説明

ワーク搬送装置及びワーク搬送方法

【課題】搬送体のワーク収納孔に収納されたワークが、その極性が逆になった場合、極性を反転させてワーク収納孔に容易かつ確実に戻すこと。
【解決手段】ワーク搬送装置30は、ワーク収納孔4が設けられた搬送テーブル3と、極性判定部6と、入口8aと出口8bとを有する反転トラック8とを備えている。ワーク収納孔4内のワークWはワーク送出手段14aにより、反転トラック8内に送出される。エアー溜まり15が真空発生源32に接続された際、エアー溝16a,16b,16c,16dによるエアー吸引により反転トラック8内のワークWは、反転トラック8内で減速して停止する。エアー溜まり15がエアー供給源33に接続された際、エアー溝16a,16b,16c,16dによるエアー噴出により、反転トラック8内のワークWはワーク収納孔4内へ戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性を有するチップ形電子部品等のワークを搬送するワーク搬送装置及びワーク搬送方法に係り、とりわけ搬送中にワークの極性を判定し、極性が逆であると判定されたワークの方向を容易かつ確実に反転させることができるワーク搬送装置及びワーク搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサやダイオードなどの極性を有するチップ形電子部品(以下ワーク)の特性測定を行う装置や、これらのワークをキャリアテープに収納するテーピング装置においては、ワークの極性を揃える必要が生じる場合がある。このため、これらの装置は、ワークを搬送する際に極性を揃える極性反転機構を備えている。
【0003】
従来よりワーク極性反転機構を有するワーク搬送装置が知られている(例えば特許文献1参照)。図9にこのような従来のワーク極性反転機構を有するワーク搬送装置を示す。図9に示すように、フィーダ21により1列で搬送されたワークWは、反時計方向(矢印F方向)に間歇回転する搬送テーブル22の外周部に配置されたワーク収納孔23に個別に収納される。そして、図示しない極性判定部によりワークWの極性が判定され、極性が逆であると判定されたワークは、反転部24に形成された反転トラック25の入口に対向する位置23aにワーク収納孔23が到達した時に、位置23a近傍に設けた図示しない噴出手段によって反転トラック25内に送出される。ワークW1が反転トラック25内に送出されたことを、反転トラック25内の図示しないセンサにより検知した後、噴気のタイミングと搬送テーブル22の回転タイミングとが調整される。このことにより前記ワークW1が収納されていたワーク収納孔23が反転トラック25の出口に対向する位置23bに到達した時に、ワークW1は極性を反転した状態で当該のワーク収納孔23に再び収納される(図9の矢印H)。
【0004】
ところで図9に示す従来のワーク搬送装置において、反転トラック25内のワークW1が出口に到達するタイミングと、ワークW1が収納されていたワーク収納孔23が反転トラック25の出口に対向する位置23bに到達するタイミングとを合わせる必要がある。この場合、反転トラック25内を通過するワークW1の速度を検知して搬送テーブル22の回転速度と比較し、搬送テーブル22の回転速度を制御して前記のタイミングを合わせる必要があるが、このようにタイミングを合わせる場合、装置の複雑化を招きコストアップを生じる。
【0005】
ワークW1を反転トラック25内に送出する噴出手段の噴気力を調整してワークW1の速度を最適化する方法も考えられるが、この方法も容易ではない。すなわち噴気力が大きいとワークW1の速度が大きくなり、ワークW1が収納されていたワーク収納孔23が反転トラック25の出口に対向する位置23bに到達するよりも早くワークW1が反転トラック25の出口に到達する。このとき、ワークW1が収納されていたワーク収納孔23と異なるワーク収納孔23が反転トラック25の出口に対向する位置23bにあり、かつこのワーク収納孔23に別のワークW2が収納されていると、図9に示すようにワークW1がワークW2と衝突して各ワークが傷ついてしまう。また、この位置23bに搬送テーブル22の外周部があると、ワークW1が搬送テーブル22の外周部と衝突し、これらの各部やワークW1を傷つけることがある。
【0006】
他方、前記噴気力が小さいとワークW1の速度が小さくなり、ワークW1は反転トラック25内で停止して出口まで到達することができなくなる。このように、噴気力が大きい場合も小さい場合も、ワーク収納孔に収納されなかったワークW1が反転トラック25内に残るため、装置を停止させて人手によって該ワークを取り除く必要が生じ、装置の稼働率低下を招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−139136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、極性を反転したワークを確実に当該ワークが収納されていたワーク収納孔に収納することができ、かつワークを傷つけることがなく、さらに構造が簡単なワーク搬送装置及びワーク搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、極性を有するワークを収納する複数のワーク収納孔が設けられ、ワークを搬送する搬送体と、ワーク収納孔内のワークについて極性の正逆を判定する極性判定部と、搬送体に対向して設けられ、入口と出口とを有する円弧状の反転トラックと、ワーク収納孔内のワークを反転トラック内に送出するワーク送出手段と、反転トラックにワーク送出手段によって送出されたワークを減速させるワーク減速手段と、反転トラック内でワーク減速手段によって減速されたワークをワーク収納孔内へ噴出して戻すワーク噴出手段とを備えたことを特徴とするワーク搬送装置である。
【0010】
本発明は、反転トラックは、反転トラック上流側の上流側気体通路と、反転トラック下流側の下流側気体通路とを介して気体溜まりに接続され、この気体溜まりは真空発生源と気体供給源に切換自在に接続され、気体溜まりが真空発生源に接続した場合、下流側気体通路はワーク減速手段として機能し、気体溜まりが気体供給源に接続した場合、下流側気体通路はワーク噴出手段として機能することを特徴とするワーク搬送装置である。
【0011】
本発明は、反転トラックの下流側気体通路より下流側に大気開放孔が設けられていることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0012】
本発明は、ワーク送出手段は搬送体側に設けられ、ワーク収納孔内のワークを反転トラックの入口に向かって噴出する圧縮気体噴出手段からなることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0013】
本発明は、反転トラックの入口近傍に、ワーク収納孔から反転トラックの入口にワークが送出されたことを検出する入口側センサが設けられていることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0014】
本発明は、反転トラックの出口近傍に、反転トラックの出口からワーク収納孔へワークが噴出されたことを検知する出口側センサが設けられていることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0015】
本発明は、搬送体側の反転トラックの出口と対向する部分に、ワーク収納孔内にワークが正常に収納されない場合に、当該ワーク収納孔内のワークを反転トラックの出口に戻すための圧縮気体戻し手段が設けられていることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0016】
本発明は、極性を有するワークを収納する複数のワーク収納孔を有する搬送体によって搬送する工程と、ワーク収納孔内のワークについて、その極性の正逆を極性判定部によって判定する工程と、極性判定部によって極性が逆であると判定された搬送体のワーク収納孔内のワークを搬送体に対向して設けられた円弧状の反転トラックの入口にワーク送出手段によって送出する工程と、反転トラックの入口から反転トラックに送出されたワークをワーク減速手段によって反転トラック内で減速させる工程と、反転トラック内で減速されたワークをワーク噴出手段によって搬送体のワーク収納孔内へ噴出して戻す工程と、を備えたことを特徴とするワーク搬送方法である。
【0017】
本発明は、反転トラックは、反転トラック上流側の上流側気体通路と、反転トラック下流側の下流側気体通路とを介して気体溜まりに接続され、この気体溜まりは真空発生源と気体供給源に切換自在に接続され、気体溜まりが真空発生源に接続した場合、下流側気体通路はワーク減速手段として機能し、気体溜まりが気体供給源に接続した場合、下流側気体通路はワーク噴出手段として機能することを特徴とするワーク搬送方法である。
【0018】
本発明は、反転トラックの下流側気体通路より下流側に大気開放孔が設けられていることを特徴とするワーク搬送方法である。
【0019】
本発明は、ワーク送出手段は搬送体側に設けられ、ワーク収納孔内のワークを反転トラックの入口に向かって噴出する圧縮気体噴出手段からなることを特徴とするワーク搬送方法である。
【0020】
本発明は、反転トラックの入口近傍に、ワーク収納孔から反転トラックの入口にワークが送出されたことを検出する入口側センサが設けられていることを特徴とするワーク搬送方法である。
【0021】
本発明は、反転トラックの出口近傍に、反転トラックの出口からワーク収納孔へワークが噴出されたことを検知する出口側センサが設けられていることを特徴とするワーク搬送方法である。
【0022】
本発明は、搬送体側の反転トラックの出口と対向する部分に、ワーク収納孔内にワークが正常に収納されない場合に、当該ワーク収納孔内のワークを反転トラックの出口に戻すための圧縮気体戻し手段が設けられていることを特徴とするワーク搬送方法である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、極性判定部により極性が逆であると判定されたワークは、搬送体のワーク収納孔からワーク送出手段により反転トラック内に送出される。反転トラック内のワークはその後、ワーク減速手段によって減速あるいは停止し、次にワーク噴出手段によってワーク収納孔内へ噴出して戻される。この場合、搬送体の搬送速度に合わせてワーク噴出手段を作動させることにより、反転トラック内のワークを容易かつ確実にワーク収納孔内へ噴出して戻すことができ、ワークや搬送体を傷つけることもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明によるワーク搬送装置の一実施の形態を示す拡大平面図。
【図2】図2は、ワーク搬送装置の詳細を示す図1におけるA−A断面図。
【図3】図3は、ワーク搬送装置の搬送テーブルを示す正面図。
【図4】図4は、ワーク搬送装置の搬送テーブルを示す図3におけるD−D断面図。
【図5】図5は、ワーク搬送装置のエアー溜まりを示す図1におけるC断面図。
【図6】図6は、ワーク搬送装置の反転トラックを示す図1におけるB−B断面図。
【図7】図7(a)(b)(c)は、本発明によるワーク搬送装置の作用を示す図。
【図8】図8は、本発明によるワーク搬送装置の全体の概略図。
【図9】図9は、従来のワーク搬送装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本発明によるワーク搬送装置及びワーク搬送方法の一実施の形態を示す図である。
【0026】
図1および図8に示すように、ワーク搬送装置30は極性を有するワークWを収納する複数のワーク収納孔4,4a,4bが外周に設けられ垂直方向に配置された搬送テーブル(搬送体)3と、搬送テーブル3のワーク収納孔4,4a,4b内のワークWについて極性の正逆を判定する極性判定部6と、搬送テーブル3に対応して設けられ、入口8aと出口8bとを含むとともにワークWを受け入れて反転させる反転トラック8を有する反転部7とを備えている。
【0027】
また搬送テーブル3は垂直方向に配置されたテーブルベース1に、中心軸2の回りに回転自在に保持されている。なお、搬送テーブル3の代わりに搬送体として、帯状の搬送ベルトを用いることも考えられる。
【0028】
上述のように、搬送テーブル3の外周部にはワークを収納するワーク収納孔4,4a,4bが、搬送テーブル3を厚さ方向に貫通して等間隔で設けられている。ワークWの形状は直方体で、極性を有している。図中において、判りやすいようにワークWの長手方向の一端に黒色のマーキングを記し、これにより極性を示している。実際のワークWにおいては、このようなマーキングを有さず、別の方法で極性表示することもある。
【0029】
図8において、フィーダ5から供給されるワークWは長手方向を搬送テーブル3の厚さ方向に合わせてワーク収納孔4に個別に収納され、搬送テーブル3は図示しない駆動部の作用により中心軸2の周囲に時計方向に間歇回転する(図8の矢印G)。そして、ワーク収納孔4,4a,4bに収納されたワークWは、極性判定部6により極性を判定した後、反転部7へ到達する。
【0030】
ワーク搬送装置30の反転部7の平面図(図8のX矢視拡大図)を図1に示す。また図1中のA−A断面図を図2に示し、図1中のB−B断面図を図6に示し、図1中のC断面図を図5に示す。
【0031】
図1及び図2に示すように、反転部7はブロック9と、ブロック9を覆うカバー10とを有し、反転部7は搬送テーブル3の表面とわずかな間隙をもって固定配置されている。
【0032】
上述した反転トラック8はブロック9内に円弧状に貫通して形成され、反転トラック8の入口8aと出口8bとは搬送テーブル3の回転経路に沿ってワーク収納孔4の1ピッチ分だけ離れている。反転トラック8の入口8a近傍には、ワークWが反転トラック8の入口8aを通過したことを検知する入口側センサS1が設置されている。同様に、反転トラックの出口8b近傍には、ワークが反転トラックの出口8bを通過したことを検知する出口側センサS2が設置されている。
【0033】
図1においては、反転トラック8の入口8aに対向する位置にワーク収納孔4aが停止し、反転トラック8の出口8bに対向する位置にワーク収納孔4bが停止している様子が例示してある。ブロック9内において反転トラック8に4本のエアー溝(気体通路)16a,16b,16c,16dが接続され、エアー溝16a,16b,16c,16dは反転トラック8の円弧の略中心部下方に形成されたエアー溜まり(気体溜まり)15に通じている。この場合、上流側のエアー溝16a,16bは上流側エアー溝となり、下流側のエアー溝16c,16dは下流側エアー溝となっている。
【0034】
図5に示すように、エアー溜まり15は連通孔17を介して配管接続口18に通じており、配管接続口18は切換弁31に接続されている。そして必要に応じて切換弁31を動作させ、エアー溜まり15を真空発生源32及びエアー供給源(気体供給源)33に自在に接続するように切り換えることが可能になっている。配管接続口18のエアーの流れは、真空発生源32に接続した時は図5の矢印Sの向きとなり、エアー供給源33に接続した時は図5の矢印Tの向きとなる。
【0035】
また、図1に示すように、エアー溝16a,16b,16c,16dと反転トラック8との接続箇所のなす角度は、エアー溜まり15からエアー溝16a,16b,16c,16dを経由して反転トラック8まで圧縮エアーが供給されたとき、この圧縮エアーがそのまま反転トラックの出口8bに向かうようになっている。
【0036】
このようにエアー溝16a,16b,16c,16dと反転トラック8とを接続することにより、切換弁31の作用によりエアー溜まり15を真空発生源32に接続した時には、反転トラックの出口8b側から入口8a側に向かって真空吸引が行われ、切換弁31の作用によりエアー溜まり15をエアー供給源33に接続した時には、反転トラックの入口8a側から出口8b側に向かってエアー噴出が行われる。ここで、反転トラック8内にワークWが存在しない時には、エアー溜まり15は切換弁31の作用により真空発生源32に接続されている。
【0037】
さらに、反転トラック8はエアー溝16a,16b,16c,16dと反転トラック8との接続箇所よりも下流側、すなわち反転トラックの出口8bに近い側のカバー10に、反転トラック8の両側に位置するとともに大気に連通する大気開放孔19が開口している。この大気開放孔19はブロック9に形成された大気開放溝20により反転トラック8に連通している。
【0038】
なお、図1において、反転トラック8をはじめとするブロック9内に設置された各部材がカバー10を介して見えるように記されているが、これはカバー10が透明な素材により成る場合である。本発明を実施する上において、カバー10は特に透明である必要はない。
【0039】
次に搬送テーブル3を反転部7付近のテーブルベース1の反対側から見た透視図(図1におけるY矢視透視図)を図3に示し、図3におけるD−D断面図を図4に示す。図3において、搬送テーブル3より紙面手前側には反転部7が位置するが、図示されていない。
【0040】
図3及び図4において、テーブルベース1の搬送テーブル3に面した側には環状負圧溝11が形成され、図示しない真空発生源に接続されている。そして、搬送テーブル3のテーブルベース1に面した側は、ワーク収納孔4から環状負圧溝11に連通する座ぐり穴12と吸引孔13が設けられ、ワーク収納孔4内にワークWを真空吸着保持することができる。また、テーブルベース1において、反転トラックの入口8aに対向するワーク収納孔4aに対応する位置には反転トラックの入口8aに向けてエアー噴出孔(圧縮気体噴出手段)14aが設けられ、このエアー噴出孔14aはエアー供給源14cに接続されている。さらに、テーブルベース1において、反転トラックの出口8bに対向するワーク収納孔4bに対応する位置には反転トラックの出口8bに向けてエアー噴出孔(圧縮気体戻し手段)14bが設けられ、このエアー噴出孔14bはエアー供給源14cに接続されている。ここで、ワーク収納孔4a,4bは、いずれも同一のワーク収納孔を示しており、ワーク収納孔が入口8aに対向する位置にくるとワーク収納孔4aとなり、出口8bに対向する位置にくるとワーク収納孔4bとなる。なお、上記各構成部材は、制御部30aにより駆動制御される。
【0041】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。まず搬送テーブル3のワーク収納孔4,4a,4b内に収納されたワークWは、搬送テーブル3の回転に伴って搬送され、極性判定部6において、ワークWの極性が判定される。
【0042】
次に搬送テーブル3が回動して、極性判定部6により極性が逆であると判定されたワークW1がワーク収納孔4aに収納された状態で反転トラックの入口8a近傍に到達して、搬送テーブル3が停止する。次にワーク収納孔4a内のワークW1が、反転トラック8に送り込まれ反転トラック8により反転されて、出口8bに相対するワーク収納孔4bに収納される。
【0043】
すなわち搬送テーブル3のワーク収納孔4aに収納されているワークWは、極性判定部6により極性を判定される。このとき、極性が逆であると判定されたワークW1が反転トラックの入口8a近傍に到達すると、搬送テーブル3が停止し、極性判定部6の判定結果を基にして、制御部30aの指令によりエアー噴出孔14aからエアーが噴出され(図4の矢印P)ワークW1は反転トラック8に送り込まれる。一方、極性が正しいワークについては、反転トラックの入口8a近傍に到達してもエアー噴出孔14aからエアーを噴出することなく、そのままワーク収納孔4aに収納された状態で搬送される。
【0044】
極性が逆のワークW1が反転トラック8に送り込まれた直後の様子を図7(a)に示す。エアー噴出孔14aからのエアー噴出により、ワークW1が反転トラック8に送り込まれると、ワークW1が反転トラック8の入口8aを通過したことを入口側センサS1が検知する。
【0045】
この間、エアー溜まり15は真空発生源32に接続され、反転トラック8の出口8b側から入口8a側に向かって真空吸引が行われている(図7(a)の矢印J)。この時のエアーの流れは、反転トラック8の入口8aからエアー溝16a,16b,16c,16dに流れ込むエアーの流れと、真空吸引により大気開放孔19からエアー溝16a,16b,16c,16dに流れ込むエアーの流れの2種類のエアーの流れを含む。ここで、反転トラック8に送り込まれたワークW1を反転トラック8内で確実に停止させるために、上記2種類のエアーの流れについては反転トラック8の入口8aからのエアーの流れよりも大気開放孔19からのエアーの流れの方が大きくなるように、大気開放孔19の開口面積及び大気開放溝20の断面積を反転トラック8の断面積よりも大きくしてある。
【0046】
なお、図7(a)において、反転トラック8の出口8bと対向するワーク収納孔4bにはワークが収納されているので、反転トラック8内のエアーの流れは上記の2種類であるが、ワーク収納孔4bにワークが収納されていない場合には、ワーク収納孔4b内の吸引孔13に作用している真空吸引によって、大気開放孔19からワーク収納孔4bに向かうもう一つのエアーの流れも発生する。いずれの場合にも、反転トラック8内のエアーの流れは大気開放孔19により分断される。上述のように、大気開放孔19により分断されるエアーの流れにより、反転トラック8内のワークW1は出口8bに到達することなく減速して、最上流側のエアー溝16aが反転トラック8に接続する箇所と大気開放孔19との間のいずれかの位置で停止する。この状態を図7(b)に示す。
【0047】
ワークW1が反転トラック8内に停止した時点でエアー噴出孔14aからのエアー噴出は停止しており、エアー溜まり15は真空発生源32に接続され、反転トラックの出口8b側から入口8a側に向かって真空吸引が行われている(図7(b)の矢印J)。
【0048】
この間、搬送テーブル3の回転経路に沿って設置されている極性判定部6、反転部7及び図示されない検測部や分類排出部などにおいては、搬送テーブル3の停止中にそれぞれ所定の工程が実行される。それらのうち最も時間を要する工程の実行が完了して、搬送テーブル3が回転を再度開始する(図7(b)の矢印L)。そして、ワークW1が収納されていたワーク収納孔4aは、反転トラックの出口8bに対向する位置に向かって移動する。
【0049】
次にワークW1が収納されていたワーク収納孔4aがワーク収納孔の一ピッチ分だけ移動し、反転トラックの出口8bに対向する位置に到達してワーク収納孔4bとなり、搬送テーブル3が停止する(図7(c))。このとき、搬送テーブル3が停止したことを示す停止信号が制御部30aに送信され、制御部30aからの指令により、切換弁31が動作してエアー溜まり15をエアー供給源33に接続する。そして、4本のエアー溝16a,16b,16c,16dによって反転トラック8の入口8a側から出口8b側に向かってエアー噴出が行われ(図7(c)の矢印K)、噴出したエアーは大気開放孔19から外方へ排出される。これにより、反転トラック8内で停止していたワークW1は反転トラック8の出口8bに向かって移動し、大気開放孔19の位置に到達する。エアー溝16a,16b,16c,16dから噴出したエアーは大気開放孔19から排出されるが、一部のエアーは反転トラック8の出口8bに向かうので、ワークW1は大気開放孔19の位置を通過し、反転トラック8の出口8bに対向するワーク収納孔4bに到達する。そして、ワークW1はワーク収納孔4b内の吸引孔13による真空吸引によって極性を反転させた状態でワーク収納孔4bに収納される。ワークW1がワーク収納孔4bの出口を通過したことを出口側センサS2が検知すると、搬送テーブル3は再度回転可能となり、搬送テーブル3が回転を再度開始する。このとき制御部30aからの指令により、切換弁31が動作してエアー溜まり15は真空発生源32に接続され、反転トラック8の出口8b側から入口8a側に向かって真空吸引が行われ、次のワークWが反転トラック8に送り込まれることになる。
【0050】
なお、ワークW1がワーク収納孔4bに正しく収納されなかった場合には、出口側センサS2により、ワークW1がワーク収納孔4b内に正しく収納されていないことが検出される。この場合、テーブルベース1のうちワーク収納孔4bに対応する位置に設けられたエアー噴出口14bからエアーを噴出してワークW1を一旦反転トラック8内に戻す。次に反転トラック8の出口8b側に向かうエアー噴出により、再度ワークW1をワーク収納孔4bに収納する。
【0051】
このように本実施の形態によれば、搬送テーブル3を停止させた後、極性判定部6により極性が逆であると判定されたワークW1をワーク収納孔4aから反転トラック8内に送出した後、このワークW1を反転トラック8内で減速させて停止することができる。その後搬送テーブル3をワーク収納孔の1ピッチ分だけ回動させて、停止させる。次に反転トラック8内のワークW1を圧縮エアーにより搬送テーブル3のワーク収納孔4bへ戻すことができる。このため、搬送テーブル3の移動のタイミングと、搬送テーブル3のワーク収納孔4bへワークW1を戻すタイミングを容易に揃えることができるので、ワークW1が搬送テーブル3に衝突してワークW1や搬送テーブル3が傷つくことはない。
【0052】
なお上記実施の形態において、反転トラック8内に送出されたワークW1を反転トラック8内で停止させ、当該ワークW1を収納すべきワーク収納孔4bが反転トラック8の出口8bに対向する位置に到達するまで停止させ、ワーク収納孔4bが反転トラック8の出口8bに対向する位置に到達後に当該ワークW1を加速して出口8bに導いているが、搬送テーブル3の回転速度が大きく、当該ワークW1を収納すべきワーク収納孔4bが反転トラック8の出口8bに対向する位置に到達するまでの時間が短い場合は、当該ワークW1を停止に至らない速度まで減速させて、ワーク収納孔4bが出口8bに対向する位置に到達した後に当該ワークW1を加速して出口8bに導いても良い。
【0053】
また反転トラック8にエアー溝16a,16b,16c,16dを4本接続した例について説明したが、反転トラック8内におけるワークW1の停止と再移動を確実かつ迅速に行うためのものであり、ワークW1の寸法や重量あるいは搬送テーブル3の回転速度等により、エアー溝の数は4本に限定されるものではなく、最適の本数に設定することが可能である。
【0054】
また、本実施の形態においては、同一のエアー溝16a,16b,16c,16dが切換弁31を切換えることにより真空吸引とエアー噴出の機能を有する場合について説明したが、エアー溝16a,16b,16c,16dのうち、いずれかのエアー溝が真空吸引機能を有し、残りのエアー溝がエアー噴出機能を有するようにしてもよい。
【0055】
また、図1において、反転トラック8の入口8aからエアー噴出によりワークW1を反転トラック8内に送り出す例について示したが、入口8aから反転トラック8側からのエアー吸引によりワークW1を反転トラック8内に送り出してもよい。またワークW1をエアー吸引とエアー噴出との組み合わせによって反転トラック8内に送出してもよい。
【0056】
さらに本実施の形態において、エアー噴出によりワークWを噴出する機構の例を示したが、エアー噴出に限らず他の気体を用いた気体噴出、例えば人体やワークに影響を及ぼさない不活性ガスを用いてワークWを噴出してもよい。
【0057】
また、本実施の形態においては、搬送テーブル3の厚さ方向に貫通して設けられたワーク収納孔4内にワークWを収納して搬送し、反転トラック8が搬送テーブル3の一方側に設置されている場合について説明したが、搬送テーブル3を水平に配置し、この搬送テーブル3の外周にワーク収納孔4を形成し、このワーク収納孔4にワークW1を収納して搬送するとともに、反転トラック8を搬送テーブル3の更に外側に設置してもよい。
【0058】
また、搬送テーブル3を水平に設置したり傾斜して設置してもよい。
【0059】
また、搬送体として回転する搬送テーブル3の例を示したが、無端ベルト等の帯状体を用いてワークを搬送してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 テーブルベース
2 中心軸
3 搬送テーブル
4,4a,4b ワーク収納孔
6 極性判定部
7 反転部
8 反転トラック
8a 反転トラックの入口
8b 反転トラックの出口
9 ブロック
10 カバー
14a,14b エアー噴出孔
15 エアー溜まり
16a,16b,16c,16d エアー溝
19 大気開放孔
30 ワーク搬送装置
31 切換弁
32 真空発生源
33 エアー供給源
W,W1,W2 ワーク
S1 入口側センサ
S2 出口側センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性を有するワークを収納する複数のワーク収納孔が設けられ、ワークを搬送する搬送体と、
ワーク収納孔内のワークについて極性の正逆を判定する極性判定部と、
搬送体に対向して設けられ、入口と出口とを有する円弧状の反転トラックと、
ワーク収納孔内のワークを反転トラック内に送出するワーク送出手段と、
反転トラックにワーク送出手段によって送出されたワークを減速させるワーク減速手段と、
反転トラック内でワーク減速手段によって減速されたワークをワーク収納孔内へ噴出して戻すワーク噴出手段とを備えたことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
反転トラックは、反転トラック上流側の上流側気体通路と、反転トラック下流側の下流側気体通路とを介して気体溜まりに接続され、この気体溜まりは真空発生源と気体供給源に切換自在に接続され、
気体溜まりが真空発生源に接続した場合、下流側気体通路はワーク減速手段として機能し、
気体溜まりが気体供給源に接続した場合、下流側気体通路はワーク噴出手段として機能することを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
反転トラックの下流側気体通路より下流側に大気開放孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
ワーク送出手段は搬送体側に設けられ、ワーク収納孔内のワークを反転トラックの入口に向かって噴出する圧縮気体噴出手段からなることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
反転トラックの入口近傍に、ワーク収納孔から反転トラックの入口にワークが送出されたことを検出する入口側センサが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
反転トラックの出口近傍に、反転トラックの出口からワーク収納孔へワークが噴出されたことを検知する出口側センサが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項7】
搬送体側の反転トラックの出口と対向する部分に、ワーク収納孔内にワークが正常に収納されない場合に、当該ワーク収納孔内のワークを反転トラックの出口に戻すための圧縮気体戻し手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
極性を有するワークを収納する複数のワーク収納孔を有する搬送体によって搬送する工程と、
ワーク収納孔内のワークについて、その極性の正逆を極性判定部によって判定する工程と、
極性判定部によって極性が逆であると判定された搬送体のワーク収納孔内のワークを搬送体に対向して設けられた円弧状の反転トラックの入口にワーク送出手段によって送出する工程と、
反転トラックの入口から反転トラックに送出されたワークをワーク減速手段によって反転トラック内で減速させる工程と、
反転トラック内で減速されたワークをワーク噴出手段によって搬送体のワーク収納孔内へ噴出して戻す工程と、
を備えたことを特徴とするワーク搬送方法。
【請求項9】
反転トラックは、反転トラック上流側の上流側気体通路と、反転トラック下流側の下流側気体通路とを介して気体溜まりに接続され、この気体溜まりは真空発生源と気体供給源に切換自在に接続され、
気体溜まりが真空発生源に接続した場合、下流側気体通路はワーク減速手段として機能し、
気体溜まりが気体供給源に接続した場合、下流側気体通路はワーク噴出手段として機能することを特徴とする請求項8記載のワーク搬送方法。
【請求項10】
反転トラックの下流側気体通路より下流側に大気開放孔が設けられていることを特徴とする請求項9記載のワーク搬送方法。
【請求項11】
ワーク送出手段は搬送体側に設けられ、ワーク収納孔内のワークを反転トラックの入口に向かって噴出する圧縮気体噴出手段からなることを特徴とする請求項8記載のワーク搬送方法。
【請求項12】
反転トラックの入口近傍に、ワーク収納孔から反転トラックの入口にワークが送出されたことを検出する入口側センサが設けられていることを特徴とする請求項8記載のワーク搬送方法。
【請求項13】
反転トラックの出口近傍に、反転トラックの出口からワーク収納孔へワークが噴出されたことを検知する出口側センサが設けられていることを特徴とする請求項8記載のワーク搬送方法。
【請求項14】
搬送体側の反転トラックの出口と対向する部分に、ワーク収納孔内にワークが正常に収納されない場合に、当該ワーク収納孔内のワークを反転トラックの出口に戻すための圧縮気体戻し手段が設けられていることを特徴とする請求項8記載のワーク搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−247972(P2010−247972A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100912(P2009−100912)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(591009705)株式会社 東京ウエルズ (47)
【Fターム(参考)】