説明

ワイヤハーネスの配索構造

【課題】複数のシールドパイプと1つのシールド編組チューブとを少ない作業工数、スリムな接続構造で電気接続できる。
【解決手段】各シールドパイプとシールド編組チューブとの電気接続は、筒部の先端に端子片を突設したシールド端子を各シールドパイプに筒部を外嵌して加締め固定すると共に端子片を突出させ、各シールド端子の端子片を導電性金属材からなるバックアップリングの外周に間隔をあけて係止し、外周にシールド端子を取り付けた前記バックアップリングにシールド編組チューブの先端部分を被せ、シールド編組チューブの外周にカシメリングを外嵌し、バックアップリングとカシメリングの間に前記シールド端子の端子片とシールド編組チューブの先端部分を挟んでカシメリングを加締め固定し電気接続をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネスの配索構造に関し、詳しくは、ハイブリッド自動車または電気自動車に配索されるワイヤハーネスにおいて、複数の電線を電線毎に挿通する複数のシールドパイプと、前記シールドパイプから引き出された電線を集束して挿通する1つのシールド編組チューブとを電気接続するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車に配索される電力ケーブルの配線構造として、特開2004−224156号公報(特許文献1)で図3(A)、(B)に示す構造が提案されている。該構造は、リア側に搭載されたインバータ100と接続する3本の電力ケーブル(高圧ケーブル)102U、102V、102Wをそれぞれ金属製のシールドパイプ(保護パイプ)110に通してフロア下方に前方へと配線してフロント側のエンジンルーム内に引き込み、エンジンルーム内に搭載されたモータ101と接続している。エンジンルーム内では前記3本の電力ケーブル102U、102V、102Wをまとめて可撓性を有する1つのシールドチューブ(保護チューブ)120に通している。
【0003】
前記のように、電力ケーブル102U、102V、102Wをフロア下方の配線領域では剛直なシールドパイプ110にそれぞれ通し、エンジンルーム内の配線領域では可撓性を有する1つのシールドチューブ120に通すことで、電力ケーブル102U、102V、102Wのフロア下方での配線を可能とし、フロア上部スペースを有効利用できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記構造において高いシールド機能を保つためには、前記複数のシールドパイプ110をシールドチューブ120に確実に電気接続することが重要である。しかし、シールドチューブ120として金属線をメッシュ状に編成したシールド編組チューブを用いた場合、図4に示すように、各シールドパイプ110の先端にそれぞれシールドチューブ120を被せてカシメリング130を用いて固定する必要がある。このように複数のシールドパイプ110にそれぞれシールドチューブ120をカシメリング130を用いて連結すると、接続部全体の径が大となり、車両に配索しにくくなり、さらに、ワイヤハーネスの重量増加につながる問題がある。
【0006】
本発明は、複数の電線を電線毎に挿通する複数のシールドパイプと、前記シールドパイプから引き出された電線を集束して挿通する1つのシールド編組チューブとを少ない作業工数かつスリムな接続構造で電気接続できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ハイブリッド自動車または電気自動車に配索するワイヤハーネスの配索構造であって、
複数本の電線を電線毎に金属パイプからなるシールドパイプに通し、これら複数本のシールドパイプを近接して平行配置している第一領域と、
前記シールドパイプから引き出された複数本の電線を、金属線をメッシュ状に編成して形成した1つのシールド編組チューブ内に挿通する第二領域とを設け、
前記第一領域の各シールドパイプと第二領域のシールド編組チューブとの電気接続は、筒部の先端に端子片を突設したシールド端子を前記各シールドパイプに前記筒部を外嵌して加締め固定すると共に前記端子片を突出させ、
前記各シールド端子の端子片を円環状の導電性金属材からなるバックアップリングの外周に間隔をあけて係止して接続し、
外周にシールド端子を取り付けた前記バックアップリングに前記シールド編組チューブの先端部分を被せ、
前記シールド編組チューブの外周にカシメリングを外嵌し、前記バックアップリングとカシメリングの間に前記シールド端子の端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を
挟んで前記カシメリングを加締め固定し前記電気接続をしているワイヤハーネスの配索構造を提供している。
【0008】
前記のように、シールド端子の筒部を第一領域の各シールドパイプに外嵌、加締め固定し、該シールド端子の筒部から突出させた端子片をバックアップリングの外周に間隔をあけて係止するだけで、前記シールド端子を固定した各シールドパイプと前記バックアップリングとの電気接続が容易に行える。
また、前記シールド端子の端子片が係止されたバックアップリングに第二領域のシールド編組チューブを被せてその外周にカシメリングを外嵌し、前記バックアップリングと前記カシメリングとの間に前記端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を挟んで加締め固定するだけで、前記シールド編組チューブを均一なカシメ力で前記バックアップリングに密着させて電気接続することができる。また、前記各シールド端子の端子片と前記バックアップリングとの密着性も高めて確実な電気接続ができる。
よって、前記構成によれば、前記バックアップリングを介して、第一領域の複数のシールドパイプと第二領域の一つのシールド編組チューブとの電気接続を簡単な作業工程で容易に行うことができる。また、本発明では、各シールドパイプの先端部分にシールド編組チューブの先端部分を直接被せて電気接続するのではなく、前記バックップリングと前記カシメリングとの間に前記シールド端子の端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を挟み込むだけのスリムな接続構造であるため、車両への配索も容易でワイヤハーネスの重量増加も抑制できる。
【0009】
前記シールド端子の筒部先端に突出させた端子片には、前記バックアップリングとの接点を確実に設けるために、凸状のビードを前記バックアップリングとの接触面側に突出させておくことが好ましい。また、該端子片の曲率半径Rを前記バックアップリングの曲率半径Rより小さく形成して、前記バックアップリングとの接点を確保することも好ましい。これにより、前記端子片とバックアップリングとの確実な電気接続が可能となる。
また、前記バックアップリングの外周面には、前記シールド端子の端子片を安定して係止させる係止凹部を間隔をあけて設けておくことが好ましい。
【0010】
前記バックアップリングは例えばアルミニウム系金属や銅系金属や鉄(めっき品)で形成し、前記シールド端子は銅系金属で形成していることが好ましい。また、前記カシメリングはアルミニウム系金属やステンレスや鉄で形成していることが好ましい。
さらに、前記シールド編組チューブは例えば銅系金属線を編成したものが好ましく、前記シールドパイプはアルミニウム系金属から形成していることが好ましい。
【0011】
前記第一領域は車両フロア下方の配線領域であり、前記第二領域はエンジンルーム内の配線領域であることが好ましい。
【0012】
車両フロア下方は略直線状に配線できる領域であるため、バッテリやインバータなどのリア側の機器に接続された複数本の電線を電線毎にシールドパイプに挿通して平行配管する第一領域とすることで車両スペースを有効利用することができる。一方、エンジンルーム内は屈曲させて配線しなければならない箇所があるため、前記シールドパイプから引出した複数本の電線を集束させて可撓性のあるシールド編組チューブ内に挿通する第二領域とすることが好ましい。シールド編組チューブ内に挿通される複数の電線はエンジンルーム内のインバータやモーター等の機器に接続することができる。
【発明の効果】
【0013】
前述したように、本発明では、シールド端子の筒部を第一領域の各シールドパイプに外嵌、加締め固定し、該シールド端子の筒部から突出させた端子片をバックアップリングの外周に間隔をあけて係止している。この構成により、前記シールド端子を固定した各シールドパイプと前記バックアップリングとの電気接続が容易に行える。
また、前記シールド端子の端子片が係止されたバックアップリングに第二領域のシールド編組チューブを被せてその外周にカシメリングを外嵌し、前記バックアップリングと前記カシメリングとの間に前記端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を挟んで加締め固定している。この構成により、前記シールド編組チューブを前記バックアップリングに均一なカシメ力で密着させて電気接続できると共に、前記各シールド端子の端子片と前記バックアップリングとの密着性も高めて確実な電気接続ができる。
即ち、前記構成によれば、前記バックアップリングを介して、第一領域の複数のシールドパイプと、第二領域の一つのシールド編組チューブとの電気接続を簡単な作業工程で容易に行うことができる。また、前記バックップリングと前記カシメリングとの間に前記シールド端子の端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を挟み込むだけのスリムな接続構造であるため、車両への配索も容易でワイヤハーネスの重量増加も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態におけるワイヤハーネスの配索構造を示し、(A)は自動車に配索した状態の概略説明図、(B)は概略平面図である。
【図2】シールドパイプとシールド編組チューブとの接続部分を示し、(A)は概略分解斜視図、(B)は接続後の概略斜視図、(C)はA−A線断面図である。
【図3】従来例を示す図である。
【図4】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2は本発明の実施形態を示している。本実施形態ではハイブリッド自動車において、図1に示すように、リア側に搭載したバッテリ1やインバータとエンジンルーム3内に搭載したインバータ4やモーターとを接続するためにワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスを構成する3本の電線10(10A、10B、10C)をリア側のバッテリ1やインバータに接続してフロア2の下方を配線し、フロント側でフロア2上方に引きこんでエンジンルーム3内のインバータ4やモーターに接続している。
【0016】
ワイヤハーネスの配線領域は、リア側からフロア2の下方に配線されフロント側でエンジンルーム3内に引き込まれる第一領域R1と、該第一領域R1に連続してエンジンルーム3内に配線される第二領域R2とからなる。第一領域R1では、図1(B)に示すように、3本の電線10(10A、10B、10C)を電線毎にアルミニウム系金属パイプからなるシールドパイプ11(11A、11B、11C)に通し、これらのシールドパイプ11(11A、11B、11C)を近接して平行配管している。一方、第二領域R2では、前記3本のシールドパイプ11(11A、11B、11C)から引き出された3本の電線10(10A、10B、10C)を集束して、銅系金属線をメッシュ状に編成して形成した1つのシールド編組チューブ12に挿通している。
【0017】
前記第一領域R1と第二領域R2との境界位置で、3本のシールドパイプ11(11A、11B、11C)と1つのシールド編組チューブ12とを電気接続させる必要がある。そこで本実施形態では、まず、図2に示すように、3本のシールドパイプ11(11A、11B、11C)に銅系金属からなるシールド端子13(13A、13B、13C)を固定する。具体的には、シールド端子13(13A、13B、13C)は筒部14(14A、14B、14C)と該筒部14(14A、14B、14C)の先端から突出させた端子片15(15A、15B、15C)とからなり、3本のシールドパイプ11(11A、11B、11C)の先端部分に、筒部14(14A、14B、14C)をそれぞれ外嵌して加締め固定することにより、端子片15(15A、15B、15C)を第二領域R2側に突出させている。
【0018】
続いて、シールドパイプ11(11A、11B、11C)の先端部分から引き出された3本の電線10(10A、10B、10C)を円環状のバックアップリング17に挿通し、該バックアップリング17を前記端子片15(15A、15B、15C)側に移動させてバックアップリング17の外周に端子片15(15A、15B、15C)を間隔をあけて係止させる。バックアップリング17はアルミニウム系金属や銅系金属や鉄(めっき品)から形成し、バックアップリング17の外周面には、矩形状の端子片15(15A、15B、15C)を安定係止するための矩形状の係止凹部18(18A、18B、18C)を間隔をあけて設けている。また、前記端子片15(15A、15B、15C)の中央部には、バックアップリング17の係止凹部18(18A、18B、18C)との接点を確実に設けるための凸状のビード16(16A、16B、16C)を係止凹部18(18A、18B、18C)との接触面側に突出させている。
【0019】
最後に、端子片15(15A、15B、15C)を係止したバックアップリング17に第二領域R2のシールド編組チューブ12の先端部分を被せてその外周にカシメリング19を外嵌し、バックアップリング17とカシメリング19との間に端子片15(15A、15B、15C)とシールド編組チューブ12の先端部分を挟んで、カシメリング19のカシメ突起20を加締めて固定している。カシメリング19は円環状でアルミニウム系金属から形成している。
なお、図示しないが、本実施形態ではシールドパイプ11(11A、11B、11C)とシールド編組チューブ12との接続部分をグロメットで保護し、グロメットの一端より突出させたコルゲートチューブで第二領域R2のシールド編組チューブ12を外装している。
【0020】
前述したように、シールド端子13(13A、13B、13C)の筒部14(14A、14B、14C)を第一領域R1の各シールドパイプ11(11A、11B、11C)に外嵌、加締め固定し、前記筒部14(14A、14B、14C)から突出させた端子片15(15A、15B、15C)をバックアップリング17の外周に間隔をあけて係止している。この構成により、シールド端子13(13A、13B、13C)を固定した各シールドパイプ11(11A、11B、11C)とバックアップリング17との電気接続が容易に行える。
また、端子片15(15A、15B、15C)が係止されたバックアップリング17に第二領域R2のシールド編組チューブ12を被せてその外周にカシメリング19を外嵌し、バックアップリング17とカシメリング19との間に端子片15(15A、15B、15C)とシールド編組チューブ12の先端部分を挟んで加締め固定している。この構成により、シールド編組チューブ12をバックアップリング17に均一なカシメ力で密着させて電気接続できると共に、端子片15(15A、15B、15C)とバックアップリング17との密着性も高めて確実な電気接続ができる。
【0021】
即ち、前記構成によれば、バックアップリング17を介して、第一領域R1の3本のシールドパイプ11(11A、11B、11C)と、第二領域R2の一つのシールド編組チューブ12との電気接続を簡単な作業工程で容易に行うことができる。また、バックップリング17とカシメリング19との間にシールド端子13(13A、13B、13C)の端子片15(15A、15B、15C)とシールド編組チューブ12の先端部分を挟み込むだけのスリムな接続構造であるため、車両への配索も容易でワイヤハーネスの重量増加も抑制できる。
【符号の説明】
【0022】
10 電線
11 シールドパイプ
12 シールド編組チューブ
13 シールド端子
14 筒部
15 端子片
17 バックアップリング
19 カシメリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド自動車または電気自動車に配索するワイヤハーネスの配索構造であって、
複数本の電線を電線毎に金属パイプからなるシールドパイプに通し、これら複数本のシールドパイプを近接して平行配置している第一領域と、
前記シールドパイプから引き出された複数本の電線を、金属線をメッシュ状に編成して形成した1つのシールド編組チューブ内に挿通する第二領域とを設け、
前記第一領域の各シールドパイプと第二領域のシールド編組チューブとの電気接続は、筒部の先端に端子片を突設したシールド端子を前記各シールドパイプに前記筒部を外嵌して加締め固定すると共に前記端子片を突出させ、
前記各シールド端子の端子片を円環状の導電性金属材からなるバックアップリングの外周に間隔をあけて係止して接続し、
外周にシールド端子を取り付けた前記バックアップリングに前記シールド編組チューブの先端部分を被せ、
前記シールド編組チューブの外周にカシメリングを外嵌し、前記バックアップリングとカシメリングの間に前記シールド端子の端子片と前記シールド編組チューブの先端部分を
挟んで前記カシメリングを加締め固定し前記電気接続をしているワイヤハーネスの配索構造。
【請求項2】
前記第一領域は車両フロア下方の配線領域であり、前記第二領域はエンジンルーム内の配線領域である請求項1に記載のワイヤハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173456(P2011−173456A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37394(P2010−37394)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】