説明

ワイヤ結合ハンドル

【課題】合成樹脂製のハンドルとフレキシブルなワイヤとを簡単な結合作業で高い結合強度で結合できるワイヤ結合ハンドルの提供。
【解決手段】ワイヤ10の端部に、ワイヤ10より大径のかしめパイプ12を介して環状部11を形成する一方、ハンドル20に、ワイヤ10の環状部11を挿入可能で中心部を環状部を掛け止める掛止部25Lとした環状空間25と、この環状空間25に連通し、かしめパイプ12を挿入可能な筒状部26とを形成し、この筒状部26には、ワイヤ10をその延長方向と直交する方向から筒状部10内に挿脱可能でかしめパイプ12は挿脱不能な幅の切欠26aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルなワイヤ(ケーブル)の端部に結合して用いるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなハンドルは例えば車両のトランクルーム内から、トランクリッドのロック機構を解除するために用いられている。すなわち、トランクルーム内に人(特に幼児)が閉じ込められたとき、ロック機構に連動するロック解除ワイヤをハンドルを介して引くことにより、ロック機構を解除する。
【特許文献1】特開2005-76217号公報
【特許文献2】特開2005-76363号公報
【特許文献3】特開2005-146746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ロック解除ワイヤは一般に鋼縒り線からなっており、その一端部が合成樹脂製のハンドルに結合され、他端部がロック機構に結合される。このようなハンドルとワイヤの結合は従来、ワイヤ端部にエンド部材を鋳込み形成し、ハンドル(ロック機構)側にこのエンド部材が特定の角度(位相)で嵌まる係合穴(溝)を形成して行われていた。しかし、エンド部材の鋳込み構造はコストが高く、またエンド部材が外れるおそれがある。また、ワイヤの端部をハンドルに形成した穴に通した後折り返してかしめる構造もあるが、作業性が悪い。
【0004】
本発明は、以上の問題意識に基づき、合成樹脂製のハンドルとワイヤとを簡単な結合作業で高い結合強度で結合できるワイヤ結合ハンドルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フレキシブルなワイヤの端部を合成樹脂製のハンドルに結合するワイヤ結合ハンドルにおいて、ワイヤの端部に、該ワイヤより大径のかしめ部材を介して環状部を形成する一方、ハンドルに、該ワイヤの環状部を挿入可能で中心部を該環状部を掛け止める掛止部とした環状空間と、この環状空間に連通し、上記かしめ部材を挿入可能な筒状部とを形成し、この筒状部には、ワイヤをその延長方向と直交する方向から該筒状部内に挿脱可能でかしめ部材は挿脱不能な幅の切欠を形成したことを特徴としている。
【0006】
ハンドルの環状空間には、筒状部の反対側に位置させて、ワイヤの環状部を掛け止める掛止突起を突出形成することが望ましい。
【0007】
ハンドル及び環状空間は、筒状部と掛止突起を結ぶ仮想線分に対して線対称な形状に形成し、環状空間には、仮想線分に関する両側位置に、ワイヤの抜止突起を突出形成するとよい。
【0008】
本発明のワイヤ結合ハンドルは、ワイヤの接続先を問うことなく適用できるが、具体的には、例えば車両用トランクリッドのロック機構をトランクルーム内から開放する機構に用いることができる。すなわち、ワイヤのハンドルとは反対側の端部を、該トランクルーム内からハンドルを牽引操作したときロックを解除するように結合する態様が可能である。
【0009】
このトランクリッド開放用では、ロック機構には、ハンドルを支持する合成樹脂製の支持ガイドを設けることが好ましい。
【0010】
ハンドルは、その一態様では、その端部から順に、上記仮想線分に関して対称形状をなす、小幅端部と、この小幅端部より幅の広い中間部と、この中間部より幅の大きい把持部とを備えており、小幅端部には、上記仮想線分に関する対称な位置に一対の支持突起が形成されている。支持ガイドは、このハンドルの小幅端部を保持する一面の開放された断面コ字状部と、この断面コ字状部の左右側壁の一部を除去して形成した、ハンドルの上記一対の支持突起を嵌合させる一対の支持溝を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワイヤ結合ハンドルによれば、ワイヤの環状部をハンドルの環状空間に嵌め、切欠からワイヤを筒状部内に入れた後、ワイヤのかしめ部分を該筒状部内にスライドさせるという簡単な作業でワイヤとハンドルを結合でき、簡単な結合作業で強い結合強度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1と図2は、本発明によるワイヤ結合ハンドル100単体の実施形態を示している。本実施形態のワイヤ結合ハンドル100は、鋼縒り線からなるワイヤ10と、このワイヤ10の一端部に結合されるハンドル20とからなっている。ワイヤ10はハンドル20との結合端部に、環状部(無端ループ部)11を有している。環状部11は、ワイヤ10の端部を折り返し、その折り返し端部をワイヤ10に予め嵌めたかしめパイプ12内に挿入し、その状態でかしめパイプ12をかしめることで形成されている。かしめパイプ12はワイヤ10より大径のかしめ部材である。ワイヤ10の他端部には、鋳込み成形した結合球状部13が設けられている。
【0013】
ハンドル20は、仮想線分21に関して線対称な形状をした合成樹脂材料の平板状の成形品からなっている。このハンドル20は、幅狭側の端部から順に、小幅端部(被ホールド部)22、この小幅端部22より幅の広い中間部23、及び中間部23より幅の広い把持部(指掛部)24を備えている。
【0014】
このハンドル20には、小幅端部22から中間部23にかけてワイヤ10の環状部11に対応する縦長の環状空間25が形成されており、該環状空間25の中心部は掛止部(掛止島)25Lとなっている。また、小幅端部22の端部には、仮想線分21上に位置させて環状空間25と連通する筒状部(筒状空間)26が形成されている。この筒状部26の内径は、かしめパイプ12の径に対応しており、かしめパイプ12が隙間なく嵌まるように、あるいは自由状態では筒状部26の内径の方がかしめパイプ12の外径より若干小さくなるように設定されている。さらに、筒状部26の内面に突条を設けて内径を実質的に小さくしてもよい。また筒状部26には、その軸線と平行な切欠(スリット)26aが形成されている。この切欠26aの幅は、ワイヤ10をその延長方向と直交する方向から筒状部26内に挿脱可能であるが、かしめパイプ12は挿脱できないように定められている。
【0015】
掛止部25Lには、仮想線分21上に位置させて、筒状部26とは反対側の端部において環状空間25内に突出するワイヤ掛止突起25aが一体に形成されている。また、ハンドル20には、仮想線分21に関する両側(対称)位置に、環状空間25内に突出するワイヤ抜止突起25bが形成されている。ワイヤ掛止突起25aの基部裏面には、ワイヤ10の環状部11を掛けるワイヤ掛止溝25a’が形成されている。ワイヤ抜止突起25bはワイヤ10の通過領域を狭めて移動しにくい形状をなしている。
【0016】
上記構成の本ワイヤ結合ハンドル100は、次のようにワイヤ10をハンドル20に結合する。ワイヤ10の環状部11をハンドル20の環状空間25に沿わせ、該環状部11のかしめパイプ12の反対側の端部をワイヤ掛止突起25aの掛止溝25a’に掛け止める。その状態で、かしめパイプ12を筒状部26の内側端部に位置させ、かしめパイプ12から出たワイヤ10を切欠26aから筒状部26内に入れる。次に、ワイヤ10の結合球状部13側端部を引き、かしめパイプ12を筒状部26内に引き込む。また環状空間25内のワイヤ10を正しくワイヤ抜止突起25bに係合させる。以上の作業が終了すると、かしめパイプ12が筒状部26内に保持され、ワイヤ10の環状部11は掛止部25Lに強固に掛け止められるので、ワイヤ10がハンドル20から容易に外れることがない。
【0017】
図3ないし図5は、以上のワイヤ結合ハンドル100を車両のトランクリッド30のトランクルーム内開放機構に適用した実施形態を示している。この実施形態では、ハンドル20は、畜光性の材料から構成されている。図3に示すように、トランクルーム31を開閉するトランクリッド30と車両ボディ32にはそれぞれ、ロック機構33とストライカ34が設けられている。このロック機構33は周知のように、トランクリッド30に設けたキー穴に車両外部からキーを差し込んで回すことにより、あるいは車内の操作部材を操作することで開放される。本実施形態ではさらに、トランクルーム31内に人(特に幼児)が閉じ込められたとき、その人がワイヤ結合ハンドル100を引くことで、ロック機構33の開放ができる。
【0018】
ロック機構33のベースプレート33aには、図4、図5に示すように、ワイヤ結合ハンドル100のハンドル20を保持するための合成樹脂材料の成形品からなる支持ガイド40が取り付けられている。この支持ガイド40は、ロック機構33側の一面の開放された断面コ字状部41と、この断面コ字状部41に連なる平板状部42とを有し、中心線に関し左右対称な形状をしている。支持ガイド40の合成樹脂材料は、ハンドル20の合成樹脂材料より軟質である。
【0019】
断面コ字状部41は、ハンドル20の小幅端部22と中間部23を保持するもので、底壁41aと左右側壁41bを有し、底壁41aに連なる平板状部42は中間部23を保持する。ハンドル20をこの支持ガイド40に入れた状態では、小幅端部22と中間部23の間の段部が側壁41bの平板状部42側の端部に当接し、把持部24は平板状部42から突出する。断面コ字状部41の左右の側壁41bは、ロック機構33側の端部から自由端部側にかけて高さを低くしており、その平板状部42側の一部にはそれぞれ、側壁41bの一部を平板状部42と直交する方向に除去して一対の支持溝41cが形成されている。一方、ハンドル20の小幅端部22には、仮想線分21の線対称位置に、この一対の支持溝41cに嵌まる一対の支持突起22aが形成されている。
【0020】
支持ガイド40は、その断面コ字状部41のロック機構33側の端部に縦壁43を有しており、この縦壁43には、ハンドル20の小幅端部(被ホールド部)22の先端を受け入れる凹部43aが形成されている。この凹部43aの内壁は、支持溝41cに支持突起22aを嵌めたハンドル20の移動(取出)が容易なように開放端に向けて滑らかな曲面となっている。
【0021】
ハンドル20から出るワイヤ10は、支持ガイド40の断面コ字状部41の奥部に形成した貫通穴からロック機構33の内部に導かれ、その結合球状部13がロック機構33のロック解除部材33bに結合されている。ロック機構33は周知であり、本発明はロック機構33の具体構造を問うものではないのでこれ以上の構造の図示及び説明は省略する。
【0022】
上記構成の本トランクルーム内トランクリッド開放機構は、常時は、支持ガイド40の断面コ字状部41にハンドル20の小幅端部22を嵌め、小幅端部22の先端を縦壁43の凹部43aに嵌め、支持突起22aを断面コ字状部41の支持溝41cに嵌めて係止する。このときには、小幅端部22と中間部23の段部が側壁41bの端部に係止される。この状態では、中間部23は平板状部42上に当接した安定した状態で保持される。
【0023】
ワイヤ結合ハンドル100を利用してロック機構33を開放するときには、把持部24に指を掛けてハンドル20を断面コ字状部41の開放面からいずれかの方向に引くと、支持突起22aと支持溝41cの係合が外れ、ワイヤ10のフレキシビリティによりハンドル20を自由な方向に引くことができる。ハンドル20を畜光性の材料から構成することと相俟ち、緊急時にも高い操作性でロック機構33のロックを外すことができる。また、以上の実施形態では、ハンドル20(支持突起22a)は、支持ガイド40(支持溝41c壁面)より硬質な材料からなっているため、良好な節度感が得られ、摩耗に強く折損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるワイヤ結合ハンドルの一実施形態を示す、同ワイヤとハンドルの結合前の状態を示す斜視図である。
【図2】(A)はハンドル単体の平面図、(B)は底面図、(C)は背面図、(D)は(C)のP-P線に沿う断面図、(E)は(C)のQ-Q線に沿う断面図である。
【図3】車両のトランクルーム内トランクリッド開放機構を概念的に示す断面図である。
【図4】同トランクリッド開放機構に本発明のワイヤ結合ハンドルを用いた態様を示す斜視図である。
【図5】図4のV-V線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0025】
100 ワイヤ結合ハンドル
10 ワイヤ
11 環状部
12 かしめパイプ
13 結合球状部
20 ハンドル
21 仮想線分
22 小幅端部
22a 支持突起
23 中間部
24 把持部
25 環状空間
25L 掛止部
25a ワイヤ掛止突起
25b ワイヤ抜止突起
26 筒状部
26a 切欠
30 トランクリッド
31 トランクルーム
32 車両ボディ
33 ロック機構
34 ストライカ
40 支持ガイド
41 断面コ字状部
41a 底壁
41b 側壁
41c 支持溝
42 平板状部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルなワイヤの端部を合成樹脂製のハンドルに結合するワイヤ結合ハンドルにおいて、
ワイヤの端部に、該ワイヤより大径のかしめ部材を介して環状部を形成し、
ハンドルに、該ワイヤの環状部を挿入可能で中心部を該環状部を掛け止める掛止部とした環状空間と、この環状空間に連通し、上記かしめ部材を挿入可能な筒状部とを形成し、この筒状部には、ワイヤをその延長方向と直交する方向から該筒状部内に挿脱可能でかしめ部材は挿脱不能な幅の切欠を形成したことを特徴とするワイヤ結合ハンドル。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤ結合ハンドルにおいて、上記ハンドルの環状空間には、上記筒状部の反対側に位置させて、ワイヤの環状部を掛け止める掛止突起が突出しているワイヤ結合ハンドル。
【請求項3】
請求項1または2記載のワイヤ結合ハンドルにおいて、上記ハンドル及び環状空間は、筒状部と掛止突起を結ぶ仮想線分に対して線対称な形状をしており、該環状空間には、仮想線分に関する両側位置に、ワイヤの抜止突起が突出しているワイヤ結合ハンドル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のワイヤ結合ハンドルにおいて、上記ワイヤのハンドルとは反対側の端部は、車両用トランクリッドのロック機構に、該トランクルーム内からハンドルを牽引操作したときロックを解除するように結合されているワイヤ結合ハンドル。
【請求項5】
請求項4記載のワイヤ結合ハンドルにおいて、上記ロック機構は、ハンドルを支持する合成樹脂製の支持ガイドを備えているワイヤ結合ハンドル。
【請求項6】
請求項5記載のワイヤ結合ハンドルにおいて、ハンドルは、その端部から順に、上記仮想線分に関して対称形状をなす、上記筒状部を有する小幅端部と、この小幅端部より幅の広い中間部と、この中間部より幅の大きい把持部とを備えていて、上記小幅端部に、上記仮想線分に関する対称な位置に一対の支持突起が形成されており、上記支持ガイドは、このハンドルの小幅端部を保持する一面の開放された断面コ字状部と、この断面コ字状部の左右側壁の一部を除去して形成した、ハンドルの上記一対の支持突起を嵌合させる一対の支持溝を備えているワイヤ結合ハンドル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−177498(P2007−177498A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376822(P2005−376822)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】