説明

ワークの移載方法および移載装置

【課題】粘着テープに貼着されているワークを大径フレームから小径フレームに移し替える作業を円滑に行えるようにする。
【解決手段】粘着テープ10の小径フレーム21に対応する環状領域15のうちの内周側の部分のみを小径フレーム21に貼着し、環状領域15の外周側の非貼着領域15bは小径フレーム21に貼着しない。そして、非貼着領域15bを円形状に切断して、切断部分よりも外側の粘着テープ10から小径フレーム21が容易に剥離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークが貼り付けられた粘着テープを拡張してワークを複数のチップに分割する際などに好適に採用されるワークの移載方法および移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、裏面にエポキシ樹脂等からなる厚さが例えば数μm〜100μm程度のDAF(Die Attach Film)と称されるダイボンディング用のフィルム状接着剤が貼着され、このDAFを介して、半導体チップを支持するダイボンディングフレームに対し加熱することによりボンディングされる。
【0003】
一方、半導体ウェーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、近年にあっては、レーザ光線を、被加工物の内部に集光点を合わせて照射するレーザ加工方法が試みられている。このレーザ加工方法を用いた分割方法は、透過性を有する赤外光領域のパルスレーザ光線を被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて照射して、被加工物の内部に分割予定ラインに沿った変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることで強度が低下した分割予定ラインに外力を加えることによって被加工物を分割するものである(例えば特許文献1)。外力を加える手段としては、被加工物の裏面に貼り付けた保護テープ等の粘着テープを拡張することにより被加工物も同時に拡張させるといった手段が採られている。
【0004】
このようなレーザ加工による被加工物の分割方法を上記DAFが貼着された半導体ウェーハに適用することは可能であり、その場合には、半導体ウェーハの裏面に貼着されたDAFに上記粘着テープが貼着され、粘着テープの拡張によって、半導体チップとともにDAFが分割される。ところで、粘着テープが拡張されることで多数の半導体チップに分割された半導体ウェーハは次の工程に搬送されるが、搬送の際に、拡張された粘着テープが弛むことによって隣り合う半導体チップどうしが擦れ合って損傷したり、分割されたDAFが再び接合しまったりするといった不具合が起こる場合があった。
【0005】
そこで、粘着テープを、拡張によってテンションを付与した状態のままとすることにより、半導体チップ間の間隔を維持して半導体チップどうしの接触などを防止することが提案されている(特許文献2)。すなわち該特許文献2では、比較的大型である環状の大径フレーム(特許文献2ではダイシングフレーム)の開口部に分割前の半導体ウェーハを粘着テープを介して支持した状態で、粘着テープを拡張させ、半導体ウェーハを多数の半導体チップに分割している。そして、粘着テープを拡張して半導体ウェーハの分割状態を保持したまま、該半導体ウェーハと大径フレームとの間の粘着テープに、大径フレームよりも小径フレーム(特許文献2では移し替えフレーム)を載置して粘着テープをこの小径フレームの裏面に貼り付け、この後、粘着テープにおける小径フレームの裏面への貼着部分を環状に切断している。
【0006】
これにより、小径フレームの開口部に、テンションが付与された状態の粘着テープを介して半導体チップ間の間隔が維持された半導体ウェーハが支持された状態となる。すなわち、半導体ウェーハは、大径フレームから小径フレームに移し替えられる。そして小径フレームは次の工程に搬送するために、切断されて外側に残される粘着テープの不要部分から分離して取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2008−140874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のように小径フレームを取り出す時、粘着テープにおける切断部分の外側に残される不要部分に小径フレームが貼り付いたままとなって離れにくくなり、移し替え作業が円滑に遂行されない場合が生じることがあった。
【0009】
よって本発明は、粘着テープに貼着されているワークを大径フレームから小径フレームに移し替える作業を円滑に遂行することができるワークの移載方法および移載装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク移載方法は、第1の環状フレームの開口部に配置され、粘着テープを介して該第1の環状フレームに支持されたワークを、該第1の環状フレームの内縁よりも小さい外縁を有する第2の環状フレームに移し替える方法であって、粘着テープに対し第2の環状フレームを、該第2の環状フレームの開口部内にワークが配置される状態に、第1の環状フレームの開口部に張られている該粘着テープに近接させるか、または接触させることによりセットする第2の環状フレームセット工程と、粘着テープの、第2の環状フレームに対応する環状領域のうちの内周側の部分を該第2の環状フレームに密着させて貼り付け、これにより該粘着テープの該環状領域に、該第2の環状フレームに貼着されている内周側の貼着領域と、該粘着テープが貼着されない外周側の非貼着領域とを形成する粘着テープ貼着工程と、粘着テープの環状領域における非貼着領域を、貼着領域を囲むようにして切断する粘着テープ切断工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
本発明のワーク移載方法によれば、粘着テープ貼着工程において、粘着テープにおける第2の環状フレームに対応する環状領域の全面ではなく、該環状領域の内周側の部分のみを第2の環状フレームに密着させて貼り付け、この内周側の貼着領域の外周側に、粘着テープが貼着されない非貼着領域を形成している。そしてこの非貼着領域で粘着テープを切断するので、第2の環状フレームには、粘着テープにおける切断部分の外側に残される不要部分、すなわち非貼着領域は貼着しておらず、内周側の貼着領域のみが第2の環状フレームに貼着している。このため、第2の環状フレームを粘着テープの該不要部分から容易に剥離することができ、結果として移し替え作業を円滑に行うことが可能となる。
【0012】
なお、上記非貼着領域のことを意味する“粘着テープが貼着されない”ということは、粘着テープが接触しておらず貼着することが不可能な状態の他、例え接触していたとしても粘着性が十分には発揮されずに、第2の環状フレームを該粘着テープから何らかの補助的な作用を与えなくても容易に剥離させることが可能な状態を言う。
【0013】
次に、本発明のワーク移載装置は、第1の環状フレームの開口部に配置され、粘着テープを介して該第1の環状フレームに支持されたワークを、該第1の環状フレームの内縁よりも小さい外縁を有する第2の環状フレームに移し替える装置であって、粘着テープに対し第2の環状フレームを、該第2の環状フレームの開口部内にワークが配置される状態に、第1の環状フレームの開口部に張られている該粘着テープに近接させるか、または載置することによりセットする第2の環状フレームセット手段と、粘着テープの、第2の環状フレームに対応する環状領域のうちの内周側を該第2の環状フレームに密着させて貼り付け、これにより該粘着テープの該環状領域に、該第2の環状フレームに貼着されている内周側の貼着領域と、該粘着テープが貼着されていない外周側の非貼着領域とを形成する粘着テープ貼着手段と、粘着テープの環状領域における非貼着領域を、貼着領域を囲むようにして切断する粘着テープ切断手段とを含むことを特徴としている。当該本発明のワーク移載装置は、上記本発明の移載方法を好適に実施し得るものである。
【0014】
本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス系あるいはシリコン系の基板、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種ドライバを含む各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。また、これらのワークが複数のチップに分割されたものや、完全に分割されてはおらず、チップの分割予定ラインに分割を容易とする加工(例えば溝加工、レーザ光照射による脆弱な変質層の形成など)が施されたものも含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘着テープに貼着されているワークを大径フレームから小径フレームに移し替えるにあたり、小径フレームへの貼着部分で切断した後の、粘着テープにおける切断部分の外側に残される不要部分が小径フレームから離れやすくなり、結果として移し替え作業を円滑に遂行することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク移載方法の過程を(a)〜(c)の順に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るワーク移載装置を示す斜視図である。
【図3】一実施形態のワーク移載装置によって、粘着テープに小径フレームを載置するまでの工程を(a)〜(c)の順に示す断面図である。
【図4】一実施形態のワーク移載装置によって、粘着テープを小径フレームの裏面に貼着して貼着領域を形成し、この後、非貼着領域をカットするまでの過程を(a)〜(c)の順に示す断面図である。
【図5】一実施形態のワーク移載装置によって小径フレームにワークが移載された状態を示す断面図である。
【図6】図5の一部を拡大した図であって、(a)はテープ切断手段で粘着テープの非貼着領域を切断する状態を示す図、(b)はテープ貼着手段で粘着テープの貼着領域を小径フレームに貼り付ける状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)半導体ウェーハ
図1は、一実施形態のワーク移載方法の手順を(a)〜(c)の順に示している。図1の符号1で示す一実施形態のワークは、シリコンウェーハ等の、厚さが例えば100〜700μm程度に薄化加工された円板状の半導体ウェーハである。このウェーハ1には、格子状の分割予定ライン2によって多数の矩形状の半導体チップ3が区画されている。各チップ3の表面には、ICやLSI等の図示せぬ電子回路が形成されている。なお、ウェーハ1の裏面にはダイボンディング用の上記DAFが貼着される場合がある。
【0018】
ウェーハ1は、分割予定ライン2にダイシング加工が施された後、放射方向に拡張されることにより分割予定ライン2に沿って分断され、各チップ3に分割される。この場合のダイシング加工は、ウェーハ1を個々のチップ3に分割するための予備加工であり、切削加工やレーザ加工といった手段が採用される。
【0019】
ダイシング加工のうちの切削加工としては、表面側の分割予定ライン2に溝を形成するハーフカットの後に裏面を研削する先ダイシング加工や、ウェーハ1の裏面に上記DAFが貼着されている場合等においてウェーハ1のみを表面側から完全に切断する加工等が考えられる。一方、レーザ加工は、透過性を有するパルスレーザ光線をウェーハ1の内部に集光点を合わせて照射することにより、分割予定ライン2に沿って変質層を形成して分割予定ライン2の強度を低下させる加工や、分割予定ライン2に沿ってアブレーション加工を施す方法等が考えられる。
【0020】
ウェーハ1にダイシング加工を施す際には、図1(a)に示すように、ウェーハ1は粘着テープ10を介して第1の環状フレーム(以下、大径フレームと称する)11の内側の開口部11aに支持される。大径フレーム11はステンレス等の剛性を有する金属板からなるもので、粘着テープ10は、大径フレーム11の裏面に開口部11aを覆って貼り付けられる。粘着テープ10は、伸縮性を有する基材の片面に粘着層が形成されたもので、粘着層が大径フレーム11の裏面に合わせられる。粘着テープ10の基材としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン等の合成樹脂シートが挙げられ、粘着層はアクリル系樹脂が挙げられる。
【0021】
ウェーハ1は、大径フレーム11の開口部11aに同心状に配置され、裏面側が粘着テープ10の粘着層に貼着される。これによりウェーハ1は粘着テープ10を介して大径フレーム11に一体に支持される。そしてウェーハ1は大径フレーム11を取り扱うことにより、上記ダイシング加工の工程に搬送される。
【0022】
ダイシング加工後、上記のようにウェーハ1は放射方向に拡張されて多数のチップ3に分割されるが、ウェーハ1の拡張は粘着テープ10を拡張することによって同時になされる。ウェーハ1が多数のチップ3に分割された後、該ウェーハ1は、図1(b)〜(c)に示すように、大径フレーム11から、大径フレーム11よりも一回り小さい環状の小径フレーム(第2の環状フレーム)21に移し替えられて該小径フレーム21により支持される。
【0023】
本実施形態では、図2および図3(a)に示すワーク移載装置30によって粘着テープ10の拡張によるウェーハ1の分割と、分割後のウェーハ1の小径フレーム21への移し替えがなされる。小径フレーム21は、開口部21aを形成する内径が分割後のウェーハ1の外径よりも大きく、外径が大径フレーム11の内径よりも小さい環状のフレームであって、大径フレーム11と同様にステンレス等の剛性を有する金属板でできている。
【0024】
以下、ワーク移載装置30と、ワーク移載装置30を用いたウェーハ1の分割ならびにウェーハ1の移載方法を説明する。
【0025】
(2)ワーク移載装置
図2および図3(a)に示すワーク移載装置30は、大径フレーム11を保持する円筒状の大径フレーム保持台40と、大径フレーム保持台40の内部に同心状に配設された円筒状のテープ突き上げ部材50と、テープ突き上げ部材50の内部に配設されたテープ貼着手段60およびテープ切断手段70と、テープ突き上げ部材50の上方に配設され、小径フレーム21を粘着テープ10にセットする小径フレームセット手段80とを備えている。
【0026】
大径フレーム保持台40は、軸線が鉛直方向と平行になるように設置されるもので、内径が大径フレーム11の内径と同程度であり、上端面に、環状に形成された負圧式の吸着部41が設けられている。この吸着部41は、空気を吸引することによってワークを吸着して保持する機能を有するもので、図3(a)に示すように、裏面に貼着された粘着テープ10を介して大径フレーム11が該吸着部41に吸着、保持される。
【0027】
テープ突き上げ部材50は、大径フレーム11の内縁よりも小さく、かつ、小径フレーム21の外縁よりも大きな径寸法を有するもので、図示せぬ昇降機構により軸方向に沿って昇降するものである。このテープ突き上げ部材50の内部には、図2に示すように円板状の回転プレート35が矢印A方向に回転可能に設置されており、この回転プレート35上に、テープ貼着手段60およびテープ切断手段70が取り付けられている。
【0028】
テープ貼着手段60は、回転プレート35上に立設されたシリンダ61と、このシリンダ61の、上下方向に伸縮するピストンロッド62の上端にステー63を介して回転自在に装着されたローラ64とを備えるものである。ローラ64は、回転軸が回転プレート35の径方向に延びており、回転プレート35の周方向に沿って転動可能とされている。また、ローラ64の幅は、小径フレーム21の半分程度に設定されており、回転プレート35が回転して形成されるローラ64の回転軌跡は、小径フレーム21の幅方向の中央よりも内周側の環状部分に対応するものとなっている。
【0029】
テープ切断手段70は、テープ貼着手段60よりも外周側に配設されており、回転プレート35上に立設されたシリンダ71と、このシリンダ71の、上下方向に伸縮するピストンロッド72の上端にステー73を介して回転自在に装着された円板状のカッタ74とを備えるものである。カッタ74は、回転軸が回転プレート35の径方向に延びており、回転プレート35の周方向に沿って転動可能とされている。回転プレート35が回転して形成されるカッタ74の刃先の回転軌跡は、小径フレーム21の幅方向の中央よりも外周側の部分に対応するものとなっている。
【0030】
小径フレームセット手段80は、テープ突き上げ部材50と同心状に配設される円板状の吸着パッド81と、この吸着パッド81の上面の中心に固定され、図示せぬ昇降機構により自身の延びる上下方向に昇降させられる昇降アーム85とを備えるものである。吸着パッド81の下面の外周縁部には、環状に形成された負圧式の吸着部82が設けられている。この吸着部82は、大径フレーム保持台40の吸着部41と同様に、空気を吸引することによってワークを吸着して保持する機能を有するもので、図3(a)に示すように、小径フレーム21が該吸着部82に吸着、保持される。
【0031】
吸着パッド81の吸着部82に保持された小径フレーム21は、回転プレート35の回転中心と同心状に位置付けられる。そして、その保持状態においては、該小径フレーム21の内周側がテープ貼着手段60のローラ64に対応し、外周側がテープ切断手段70のカッタ74の刃先に対応する。
【0032】
(3)ワーク移載装置の動作
続いて、図3〜図6を参照して、上記ワーク移載装置30の動作を、ウェーハ1を粘着テープ10とともに拡張して多数のチップ3に分割する工程と、分割済みのウェーハ1を小径フレーム21に移し替える工程に分けて説明する。後者の移し替え工程が、本発明のワーク移載方法に係る。なお、図2で周方向の位置関係が互いに近接して図示されているテープ貼着手段60とテープ切断手段70を、図3〜図5では離れて図示しているが、これは、両者の機能を明確に示すためであり、周方向の位置は任意である。
【0033】
(3−1)ウェーハの分割
図3(a)はワーク移載装置30の運転待機状態を示しており、分割前のウェーハ1が粘着テープ10を介して支持された大径フレーム11は、大径フレーム保持台40の吸着部41に、粘着テープ10を介して吸着、保持されている。また、小径フレームセット手段80の昇降アーム85は上昇して吸着パッド81がウェーハ1の上方に退避しており、吸着パッド81の吸着部82に小径フレーム21が吸着、保持されている。
【0034】
運転待機状態では、テープ突き上げ部材50は粘着テープ10よりも下方に位置付けられ、また、テープ貼着手段60およびテープ切断手段70の各ピストンロッド62,72は縮小してローラ64およびカッタ74も粘着テープ10より下方に位置付けられている。そして粘着テープ10は水平に張られ、ウェーハ1は空中に浮いた状態となる。
【0035】
次に、テープ突き上げ部材50が上昇して粘着テープ10の下面に当接し、さらにテープ突き上げ部材50が上昇して、図3(b)に示すようにウェーハ1が大径フレーム11よりも高いテープ拡張位置に位置付けられる。
【0036】
ウェーハ1が拡張位置に達する過程において、粘着テープ10は放射方向に引っ張られる力を受けて拡張する。そして粘着テープ10が放射方向に拡張するに伴い、ウェーハ1は、ダイシング加工が施されている分割予定ライン2に沿って分断され、個々のチップ3に分割される。各チップ3の間には、粘着テープ10の拡張によって僅かな隙間が空いている。なお、ウェーハ1の裏面にDAFが貼着されている場合には、DAFも個々のチップ3に貼着した状態でチップ3ごとに分割される。
【0037】
(3−2)小径フレームへのウェーハの移載
多数のチップ3に分割されたウェーハ1は、次の工程(例えばチップ3を粘着テープ10から取り出すピックアップ工程)に搬送されるが、粘着テープ10が拡張したままでは前述のようにチップ3が損傷するなどの不具合が起こる場合がある。すなわち、多数のチップ3に分割されたウェーハ1は、図3(b)の状態からテープ突き上げ部材50を下降させることにより当該装置30から取り出すことが可能になるが、その際に粘着テープ10が弛んでしまい、これによって隣り合うチップ3どうしが擦れ合って損傷する可能性がある。このような不具合の発生を防ぐために、本実施形態では、次のようにして小径フレーム21にウェーハ1が移し替えられる。
【0038】
まず、図3(c)に示すように、小径フレームセット手段80の昇降アーム85を下方に伸ばして吸着パッド81を下降させ、吸着部82に保持されている小径フレーム21の裏面を、粘着テープ10における大径フレーム11の内縁とウェーハ1の外縁との間の環状領域10aに対し、近接するか、あるいは接触した状態とする(第2の環状フレームセット工程)。
【0039】
この段階では、小径フレーム21の裏面には粘着テープ10が貼着されない状態となっている。この“貼着されない状態”とは、粘着テープ10が接触しておらず貼着することが不可能な状態、あるいは、接触していたとしても粘着テープ10の粘着性が十分には発揮されずに、例えば粘着テープ10の位置が動かないように押さえているといった補助的な作用を与えなくても、小径フレーム21を上方に動かせば容易に粘着テープ10から剥離することが可能な状態を言う。
【0040】
次に、図4(a)に示すように、テープ貼着手段60のピストンロッド62を上方に伸ばしてローラ64を上昇させ、ローラ64により粘着テープ10の一部を小径フレーム21の裏面に押し付けて密着させる。続いてこの状態を維持しながら、図4(b)に示すように回転プレート35を少なくとも1回転させる(粘着テープ貼着工程)。これによりローラ64は、図6(b)に示す粘着テープ10の小径フレーム21に対応する環状領域15のうちの内周側を小径フレーム21に押し付けながら転動し、該内周側が、小径フレーム21に密着した貼着領域15aに形成される。一方、該環状領域15の、ローラ64が転動しない外周側は、粘着テープ10が貼着しないままの非貼着領域15bとして形成される。
【0041】
次に、図4(c)に示すように、ローラ64を元の位置に下降させる。また、テープ切断手段70のピストンロッド72を上方に伸ばしてカッタ74を上昇させ、カッタ74の刃先を粘着テープ10に貫通させて小径フレーム21の裏面に当接させる。カッタ74は、図6(a)に示すように、粘着テープ10の非貼着領域15bを貫通する。この状態から、再び回転プレート35を少なくとも1回転させる(粘着テープ切断工程)。これにより粘着テープ10の非貼着領域15bがカッタ74により切断され、粘着テープ10は円形状に切り抜かれる。
【0042】
次いで、図5に示すように小径フレームセット手段80の吸着パッド81を上昇させる。小径フレーム21には、カッタ74で円形状に切り抜かれた粘着テープ10の貼着領域15aが密着することにより、拡張されてテンションが付与されたままの状態の粘着テープ10が開口部21aに張られており、その粘着テープ10上に、多数のチップ3に分割済みのウェーハ1が粘着されている。すなわち、小径フレーム21へのウェーハ1の移し替えが完了し、この後、小径フレーム21が吸着パッド81から外され、ウェーハ1は小径フレーム21ごと次工程に搬送されるが、粘着テープ10は拡張状態であるため、分割されたチップ3間の間隔は維持され、したがって搬送の際、チップ3どうしが接触することは起こらずチップ3の損傷が防止される。
【0043】
(4)一実施形態の作用効果
上記一実施形態によれば、テープ貼着手段60のローラ64を周回させて粘着テープ10を小径フレーム21に貼り付ける際、粘着テープ10の小径フレーム21に対応する環状領域15の全面ではなく、該環状領域15の内周側の部分のみを小径フレーム21に密着させて貼り付けて内周側に貼着領域15aを形成し、これと同時に、貼着領域15aの外周側に粘着テープ10が貼着されない非貼着領域15bを形成している。
【0044】
そしてこの非貼着領域15bをカッタ74により切断するため、小径フレーム21を上昇させて取り上げた時に、該小径フレーム21は粘着テープ10の非貼着領域15b、すなわち粘着テープ10の不要部分から容易に剥離させることができる。その結果、小径フレーム21へのウェーハ1の移し替え作業を円滑に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、粘着テープ10を拡張し、この拡張した粘着テープ10に貼り付けた小径フレーム21にワーク(ウェーハ1)を移し替える例であるが、本発明は粘着テープを拡張するか否かにかかわらず、大径フレームに粘着テープを介して貼り付けられているワークを小径フレームに移し替える点で共通であれば、様々な場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…半導体ウェーハ(ワーク)、2…分割予定ライン、3…半導体チップ、10…粘着テープ、11…大径フレーム(第1の環状フレーム)、11a…大径フレームの開口部、15…環状領域、15a…貼着領域、15b…非貼着領域、21…小径フレーム(第2の環状フレーム)、21a…小径フレームの開口部、30…ワーク移載装置、60…テープ貼着手段、70…テープ切断手段、80…小径フレームセット手段(第2の環状フレームセット手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環状フレームの開口部に配置され、粘着テープを介して該第1の環状フレームに支持されたワークを、該第1の環状フレームの内縁よりも小さい外縁を有する第2の環状フレームに移し替える方法であって、
前記粘着テープに対し前記第2の環状フレームを、該第2の環状フレームの開口部内に前記ワークが配置される状態に、前記第1の環状フレームの開口部に張られている該粘着テープに近接させるか、または接触させることによりセットする第2の環状フレームセット工程と、
前記粘着テープの、前記第2の環状フレームに対応する環状領域のうちの内周側を該第2の環状フレームに密着させて貼り付け、これにより該粘着テープの該環状領域に、該第2の環状フレームに貼着されている内周側の貼着領域と、該粘着テープが貼着されていない外周側の非貼着領域とを形成する粘着テープ貼着工程と、
前記粘着テープの前記環状領域における前記非貼着領域を、前記貼着領域を囲むようにして切断する粘着テープ切断工程と、
を含むことを特徴とするワーク移載方法。
【請求項2】
第1の環状フレームの開口部に配置され、粘着テープを介して該第1の環状フレームに支持されたワークを、該第1の環状フレームの内縁よりも小さい外縁を有する第2の環状フレームに移し替える装置であって、
前記粘着テープに対し前記第2の環状フレームを、該第2の環状フレームの開口部内に前記ワークが配置される状態に、前記第1の環状フレームの開口部に張られている該粘着テープに近接させるか、または載置することによりセットする第2の環状フレームセット手段と、
前記粘着テープの、前記第2の環状フレームに対応する環状領域のうちの内周側を該第2の環状フレームに密着させて貼り付け、これにより該粘着テープの該環状領域に、該第2の環状フレームに貼着されている内周側の貼着領域と、該粘着テープが貼着されていない外周側の非貼着領域とを形成する粘着テープ貼着手段と、
前記粘着テープの前記環状領域における前記非貼着領域を、前記貼着領域を囲むようにして切断する粘着テープ切断手段と、
を含むことを特徴とするワーク移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−192510(P2010−192510A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32553(P2009−32553)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】