説明

ワイパモータ

【課題】 出力軸の回転方向のガタを減少させ得るワイパモータを低コストで提供することである。
【解決手段】 動力変換機構は連結軸においてウォームホイルに回転自在に連結される動力変換部材を有し、動力変換部材は出力ギヤと噛み合うセクタギヤ部を備え、セクタギヤ部の歯車軸は揺動プレートにより出力軸に揺動自在に支持される。出力軸の先端には第1摺接部材が装着され、連結軸の先端には第2摺接部が装着され、歯車軸の先端には第3摺接部が装着され、これらはカバーの内面に摺接している。カバー17には摺接凸部51と連結軸用摺接凸部52と歯車軸用摺接凸部53とが形成され、リヤワイパアームが一方の反転位置となったときには第2摺接部は摺接凸部51に第3摺接凸部は摺接凸部53に摺接し、他方の反転位置となったときには第2摺接部は摺接凸部52に第3摺接凸部は摺接凸部51に摺接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に設けられるワイパアームを揺動駆動させるためのワイパモータに関し、特に、電動モータの出力を揺動運動に変換して出力軸から出力する動力変換機構を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリヤウインドガラスを払拭するリヤワイパ装置等では、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸から出力する動力変換機構を備えたワイパモータを用いて、ワイパアームを直接出力軸に固定するようにしている。このようなワイパモータは、バスタブ状に形成されたケース本体とケース本体を閉塞するカバーから成るギヤケースを有し、このギヤケースは電動モータに固定され、動力変換機構はこのギヤケース内に収容されている。動力変換機構は電動モータの回転軸の外周面に形成されるウォームとウォームに噛み合うウォームホイルとを有し、ウォームホイルには回転中心軸から離れて連結軸が設けられ、この連結軸には動力伝達部材が回転自在に連結されている。動力伝達部材にはセクタギヤ部が設けられ、このセクタギヤ部は出力軸に固定される出力ギヤに噛み合い、セクタギヤ部の軸心に設けられる歯車軸と出力軸とは揺動プレートにより互いに揺動自在に連結されている。このような構成により、電動モータが作動してウォームホイルが回転すると、その回転運動は動力変換部材を介して出力ギヤの揺動運動に変換され、出力軸に固定されたワイパアームを所定の揺動範囲で払拭動作させることができる。
【0003】
払拭動作するワイパアームがその揺動範囲の両端にある反転位置において移動方向を反転させるときには、出力ギヤとセクタギヤ部との噛み合い部分に回転方向の大きな荷重が加わり、この荷重によりセクタギヤ部は出力ギヤから引き離される方向の荷重を受けることになる。そして、この荷重によりギヤケースに支持される出力軸に対して歯車軸や連結軸が傾きを生じ、セクタギヤ部と出力ギヤとの噛み合いがずれ、出力軸の回転方向のガタが大きくなる。これにより、ウインドガラスが濡れた状態のときと乾いた状態のときとでは、出力軸に加わる荷重が相違することにより出力軸の回転方向のガタが増減し、ワイパアームの払拭範囲が相違するという問題を生じることになる。
【0004】
出力ギヤとセクタギヤとの噛み合い部分に回転方向の荷重が加わったときに各軸が傾斜する構造的な原因としては、出力軸や歯車軸あるいは連結軸がギヤケース内で軸方向にガタを有していることが大きく寄与している。そのため、例えば特許文献1に示されるワイパモータでは、ギヤケースのカバーの内面に樹脂材料により板状に形成されたパットを装着し、このパットに出力軸や歯車軸、連結軸の先端部を摺接させることにより各軸の軸方向への移動を規制するようにしている。これにより、出力ギヤとセクタギヤ部との間に噛み合いを引き離す方向の荷重が加わっても、各軸は軸方向の移動が規制されることによりその傾動が抑制され、出力ギヤの回転方向のガタを減少させることができる。
【特許文献1】特開平4−292244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるワイパモータのようにカバーに樹脂製のパットを装着するようにすると、部品点数が増加するとともにパットをカバーに装着する作業つまり組み付け工数が増加することになるので、このワイパモータのコストは増加することになる。
【0006】
また、特許文献1に示されるワイパモータでは、出力ギヤとセクタギヤ部とを挟み込む一対の揺動プレートによって出力軸と歯車軸とを連結し、これにより出力ギヤとセクタギヤ部との噛み合いを保持させるようにしているが、このような構造では、各ギヤの噛み合いを確保するためには揺動プレートを厚く形成する必要があり、ワイパモータが大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、出力軸の回転方向のガタを減少させ得るワイパモータを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパモータは、電動モータと該電動モータの回転力を揺動運動に変換して出力軸から出力する動力変換機構とを備え、前記出力軸に取り付けられるワイパアームを予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、前記動力変換機構を収容するギヤケースと、前記出力軸に一体回転可能に設けられ、前記ギヤケース内に収容される出力ギヤと、前記ギヤケースに収容され、前記電動モータによって回転駆動されるウォームと、前記ギヤケース内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイルと、前記ウォームホイルの回転中心軸から離れた連結軸において前記ウォームホイルに回動自在に連結され、前記出力ギヤと噛み合うセクタギヤ部を有する動力変換部材と、前記セクタギヤ部の軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結する揺動プレートと、前記出力軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第1摺接部材と、前記連結軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第2摺接部材と、前記歯車軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第3摺接部材とを有し、前記ギヤケースの内面に摺接凸部が前記ギヤケースの内側に向けて突出形成され、前記第2摺接部材と前記第3摺接部材とが前記摺接凸部に摺接可能となっていることを特徴とする。
【0009】
本発明のワイパモータは、前記ワイパアームが一方の反転位置となったときに前記第2摺接部材が前記摺接凸部に摺接することを特徴とする。
【0010】
本発明のワイパモータは、前記ギヤケースの内面に該ギヤケースの内側に突出する連結軸用摺接凸部を一体に設け、前記ワイパアームが他方の反転位置となったときに前記第2摺接部材を前記連結軸用摺接凸部に摺接させることを特徴とする。
【0011】
本発明のワイパモータは、前記ワイパアームが他方の反転位置となったときに前記第3摺接部材が前記摺接凸部に摺接することを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパモータは、前記ギヤケースの内面に該ギヤケースの内側に突出する歯車軸用摺接凸部を一体に設け、前記ワイパアームが一方の反転位置となったときに前記第3摺接部材を前記歯車軸用摺接凸部に摺接させることを特徴とする。
【0013】
本発明のワイパモータは、前記動力変換機構を収容するケース本体と前記ケース本体を閉塞するカバーとにより前記ギヤケースを構成し、前記第1〜第3摺接部材をそれぞれ前記カバーに摺接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出力ギヤとセクタギヤ部とに噛み合いを引き離す方向の荷重が加わっても、それぞれギヤケースの内面に摺接する第1〜第3摺接部材により出力軸、連結軸、歯車軸の軸方向の移動が規制され、これらの軸の傾動が抑制される。これにより出力ギヤとセクタギヤ部との噛み合いが保持され、出力軸の回転方向のガタを低減させることができる。また、ギヤケースに一体に形成される摺接凸部に第2摺接部材と第3摺接部材を交互に摺接させるようにしたので、これらの軸の軸方向の移動を強く規制して、出力軸の回転方向のガタをさらに低減させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、ワイパアームが一方の反転位置となったときにギヤケースに形成される摺接凸部に第2摺接部材を摺接させて連結軸の軸方向の移動を強く規制するようにしたので、ワイパアームの反転動作により出力ギヤとセクタギヤ部との間に噛み合いを切り離す方向の荷重が生じても連結軸の傾動を抑制することができる。これにより、出力軸の回転方向のガタを低減させ、ウインドガラスの表面の状態に拘わらずワイパアームの払拭範囲を一定にすることができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、ワイパアームが他方の反転位置となったときにギヤケースに形成される連結軸用摺接凸部に第2摺接部材を摺接させるようにしたので、他方の反転位置における連結軸の軸方向の移動を強く規制して、ワイパアームの両反転位置における連結軸の傾動を抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、ワイパアームが他方の反転位置となったときにギヤケースに形成される摺接凸部に第3摺接部材を摺接させて歯車軸の軸方向の移動を強く規制するようにしたので、ワイパアームの反転動作により出力ギヤとセクタギヤ部との間に噛み合いを切り離す方向の荷重が生じても歯車軸の傾動を抑制することができる。これにより、出力軸の回転方向のガタを低減させ、ウインドガラスの表面の状態に拘わらずワイパアームの払拭範囲を一定にすることができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、ワイパアームが他方の反転位置となったときにギヤケースに形成される歯車軸用摺接凸部に第3摺接部材を摺接させるようにしたので、他方の反転位置における歯車軸の軸方向の移動を強く規制して、ワイパアームの両反転位置における歯車軸の傾動を抑制することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、摺接凸部や連結軸用摺接凸部あるいは歯車軸用摺接凸部をそれぞれギヤケースと一体に形成するようにしたので、部品点数や製造工数を抑制して、このワイパモータのコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態であるワイパモータを示す正面図であり、このワイパモータ11は、図示しない車両に設けられるリヤワイパ装置に用いられるものであり、電動モータ12とギヤユニット13とを有している。
【0022】
図2は図1に示すワイパモータの内部構造を示す一部切り欠き断面図であり、図3は図2におけるA−A線に沿う断面図であり、電動モータ12は回転軸12aを備えた所謂ブラシ付き直流モータとなっており、カプラ14を介して車両に搭載されるバッテリ等の図示しない電源に接続されている。図示しないワイパスイッチが操作されると電源から電動モータ12に直流電流が供給され、回転軸12aは所定の方向に回転する。図示する場合には、電動モータ12はブラシ付き直流モータとされているが、これに限らず、たとえばブラシレスモータなど他の形式の電動モータを用いるようにしてもよい。
【0023】
一方、ギヤユニット13は、締結部材15により電動モータ12に固定されるバスタブ状のケース本体16とケース本体16を閉塞するカバー17とで構成されるギヤケース18を有しており、ケース本体16の内部には、電動モータ12の出力を揺動運動に変換して出力軸21から出力する動力変換機構22が収容されている。カバー17は、鋼板をプレス加工して形成され、ワイパモータ11を車体に固定するためのブラケットを兼ねており、図1に示すようにワイパモータ11はカバー17に設けられる3箇所の取付部23において図示しないボルト等の締結部材により車体に固定される。
【0024】
図2に示すように、動力変換機構22はウォームギヤ機構24を有し、ウォームギヤ機構24はウォーム25とウォーム25に噛み合うウォームホイル26とを備え、ウォーム25はケース本体16の内部に突出する回転軸12aの外周に一体的に形成されて電動モータ12に回転駆動されるようになっている。ウォームホイル26はケース本体16に設けられた回転中心軸としての支持軸27に支持されてケース本体16の内部に回転自在に収容されており、ウォーム25に噛み合わされることにより回転軸12aの回転が所定の回転数にまで減速されて伝達されるようになっている。つまり、ウォームホイル26は電動モータ12により駆動されて所定の方向に回転するようになっている。
【0025】
図3に示すように、ケース本体16には支持軸27と平行な方向に突出するボス部16aが形成されており、出力軸21は支持軸27に対して平行となってボス部16aに回転自在に支持されている。出力軸21の一端はボス部16aから外部に突出し、その先端にはリヤワイパ装置を構成するリヤワイパアーム28(図3に一点鎖線で示す)が取り付けられている。また、出力軸21の他端はケース本体16の内部に位置しており、その先端には出力ギヤ31が設けられている。この場合、出力ギヤ31は焼結により形成された平歯車となっており、その軸心に出力軸21が圧入されることにより出力軸21と一体回転自在とされている。つまり、出力ギヤ31はケース本体16の内部に出力軸21とともに回転自在に収容されている。
【0026】
図4は図1に示す動力変換機構の詳細を示す分解斜視図であり、動力変換機構22はウォームホイル26と出力ギヤ31とを連結する動力変換部材32を有し、この動力変換部材32によりウォームホイル26の回転運動が揺動運動に変換されて出力軸21に伝達されるようになっている。つまり、電動モータ12の動力である回転軸12aの回転運動はウォームギヤ機構24により減速されるとともに動力変換部材32により揺動運動に変換されて出力軸21から出力される。これにより、出力軸21に取り付けられたリヤワイパアーム28はワイパモータ11により揺動駆動され、これによりリヤワイパ装置の払拭動作が行われることになる。
【0027】
動力変換部材32はプレス機械を用いて鋼板を所定の形状に打ち抜き加工することによりアーム部32aとアーム部32aの長手方向の一端に設けられるセクタギヤ部32bとを有する板状に形成され、アーム部32aのセクタギヤ部32bとは反対側の先端側には貫通孔32cが形成され、この貫通孔32cには支持軸27と平行に連結軸33が圧入により固定されている。一方、セクタギヤ部32bの軸心つまりピッチ円の中心には貫通孔32dが形成され、この貫通孔32dには連結軸33と平行に歯車軸34が圧入により固定されている。
【0028】
一方、ウォームホイル26には回転中心軸つまり支持軸27から離れて連結穴26aが形成されており、連結軸33はこの連結穴26aに回転自在に係合されている。つまり、アーム部32aは支持軸27から離れた連結軸33においてウォームホイル26に回転自在に連結されている。一方、セクタギヤ部32bは出力ギヤ31に噛み合わされており、その噛み合いを保持するために、歯車軸34と出力軸21とは揺動プレート35により揺動自在に連結されている。
【0029】
図4に示すように、揺動プレート35は出力ギヤ31やセクタギヤ部32bに対してケース本体16側に配置され、その一方の貫通孔35aに出力軸21が挿通されるとともに他方の貫通孔35bに歯車軸34が挿通され、これにより出力軸21と歯車軸34とを揺動自在に連結している。したがって、セクタギヤ部32bは揺動プレート35により出力ギヤ31との噛み合いが保持された状態で出力軸21の周りに揺動自在に支持される。
【0030】
このような構造により、電動モータ12が作動してウォームホイル26が回転すると、その回転によりアーム部32aが往復動されるとともにセクタギヤ部32bが出力ギヤ31に対して揺動運動し、ウォームホイル26の回転運動が揺動運動に変換されて出力軸21から出力される。これにより、出力軸21に取り付けられたリヤワイパアーム28はワイパモータ11により予め定められた反転位置の間、つまり上反転位置と下反転位置との間で揺動駆動され、リヤワイパ装置の払拭動作が行われる。
【0031】
図5はカバーの詳細を示す正面図であり、図6は出力軸の先端に装着された第1摺接部材とカバーとの接触部分の詳細を示す断面図である。図5に示すように、カバー17のケース本体16を閉塞する部分の内面には、出力軸21の先端に対向するように、ギヤケース18の内側に向けて突出する円形の突出部41が形成されている。一方、出力軸21のカバー17の内面に対向する側の先端には、図6に示すように、樹脂材料によりキャップ状に形成された第1摺接部材42が装着されている。第1摺接部材42はカバー17の突出部41に摺接しており、これにより、出力軸21や出力ギヤ31はボス部16aとカバー17との間に挟み込まれてその軸方向の移動が規制され、その軸方向のガタが抑制される。
【0032】
図2に示すように、動力変換部材32のカバー17と対向する側の表面には樹脂材料により形成された摺接プレート43が装着されている。図4に示すように、この摺接プレート43は第2摺接部材としての機能を有する第2摺接部43aと第3摺接部材としての機能を有する第3摺接部43bとを備え、これらの摺接部43a,43bはプレート部43cを介して一体に形成されている。第2摺接部43aはプレート部43cに対してカバー17側に突出するキャップ状に形成され、動力変換部材32の表面から突出する連結軸33の先端を覆うように連結軸33の先端に装着されている。そして、図3に示すように、第2摺接部43aは第1摺接部材42と同一側においてギヤケース18つまりカバー17の内面に摺接しており、これにより連結軸33は第2摺接部43aを介してカバー17に支持されて軸方向への移動が規制されている。同様に、第3摺接部43bはプレート部43cに対してカバー17側に突出するキャップ状に形成され、動力変換部材32の表面から突出する歯車軸34の先端部分を覆うように歯車軸34の先端に装着されている。そして、図3に示すように、第3摺接部43bも第2摺接部43aと同様に第1摺接部材42と同一側においてカバー17の内面に摺接しており、これにより歯車軸34は第3摺接部43bを介してカバー17に支持されて軸方向への移動が規制されている。
【0033】
このように、このワイパモータ11では、出力軸21の先端に装着される第1摺接部材42と連結軸33の先端に装着される第2摺接部43aと歯車軸34の先端に装着される第3摺接部43bとをカバー17の内面に摺接させて各軸の軸方向への移動を規制するようにしたので、各軸や動力変換部材32等をギヤケース18内でがたつかせること無く、滑らかに作動させることができる。
【0034】
図7はカバーの内面における各摺接部の移動経路を示す説明図であり、図8(a)〜(d)はワイパアームの払拭動作に伴う第2摺接部の位置変化を示す断面図であり、図9(a)〜(d)はワイパアームの払拭動作に伴う第3摺接部の位置変化を示す断面図である。
【0035】
図5に示すように、カバー17の内面には摺接凸部51と連結軸用摺接凸部52(以下、摺接凸部52とする)と歯車軸用摺接凸部53(以下、摺接凸部53とする)とが設けられている。これらの摺接凸部51,52,53はカバー17をプレス加工する際にケース本体16の内側に向けて突出するようにカバー17と一体に形成されており、図7に示すように、摺接凸部51は図中一点鎖線で示す第2摺接部43aの移動経路と図中2点鎖線で示す第3摺接部43bの移動経路とが交差する位置に配置されている。また、摺接凸部52は図中一点鎖線で示す第2摺接部43aの移動経路上であって摺接凸部51に対して約180度ずれて配置され、摺接凸部53は第3摺接部43bの移動経路上の摺接凸部51とは反対側のストローク端側に配置されている。そして、リヤワイパアーム28が一方の反転位置となったときには第2摺接部43aは摺接凸部51に摺接し、第3摺接部43bは摺接凸部53に摺接し、反対にリヤワイパアーム28が他方の反転位置となったときには第2摺接部43aは摺接凸部52に摺接し、第3摺接部43bは摺接凸部51に摺接する。
【0036】
つまり、図8(a)に示すように、揺動運動するリヤワイパアーム28がその移動方向を反転させる一方の反転位置となったときには第2摺接部43aは摺接凸部51に摺接し、そこからリヤワイパアーム28が反対側の反転位置に向けて移動すると、図8(b)に示すように、第2摺接部43aはカバー17の内面に摺接し、リヤワイパアーム28が他方の反転位置となったときには、図8(c)に示すように、第2摺接部43aは摺接凸部52に摺接する。そして、再度リヤワイパアーム28が他方の反転位置に向けて移動すると、図8(d)に示すように、第2摺接部43aは摺接凸部51に向けてカバー17の内面に摺接しながら移動する。一方、図9(a)に示すように、リヤワイパアーム28が一方の反転位置となったときには第3摺接部43bは摺接凸部53に摺接し、そこからリヤワイパアーム28が反対側の反転位置に向けて移動すると、図9(b)に示すように、第3摺接部43bはカバー17の内面に摺接し、リヤワイパアーム28が他方の反転位置となったときには、図9(c)に示すように、第3摺接部43bは摺接凸部51に摺接する。つまり、ワイパアーム28が揺動運動すると、摺接凸部51には第2摺接部43aと第3摺接部43bとが交互に摺接する。そして、再度リヤワイパアーム28が他方の反転位置に向けて移動すると、図9(d)に示すように、第3摺接部43bは摺接凸部53に向けてカバー17の内面に摺接しながら移動する。なお、摺接凸部51,52の周方向の両側部および摺接凸部53の摺接凸部51側の側部には、それぞれ傾斜面51a,52a,53aが形成され、摺接凸部51,52,53に第2摺接部43aあるいは第3摺接部43bを滑らかに摺接させるようにしている。
【0037】
したがって、リヤワイパアーム28が反転位置において反転動作することにより、出力ギヤ31とセクタギヤ部32bとの噛み合い部分に回転方向の大きな荷重が加わり、この荷重により出力ギヤ31とセクタギヤ部32bとを引き離す方向の荷重が加えられても、リヤワイパアーム28が反転位置となったときには第2摺接部43aは摺接凸部51または摺接凸部52に摺接し、第3摺接部43bは摺接凸部53または摺接凸部51に摺接し、連結軸33と歯車軸34の軸方向の移動が強く規制されるので、連結軸33と歯車軸34の傾動を抑制し、つまりは動力変換部材32の傾動を抑制して、出力ギヤ31とセクタギヤ部32bとの噛み合いずれを抑制することができる。そして、出力ギヤ31とセクタギヤ部32bとの噛み合いずれを抑制することにより、出力軸21の回転方向のガタを減少させることができる。
【0038】
このように、このワイパモータ11では、リヤワイパアーム28が両反転位置となったときにはカバー17に形成される摺接凸部51,52,53に第2摺接部43aと第3摺接部43bとが摺接して連結軸33と歯車軸34の軸方向の移動は強く規制されるので、出力軸21の回転方向のガタを減少させることができる。また、出力軸21の回転方向のガタを抑制することにより、ウインドガラスの表面の状態に拘わらずリヤワイパアーム28の払拭範囲を一定にすることができる。さらに、リヤワイパアーム28が反転位置以外の位置にあるときには、第2摺接部43aと第3摺接部43bは摺接凸部51,52,53以外の部分においてカバー17に摺接するので、その摺接による抵抗が抑制され、電動モータ12の負担を低減させることができる。さらに、摺接凸部51,52,53はカバーをプレス加工する際にカバー17と一体に形成されるので、部品点数や製造工数等を抑制して、ワイパモータ11のコストを低減させることができる。
【0039】
図10は摺接プレートに設けられるリブ部とカバーとの接触部分の詳細を示す断面図である。
【0040】
図2に示すように、摺接プレート43には動力変換部材32上に配置される延出部54が第3摺接部43bと一体に設けられている。この延出部54は扇形状に形成され、その外周はセクタギヤ部32bと出力ギヤ31との噛み合い部分にまで延びており、セクタギヤ部32bのカバー17と対向する側の表面を覆っている。延出部54の外周部分にはカバー17側に向けて突出するリブ部55が設けられ、このリブ部55は歯車軸34を中心とした円弧状となって形成されており、ウォームホイル26から離れた側の約半分の範囲においてセクタギヤ部32bの先端部分はこのリブ部55により覆われている。そして、図10に示すように、リブ部55は第1摺接部材42と同一側においてカバー17の内面に摺接し、これによりリブ部55を介してセクタギヤ部32bはカバー17に支持されている。これにより、セクタギヤ部32bはリブ部55を介してカバー17に支持され、出力ギヤ31とセクタギヤ部32bとの噛み合いのずれを抑制することができる。
【0041】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、ワイパモータ11は車両のリヤワイパアーム28を駆動するために用いられているが、これに限らず、フロントワイパアームであってもよい。
【0042】
また、前記実施の形態においては、第3摺接部43bは第2摺接部43aと一体に形成されているが、これに限らず、これらを別体に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態であるワイパモータを示す正面図である。
【図2】図1に示すワイパモータの内部構造を示す一部切り欠き断面図である。
【図3】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1に示す動力変換機構の詳細を示す分解斜視図である。
【図5】カバーの詳細を示す正面図である。
【図6】出力軸の先端に装着された第1摺接部材とカバーとの接触部分の詳細を示す断面図ある。
【図7】カバーの内面における各摺接部の移動経路を示す説明図である。
【図8】(a)〜(d)はワイパアームの払拭動作に伴う第2摺接部の位置変化を示す断面図である。
【図9】(a)〜(d)はワイパアームの払拭動作に伴う第3摺接部の位置変化を示す断面図である。
【図10】摺接プレートに設けられるリブ部とカバーとの接触部分の詳細を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
11 ワイパモータ
12 電動モータ
12a 回転軸
13 ギヤユニット
14 カプラ
15 締結部材
16 ケース本体
16a ボス部
17 カバー
18 ギヤケース
21 出力軸
22 動力変換機構
23 取付部
24 ウォームギヤ機構
25 ウォーム
26 ウォームホイル
26a 連結穴
27 支持軸
28 リヤワイパアーム
31 出力ギヤ
32 動力変換部材
32a アーム部
32b セクタギヤ部
32c,32d 貫通孔
33 連結軸
34 歯車軸
35 揺動プレート
35a,35b 貫通孔
41 突出部
42 第1摺接部材
43 摺接プレート
43a 第2摺接部
43b 第3摺接部
43c プレート部
51 摺接凸部
51a 傾斜面
52 連結軸用摺接凸部
52a 傾斜面
53 歯車軸用摺接凸部
53a 傾斜面
54 延出部
55 リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと該電動モータの回転力を揺動運動に変換して出力軸から出力する動力変換機構とを備え、前記出力軸に取り付けられるワイパアームを予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、
前記動力変換機構を収容するギヤケースと、
前記出力軸に一体回転可能に設けられ、前記ギヤケース内に収容される出力ギヤと、
前記ギヤケースに収容され、前記電動モータによって回転駆動されるウォームと、
前記ギヤケース内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイルと、
前記ウォームホイルの回転中心軸から離れた連結軸において前記ウォームホイルに回動自在に連結され、前記出力ギヤと噛み合うセクタギヤ部を有する動力変換部材と、
前記セクタギヤ部の軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結する揺動プレートと、
前記出力軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第1摺接部材と、
前記連結軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第2摺接部材と、
前記歯車軸の先端に装着され、前記ギヤケースの内面に摺接する第3摺接部材とを有し、
前記ギヤケースの内面に摺接凸部が前記ギヤケースの内側に向けて突出形成され、前記第2摺接部材と前記第3摺接部材とが前記摺接凸部に摺接可能となっていることを特徴とするワイパモータ。
【請求項2】
請求項1記載のワイパモータにおいて、前記ワイパアームが一方の反転位置となったときに前記第2摺接部材が前記摺接凸部に摺接することを特徴とするワイパモータ。
【請求項3】
請求項2記載のワイパモータにおいて、前記ギヤケースの内面に該ギヤケースの内側に突出する連結軸用摺接凸部を一体に設け、前記ワイパアームが他方の反転位置となったときに前記第2摺接部材を前記連結軸用摺接凸部に摺接させることを特徴とするワイパモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパモータにおいて、前記ワイパアームが他方の反転位置となったときに前記第3摺接部材が前記摺接凸部に摺接することを特徴とするワイパモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパモータにおいて、前記ギヤケースの内面に該ギヤケースの内側に突出する歯車軸用摺接凸部を一体に設け、前記ワイパアームが一方の反転位置となったときに前記第3摺接部材を前記歯車軸用摺接凸部に摺接させることを特徴とするワイパモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイパモータにおいて、前記動力変換機構を収容するケース本体と前記ケース本体を閉塞するカバーとにより前記ギヤケースを構成し、前記第1〜第3摺接部材をそれぞれ前記カバーに摺接させることを特徴とするワイパモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−38949(P2007−38949A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227476(P2005−227476)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】