説明

一体型コイルスプリングアシスト付シングルピボットヒンジ

【課題】
【解決手段】車両の開閉ヒンジであって、回動軸フランジを有するマウントと、回動リンクと、前記回動リンクを回動軸フランジに連結する回動点と、前記回動軸に対して変位面からほぼ直角をなす方向に、第1のコイル端部から第2のコイル端部まで横方向に巻かれた螺旋構造の形をとるスプリングとを具える。このコイルのサイズ、螺旋構造のサイズ、巻き数を変更して、ヒンジの他の部品を変更することなく車両の開閉部をスプリング付勢する所望の力を得ることができる。ヒンジの各部品は、1本の回動リンクや四棒リンク機構など様々な構造とすることができる。コイルスプリングのストランド端部は第1のコイル端部の位置までコイルの方向に延在し、回動軸を中心とした変位面の近くに付勢力を保持するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に巻かれたスプリングで開閉部を支えるようスプリング付勢された回動軸を具える自動車の開閉ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン室のフードやトランクの蓋などの、従来の車両の開閉ヒンジの多くは、パネル端部の回動軸で回動する重いパネルの移動を補助すべく付勢するスプリングを具えている。しかしながら、開閉部を完全に開いた位置に保持するには、多くの場合、スプリング付勢アシスト力に加えて、回動軸を中心とするアームのモーメントで動作するパネルの重量やリンク機構を介して伝達される力により開閉パネルが閉じようとするのを阻止する突っ張り棒やガス圧縮材または類似の追加機構を設けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スプリング付勢を得る方法の一つに、車両を横切って配設しうるトーションロッドを用いる方法がある。しかしながら、このスプリング付勢は閉じるのに逆らうのに十分な力を得られるが、トーションロッドの長さ全体でスプリング付勢力を提供することから、トーションロッドを長くすると、開口部あるいは開閉パネルで覆われたコンパートメント内へのアクセスを妨げ実質的に邪魔になってしまう。ガス強化圧縮材や強化スプリングといった他のスプリング設計の改良は、スプリング付勢ユニットを別に取り付けて従来のヒンジ構造を補完する必要があり、往々にして複数の工程が必要となる。このような部品の使用は、車両に要素を追加し嵩張らせるとともに製造工程も増加するため非常に高価となり、実質的に製造が困難である。ガス圧縮材のパワーソースの場合、閉位置において圧縮材の力はヒンジの回動点にかかり、そのため回動点に高い負荷がかかり、当初からの装備の寿命が短くなってしまう。また、ガス圧縮材の寿命も時間と頻度に依存するため、スチールのスプリングより耐久性に欠けるものとなる。
【0004】
さらに、特定の応用例について設計とスプリングの強度が定まると、そのヒンジの設計は、この設計の対象でないサイズや重量、重量バランスや重心の異なる他の車両へ容易に転用することができない。逆に、異なる開閉部は、その特定の開閉部のタイプに応じて特別に設計されたリンク部および/または付勢構造を必要とし、そのため車両の製造ライン全体において、製造や修理を実現するために自動車製造業者やディーラにより製造され棚卸しされる部品や製造部材の数が実質的に多くなる。
【0005】
上述した問題に取り組む公知の試みとして、四棒リンク機構の一部としてのシングルピボットアームと、一体型の放射状に巻かれたクロックスプリングを用いるものがある。しかしながら、このクロックスプリングは付勢力をヒンジ機構に向けるが、このスプリングは四棒リンク機構に取り付けるのに上下左右方向のいずれも非常に大きな格納場所を必要とする。その結果、これらの公知の機構はトラックのような大型車両にのみ適している。さらに、異なる設計は複雑で、多くの部品と組み立て工程を必要とし、部品を追加するとヒンジが比較的重くなり、それ故にそれ以前のシステムと比較して大きな出費となるため多くの製造工程に寄与するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予め一体型に組み立てて出荷され単一の部材として装着されるシングルピボット開閉ヒンジの設計を提供することにより、上記の不利益を解消するものである。リンク構造は、ヒンジ周りの空き領域などにパッケージが収まるよう設計されており、開閉パネルの重量や重心の違いにも、一体型パッケージ部品の物理的なリンク構造を実質的に変更することなく対応可能である。より具体的には、このパッケージは、横方向に巻かれたスプリングを具え、開閉パネルのパフォーマンスに応じてコイル半径、ワイヤ直径、横に整列するコイル数を変更することができる。さらに、このコイルはヒンジの回動軸に装着可能であり、あるいは、ピボット周りにスペースの制限がある場合や隣接する場所が自動車に四棒リンク機構を取付可能である場合には回動軸に偏心させて装着される。さらに、この横方向に巻かれたスプリングの一体型パッケージは、様々なリンク構造に適用可能である。
【0007】
好適な実施例において、横方向に巻かれたスプリングはブラケット内に配置され、回動軸の周りにグーズネックバーを回動可能に装着可能としている。このコイルスプリングは回動軸を取り巻いており、あるいは変形例として示すように、レバーアセンブリを通ってグーズネックバーの回動軸に偏心させて装着される。さらに、偏心させて装着したコイルスプリングは放射状に延びる端部を具え、回動軸フランジを有するマウントと当該マウントに回動可能に取り付けられたピボットリンクとを具える四棒リンク機構を構成してもよい。さらに、この螺旋の端部はコイルの一端のリンク機構に連結されており、これによりコイルの端部は実質的にリンク機構の転移面(plane of displacement)として構成される。
【0008】
このように、本発明は、一体型のヒンジユニットにより従来のガス圧縮材やクロックスプリングアセンブリより実質的に仕事工程や取付工程が少なくなるため、実質的にコストを低減することができる。さらに、スチール等でできたスプリングは、従来用いられていたガス圧縮材や公知のヒンジ構成より広い範囲の温度や外部状況に耐えうるため、信頼性を向上することができる。さらに、本発明により、車両の開閉パネルで覆われた開口またはコンパートメント内の障害物を減少させることができる。さらに、主としてヒンジの連結点を調整することにより、およびコイルサイズ、スプリング直径、スプリングの巻き数を変更することにより、予め定められたヒンジ構造を簡単に調整して重量や重心規格の異なる開閉パネルに用いることができる。さらに、本発明はヒンジの回動負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、好適な実施例に関する以下の詳細な説明を添付の図面とともに参照することにより一層明確に理解されるものであり、図面において同じ参照符号を付したものは同じ部品を示す。
【0010】
図1を参照すると、車両本体12が示されており、例えばトランク空間22などのコンパートメント20へアクセスするための、例えばトランクの蓋16などの車両用開閉パネル14を具えている。パネル16は、パネル16の左右部分にある一対のヒンジアセンブリ28(一方のみを示す)を具えるヒンジ機構26により、本体構造24における開口22の端部に回動可能に取り付けられている。
【0011】
ヒンジアセンブリ28は、ボディ構造24に例えばボルト25と対応するナットで固定されるマウントブラケット30を具えている。このブラケット30は、回動軸フランジ32、34で規定される回動軸に沿って、好ましくは中央開口36の両端部に、間隔が設けられたフランジ32と34を具える。回動ピン38が開口36を横切って、各フランジ32、34のピン受け穴39、40を通って延在している。ピボットリンク42は、好ましくはグーズネックバー44の形状であり、バー44の一端で回動ピン38を受ける穴を具えている。好適には、このバーは四角い筒型に形成される。
【0012】
回動ピン38はまた、ブラケット30の開口36内に支持され横方向に巻かれたスプリング50のコイル48に通されている。コア52が、例えばナイロンなどのブッシング材料からなり、金属と接触しても音が出ることがなく、回動ピン38と同軸でバー44に隣接するコイルスプリング50を支持している。螺旋の一方の端部54は、ブラケット28の開口36の脇のノッチ56に保持されている。螺旋60の他方の端部58は伸長部を具えており、これがバー44の穴59(図2)に保持されている。この結果、バー44は、コイルスプリング50によって、本体構造24に取り付けられたブラケット30からスプリング付勢されている。
【0013】
図2に最もよく示すように、コイルスプリング50は、車両本体12の開口18からパネル16が離れる上側あるいは開位置側に回動リンク42を付勢している。図に示す実施例では、ブラケット30の制御溝62で螺旋構造60の伸長端部58を受けており、コンパートメント20の開口18に対しグーズネックバー44が邪魔にならない位置に位置決めされるようにしている。ただし、蓋16が閉められた場合、パネル16は本体12の開口18を覆うように、公知の方法(図示せず)で蓋の係合端部のラッチにより図1に示す位置に保持され、グーズネックバー44が図1に示す位置に保持される。
【0014】
図3−5を参照すると、互いに離れた回動軸フランジ70(図3)、72(図5)を具えるブラケット68の形態をとるマウント28が示されている。これら回動軸フランジ70、72(図5)はそれぞれ、回動ピン66を受けるよう構成された穴を具えている。上記実施例と同様に、回動リンク42は、好ましくはグーズネックバーとして形成され回動軸フランジ70と72間でバー44の端部に配置された回動ピン66を受けるよう構成された穴を具える。
【0015】
ブラケット68はまた、マウントピン80を支持するよう構成された穴を具えるスプリング支持フランジ76,78を具えている。このマウントピン80は、スプリングブシュの中央開口を貫通する。コイルスプリング50は、ブラケット68の係留溝86(図4)に収容されるブラケット係合端部54を具えている。スプリング螺旋の他方の端部88は、伸長部分90と末端フック部92とを具えている。このフック部82は回動リンク96のスプリング保持穴94に通されている。リンク96の他方の端部は、グーズネックバー44の穴を貫通する回動ピン102を受ける互いに離れた回動フランジ98、100(図3)を具えている。
【0016】
図4に最もよく示すように、スプリングはリンク96を近接方向に付勢し、パネル16をトランクの開口18から離れた開位置の方にグーズネックバー44を移動させる。図3に示すように、トランクの蓋16がバー44とともに閉位置側に回動した場合、コイルスプリング50の力は、回動軸フランジ70、72を通るヒンジ軸回動ピン66の方ではなく、回動ピン102のところでリンク96とバー44により阻止される。それにも拘わらず、図1、2に示す実施例と同様に、付勢スプリングとリンク機構を含むヒンジアセンブリは、市販および車両本体12へ一体型として取り付けられるように予め組み立てられている。
【0017】
図6、7を参照すると、ヒンジアセンブリ108は、周りの構造体24に例えばマウントフランジ114で固定されるよう構成された回動軸フランジ112を有するマウント110を具えている。この回動軸フランジ112には、回動ピン118により回動リンク116が回動可能に連結されている。
【0018】
ヒンジアセンブリ108はまた、横方向に巻かれたスプリング50を具えている。ただし、コイル螺旋の一方の端部120は、コイルの中心からほぼ外側放射方向に延びる伸長端部を具える。終端部121は、マウント110に設けられた回動フランジ118に係止するよう屈曲されている。コイル螺旋の他方の端部124は、好ましくはコイル内を通って、コイルの端部120あるいはその近傍まで、コイルの長手方向に延びる折り返し部分122を具えている。この長手方向に延在する部分122はその後、部分125を介して保持端部126の方へ、コイルの中心からほぼ放射方向外側に延びている。この端部126は、回動リンク116の端部に設けられた回動軸フランジ128に回動可能に係合している。スプリング50の終端部125、120は、回動リンク116とマウント110に連結され、四棒ヒンジを構成している。
【0019】
このようにして、蓋16は、例えばマウントフランジ130の回動リンクに装着され、図7に示すように、上側の開位置へとスプリング付勢される。この蓋16が車両の開口18を覆うように閉じられ、公知の方法でラッチされた場合、ヒンジ機構は図6に示すような配置となり、コイルスプリング50の力は、回動ピン118から離れた位置で回動フランジ118、128を付勢している。
【0020】
以上に本発明の好適な実施例について説明したが、当業者であれば、添付のクレームで規定される本発明の範囲と意図を越えることなく、様々な変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明により製造された車両本体の拡大斜視図であって、開閉部を閉じた状態を、ヒンジを明確に示すために一部を除去して示す。
【図2】図2は、図1の構成において車両本体の開閉部とヒンジを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、は車両本体の開閉ヒンジと車両の開閉パネルを閉じた状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すヒンジ機構を反対からみた斜視図であり、ヒンジが開位置にある状態を示す図である。
【図5】図5は、図3および図4に示す装置の部分分解斜視図である。
【図6】図6は、車両の開閉ヒンジと四棒リンク機構の斜視図であってヒンジが閉位置にある状態を示す。
【図7】図7は、図6に示すヒンジの斜視図であって、ヒンジが開位置にある状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸フランジを有するマウントと;
回動リンクと;
前記回動リンクを前記軸フランジに連結する回動点と;
第1のコイル端部から第2のコイル端部まで横方向に巻かれた螺旋構造を具えるスプリングであって、前記螺旋構造が前記第1のコイル端部にある第1の端部と、前記コイルの長手方向に前記第1の端部部分まで延在する伸長部を有する第2の端部とを具え、前記第1および第2の端部が前記第1のコイル端部にて前記リンクと前記マウントを付勢しているスプリングとを具えることを特徴とする車両の開閉ヒンジ。
【請求項2】
前記長手方向に延在する部分が、前記コイル内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項3】
前記長手方向に延在する部分が、前記コイルと同軸であることを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項4】
前記螺旋構造の第1の端部と第2の端部が、ほぼ同一平面上の位置で終端することを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項5】
前記回動リンクがグーズネックアームであることを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項6】
前記第1および第2の端部が、外側に延びるアーム部を具えることを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項7】
前記アーム部の少なくとも1以上が、前記回動リンクと前記マウントの一方に回動可能に連結された終端部を具えることを特徴とする請求項1に記載の発明。
【請求項8】
前記第1および第2の端部が、終端部を有し外側に延びるアーム部を具えており、第1の前記終端部が第1のスプリングアーム軸で前記回動リンクに回動可能に保持されており、第2の前記終端部が第2のスプリングアーム軸で前記マウントに回動可能に保持されていることを特徴とする請求項7に記載の発明。
【請求項9】
前記第1のスプリングアーム軸と前記第2のスプリングアーム軸は、前記回動軸フランジの軸から離れており且つ平行していることを特徴とする請求項8に記載の発明。
【請求項10】
車両の開閉ヒンジをスプリング付勢する方法であって:
コンパートメントの隔壁構造に回動軸フランジを取り付けるステップと;
車両の開閉部に保持された回動リンクを前記回動軸フランジの近くに整列させるステップと;
前記回動リンクを前記回動軸フランジに連結するステップと;
第1のコイル端部から第2のコイル端部まで延在する横方向に巻かれた螺旋構造のスプリングにて前記回動リンクを付勢するステップであって、前記螺旋構造が、前記第1のコイル端部にある第1のストランド端部と、前記コイルの長手方向に前記第1のコイル端部の位置まで延びる第2のストランド端部とを具え、前記付勢が前記回動軸を中心に前記第1のコイル端部で作用するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記付勢するステップは、前記第2のストランド端部を前記コイル内を通るように位置づけるステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の発明。
【請求項12】
回動軸フランジを有するマウントと;
回動リンクと;
前記回動リンクと前記回動軸フランジとを連結する回動点と;
第1のコイル端部から第2のコイル端部まで横方向に巻かれた螺旋構造を有し、当該螺旋構造が、前記回動リンクに連結された第1のストランド端部と、前記マウントに連結された第2のストランド端部とを有するスプリングとを具え;
前記回動リンクがグーズネックバーであることを特徴等する車両の開閉ヒンジ。
【請求項13】
前記巻かれた螺旋構造が、前記回動軸と同軸であることを特徴とする請求項12に記載の発明。
【請求項14】
前記巻かれた螺旋構造が、前記回動軸と平行しているが離れている軸を取り巻いていることを特徴とする請求項12に記載の発明。
【請求項15】
前記第1のストランド端部が、前記回動リンクに回動可能に連結されていることを特徴とする請求項12に記載の発明。
【請求項16】
前記回動可能に連結された第1のストランド端部が、前記回動リンクに保持されたレバーに回動可能に連結していることを特徴とする請求項15に記載の発明。
【請求項17】
前記レバーが、前記回動リンクを連結する第2の回動点を具える請求項16に記載の発明。
【請求項18】
前記開閉ヒンジが、前記回動軸から離れた位置で前記回動リンクに連結されている前記第1または第2のストランド端部の一方を具えることを特徴とする請求項12に記載の発明。
【請求項19】
前記第2のストランド端部が、前記回動軸から離れた位置で前記マウントに連結されていることを特徴とする請求項18に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524048(P2007−524048A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552199(P2006−552199)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003143
【国際公開番号】WO2005/076859
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(502303670)エム アンド シー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】