説明

ローラーガイド

【課題】軌道への潤滑剤供給が安定的に行われ、1本の案内レールに複数のスライダを装着する場合にも好適なローラーガイドを提供する。
【解決手段】スライダ本体21の四カ所に、球面ローラー3をローラーシャフト4で取り付ける。スライダ本体21の直動方向で対向する球面ローラー3の間に、潤滑ユニット5を配置する。潤滑ユニット5は、ユニット本体51と、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品52と、この潤滑部品52のホルダ53と、コイルバネ54とからなる。潤滑部品52の先端部52aは、直動方向に垂直な断面が、球面ローラー3の断面と同じ半円状になっている。コイルバネ54で、潤滑部品52を案内レール1の軌道11に押しつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライダと案内レールとローラーを備え、ローラーの回転軸がスライダに固定され、ローラーの軌道が案内レールに形成され、ローラーの回転により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動(直線運動)するローラーガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のローラーガイドは、精密な案内や位置決めが求められる機器で使用され、その一例としては、下記の特許文献1に記載されたものが挙げられる。この文献に記載されたローラーガイドでは、円柱状のローラー(フォロア)を用いている。
また、一般的なリニアガイドでは、円滑な直動を長期間維持するために、潤滑剤供給部材を備えたものが提案されている(特許文献2および3等を参照)。
【0003】
特許文献2では、リニアガイドの案内レールの転動面に摺接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材として、潤滑剤含有部材を有する潤滑プレートをスライダの軸方向(直動方向)端部に設けている。この潤滑プレートの潤滑剤含有部材は、多孔質構造の板材に潤滑油が含浸されたものであり、スライダのエンドキャップの軸方向端面に着脱自在に取り付けてある。この潤滑プレートは、含浸された潤滑剤が無くなったら取り外して交換するか、潤滑剤含有部材に潤滑剤を補給する必要がある。
【0004】
特許文献3には、案内レールの転動面への潤滑剤の供給を、特許文献2の方法よりも長期間連続して行えるようにするために、スライダの脚部と水平部に対応する部分を有する形状であって、潤滑剤を収容する収容室が形成されたケースを、前記潤滑プレートの外側に設置し、前記収容室の潤滑剤に前記潤滑プレートの潤滑剤含有部材を接触させることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−172350号公報
【特許文献2】特開平10−205534号公報
【特許文献3】特開2000−145769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い剛性が要求されるローラーガイドでは、1本の案内レールに複数のスライダを装着するが、このスライダのローラーとして円柱状のローラーを用いると、複数のスライダ間で高さを合わせる煩雑な調整作業が必要となる。
また、ローラーガイドの円滑な直動を長期間維持するために、潤滑剤含有部材を有する潤滑プレートをスライダの直動方向端部に設ける方法を採用すると、潤滑プレートの分だけスライダの直動方向寸法が長くなる。これにより、スライダのストロークが短くなる。また、この方法を採用すると、1本の案内レールに複数のスライダを装着する場合に、各スライダのストローク調整が必要となって、設計の自由度が低下する。
【0006】
本発明の課題は、スライダと案内レールとローラーを備え、ローラーの回転軸がスライダに固定され、ローラーの軌道が案内レールに形成され、ローラーの回転により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するローラーガイドにおいて、軌道への潤滑剤供給が安定的に行われ、1本の案内レールに複数のスライダを装着する場合にも好適であるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、スライダと案内レールとローラーを備え、ローラーの回転軸がスライダに固定され、ローラーの軌道が案内レールに形成され、ローラーの回転により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するローラーガイドにおいて、前記ローラーは、球面ローラー(軌道に接する部分が球状になっているローラー)であり、案内レールの両側に対をなして、且つスライダの直動方向両端に一対ずつ配置され、スライダの直動方向で対向配置された球面ローラーの間に、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品を、案内レールの軌道に接触するように取り付けたことを特徴とするローラーガイドを提供する。
【0008】
このローラーガイドでは、球面ローラーを用いているため、1本の案内レールに複数のスライダを装着する場合に、複数のスライダ間で高さを合わせる調整作業が不要になる。
また、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品を、スライダの直動方向で対向配置された球面ローラーの間に、案内レールの軌道に接触するように取り付けたため、潤滑部品の取り付けによってスライダの直動方向寸法が変化しない。
【0009】
前記潤滑部品は、前記軌道側の部分の直動方向に垂直な断面が、球面ローラーの前記断面と同じに形成され、この潤滑部品が、バネにより前記軌道に向けて付勢された状態で取り付けられていることが好ましい。これにより、潤滑部品の軌道に対する摩擦抵抗を小さくできるとともに、潤滑剤含有樹脂から潤滑剤が出て行くことで、潤滑部品が小さくなった場合でも、バネによる付勢で案内レールの軌道に接触する状態が保持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のローラーガイドによれば、軌道への潤滑剤供給が安定的に行われ、1本の案内レールに複数のスライダを装着する場合にも好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
この実施形態のローラーガイドの平面図を図1に、側面図を図2に、正面図を図3に、図2のA−A断面図を図4に示す。また、このローラーガイドの直動方向に垂直な断面であって、図4のB−B断面に対応する図を図5に示す。なお、図4は図5のC−C断面に相当する。
【0012】
このローラーガイドは、案内レール1とスライダ2と球面ローラー3を備えている。案内レール1には、球面ローラー3の軌道11と、この軌道11の奥に配置された溝12が形成されている。この溝12は、軌道11を研削する時の逃げを目的として形成されている。
スライダ2は、スライダ本体21とエンドキャップ22とサイドシール23からなる。スライダ本体21の四カ所に、球面ローラー3がローラーシャフト4で取り付けられている。二対4個の球面ローラ3は、案内レール1の両側から軌道11に接するように対をなし、スライダ本体21の直動方向両端に一対ずつ配置されている。
【0013】
そして、スライダ本体21の直動方向で対向する球面ローラー3の間に、潤滑ユニット5が配置されている。
潤滑ユニット5は、ユニット本体51と、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品52と、この潤滑部品52のホルダ53と、コイルバネ54とからなる。ユニット本体51には、潤滑部品52が保持されたホルダ53を配置する空間51aと、ねじ6の軸部を通す貫通穴51bと、ねじ6の頭部を収める座繰り部51cと、コイルバネ54を配置する凹部51dが形成されている。
【0014】
潤滑部品52は、先端部52aの直動方向に垂直な断面が、球面ローラー3の断面と同じ半円状になっていて、基端部52bが断面コの字状のホルダ53に保持されている。また、ユニット本体51の凹部51dとホルダ53の間に、コイルバネ54が、潤滑部品52を案内レール1の軌道11に押しつける向きで配置されている。
スライダ本体21には、また、ねじ6の雄ねじを螺合させる雌ねじ21aと、スライダ2を、被取り付け部材に取り付けるための雌ねじ21bが形成されている。
【0015】
この実施形態のローラーガイドによれば、球面ローラー3を用いているため、1本の案内レール1に複数のスライダ2を装着する際に、円柱状ローラーを用いた場合のような、複数のスライダ2間で高さを合わせる調整作業が不要になる。
また、潤滑部品52を、スライダ2の直動方向に沿って対向配置された球面ローラー3の間に、案内レール1の軌道11に接触するように取り付けたため、潤滑部品52の取り付けによってスライダ2の直動方向寸法が変化しない。また、潤滑部品52の先端部52aが、球面ローラー3と同じ断面に形成されているため、潤滑部品52の軌道11に対する摩擦抵抗を小さくできる。
【0016】
また、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品52が、コイルバネ54により軌道11に向けて付勢された状態で取り付けられているため、潤滑剤含有樹脂から潤滑剤が出て行くことで、潤滑部品52が小さくなった場合でも、コイルバネ54による付勢で案内レール1の軌道11に接触する状態が保持される。また、潤滑部品52とコイルバネ54がユニット化されていて、スライダ本体21に対し、ボルト6の付け外しで容易に着脱できるため、潤滑部品52の交換が簡単にできる。
【0017】
また、図6に示すように、この実施形態のスライダ2を、通常のリニアガイド用のスライダ20と組み合わせて、1本の案内レール1に複数のスライダ2,20を装着して使用してもよい。
なお、一般的なリニアガイドでは、鋼球の転動により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するため、鋼球同士の衝突音が発生するが、本発明のローラーガイドでは、このような鋼球同士の衝突がないため、作動音が静かになる。
【0018】
また、円筒状のローラ一を用いた般的なローラーガイドでは、ローラーが案内レールの軌道と線接触するが、球面ローラーを用いた本発明のローラーガイドでは、最大8点(ローラー1個当たり2点)で点接触する。よって、高精度にするためにオーバーサイズローラーにして予圧を掛けた場合でも、摩擦抵抗が少なく動摩擦力も小さいため、動きをスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施形態に相当するローラーガイドを示す平面図である。
【図2】この発明の実施形態に相当するローラーガイドを示す側面図である。
【図3】この発明の実施形態に相当するローラーガイドを示す正面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】この発明の実施形態に相当するローラーガイドの直動方向に垂直な断面であって、図4のB−B断面に対応する図である。
【図6】この発明の実施形態のスライダを、通常のリニアガイド用のスライダと組み合わせて使用した例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 案内レール
11 軌道
12 溝
2 スライダ
21 スライダ本体
21a 雌ねじ
21b 雌ねじ
22 エンドキャップ
23 サイドシール
3 球面ローラー
4 ローラーシャフト
5 潤滑ユニット
51 本体
51a ホルダを配置する空間
51b 貫通穴
51c 座繰り部
51d 凹部
52 潤滑部品
52a 潤滑部品の先端部
52b 潤滑部品の基端部
53 ホルダ
54 コイルバネ
6 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダと案内レールとローラーを備え、ローラーの回転軸がスライダに固定され、ローラーの軌道が案内レールに形成され、ローラーの回転により案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するローラーガイドにおいて、
前記ローラーは、球面ローラーであり、案内レールの両側に対をなして、且つスライダの直動方向両端に一対ずつ配置され、
スライダの直動方向で対向配置された球面ローラーの間に、潤滑剤含有樹脂からなる潤滑部品を、案内レールの軌道に接触するように取り付けたことを特徴とするローラーガイド。
【請求項2】
前記潤滑部品は、前記軌道側の部分の直動方向に垂直な断面が、球面ローラーの前記断面と同じに形成され、
この潤滑部品が、バネにより前記軌道に向けて付勢された状態で取り付けられている請求項1記載のローラーガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−232048(P2007−232048A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53078(P2006−53078)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】