックスは好ましくは、前記の材料の1種又はそれ以上からなる。これらの材料も、良好な弾性を有し、かつそのうえ、付着促進により表面材により炭素ベースのフィラメントに堅固にかつ耐久的に付着することができる。
【0011】
説明したように、例えば、熱可塑性エラストマーは、マトリックス材料として並びに表面材材料として使用されることができる。本発明によれば、しかしながら、表面材及びマトリックスは、異なる2種の材料から構成されている、すなわち、それぞれ、異なる2種の熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性エラストマーの場合である。
【0012】
ロープの特に高い耐摩耗性を達成するために、本発明思想のさらなる展開において、表面材により被覆されたフィラメントの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%及び極めて特に好ましくは100%が、それぞれマトリックス材料により完全に包囲されていることが提案される。それにより、個々のフィラメントは、それらの全周囲面及びそれらの全長にわたって、マトリックス材料により互いに分離されるので、個々のフィラメントの互いの摩擦は、それらの全面にわたって確実に防止される。完全に包囲されるとは、これに関連して、表面材でコーティングされた各々フィラメントの外周囲面の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、極めて特に好ましくは少なくとも98%及び極めて好ましくは100%が、マトリックス材料により包囲されていることを意味する。
【0013】
さらに、個々のフィラメントが、マトリックス材料中に、ロープの横断面に対して少なくともほぼ均一に分布しているので、個々のフィラメントがそれぞれ、少なくともほぼ同じ量のマトリックス材料で包囲されていることが好ましい。
【0014】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、表面材により被覆されたフィラメントはそれぞれ、少なくとも93質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%が、極めて特に好ましくは完全に、炭素からなる。この種のフィラメントは、特に高い引張強さを有する。
【0015】
炭素ベースのフィラメントに加えて、ロープは、他の材料からなる繊維、例えばガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、セラミック繊維及び前記の繊維タイプの2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されるものを含有していてよい。しかしながら、この場合に、マトリックスにより包囲された繊維の少なくとも50%が炭素繊維であることが好ましい。
【0016】
本発明思想のさらなる展開において、表面材により被覆されたフィラメントの少なくとも50%が、ロープの長軸方向に沿って伸びていることが提案され、その際にロープの長軸からの個々のフィラメントの最大偏差が、好ましくは最大15゜、さらに好ましくは最大10゜、さらにいっそう好ましくは最大5゜、特に好ましくは最大2゜及び極めて好ましくは0゜である。それにより、個々の繊維にかなりの剪断力が作用することなく、フィラメントがそれらの最大の引張強さを有することが達成され、それによりロープの引張強さ及び頑強性は高められる。特に好ましくは、少なくとも80%、さらにいっそう好ましくは少なくとも90%及び極めて好ましくは全てのフィラメントがそのような配向を有する。
【0017】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、表面材により被覆されたフィラメントがそれぞれ、ロープの長さの少なくとも半分、好ましくはロープの長さの少なくとも75%、特に好ましくはロープの長さの少なくとも90%及び極めて好ましくはロープの全長にわたって伸びていることが見込まれている。これを達成するために、個々のフィラメントは、数デシメートル〜数メートルの長さであってよい。
【0018】
本発明によるロープの個々のフィラメントは、互いにより合わされていてよく、このことは特に、ロープがそれらの使用の際にそらせ装置、例えばそらせ車を介して案内される場合に好ましい。特にそれらの使用の際にそらせ装置を介さずに案内されるロープにおいて、個々のフィラメントはより合わされていなくてもよい。
【0019】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、ロープは、フラットな横断面を有する。フラットな横断面は、本発明の意味で、ロープが1よりも大きいアスペクト比を有することであると理解される。アスペクト比は、これに関連して、最大断面寸法の方向に垂直である方向のロープの断面の最大寸法に対するロープの最大断面寸法の商を呼ぶ。フラットな横断面により、高さ方向のロープの湾曲性はさらにいっそう高められる。特に良好な結果は、これに関して、アスペクト比が2よりも大きく、かつ特に好ましくは4よりも大きい場合に達成される。
【0020】
ロープをそらせ装置、例えばそらせ車に載置するのを容易にするために、ロープの横断面が凸状であることがさらに好ましい。例えば、ロープは、滑らかな表面を有するフラット面を有していてよく、この表面は凸状曲線になっており、かつ直角又は鋭角の縁部を有さず、かつ好ましくは少なくともほぼロープの全幅にわたって伸びている。
【0021】
そのうえ、ロープは、ロープの長軸方向へ走る丸い縁部を有していてよく、及び/又はロープの長軸方向へ走る1個又はそれ以上の案内溝(Fuehrungsnute)を有していてよい。そのような案内溝は、例えば前記のような表面のへりにあってよく、かつ相応して設けられるそらせ車にロープを固定するために、形成されていてよい。
【0022】
本発明思想のさらなる展開において、表面材により被覆されたフィラメントが織物として形成されていることが提案される。この場合に、織物のたて糸割合は、好ましくはそのよこ糸割合よりも多い。
【0023】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、ロープは、その横断面に対して、相互に重なり合って配置された複数の層を有し、その際に各層は、炭素を含有する複数のフィラメントを含む。この実施態様の場合に、個々の層が、互いに異なる弾性を有し、その際に個々の層の弾性は、ロープの一方の側からロープの向かいの側へ、特に好ましくは連続的に増加することが好ましい。そのようなロープをそらせ装置、例えばそらせ車を用いて使用する際に、好ましくは、ロープがそらせ装置にのっているロープの側が、ロープのこれと向かい側よりも低い弾性を有する。それにより、ロープのそらせ方向の良好な湾曲性及びそらせ装置へのロープの密な載置は、ロープの高い引張強さ及び安定性と同時に達成される。弾性のそのような変化は、例えば、個々の層中で横断面積あたりそれぞれ異なる数のフィラメントが及び/又は個々の層中で異なる厚さ又は性質を有するフィラメントが、設けられることによって達成されることができる。
【0024】
ロープを外的な機械的影響に対して保護するために、本発明によるロープは、好ましくはプラスチックと、好ましくは金属である少なくとも1種の集合体(Zuschlagstoff)とを有するか又はこれらからなる、マトリックスを封入する被覆を有していてよい。
【0025】
さらに、ロープは、好ましくは金属からなる織物を含む縁部保護を有することができる。
【0026】
本発明のさらなる対象は、前記のロープを有する荷重牽引運搬システムである。荷重牽引運搬システムは、特にロープ式エレベータであってよく、その際にロープは、端部で荷重、例えばエレベータのかごとつながっていてよい。
【0027】
本発明の好ましい一実施態様によれば、荷重牽引運搬システムは、少なくとも1個のそらせ装置を含み、前記装置を介してロープが案内される。その際、少なくとも1個のそらせ装置は、例えばそらせ車であってよい。
【0028】
特に前記の実施態様の場合に、ロープは好ましくはフラット面を有し、かつフラット面がそらせ装置の表面にのっている。
【0029】
前記の実施態様の場合に、そのうえ、ロープが、その横断面に対して、相互に重なり合って配置され、それぞれ異なる弾性の少なくとも2個の層を有し、その際にそらせ装置から離間している層が、そらせ装置の方を向いた層よりも高い弾性を有することが好ましい。これにより、上記で述べたように、そらせ方向でのロープの良好な湾曲性及びそらせ装置へのロープの密な載置は、ロープの高い引張強さ及び安定性と同時に達成されることができる。
【0030】
本発明のさらなる対象は、荷重を牽引するための前記のロープ又は前記の荷重牽引運搬システムの使用である。
【0031】
使用の際に、ロープの個々のフィラメントは、より合わされていなくてよく、このことは特に、荷重がロープで牽引され、ロープが荷重とこれと反対側の端部との間でそらされない場合に好ましい。
【0032】
これに反して、ロープが、その使用の際に少なくとも1個のそらせ装置を介して、例えば少なくとも1個のそらせ車を介して案内される場合に、ロープの個々のフィラメントが互いにより合わされていることが好ましい。
【0033】
本発明のさらなる対象は、炭素を含有する少なくとも2本のフィラメントをそれぞれ表面材で被覆し、かつ表面材により被覆されたフィラメントを引き続き少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを有するマトリックス材料に含浸させることによる、前記のロープの製造方法である。
【0034】
好ましくは、フィラメントは、表面材の施与後及び/又は含浸前に、ばらばらのフィラメントもしくはフィラメント束(ロービング)として存在し、そのために、含浸は特に単純に、表面材により被覆されたフィラメント間の領域内へ浸透することができる。フィラメントは、このためには、表面材の施与後及び含浸前に、乾燥される及び/又は硬化されることができる。このためには、例えば1つ又はそれ以上のロービングが、表面材材料の浴に通されることができ、こうして処理されたフィラメントは、引き続き任意に乾燥され、ついでマトリックス材料に、例えばプルトルージョン成形により、含浸されることができる。
【0035】
以下に、本発明は、有利な実施態様に基づいて添付された図面を参照しながら専ら例示的に説明される。その際に以下のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施例による本発明によるロープの部分的に切り取った図
【図2】図1に示されたロープの切片Aの拡大図
【図3】第二実施例による本発明によるロープの部分的に切り取った図
【図4】第三実施例による本発明によるロープの部分的に切り取った図
【図5】第四実施例による本発明によるロープの横断面図
【0037】
図1には、第一実施例による本発明によるロープが示されている。ロープは、それぞれ表面材12により被覆されており、炭素を含有する複数のフィラメント10を有し、その際に表面材12により被覆されたフィラメント10は、少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含有する材料から構成されているマトリックス14により包囲されている。フィラメント10は、100%炭素からなるフィラメントである。
【0038】
ロープは、凸状の横断面と、高さHに対する幅Bの商に相当する1よりも大きいアスペクト比とを有する。
【0039】
図2は、図1に示されたロープの横断面の切片Aの拡大図を示す。説明の目的のために、この図中では、表面材12により被覆されたフィラメント10の2本についてのみ、ロープの長軸方向に伸びて示されている。
【0040】
図2に示されたように、フィラメント10は互いに少なくともほぼ平行にロープの長軸方向へ走り、その際に個々のフィラメント10は、マトリックス14により互いに分離されており、かつそれぞれ完全にマトリックス材料14により包囲されている。その際、フィラメント10は、相対的に均一にマトリックス14中に分布しているので、個々のフィラメント10と、それらのすぐ近くにある隣接フィラメント10との間隔dは、全てのフィラメント10について少なくともほぼ同じである。フィラメント10をマトリックス14で包囲することにより及び表面材12により生じるフィラメント10へのマトリックス材料14の良好な付着により、個々のフィラメント10の相互の摩擦は互いに防止され、かつマトリックス14の弾性変形能により同時に個々のフィラメント10の相対運動性が互いに保証され、それにより全体でロープの高くかつ持続する耐摩耗性が達成される。
【0041】
図3は、長方形の横断面を有する第二実施例による本発明によるロープの部分的に切り取った図を示し、その際に個々の角は、4個の丸い縁部16を形成することで丸められている。
【0042】
図4には、2個の案内溝18を有する、第三実施例による本発明によるロープの部分的に切り取った図が示されている。案内溝18を用いて、ロープは、案内装置又はそらせ装置にぴったりと(passgenau)かみ合うことができる。
【0043】
図5は、第四実施例による本発明によるロープの断面図を示し、前記ロープは軸22上に据え付けられているそらせ車20を介して案内される。ロープは、その横断面に対して、相互に重なり合って配置された複数の層24a〜dを有し、その際に各層24a〜dは、炭素を含有する複数のフィラメント10を含む。層24a〜dは、異なる弾性を有し、その際に弾性は、そらせ車20から離間したロープの面にある層24aから、そらせ車20の方を向いたロープの面にある層24dへと段階的に減少する。
【符号の説明】
【0044】
10:フィラメント
12:表面材
14:マトリックス
16:丸い縁部
18:案内溝
20:そらせ車
22:そらせ車の軸
24a〜d:層
B:幅
H:高さ
d:間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ表面材(12)により被覆されており、炭素を含有するフィラメント(10)を含むロープ、例えばロープ式エレベータにおいて使用するためのロープであって、表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)が、マトリックス(14)により包囲されており、その際にマトリックス(14)は、少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含有する材料から構成されている、ロープ。
【請求項2】
表面材(12)が、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ゴム、ゴム誘導体及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有する、請求項1記載のロープ。
【請求項3】
少なくとも1種のエラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホニル−ポリエチレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されている、請求項1又は2記載のロープ。
【請求項4】
少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブロックコポリマー、スチレン−ジエン−ブロックコポリマー、エチレン−プロピレンジエンゴムとポリプロピレンとの混合物、ウレタンベースの熱可塑性エラストマー、コポリエステルベースの熱可塑性エラストマー、コポリアミドベースの熱可塑性エラストマー及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項5】
表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、極めて特に好ましくは100%が、それぞれマトリックス材料により完全に包囲されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項6】
表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)がそれぞれ、少なくとも93質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%、極めて特に好ましくは完全に、炭素からなる、請求項1から5までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項7】
ロープがさらに、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、セラミック繊維及び前記の繊維の2種又はそれ以上の任意の組合せからなる群から選択されているフィラメントを含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項8】
マトリックス(14)により包囲されたフィラメント(10)の少なくとも50%が炭素繊維である、請求項7記載のロープ。
【請求項9】
表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)の少なくとも50%がロープの長軸方向に沿って、最大15゜、好ましくは最大10゜、特に好ましくは最大5゜及び極めて好ましくは最大2゜の長軸方向からの最大偏差で伸びている、請求項1から8までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項10】
表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)がそれぞれ、ロープの長さの少なくとも半分、好ましくはロープの長さの少なくとも75%、特に好ましくはロープの長さの少なくとも90%及び極めて好ましくはロープの全長にわたって伸びている、請求項1から9までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項11】
表面材(12)により被覆された個々のフィラメント(10)が互いにより合わされているか、又は表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)がより合わされていない、請求項1から10までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項12】
ロープがフラットな横断面を有し、その際にロープのアスペクト比が1よりも大きく、好ましくは2よりも大きく、特に好ましくは4よりも大きい、請求項1から11までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項13】
ロープが、ロープの長軸方向へ走る丸い縁部(16)を有し、及び/又はロープの長軸方向へ走る1個又はそれ以上の案内溝(18)を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項14】
表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)が織物として形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項15】
織物のたて糸割合が、そのよこ糸割合よりも多い、請求項14記載のロープ。
【請求項16】
ロープが、横断面に対して、相互に重なり合って配置された複数の層(24a〜d)を有し、その際に各層(24a〜d)が、炭素を含有する複数のフィラメント(10)を含む、請求項1から15までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項17】
個々の層(24a〜d)が互いに異なる弾性を有する、請求項16記載のロープ。
【請求項18】
個々の層(24a〜d)の弾性が、ロープの一方の側からロープの向かい側へ連続的に増加する、請求項17記載のロープ。
【請求項19】
ロープが、マトリックス(14)を封入する被覆を有する、請求項1から18までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項20】
被覆が、プラスチックと、好ましくは金属である少なくとも1種の集合体とを有する、請求項19記載のロープ。
【請求項21】
ロープが、好ましくは金属製織物を含む縁部保護を有する、請求項1から20までのいずれか1項記載のロープ。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項記載のロープを含む、荷重牽引運搬システム、特にロープ式エレベータ。
【請求項23】
ロープが案内される少なくとも1個のそらせ装置、好ましくは少なくとも1個のそらせ車(20)を含む、請求項22記載の荷重牽引運搬システム。
【請求項24】
ロープがフラット面を有し、かつフラット面がそらせ装置の表面にのっている、請求項23記載の荷重牽引運搬システム。
【請求項25】
ロープが、横断面に対して、それぞれ異なる弾性の相互に重なり合って配置された少なくとも2個の層(24a〜d)を有し、その際にそらせ装置から離間した層(24a、b、c)が、そらせ装置の方を向いた層(24b、c、d)よりも高い弾性を有する、請求項23又は24記載の荷重牽引運搬システム。
【請求項26】
荷重を牽引するための請求項1から21までのいずれか1項記載のロープの使用であって、
ロープの個々のフィラメント(10)がより合わされていない、請求項1から21までのいずれか1項記載のロープの使用。
【請求項27】
荷重を牽引するための請求項1から21までのいずれか1項記載のロープの使用であって、
ロープが、少なくとも1個のそらせ装置、好ましくは少なくとも1個のそらせ車(20)を介して案内され、かつロープの個々のフィラメント(10)が互いにより合わされている、請求項1から21までのいずれか1項記載のロープの使用。
【請求項28】
炭素を含有する少なくとも2本のフィラメント(10)をそれぞれ、表面材(12)で被覆し、表面材(12)により被覆されたフィラメント(10)を、少なくとも1種のエラストマー及び/又は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを有するマトリックス材料に含浸させる、請求項1から21までのいずれか1項記載のロープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504695(P2013−504695A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528305(P2012−528305)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062405
【国際公開番号】WO2011/029726
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL CARBON SE
【住所又は居所原語表記】Rheingaustrasse 182, D−65203 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】