説明

ワーク把持装置

【課題】ロボットに連結されるフレームと、そのフレームに支持された第1乃至第3のクランプ装置を有し、第1乃至第3のクランプ装置のクランプをワークに係合させて、該ワークを把持するワーク把持装置において、1台のワーク把持装置によって各種形態のワークを把持して運搬できるようにする。
【解決手段】第2のクランプ装置9Aを第1のクランプ装置9に対して接近又は離隔する方向に移動可能にフレーム7に支持すると共に、第3のクランプ装置9Bを、第1及び第2のクランプ装置9,9Aのピンクランプ14,14Aを結ぶ直線Lに対して、直交する方向に移動可能にフレーム7に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのアームに連結されるフレームと、該フレームに支持された第1乃至第3のクランプ装置とを有し、その各クランプ装置のクランプをワークに係合させて該ワークを把持するワーク把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記形式のワーク把持装置は、自動車工場などの各種工場、又はその他の個所において広く採用されている。ワーク把持装置によって把持されたワークは、ロボットのアームの作動によって、所定の位置に運搬される。
【0003】
ところで、この種のワーク把持装置によって把持されて運搬されるワークには各種の形態の物があり、その大きさや形状は一定していない。これに対し、従来のワーク把持装置は、第1乃至第3のクランプ装置が、ロボットのアームに連結されたフレームに対して位置不動に固定され、各クランプ装置間の間隔が一定していた。このため、1つのワーク把持装置によって、異なった形態のワークを把持して運搬することはできなかった。そこで従来は、クランプ装置間の間隔が異なる複数種類のワーク把持装置を用意しておき、運搬すべきワークの形態に合わせてワーク把持装置を選択し、その選択したワーク把持装置をロボットのアームに連結して当該形態のワークを把持していた。ところが、このようにすると、複数のワーク把持装置を用意しなければならないので、多大なコストを必要とするだけでなく、複数のワーク把持装置を設置する広いスペースを必要とし、さらにワーク把持装置を交換する作業が必要となる欠点を免れない。
【0004】
2つのクランプ装置を有し、その両クランプ装置の間の間隔を調整可能としたワーク把持装置も提案されているが(特許文献1参照)、このワーク把持装置は、クランプ装置の数が2つであるため、ワークの形態によっては、そのワークを安定した状態に把持することができない欠点を有している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−167791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来の欠点を除去したワーク把持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、ロボットのアームに連結されるフレームと、該フレームに対して位置不動に支持された第1のクランプ装置と、該第1のクランプ装置に対して接近又は離隔する方向に移動可能に前記フレームに対して支持された第2のクランプ装置と、該第2のクランプ装置を前記第1のクランプ装置に対して接近又は離隔する方向に移動させる第1の駆動装置と、前記第1のクランプ装置がワークに係合する個所と前記第2のクランプ装置が前記ワークに係合する個所とを結ぶ直線に対してほぼ直交する方向に移動可能に前記フレームに対して支持された第3のクランプ装置と、該第3のクランプ装置を前記直線に対してほぼ直交する方向に移動させる第2の駆動装置とを具備して成るワーク把持装置を提案する(請求項1)。
【0008】
また、上記請求項1に記載のワーク把持装置において、前記第1及び第2のクランプ装置は、退避位置と突出位置との間を揺動可能なピンクランプと、該ピンクランプを揺動させるクランプ駆動装置とを有し、退避位置を占めた前記ピンクランプを前記ワークに形成された孔に挿通した後、該ピンクランプを突出位置に揺動させて、当該ピンクランプをワークに係合させるように構成されていると有利である(請求項2)。
【0009】
さらに、上記請求項1又は2に記載のワーク把持装置において、前記第3のクランプ装置は、複数の歯が形成された歯付きクランプを有し、該歯付きクランプの歯が前記ワークの縁部に係合するように構成されていると有利である(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持すべきワークの形態に合わせて、第2のクランプ装置と第3のクランプ装置を移動させることができるので、1つのワーク把持装置によって、各種形態のワークを把持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1はロボット1と、そのロボット1に装着されたワーク把持装置2とを示す概略平面図である。ここに示したロボット1は、ロボット本体3と、その本体3から突出し、矢印A,B方向に回動するアーム4とを有し、そのアーム4の先端部にワーク把持装置2が着脱可能に取り付けられている。ロボット1とワーク把持装置2とによって、ワーク運搬装置が構成されている。
【0013】
ワーク把持装置2によって、各種形態のワークを把持することができるが、ここでは自動車のバックドアのインナパネルより成るワーク5を、バックドアのアウタパネル6のところまで運搬する例を示している。ワーク把持装置2を装着したアーム4は、先ず図1に矢印Aで示した方向に回動し、そのワーク把持装置2が、ワーク5の上方位置に至ったところで、アーム4が停止し、次いでそのアーム4がワーク把持装置2と共に下降し、該ワーク把持装置2が後述するように、ワーク5を把持する。次いで、アーム4は、ワーク把持装置2とこれに把持されたワーク5と共に上昇した後、矢印B方向に回動する。このようにして、ワーク5が運搬され、そのワーク5がアウタパネル6の上方に至ったところで、アーム4が停止する。次いでそのアーム4がワーク把持装置2及びワーク5と共に下降し、インナパネルより成るワーク5がアウタパネル6に組み付けられ、ここでワーク把持装置2によるワーク5に対する把持が解除される。引き続き、アーム4はワーク把持装置2と共に上昇し、矢印A方向に回動する。一方、互いに組み付けられたインナパネルとアウタパネル6は、ヘミング加工されて一体化される。
【0014】
図2はワーク把持装置2を斜め下方から見た斜視図である。ここに示したワーク把持装置2は、ロボット1のアーム4の先端部に着脱可能に連結されたフレーム7を有し、このフレーム7には、第1乃至第3のサポート8,8A,8Bが一体に固定されている。また、第1乃至第3のサポート8,8A,8Bには、第1乃至第3のクランプ装置9,9A,9Bがそれぞれ支持されている。
【0015】
第1のクランプ装置9は、第1のサポート8に対して位置不動に支持されている。この第1のサポート8は前述のようにフレーム7に固定されているので、第1のクランプ装置9は、第1のサポート8を介して、フレーム7に対し位置不動に支持される。
【0016】
一方、第2のクランプ装置9Aは、第2のサポート8Aに矢印C,Dで示した方向に摺動可能に組み付けられた基台10Aに固定支持され、その基台10Aが第2のサポート8Aに案内されながら矢印C,D方向に摺動することにより、第2のクランプ装置9Aは第1のクランプ装置9に対して接近し、又は離隔する方向に移動する。第2のサポート8Aはフレーム7に固定されているので、第2のクランプ装置9Aは、その第2のサポート8Aを介して、第1のクランプ装置9に対して接近又は離隔する方向に移動可能にフレーム7に対して支持される。
【0017】
また、第2のサポート8Aには、第1のモータ11Aが固定支持され、この第1のモータ11Aの作動により、基台10Aが矢印C,D方向に駆動され、第2のクランプ装置9Aが第1のクランプ装置9に対して接近又は離隔する方向に移動する。このように、第1のモータ11Aは、第2のクランプ装置9Aを第1のクランプ装置9に対して接近又は離隔する方向に移動させる第1の駆動装置の一例を構成している。
【0018】
第1及び第2のクランプ装置9,9Aは、図3にも示すように、それぞれクランプ駆動装置12,12Aと、各クランプ駆動装置12,12Aに固定された中空な基準ピン13,13Aと、その各基準ピン13,13A内に設けられた爪状のピンクランプ14,14Aとを有している。クランプ駆動装置12,12Aは、例えばモータ又はエアシリンダなどから構成されていて、各ピンクランプ14,14Aは、各クランプ駆動装置12,12Aの作動によって、図3の(a)に示した基準ピン13,13A内の退避位置と、該基準ピン13,13Aに形成された開口15,15Aを通して外部に突出した図3の(b)に示した突出位置との間を揺動可能に支持されている。
【0019】
上述のようなピンクランプ14,14Aを備えたクランプ装置9,9A自体は従来より周知な装置であり(特開2000−167791号公報及び特開2000−176873号公報を参照)、かかる第1のクランプ装置9のクランプ駆動装置12は第1のサポート8に固定され、これによって第1のクランプ装置9が第1のサポート8に対して位置不動に支持される。また、第2のクランプ装置9Aのクランプ駆動装置12Aは、第2のサポート8Aに対して摺動可能に組み付けられた基台10Aに固定され、これによって第2のクランプ装置9Aが基台10Aに対して固定支持される。
【0020】
一方、図1に示したワーク5には、互いに離間して位置する一対の孔16,16Aが形成されている。かかるワーク5をワーク把持装置2によって把持するには、前述のように、ロボット1のアーム4を、矢印A方向に回動させ、そのアーム4に支持されたワーク把持装置2がワーク5の上方位置に至ったとき、アーム4を停止させ、次いでそのアーム4をワーク把持装置2と共に下降させる。これにより、図3の(a)に示すように、下降する第1及び第2のクランプ装置9,9Aの基準ピン13,13Aが、これに内設されたピンクランプ14,14Aと共に、ワーク5に形成された孔16,16Aにそれぞれ挿入される。このとき、各ピンクランプ14,14Aは退避位置を占めている。各基準ピン13,13Aとピンクランプ14,14Aが、各孔16,16Aに挿通されると、図3の(b)に示すように、各ピンクランプ14,14Aが、各クランプ駆動装置12,12Aによって、突出位置に移動する。これによって各ピンクランプ14,14Aは、各孔16,16Aの周辺のワーク部分に係合する。
【0021】
上述のように、本例のワーク把持装置2の第1及び第2のクランプ装置9,9Aは、退避位置と突出位置との間を揺動可能なピンクランプ14,14Aと、そのピンクランプ14,14Aを揺動させるクランプ駆動装置12,12Aとを有し、退避位置を占めたピンクランプ14,14Aをワーク5に形成された孔16,16Aに挿通した後、該ピンクランプ14,14Aを突出位置に揺動させて、その各ピンクランプ14,14Aをワーク5に係合させるように構成されている。
【0022】
一方、図2に示したように、第3のサポート8Bにも、矢印E,F方向に摺動可能な基台10Bが組み付けられ、その基台10Bに前述の第3のクランプ装置9Bが固定されている。ここに例示した第3のクランプ装置9Bは、上下方向に配列された複数の歯17が形成された歯付きクランプ18を有し、かかるクランプ18の基部が基台10Aに固定されている。
【0023】
また、第3のサポート8Bには、第2のモータ11Bが固定支持され、この第2のモータ11Bの作動によって、基台10Bが第3のクランプ装置9Bと共に矢印E,F方向に移動する。
【0024】
ここで、図2に示すように、第1のクランプ装置9のピンクランプ14が前述のようにワーク5に係合する個所と、第2のクランプ装置9Aのピンクランプ14Aがワーク5に係合する個所を結ぶ直線Lを考えたとき、基台10Bと、これに固定された歯付きクランプ18より成る第3のクランプ装置9Bは、この直線Lに対してほぼ直交する方向E,Fに移動可能にフレーム7に対して支持されている。第2のモータ11Bは、第3のクランプ装置9Bを上述の直線Lに対してほぼ直交する方向E,Fに移動させる第2の駆動装置の一例を構成する。
【0025】
前述のように、アーム4を図1に矢印Aで示した方向に回動させ、ワーク把持装置2がワーク5の上方に至ったとき、そのアーム4を停止させ、次いでアーム4をワーク把持装置2と共に下降させるが、その下降時に、歯付きクランプ18は、図1に示したワーク5に接触することなく、そのワーク5に形成された窓孔19中を下方に移動する。このとき、歯付きクランプ18の歯17は、窓孔19を区画するワーク5の縁部20に対向している。
【0026】
アーム4が最下方位置に至ったとき、第2のモータ11Bが作動し、基台10Bと歯付きクランプ18が図2に矢印Eで示した方向に移動し、その歯付きクランプ18の歯17が、ワーク5の縁部20に係合する。このとき、前述のように、第1及び第2のクランプ装置9,9Aのピンクランプ14,14Aがワーク5に係合するので、ワーク5は第1乃至第3のクランプ装置9,9A,9Bによって把持される。次いで、アーム4が、ワーク把持装置2と、これに把持されたワーク5と共に上昇し、ワーク5が図1に示したアウタパネル6のところに運搬される。この運搬時、ワーク5は、第1乃至第3の3つのクランプ装置9,9A,9Bによって把持されているので、傾くようなことなく、安定した状態で運搬される。
【0027】
ワーク5がアウタパネル6の上に載せられ、これらが組み付けられると、図3の(b)に示した各ピンクランプ14,14Aは、クランプ駆動装置12,12Aの作動によって、図3の(a)に示した退避位置に揺動し、各ピンクランプ14,14Aとワーク5の係合が解除される。同時に、第2のモータ11Bの作動によって、歯付きクランプ18が矢印F方向に移動され、その歯17がワーク5の縁部20から離れる。このようにしてワーク把持装置2によるワーク5への把持状態が解除される。このため、アーム4を上昇させることによって、支障なくワーク把持装置をワーク5から離間させることができる。
【0028】
図1に示したワーク5の一対の孔16,16Aの間の間隔Gと、その孔16,16Aから縁部20までの距離Hが異なるワーク5を把持するときは、図2に示した第1のモータ11Aを作動させて、両ピンクランプ14,14Aの間の間隔が、把持すべきワーク5の間隔Gに合致するように、第2のクランプ装置9Aを矢印C,D方向に移動させると共に、歯付きクランプ18の歯17をワーク5の縁部20に係合させるべく、その歯付きクランプ18を第2のモータ11Bの作動によって矢印E方向に移動させるとき、その移動量を把持すべきワーク5の距離Hに合わせて制御する。このようにして、いかなる形態のワークも、1台のワーク把持装置2によって確実に把持し、これを支障なく運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ロボットとそのロボットに装着されたワーク把持装置の概略を示す平面図である。
【図2】ワーク把持装置を斜め下方から見たときの斜視図である。
【図3】ピンクランプの作用を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ロボット
2 ワーク把持装置
4 アーム
5 ワーク
7 フレーム
9 第1のクランプ装置
9A 第2のクランプ装置
9B 第3のクランプ装置
12,12A クランプ駆動装置
14,14A ピンクランプ
16,16A 孔
17 歯
18 歯付きクランプ
20 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのアームに連結されるフレームと、該フレームに対して位置不動に支持された第1のクランプ装置と、該第1のクランプ装置に対して接近又は離隔する方向に移動可能に前記フレームに対して支持された第2のクランプ装置と、該第2のクランプ装置を前記第1のクランプ装置に対して接近又は離隔する方向に移動させる第1の駆動装置と、前記第1のクランプ装置がワークに係合する個所と前記第2のクランプ装置が前記ワークに係合する個所とを結ぶ直線に対してほぼ直交する方向に移動可能に前記フレームに対して支持された第3のクランプ装置と、該第3のクランプ装置を前記直線に対してほぼ直交する方向に移動させる第2の駆動装置とを具備して成るワーク把持装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のクランプ装置は、退避位置と突出位置との間を揺動可能なピンクランプと、該ピンクランプを揺動させるクランプ駆動装置とを有し、退避位置を占めた前記ピンクランプを前記ワークに形成された孔に挿通した後、該ピンクランプを突出位置に揺動させて、当該ピンクランプをワークに係合させるように構成されている請求項1に記載のワーク把持装置。
【請求項3】
前記第3のクランプ装置は、複数の歯が形成された歯付きクランプを有し、該歯付きクランプの歯が前記ワークの縁部に係合するように構成されている請求項1又は2に記載のワーク把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276057(P2007−276057A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106189(P2006−106189)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】