ワーク接触点補正システムおよび旋盤
【課題】簡単かつ高精度に、ワークの被接触面に対するワーク接触部材の接触点の位置を補正できるワーク接触点補正システムおよび旋盤を提供することを課題とする。
【解決手段】ワーク接触点補正システム2は、ワークWの被接触面W1の形状に沿って、該被接触面W1に対する接触点が変化するワーク接触部材21と、ワーク接触部材21を撮像する撮像装置24と、撮像装置24が撮像した画像からワーク接触部材21の外形線に関する実測データR1を取得し、実測データR1を基に接触点の位置を補正する演算部220aを有する制御装置22と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】ワーク接触点補正システム2は、ワークWの被接触面W1の形状に沿って、該被接触面W1に対する接触点が変化するワーク接触部材21と、ワーク接触部材21を撮像する撮像装置24と、撮像装置24が撮像した画像からワーク接触部材21の外形線に関する実測データR1を取得し、実測データR1を基に接触点の位置を補正する演算部220aを有する制御装置22と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対するチップの切削点などの接触点を補正するワーク接触点補正システムおよび旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラにより、ワーク切削用のチップを撮像する旋盤が開示されている。同文献記載の旋盤によると、カメラの画像から、チップの形状を認識することができる。このため、チップの種類を識別することができる。また、チップの破損を知ることができる。また、チップの摩耗量を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−253979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークの被切削面の形状によっては、ワークに対するチップの切削点の位置が、変化する場合がある。すなわち、複数の切削点が存在する場合がある。図23(a)に、切削加工の模式図を示す。図23(b)に、チップの模式図を示す。図23(a)に示すワーク100は、ベアリングの内輪である。ワーク100の外周面には、凹曲面状の被切削面100aが設定されている。一方、チップ101は、円形状を呈している。ワーク100は、水平面内において、自身の軸周りに回転している。図23(a)に矢印で示すように、チップ101は、被切削面100aをなぞるように、部分円弧状の軌道L100で移動する。当該移動により、被切削面100aに切削加工が施される。
【0005】
図23(b)に示すように、チップ101に、最上部を中心角θ=0°として、反時計回りに大きくなる中心角θを設定する。図23(a)に示すように、チップ101が移動するのに従って、切削点は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。なお、特許文献1には、このような切削点の変化に関する記載はない。
【0006】
ここで、チップ101の軌道L100は、チップ101の形状を基に、設定されている。また、チップ101の形状は、JIS規格などの工業規格により規定されている。また、チップ101の内接円L101の直径D1などの各種寸法については、工業規格により等級が設定されている。また、等級ごとに、寸法に対する公差が設定されている。例えば、JIS B 4120(1998年)には、等級が並級Mのチップ101の直径D1について、±0.13mmの公差が設定されている。また、等級が研磨級Gのチップ101の直径D1について、±0.025mmの公差が設定されている。このことは、市販のチップ101には、公差以下の寸法精度を望むことができないことを意味する。
【0007】
このため、予め設定されている軌道L100を遵守して、高い寸法精度を要求される被切削面100a(ベアリングの軌道面)に切削加工を施すと、チップ101の形状、並びに切削点の位置(θ=0°〜180°)によっては、チップ101が被切削面100aに接触しない場合がある。あるいは、チップ101が被切削面100aを深く彫りすぎる場合がある。このため、ワーク100の加工精度が低下してしまう。
【0008】
そこで、図23(b)に示すように、作業者がチップ101の複数箇所の直径D1〜D4を測定し、得られた直径D1〜D4の平均値を実測データとし、当該実測データと設定データとの差分を基に、チップ101の軌道L100を補正することが考えられる。こうすると、チップ101と被切削面100aとの接触状態が適切になる。しかしながら、この作業は非常に煩雑である。このため、実用性が低い。また、作業者のスキルにより補正の精度がばらつきやすい。
【0009】
また、一般的に、チップ101は、バイトの基準部に対して、単一のボルトにより、脱着可能に取り付けられている。このため、チップ101を交換する際や、チップ101摩耗時に取付角度を回転させる際、取付精度を再現することが困難である。
【0010】
また、図23(a)、図23(b)に示すように、チップ101が移動するのに従って、切削点は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。つまり、チップ101は、ワーク100の被切削面の形状に倣って接触する。ここで、各切削点における切削抵抗は、均一になりにくい。このため、各切削点における摩耗状態は均一になりにくい。したがって、数回切削加工を行った後、チップ101の各切削点の形状を測定し、その結果に応じてチップ101の移動軌跡(加工プログラム等)の補正(見直し)を行うことで、より高精度な切削加工を補償できるものと考えられる。また、この作業を頻繁に行うことで、更に緻密な加工精度の補償という効果が見込めるものと考えられる。
【0011】
本発明のワーク接触点補正システムおよび旋盤は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、簡単かつ高精度に、ワークの被接触面に対するワーク接触部材の接触点の位置を補正できるワーク接触点補正システムおよび旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するため、本発明のワーク接触点補正システムは、ワークの被接触面の形状に沿って、該被接触面に対する接触点が変化するワーク接触部材と、該ワーク接触部材を撮像する撮像装置と、該撮像装置が撮像した画像から該ワーク接触部材の外形線に関する実測データを取得し、該実測データを基に該接触点の位置を補正する演算部を有する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のワーク接触点補正システムによると、ワーク接触部材の画像から得られる実測データを基に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。補正作業は、制御装置が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記制御装置は、前記ワーク接触部材の外形線に関する設定データを格納する記憶部を有し、前記演算部は、該設定データと前記実測データとを比較して補正値を算出し、該補正値を基に前記接触点の位置を補正する構成とする方がよい。
【0015】
記憶部には、設定データが格納されている。設定データは、例えば、JIS規格などの工業規格を基に設定されている。演算部は、設定データと実測データとを比較して補正値を算出する。そして、補正値を基に、接触点の位置を補正する。本構成によると、基準となる設定データと、実測データと、を比較することにより、補正値を設定することができる。このため、補正値の設定が簡単になる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記被接触面に沿って前記接触点が変化するように、前記ワーク接触部材を駆動するスライド部を備え、前記演算部は、該スライド部の軌道を補正する構成とする方がよい。本構成によると、スライド部の軌道を補正することにより、接触点の位置を補正することができる。
【0017】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記ワーク接触部材は、前記ワークに切削加工を施すチップおよび該ワークの前記被接触面の状態を測定するワークプローブのうち、少なくとも一方である構成とする方がよい。ワーク接触部材がチップの場合、接触点は切削点になる。この場合は、ワークの加工精度を向上させることができる。また、ワーク接触部材がワークプローブの場合は、被接触面の検査精度を向上させることができる。
【0018】
(5)上記課題を解決するため、本発明の旋盤は、上記(4)の構成を備えることを特徴とする。本発明の旋盤によると、ワーク接触部材の画像から得られる実測データを基に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。補正作業は、制御装置が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、簡単かつ高精度に、ワークの被接触面に対するワーク接触部材の接触点の位置を補正できるワーク接触点補正システムおよび旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一実施形態の旋盤の斜視図である。
【図2】同旋盤の前面図である。
【図3】同旋盤のブロック図である。
【図4】ワーク接触点補正方法のフローチャートである。
【図5】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ1における前面図である。
【図6】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ3における前面図である。
【図7】図6の円VII内の拡大図である。
【図8】ワーク接触点補正方法のステップ4により撮像されたチップの画像である。
【図9】ワーク接触点補正方法のステップ6におけるX軸方向スキャンの模式図である。
【図10】同ステップ6で実行されるZ軸方向スキャンの模式図である。
【図11】同ステップ6で実行されるテンプレート作成の模式図である。
【図12】同ステップ6で作成されたテンプレートの模式図である。
【図13】ワーク接触点補正方法のステップ7で実行されるパターンマッチング前半の模式図である。
【図14】同ステップ7で実行されるパターンマッチング後半の模式図である。
【図15】テンプレートのシークライン上の位置と輝度との関係を示す模式図である。
【図16】同ステップ7で実行されるシークライン作成の模式図である。
【図17】図16の枠XVII内の拡大図である。
【図18】ワーク接触点補正方法のステップ8で実行されるシークライン作成前半の模式図である。
【図19】同ステップ8で実行されるシークライン作成後半の模式図である。
【図20】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ11における前面図である。
【図21】第二実施形態の旋盤のワーク接触点補正システムのZ軸スライド下端付近の拡大図である。
【図22】(a)は、第三実施形態の旋盤のチップ付近の拡大図である。(b)は、図22(a)の円XXIIb内の拡大図である。(c)は、摩耗したチップの先端付近の拡大図である。
【図23】(a)は、切削加工の模式図である。(b)は、チップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の旋盤の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のワーク接触点補正システムの実施の形態に関する説明を兼ねるものである。
【0022】
<第一実施形態>
まず、本実施形態の旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態の旋盤の斜視図を示す。図2に、同旋盤の前面図を示す。図3に、同旋盤のブロック図を示す。図1〜図3に示すように、本実施形態の旋盤1は、主軸41が上下方向に延在するいわゆる立型旋盤である。本実施形態の旋盤1は、ワーク接触点補正システム2と、チャック装置3と、テーブル4と、ベッド5と、コラム7と、バイト交換台8と、を備えている。
【0023】
[チャック装置3、テーブル4、ベッド5、コラム7、バイト交換台8]
テーブル4は、テーブル本体40と、主軸41と、を備えている。主軸41は、ベッド5に収容されている。主軸41の上端は、ベッド5の前部上面から突出している。テーブル本体40は、主軸41の上端に固定されている。
【0024】
チャック装置3は、テーブル本体40の上面に固定されている。チャック装置3は、ワークWを固定、解除可能である。ワークW、チャック装置3、テーブル4は、主軸モータ42から主軸41に伝達される駆動力により、水平面内における軸周りに回転可能である。
【0025】
ワークWは、軸受の内輪であり、円筒状を呈している。ワークWの外周面には、旋盤1によって切削加工される、凹曲面状の被切削面W1が配置されている。被切削面W1は、本発明の「被接触面」の概念に含まれる。被切削面W1は、ベアリングボールが転動する、軌道面である。
【0026】
コラム7は、ベッド5の後部の前上部に配置されている。コラム7は、ボールねじ部71と、X軸モータ72と、を備えている。ボールねじ部71は、左右方向に延在している。X軸モータ72の駆動軸は、ボールねじ部71のシャフト部に連結されている。バイト交換台8は、ベッド5の右面に取り付けられている。バイト交換台8は、複数のバイト28を保持することができる。
【0027】
[ワーク接触点補正システム2]
ワーク接触点補正システム2は、工具台20と、チップ21と、バイト28と、制御装置22と、スライド部23と、撮像装置24と、照明部25と、を備えている。
【0028】
(スライド部23)
スライド部23は、X軸スライド部230と、Z軸スライド部231と、ボールねじ部232と、Z軸モータ233と、を備えている。
【0029】
X軸スライド部230は、X軸下スライド230aと、X軸スライド230bと、を備えている。X軸下スライド230aは、コラム7の前方に固定されている。X軸下スライド230aは、左右方向(X軸方向に対応)に延在している。X軸スライド230bは、X軸下スライド230aに係合している。X軸スライド230bは、X軸下スライド230aに対して、左右方向に移動可能である。X軸スライド230bには、ボールねじ部71のナット部が取り付けられている。X軸モータ72の駆動力は、ボールねじ部71のシャフト部およびナット部を介して、X軸スライド230bに伝達される。すなわち、X軸スライド230bは、X軸モータ72の駆動力により、左右方向に移動可能である。
【0030】
Z軸スライド部231は、Z軸下スライド231aと、Z軸スライド231bと、を備えている。Z軸下スライド231aは、上下方向(Z軸方向に対応)に延在している。Z軸下スライド231aは、X軸スライド230bの前方に配置されている。Z軸スライド231bは、Z軸下スライド231aに係合している。Z軸スライド231bは、Z軸下スライド231aに対して、上下方向に移動可能である。
【0031】
ボールねじ部232は、上下方向に延在している。Z軸モータ233は、Z軸下スライド231aの上端に配置されている。Z軸モータ233の駆動軸は、ボールねじ部232のシャフト部に連結されている。一方、ボールねじ部232のナット部は、Z軸スライド231bに取り付けられている。Z軸モータ233の駆動力は、ボールねじ部232のシャフト部およびナット部を介して、Z軸スライド231bに伝達される。すなわち、Z軸スライド231bは、Z軸モータ233の駆動力により、上下方向に移動可能である。
【0032】
(工具台20、チップ21、バイト28)
工具台20は、Z軸スライド231bの下端に配置されている。バイト28は、工具台20に、交換可能に取り付けられている。チップ21は、円形状を呈している。チップ21は、バイト28の先端に取り付けられている。チップ21により、ワークWに切削加工が施される。工具台20、チップ21、バイト28は、X軸スライド部230およびZ軸スライド部231により、上下左右方向に駆動される。
【0033】
(撮像装置24、照明部25)
撮像装置24は、CCD(Charge−Coupled Device)センサカメラである。撮像装置24は、ベッド5の左面に取り付けられている。撮像装置24は、チップ21を撮像可能である。
【0034】
図3に示すように、照明部25は、撮像装置24に前後方向に対向して配置されている。チップ21を撮像する場合は、チップ21の正面側に撮像装置24が、背面側に照明部25が、各々配置される。
【0035】
(制御装置22)
図3に示すように、制御装置22は、コンピューター220と、入出力インターフェイス221と、モータ駆動回路と、照明部駆動回路と、を備えている。コンピューター220は、演算部220aと、記憶部220bと、を備えている。モータ駆動回路は、X軸モータ72、Z軸モータ233、主軸モータ42に、電気的に接続されている。照明部駆動回路は、照明部25に電気的に接続されている。入出力インターフェイス221には、撮像装置24から、画像データが伝送される。
【0036】
[ワーク接触点補正方法]
次に、本実施形態の旋盤により行われるワーク接触点補正方法について説明する。ワークWの被切削面W1は、径方向内側に凹む凹曲面状を呈している。このため、前出の図23(a)、図23(b)に示すように、被切削面100a(本実施形態の被切削面W1に相当)の形状に沿って、チップ101(本実施形態のチップ21に相当)の切削点(本発明の「接触点」の概念に含まれる。)が変化する。
【0037】
そこで、本実施形態においては、チップ21の交換後であってワークWの加工前に、ワーク接触点補正方法を実行する。具体的には、ワークW加工時の使用角度(例えば、図23(b)に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置)ごとに、補正値を算出する。そして、ワークW加工時に、チップ21の切削点を、適切に被切削面W1に接触させる。
【0038】
図4に、ワーク接触点補正方法のフローチャートを示す。ワーク接触点補正方法は、チップ21の画像を取得する画像取得ステップ(S1〜S4)と、チップ21の補正値算出用のテンプレートを作成するテンプレート作成ステップ(S5、S6)と、使用角度に対応した切削点の座標を取得する切削点座標取得ステップ(S7〜S9)と、使用角度に対応した補正値を算出する補正値算出ステップ(S10)と、を有している。なお、テンプレート作成ステップは、既に同種のチップ21に対するテンプレートが作成済みの場合は、実行しなくてもよい。
【0039】
(ステップ1)
ステップ1においては、ワーク接触点補正方法を開始する(S1)。図5に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ1における前面図を示す。図5に示すように、本ステップにおいては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、X軸スライド部230、Z軸スライド部231を駆動し、工具台20にバイト28を装着する。
【0040】
(ステップ2)
図4に示すように、ステップ2においては、初期設定を行う(S2)。すなわち、装着したバイト28のチップ21の刃先半径の設定値R0を、図3に示すコンピューター220に入力する。また、当該チップ21の測定角度(ワークW加工時におけるチップ21の使用角度)を、図3に示すコンピューター220に入力する。設定値R0、測定角度は、コンピューター220の記憶部220bに格納される。なお、設定値R0は、本発明の「設定データ」の概念に含まれる。
【0041】
(ステップ3)
図4に示すように、ステップ3においては、チップ21を移動させる(S3)。図6に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ3における前面図を示す。図7に、図6の円VII内の拡大図を示す。
【0042】
図6、図7に示すように、本ステップにおいては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、X軸スライド部230、Z軸スライド部231を駆動し、工具台20を移動させる。そして、撮像装置24の撮像エリアに、チップ21を配置する。
【0043】
(ステップ4)
図4に示すように、ステップ4においては、まず、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、照明部25を駆動する。そして、チップ21に、背面側から照明光を照射する。次に、演算部220aが、撮像装置24を用いて、チップ21を撮像する。図8に、ワーク接触点補正方法のステップ4により撮像されたチップの画像を示す。図8に示すチップ21の画像は、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに取り込まれる(S4)。
【0044】
(ステップ5)
図4に示すように、ステップ5においては、画像からチップ21の補正値を算出するためのテンプレートAの作成の有無を、図3に示すコンピューター220の演算部220aが確認する(S5)。テンプレートA作成済みの場合は、ステップ6をスキップして、ステップ7に進む。テンプレートA未作成の場合は、ステップ6に進む。
【0045】
(ステップ6)
ステップ6においては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、画像からテンプレートAを作成する(S6)。図9に、ワーク接触点補正方法のステップ6におけるX軸方向スキャンの模式図を示す。図10に、同ステップ6で実行されるZ軸方向スキャンの模式図を示す。図11に、同ステップ6で実行されるテンプレート作成の模式図を示す。図12に、同ステップ6で作成されたテンプレートの模式図を示す。
【0046】
本ステップにおいては、まず、図9に示すように、画像のチップ21に対して、X軸方向からスキャンを行う。そして、チップ21の外形線の位置を認識する。同様に、図10に示すように、画像のチップ21に対して、Z軸方向からスキャンを行う。そして、チップ21の外形線の位置を認識する。
【0047】
次に、図11に示すように、スキャンにより認識されたチップ21の外形線の位置を基に、外形線に対して、所定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置、θ=210°位置、θ=330°位置)ごとに、直線状のシークラインaを引く。この際、シークラインaの延在方向を、外形線の接線方向に直交させる。また、シークラインaの中央に、外形線との交差点を設定する。このようにして、図12に示すように、放射状に配置された合計9本のシークラインaの集合体である、テンプレートAを作成する。テンプレートAは、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに格納される。なお、一旦作成されたテンプレートAは、装着されているチップ21と同種のチップに対して共用化される。
【0048】
(ステップ7)
図4に示すように、ステップ7においては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、基準切削点(具体的には、チップ21のZ軸方向先端点、X軸方向先端点)の座標を取得する(S7)。
【0049】
本ステップにおいては、まず、パターンマッチングを実行する。図13に、ワーク接触点補正方法のステップ7で実行されるパターンマッチング前半の模式図を示す。図14に、同ステップ7で実行されるパターンマッチング後半の模式図を示す。図15に、テンプレートのシークライン上の位置と輝度との関係を模式図で示す。
【0050】
図13、図14に示すように、パターンマッチングにおいては、記憶部220bのテンプレートAと、画像のチップ21の外形線と、の位置合わせを行う。具体的には、全てのシークラインaとチップ21の外形線とが交差するように、チップ21に対してテンプレートAを走査させる。また、できるだけ交差点がシークラインaの中央に近づくように、テンプレートAを走査させる。
【0051】
交差点の位置の判別は、画像の輝度の変化を基に行われる。すなわち、図15に示すように、画像中、チップ21が配置されていない部分は、背面側からの照明光により明るい。このため輝度が高い(白い)。これに対して、画像中、チップ21が配置されている部分は暗い。このため輝度が低い(黒い)。したがって、シークラインaとチップ21の外形線との交差点付近においては、輝度が著しく変化する。当該輝度の変化を基に、図3に示すコンピューター220の演算部220aは、交差点の位置を判別する。
【0052】
このように、パターンマッチングにおいては、全てのシークラインaとチップ21の外形線とが交差するように、できるだけ交差点がシークラインaの中央に近づくように、テンプレートAとチップ21との位置合わせを行う。
【0053】
次に、図14に示す交差点c1(図8に示すθ=90°位置)を有するシークラインaの付近に、Z軸に対して垂直(=当該シークラインaに対して平行)に複数のシークラインを作成する。並びに、図14に示す交差点b1(図8に示すθ=180°位置)を有するシークラインaの付近に、X軸に対して垂直(=当該シークラインaに対して平行)に複数のシークラインを作成する。
【0054】
図16に、同ステップ7で実行されるシークライン作成の模式図を示す。図17に、図16の枠XVII内の拡大図を示す。図16、図17に示すように、シークラインBは、交差点b1を有するシークラインa(テンプレートAのシークラインa)に対して平行に、作成される。シークラインBは、当該シークラインaの左右方向両側に、各々5本ずつ作成される。同様に、シークラインCは、交差点c1を有するシークラインa(テンプレートAのシークラインa)に対して平行に、作成される。シークラインCは、当該シークラインaの上下方向両側に、各々5本ずつ作成される。
【0055】
続いて、シークラインa、B、Cを基に、基準切削点を設定する。Z軸方向の基準切削点の設定は、シークラインa、Bを用いて行う。図17に示すように、仮に、画像のチップ21の形状が、設定データどおり(設定値R0の半径を有する真円状)であれば、本来、Z軸方向の基準切削点は、シークラインaの交差点b1になるはずである。しかしながら、チップ21の径には、公差が設定されている。このため、市販のチップ21には、公差以下の寸法精度を望むことができない。したがって、実際には、シークラインBの交差点b2の方が、シークラインaの交差点b1よりも、よりZ軸先端方向(下方)に配置されている場合がある(交差点の判別方法については図15参照)。この場合は、シークラインaの交差点b1ではなく、シークラインBの交差点b2を、Z軸方向の基準切削点に指定する。
【0056】
X軸方向の基準切削点の設定は、シークラインa、Cを用いて行う。シークラインCの交差点c2の方が、シークラインaの交差点c1よりも、よりX軸先端方向(左方)に配置されている場合がある(交差点の判別方法については図15参照)。この場合は、シークラインaの交差点c1ではなく、シークラインCの交差点c2を、X軸方向の基準切削点に指定する。このようにして、テンプレートAだけではなく、実際のチップ21の外形線を基に、基準切削点b2、c2を設定する。
【0057】
(ステップ8)
図4に示すように、ステップ8においては、測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=120°位置、θ=150°位置)ごとに、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、切削点の座標を取得する(S8)。なお、各測定角度における座標の取得の際は、基準切削点の座標を取得した際の座標系を、測定角度に応じて適宜回転させる。
【0058】
図18に、ワーク接触点補正方法のステップ8で実行されるシークライン作成前半の模式図を示す。図19に、同ステップ8で実行されるシークライン作成後半の模式図を示す。なお、図18は、図14に対応している。すなわち、図18は、パターンマッチング実行後の状態である。
【0059】
図18、図19に示すように、ステップ8においては、まず、基準切削点の座標を取得した際の座標系を30°回転させ、θ=60°位置、θ=150°位置の切削点の座標を取得する。すなわち、図18、図19に示す交差点d1(図8に示すθ=150°位置)を有するシークラインaの付近に、当該シークラインaに対して平行に複数のシークラインDを作成する。同様に、図18、図19に示す交差点e1(図8に示すθ=60°位置)を有するシークラインaの付近に、当該シークラインaに対して平行に複数のシークラインEを作成する。そして、ステップ7同様の手順により、図8に示すθ=150°位置のシークラインa、Dの複数の交差点のうち、最も径方向外側に配置されている交差点を、切削点に設定する。同様に、図8に示すθ=60°位置のシークラインa、Eの複数の交差点のうち、最も径方向外側に配置されている交差点を、切削点に設定する。
【0060】
次に、基準切削点の座標を取得した際の座標系を60°回転させ、θ=30°位置、θ=120°位置の切削点の座標を取得する。続いて、基準切削点の座標を取得した際の座標系を90°回転させ、θ=0°位置の切削点の座標を取得する。
【0061】
このようにして、ステップ8においては、既にステップ7で取得済みの測定角度(図8に示すθ=90°位置、θ=180°位置)の基準切削点の座標に加えて、残りの測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=120°位置、θ=150°位置)の切削点の座標を取得する。
【0062】
(ステップ9)
図4に示すように、ステップ9においては、全ての測定角度で切削点座標を取得したか否かを、図3に示すコンピューター220の演算部220aが確認する(S9)。全切削点座標を取得済みの場合は、ステップ10に進む。全切削点座標を未取得の場合は、ステップ8に戻る。
【0063】
(ステップ10)
ステップ10においては、まず、基準切削点b2、c2の座標を基に、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、図8に示すチップ21の刃先中心Oを算出する(S10)。
【0064】
ステップ10においては、次に、刃先中心Oの座標と切削点の座標とから、各測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置)ごとに、図8に示すチップ21の刃先半径の実測値R1を算出する。なお、実測値R1は、本発明の「実測データ」の概念に含まれる。そして、測定角度ごとに、補正値ΔR(設定値R0と実測値R1との差分)を算出する。算出した測定角度ごとの補正値ΔRは、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに格納される。
【0065】
(ステップ11)
図4に示すように、ステップ11においては、旋盤1によりワークWに加工を施す(S11)。図20に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ11における前面図を示す。図20に示すように、チップ21により、ワークWの被切削面W1に、切削加工が施される。
【0066】
ここで、前出図23(a)、図23(b)を援用するように、チップ101(本実施形態のチップ21に相当)が移動するのに従って、切削点(つまりチップ21の使用角度)は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。
【0067】
使用角度がθ=0°位置の場合は、当該使用角度に対応する補正値ΔRにより、チップ21の軌道が補正される。同様に、使用角度がθ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の場合も、それぞれの使用角度に対応する補正値ΔRにより、チップ21の軌道が補正される。このため、常に適切な状態で、チップ21の切削点は、ワークWの被切削面W1に接触する。
【0068】
[作用効果]
次に、本実施形態の旋盤の作用効果について説明する。本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、図8に示すように、チップ21の画像から得られる実測値R1を基に、被切削面W1に対する切削点の位置を補正することができる。補正作業は、図3に示す制御装置22が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被切削面W1に対する切削点の位置を補正することができる。
【0069】
また、図3に示す記憶部220bには、設定値R0が格納されている。設定値R0は、例えば、JIS規格などの工業規格を基に設定されている。図4のステップ10(S10)に示すように、演算部220aは、設定値R0と実測値R1とを比較して、測定角度θごとに補正値ΔRを算出する。このため、測定角度(つまり使用角度)θごとに、補正値ΔRを基に切削点の位置を補正することができる。
【0070】
また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、図20に示すように、スライド部23の軌道を補正することにより、チップ21の軌道を補正することができる。すなわち、チップ21の切削点の位置を補正することができる。また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、工具台20に対するバイト28の取付誤差を補正することができる。また、バイト28に対するチップ21の取付誤差を補正することができる。このため、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0072】
<第二実施形態>
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤との相違点は、Z軸スライドにチップではなく、ワークプローブが配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図21に、本実施形態の旋盤のワーク接触点補正システムのZ軸スライド下端付近の拡大図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0073】
図21に示すように、Z軸スライド231bには、ワークプローブ29が取り付けられている。ワークプローブ29の左右両端、下端には、円形状の接触部290が配置されている。接触部290は、被切削面W1に、あたかも走査するように接触する。接触部290は、被切削面W1の表面状態を検査する。
【0074】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。第一実施形態のチップの切削点と同様に、接触部290の接触点も、被切削面W1の形状に沿って、変化する。このため、接触部290に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、接触部290と被切削面W1とを適切に接触させることができる。したがって、被切削面W1の検査精度を向上させることができる。
【0075】
<第三実施形態>
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤との相違点は、チップとして、円形状ではなく、菱形のチップが配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図22(a)に、本実施形態の旋盤のチップ付近の拡大図を示す。なお、図20と対応する部位については、同じ符号で示す。図22(b)に、図22(a)の円XXIIb内の拡大図を示す。図22(c)に、摩耗したチップの先端付近の拡大図を示す。
【0076】
図22(a)に示すように、バイト28の先端には、菱形のチップ21が配置されている。チップ21は、長軸方向に対向する二つの刃先を備えている。二つの刃先は、円形状を呈している。チップ21の一方の刃先は、ワークWの被切削面W1に接触している。被切削面W1は、ワークWの上面、テーパ面、外周面である。図22(b)に示すように、チップ21のX軸方向先端点f2、Z軸方向先端点f1は既知である。
【0077】
図22(c)に示すように、数個のワークWに切削加工を施した後のチップ21は、摩耗している。被切削面W1の角度が一定ではないため(被切削面W1がワークWの上面、テーパ面、外周面であるため)、チップ21の摩耗の程度は、チップ21の部位により様々である。この場合は、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、チップ21の軌道を補正する。
【0078】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。X軸方向先端点f2、Z軸方向先端点f1が既知であっても、実際に被切削面W1のテーパ面に接触する切削点f3は不明である。このため、チップ21に対して(具体的にはチップ21の刃先の内接円に対して)、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、実際の切削点f3と、被切削面W1のテーパ面と、を適切に接触させることができる。
【0079】
また、切削加工により摩耗したチップ21に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、チップ21の軌道を補正することができる。このため、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0080】
<その他>
以上、本発明の旋盤の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0081】
上記実施形態においては、撮像装置24としてCCDセンサカメラを用いたが、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサカメラを用いてもよい。また、照明部25の種類は特に限定しない。光源としてLED(Light−Emitting Diode)を用いてもよい。また、光源からの照明光を、レンズなどを有する光学系により、平行光に変換してもよい。
【0082】
ワークWの種類は特に限定しない。軸受の外輪でもよい。図8に示す測定角度(使用角度)θの数、間隔は特に限定しない。測定角度θの数を増やすほど、間隔を狭めるほど、切削点の補正精度、つまりワークWの加工精度を向上させることができる。
【0083】
図16、図17に示すシークラインの本数、間隔は特に限定しない。シークラインの本数を増やすほど、また隣り合うシークライン間の間隔が狭まるほど、切削点の補正精度を向上させることができる。
【0084】
チップ21の種類は特に限定しない。円形状、菱形の他、三角形などの多角形でもよい。これらのチップ21においても、刃先の内接円に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、切削点と被切削面とを適切に接触させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1:旋盤、2:ワーク接触点補正システム、3:チャック装置、4:テーブル、5:ベッド、7:コラム、8:バイト交換台。
20:工具台、21:チップ、22:制御装置、23:スライド部、24:撮像装置、25:照明部、28:バイト、29:ワークプローブ、40:テーブル本体、41:主軸、42:主軸モータ、71:ボールねじ部、72:X軸モータ。
220:コンピューター、220a:演算部、220b:記憶部、221:入出力インターフェイス、230:X軸スライド部、230a:X軸下スライド、230b:X軸スライド、231:Z軸スライド部、231a:Z軸下スライド、231b:Z軸スライド、232:ボールねじ部、233:Z軸モータ、290:接触部。
A:テンプレート、B〜E:シークライン、F3:切削点、O:刃先中心、R0:設定値(設定データ)、R1:実測値(実測データ)、ΔR:補正値、W:ワーク、W1:被切削面(被接触面)、a:シークライン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対するチップの切削点などの接触点を補正するワーク接触点補正システムおよび旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラにより、ワーク切削用のチップを撮像する旋盤が開示されている。同文献記載の旋盤によると、カメラの画像から、チップの形状を認識することができる。このため、チップの種類を識別することができる。また、チップの破損を知ることができる。また、チップの摩耗量を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−253979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークの被切削面の形状によっては、ワークに対するチップの切削点の位置が、変化する場合がある。すなわち、複数の切削点が存在する場合がある。図23(a)に、切削加工の模式図を示す。図23(b)に、チップの模式図を示す。図23(a)に示すワーク100は、ベアリングの内輪である。ワーク100の外周面には、凹曲面状の被切削面100aが設定されている。一方、チップ101は、円形状を呈している。ワーク100は、水平面内において、自身の軸周りに回転している。図23(a)に矢印で示すように、チップ101は、被切削面100aをなぞるように、部分円弧状の軌道L100で移動する。当該移動により、被切削面100aに切削加工が施される。
【0005】
図23(b)に示すように、チップ101に、最上部を中心角θ=0°として、反時計回りに大きくなる中心角θを設定する。図23(a)に示すように、チップ101が移動するのに従って、切削点は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。なお、特許文献1には、このような切削点の変化に関する記載はない。
【0006】
ここで、チップ101の軌道L100は、チップ101の形状を基に、設定されている。また、チップ101の形状は、JIS規格などの工業規格により規定されている。また、チップ101の内接円L101の直径D1などの各種寸法については、工業規格により等級が設定されている。また、等級ごとに、寸法に対する公差が設定されている。例えば、JIS B 4120(1998年)には、等級が並級Mのチップ101の直径D1について、±0.13mmの公差が設定されている。また、等級が研磨級Gのチップ101の直径D1について、±0.025mmの公差が設定されている。このことは、市販のチップ101には、公差以下の寸法精度を望むことができないことを意味する。
【0007】
このため、予め設定されている軌道L100を遵守して、高い寸法精度を要求される被切削面100a(ベアリングの軌道面)に切削加工を施すと、チップ101の形状、並びに切削点の位置(θ=0°〜180°)によっては、チップ101が被切削面100aに接触しない場合がある。あるいは、チップ101が被切削面100aを深く彫りすぎる場合がある。このため、ワーク100の加工精度が低下してしまう。
【0008】
そこで、図23(b)に示すように、作業者がチップ101の複数箇所の直径D1〜D4を測定し、得られた直径D1〜D4の平均値を実測データとし、当該実測データと設定データとの差分を基に、チップ101の軌道L100を補正することが考えられる。こうすると、チップ101と被切削面100aとの接触状態が適切になる。しかしながら、この作業は非常に煩雑である。このため、実用性が低い。また、作業者のスキルにより補正の精度がばらつきやすい。
【0009】
また、一般的に、チップ101は、バイトの基準部に対して、単一のボルトにより、脱着可能に取り付けられている。このため、チップ101を交換する際や、チップ101摩耗時に取付角度を回転させる際、取付精度を再現することが困難である。
【0010】
また、図23(a)、図23(b)に示すように、チップ101が移動するのに従って、切削点は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。つまり、チップ101は、ワーク100の被切削面の形状に倣って接触する。ここで、各切削点における切削抵抗は、均一になりにくい。このため、各切削点における摩耗状態は均一になりにくい。したがって、数回切削加工を行った後、チップ101の各切削点の形状を測定し、その結果に応じてチップ101の移動軌跡(加工プログラム等)の補正(見直し)を行うことで、より高精度な切削加工を補償できるものと考えられる。また、この作業を頻繁に行うことで、更に緻密な加工精度の補償という効果が見込めるものと考えられる。
【0011】
本発明のワーク接触点補正システムおよび旋盤は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、簡単かつ高精度に、ワークの被接触面に対するワーク接触部材の接触点の位置を補正できるワーク接触点補正システムおよび旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するため、本発明のワーク接触点補正システムは、ワークの被接触面の形状に沿って、該被接触面に対する接触点が変化するワーク接触部材と、該ワーク接触部材を撮像する撮像装置と、該撮像装置が撮像した画像から該ワーク接触部材の外形線に関する実測データを取得し、該実測データを基に該接触点の位置を補正する演算部を有する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のワーク接触点補正システムによると、ワーク接触部材の画像から得られる実測データを基に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。補正作業は、制御装置が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記制御装置は、前記ワーク接触部材の外形線に関する設定データを格納する記憶部を有し、前記演算部は、該設定データと前記実測データとを比較して補正値を算出し、該補正値を基に前記接触点の位置を補正する構成とする方がよい。
【0015】
記憶部には、設定データが格納されている。設定データは、例えば、JIS規格などの工業規格を基に設定されている。演算部は、設定データと実測データとを比較して補正値を算出する。そして、補正値を基に、接触点の位置を補正する。本構成によると、基準となる設定データと、実測データと、を比較することにより、補正値を設定することができる。このため、補正値の設定が簡単になる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記被接触面に沿って前記接触点が変化するように、前記ワーク接触部材を駆動するスライド部を備え、前記演算部は、該スライド部の軌道を補正する構成とする方がよい。本構成によると、スライド部の軌道を補正することにより、接触点の位置を補正することができる。
【0017】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記ワーク接触部材は、前記ワークに切削加工を施すチップおよび該ワークの前記被接触面の状態を測定するワークプローブのうち、少なくとも一方である構成とする方がよい。ワーク接触部材がチップの場合、接触点は切削点になる。この場合は、ワークの加工精度を向上させることができる。また、ワーク接触部材がワークプローブの場合は、被接触面の検査精度を向上させることができる。
【0018】
(5)上記課題を解決するため、本発明の旋盤は、上記(4)の構成を備えることを特徴とする。本発明の旋盤によると、ワーク接触部材の画像から得られる実測データを基に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。補正作業は、制御装置が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被接触面に対する接触点の位置を補正することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、簡単かつ高精度に、ワークの被接触面に対するワーク接触部材の接触点の位置を補正できるワーク接触点補正システムおよび旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一実施形態の旋盤の斜視図である。
【図2】同旋盤の前面図である。
【図3】同旋盤のブロック図である。
【図4】ワーク接触点補正方法のフローチャートである。
【図5】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ1における前面図である。
【図6】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ3における前面図である。
【図7】図6の円VII内の拡大図である。
【図8】ワーク接触点補正方法のステップ4により撮像されたチップの画像である。
【図9】ワーク接触点補正方法のステップ6におけるX軸方向スキャンの模式図である。
【図10】同ステップ6で実行されるZ軸方向スキャンの模式図である。
【図11】同ステップ6で実行されるテンプレート作成の模式図である。
【図12】同ステップ6で作成されたテンプレートの模式図である。
【図13】ワーク接触点補正方法のステップ7で実行されるパターンマッチング前半の模式図である。
【図14】同ステップ7で実行されるパターンマッチング後半の模式図である。
【図15】テンプレートのシークライン上の位置と輝度との関係を示す模式図である。
【図16】同ステップ7で実行されるシークライン作成の模式図である。
【図17】図16の枠XVII内の拡大図である。
【図18】ワーク接触点補正方法のステップ8で実行されるシークライン作成前半の模式図である。
【図19】同ステップ8で実行されるシークライン作成後半の模式図である。
【図20】同旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ11における前面図である。
【図21】第二実施形態の旋盤のワーク接触点補正システムのZ軸スライド下端付近の拡大図である。
【図22】(a)は、第三実施形態の旋盤のチップ付近の拡大図である。(b)は、図22(a)の円XXIIb内の拡大図である。(c)は、摩耗したチップの先端付近の拡大図である。
【図23】(a)は、切削加工の模式図である。(b)は、チップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の旋盤の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のワーク接触点補正システムの実施の形態に関する説明を兼ねるものである。
【0022】
<第一実施形態>
まず、本実施形態の旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態の旋盤の斜視図を示す。図2に、同旋盤の前面図を示す。図3に、同旋盤のブロック図を示す。図1〜図3に示すように、本実施形態の旋盤1は、主軸41が上下方向に延在するいわゆる立型旋盤である。本実施形態の旋盤1は、ワーク接触点補正システム2と、チャック装置3と、テーブル4と、ベッド5と、コラム7と、バイト交換台8と、を備えている。
【0023】
[チャック装置3、テーブル4、ベッド5、コラム7、バイト交換台8]
テーブル4は、テーブル本体40と、主軸41と、を備えている。主軸41は、ベッド5に収容されている。主軸41の上端は、ベッド5の前部上面から突出している。テーブル本体40は、主軸41の上端に固定されている。
【0024】
チャック装置3は、テーブル本体40の上面に固定されている。チャック装置3は、ワークWを固定、解除可能である。ワークW、チャック装置3、テーブル4は、主軸モータ42から主軸41に伝達される駆動力により、水平面内における軸周りに回転可能である。
【0025】
ワークWは、軸受の内輪であり、円筒状を呈している。ワークWの外周面には、旋盤1によって切削加工される、凹曲面状の被切削面W1が配置されている。被切削面W1は、本発明の「被接触面」の概念に含まれる。被切削面W1は、ベアリングボールが転動する、軌道面である。
【0026】
コラム7は、ベッド5の後部の前上部に配置されている。コラム7は、ボールねじ部71と、X軸モータ72と、を備えている。ボールねじ部71は、左右方向に延在している。X軸モータ72の駆動軸は、ボールねじ部71のシャフト部に連結されている。バイト交換台8は、ベッド5の右面に取り付けられている。バイト交換台8は、複数のバイト28を保持することができる。
【0027】
[ワーク接触点補正システム2]
ワーク接触点補正システム2は、工具台20と、チップ21と、バイト28と、制御装置22と、スライド部23と、撮像装置24と、照明部25と、を備えている。
【0028】
(スライド部23)
スライド部23は、X軸スライド部230と、Z軸スライド部231と、ボールねじ部232と、Z軸モータ233と、を備えている。
【0029】
X軸スライド部230は、X軸下スライド230aと、X軸スライド230bと、を備えている。X軸下スライド230aは、コラム7の前方に固定されている。X軸下スライド230aは、左右方向(X軸方向に対応)に延在している。X軸スライド230bは、X軸下スライド230aに係合している。X軸スライド230bは、X軸下スライド230aに対して、左右方向に移動可能である。X軸スライド230bには、ボールねじ部71のナット部が取り付けられている。X軸モータ72の駆動力は、ボールねじ部71のシャフト部およびナット部を介して、X軸スライド230bに伝達される。すなわち、X軸スライド230bは、X軸モータ72の駆動力により、左右方向に移動可能である。
【0030】
Z軸スライド部231は、Z軸下スライド231aと、Z軸スライド231bと、を備えている。Z軸下スライド231aは、上下方向(Z軸方向に対応)に延在している。Z軸下スライド231aは、X軸スライド230bの前方に配置されている。Z軸スライド231bは、Z軸下スライド231aに係合している。Z軸スライド231bは、Z軸下スライド231aに対して、上下方向に移動可能である。
【0031】
ボールねじ部232は、上下方向に延在している。Z軸モータ233は、Z軸下スライド231aの上端に配置されている。Z軸モータ233の駆動軸は、ボールねじ部232のシャフト部に連結されている。一方、ボールねじ部232のナット部は、Z軸スライド231bに取り付けられている。Z軸モータ233の駆動力は、ボールねじ部232のシャフト部およびナット部を介して、Z軸スライド231bに伝達される。すなわち、Z軸スライド231bは、Z軸モータ233の駆動力により、上下方向に移動可能である。
【0032】
(工具台20、チップ21、バイト28)
工具台20は、Z軸スライド231bの下端に配置されている。バイト28は、工具台20に、交換可能に取り付けられている。チップ21は、円形状を呈している。チップ21は、バイト28の先端に取り付けられている。チップ21により、ワークWに切削加工が施される。工具台20、チップ21、バイト28は、X軸スライド部230およびZ軸スライド部231により、上下左右方向に駆動される。
【0033】
(撮像装置24、照明部25)
撮像装置24は、CCD(Charge−Coupled Device)センサカメラである。撮像装置24は、ベッド5の左面に取り付けられている。撮像装置24は、チップ21を撮像可能である。
【0034】
図3に示すように、照明部25は、撮像装置24に前後方向に対向して配置されている。チップ21を撮像する場合は、チップ21の正面側に撮像装置24が、背面側に照明部25が、各々配置される。
【0035】
(制御装置22)
図3に示すように、制御装置22は、コンピューター220と、入出力インターフェイス221と、モータ駆動回路と、照明部駆動回路と、を備えている。コンピューター220は、演算部220aと、記憶部220bと、を備えている。モータ駆動回路は、X軸モータ72、Z軸モータ233、主軸モータ42に、電気的に接続されている。照明部駆動回路は、照明部25に電気的に接続されている。入出力インターフェイス221には、撮像装置24から、画像データが伝送される。
【0036】
[ワーク接触点補正方法]
次に、本実施形態の旋盤により行われるワーク接触点補正方法について説明する。ワークWの被切削面W1は、径方向内側に凹む凹曲面状を呈している。このため、前出の図23(a)、図23(b)に示すように、被切削面100a(本実施形態の被切削面W1に相当)の形状に沿って、チップ101(本実施形態のチップ21に相当)の切削点(本発明の「接触点」の概念に含まれる。)が変化する。
【0037】
そこで、本実施形態においては、チップ21の交換後であってワークWの加工前に、ワーク接触点補正方法を実行する。具体的には、ワークW加工時の使用角度(例えば、図23(b)に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置)ごとに、補正値を算出する。そして、ワークW加工時に、チップ21の切削点を、適切に被切削面W1に接触させる。
【0038】
図4に、ワーク接触点補正方法のフローチャートを示す。ワーク接触点補正方法は、チップ21の画像を取得する画像取得ステップ(S1〜S4)と、チップ21の補正値算出用のテンプレートを作成するテンプレート作成ステップ(S5、S6)と、使用角度に対応した切削点の座標を取得する切削点座標取得ステップ(S7〜S9)と、使用角度に対応した補正値を算出する補正値算出ステップ(S10)と、を有している。なお、テンプレート作成ステップは、既に同種のチップ21に対するテンプレートが作成済みの場合は、実行しなくてもよい。
【0039】
(ステップ1)
ステップ1においては、ワーク接触点補正方法を開始する(S1)。図5に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ1における前面図を示す。図5に示すように、本ステップにおいては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、X軸スライド部230、Z軸スライド部231を駆動し、工具台20にバイト28を装着する。
【0040】
(ステップ2)
図4に示すように、ステップ2においては、初期設定を行う(S2)。すなわち、装着したバイト28のチップ21の刃先半径の設定値R0を、図3に示すコンピューター220に入力する。また、当該チップ21の測定角度(ワークW加工時におけるチップ21の使用角度)を、図3に示すコンピューター220に入力する。設定値R0、測定角度は、コンピューター220の記憶部220bに格納される。なお、設定値R0は、本発明の「設定データ」の概念に含まれる。
【0041】
(ステップ3)
図4に示すように、ステップ3においては、チップ21を移動させる(S3)。図6に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ3における前面図を示す。図7に、図6の円VII内の拡大図を示す。
【0042】
図6、図7に示すように、本ステップにおいては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、X軸スライド部230、Z軸スライド部231を駆動し、工具台20を移動させる。そして、撮像装置24の撮像エリアに、チップ21を配置する。
【0043】
(ステップ4)
図4に示すように、ステップ4においては、まず、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、照明部25を駆動する。そして、チップ21に、背面側から照明光を照射する。次に、演算部220aが、撮像装置24を用いて、チップ21を撮像する。図8に、ワーク接触点補正方法のステップ4により撮像されたチップの画像を示す。図8に示すチップ21の画像は、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに取り込まれる(S4)。
【0044】
(ステップ5)
図4に示すように、ステップ5においては、画像からチップ21の補正値を算出するためのテンプレートAの作成の有無を、図3に示すコンピューター220の演算部220aが確認する(S5)。テンプレートA作成済みの場合は、ステップ6をスキップして、ステップ7に進む。テンプレートA未作成の場合は、ステップ6に進む。
【0045】
(ステップ6)
ステップ6においては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、画像からテンプレートAを作成する(S6)。図9に、ワーク接触点補正方法のステップ6におけるX軸方向スキャンの模式図を示す。図10に、同ステップ6で実行されるZ軸方向スキャンの模式図を示す。図11に、同ステップ6で実行されるテンプレート作成の模式図を示す。図12に、同ステップ6で作成されたテンプレートの模式図を示す。
【0046】
本ステップにおいては、まず、図9に示すように、画像のチップ21に対して、X軸方向からスキャンを行う。そして、チップ21の外形線の位置を認識する。同様に、図10に示すように、画像のチップ21に対して、Z軸方向からスキャンを行う。そして、チップ21の外形線の位置を認識する。
【0047】
次に、図11に示すように、スキャンにより認識されたチップ21の外形線の位置を基に、外形線に対して、所定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置、θ=210°位置、θ=330°位置)ごとに、直線状のシークラインaを引く。この際、シークラインaの延在方向を、外形線の接線方向に直交させる。また、シークラインaの中央に、外形線との交差点を設定する。このようにして、図12に示すように、放射状に配置された合計9本のシークラインaの集合体である、テンプレートAを作成する。テンプレートAは、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに格納される。なお、一旦作成されたテンプレートAは、装着されているチップ21と同種のチップに対して共用化される。
【0048】
(ステップ7)
図4に示すように、ステップ7においては、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、基準切削点(具体的には、チップ21のZ軸方向先端点、X軸方向先端点)の座標を取得する(S7)。
【0049】
本ステップにおいては、まず、パターンマッチングを実行する。図13に、ワーク接触点補正方法のステップ7で実行されるパターンマッチング前半の模式図を示す。図14に、同ステップ7で実行されるパターンマッチング後半の模式図を示す。図15に、テンプレートのシークライン上の位置と輝度との関係を模式図で示す。
【0050】
図13、図14に示すように、パターンマッチングにおいては、記憶部220bのテンプレートAと、画像のチップ21の外形線と、の位置合わせを行う。具体的には、全てのシークラインaとチップ21の外形線とが交差するように、チップ21に対してテンプレートAを走査させる。また、できるだけ交差点がシークラインaの中央に近づくように、テンプレートAを走査させる。
【0051】
交差点の位置の判別は、画像の輝度の変化を基に行われる。すなわち、図15に示すように、画像中、チップ21が配置されていない部分は、背面側からの照明光により明るい。このため輝度が高い(白い)。これに対して、画像中、チップ21が配置されている部分は暗い。このため輝度が低い(黒い)。したがって、シークラインaとチップ21の外形線との交差点付近においては、輝度が著しく変化する。当該輝度の変化を基に、図3に示すコンピューター220の演算部220aは、交差点の位置を判別する。
【0052】
このように、パターンマッチングにおいては、全てのシークラインaとチップ21の外形線とが交差するように、できるだけ交差点がシークラインaの中央に近づくように、テンプレートAとチップ21との位置合わせを行う。
【0053】
次に、図14に示す交差点c1(図8に示すθ=90°位置)を有するシークラインaの付近に、Z軸に対して垂直(=当該シークラインaに対して平行)に複数のシークラインを作成する。並びに、図14に示す交差点b1(図8に示すθ=180°位置)を有するシークラインaの付近に、X軸に対して垂直(=当該シークラインaに対して平行)に複数のシークラインを作成する。
【0054】
図16に、同ステップ7で実行されるシークライン作成の模式図を示す。図17に、図16の枠XVII内の拡大図を示す。図16、図17に示すように、シークラインBは、交差点b1を有するシークラインa(テンプレートAのシークラインa)に対して平行に、作成される。シークラインBは、当該シークラインaの左右方向両側に、各々5本ずつ作成される。同様に、シークラインCは、交差点c1を有するシークラインa(テンプレートAのシークラインa)に対して平行に、作成される。シークラインCは、当該シークラインaの上下方向両側に、各々5本ずつ作成される。
【0055】
続いて、シークラインa、B、Cを基に、基準切削点を設定する。Z軸方向の基準切削点の設定は、シークラインa、Bを用いて行う。図17に示すように、仮に、画像のチップ21の形状が、設定データどおり(設定値R0の半径を有する真円状)であれば、本来、Z軸方向の基準切削点は、シークラインaの交差点b1になるはずである。しかしながら、チップ21の径には、公差が設定されている。このため、市販のチップ21には、公差以下の寸法精度を望むことができない。したがって、実際には、シークラインBの交差点b2の方が、シークラインaの交差点b1よりも、よりZ軸先端方向(下方)に配置されている場合がある(交差点の判別方法については図15参照)。この場合は、シークラインaの交差点b1ではなく、シークラインBの交差点b2を、Z軸方向の基準切削点に指定する。
【0056】
X軸方向の基準切削点の設定は、シークラインa、Cを用いて行う。シークラインCの交差点c2の方が、シークラインaの交差点c1よりも、よりX軸先端方向(左方)に配置されている場合がある(交差点の判別方法については図15参照)。この場合は、シークラインaの交差点c1ではなく、シークラインCの交差点c2を、X軸方向の基準切削点に指定する。このようにして、テンプレートAだけではなく、実際のチップ21の外形線を基に、基準切削点b2、c2を設定する。
【0057】
(ステップ8)
図4に示すように、ステップ8においては、測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=120°位置、θ=150°位置)ごとに、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、切削点の座標を取得する(S8)。なお、各測定角度における座標の取得の際は、基準切削点の座標を取得した際の座標系を、測定角度に応じて適宜回転させる。
【0058】
図18に、ワーク接触点補正方法のステップ8で実行されるシークライン作成前半の模式図を示す。図19に、同ステップ8で実行されるシークライン作成後半の模式図を示す。なお、図18は、図14に対応している。すなわち、図18は、パターンマッチング実行後の状態である。
【0059】
図18、図19に示すように、ステップ8においては、まず、基準切削点の座標を取得した際の座標系を30°回転させ、θ=60°位置、θ=150°位置の切削点の座標を取得する。すなわち、図18、図19に示す交差点d1(図8に示すθ=150°位置)を有するシークラインaの付近に、当該シークラインaに対して平行に複数のシークラインDを作成する。同様に、図18、図19に示す交差点e1(図8に示すθ=60°位置)を有するシークラインaの付近に、当該シークラインaに対して平行に複数のシークラインEを作成する。そして、ステップ7同様の手順により、図8に示すθ=150°位置のシークラインa、Dの複数の交差点のうち、最も径方向外側に配置されている交差点を、切削点に設定する。同様に、図8に示すθ=60°位置のシークラインa、Eの複数の交差点のうち、最も径方向外側に配置されている交差点を、切削点に設定する。
【0060】
次に、基準切削点の座標を取得した際の座標系を60°回転させ、θ=30°位置、θ=120°位置の切削点の座標を取得する。続いて、基準切削点の座標を取得した際の座標系を90°回転させ、θ=0°位置の切削点の座標を取得する。
【0061】
このようにして、ステップ8においては、既にステップ7で取得済みの測定角度(図8に示すθ=90°位置、θ=180°位置)の基準切削点の座標に加えて、残りの測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=120°位置、θ=150°位置)の切削点の座標を取得する。
【0062】
(ステップ9)
図4に示すように、ステップ9においては、全ての測定角度で切削点座標を取得したか否かを、図3に示すコンピューター220の演算部220aが確認する(S9)。全切削点座標を取得済みの場合は、ステップ10に進む。全切削点座標を未取得の場合は、ステップ8に戻る。
【0063】
(ステップ10)
ステップ10においては、まず、基準切削点b2、c2の座標を基に、図3に示すコンピューター220の演算部220aが、図8に示すチップ21の刃先中心Oを算出する(S10)。
【0064】
ステップ10においては、次に、刃先中心Oの座標と切削点の座標とから、各測定角度(図8に示すθ=0°位置、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置)ごとに、図8に示すチップ21の刃先半径の実測値R1を算出する。なお、実測値R1は、本発明の「実測データ」の概念に含まれる。そして、測定角度ごとに、補正値ΔR(設定値R0と実測値R1との差分)を算出する。算出した測定角度ごとの補正値ΔRは、図3に示すコンピューター220の記憶部220bに格納される。
【0065】
(ステップ11)
図4に示すように、ステップ11においては、旋盤1によりワークWに加工を施す(S11)。図20に、本実施形態の旋盤の、ワーク接触点補正方法のステップ11における前面図を示す。図20に示すように、チップ21により、ワークWの被切削面W1に、切削加工が施される。
【0066】
ここで、前出図23(a)、図23(b)を援用するように、チップ101(本実施形態のチップ21に相当)が移動するのに従って、切削点(つまりチップ21の使用角度)は、θ=0°位置から、θ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の順に変化する。
【0067】
使用角度がθ=0°位置の場合は、当該使用角度に対応する補正値ΔRにより、チップ21の軌道が補正される。同様に、使用角度がθ=30°位置、θ=60°位置、θ=90°位置、θ=120°位置、θ=150°位置、θ=180°位置の場合も、それぞれの使用角度に対応する補正値ΔRにより、チップ21の軌道が補正される。このため、常に適切な状態で、チップ21の切削点は、ワークWの被切削面W1に接触する。
【0068】
[作用効果]
次に、本実施形態の旋盤の作用効果について説明する。本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、図8に示すように、チップ21の画像から得られる実測値R1を基に、被切削面W1に対する切削点の位置を補正することができる。補正作業は、図3に示す制御装置22が自動的に実行する。このため、簡単である。また、補正の精度が作業者のスキルに依存しない。したがって、簡単かつ高精度に、被切削面W1に対する切削点の位置を補正することができる。
【0069】
また、図3に示す記憶部220bには、設定値R0が格納されている。設定値R0は、例えば、JIS規格などの工業規格を基に設定されている。図4のステップ10(S10)に示すように、演算部220aは、設定値R0と実測値R1とを比較して、測定角度θごとに補正値ΔRを算出する。このため、測定角度(つまり使用角度)θごとに、補正値ΔRを基に切削点の位置を補正することができる。
【0070】
また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、図20に示すように、スライド部23の軌道を補正することにより、チップ21の軌道を補正することができる。すなわち、チップ21の切削点の位置を補正することができる。また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態の旋盤1のワーク接触点補正システム2によると、工具台20に対するバイト28の取付誤差を補正することができる。また、バイト28に対するチップ21の取付誤差を補正することができる。このため、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0072】
<第二実施形態>
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤との相違点は、Z軸スライドにチップではなく、ワークプローブが配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図21に、本実施形態の旋盤のワーク接触点補正システムのZ軸スライド下端付近の拡大図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0073】
図21に示すように、Z軸スライド231bには、ワークプローブ29が取り付けられている。ワークプローブ29の左右両端、下端には、円形状の接触部290が配置されている。接触部290は、被切削面W1に、あたかも走査するように接触する。接触部290は、被切削面W1の表面状態を検査する。
【0074】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。第一実施形態のチップの切削点と同様に、接触部290の接触点も、被切削面W1の形状に沿って、変化する。このため、接触部290に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、接触部290と被切削面W1とを適切に接触させることができる。したがって、被切削面W1の検査精度を向上させることができる。
【0075】
<第三実施形態>
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤との相違点は、チップとして、円形状ではなく、菱形のチップが配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図22(a)に、本実施形態の旋盤のチップ付近の拡大図を示す。なお、図20と対応する部位については、同じ符号で示す。図22(b)に、図22(a)の円XXIIb内の拡大図を示す。図22(c)に、摩耗したチップの先端付近の拡大図を示す。
【0076】
図22(a)に示すように、バイト28の先端には、菱形のチップ21が配置されている。チップ21は、長軸方向に対向する二つの刃先を備えている。二つの刃先は、円形状を呈している。チップ21の一方の刃先は、ワークWの被切削面W1に接触している。被切削面W1は、ワークWの上面、テーパ面、外周面である。図22(b)に示すように、チップ21のX軸方向先端点f2、Z軸方向先端点f1は既知である。
【0077】
図22(c)に示すように、数個のワークWに切削加工を施した後のチップ21は、摩耗している。被切削面W1の角度が一定ではないため(被切削面W1がワークWの上面、テーパ面、外周面であるため)、チップ21の摩耗の程度は、チップ21の部位により様々である。この場合は、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、チップ21の軌道を補正する。
【0078】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。X軸方向先端点f2、Z軸方向先端点f1が既知であっても、実際に被切削面W1のテーパ面に接触する切削点f3は不明である。このため、チップ21に対して(具体的にはチップ21の刃先の内接円に対して)、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、実際の切削点f3と、被切削面W1のテーパ面と、を適切に接触させることができる。
【0079】
また、切削加工により摩耗したチップ21に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、チップ21の軌道を補正することができる。このため、ワークWの被切削面W1の加工精度を向上させることができる。
【0080】
<その他>
以上、本発明の旋盤の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0081】
上記実施形態においては、撮像装置24としてCCDセンサカメラを用いたが、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサカメラを用いてもよい。また、照明部25の種類は特に限定しない。光源としてLED(Light−Emitting Diode)を用いてもよい。また、光源からの照明光を、レンズなどを有する光学系により、平行光に変換してもよい。
【0082】
ワークWの種類は特に限定しない。軸受の外輪でもよい。図8に示す測定角度(使用角度)θの数、間隔は特に限定しない。測定角度θの数を増やすほど、間隔を狭めるほど、切削点の補正精度、つまりワークWの加工精度を向上させることができる。
【0083】
図16、図17に示すシークラインの本数、間隔は特に限定しない。シークラインの本数を増やすほど、また隣り合うシークライン間の間隔が狭まるほど、切削点の補正精度を向上させることができる。
【0084】
チップ21の種類は特に限定しない。円形状、菱形の他、三角形などの多角形でもよい。これらのチップ21においても、刃先の内接円に対して、第一実施形態のワーク接触点補正方法を実行することにより、切削点と被切削面とを適切に接触させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1:旋盤、2:ワーク接触点補正システム、3:チャック装置、4:テーブル、5:ベッド、7:コラム、8:バイト交換台。
20:工具台、21:チップ、22:制御装置、23:スライド部、24:撮像装置、25:照明部、28:バイト、29:ワークプローブ、40:テーブル本体、41:主軸、42:主軸モータ、71:ボールねじ部、72:X軸モータ。
220:コンピューター、220a:演算部、220b:記憶部、221:入出力インターフェイス、230:X軸スライド部、230a:X軸下スライド、230b:X軸スライド、231:Z軸スライド部、231a:Z軸下スライド、231b:Z軸スライド、232:ボールねじ部、233:Z軸モータ、290:接触部。
A:テンプレート、B〜E:シークライン、F3:切削点、O:刃先中心、R0:設定値(設定データ)、R1:実測値(実測データ)、ΔR:補正値、W:ワーク、W1:被切削面(被接触面)、a:シークライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被接触面の形状に沿って、該被接触面に対する接触点が変化するワーク接触部材と、
該ワーク接触部材を撮像する撮像装置と、
該撮像装置が撮像した画像から該ワーク接触部材の外形線に関する実測データを取得し、該実測データを基に該接触点の位置を補正する演算部を有する制御装置と、
を備えるワーク接触点補正システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ワーク接触部材の外形線に関する設定データを格納する記憶部を有し、
前記演算部は、該設定データと前記実測データとを比較して補正値を算出し、該補正値を基に前記接触点の位置を補正する請求項1に記載のワーク接触点補正システム。
【請求項3】
前記被接触面に沿って前記接触点が変化するように、前記ワーク接触部材を駆動するスライド部を備え、
前記演算部は、該スライド部の軌道を補正する請求項1または請求項2に記載のワーク接触点補正システム。
【請求項4】
前記ワーク接触部材は、前記ワークに切削加工を施すチップおよび該ワークの前記被接触面の状態を測定するワークプローブのうち、少なくとも一方である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のワーク接触点補正システム。
【請求項5】
請求項4のワーク接触点補正システムを備える旋盤。
【請求項1】
ワークの被接触面の形状に沿って、該被接触面に対する接触点が変化するワーク接触部材と、
該ワーク接触部材を撮像する撮像装置と、
該撮像装置が撮像した画像から該ワーク接触部材の外形線に関する実測データを取得し、該実測データを基に該接触点の位置を補正する演算部を有する制御装置と、
を備えるワーク接触点補正システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ワーク接触部材の外形線に関する設定データを格納する記憶部を有し、
前記演算部は、該設定データと前記実測データとを比較して補正値を算出し、該補正値を基に前記接触点の位置を補正する請求項1に記載のワーク接触点補正システム。
【請求項3】
前記被接触面に沿って前記接触点が変化するように、前記ワーク接触部材を駆動するスライド部を備え、
前記演算部は、該スライド部の軌道を補正する請求項1または請求項2に記載のワーク接触点補正システム。
【請求項4】
前記ワーク接触部材は、前記ワークに切削加工を施すチップおよび該ワークの前記被接触面の状態を測定するワークプローブのうち、少なくとも一方である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のワーク接触点補正システム。
【請求項5】
請求項4のワーク接触点補正システムを備える旋盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−35099(P2013−35099A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172832(P2011−172832)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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