ワイヤケーブル、並びに張力測定システム及び張力測定方法
【課題】 構造物に使用されるワイヤケーブルの正確な張力を遠隔地に居ながらにして所望の時に測定する。
【解決手段】 複数の素線を縒り合わせたワイヤケーブルに関し、その軸方向の歪を検出する歪検出手段を、当該ワイヤケーブルに組み込む。この歪検出手段として、光ファイバケーブル2により形成された光ファイバーセンサ3を使用する。この際、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込み、光ファイバーセンサ3の変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知する。
【解決手段】 複数の素線を縒り合わせたワイヤケーブルに関し、その軸方向の歪を検出する歪検出手段を、当該ワイヤケーブルに組み込む。この歪検出手段として、光ファイバケーブル2により形成された光ファイバーセンサ3を使用する。この際、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込み、光ファイバーセンサ3の変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を支持するワイヤケーブル、特に橋梁のワイヤケーブル並びに、このケーブルを使用した張力測定システム及び張力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤケーブルである部材を支持する構造物に関し、このワイヤケーブルの張力を測定する手法として、従来から様々な手法が試みられてきた。例えば、ワイヤケーブルに歪ゲージを貼り付け、歪ゲージの出力に基づいてワイヤケーブルの張力を求める手法は、その代用的なものである。最近では、振動法と呼ばれる手法で張力の測定を行うことが主流である。
【0003】
この振動法とは、例えば、特許文献1に示されているように、ワイヤケーブルに所定の振動を作用させ、弦の振動に関する微分方程式を利用して、ワイヤケーブルの固有振動数から張力を求める方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−255222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、測定の対象が橋梁のワイヤケーブルである場合、交通事情の関係上、張力を測定するチャンスが限られてしまう。このため、歪ゲージを使用する手法では、橋梁の架設時を除けば、橋梁の一斉点検時等、ごく僅かチャンスしかない。
【0006】
また、振動法は、上述のように、ケーブルの固有振動数から間接的に張力を求める手法であるため、振動法で求めた張力と実際の張力と間にどうしても誤差が出てしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、正確な張力を所望の時に得られるワイヤケーブル、並びに張力測定システム及び張力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の課題を解決するために、次の解決手段を採用した。
【0009】
第1に採用したのは、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルであって、このワイヤケーブルの軸方向の歪を検出する歪検出手段が、当該ワイヤケーブルに組み込まれ、前記歪検出手段が光ファイバーからなる光ファイバーセンサであり、この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知するワイヤケーブルである。
【0010】
かかるワイヤケーブルに関し、本発明では、前記素線の中の1本に、その軸方向に沿って形成された挿入孔を形成し、前記光ファイバーセンサを前記挿入孔に挿入させて、その軸方向が前記素線の伸縮と共に伸縮されるように構成した。
【0011】
第2に採用したのは、構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定する張力測定システムであって、前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記ワイヤケーブルの歪を検出する歪検出手段と、前記歪検出手段の検出に基づいて前記ワイヤケーブルに作用する張力を算出する張力演算手段と、前記歪検出手段の検出を前記歪検出手段から前記張力演算手段まで送信する信号通信手段とを備え、前記信号通信手段が、光ファイバーケーブルであり、前記歪検出手段が、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサであり、この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形によって、この光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知して、前記張力演算手段では、前記光ファイバーセンサの検知内容に基づいて、前記ワイヤケーブルの張力を算出する張力測定システムである。
【0012】
そして、第3に、構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定するにあたり、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサを前記ワイヤケーブルに組み込み、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って、前記光ファイバーセンサを変形せしめ、この変形に伴って発生する、前記光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知し、検知された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉に基づいて、張力演算手段により前記ワイヤケーブルの張力を算出する張力測定方法を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤケーブルの張力を測定する場合に、ワイヤケーブルに生ずる歪から直接張力を測定できる。このため、測定結果と、実際にワイヤケーブルに発生している張力との間に誤差が生じることを極力抑えることが可能となり、正確な値を測定できる。
【0014】
また、歪測定手段として光ファイバーセンサを使用するため、既に通信網として設けられている光ファイバーケーブルを通信手段として利用することができる。これにより、測定の対象となる構造物とは遠隔地にある、例えば、測定機器を設けたベース地やオフィスビルからでも測定することが可能となる。
【0015】
特に、測定の対象が橋梁の支柱と床版とを接続するワイヤケーブルである場合、交通の関係上、現場での測定が制限されてしまう。しかし、本発明によれば、遠隔地から測定することができるため、交通に左右されず、いつでも所望の時にワイヤケーブルの張力を測定できる。
【0016】
さらには、光ファイバー通信網を利用することで、複数の構造物について、一箇所で集中管理を行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかる斜張橋用ケーブルとして使用されるワイヤケーブル13の張力測定システムの概略を示している。この張力測定システムは、ワイヤケーブル13に組み込まれる光ファイバーセンサ3と、測定に必要な種々の制御並びに演算処理などを行うコンピュータ7等の設けられたオフィスビル20と、光ファイバーセンサ3の組み込まれた橋梁10と、オフィスビル20とを連絡する通信網としての光ファイバーケーブル2とを備えている。
【0019】
図2に示すように、橋梁10は、床版12の延びる方向に関して、一定の間隔毎に、支柱11を備えており、各支柱11毎に、床版12と支柱11とは、複数のワイヤケーブル13で接続されている。これらワイヤケーブル13は、支柱11を軸にして床版12の延びる方向について対称となるように、支柱11と床版12とを斜めに結んでいる。本張力測定システムは、このワイヤケーブル13の張力を測定の対象とするものである。
【0020】
図3は、支柱11とワイヤケーブル13の連結部分の一つを拡大して示した図である。
【0021】
支柱11の上部には、高さ方向に並べられるようにして複数の保持ブラケット14が固定されており、各ワイヤケーブル13の先端は、相互に対向されるようにして支柱11に保持される。この保持ブラケット14は、支柱11に固定される固定面15と、固定面15の前後両側から相互に斜め上方に延びて末広がり状に形成された保持面16とから構成されている。保持面16には、通し孔がそれぞれ形成されており、傾斜橋用ケーブルの先端がこの通り孔に通されて、当該保持ブラケット14に保持される。
【0022】
更に、支柱11の前面及び後面には斜め下方に向けて突出する筒状のケーブルガイド17が設けられている。ケーブルガイド17の中心には、このケーブルガイド17を軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に斜めに延びるワイヤケーブル13が通される。このケーブルガイド17は、床版12から支柱11に向けて延びているワイヤケーブル13を保持ブラケット14に向けて案内している。
【0023】
一方、ワイヤケーブル13の先端には、エンドソケット18が設けられている。このエンドソケット18は、フランジのように、ワイヤケーブル13の半径方向外側に向けて張り出しており、保持ブラケット14の通り孔に通されたワイヤケーブル13が保持ブラケット14から抜け出すことを防止するストッパとして機能する。
【0024】
このようにして設けられたワイヤケーブル13には、図4に示すように、先端部分に光ファイバーケーブル2の先端が組み込まれている。この光ファイバーケーブル2の先端部分は、光ファイバーセンサ3として形成されている。
【0025】
図5及び図6は、光ファイバーセンサ3の組み込まれたワイヤケーブル13の先端部分を模型的に拡大して示したものの一例である。
【0026】
ワイヤケーブル13は、鋼線からなる複数の素線23を相互に縒り合わせて一本のケーブルとして構成されたものである。そして、この斜張橋ケーブルを構成する素線23のうち、中央に位置してねじりのない素線23には、その端部から軸方向に延びる挿入孔25が形成されている。この挿入孔25には、光ファイバーセンサ3が挿入される。挿入された光ファイバーセンサ3は、後に説明する回析格子4を間に挟んだ軸方向の両側が挿入孔25に固着され、素線23の軸方向の伸縮に伴って、これと一体的に伸縮するよう構成されている。
【0027】
なお、光ファイバーセンサ3は、図7及び図8に示すようにしてワイヤケーブル13の先端に組み込んでも良い。この実施の形態では、光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13を構成する素線23と素線23の間に挿入されて、素線23に挟持されるようにしてワイヤケーブル13の先端に組み込まれている。この場合にも、光ファイバーセンサ3は、回析格子4を間に挟んだ軸方向の両側が素線23に固着され、素線23の軸方向の伸縮に伴い、これと一体的に伸縮するように構成されている。
【0028】
ここで、この張力測定システムで使用される光ファイバーセンサ3の原理について説明する。
【0029】
一般に、光ファイバーセンサ3には、(1)波長の変化を利用するFBG(Fiber Bragg Grating)、(2)ブリルアン散乱光の周波数利用するBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectmeter)、(3)光の干渉という性質を利用するSOFO(Surveillanced’Ouvrages par Fibres Optiques)、(4)伝送される光の、光ファイバーケーブル2の曲げ損失を利用するOSMOS(Optical Stand Monitoring System)など、様々な性質を使用したものがある。
【0030】
この張力測定システムに使用する光ファイバーセンサ3としては、FBG式光ファイバーセンサを用いることが最適であるが、これらのいずれのものを使用してもよい。
【0031】
図9は、FBG式光ファイバーセンサ3の概要を模型的に示した図である。この光ファイバーセンサ3には、光を反射させる回析格子4が形成されている。この回析格子4は、光ファイバーセンサ3の軸方向に微小な間隔dを空けて配された一対の格子40により構成されていている。
【0032】
この回析格子4を備えた光ファイバーセンサ3が軸方向に関してεだけ歪むと、これに伴い格子間隔dも変化するよう構成されている。
【0033】
かかる回析格子4は、光ファイバーケーブル2に入射された入射光の内、特定の周波数を有する入射光だけを反射させる一方で、それ以外の周波数の光をそのまま通過させる特性を備えている。
【0034】
ここで、回析格子4により反射される特定の周波数を有する入射光の波長λを次の式1で表す。なお、式1において、nはコア部の平均屈折率、dは格子間隔である。
【0035】
λ=2nd・・・・(式1)
【0036】
そして、光ファイバーセンサ3が軸方向にεだけひずんで、格子間隔dが変化すると、当該回析格子4により反射される入射光の波長は、入射光に対して反射光の波長は式2に表すように変化する。
【0037】
Δλ=λ(1−P)ε・・・・(式2)
なお、Pはポアソン比を表す。
【0038】
この光ファイバーセンサ3では、波長の変化を測定することで、光ファイバーセンサ3の取り付けられた対象物の歪、張力を測定することを可能ならしめている。なお、波長は、光ファイバーセンサ3の歪に対して直線性を示す。波長の変化量は入射光の波長にもよるが、約1.2×10-12m/μStrain程度である。
【0039】
かかるFBGが当該システムには最も適している。しかし、上述のように、BOTDR、SOFO、OSMOSを使用することができる。以下、これらの手法について、その原理を簡単に説明する。
【0040】
BOTDRとは、ブリルアン散乱光が光ファイバーの歪変化に対して直線的に周波数変化を発生させるという「歪依存性」を利用するものである。
【0041】
図10に歪依存性をイメージしたものを、図11に直線性をイメージしたものをそれぞれ図示する。図10に示すように、光ファイバーに張力が加わり、歪が発生すると、ブリルアン散乱光のスペクトル分布により周波数のピークがシフトする。また、例えば、波長λ=1.55μmの入射光の歪依存性による周波数シフトの直線性を図示すると、図11のようになる。
【0042】
このように、ブリルアン散乱光の周波数と歪との関係は、直線性を有しているため、ブリルアン散乱光の周波数のシフト量を計測することで歪測定に適用できる。
【0043】
このBOTDRは、分布型センサとして使用することができる。即ち、光ファイバーにパルス波を入射し、戻ってきた後方散乱光としてのブリルアン散乱光の戻り時間、強さ
を計測する。なお、この時間から戻ってきた散乱光データの計測位置までの距離Lは、次の式3で得られる。
【0044】
L=CT/2n・・・・(式3)
C:光の速度
T:検出するまでの時間
n:光ファイバーの屈折率
【0045】
そして、入射光の周波数を漸次変化させながら、同様の計測を実施することで、ブリルアン散乱光の周波数シフトのスペクトル分布が距離別に求められる。図12は、そのイメージを図示したものである。
【0046】
例えば、ある位置の歪値を知りたいとき、その位置までの各距離の部分の周波数分布から歪を求める。この図12に示す例では、Z1の位置から図を右斜め上に横切ったときのスペクトル分からシフト量を求めて、歪に変換する。かかる作業を各距離ごとに行い、連続した歪分布を求める。
【0047】
図中ε1、ε2の各歪値がΔLの長さごとに求められる。このΔLの長さは、cを係数、入射するパルス幅をωとすると次の式4で表すことができる。
【0048】
ΔL=cω/2n・・・・(式4)
【0049】
この分解能はΔLは、入射されたパルス光のパルス幅の両サイドから散乱光がある角度を持って伝搬する。そして、2つの散乱光が一直線上に重なり合ったときには、2つの散乱光は分離されない。よって、これら2つ(パルス幅の両サイド)を距離に換算した長さ分の中で歪値は計測される。
【0050】
次に、SOFOの原理について説明する。
【0051】
図13及び図14は、SOFO式の光ファイバーセンサを使用した場合の原理を模型的に示したものである。
【0052】
このSOFO式の光ファイバーセンサ50は、図13に示すように、2本の光ファイバー53,54が使用される。一方は測定用光ファイバー53で、他方は参照用光ファイバー54である。これら2本の光ファイバー53,54は、この光ファイバーセンサ50と接続されているカプラ56で分岐され、この光ファイバーセンサ50の軸方向に所定間隔を空けて配された一対の固定部52により平行をなすようにして固定されている。そして、これら2本の光ファイバー53,54の先端には鏡55が接続されている。固定部52間は、可動部51である。測定用光ファイバー53は、プレテンションが付与されている一方で、参照用光ファイバー54は、螺旋状に巻かれて配されている。
【0053】
このSOFO式の光ファイバーセンサ50では、可動部51に変位が生じると、測定用光ファイバー53の長さが変化する。ただし、参照用光ファイバー54の長さは不変である。
【0054】
図14は、このSOFO式の光ファイバーセンサ50とリーディングユニット60とを光ファイバーケーブル71及び中継ボックス70で接続してSOFOシステムを完成させた1例を示している。
【0055】
このSOFOシステムによれば、まず光源としてのLED64から白色光が、コネクタ68、光ファイバーケーブル71、中継ボックス70を介して各光ファイバーセンサ50へ送られる。各光ファイバーセンサ50へ送られた光は、それぞれの光ファイバーセンサ50のカプラ56により、測定用光ファイバー53と参照用光ファイバー54とに分岐される。そして、先端に設けられた鏡55に反射されて、再びカプラ56に集光され、リーディングユニットに戻される。
【0056】
この際、測定用光ファイバー53と参照用光ファイバー54との長さが異なる(元の長さの差+可動部の変位量)ので、戻された光には干渉が生じる。そこで、リーディングユニット60の内部に配されたカプラ62により、リーディングユニット60に内蔵された固定部65と可動部66に分光する。そして、固定部65と可動部66にそれぞれ設けられた鏡67で反射させてピーク干渉位置を見出す。ただし、光ファイバーセンサ50内部の2本の光ファイバー53,54の長さの違い等に関する補正をこのとき行う。
【0057】
以上のようにして、光ファイバーセンサ50の可動部51において発生した変位量を、光の干渉としてとらえ、これを測定する手法が、SOFOシステムである。なお、具体的なデータ解析を行うために、パソコン61がPD63を介してカプラ62と接続されている。また、モデム69を使用して通信手段と接続させることで、遠隔地でのデータ分析を行うこともできる。
【0058】
最後に、OSMOSの原理について説明する。
【0059】
このOSMOSは、光の曲げ損失(マイクロベンディング)という考え方を適用したセンサである。
【0060】
光の屈折について、屈折率の大きなコアIIから小さなグラッドIに光が入射する態様を考えると、図15に示す3態様が考えられる。
【0061】
Aの態様は、光A1がθAの角度で入射し、屈折角θA2で屈折する屈折光A2と、角度θAで反射する反射光A3に分かれる場合である。
【0062】
Bの態様は、光の入射角がθBというある角度になり、屈折角θB2が90度となり、光は境界面に沿って進む場合である。なお、このときの入射角θBを臨界角という。
【0063】
そして、Cの態様は、入射角θCが臨界角以上の場合である。この場合には、光は屈折することなく、全反射を起こし、すべて反射光C2となる。
【0064】
光ファイバーではCの態様のように、全反射しながら光が伝搬する。光の曲げ損失は、入射角が臨界角以下になった時に発生する。図16は、この概念を示すものである。光ファイバーに光が入射されると、光は全反射しながらコアの内部を伝搬する。そして、光がこの図16に示すように曲げ部分に到達すると、入射角が小さくなる部分が発生し、コアの外に放射する光が生じる。この損失量は、光の曲率半径Rに依存する。
【0065】
OSMOSは、この損失を測定することで、歪を測定するものである。
【0066】
本発明では、これらのいずれの方式をも使用することできるが、以下では、再び図1〜図9を参照しながらFBG式光ファイバーセンサ3を使用した場合を例に説明する。
【0067】
光ファイバーセンサ3は、上述のように、光ファイバーケーブル2の先端部が加工されたものである。当該光ファイバーセンサ3を備えた光ファイバーケーブル2は、一般の通信網として設けられ、橋梁10と、オフィスビル20とを連絡している。
【0068】
オフィスビル20には、光学部6と、この光学部6と接続されたコンピュータ7とが設けられている。光学部6は、光ファイバーケーブル2を介して光ファイバーセンサ3へ所定の波長を有する光を入射させる光源、光ファイバーセンサ3から反射された光を受光する受光部、受光部で受光された光を所定の電気信号に変換するインターフェイス等の機能を有し、当該光学部6で張力の測定を行っている。
【0069】
この光学部6と接続されたコンピュータ7は、光学部6に対して測定開始・終了等の指令を発信するコントローラとして機能すると共に、光学部6で得られた測定データを所望の形に加工したり、測定データを記録媒体に記録する等、データ処理部としても機能する。
【0070】
この光学部6では、光ファイバーケーブル2を介して光ファイバーセンサ3から送信された反射光の信号に基づき、光ファイバーセンサ3で検知した波長の変化に基づき、ワイヤケーブル13の歪を算出する。そして、算出された歪に基づき、応力、張力を算出している。
【0071】
なお、光学部6が、一定の時間毎にトリガを発生せしめ、トリガが立つ毎に測定を繰り返すようにシステム設計をしておけば、対象となるワイヤケーブル13の張力が時間の経過と共にどのように変化するのかを自動的に測定することができる。
【0072】
以上の構成を備えた、張力測定システムによれば、次の手順によりワイヤケーブル13の張力は測定される。
【0073】
まず、光学部6から光ファイバーケーブル2に光を入射させる。入射光は、この光ファイバーケーブル2を伝達して、橋梁10まで到達する。光ファイバーケーブル2の先端は、上述のように、光ファイバーセンサ3として加工されており、橋梁10のワイヤケーブル13の先端に組み込まれているので、最終的はワイヤケーブル13の先端に入射光は到達する。そして、この光ファイバーセンサ3に到達した入射光のうち、特定の周波数の入射光は、この回析格子4により反射される。
【0074】
ここで、ワイヤケーブル13は、予め一定の張力がかけられた状態で、支柱11と床版12とを接続しているので、ワイヤケーブル13は延び方向に歪が発生している。そして、光ファイバーセンサ3は、このワイヤケーブル13の歪と一体に歪むように、素線23に固着されているので、光ファイバーセンサ3も同様に延びる方向に歪んでいる。このため、回析格子4を構成する格子40の間隔dは、光ファイバーセンサ3が無負荷の状態よりも広げられている。
【0075】
かかる回析格子4により入射光が反射されると、格子間隔の変化に伴って、入射光の波長λもΔλだけ変化する。
【0076】
波長の変化した反射光は、再び、通信網としての光ファイバーケーブル2を通って、オフィスビル20に設けられた光学部6により受光される。光学部6は、受光した反射光の波長と入射光の波長とから波長の変化Δλを測定し、これに基づき歪を算出する。そして、算出された歪から、応力、張力が算出される。
【0077】
算出された張力は、光学部6に接続されたコンピュータ7により、グラフ化されたり、所定のフォーマットのデータシートに記録されるなど、所望の形式に加工される。また、算出されたデータを記録媒体に記録させて、データの保管等も行う。この際、光学部6とコンピュータ7の役割分担としては、光学部6では、単に波長の変化Δλのみを測定し、その後の処理をコンピュータ7で行うようにしても構わない。なお、データ処理及びの保管は、橋梁10に設けられた複数のワイヤケーブル13毎に行えば、どのワイヤケーブル13に異常が発生したのかを即時に特定でき、迅速な対応を採ることができる。さらには、橋梁10に設けられたすべての支柱11に対して測定を行えば、橋梁10全体を常に監視の基に置くことができる。
【0078】
以上、一箇所に架設された、橋梁10にのみ当該張力測定システムを適用した場合について説明したが、通信網としての光ファイバーケーブル2が延びている地域に架設された橋梁10であれば、一箇所のオフィスビル20で複数の橋梁10のワイヤケーブル13の測定を同時に行うことができる。
【0079】
以上、光ファイバーセンサをワイヤケーブルの素線の内部に組み込む等、ワイヤケーブルの外縁より内側の位置に光ファイバーケーブルを埋め込むようにして設けたものについて説明したが、光ファイバーケーブルをワイヤケーブルの表面部分に張り付けて設けてもよい。
【0080】
図17は、ワイヤケーブル13のエンドソケット18に、ワイヤケーブル13の軸方向に挿入孔18aを設け、この挿入孔18aから光ファイバーケーブル2を挿入させている。そして、光ファイバーケーブル2の先端に設けられている光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面と、被覆部13aとの間に配置させ、光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面に位置する1本の素線23に接着剤で接着させている。そして、外部から被覆材45で光ファイバーセンサー3を覆う。
【0081】
このように、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させても、光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13の歪を検知する。
【0082】
図18及び図19は、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させる他の実施形態を示している。
【0083】
この実施形態では、ワイヤケーブル13のエンドソケット18の近傍にて、被覆部13aの一部に切り込み部49を形成している。この切り込み部49は、被覆部13aの内部に配されたワイヤケーブル13の外表面を部分的に露出させている。光ファイバーセンサ3は、この切り込み部49においてワイヤケーブル13の外表面に位置する素線23に接着される。接着された光ファイバーセンサ3は、外側から被覆材45で覆われる。なお、切り込み部49は、予め被覆部13aに形成しておいてもよいが、現場にて被覆部13aを部分的に切り取って形成してもよい。
【0084】
この実施形態で使用される光ファイバーセンサ3は、所定の長さに短く切断された光ファイバーケーブル2の先端に接続されている。光ファイバーケーブル2の後端には接続用のコネクタ46が設けられており、通信用の光ファイバーケーブル(不図示)と、当該コネクタ46を介して接続されるよう構成されている。
【0085】
なお、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させる手法では、ワイヤケーブル13の端部付近に光ファイバーセンサ3を設ける形態には限定されず、ワイヤケーブル13の軸方向におけるいずれの位置にでも設けることができる。
【0086】
この場合、次のようにして光ファイバーセンサ3を設けるとよい。
【0087】
図20に示す実施形態では、クランプ80を用いている。このクランプ80は、円環状に形成されて、ワイヤケーブルの外周面を被覆する被覆部81と、この被覆部81を半径方向に伸縮せしめる締め込み部82とから構成されている。被覆部81は、半径方向の一部に、所定の隙間を有する軸方向に延びるスリットが形成されている。締め付け部82は、このスリットの幅と同寸の間隔に配された2枚の板材がワイヤケーブル13の半径方向外側に張り出すようにして形成されている。そして、締め付け部82を構成している各板材には、3つの締め付けボルト83がワイヤケーブル13の軸方向に並べられて取り付けられている。
【0088】
このクランプ80は、締め付けボルト83を締め付けることで、被覆部81に形成されたスリットの幅が狭められ、これにより、ワイヤケーブル13の外周面を締め付けるように構成されている。
【0089】
光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13の外表面に位置する素線に接着され、その外側がクランプ80で覆われる。光ファイバーセンサ3は、外側からクランプ80により締め付けられてワイヤケーブル13の外周面に強固に密着される。これにより剥離が防止され、確実にワイヤケーブル13の歪を検知する。
【0090】
なお、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を密着させる手段としては、図21に示すようにテーピング85を用いてもよい。
【0091】
この実施の形態においても、光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面に位置する素線に接着させている。この接着された光ファイバーセンサ3は、外側から、細長い長方形に形成された板圧の薄い鉄板48で被覆されている。そして、テーピング85がワイヤケーブル13の外周面に巻き付けられ、光ファイバーセンサ3は、鉄板47ごとテーピング85により、ワイヤケーブル13の外周面に密着される。テーピング85は、光ファイバーセンサ3が完全に隠蔽されるように、ワイヤケーブル13の軸方向について鉄板48の長さよりも長い範囲について巻き付けられる。なお、テーピング85は、一般に使用されているビニールテープ、ガムテープなどを用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態にかかる張力測定システムの概略図。
【図2】張力測定の対象となるワイヤケーブルを備えた橋梁の一例を示す橋梁の側面図。
【図3】橋梁の支柱に保持されたワイヤケーブルの端部を示す部分拡大図。
【図4】ワイヤケーブルの端部を示す図。
【図5】ワイヤケーブルの素線に組み込まれた光ファイバーセンサの態様の一例を模型的に示すワイヤケーブルの横断面図。
【図6】図5に示す光ファイバーセンサの組み込み状態を素線の側方から見た縦断面図。
【図7】図5とは別の態様で光ファイバーセンサを組み込んだ状態を模型的に示すワイヤケーブルの横断面図。
【図8】図7に示す光ファイバーセンサの組み込み状態を素線の側方から見た縦断面図。
【図9】FBG式光ファイバーセンサの原理を示す説明図。
【図10】BOTDR式ファイバーセンサにおいて、周波数のピークのシフトのイメージを示す説明図。
【図11】歪と周波数変化量の直線性を示すグラフ。
【図12】BOTDR式ファイバーセンサにおけるスペクトル分布と距離分布のイメージを示す説明図。
【図13】SOFO式光ファイバーセンサの構造を簡略化して示す図。
【図14】SOFOシステムの一例を示すブロック図。
【図15】光の屈折の態様を示す説明図。
【図16】光ファイバーの曲げ損失の概念を示す説明図
【図17】光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に接着させた場合の1実施形態にかかるエンドソケットの近傍の斜視図。
【図18】図17とは、別の態様で光ファイバーセンサを配置させた実施形態にかかるエンドソケットの近傍の斜視図。
【図19】切り込み部の拡大断面図。
【図20】クランプで光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に密着させた態様を示す図。
【図21】テーピングで光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に密着させた態様を示す図。
【符号の説明】
【0093】
2・・・・・・光ファイバーケーブル
3,50・・・光ファイバーセンサ
4・・・・・・回析格子
40・・・・・格子
6・・・・・・光学部
7・・・・・・コンピュータ
10・・・・・橋梁
13・・・・・ワイヤケーブル
23・・・・・素線
25・・・・・挿入孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を支持するワイヤケーブル、特に橋梁のワイヤケーブル並びに、このケーブルを使用した張力測定システム及び張力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤケーブルである部材を支持する構造物に関し、このワイヤケーブルの張力を測定する手法として、従来から様々な手法が試みられてきた。例えば、ワイヤケーブルに歪ゲージを貼り付け、歪ゲージの出力に基づいてワイヤケーブルの張力を求める手法は、その代用的なものである。最近では、振動法と呼ばれる手法で張力の測定を行うことが主流である。
【0003】
この振動法とは、例えば、特許文献1に示されているように、ワイヤケーブルに所定の振動を作用させ、弦の振動に関する微分方程式を利用して、ワイヤケーブルの固有振動数から張力を求める方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−255222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、測定の対象が橋梁のワイヤケーブルである場合、交通事情の関係上、張力を測定するチャンスが限られてしまう。このため、歪ゲージを使用する手法では、橋梁の架設時を除けば、橋梁の一斉点検時等、ごく僅かチャンスしかない。
【0006】
また、振動法は、上述のように、ケーブルの固有振動数から間接的に張力を求める手法であるため、振動法で求めた張力と実際の張力と間にどうしても誤差が出てしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、正確な張力を所望の時に得られるワイヤケーブル、並びに張力測定システム及び張力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の課題を解決するために、次の解決手段を採用した。
【0009】
第1に採用したのは、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルであって、このワイヤケーブルの軸方向の歪を検出する歪検出手段が、当該ワイヤケーブルに組み込まれ、前記歪検出手段が光ファイバーからなる光ファイバーセンサであり、この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知するワイヤケーブルである。
【0010】
かかるワイヤケーブルに関し、本発明では、前記素線の中の1本に、その軸方向に沿って形成された挿入孔を形成し、前記光ファイバーセンサを前記挿入孔に挿入させて、その軸方向が前記素線の伸縮と共に伸縮されるように構成した。
【0011】
第2に採用したのは、構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定する張力測定システムであって、前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記ワイヤケーブルの歪を検出する歪検出手段と、前記歪検出手段の検出に基づいて前記ワイヤケーブルに作用する張力を算出する張力演算手段と、前記歪検出手段の検出を前記歪検出手段から前記張力演算手段まで送信する信号通信手段とを備え、前記信号通信手段が、光ファイバーケーブルであり、前記歪検出手段が、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサであり、この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形によって、この光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知して、前記張力演算手段では、前記光ファイバーセンサの検知内容に基づいて、前記ワイヤケーブルの張力を算出する張力測定システムである。
【0012】
そして、第3に、構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定するにあたり、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサを前記ワイヤケーブルに組み込み、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って、前記光ファイバーセンサを変形せしめ、この変形に伴って発生する、前記光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知し、検知された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉に基づいて、張力演算手段により前記ワイヤケーブルの張力を算出する張力測定方法を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤケーブルの張力を測定する場合に、ワイヤケーブルに生ずる歪から直接張力を測定できる。このため、測定結果と、実際にワイヤケーブルに発生している張力との間に誤差が生じることを極力抑えることが可能となり、正確な値を測定できる。
【0014】
また、歪測定手段として光ファイバーセンサを使用するため、既に通信網として設けられている光ファイバーケーブルを通信手段として利用することができる。これにより、測定の対象となる構造物とは遠隔地にある、例えば、測定機器を設けたベース地やオフィスビルからでも測定することが可能となる。
【0015】
特に、測定の対象が橋梁の支柱と床版とを接続するワイヤケーブルである場合、交通の関係上、現場での測定が制限されてしまう。しかし、本発明によれば、遠隔地から測定することができるため、交通に左右されず、いつでも所望の時にワイヤケーブルの張力を測定できる。
【0016】
さらには、光ファイバー通信網を利用することで、複数の構造物について、一箇所で集中管理を行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかる斜張橋用ケーブルとして使用されるワイヤケーブル13の張力測定システムの概略を示している。この張力測定システムは、ワイヤケーブル13に組み込まれる光ファイバーセンサ3と、測定に必要な種々の制御並びに演算処理などを行うコンピュータ7等の設けられたオフィスビル20と、光ファイバーセンサ3の組み込まれた橋梁10と、オフィスビル20とを連絡する通信網としての光ファイバーケーブル2とを備えている。
【0019】
図2に示すように、橋梁10は、床版12の延びる方向に関して、一定の間隔毎に、支柱11を備えており、各支柱11毎に、床版12と支柱11とは、複数のワイヤケーブル13で接続されている。これらワイヤケーブル13は、支柱11を軸にして床版12の延びる方向について対称となるように、支柱11と床版12とを斜めに結んでいる。本張力測定システムは、このワイヤケーブル13の張力を測定の対象とするものである。
【0020】
図3は、支柱11とワイヤケーブル13の連結部分の一つを拡大して示した図である。
【0021】
支柱11の上部には、高さ方向に並べられるようにして複数の保持ブラケット14が固定されており、各ワイヤケーブル13の先端は、相互に対向されるようにして支柱11に保持される。この保持ブラケット14は、支柱11に固定される固定面15と、固定面15の前後両側から相互に斜め上方に延びて末広がり状に形成された保持面16とから構成されている。保持面16には、通し孔がそれぞれ形成されており、傾斜橋用ケーブルの先端がこの通り孔に通されて、当該保持ブラケット14に保持される。
【0022】
更に、支柱11の前面及び後面には斜め下方に向けて突出する筒状のケーブルガイド17が設けられている。ケーブルガイド17の中心には、このケーブルガイド17を軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に斜めに延びるワイヤケーブル13が通される。このケーブルガイド17は、床版12から支柱11に向けて延びているワイヤケーブル13を保持ブラケット14に向けて案内している。
【0023】
一方、ワイヤケーブル13の先端には、エンドソケット18が設けられている。このエンドソケット18は、フランジのように、ワイヤケーブル13の半径方向外側に向けて張り出しており、保持ブラケット14の通り孔に通されたワイヤケーブル13が保持ブラケット14から抜け出すことを防止するストッパとして機能する。
【0024】
このようにして設けられたワイヤケーブル13には、図4に示すように、先端部分に光ファイバーケーブル2の先端が組み込まれている。この光ファイバーケーブル2の先端部分は、光ファイバーセンサ3として形成されている。
【0025】
図5及び図6は、光ファイバーセンサ3の組み込まれたワイヤケーブル13の先端部分を模型的に拡大して示したものの一例である。
【0026】
ワイヤケーブル13は、鋼線からなる複数の素線23を相互に縒り合わせて一本のケーブルとして構成されたものである。そして、この斜張橋ケーブルを構成する素線23のうち、中央に位置してねじりのない素線23には、その端部から軸方向に延びる挿入孔25が形成されている。この挿入孔25には、光ファイバーセンサ3が挿入される。挿入された光ファイバーセンサ3は、後に説明する回析格子4を間に挟んだ軸方向の両側が挿入孔25に固着され、素線23の軸方向の伸縮に伴って、これと一体的に伸縮するよう構成されている。
【0027】
なお、光ファイバーセンサ3は、図7及び図8に示すようにしてワイヤケーブル13の先端に組み込んでも良い。この実施の形態では、光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13を構成する素線23と素線23の間に挿入されて、素線23に挟持されるようにしてワイヤケーブル13の先端に組み込まれている。この場合にも、光ファイバーセンサ3は、回析格子4を間に挟んだ軸方向の両側が素線23に固着され、素線23の軸方向の伸縮に伴い、これと一体的に伸縮するように構成されている。
【0028】
ここで、この張力測定システムで使用される光ファイバーセンサ3の原理について説明する。
【0029】
一般に、光ファイバーセンサ3には、(1)波長の変化を利用するFBG(Fiber Bragg Grating)、(2)ブリルアン散乱光の周波数利用するBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectmeter)、(3)光の干渉という性質を利用するSOFO(Surveillanced’Ouvrages par Fibres Optiques)、(4)伝送される光の、光ファイバーケーブル2の曲げ損失を利用するOSMOS(Optical Stand Monitoring System)など、様々な性質を使用したものがある。
【0030】
この張力測定システムに使用する光ファイバーセンサ3としては、FBG式光ファイバーセンサを用いることが最適であるが、これらのいずれのものを使用してもよい。
【0031】
図9は、FBG式光ファイバーセンサ3の概要を模型的に示した図である。この光ファイバーセンサ3には、光を反射させる回析格子4が形成されている。この回析格子4は、光ファイバーセンサ3の軸方向に微小な間隔dを空けて配された一対の格子40により構成されていている。
【0032】
この回析格子4を備えた光ファイバーセンサ3が軸方向に関してεだけ歪むと、これに伴い格子間隔dも変化するよう構成されている。
【0033】
かかる回析格子4は、光ファイバーケーブル2に入射された入射光の内、特定の周波数を有する入射光だけを反射させる一方で、それ以外の周波数の光をそのまま通過させる特性を備えている。
【0034】
ここで、回析格子4により反射される特定の周波数を有する入射光の波長λを次の式1で表す。なお、式1において、nはコア部の平均屈折率、dは格子間隔である。
【0035】
λ=2nd・・・・(式1)
【0036】
そして、光ファイバーセンサ3が軸方向にεだけひずんで、格子間隔dが変化すると、当該回析格子4により反射される入射光の波長は、入射光に対して反射光の波長は式2に表すように変化する。
【0037】
Δλ=λ(1−P)ε・・・・(式2)
なお、Pはポアソン比を表す。
【0038】
この光ファイバーセンサ3では、波長の変化を測定することで、光ファイバーセンサ3の取り付けられた対象物の歪、張力を測定することを可能ならしめている。なお、波長は、光ファイバーセンサ3の歪に対して直線性を示す。波長の変化量は入射光の波長にもよるが、約1.2×10-12m/μStrain程度である。
【0039】
かかるFBGが当該システムには最も適している。しかし、上述のように、BOTDR、SOFO、OSMOSを使用することができる。以下、これらの手法について、その原理を簡単に説明する。
【0040】
BOTDRとは、ブリルアン散乱光が光ファイバーの歪変化に対して直線的に周波数変化を発生させるという「歪依存性」を利用するものである。
【0041】
図10に歪依存性をイメージしたものを、図11に直線性をイメージしたものをそれぞれ図示する。図10に示すように、光ファイバーに張力が加わり、歪が発生すると、ブリルアン散乱光のスペクトル分布により周波数のピークがシフトする。また、例えば、波長λ=1.55μmの入射光の歪依存性による周波数シフトの直線性を図示すると、図11のようになる。
【0042】
このように、ブリルアン散乱光の周波数と歪との関係は、直線性を有しているため、ブリルアン散乱光の周波数のシフト量を計測することで歪測定に適用できる。
【0043】
このBOTDRは、分布型センサとして使用することができる。即ち、光ファイバーにパルス波を入射し、戻ってきた後方散乱光としてのブリルアン散乱光の戻り時間、強さ
を計測する。なお、この時間から戻ってきた散乱光データの計測位置までの距離Lは、次の式3で得られる。
【0044】
L=CT/2n・・・・(式3)
C:光の速度
T:検出するまでの時間
n:光ファイバーの屈折率
【0045】
そして、入射光の周波数を漸次変化させながら、同様の計測を実施することで、ブリルアン散乱光の周波数シフトのスペクトル分布が距離別に求められる。図12は、そのイメージを図示したものである。
【0046】
例えば、ある位置の歪値を知りたいとき、その位置までの各距離の部分の周波数分布から歪を求める。この図12に示す例では、Z1の位置から図を右斜め上に横切ったときのスペクトル分からシフト量を求めて、歪に変換する。かかる作業を各距離ごとに行い、連続した歪分布を求める。
【0047】
図中ε1、ε2の各歪値がΔLの長さごとに求められる。このΔLの長さは、cを係数、入射するパルス幅をωとすると次の式4で表すことができる。
【0048】
ΔL=cω/2n・・・・(式4)
【0049】
この分解能はΔLは、入射されたパルス光のパルス幅の両サイドから散乱光がある角度を持って伝搬する。そして、2つの散乱光が一直線上に重なり合ったときには、2つの散乱光は分離されない。よって、これら2つ(パルス幅の両サイド)を距離に換算した長さ分の中で歪値は計測される。
【0050】
次に、SOFOの原理について説明する。
【0051】
図13及び図14は、SOFO式の光ファイバーセンサを使用した場合の原理を模型的に示したものである。
【0052】
このSOFO式の光ファイバーセンサ50は、図13に示すように、2本の光ファイバー53,54が使用される。一方は測定用光ファイバー53で、他方は参照用光ファイバー54である。これら2本の光ファイバー53,54は、この光ファイバーセンサ50と接続されているカプラ56で分岐され、この光ファイバーセンサ50の軸方向に所定間隔を空けて配された一対の固定部52により平行をなすようにして固定されている。そして、これら2本の光ファイバー53,54の先端には鏡55が接続されている。固定部52間は、可動部51である。測定用光ファイバー53は、プレテンションが付与されている一方で、参照用光ファイバー54は、螺旋状に巻かれて配されている。
【0053】
このSOFO式の光ファイバーセンサ50では、可動部51に変位が生じると、測定用光ファイバー53の長さが変化する。ただし、参照用光ファイバー54の長さは不変である。
【0054】
図14は、このSOFO式の光ファイバーセンサ50とリーディングユニット60とを光ファイバーケーブル71及び中継ボックス70で接続してSOFOシステムを完成させた1例を示している。
【0055】
このSOFOシステムによれば、まず光源としてのLED64から白色光が、コネクタ68、光ファイバーケーブル71、中継ボックス70を介して各光ファイバーセンサ50へ送られる。各光ファイバーセンサ50へ送られた光は、それぞれの光ファイバーセンサ50のカプラ56により、測定用光ファイバー53と参照用光ファイバー54とに分岐される。そして、先端に設けられた鏡55に反射されて、再びカプラ56に集光され、リーディングユニットに戻される。
【0056】
この際、測定用光ファイバー53と参照用光ファイバー54との長さが異なる(元の長さの差+可動部の変位量)ので、戻された光には干渉が生じる。そこで、リーディングユニット60の内部に配されたカプラ62により、リーディングユニット60に内蔵された固定部65と可動部66に分光する。そして、固定部65と可動部66にそれぞれ設けられた鏡67で反射させてピーク干渉位置を見出す。ただし、光ファイバーセンサ50内部の2本の光ファイバー53,54の長さの違い等に関する補正をこのとき行う。
【0057】
以上のようにして、光ファイバーセンサ50の可動部51において発生した変位量を、光の干渉としてとらえ、これを測定する手法が、SOFOシステムである。なお、具体的なデータ解析を行うために、パソコン61がPD63を介してカプラ62と接続されている。また、モデム69を使用して通信手段と接続させることで、遠隔地でのデータ分析を行うこともできる。
【0058】
最後に、OSMOSの原理について説明する。
【0059】
このOSMOSは、光の曲げ損失(マイクロベンディング)という考え方を適用したセンサである。
【0060】
光の屈折について、屈折率の大きなコアIIから小さなグラッドIに光が入射する態様を考えると、図15に示す3態様が考えられる。
【0061】
Aの態様は、光A1がθAの角度で入射し、屈折角θA2で屈折する屈折光A2と、角度θAで反射する反射光A3に分かれる場合である。
【0062】
Bの態様は、光の入射角がθBというある角度になり、屈折角θB2が90度となり、光は境界面に沿って進む場合である。なお、このときの入射角θBを臨界角という。
【0063】
そして、Cの態様は、入射角θCが臨界角以上の場合である。この場合には、光は屈折することなく、全反射を起こし、すべて反射光C2となる。
【0064】
光ファイバーではCの態様のように、全反射しながら光が伝搬する。光の曲げ損失は、入射角が臨界角以下になった時に発生する。図16は、この概念を示すものである。光ファイバーに光が入射されると、光は全反射しながらコアの内部を伝搬する。そして、光がこの図16に示すように曲げ部分に到達すると、入射角が小さくなる部分が発生し、コアの外に放射する光が生じる。この損失量は、光の曲率半径Rに依存する。
【0065】
OSMOSは、この損失を測定することで、歪を測定するものである。
【0066】
本発明では、これらのいずれの方式をも使用することできるが、以下では、再び図1〜図9を参照しながらFBG式光ファイバーセンサ3を使用した場合を例に説明する。
【0067】
光ファイバーセンサ3は、上述のように、光ファイバーケーブル2の先端部が加工されたものである。当該光ファイバーセンサ3を備えた光ファイバーケーブル2は、一般の通信網として設けられ、橋梁10と、オフィスビル20とを連絡している。
【0068】
オフィスビル20には、光学部6と、この光学部6と接続されたコンピュータ7とが設けられている。光学部6は、光ファイバーケーブル2を介して光ファイバーセンサ3へ所定の波長を有する光を入射させる光源、光ファイバーセンサ3から反射された光を受光する受光部、受光部で受光された光を所定の電気信号に変換するインターフェイス等の機能を有し、当該光学部6で張力の測定を行っている。
【0069】
この光学部6と接続されたコンピュータ7は、光学部6に対して測定開始・終了等の指令を発信するコントローラとして機能すると共に、光学部6で得られた測定データを所望の形に加工したり、測定データを記録媒体に記録する等、データ処理部としても機能する。
【0070】
この光学部6では、光ファイバーケーブル2を介して光ファイバーセンサ3から送信された反射光の信号に基づき、光ファイバーセンサ3で検知した波長の変化に基づき、ワイヤケーブル13の歪を算出する。そして、算出された歪に基づき、応力、張力を算出している。
【0071】
なお、光学部6が、一定の時間毎にトリガを発生せしめ、トリガが立つ毎に測定を繰り返すようにシステム設計をしておけば、対象となるワイヤケーブル13の張力が時間の経過と共にどのように変化するのかを自動的に測定することができる。
【0072】
以上の構成を備えた、張力測定システムによれば、次の手順によりワイヤケーブル13の張力は測定される。
【0073】
まず、光学部6から光ファイバーケーブル2に光を入射させる。入射光は、この光ファイバーケーブル2を伝達して、橋梁10まで到達する。光ファイバーケーブル2の先端は、上述のように、光ファイバーセンサ3として加工されており、橋梁10のワイヤケーブル13の先端に組み込まれているので、最終的はワイヤケーブル13の先端に入射光は到達する。そして、この光ファイバーセンサ3に到達した入射光のうち、特定の周波数の入射光は、この回析格子4により反射される。
【0074】
ここで、ワイヤケーブル13は、予め一定の張力がかけられた状態で、支柱11と床版12とを接続しているので、ワイヤケーブル13は延び方向に歪が発生している。そして、光ファイバーセンサ3は、このワイヤケーブル13の歪と一体に歪むように、素線23に固着されているので、光ファイバーセンサ3も同様に延びる方向に歪んでいる。このため、回析格子4を構成する格子40の間隔dは、光ファイバーセンサ3が無負荷の状態よりも広げられている。
【0075】
かかる回析格子4により入射光が反射されると、格子間隔の変化に伴って、入射光の波長λもΔλだけ変化する。
【0076】
波長の変化した反射光は、再び、通信網としての光ファイバーケーブル2を通って、オフィスビル20に設けられた光学部6により受光される。光学部6は、受光した反射光の波長と入射光の波長とから波長の変化Δλを測定し、これに基づき歪を算出する。そして、算出された歪から、応力、張力が算出される。
【0077】
算出された張力は、光学部6に接続されたコンピュータ7により、グラフ化されたり、所定のフォーマットのデータシートに記録されるなど、所望の形式に加工される。また、算出されたデータを記録媒体に記録させて、データの保管等も行う。この際、光学部6とコンピュータ7の役割分担としては、光学部6では、単に波長の変化Δλのみを測定し、その後の処理をコンピュータ7で行うようにしても構わない。なお、データ処理及びの保管は、橋梁10に設けられた複数のワイヤケーブル13毎に行えば、どのワイヤケーブル13に異常が発生したのかを即時に特定でき、迅速な対応を採ることができる。さらには、橋梁10に設けられたすべての支柱11に対して測定を行えば、橋梁10全体を常に監視の基に置くことができる。
【0078】
以上、一箇所に架設された、橋梁10にのみ当該張力測定システムを適用した場合について説明したが、通信網としての光ファイバーケーブル2が延びている地域に架設された橋梁10であれば、一箇所のオフィスビル20で複数の橋梁10のワイヤケーブル13の測定を同時に行うことができる。
【0079】
以上、光ファイバーセンサをワイヤケーブルの素線の内部に組み込む等、ワイヤケーブルの外縁より内側の位置に光ファイバーケーブルを埋め込むようにして設けたものについて説明したが、光ファイバーケーブルをワイヤケーブルの表面部分に張り付けて設けてもよい。
【0080】
図17は、ワイヤケーブル13のエンドソケット18に、ワイヤケーブル13の軸方向に挿入孔18aを設け、この挿入孔18aから光ファイバーケーブル2を挿入させている。そして、光ファイバーケーブル2の先端に設けられている光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面と、被覆部13aとの間に配置させ、光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面に位置する1本の素線23に接着剤で接着させている。そして、外部から被覆材45で光ファイバーセンサー3を覆う。
【0081】
このように、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させても、光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13の歪を検知する。
【0082】
図18及び図19は、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させる他の実施形態を示している。
【0083】
この実施形態では、ワイヤケーブル13のエンドソケット18の近傍にて、被覆部13aの一部に切り込み部49を形成している。この切り込み部49は、被覆部13aの内部に配されたワイヤケーブル13の外表面を部分的に露出させている。光ファイバーセンサ3は、この切り込み部49においてワイヤケーブル13の外表面に位置する素線23に接着される。接着された光ファイバーセンサ3は、外側から被覆材45で覆われる。なお、切り込み部49は、予め被覆部13aに形成しておいてもよいが、現場にて被覆部13aを部分的に切り取って形成してもよい。
【0084】
この実施形態で使用される光ファイバーセンサ3は、所定の長さに短く切断された光ファイバーケーブル2の先端に接続されている。光ファイバーケーブル2の後端には接続用のコネクタ46が設けられており、通信用の光ファイバーケーブル(不図示)と、当該コネクタ46を介して接続されるよう構成されている。
【0085】
なお、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を接着させる手法では、ワイヤケーブル13の端部付近に光ファイバーセンサ3を設ける形態には限定されず、ワイヤケーブル13の軸方向におけるいずれの位置にでも設けることができる。
【0086】
この場合、次のようにして光ファイバーセンサ3を設けるとよい。
【0087】
図20に示す実施形態では、クランプ80を用いている。このクランプ80は、円環状に形成されて、ワイヤケーブルの外周面を被覆する被覆部81と、この被覆部81を半径方向に伸縮せしめる締め込み部82とから構成されている。被覆部81は、半径方向の一部に、所定の隙間を有する軸方向に延びるスリットが形成されている。締め付け部82は、このスリットの幅と同寸の間隔に配された2枚の板材がワイヤケーブル13の半径方向外側に張り出すようにして形成されている。そして、締め付け部82を構成している各板材には、3つの締め付けボルト83がワイヤケーブル13の軸方向に並べられて取り付けられている。
【0088】
このクランプ80は、締め付けボルト83を締め付けることで、被覆部81に形成されたスリットの幅が狭められ、これにより、ワイヤケーブル13の外周面を締め付けるように構成されている。
【0089】
光ファイバーセンサ3はワイヤケーブル13の外表面に位置する素線に接着され、その外側がクランプ80で覆われる。光ファイバーセンサ3は、外側からクランプ80により締め付けられてワイヤケーブル13の外周面に強固に密着される。これにより剥離が防止され、確実にワイヤケーブル13の歪を検知する。
【0090】
なお、ワイヤケーブル13の外表面に光ファイバーセンサ3を密着させる手段としては、図21に示すようにテーピング85を用いてもよい。
【0091】
この実施の形態においても、光ファイバーセンサ3をワイヤケーブル13の外表面に位置する素線に接着させている。この接着された光ファイバーセンサ3は、外側から、細長い長方形に形成された板圧の薄い鉄板48で被覆されている。そして、テーピング85がワイヤケーブル13の外周面に巻き付けられ、光ファイバーセンサ3は、鉄板47ごとテーピング85により、ワイヤケーブル13の外周面に密着される。テーピング85は、光ファイバーセンサ3が完全に隠蔽されるように、ワイヤケーブル13の軸方向について鉄板48の長さよりも長い範囲について巻き付けられる。なお、テーピング85は、一般に使用されているビニールテープ、ガムテープなどを用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態にかかる張力測定システムの概略図。
【図2】張力測定の対象となるワイヤケーブルを備えた橋梁の一例を示す橋梁の側面図。
【図3】橋梁の支柱に保持されたワイヤケーブルの端部を示す部分拡大図。
【図4】ワイヤケーブルの端部を示す図。
【図5】ワイヤケーブルの素線に組み込まれた光ファイバーセンサの態様の一例を模型的に示すワイヤケーブルの横断面図。
【図6】図5に示す光ファイバーセンサの組み込み状態を素線の側方から見た縦断面図。
【図7】図5とは別の態様で光ファイバーセンサを組み込んだ状態を模型的に示すワイヤケーブルの横断面図。
【図8】図7に示す光ファイバーセンサの組み込み状態を素線の側方から見た縦断面図。
【図9】FBG式光ファイバーセンサの原理を示す説明図。
【図10】BOTDR式ファイバーセンサにおいて、周波数のピークのシフトのイメージを示す説明図。
【図11】歪と周波数変化量の直線性を示すグラフ。
【図12】BOTDR式ファイバーセンサにおけるスペクトル分布と距離分布のイメージを示す説明図。
【図13】SOFO式光ファイバーセンサの構造を簡略化して示す図。
【図14】SOFOシステムの一例を示すブロック図。
【図15】光の屈折の態様を示す説明図。
【図16】光ファイバーの曲げ損失の概念を示す説明図
【図17】光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に接着させた場合の1実施形態にかかるエンドソケットの近傍の斜視図。
【図18】図17とは、別の態様で光ファイバーセンサを配置させた実施形態にかかるエンドソケットの近傍の斜視図。
【図19】切り込み部の拡大断面図。
【図20】クランプで光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に密着させた態様を示す図。
【図21】テーピングで光ファイバーセンサをワイヤケーブルの外表面に密着させた態様を示す図。
【符号の説明】
【0093】
2・・・・・・光ファイバーケーブル
3,50・・・光ファイバーセンサ
4・・・・・・回析格子
40・・・・・格子
6・・・・・・光学部
7・・・・・・コンピュータ
10・・・・・橋梁
13・・・・・ワイヤケーブル
23・・・・・素線
25・・・・・挿入孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルであって、
このワイヤケーブルの軸方向の歪を検出する歪検出手段が、当該ワイヤケーブルに組み込まれ、
前記歪検出手段が光ファイバーからなる光ファイバーセンサであり、
この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知することを特徴とするワイヤケーブル。
【請求項2】
前記素線の中の1本には、その軸方向に沿って形成された挿入孔が形成され、前記光ファイバーセンサが前記挿入孔に挿入されて、その軸方向が前記素線の伸縮と共に伸縮することを特徴とする請求項1に記載のワイヤケーブル。
【請求項3】
構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定する張力測定システムであって、
前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記ワイヤケーブルの歪を検出する歪検出手段と、
前記歪検出手段の検出に基づいて前記ワイヤケーブルに作用する張力を算出する張力演算手段と、
前記歪検出手段の検出を前記歪検出手段から前記張力演算手段まで送信する信号通信手段と、を備え、
前記信号通信手段が、光ファイバーケーブルであり、
前記歪検出手段が、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサであり、
この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形によって、この光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知して、
前記張力演算手段では、前記光ファイバーセンサの検知内容に基づいて、前記ワイヤケーブルの張力を算出することを特徴とする張力測定システム。
【請求項4】
構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定するにあたり、
光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサを前記ワイヤケーブルに組み込み、
前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って、前記光ファイバーセンサを変形せしめ、この変形に伴って発生する、前記光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知し、
検知された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉に基づいて、張力演算手段により前記ワイヤケーブルの張力を算出することを特徴とする張力測定方法。
【請求項1】
複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルであって、
このワイヤケーブルの軸方向の歪を検出する歪検出手段が、当該ワイヤケーブルに組み込まれ、
前記歪検出手段が光ファイバーからなる光ファイバーセンサであり、
この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形により、入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知することを特徴とするワイヤケーブル。
【請求項2】
前記素線の中の1本には、その軸方向に沿って形成された挿入孔が形成され、前記光ファイバーセンサが前記挿入孔に挿入されて、その軸方向が前記素線の伸縮と共に伸縮することを特徴とする請求項1に記載のワイヤケーブル。
【請求項3】
構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定する張力測定システムであって、
前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記ワイヤケーブルの歪を検出する歪検出手段と、
前記歪検出手段の検出に基づいて前記ワイヤケーブルに作用する張力を算出する張力演算手段と、
前記歪検出手段の検出を前記歪検出手段から前記張力演算手段まで送信する信号通信手段と、を備え、
前記信号通信手段が、光ファイバーケーブルであり、
前記歪検出手段が、光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサであり、
この光ファイバーセンサが、前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って変形するよう前記ワイヤケーブルに組み込まれ、前記光ファイバーセンサの変形によって、この光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知して、
前記張力演算手段では、前記光ファイバーセンサの検知内容に基づいて、前記ワイヤケーブルの張力を算出することを特徴とする張力測定システム。
【請求項4】
構造物を構成する部材を一定の姿勢に支持し、複数の素線を相互に縒り合わせて形成されたワイヤケーブルの張力を測定するにあたり、
光ファイバケーブルの一部を利用して形成された光ファイバーセンサを前記ワイヤケーブルに組み込み、
前記ワイヤケーブルの伸縮に伴って、前記光ファイバーセンサを変形せしめ、この変形に伴って発生する、前記光ファイバーセンサに入射された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉を検知し、
検知された光の周波数の変化、もしくは光の反射、屈折又は干渉に基づいて、張力演算手段により前記ワイヤケーブルの張力を算出することを特徴とする張力測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−250647(P2006−250647A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66128(P2005−66128)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【出願人】(596100720)テクニカルリンク株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【出願人】(596100720)テクニカルリンク株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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