説明

ワークの位置決め装置

【課題】ワークの位置の調整や修正を、低コストで、かつ、簡単に行えるようにする。
【解決手段】ワークを所定位置に位置決めし固定するためのワークの位置決め装置1は、パイプ部41を有する位置決め用基台10と、パイプ部41をクランプする汎用のパイプクランプ51と、パイプクランプ51によってパイプ部に取り付けられるインナパネル保持装置A1,A2とを備えている。パイプクランプ51がパイプ部41をクランプした状態で、インナパネル保持装置A1,A2によってワークを保持することによりワークを所定位置に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ドアの生産現場等において、ワークを所定位置に位置決めし固定しておくためのワークの位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用ドアの生産現場では、パネル、補強部材、サッシュ等のワークを接合して一体化するにあたり、これらワークを位置決めし固定しておくためのワークの位置決め装置が使用されている。
【0003】
この種のワークの位置決め装置として、例えば、特許文献1に開示されている装置が知られている。特許文献1の装置は、ワークを位置決めする位置決めピンやクランプユニット等の治具をサーボモータやステッピングモータ等の駆動体に取り付け、この駆動体を制御装置により制御して位置決めピンやクランプユニット等の位置を変更することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−304788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、位置決めピンやクランプユニット等をサーボモータ等で動かすようにしているので、制御装置が必要になり、コストが高騰する。また、ワークを狙い通りの位置にするためには、位置決めピンやクランプユニット等を構成する部品を高精度に加工して組み上げる必要があり、さらに、これでも精度の向上が十分でない場合には誤差分の微調整を行う必要がある。精度を高くすればするほど、調整の頻度は減るが、それでも微調整は避けられない。また、各々の部品の精度を高くするほど、部品のコストが高騰する。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークの位置の調整や修正を、低コストで、かつ、簡単に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、汎用のパイプクランプを用いてワークの位置の調整及び修正を可能にした。
【0008】
第1の発明は、ワークを所定位置に位置決めし固定するためのワークの位置決め装置において、
パイプ部を有する位置決め用基台と、
上記パイプ部をクランプする汎用のパイプクランプと、
上記パイプクランプによって上記パイプ部に取り付けられ、上記ワークを保持する保持部とを備え、
上記パイプクランプが上記パイプ部をクランプした状態で、上記保持部によってワークを保持することによりワークを所定位置に位置決めするように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、ワークの位置を調整する場合や、修正する場合には、パイプクランプのパイプ部に対するクランプ位置を変更することで、保持部の位置が変更され、よって、ワークの位置を所望位置とすることが可能になる。パイプクランプのクランプ位置の変更は、実際の保持部の位置を確認しながら、容易に微調整が可能であり、作業性は良好である。また、パイプクランプは、汎用のものとしているので低価格であり、ワークの位置決め装置が低コストになる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
パイプクランプは、建設現場における足場組み立て用の円管部材をクランプするものであり、
位置決め用基台のパイプ部は円管であることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、パイプクランプがより安価なものとなる。さらに、位置決め用基台のパイプ部が円管であるため、パイプクランプをパイプ部の周方向及び軸方向の両方向に移動させることが可能になる。これにより、保持部の位置設定の自由度、即ち、ワークの位置設定の自由度が高まる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、
位置決め用基台のパイプ部は角パイプで構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、パイプクランプがパイプ部をクランプした際に、周方向に回動しにくくなるので、使用中における保持部の位置ずれが起こりにくくなる。
【0014】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
位置決め用基台には、第1のワークを位置決めするための第1パイプ部と、第2のワークを位置決めするための第2パイプ部とが設けられ、
上記第1パイプ部には、第1パイプクランプが設けられ、該第1パイプクランプにより第1保持部が上記第1パイプ部に取り付けられ、
上記第2パイプ部には、第2パイプクランプが設けられ、該第2パイプクランプにより第2保持部が上記第2パイプ部に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、第1パイプ部に第1のワークが保持され、第2パイプ部に第1のワークとは異なる第2のワークが保持されることになる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、汎用のパイプクランプを用いてワークを位置決めするようにしたので、ワークの位置の調整や修正を簡単に行うことができ、しかも、装置の低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0017】
第2の発明によれば、パイプクランプを、足場組み立て用の円管部材をクランプするものとしたので、より一層低コストにしながら、ワークの位置設定の自由度を高めることができる。
【0018】
第3の発明によれば、パイプ部を角パイプで構成したので、使用時におけるワークの位置ずれが起こりにくくなり、ワークを正確に位置決めすることができる。
【0019】
第4の発明によれば、第1のワークと第2のワークとを1台のワーク位置決め装置で位置決めすることができるので、多種生産現場において1台の装置で対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかるワークの位置決め装置の側面図である。
【図2】右ドア用ワーク位置決め部近傍を拡大して示す側面図である。
【図3】右ドア用ワーク位置決め部及びフレームの正面図である。
【図4】フレームの正面図である。
【図5】第1インナパネル保持装置の斜視図である。
【図6】パイプクランプの斜視図である。
【図7】第1インナパネル受け具の斜視図である。
【図8】第2インナパネル受け具の斜視図である。
【図9】サッシュ受け具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかるワークの位置決め装置1を示している。ワークの位置決め装置1は、自動車用ドアの生産現場で用いられるものであり、ドアを構成するインナパネルW1(図2に仮想線で示す)、サッシュW2(図2に仮想線で示す)、レインフォースメント(図示せず)等を所定位置に位置決めし固定するためのものである。インナパネルW1、サッシュW2、レインフォースメントがワークである。また、ワークを位置決め固定した後に、図示しないスポット溶接用のロボットによってワーク同士を接合するようにしている。
【0023】
図1に示すように、位置決め装置1は、位置決め用基台10と、車両右側に配設される右ドアを構成するワークを位置決めし固定するための右ドア用ワーク位置決め部20(図2に拡大して示す)と、車両左側に配設される左ドアを構成するワークを位置決めし固定するための左ドア用ワーク位置決め部21とを備えている。右ドア用ワーク位置決め部20は、位置決め装置1の前側(図1における左側)に設けられ、左ドア用ワーク位置決め部21は、位置決め装置1の後側(図1における右側)に設けられている。
【0024】
尚、右ドアのワークが第1のワークであり、左ドアのワークが第2のワークである。
【0025】
位置決め用基台10は、複数の管部材を組み合わせて構成されており、管部材としては、円管であってもよいし、角管であってもよい。この位置決め用基台10は、略水平に延びる中間部材30を備えている。中間部材30には、複数の脚部31,31が下方へ突出するように設けられている。各脚部31の下端部には、車輪32が取り付けられている。車輪32は、ワークの位置決め装置1が設置されるドア生産現場に設けられているレール100上を転動するようになっている。従って、ワークの位置決め装置1は、レール100上を移動させることが可能である。
【0026】
また、このワークの位置決め装置1は、レール100上からターンテーブル90上に移すことができるようになっており、ターンテーブル90上で鉛直軸周りに回転するようになっている。
【0027】
ターンテーブル90は、位置決めピン91と、ローラー92とを備えている。ローラー92は、位置決め装置1がレール100からターンテーブル90上に移った状態で、位置決め装置1を支持する。位置決めピン91は、ローラー92で支持された位置決め装置1に係合する。また、位置決めピン91とローラー92とは、旋回台94に固定されており、この旋回台94が旋回台94よりも下側の部分に対して回転するように構成されている。
【0028】
ワークの位置決め装置1の一方側(例えば図1における左側)は、作業者によりワークをセットする作業者側とされ、他方側(例えば図1における右側)は、スポット溶接用のロボット96により溶接が行われるロボット溶接側とされる。
【0029】
位置決め装置1をターンテーブル90上で回転させることにより、位置決め装置1の一方側を、ロボット溶接側とし、他方側を、作業者側に切り替えることができるようになっている。
【0030】
中間部材30には、上方へ突出する縦部材34が設けられている。縦部材34の上端部には、略水平に延びる上側部材35が設けられている。中間部材30の前端部(図1の左端)には、2本の下側固定棒36,36が前方へ向かって斜め上方へ突出するように設けられている。中間部材30の後端部(図1の右端)にも、同様に、2本の下側固定棒36,36が設けられている。
【0031】
また、上側部材35の前端部には、上側固定棒37が下側固定棒36と略平行に設けられている。上側部材35の後端部にも、同様に、上側固定棒37が設けられている。
【0032】
下側固定棒36及び上側固定棒37には、フレーム40が固定されている。図3及び図4に示すように、フレーム40は、円管で構成された複数のパイプ部41,41,…と、これらパイプ部41を連結するためのT字ジョイント部42,42,…及びL字ジョイント部43,43,…とを備えており、これらパイプ部41及びジョイント部42,43は、正面視で複数の大小の枠を構成するように組み合わされている。フレーム40の形状は、ドアの形状及び大きさに対応するように設定されている。
【0033】
図3に示すように、フレーム40の下端部近傍のパイプ部41には、位置決め用基台10の下側固定棒36,36の先端部をそれぞれクランプする下側固定用クランプ44,44が設けられている。下側固定用クランプ44は、詳細は後述するが、汎用のパイプクランプであり、パイプ部41と固定棒36との両方をクランプするように構成されている。
【0034】
また、フレーム40の上下方向中央部近傍のパイプ部41には上側固定棒37の先端部をクランプする上側固定用クランプ45が設けられている。上側固定用クランプ45も汎用のパイプクランプである。
【0035】
位置決め用基台10を構成する部材は、中間部材30、脚部31、車輪32、縦部材34、上側部材35、下側固定棒36、上側固定棒37、フレーム40、下側固定用クランプ44及び上側固定用クランプ45である。
【0036】
右ドア用ワーク位置決め部20と左ドア用ワーク位置決め部21とは、対称であるため、以下、右ドア用ワーク位置決め部20の構造について説明する。
【0037】
右ドア用ワーク位置決め部20は、図2に示すように、サッシュW2が上でインナパネルW1が下となるように、かつ、サッシュW2及びインナパネルW1の車内側が位置決め装置1の前側となるように、各ワークを位置決めする。
【0038】
図3に示すように、右ドア用ワーク位置決め部20は、インナパネルW1を保持する第1〜第3インナパネル保持装置(保持部)A1〜A3と、サッシュW2を保持する第1〜第3サッシュ保持装置(保持部)B1〜B3と、インナパネルW1を受ける第1、第2インナパネル受け具C1,C2と、サッシュW2を受けるサッシュ受け具Dとを備えており、これら装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dは、パイプクランプ51によってフレーム40に取り付けられている。
【0039】
第1インナパネル保持装置A1は、フレーム40の左端において上下方向の中央部近傍に設けられている。第2インナパネル保持装置A2は、フレーム40の右端において上下方向の中央部近傍に設けられている。第3インナパネル保持装置A3は、第2インナパネル保持装置A2の上方に設けられている。
【0040】
第1サッシュ保持装置B1は、第1インナパネル保持装置A1の上方に設けられている。第2サッシュ保持装置B2は、フレーム40の右端の上部に設けられている。第3サッシュ保持装置B3は、第2サッシュ保持装置B2と、第3インナパネル保持装置A3との間に設けられている。
【0041】
第1インナパネル受け具C1は、フレーム40の下端において左側に設けられ、第2インナパネル受け具C2は、その右側に設けられている。サッシュ受け具Dは、第1サッシュ保持部B1の上方に設けられている。
【0042】
尚、フレーム40には、上記装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、D以外にも、各種装置及び器具を取り付けることが可能である。
【0043】
図5に示すように、第1インナパネル保持装置A1は、ベース板50と、インナパネルを挟持する挟持部52と、インナパネルを位置決めする位置決め部53とを備えており、パイプクランプ51によってフレーム40のパイプ部41に取り付けられるようになっている。
【0044】
ベース板50は、2枚の板材を略L字状に組み合わせて構成されている。このベース板50がパイプクランプ51によってフレーム40に取り付けられるようになっている。
【0045】
図6に示すように、パイプクランプ51は、建設現場における足場組み立て用の円管部材をクランプするように構成された汎用のパイプクランプである。詳しくは、パイプクランプ51は、円筒を略半分に割った半円弧状の台座51aと、台座51aの開放側を覆う半円弧状の可動体51bと、可動体51bを台座51aに軸支するための支軸51cと、可動体51bを台座51aに固定するためのボルト51d及びナット51eとを備えている。
【0046】
図5に示すように、台座51aがベース板50の一方の板材に締結固定されている。図6に示すように、可動体51bは、台座51aの開放側の縁部に対し、支軸51cを介して連結されている。従って、可動体51bは、支軸51c周りに回動して台座51aの開放側を覆った状態と、開放した状態とに切り替えられるようになっている。
【0047】
ボルト51dは、その基端部が台座51aに揺動可能に取り付けられている。ボルト51dは、基端部を中心にして先端側が可動体51dに接離する方向に揺動する。可動体51bの支軸51cと反対側の縁部には、ボルト51dが挿入される切欠部51fが形成されている。この切欠部51fに挿入されたボルト51dにナット51eを螺合させることによって可動体51bが台座51aに固定されて、図5に仮想線で示すパイプ部41をクランプすることができるようになっている。
【0048】
図5における第1インナパネル保持装置A1の挟持部52は、ベース板50の他方の板材に固定される固定板52aと、固定板52aに取り付けられる固定側挟持片52bと、可動板52cと、可動板52cに取り付けられる可動側挟持片52dと、可動板52cを軸支するための支軸52eと、シリンダ装置52fとを備えている。
【0049】
固定側挟持片52bと可動側挟持片52dとは、対向するように配置されている。固定側挟持片52bと可動側挟持片52dとの間にインナパネルW1が配置されて両挟持片52b,52dにより挟持されて保持されるようになっている。
【0050】
可動板52cは、支軸52e周りに回動して、可動側挟持片52dを固定側挟持片52bから離した状態と、固定側挟持片52bに接近させた状態とに切り替えられるようになっている。
【0051】
シリンダ装置52fは、そのシリンダ部分が固定板52aに軸支され、ロッド部分の先端が可動板52cに軸支されている。このシリンダ装置52fには、図示しない配管を介して流体が給排されるようになっており、この流体の給排により伸縮して可動板52cが上記した2つの姿勢に切り替えられる。シリンダ装置52fは、図示しない制御装置により制御されるようになっている。尚、シリンダ装置52fは、例えば、空気圧シリンダであってもよいし、油圧シリンダであってもよい。
【0052】
位置決め部53は、位置決めピン53aと、位置決めピン53aの基端を支持する支持板53bとを備えている。位置決めピン53aは、先細形状とされ、インナパネルW1に予め形成されている位置決め孔(図示せず)に挿入されてインナパネルW1を所定位置に位置決めするためのものである。
【0053】
詳細な説明は省略するが、第2インナパネル保持装置A2及び第3インナパネル保持装置A3は、基本的な構造は、第1インナパネル保持装置A1と同じ構造であり、同様な汎用のパイプクランプ51を用いてフレーム40に取り付けられる。
【0054】
第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3も、基本的な構造は、第1インナパネル保持装置A1と同じ構造である。すなわち、詳細な説明は省略するが、第1インナパネル保持装置A1と同様に、汎用のパイプクランプ51を用いてフレーム40に取り付けられる。
【0055】
図7に示すように、第1インナパネル受け具C1は、L字板60と、棒材61とを備えており、上記第1インナパネル保持装置A1と同じパイプクランプ51を用いてフレーム40に取り付けられる。L字板60は、上下方向に延びる縦板部60aと、縦板部60aの下端部から前方へ突出する突出板部60bとを備えている。パイプクランプ51の台座51aは、L字板60の縦板部60aに締結固定されている。棒材61は、突出板部60bに固定されており、左右方向に延びている。インナパネルW1は、その下端部が突出板部60bと、棒材61に載った状態となり、この状態で保持される。
【0056】
図8に示すように、第2インナパネル受け具C2は、ベース板65と、パネル受け板66と、インナパネルW1を位置決めする位置決め部67と、近接スイッチ68とを備えており、上記第1インナパネル保持装置A1と同じパイプクランプ51,51を用いてフレーム40に取り付けられている。各パイプクランプ51の台座51aは、ベース板65に締結固定されている。
【0057】
パネル受け板66は、左右方向に延びている。インナパネルW1は、その下端部がパネル受け板66に載った状態となり、この状態で保持される。
【0058】
また、位置決め部67は、第1インナパネル保持装置A1の位置決め部53と同様に構成されていて、位置決めピン67aと、位置決めピン67aの基端を支持する支持板67bとを備えている。
【0059】
近接スイッチ68は、インナパネルW1が所定距離よりも近接スイッチ68に接近したときにONとなり、所定距離以上離れたときにOFFとなるように構成された周知のものであり、インナパネルW1が正規の位置にあるか否かを検出するためのものである。この近接スイッチ68は、パネル受け板66に支持されている。また、近接スイッチ68の信号線は、制御装置に接続されている。
【0060】
図9に示すように、サッシュ受け具Dは、ベース板70と、サッシュW2を保持する一対の保持片71,72と、保持片71,72を支持する支持板73と、サッシュW2を保持片71,72に案内する案内棒74,74と、近接スイッチ75とを備え、上記第1インナパネル保持装置A1と同じパイプクランプ51を用いてフレーム40に取り付けられている。パイプクランプ51の台座51aは、ベース板70に締結固定されている。
【0061】
支持板73は、ベース板70から突出している。保持片71,72は、互いに間隔をあけて配置されており、これら保持片71,72の間にサッシュW2が入り込んで保持されるようになっている。
【0062】
案内棒74,74は、ベース板70よりもさらに突出するように前方へ延びている。案内棒74,74は、サッシュW2の幅に対応した間隔をあけて配置されている。案内棒74,74の先端側は、先端に近づくほど互いに離れるように屈曲している。この屈曲形状によってサッシュW2が保持片71,72の間に入るように案内されるようになる。近接スイッチ75は、上記第2インナパネル受け具C2の近接スイッチ68と同様に構成されている。
【0063】
上記右ドア用ワーク位置決め部20の第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3及び第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3、第1、第2インナパネル受け具C1,C2、サッシュ受け具Dを取り付けるためのパイプクランプ51は、本発明の第1パイプクランプを構成している。また、位置決め装置1の左側のフレーム40のパイプ部41は、本発明の第1パイプ部である。
【0064】
図1に示すように、左ドア用ワーク位置決め部30も、第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3、第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3、第1、第2インナパネル受け具C1,C2と、サッシュ受け具Dとを備えている。これらは、右ドア用ワーク位置決め部20のものと同じであり、左ドア用ワーク位置決め部30の第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3及び第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3のパイプクランプ51は、本発明の第2パイプクランプを構成している。また、位置決め装置1の右側のフレーム40のパイプ部41は、本発明の第2パイプ部である。
【0065】
次に、上記のように構成された位置決め装置1の使用要領について説明する。まず、フレーム40に、第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3と、第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3と、第1、第2インナパネル受け具C1,C2と、サッシュ受け具Dとをパイプクランプ51を用いて取り付ける。
【0066】
この場合、各パイプクランプ51の可動体51bを動かして台座51aを開放した後、台座51aの開放側にパイプ部41を径方向から挿入する。その後、可動体51bを、支軸51c周りに動かして台座51aの開放側を覆うように位置付ける。そして、ボルト51dを揺動させて切欠部51fに挿入し、ナット51eを螺合させて締め込む(図5〜図9に示す)。これにより、台座51aと可動体51bとでパイプ部41を挟んで、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dがフレーム40に取り付けられた状態となる。
【0067】
ここで、上記位置決め装置1によって位置決めされ固定されるワークは、その後、溶接用のロボット96で各部を溶接していく。このため、ワークを実際に位置決め固定する前に、ワークの位置が狙い通りの位置となるように、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置を微調整しておく必要がある。
【0068】
各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置の微調整を行う際には、始めに、パイプクランプ51のナット51eを緩める。すると、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dを、フレーム40のパイプ部41周りに回動させることが可能になるとともに、パイプ部41の軸方向に移動させることが可能になる。この状態にして、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置の微調整を行う。
【0069】
その後、受け具C1、C2、Dについては、パイプ部41の径方向の位置調整を行う。すなわち、例えば、第2インナパネル受け具C2については、図8に示すボルト80,80をパネル受け板66側に形成した長孔(図示せず)に挿通させておき、ボルト80,80を緩めることによって支持板67bをパネル受け板66に対し移動させ、これによって位置決めピン67aの位置調整を行う。
【0070】
微調整が終わると、パイプクランプ51のナット51eを締め込む。これにより、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dがフレーム40に再び固定される。
【0071】
上記のようにして各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの微調整が終わった後、位置決め装置1の使用を開始する。
【0072】
右ドア用ワーク位置決め部20にワークを位置決めする際には、作業者が右ドア用ワーク位置決め部20に対向するように立つ。そして、予めラック等(図示せず)に積んであるインナパネルW1を持って右ドア用ワーク位置決め部20にセットしていく。インナパネルW1は、第1及び第2インナパネル受け具C1、C2によって保持されるとともに、第1インナパネル保持装置A1の位置決めピン53a及び第2インナパネル受け具C2の位置決めピン67aによって位置決めされる。
【0073】
また、サッシュW2も右ドア用ワーク位置決め部20にセットする。サッシュW2は、サッシュ受け具Dの保持片71,72により保持される。サッシュW2をセットする際には、サッシュ受け具Dの案内棒74,74によって案内されるので、作業性が良好である。また、レインフォースメントは、インナパネルW1にセットする。
【0074】
全てのワークのセットが終わると、作業者が所定のスイッチを操作して、第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3と、第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3のシリンダ装置52f(図5に第1インナパネル保持装置A1のもののみ示す)を作動させて、ワークを保持する。以上により、ワークが位置決めされて固定される。
【0075】
その後、ワークの各部にスポット溶接を行い、ワーク同士を接合する。
【0076】
また、左ドアを生産する場合には、位置決め装置1を上記ターンテーブル90に載せておき、180゜回転させればよい。これにより、作業者は左ドア用ワーク位置決め部21に向かい合うことになる。そして、右ドアの場合と同様にしてワークをセットする。これにより、左ドアと同様に右ドアのワークも位置決め固定される。
【0077】
また、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置を一度決定した後、修正する必要が生じた場合には、上述の微調整を行った場合と同様に、パイプクランプ51のナット51eを緩めて行えばよい。
【0078】
尚、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置を変更することが無い場合には、微調整の後、パイプクランプ51をフレーム40に溶接したり、ナット51eをボルト51dに溶接してもよい。これにより、各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置ずれを防止することができる。
【0079】
また、第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3、第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3、第1、第2インナパネル受け具C1,C2、サッシュ受け具Dの少なくとも1つには、ワークを磁力で吸着する電磁石を設けることが可能である。この場合、ワークをセットした後に通電することでワークを保持することが可能になる。また、電磁石の代わりに、真空圧でワークを吸着するバキューム装置を用いてもよい。
【0080】
以上説明したように、この実施形態にかかるワークの位置決め装置1によれば、汎用のパイプクランプ51を用いているので、ワークの位置の調整や修正を簡単に行うことができ、しかも、装置の低コスト化を図ることができる。
【0081】
また、パイプクランプ51を、足場組み立て用の円管部材をクランプするものとしたので、より一層低コストにしながら、ワークの位置設定の自由度を高めることができる。
【0082】
また、右ドア用のワークと左ドア用のワークとを1台のワーク位置決め装置1で位置決めすることができるので、多種生産現場において1台の装置で対応することができる。
【0083】
尚、上記実施形態では、位置決め用基台10のフレーム40のパイプ部41を円管部材で構成しているが、これに限らず、フレーム40の一部又は全部を、例えば角パイプで構成してもよい。これにより、パイプクランプ51がパイプ部41をクランプした際に、パイプ部41の周方向に回動しにくくなるので、使用中における各装置A1〜A3、B1〜B3及び受け具C1、C2、Dの位置ずれが起こりにくくなる。よって、ワークを正確に位置決めすることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、右ドア用ワーク位置決め部20と左ドア用ワーク位置決め部21とを設けているが、どちらか一方のみを設けてもよい。
【0085】
また、第1〜第3インナパネル保持装置A1〜A3、第1〜第3サッシュ保持装置B1〜B3、第1、第2インナパネル受け具C1,C2、サッシュ受け具Dの構造やフレーム40への取り付け位置は、上記した例に限られるものではなく、任意に変更することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、本発明を自動車用ドアの生産現場で用いる装置に適用した場合について説明したが、これに限らず、ボンネットフードやトランクリッド等の各種蓋体や各種自動車用部品の生産現場でも用いることができるし、自動車用部品以外の製品の生産現場でもワークを位置決め固定する場合に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明にかかるワークの位置決め装置は、例えば、自動車用ドア、ボンネットフード、トランクリッド等の蓋体の生産現場で用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ワークの位置決め装置
10 位置決め用基台
40 フレーム
41 パイプ部(第1パイプ部、第2パイプ部)
51 パイプクランプ(第1パイプクランプ、第2パイプクランプ)
A1〜A3 第1〜第3インナパネル保持装置(保持部)
B1〜B3 第1〜第3サッシュ保持装置(保持部)
C1,C2 第1、第2インナパネル受け具(保持部)
D サッシュ受け具(保持部)
W1 インナパネル(ワーク)
W2 サッシュ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを所定位置に位置決めし固定するためのワークの位置決め装置において、
パイプ部を有する位置決め用基台と、
上記パイプ部をクランプする汎用のパイプクランプと、
上記パイプクランプによって上記パイプ部に取り付けられ、上記ワークを保持する保持部とを備え、
上記パイプクランプが上記パイプ部をクランプした状態で、上記保持部によってワークを保持することによりワークを所定位置に位置決めするように構成されていることを特徴とするワークの位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの位置決め装置において、
パイプクランプは、建設現場における足場組み立て用の円管部材をクランプするものであり、
位置決め用基台のパイプ部は円管であることを特徴とするワークの位置決め装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワークの位置決め装置において、
位置決め用基台のパイプ部は角パイプで構成されていることを特徴とするワークの位置決め装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のワークの位置決め装置において、
位置決め用基台には、第1のワークを位置決めするための第1パイプ部と、第2のワークを位置決めするための第2パイプ部とが設けられ、
上記第1パイプ部には、第1パイプクランプが設けられ、該第1パイプクランプにより第1保持部が上記第1パイプ部に取り付けられ、
上記第2パイプ部には、第2パイプクランプが設けられ、該第2パイプクランプにより第2保持部が上記第2パイプ部に取り付けられていることを特徴とするワークの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251362(P2011−251362A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125886(P2010−125886)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000135999)株式会社ヒロテック (62)
【Fターム(参考)】